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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A47B
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A47B
管理番号 1274797
審判番号 無効2011-800264  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-12-23 
確定日 2013-06-13 
事件の表示 上記当事者間の特許第3474265号発明「家具の脚取付構造」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3474265号(請求項の数[1]、以下、「本件特許」という。)は、平成6年7月6日に特許出願された特願平6-154479号に係るものであって、その請求項1に係る発明について、平成15年9月19日に特許の設定登録がなされた。

これに対して、平成23年12月23日に、本件特許の請求項1に係る発明の特許に対して、本件無効審判請求人(以下「請求人」という。)により本件無効審判〔無効2011-800264号〕が請求されたものであり、請求人より平成24年1月18日付けで手続補正書が提出され、本件無効審判被請求人(以下「被請求人」という。)により指定期間内の同年3月26日付けで審判事件答弁書が提出されたものである。

また、同年6月22日付けで請求人及び被請求人より口頭審理陳述要領書が提出され、請求人より同年7月3日付けで上申書が提出され、同年7月6日に口頭審理が行われたものである。

第2 本件に係る発明
本件特許の請求項1に係る発明は特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。(A:?G:の文字は当審で付与。)

「【請求項1】
A:テーブル等の家具の脚部を、天板等の家具本体に着脱自在に取付ける為の構造であって、
B:家具本体1に固定させる基盤6に、有底短筒状の嵌合突起8を下向きに突設した固定部4と、
C:脚部2の上端に設けられて、前記嵌合突起8を緊密に挿嵌させる嵌合孔10を備える被固定部5とから成り、
D:前記嵌合突起8の底面8aには、筒の径方向に伸びるスリット9を設けると共に、
E:底面8aの上面は、前記スリット9の両側端9a,9aから夫々筒周方向に上向きに緩やかに傾斜する斜面aに形成し、
F:前記嵌合孔10の底部11には、前記スリット9に挿嵌させ得る形状を備えて、その上端に前記斜面aに当接させる掛止部12bを設けた掛止部材12を突設し、
G:前記掛止部12bを前記スリット9に挿通させたうえ、前記脚部2をその軸周りに回動させると、前記掛止部12bが前記斜面aを次第に締付けて、固定部4と被固定部5とが強固に掛合される様にしたことを特徴とする家具の脚取付構造。」(以下、「本件発明」という。なお、「前固定部4」は「固定部4」の誤記として認定した。)


第3 当事者の主張

1.請求人の主張、及び提出した証拠の概要
請求人は、特許第3474265号は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、平成24年1月18日付け手続補正書、同年6月22日付けの口頭審理陳述要領書、同年7月3日付け上申書、同年7月6日の口頭審理において、甲第1?21号証を提示し、以下の無効理由を主張した。

[無効理由1]
本件発明は、甲第1号証に記載の発明と同一の発明であり、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができない。
(具体的理由)
甲第1号証記載の構成要件eは請求項1に記載の通り、「袋部(9 )の内底面(9a)は周方向で開口近接側より同遠方側が高位置にあり」とあって、その機能は掛止部材(係止片)と協働し、掛止部材の周方向での回転に伴って、掛止部材に対し、摺動面を低位置から高位置に押し上げ、摩擦力増大させる構造を意味しており、下記実施例の具体的構造だけでなく、本件発明の出願当時の、共通する技術課題の解決手段として以下に詳述する周知な回転式掛止構造(周知技術2)を含むと理解すべきである。ここで、周知技術2とは以下に説明するように、回転式掛止部材と高低差のある摺動面又は傾斜面とからなり、回転式ワンタッチでテーブルに対しその脚部を掛止め(ロック)する構造を構成するものをいう。
したがって、本件発明と実開昭60-47909号公報の実施例との対比のみをもって構成要件Eとeとが同一でないとすることは失当である。また、構成要件Gとgは上記周知技術2の回転式掛止構造の作用に関するものであるからそれぞれ前提とする構成要件Eとeが同一である以上実質的に同一となる。

[無効理由2]
本件発明は、甲第1号証の教示に基づいて、周知技術1(甲第1号証、甲第2号証及び甲第7号証ないし甲第16号証に記載の嵌め合い構造)、設計事項(甲第4号証ないし甲第6号証に記載の示唆)及び周知技術2(甲第1号証、甲第3号証及び甲第17号証ないし甲第19号証に記載の回転式掛止構造)を組み合わせて当業者が容易に発明することができた発明であり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(具体的理由)
その1:甲第2号証記載の発明に、甲第3号証の考案や、周知技術である甲第17号証ないし甲第19号証記載の考案、または発明を適用することにより容易。
その2:甲第1号証記載の発明に、甲第3号証の考案や、周知技術である甲第17号証ないし甲第19号証記載の考案、または発明を適用することにより容易。
その3:甲第3号証記載の発明に、甲第4号証ないし甲第6号証に示唆された設計事項である雄体と雌体の配置を入れ替えを行うこと、または、甲第1号証の教示することに照らして、雄型嵌合部と雌型嵌合部とを嵌め合わせる嵌め合い構造の周知技術1を適用することにより容易。

[証拠方法]
甲第1号証:実願昭58-139956号(実開昭60-47909号)のマイクロフィルム
甲第2号証:特開昭57-25510号公報
甲第3号証:実願昭59-64503号(実開昭60-177311号)のマイクロフィルム
甲第4号証:実開昭60-107607号公報
甲第5号証:実願平3-24144号(実開平5-51173号)のCD-ROM
甲第6号証:実公平1-44802号公報
甲第7号証:実願平5-48891号(実開平7-17139号)のCD-ROM
甲第8号証:実公平5-26号公報
甲第9号証:実開平1-112728号公報
甲第10号証:実開平4-119613号公報
甲第11号証:実開昭60-170141号公報
甲第12号証:実開昭60-107607号公報
甲第13号証:実開昭62-156609号公報
甲第14号証:実公昭62-30575号公報
甲第15号証:実開昭56-171409号公報
甲第16号証:実公昭57-44101号公報
甲第17号証:実願昭54-20906号(実開昭55-120814号)のマイクロフィルム
甲第18号証:欧州特許公開0036430号公報
甲第19号証:米国特許第3,966,340号公報
甲第20号証:不服2002-6373号審決
甲第21号証:特願平6-154479号の拒絶査定不服審判請求書

2.被請求人の主張
これに対して、被請求人は、平成24年3月26日付けの審判事件答弁書及び同年6月22日付けの口頭審理陳述要領書、同年7月6日の口頭審理において、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の無効理由に対して以下のように反論した。

[無効理由に対する反論]
審判事件答弁書、陳述要領書に記載したとおり、請求人の主張はいずれも失当であって、本件の請求項1に係る発明には特許法29条1項及び2項による無効理由は存在しない。

本件発明の構成要件Gの「回動させると,前記掛止部12bが前記斜面aを次第に締め付けて,前固定部4と被固定部5とが強固に係合される様にしたこと」は,答弁書で述べた「傾斜面に係止片を止めて圧接する」構成であり,また「脚部2の回転角度に制限のないことから」,「圧接する力は,脚部2の回転角度によって決定される」ものとして特定されるものである。
本件発明は増し締めが可能であるという特別な効果をもたらしているものである。


第4 無効理由についての当審の判断

1.本件発明の無効理由1について

(1)甲第1号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、支脚の取付装置に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「天板下面に固着される支脚取付板に中央に長形の開口を備えた下方膨出部が形成されて、該開口両側が袋部を構成しており,該袋部の内底面は周方向で開口近接側よりも同遠方側が高位置にあり、一方、支脚の頂端面に前記膨出部を収容可能な凹所が形成され、該凹所の中央に凹所底面より高位置で直径方向両側へ延出する係止片を備えた連結部材が固着され、該係止片が前記開口より膨出部内へ嵌入した状態で該支脚を約90°回転させることにより、旋回した係止片が袋部内に侵入してその高位置の内底面に圧接すると共に、支脚の周縁部と支脚取付板の周囲部とが圧接し、支脚が天板下面に連結固定されるように構成してなる支脚の取付装置。」(実用新案登録請求の範囲)
(イ)「支脚取付板(4)は略四角形で一角部を斜めに切欠いた形状の金属板からなり、中央部に略円形の下方膨出部(5)が形成され、・・・」(明細書第3頁第3?5行)
(ウ)「この固着状態で開口(6)の両側の膨出部(5)は袋部(9)(9)を構成する。また、各袋部(9)は、周方向で開口(6)に近接する位置の内底面(9a)よりも、同遠方側の位置すなわち開口(6)の長手方向に対して位相が90°異なる位置の内底面(9b)が距離(t)だけ高くなるように膨出部の(5)の下方突出度合を部分的に変えてある。」(明細書第3頁第14行?第4頁第2行)
(エ)「支脚(3)は、略四角筒状でその一稜部に他の側面と45°の角度を持つ帯状面を形成した支脚本体(10)の上端開口部に、合成樹脂成形物からなる封口部材(11)を挿入して接着している・・・」(明細書第4頁第3?6行)
(オ)「・・・封口部材(11)の上端面には取付板(4)の膨出部(5)を収容可能な大きさの円形凹所(12)が形成され、更に凹所(12)の底面中央に長穴(13)が凹設され、この長穴(13)の底面中央から封口部材(11)の底面側へ透通するボルト挿通孔(14)が形成されている。しかして長穴(13)には略U字状で両側上端より外側へ水平に延出する係止片(15a)(15a)を備えた金属製連結部材(15)が回転不能に嵌合され、・・・」(明細書第4頁第11?18行)
(カ)「・・・支脚(3)を天板(2)の下面に連結固定するには、第8図(A)、(B)で示すように、支脚(3)の上端と取付板(4)とを係止片(15a)(15a)が開口(6)から膨出部(5)内へ嵌入するように当接し、この当接状態で矢印(S)の如く支脚(3)を90°回転させればよい・・・」(明細書第5頁第5?9行)
(キ)「・・・支脚(3)は、係止片(15a)(15a)と袋部(9)(9)との係合により抜出不能に天板(2)と連結すると共に、係止片(15a)(15a)および周端部(11c)の圧接により強固かつ安定した固定状態となる。
尚、開口(6)の円形輪郭(6a)は連結部材(15)の回転を支障なくするために形成されている。」(明細書第6頁第1?6行)
(ク)「・・・この考案によれば支脚をワンタッチ操作で天板に取付けることが可能であり、しかも取付状態が確実且つ強固となり、更にテーブル等の不使用時には支脚を同様のワンタッチ操作で取外して収納等に支障を与えないようにすることができる・・・」(明細書第7頁第3?9行)
(ケ)第5図には、内底面9aと高位置にある内底面9bとの間が、傾斜面で記載されている。

上記記載事項及び図面の記載から、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「天板下面に固着される支脚取付板に中央に長形の開口を備えた下方膨出部が形成されて、該開口両側が袋部を構成しており,該袋部の内底面は周方向で開口近接側よりも同遠方側が高位置にあり、一方、支脚の頂端面に前記膨出部を収容可能な凹所が形成され、該凹所の中央に凹所底面より高位置で直径方向両側へ延出する係止片を備えた連結部材が固着され、該係止片が前記開口より膨出部内へ嵌入した状態で該支脚を約90°回転させることにより、旋回した係止片が袋部内に侵入してその高位置の内底面に圧接すると共に、支脚の周縁部と支脚取付板の周囲部とが圧接し、支脚が天板下面に連結固定されるように構成してなる支脚の取付装置であって、
[1]支脚(3)を天板(2)に着脱自在に取り付けるための構造で、
[2]天板(2)に固定させるための支脚取付板(4)に、膨出部(5)を下向きに突設した固定部材、
[3]支脚(3)の上端に設けられて、膨出部(5)を収容する凹所(12)を備える被固定部材、
[4]下方膨出部の底面に開口(6)を設け、
[5]該袋部の内底面は周方向で開口近接側よりも同遠方側が高位置にあり、傾斜面をなして、
[6]開口(6)に挿嵌させ得る形状を備えて、その上端に係止片(15a) (15a)を設けた連結部材(15)を設け、
[7]支脚(3)の上端と取付板(4)とを係止片(15a)(15a)が開口(6)から膨出部(5)内へ嵌入するように当接し、この当接状態で矢印(S)の如く支脚(3)を回転させると、固定部材と被固定部材とが強固に掛合する状態となる、
支脚の取付装置。」(以下、これを「甲第1号証記載の発明」という。)

(2)甲第1号証記載の発明との対比
本件発明と甲第1号証記載の発明を対比する。
(a)甲第1号証記載の発明の「支脚(3)」は、本件発明の「テーブル等の家具の脚部」に相当し、以下同様に、
「天板(2)」は、「天板等の家具本体」に、
「固定部材」は、「固定部」に、
「被固定部材」は、「被固定部」に、
「膨出部(5)」は、「嵌合突起」に、
「取付板(4)」は、「基盤」に、
「凹所(12)」は、「嵌合孔」に、
「袋部の内底面」は、「底面の上面」に、
「凹所の中央」は、「嵌合孔の底部」に、
「連結部材(15)」は、「係止部材」に、
「支脚(3)の上端と取付板(4)とを係止片(15a)(15a)が開口(6)から膨出部(5)内へ嵌入するように当接し、この当接状態で矢印(S)の如く支脚(3)を回転させる」ことは、「掛止部を前記スリットに挿通させたうえ、前記脚部をその軸周りに回動させる」ことに相当する。
(b)甲第1号証記載の発明の「下方膨出部の底面」の「開口(6)」と、本件発明の「筒の径方向に伸びるスリット」とは、「底面の面方向に伸びるスリット」で共通する。
(c)甲第1号証記載の発明の「該袋部の内底面は周方向で開口近接側よりも同遠方側が高位置にある」「傾斜面」と、本件発明の「底面8aの上面は、前記スリット9の両側端9a、 9aから夫々筒周方向に上向きに緩やかに傾斜する斜面a」とは、「底面の上面は、スリットの近接側よりも遠方側が高位置となるように傾斜する斜面を有する」点で共通する。
(d)甲第1号証記載の発明の「高位置の内底面に圧接する係止片(15a)(15a)」と、本件発明の「斜面aに密接させる掛止部12b」とは、「高位置となる面に密接させる掛止部」で共通する。
(e)甲第1号証記載の発明の「係止片が前記開口より膨出部内へ嵌入した状態で該支脚を約90°回転させることにより旋回した袋部内に進入してその高い位置の内底面に圧接するとともに、支脚の周縁部と支脚取付板の周囲部とが圧接する」と、本件発明の「掛止部をスリットに挿通させたうえ、前記脚部2をその軸周りに回動させると、前記掛止部12bが前記斜面aを次第に締付けて、前記固定部4と被固定部5とが強固に掛合される」とは、「掛止部をスリットに挿通させたうえ、脚部をその軸周りに回動させると、掛止部が高位置となる面を締付けて、固定部と被固定部とが強固に掛合される」点で共通する。

一致点:
そうすると、両者は、
「テーブル等の家具の脚部を、天板等の家具本体に着脱自在に取付ける為の構造であって、
家具本体に固定させる基盤に、嵌合突起を下向きに突設した固定部と、
脚部の上端に設けられて、前記嵌合突起を挿嵌させる嵌合孔を備える被固定部とから成り、
前記嵌合突起の底面には、底面の面方向に伸びるスリットを設けると共に、
底面の上面は、スリットの近接側よりも遠方側が高位置となるように傾斜する斜面を有し、
前記嵌合孔の底部には、前記スリットに挿嵌させ得る形状を備えて、その上端に前記高位置となる面に密接させる掛止部を設けた掛止部材を突設し、
前記掛止部をスリットに挿通させたうえ、脚部をその軸周りに回動させると、掛止部が高位置となる面に締付けて、固定部と被固定部とが強固に掛合される様にしたことを特徴とする家具の脚取付構造。」
で一致し、次の点で相違する。

相違点1:本件発明は、嵌合突起が「有底短筒状」であり、嵌合孔が「嵌合突起8を緊密に挿嵌させる」ものであり、スリットの伸びる方向が「筒の径方向」であるのに対し、甲第1号証記載の発明は嵌合突起が「短筒状」でなく、嵌合孔が「嵌合突起を緊密に挿嵌させる」ものでない点。

相違点2:本件発明は、底面の上面が「スリットの両側端から夫々筒周方向に上向きに緩やかに傾斜する斜面」であり、掛止部を密接させる面が「斜面」であり、脚部をその軸周りに回動させると「掛止部が前記斜面を次第に締付け」るのに対し、甲第1号証記載の発明は、底面の上面が「周方向で開口近接側よりも同遠方側が高位置となるように傾斜する斜面」であり、掛止部を密接させる面が「高位置の内底面」であり、脚部をその軸周りに回動させると「係止片が・・・袋部内に進入してその高い位置の内底面に圧接する」ものである点。

(3)相違点についての判断
特許発明1と甲第1号証に記載された発明とは、上記相違点1?2で相違する。
そして、これらの点はいずれも、甲第1号証に記載されている事項から、本件特許の出願時における技術常識を参酌することによって導き出せるものでもない。

請求人は、相違点1に関して審判請求書7.(4)3)1-2で「(雄型嵌合部)として『膨出部(5)』が『嵌合突起8』に・・・に相当する。」との主張はしているが、甲第1号証記載の発明は、嵌合孔に「嵌合突起を緊密に挿嵌させる」ものではない。
また、相違点2に関しては、審判請求書7.(4)3)1-3で「上向きに緩やかに傾斜する斜面は当業者に周知である」旨の主張をしているが、例え、そうであったとしても、甲第1号証記載の発明の、底面の上面が「周方向で開口近接側よりも同遠方側が高位置となるように傾斜する斜面」が、実質的に該上向きに「緩やか」に傾斜する斜面で構成されていたとまで特定できるものではないし、「脚部をその軸周りに回動させると,掛止部が前記斜面を次第に締付ける」ものでもない。

したがって、特許発明1は甲第1号証に記載された発明と同一であるということはできない。


2.本件発明の無効理由2について

(1)甲第1?21号証の記載事項

ア.甲第1号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、支脚の取付装置に関して、前記1.(1)の事項が記載されている。

イ.甲第2号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、家具用脚の取付構造に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「・・・テーブル(1)の裏面に対する角パイプ製脚(2)の取付けを着脱可能にするため、テーブル(1)裏面には、家具側合成樹脂製取付体(3)の上面に脚(2)取付位置中心同一円周上等間隔に形成した取付突起(4)がテーブル(1)裏面に形成した取付孔(5)に押込挿入された状態で取付けられ・・・」(第2頁左上欄第9?14行)
(イ)「脚(2)の上端には脚(2)側合成樹脂製取付体(7)の脚取付突起(8)が押込挿入後、外周からの図示省略ネジ止め等によって取付けられ・・・」(第2頁左上欄第20行?右上欄第2行)
(ウ)「・・・両取付体(3)(7)の対向面には、両者を互いに面直角方向に接近させた状態で嵌合するリング状枠体(9)(10)が形成され・・・」(第2頁右上欄第2?5行)
(エ)「両取付体(3)(7)のリング状枠体(9)(10)内側円周上4等分位置にはほぼL字状の係合突起(11)(12)が形成され、両取付体(3)(7)の対向面を互いに当接させた枠体(9)(10)嵌合状態において、取付体(7)を一方から他方、第7図において時計方向に回転させると、両取付体(3)(7)の係合突起(11)(12)は第8図のように係合する・・・」(第2頁右上欄第8?14行)
(オ)「・・・脚(2)は取付体(3)(7)を介してテーブル(1)に強固に取付けられるとともに、この取付状態で取付体(7)を第7図反時計方向に回転させると、両取付体(3)(7)における係合突起(11)(12)の係合は容易に解除され、脚(2)をテーブル(1)から取外すこともできる」(第2頁右上欄第18行?左下欄第3行)
(カ)記載事項(ウ)の取付体(3)は、リング状枠体(9)及びL字状の係合突起(11)を下向きに突設した取付体(3)といえる。
(キ)第7図には、家具側合成樹脂製取付体(3)のリング状枠体(9)が、短筒状の形状で記載されている。
(ク)記載事項(ウ)の取付体(7)は、第7図記載の構成から、取付体(3)のリング状枠体(9)とL字状の係合突起(11)との間の空間に、リング状枠体(10)が入り込む態様で挿嵌されるものであるので、リング状枠体(10)及びL字状の係合突起(12)を備え、家具側合成樹脂製取付体(3)のリング状枠体(9)内に挿嵌される脚側合成樹脂製取付体(7)といえる。

上記記載事項及び図面の記載から、甲第2号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「[1]テーブル(1)の脚(2)を、テーブル(1)の裏面に着脱自在に取付ける為の構造であって、
[2]テーブルに取り付けされる家具側合成樹脂製取付体(3)であって、リング状枠体(9)及びL字状の係合突起(11)を下向きに突設した家具側合成樹脂製取付体(3)、
[3]脚(2)の上端に設けられて、リング状枠体(10)及びL字状の係合突起(12)を備え、家具側合成樹脂製取付体(3)のリング状枠体(9)内に挿嵌される脚側合成樹脂製取付体(7)を備え、
[4]取付体(7)を上端に有する脚(2)を回転させることにより取付体(3)(7)を介してテーブル(1)に強固に取り付けられる、
家具用脚の取付構造。」(以下、これを「甲第2号証記載の発明」という。)

ウ.甲第3号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、連結具に関して次の事項が記載されている。
(ア)「差込孔と、差込孔に連通するよう差込孔の外周対向位置に形成した二つの嵌入孔と、夫々の嵌入孔の縁に立設した係止受体と、係止受体の根元を高くしてそこから他方の嵌入孔側に次第に下り傾斜になるようにした締付部とが形成されている雌体と、雌体の差込孔に回転自在に嵌入できるよう立設した嵌入部と、嵌入部を雌体の差込孔に差込んだとき雌体の嵌入孔に嵌入するよう嵌入部から外側に突設した二つの押当子とが形成されている雌体とから構成され、雄体の嵌入部を雌体の差込孔に差込んで雌体と雄体を相対的に回転させると雄体の押当子が雌体の係止受体に押当すると共に押当子が雌体の締付部に密接して雌体と雄体が固定されるようにしたことを特徴とした連結具。」(実用新案登録請求の範囲)
(イ)「本考案は例えばテーブルの板とテーブルの足を連結したり、木材と木材を連結したりするのに使用される連結具に関する」(明細書第1頁第20行?第2頁第2行)
(ウ)「雌体と雄体を回転させるだけのワンタッチ操作で連結できるようにし、しかも連結時に体裁の良い連結具を提供することにある。」(明細書第3頁第6?8行)
(エ)「雌体1は板状の基材3の中央部に差込孔4を形成し、差込孔4の外周の対向位置に同差込孔4に開口する二つの嵌入孔5を形成し、夫々の嵌入孔5の周縁に二つの係止受体6を突設し、第3図イ及び第5図のロ、ハに明示するように夫々の係止受体6の近くにその根元部分7が高くそこから他方の嵌入孔5側に向けて次第に下り傾斜になるようにした締付部8を形成してなる。」(明細書第3頁第12?19行)
(オ)「雄体2は第3図ロに明示するように、板状の基材9に雌体1の差込孔4に回転自在に嵌入できるようにした嵌入部10を環状に立設し、嵌入部10の周縁に雌体1の嵌入孔5に嵌入する二つの押当子11を形成してなる。」(明細書第4頁第3行?7行)
(カ)「これにより雌体1と雄体2の回転が停止すると共に5図ホに示すように押当子11の裏面11bが締付部8に密接して雌体1と雄体2とが固定され、雌体1と雄体2が取付けられている連結部材12,13同志が連結される。」(明細書第6頁第4?8行)
(キ)「雌体1をテーブル板Aに取付け、雄体2を足Cに取付ければ、その足Cを回転させるだけで足Cとテーブル板Aを連結することができる」(明細書第6頁第9?12行)

上記記載事項及び図面の記載から、甲第3号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「差込孔と、差込孔に連通するよう差込孔の外周対向位置に形成した二つの嵌入孔と、夫々の嵌入孔の縁に立設した係止受体と、係止受体の根元を高くしてそこから他方の嵌入孔側に次第に下り傾斜になるようにした締付部とが形成されている雌体と、雌体の差込孔に回転自在に嵌入できるよう立設した嵌入部と、嵌入部を雌体の差込孔に差込んだとき雌体の嵌入孔に嵌入するよう嵌入部から外側に突設した二つの押当子とが形成されている雌体とから構成され、雄体の嵌入部を雌体の差込孔に差込んで雌体と雄体を相対的に回転させると雄体の押当子が雌体の係止受体に押当すると共に押当子が雌体の締付部に密接して雌体と雄体が固定されるようにしたことを特徴とする連結具であって、
[1]係止受体6の根元を高くしてそこから他方の嵌入孔5側に次第に下り傾斜になるようにした締付部8、
[2]嵌入部10を差込孔4に差込んだとき嵌入孔5に嵌入するよう嵌入部10から外側に突設した二つの押当子11、
を有する連結具。」(以下、これを「甲第3号証記載の発明1」という。)

また、上記記載事項及び図面の記載から、甲第3号証には、次の発明も記載されているものと認められる。
「差込孔と、差込孔に連通するよう差込孔の外周対向位置に形成した二つの嵌入孔と、夫々の嵌入孔の縁に立設した係止受体と、係止受体の根元を高くしてそこから他方の嵌入孔側に次第に下り傾斜になるようにした締付部とが形成されている雌体と、雌体の差込孔に回転自在に嵌入できるよう立設した嵌入部と、嵌入部を雌体の差込孔に差込んだとき雌体の嵌入孔に嵌入するよう嵌入部から外側に突設した二つの押当子とが形成されている雌体とから構成され、雄体の嵌入部を雌体の差込孔に差込んで雌体と雄体を相対的に回転させると雄体の押当子が雌体の係止受体に押当すると共に押当子が雌体の締付部に密接して雌体と雄体が固定されるようにしたことを特徴とする連結具であって、
[1]テーブルの足Cを、テーブル板Aに着脱自在に取り付ける為の構造であって、
[2]テーブル板Aに対応する連結部材12に固定させる基材3と、
[3]足Cに対応する連結部材13の上端に設けられる基材9とから成り、
[4]雌体1は板状の基材3の中央部に差込孔4を形成し、差込孔4の外周の対向位置に同差込孔4に開口する二つの嵌入孔5を形成し、夫々の嵌入口5の周縁に二つの係止受体6を突設し、夫々の係止受体6の近くにその根元を高くしてそこから他方の嵌入孔側に次第に下り傾斜になるようにした締付部8を形成してなり、
[5]雄体2は板状の基材9に雌体1の差込孔4に回転自在に嵌入できるようにした嵌入部10を環状に立設し、嵌入部10の周縁にテーブル側の嵌入孔5に嵌入する二つの押当子11を形成してなる連結具。」(以下、これを「甲第3号証記載の発明2」という。)

エ.甲第4号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、脚取付構造に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「床上に置かれる机、椅子その他の什器における脚取付構造において、什器本体に固着される脚取付体と脚体とが雌雄の各部材を嵌合することによつて軸着され、前記雌部材と雄部材のいずれか一方に係止突起が設けられていると共にその他方に前記係止突起の案内用傾斜止辺が設けられ、前記脚取付体と脚体との軸着衝合面間に弾発部材が介設され、脚体はその回動動作によつて着脱自在になされていることを特徴とする脚取付構造」(実用新案登録請求の範囲)

オ.甲第5号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には、家具等の連結具及びハンガーラックに関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】パイプを同軸状に連結する家具等の連結具において、パイプに挿入する円筒体と、この円筒体に縦設したスリットと、前記円筒体の開口縁に形成したカール部とを具備する家具等の連結具」
(イ)「【0002】・・・そしてこれらの連結には前記分割されたパイプ相互を雄、雌螺子の螺合により連結するものが知られている。」

カ.甲第6号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第6号証には、家具等の支柱取付用金具に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「本考案に係る金具は、テーブルの天板などの被取付物または支柱のいずれか一方に固定されるケーシング1部分と、いずれか他方に固定される受体12とで構成される」(第2欄第27行?第3欄第2行)
(イ)「ケーシング1に受体12を嵌入した上で脚18を所定角度回して・・・脚18を天板17に固定することができる」(第5欄第7?11行)

キ.甲第7号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第7号証には、家具等の脚取付構造に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0002】・・・従来から、例えば家庭や飲食店などで使用するテーブルに対する脚の取り付けは、脚の上端外側に形成された雄ねじ部をテーブルの雌ねじ部に螺入させることにより行なわれている場合が多い。」

ク.甲第8号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第8号証には、机等家具用脚部に関して、次の事項が記載されている。
(ア)第2図に、天板側に雄体、脚部側に雌体が配置されたものが記載されている。

ケ.甲第9号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第9号証には、テーブルに関して、次の事項が記載されている。
(ア)第2図に、天板側に雄体、脚部側に雌体が配置されたものが記載されている。

コ.甲第10号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第10号証には、テーブル、机等の脚付き家具に関して、次の事項が記載されている。
(ア)第2図及び第4図に、天板側に雌体、脚部側に雄体が配置されたものが記載されている。

サ.甲第11号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第11号証には、テーブル脚に関して、次の事項が記載されている。
(ア)第1図に、天板側に雄体、脚部側に雌体が配置されたものが記載されている。

シ.甲第12号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第12号証には、脚取付構造に関して、次の事項が記載されている。
(ア)第3図に、天板側に雄体、脚部側に雌体が配置されたものが記載されている。

ス.甲第13号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第13号証には、天板の支持要素に関して、次の事項が記載されている。
(ア)第1図及び第2図に、天板側に雄体、脚部側に雌体が配置されたものが記載されている。

セ.甲第14号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第14号証には、器具類の脚取付け装置に関して、次の事項が記載されている。
(ア)第1図に、天板側に雄体、脚部側に雌体が配置されたものが記載されている。

ソ.甲第15号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第15号証には、脚体に関して、次の事項が記載されている。
(ア)第2図に、脚部の被取付側に雄体、脚部側に雌体が配置されたものが記載されている。

タ.甲第16号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第16号証には、テーブル等の脚杆取付構造に関して、次の事項が記載されている。
(ア)第1図に、天板側に雌体、脚部側に雄体が配置されたものが記載されている。

チ.甲第17号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第17号証には、机における天板等の連結装置に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「本考案は、机における天板等の連結装置に関する。」(明細書第1頁第16?17行)
(イ)「天板1の下面において、補強枠11に設けられる係合孔12は、長孔状で連結具本体30の頭部34および係止片35,35に対応する形状に形成し、その両側辺部において、補強枠11の内面に互いに逆向きに傾斜する係合用突起13、13を設けておく。」(明細書第4頁第10?15行)
(ウ)「第5?8図に示すように各連結具3の頭部34および係止片35,35を天板下面の各係合孔12に挿入すると共に、・・・係止片35,35が・・・補強枠11の内部で回転し、第8図に示す如く係合孔12とはほぼ直交する姿勢に変更して係合用突起13,13に係合し、・・・連結具3を介して天板1を連結するのである。」(明細書5頁第2?12行)
(エ)「連結後は係止片35,35がばね5により第8図矢印方向に回転する如く付勢され、係合突起13、13に弾性的に係合し、かつ、係合突起13、13の上面を傾斜させてあるので、該係止片35,35と突起13,13との係合状態を確実に保持でき、天板1と袖抽斗枠2とをガタツキが生じないように強固に連結できる。」(明細書5頁第15行?第6頁第2行)

上記記載事項及び図面の記載から、甲第17号証には、次の技術が記載されているものと認められる。
「開口部に掛止部材を挿入し、これを回転させて開口部近傍の斜面を押圧し、雌体と雄体とを緊締させる技術」

ツ.甲第18号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第18号証には、次の事項が記載されている。
なお、文末の( )は、請求人が翻訳文として提出した対応箇所の翻訳である。(以下「対応記載」という。)
(ア)「That is, as shown in Fig.2,the part (11) is of such structure that engaging banks (12) and (12)are provided at symmetrical positions along the inner periphery, each engaging bank being composed of a sloped surface (12a) and a horizontal surface (12b) adjacent thereto, and that by inserting the engaging rod hereinafter described into the through holes (2)and(8) from the back side of the molded part (1) for the base plate ,adjusting the direction of the tip stopper section to the common axis of the through holes (2)and(8)and then rotating the stopper section in a right angle to the longitudinal direction, the tip stopper section ascends along the sloped surface (12a) reaching the horizontal surface (12b),where a tensile stress is imposed to tightly fasten and fix the molded part (1) for the base plate and the molded part(7) for the top plate.」(第6頁第17行?第7頁第4行)
(「すなわち、第2図に示されるように、円筒状部分(11)は次のような構造となっている。円筒状部分の内周には掛止部(12)(12)が対象な位置に設けられ、係止部の各々は斜面(12A)とこれに続く水平面(12B)とから構成されている。後述される係止部材(16)をベースプレートの嵌合部(1)の背面側から掛止開口部(2)(8)に挿入した後、先端ストッパー部分を長手方向に対して垂直な面内で回転させると、先端ストッパー部分は斜面(12a)を上って水平面(12b)に達し、そこでの引っ張り応力によってベースプレートの嵌合部(1)とトッププレートの嵌合部(7)とが強固に締結されて固定される。」)
(イ)Fig2及びFig7には、the molded part(7)のthe through holes(8)の内周面には、斜面(12a)と水平面(12b)とからなるengaging bank(12)が設けられ、the molded part (1)のengaging rod(15)をthe through holes(8)に挿入し、そのstopper sectiond (16)を回転させると、傾斜面(12a)を上り、水平面(12b)に至って、the molded part (1)とthe molded part(7)の締付を行うものが記載されている。

テ.甲第19号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第19号証には、テーブル等の脚杆取付構造に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「Accordingly、it is the object of this invention to provide a twist lock connector for use in selective connecting and disconnecting of components, such as knock-down furniture components, which may be locked by relative rotation of the members thereof in either a right-hand or left-hand direction for assembling the components in desired orientation and which may be unlocked upon relative rotation in the opposite direction for disassembling the components.」(第1欄第62行?第2欄2行)
(「したがって、この発明の目的は、組立て式家具の部品などの部品を連結し連結を解除することのできる回転式掛止構造を提供することである。この掛止構造はその部品同士を右回り又は左回りのいずれか一方の方向に相対的に回転させることによって連結されて部品を組立てることができ、反対方向に相対回転させることによって連結が解除されて部品を分解することができる。」)
(イ)「It has been found by this invention that the above objects may be broadly accomplished by providing a twist lock connector, as follows.
A female member is provided for attachment to one of the components to be assembled and has opposite outer ends and a longitudinally extending passageway therethrough defining a pair of opposing end walls on each side of the passageway on each of the outer ends. The opposing end walls on one of the outer ends.-------------------The other of the end portions comprises a predetermined configuration for extending through and out of the passageway in the female member at the one end and includes at least one flange member projecting transversely outwardly therefrom for being positioned outside of the one end of the female member and has an inside wall defining opposing camming surfaces for cooperatively frictionally engaging and locking with the opposing camming surfaces on the end walls of the one end of the female member upon rotation in either a right-hand or left-hand direction of one of the member relative to the other and for unlocking upon relative the rotation in the opposite direction.」(第2欄第11?39行)
(「以下の構成の回転式掛止構造によって前述の目的を広く達成できることが、本件発明によって明らかとなった。
組立てられるべき部品の一方には雌部材が取付けられ、雌部材には対向する外端部及び長手方向に貫通して延びる通路が設けられ、この通路の両側には対向する一対の壁面が形成され、この対向する壁面にはカム面が対向して形成されている。対向する端部を有する長尺の雄部材が長手方向に延びて設けられ、雄部材の一方の端部は組立てられるべき他方の部品に取付けられ、雌部材の他端に接する内側の面が設けられている。・・・雄部材の他方の端部は通路を挿通してその一端が雌部材から突出する所定の構造に構成されるとともに、横方向外方に突出するフランジ部分が少なくとも1つ設けられ、このフランジ部分は雌部材の一方の端部の外側に配置されるとともに、その内側の壁には対向するカム面が設けられ、雌雄の部材の一方を他方に対して右回り又は左回りの方向に回転させたときに、雄部材のカム面が雌部材の一端部の壁面の対向するカム面に摩擦係合されてロックされ、反対方向に回転された時にロックが解除される。」)
(ウ)「It is also preferable for the other end portion of the male member to comprise a generally T-shaped configuration which includes two of the flange members, defined above, forming the upper portion of the T-shaped configuration for respectively engaging and frictionally locking with one of the camming surfaces on each for the wall members on the one of the outer ends of the female member.」(第2欄第48?55行)
(「また、雄部材の他方は2つのフランジ部分を有するT字状の構造に形成されるのが好ましく、T字状の構造部分には雌部1の外端部の一方の壁部分のカム面の1つと摩擦係合されてロックされる上側の部分が形成されている。」)
(エ)「As shown in FIGS. 2 and 4-6, the female member 20 has opposite outer ends 23,24 and a longitudinally extending passageway 26 of predetermined configuration therethrough defining pairs of opposing end walls 23a,23b and 24a,24b on the outer end 23,24 on each side of the passageway 26. The outer ends 23,24 are generally concave in overall configuration and the opposing end walls 23a,23b on one outer end 23 each comprise a curved, generally convex configuration, having an increasing rising, tapering height from the inside to the outside, to define generally curved,opposing, upwardly extending, rising, merging, camming surfaces 23a', 23a'' and 23b', 23b' on respective end walls 23a,23b on the outer end 23.」(第3欄第62行?第3欄第7行)
(「第2図及び第4?6図に示されるように、雌部材20には対向する外端部23,24及びそれを通って長手方向に延びる所定形状の通路26が設けられ、通路26の両側の外側端部23,24には対向する端部壁面23a,23b及び24a,24bの対が設けられている。外側端部23,24は全体として概略凹状をなし、一方の外側端部23の対向する端部壁面23a,23bの各々は内側から外側に向けて徐々に高くなるように傾斜した概略凸状に湾曲され、一方の外端部23の端部壁面23a,23bには概ね上方に向かって高くなるように湾曲するカム面23a’’,23b’’が対向して形成されている。」)

ト.甲第20号証の記載事項
本件特許出願に係る拒絶査定不服審判の審決である甲第20号証には、公知文献1(特開昭57-25510号公報)及び2(実開昭55-120814号公報)には「嵌合突起8の底面8aには、筒の径方向に伸びるスリット9を設けると共に、底面8aの上面は、前記スリット9の両側端9a.9aから夫々筒周方向に上向きに緩やかに傾斜する斜面aに形成した」構成は記載も示唆もない旨記載されている。

ナ.甲第21号証の記載事項
本件特許出願に係る拒絶査定不服審判請求書である甲第21号証には、実開昭55-120814号公報との比較検討において、「テーブル側と、脚側とに、夫々設けた取り付け用の部材を、互いに引き付けて合体させるのに、楔作業を利用している点が共通する。但し、この楔作業用を利用する部分全体構成の一部を占めるに過ぎなし、楔作用による締結方法自体は、勿論、公知技術に属する。」旨記載されている。


(2)無効理由2の具体的理由その1についての検討
ア.本件発明と甲第2号証記載の発明の対比

(a)甲第2号証記載の発明の「テーブル」は、本件発明の「テーブル等の家具」に相当し、以下同様に、
「脚(2)」は、「脚部」に、
「テーブル(1)」は、「天板等の家具本体」に、
「テーブルに取り付けされる」ことは、「家具本体に固定させる」ことに、
「家具側合成樹脂製取付体(3)」のリング状枠体(9)及びL字状の係合突起(11)以外の部分は、「基盤」に、
「リング状枠体(9)」は、「嵌合突起」に、
「家具側合成樹脂製取付体(3)」は、「固定部」に、
「脚側合成樹脂製取付体(7)」のリング状枠体(10)内の空間は、「嵌合孔」に、
「脚側合成樹脂製取付体(7)」は、「被固定部」に相当する。
「家具用脚の取付構造」は、「家具の脚取付構造」に相当する。
(b)甲第2号証記載の発明の「リング状枠体(9)及びL字状の係合突起(11)を下向きに突設した家具側合成樹脂製取付体(3)」と、本件発明の「有底短筒状の嵌合突起8を下向きに突設した固定部4」とは、前者のリング状枠体(9)が、第7図において短筒状に記載されたものであり、刊行物2記載事項(ウ)の「両取付体・・を・・嵌合するリング状枠体(9)(10)」で、嵌合突起といえるものであるので、「短筒状の嵌合突起を下向きに突設した固定部」で共通する。
(c)甲第2号証記載の発明の「リング状枠体(10)及びL字状の係合突起(12)を備え、家具側合成樹脂製取付体(3)のリング状枠体(9)内に挿嵌される脚側合成樹脂製取付体(7)」と、本件発明の「嵌合突起を緊密に挿嵌させる嵌合孔を備える被固定部を備える被固定部」とは、
「嵌合孔を備える被固定部を備える被固定部」で共通する。
(d)甲第2号証記載の発明の
「(2)・・L字状の係合突起(11)を下向きに突設した家具側合成樹脂製取付体(3)、
(3)・・L字状の係合突起(12)を備え・・る脚側合成樹脂製取付体(7)を備え、
(4)取付体(7)を上端に有する脚(2)を回転させることにより取付体(3)(7)を介してテーブル(1)に強固に取り付けられる」ことと、本件発明の「前記嵌合突起8の底面8aには、筒の径方向に伸びるスリット9を設けると共に、
底面8aの上面は、前記スリット9の両側端9a,9aから夫々筒周方向に上向きに緩やかに傾斜する斜面aに形成し、
前記嵌合孔10の底部11には、前記スリット9に挿嵌させ得る形状を備えて、その上端に前記斜面aに当接させる掛止部12bを設けた掛止部材12を突設し、
前記掛止部12bを前記スリット9に挿通させたうえ、前記脚部2をその軸周りに回動させると、前記掛止部12bが前記斜面aを次第に締付けて、固定部4と被固定部5とが強固に掛合される様にした」こととは、
「固定部には、一方の係合部を設け、
被固定部には、他方の係合部を突設し、
脚部をその軸周りに回動させると、両係合部が互いに係合して、固定部と被固定部とが強固に掛合される様にした」点で共通する。

一致点:
そうすると、両者は、
「テーブル等の家具の脚部を、天板等の家具本体に着脱自在に取付ける為の構造であって、
家具本体に固定させる基盤に、短筒状の嵌合突起を下向きに突設した固定部と、
脚部の上端に設けられて、嵌合孔を備える被固定部を備える被固定部とから成り、
固定部には、一方の係合部を設け、
被固定部には、他方の係合部を突設し、
脚部をその軸周りに回動させると、両係合部が互いに係合して、固定部と被固定部とが強固に掛合される様にした家具の脚取付構造。」
で一致し、次の点で相違する。

相違点1:本件発明は、短筒状の嵌合突起が「有底」であり、嵌合孔が「前記嵌合突起を緊密に挿嵌させる」ものであるのに対し、甲第2号証記載の発明はリング状枠体(9)が下方に開放するものであり、脚側合成樹脂製取付体(7)のリング状枠体(10)がリング状枠体(9)内に挿嵌されるものであり、リング状枠体(10)内の空間(本件発明の「嵌合孔」に相当するもの)が、リング状枠体(9)(本件発明の「嵌合突起」に相当するもの)を緊密に挿嵌させるものでない点。

相違点2:本件発明は、「前記嵌合突起8の底面8aには、筒の径方向に伸びるスリット9を設けると共に、
底面8aの上面は、前記スリット9の両側端9a,9aから夫々筒周方向に上向きに緩やかに傾斜する斜面aに形成し、
前記嵌合孔10の底部11には、前記スリット9に挿嵌させ得る形状を備えて、その上端に前記斜面aに当接させる掛止部12bを設けた掛止部材を突設し、
前記掛止部12bを前記スリット9に挿通させたうえ、前記脚部をその軸周りに回動させると、前記掛止部が前記斜面aを次第に締付けて、固定部と被固定部とが強固に掛合される様にした」ものであるのに対し、
甲第2号証記載の発明は、「リング状枠体(9)」(本件発明の「嵌合突起」に相当するもの)が下方に開放するものであって、底面に相当する部分を有さず、
「底面8aの上面は、前記スリット9の両側端9a,9aから夫々筒周方向に上向きに緩やかに傾斜する斜面aに形成し」た構成で無く、
一方の係合部として機能するものが「L字状の係合突起(11)」であって、「・・・筒の径方向に伸びるスリット9を設け」た構成を有さず、
他方の係合部として機能するものが「L字状の係合突起(12)」であって、「スリット9に挿嵌させ得る形状を備えて、その上端に前記斜面aに当接させる掛止部12bを設けた」ものではなく、
固定部と被固定部とが強固に掛合される態様が「掛止部12bを前記スリット9に挿通させたうえ、前記脚部をその軸周りに回動させると、前記掛止部が前記斜面aを次第に締付けて、固定部と被固定部とが強固に掛合される」ものでない点。

イ.相違点1についての判断
甲第2号証記載の発明のリング状枠体(9)は、脚(2)の上端に設けられた脚側合成樹脂製取付体(7)のリング状枠体(10)の部分を、リング状枠体(9)内に挿嵌して、テーブル(1)の裏面に脚(2)を取り付けるものであって、「有底短筒状の嵌合突起8を下向きに突設」したものではなく、当該「有底短筒状の嵌合突起8を下向きに突設」したものではないリング状枠体(9)を「有底」とすることは、前記(1)の本件特許出願前に頒布された刊行物である甲1?19号証に記載若しくは示唆されたものでない以上、当業者が相違点1に係る構成に到達することは容易ではない。
そして、本件発明は、「有底短筒状の嵌合突起8を下向きに突設」する形状とすることにより係止部が納まる空間ができるものである。

ウ.相違点2についての判断
上記イ.に記載したように、甲第2号証記載の発明のリング状枠体(9)を「有底」とすることが、当業者が容易に相当し得たことでない以上、請求人が主張するように、甲第2号証記載の発明に、甲第3号証記載の発明1,2や、甲第17号証ないし甲第19号証記載の周知技術を適用したとしても、「嵌合突起8の底面」という構成が発生しないので、「底面」を前提とする相違点2に係る構成に到達することはできず、当業者が相違点2に係る構成に到達することは容易ではない。

なお、請求人は、審判請求書7.(4)3)2-1で甲第2号証記載の発明の構成の一部として、「テーブルに固定される取付体であって、有底短筒状の嵌合突起(雄型嵌合部)を下向きに突設した取付体(3)」が開示されているとしているが、甲第2号証には、そのような事項は記載されていないので、そのような認定はできず、「第4 2.(1)イ.」の様な認定とした。
そして、相違点1,2に関して審判請求書7.(4)3)2-4-1で「311号考案の(掛止開口部)として『嵌入孔5』が『スリット9』に、『係止受体の根元を高くしてそこから他方の嵌入孔側に次第に下り傾斜になるようにした締付部8(斜面)』が『スリット9の両側端9a,9aから夫々筒周方向に上向きに緩やかに傾斜する斜面a』に、(掛止部材)として『嵌入部10を差込孔4に差し込んだとき嵌入孔5に嵌入するよう嵌入部10から外側に突設した二つの押当子11』が『斜面aに密接させる掛止部12bを設けた掛止部材12』に相当する。
したがって、510号発明に311号考案を適用することは周知技術1に周知技術2を適用することに相当し、これにより本件発明に想到することができる。」(なお、「311号考案」は、「甲第3号証記載の発明1」、「510号発明」は、「甲第2号証記載の発明」。)
との主張をしているが、上記した様に、甲第3号証記載の発明1,2や、甲第17号証ないし甲第19号証記載の周知技術を適用したとしても、「嵌合突起8の底面」という構成とすることができないので、「底面」を前提とする相違点2に係る構成に到達することはできず、該主張は採用することはできない。
また、甲第2号証記載の発明の「L字状の係合突起(11)」の配されている内側の部分を、本件発明の「嵌合突起」に対応するものとして取り扱うことも想定されるが、そのように取り扱っても、内側の部分は、スリットを有しておらず、「脚側合成樹脂製取付体(7)」のリング状枠体(10)内の空間に「緊密に挿嵌」されているとも言えないので、本件発明の「嵌合突起8を緊密に挿嵌させる嵌合孔10」や「嵌合突起8の底面8aには、筒の径方向に伸びるスリット9」などの構成が導き出せず、結局本件発明に想到することができるものとはならない。

エ.まとめ
したがって、本件発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明1,2、甲第17号証ないし甲第19号証記載の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


(3)無効理由2の具体的理由その2についての検討
ア.本件発明と甲第1号証記載の発明の対比
本件発明と甲第1号証記載の発明は、前記1.(2)の一致点で一致し、同じく相違点1,2で相違する。

イ.相違点1についての判断
甲第1号証記載の発明の支脚(3)の回転は、甲第1号証記載事項(キ)の「円形輪郭(6a)」で支障なくされているものであり、甲第1号証記載の発明の膨出部(5)(本件発明の「嵌合突起」に相当するもの)及び、凹所(12)(本件発明の「嵌合孔」に相当するもの)が、積極的な意味で回転を支障なくするための機能を要求されるものではない。
さらに、甲第1号証には、両者が相互に「緊密に挿嵌させる」ことを示唆するその他の記載も存在しておらず、さらに、前記(1)の本件特許出願前に頒布された刊行物である甲1?19号証にも、甲第1号証記載の発明の膨出部(5)及び凹所(12)を相互に「緊密に挿嵌させる」ことは示唆されていない。
そうすると、請求人が主張するように、甲第1号証記載の発明に、甲第3号証記載の発明1,2や、甲第17号証ないし甲第19号証記載の周知技術を適用したとしても、相違点1に係る構成に到達することはできず、当業者が相違点1に係る構成に到達することは容易ではない。

なお、請求人は、相違点1に関して審判請求書7.(4)3)1-2で「(雄型嵌合部)として『膨出部(5)』が『嵌合突起8』に・・・に相当する。」との主張はしているが、甲第1号証記載の発明において、凹所(12)(本件発明の「嵌合孔」に相当するもの)に膨出部(5)を「緊密に挿嵌」させること(本件発明の「嵌合突起を緊密に挿嵌させる」ことに相当すること)が容易に想到し得たとする論理の主張はしていない。

ウ.相違点2についての判断
(ア)まず、甲第1号証記載の発明の「係止片が前記開口より膨出部内へ嵌入した状態で該支脚を約90°回転させることにより、旋回した係止片が袋部内に侵入してその高位置の内底面に圧接する」は、90°旋回した状態で、係止片が内底面に圧されているものであり、係止片で圧する作用は、実質的に係止片が高位置の内底面にいたる前の傾斜面において発生するものである。
そうすると、甲第1号証記載の発明の「高位置の内底面に圧接する係止片(15a)(15a)」は、傾斜面においても内底面を圧する作用を生ずるものであるので、実質的に本件発明の「斜面に密接させる掛止部」に相当するものと認められる。

(イ)甲第3号証記載の発明1の「係止受体の根元を高くしてそこから他方の嵌入孔側に次第に下り傾斜になるようにした締付部8」は、本件発明の「緩やかに傾斜する斜面」
に相当し、以下同様に、
「押当子が雌体の締付部に密接する」は、「掛止部材」の「掛止部」が「斜面に密接」することに相当する。
そして、甲第3号証記載の発明1「係止受体の根元を高くしてそこから他方の嵌入孔側に次第に下り傾斜になるようにした締付部8」は、甲第1号証記載の発明の「袋部の内底面は周方向で開口近接側よりも同遠方側が高位置にあり、傾斜面をな」す部分と同様に、締め付ける(換言すると圧接する)機能を有するものであり、甲第1号証記載の発明の傾斜面を甲第3号証記載の発明1の様な「次第に・・傾斜になるようにした」もの、すなわち、緩やかに傾斜する斜面として構成することは、当業者が容易になし得ることである。
また、そのことにともない、甲第1号証記載の発明の「係止片が・・・袋部内に進入してその高い位置の内底面に圧接する」動作が、緩やかに傾斜する斜面によって、「掛止部が前記斜面を次第に締付け」るものとなることも自明である。

(ウ)そうすると、甲第1号証記載の発明の傾斜面を甲第3号証記載の発明1の様な「次第に・・傾斜になるようにした」ものとして、相違点2に係る構成に到達することは当業者が容易に想到し得たことである。

(エ)なお、被請求人は、本件発明の構成要件Gの「回動させると,前記掛止部12bが前記斜面aを次第に締め付けて,前固定部4と被固定部5とが強固に係合される様にしたこと」に関して、答弁書及び、平成24年6月22日付け被請求人口頭審理陳述要領書において、「『傾斜面に係止片を止めて圧接する』構成であり,また『脚部2の回転角度に制限のないこと』,『圧接する力は,脚部2の回転角度によって決定される』ものとして特定されるものである。」旨主張するとともに、平成24年6月22日付け被請求人口頭審理陳述要領書6(2)ア(ア)で、
「[1]・・・本件発明は,構成要件Eにより『底面8aの上面は,筒周方向に上向きに穏やかに傾斜する斜面aに形成し』ている。・・・
そして,前固定部4と被固定部5とが強固に係合されるとき,すなわち回転させることができなくなったときには,掛止部12a(係止片)は斜面a(傾斜面)で停止し圧接された状態となる。・・・
したがって,本件発明の構成要件Gは,『傾斜面に係止片を止めて圧接する』構成であると特定される。
[2]・・・本件発明においては,斜面aは構成要件Eにあるように,スリット9の両側端9aから始まり,各斜面aは,角度で表せば180°の範囲で傾斜している。・・・
本件発明では,脚部2が180゜回転すると掛止部12aはスリットを通過して外れてしまう。そのため,『回転角度に制限のない』とは,0?180゜すべてではないものの,この間の幅広い角度範囲で回転可能であるとの意である。
これに対し,甲1,3,18号証は,掛止部を特定の場所に収める構造となっており,本件発明とは明確に区別されるのであり,かかる意味で,本件発明は『回転角度に制限のない』ものである。
[3]・・・前記[1][2]の通り,本件発明では,構成要件Eにより,脚部2を回動させることにより上向きに穏やかに傾斜する斜面aを掛止部12bが昇ってゆくことによって次第に係止片と斜面aとを圧接する力が上昇していき,その結果,固定部4と被固定部5とが徐々に締め付けられて強固に掛合される様になっているのである。
したがって,『圧接する力』は,脚部2を回動させる程度すなわち回転角度によって決まるものである。」
との論理を展開しているが、本件特許の特許請求の範囲では、[1]の「回転させることができなくなったとき」が、必ず傾斜面上で発生する様な特定はなされておらず、[2]の「・・・各斜面aは,角度で表せば180°の範囲で傾斜している。」ことも記載されていない、そうすると[1]、[2]、及び、[1][2]を前提とする[3]は、特許請求の範囲に基づかない主張といえ、採用出来るものではない。

エ.まとめ
したがって、当業者が相違点1に係る構成に到達することは容易ではないので、本件発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明1,2、甲第17号証ないし甲第19号証記載の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


(4)無効理由2の具体的理由その3についての検討
ア.本件発明と甲第3号証記載の発明2の対比

(a)甲第3号証記載の発明2の「テーブルの足C」は、本件発明の「テーブル等の家具の脚部」に相当し、以下同様に、
「テーブル板A」は、「天板等の家具本体」に、
「基材3」は、「基盤」に、
「基材9」は、「被固定部」に、
「嵌入孔5」は、「スリット」に、
「押当子11a」は、「係止部材」に、
「板状の基材9に雌体1の差込孔4に回転自在に嵌入できるようにした嵌入部10を環状に立設し、嵌入部10の周縁にテーブル側の嵌入孔5に嵌入する二つの押当子11」は、「スリットに挿嵌させ得る形状を備えて、その上端に前記斜面aに当接させる掛止部を設けた掛止部材」に、
「押当子11」は、「係止部材」に、
「締付部8」は、「斜面」に、
「連結具」の構造は、「家具の脚取付構造」に相当する。
(b)甲第3号証記載の発明2の嵌入孔5を形成する部分である「基材3」と、本件発明のスリット9を設ける部分である「家具本体1に固定させる基盤6に、有底短筒状の嵌合突起8を下向きに突設した固定部4」の「嵌合突起8の底面8a」とは、
「家具本体に固定させる基盤」で共通する。
(c)甲第3号証記載の発明2の「雌体1は板状の基材3の中央部に差込孔4を形成し、差込孔4の外周の対向位置に同差込孔4に開口する二つの嵌入孔5を形成し、夫々の嵌入口5の周縁に二つの係止受体6を突設し、夫々の係止受体6の近くにその根元を高くしてそこから他方の嵌入孔側に次第に下り傾斜になるようにした締付部8」と、本件発明の「スリット9の両側端9a,9aから夫々筒周方向に上向きに緩やかに傾斜する斜面a」とは、
「上向きに緩やかに傾斜する斜面」で共通する。
(d)甲第3号証記載の発明2の「基材9」と、本件発明の「嵌合孔10の底部11」とは、前者が「足Cに対応する連結部材13の上端に設けられる」ものであり、後者も「脚部2の上端に設けられ・・る嵌合孔10」の部分であるので、
「脚部の上端」の部分である点で共通する。

一致点:
そうすると、両者は、
「テーブル等の家具の脚部を、天板等の家具本体に着脱自在に取付ける為の構造であって、
家具本体に固定させる基盤と、
脚部の上端に設けられる被固定部とから成り、
家具本体に固定させる基盤には、スリットを設けると共に、
基盤の上面は、上向きに緩やかに傾斜する斜面に形成し、
脚部の上端には、前記スリットに挿嵌させ得る形状を備えて、その上端に前記斜面に当接させる掛止部を設けた掛止部材を突設し、
前記掛止部を前記スリットに挿通させたうえ、前記脚部をその軸周りに回動させると、前記掛止部が前記斜面を次第に締付けて、固定部と被固定部とが強固に掛合される様にした家具の脚取付構造。」
で一致し、次の点で相違する。

相違点1:本件発明は、家具本体1に固定させる基盤6に「有底短筒状の嵌合突起8を下向きに突設した固定部4」を備え、
脚部2の上端に「前記嵌合突起8を緊密に挿嵌させる嵌合孔10を備える被固定部5」を備え、
スリット9は、基盤6の固定部4の「嵌合突起8の底面8a」に設けるのに対し、甲第3号証記載の発明2は、そのようなものでない点。

相違点2:本件発明は、スリット9が「筒の径方向に伸びる」ものであるのに対し、甲第3号証記載の発明2は、「差込孔4の外周の対向位置」の「同差込孔4に開口する二つの嵌入孔5」である点。

相違点3:本件発明は、斜面aに当接させる掛止部12bを設けた掛止部材12が「嵌合孔10の底部11」に突設しものであるのに対し、甲第3号証記載の発明2は、「雄体2は板状の基材9に・・・嵌入部10を環状に立設し、嵌入部10の周縁にテーブル側の嵌入孔5に嵌入する二つの押当子11を形成してなる」ものである点。

イ.相違点1?3についての判断
(ア)まず、請求人は、相違点に関して審判請求書7.(4)3)4-4で、
「4-4-1・・・311号考案2において、雄体と雌体とを置換すること、つまり、雌体1を雄体とし、雄体2を雌体とすることにより、本件発明に想到することができる。
すなわち、テーブル側の雌体1を雄体とすることは、テーブル側に嵌合突起を設けることを意味しており、他方、脚側の雄体2を雌体とすることは、脚側に前記嵌合突起に対応する嵌合孔を設けることを意味する。そして、押当子11(掛止部材)が締付部8(斜面)を締め付けるためには、テーブル側固定部の底面に押当子11(掛止部材)が通過するためのスリット(掛止開口部)が必要となる。
以上のとおり、311号考案2において、雄体と雌体とを置換することにより、テーブル側の連結部材に嵌合突起(雄型嵌合部)が設けられるとともに、足側の連結部材に嵌合孔(雌型嵌合部)が設けられることになり、さらに、固定側の底面に押当子11(雄型嵌合部)が通過するためのスリット(掛止開口部)が設けられることになるから、本件発明に想到することができる。
4-4-2・・・
(2)周知技術の適用
また、前記のとおり、脚を回転させることにより脚を天板に連結させる取付構造においては、足側に雄体を設け、反対側の天板に雌体を設けることが周知技術(周知技術1)であるところ、回転する側にねじこまれる雄体を設けることが、部材に加えられる力の方向と部材自体の動きが一致するから自然であるといえ、甲第1号証の教示することに照らせば、この周知技術を適用する動機付けがあるといえる。」(なお、「311号考案2」は、「甲第3号証記載の発明2」。)
と主張しているので、そのことについて検討する。

(イ)甲第3号証記載の発明2は、「雌体1は・・・嵌入孔5を形成」、「雄体2は・・・二つの押当子11を形成」したものであり、その雄体と雌体とを置換すると、「嵌入孔5」や「押当子11」は、一緒に置換されることになり、テーブル板A側に「二つの押当子11」が、足C側に「嵌入孔5」(本件発明の「スリット」に相当するもの)が位置するものとなってしまうので、相違点1に係る構成に到達することはできない。
さらに、「脚を回転させることにより脚を天板に連結させる取付構造においては、足側に雄体を設け、反対側の天板に雌体を設けることが周知技術(周知技術1)」であり、「回転する側にねじこまれる雄体を設けることが、部材に加えられる力の方向と部材自体の動きが一致するから自然である」ことが、甲第1号証で教示されていたとしても、上記「二つの押当子11」、「嵌入孔5」が位置する部材に変わりはない。
したがって、該主張は採用することはできない。

さらに、前記(1)の本件特許出願前に頒布された刊行物である甲1?19号証には、本件発明との相違点1?3係る構成に到達することを示唆する記載は存在しておらず、示唆もされていない。
そうすると、甲第3号証記載の発明に、甲第4号証ないし甲第6号証に示唆された設計事項である雄体と雌体の配置を入れ替えを行うこと、または、甲第1号証の教示することに照らして、雄型嵌合部と雌型嵌合部とを嵌め合わせる嵌め合い構造の周知技術1を適用することにより、相違点1?3に係る構成に到達することはできず、当業者が相違点1に係る構成に到達することは容易ではない。

ウ.まとめ
したがって、本件発明は、甲第3号証に記載された発明1,2、甲第4号証ないし甲第6号証に示唆された設計事項、甲第1号証の教示することに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第4 むすび
以上のとおり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2012-08-14 
出願番号 特願平6-154479
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A47B)
P 1 113・ 113- Y (A47B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 陽渋谷 知子  
特許庁審判長 鈴野 幹夫
特許庁審判官 中川 真一
横井 巨人
登録日 2003-09-19 
登録番号 特許第3474265号(P3474265)
発明の名称 家具の脚取付構造  
代理人 中上 幹雄  
代理人 石井 久夫  
代理人 高橋 淳  
代理人 松波 祥文  
代理人 藏冨 恒彦  
代理人 石井 雄介  

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