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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1274909 |
審判番号 | 不服2011-26550 |
総通号数 | 163 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-07-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-12-08 |
確定日 | 2013-06-04 |
事件の表示 | 特願2007-518676「液浸フォトリソグラフィシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月12日国際公開、WO2006/003373、平成20年 2月14日国内公表、特表2008-504708〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2005年6月22日(優先権主張2004年7月1日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年5月9日付けで手続補正がなされたが、同年7月29日付けで拒絶査定がなされた。 これに対し、平成23年12月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。 その後、平成24年6月15日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年12月17日に回答書が提出された。 第2 平成23年12月8日付けの手続補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成23年12月8日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正後の請求項に記載された発明 平成23年12月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、特許請求の範囲の減縮を目的として、以下のように補正された。 「ウェハーステージと、 前記ウェハーステージ上に配置されるウェハーに像を投影するレンズと、 前記レンズと前記ウェハーの間に液浸液体を供給する液浸流体供給手段と、 供給された液浸流体について前記液浸液体の成分で飽和した安定した流れのパージ流体を運搬するパージ流体運搬手段とを備えた液浸リソグラフィシステム。」 そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。 2.先願発明 本願の優先日前の優先日を有する外国語特許出願であって、本願の優先日後に出願公開がされ、その外国語特許出願に係る発明をした者と本願の発明者が同一ではなく、本願の出願の時において、その出願人が本願出願人と同一でもない特願2006-548258号(以下「先願」という。)(国際出願番号PCT/EP2005/000246、優先日2004年1月20日、特表2007-519238号公報参照)の国際出願日における明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0001】 本発明は、高度に集積された集積電気回路や他の微細構造化構成部品の製造に使用されるマイクロリソグラフィ投影露光装置に関する。特に、本発明は、液浸操作のために構成された投影露光装置に関する。本発明はさらに、投影レンズの結像特性を決定するための測定装置を提供する。 【背景技術】 【0002】 集積電気回路や他の微細構造化構成部品は通常、例えばシリコンウェハなどの適切な基板に複数の構造化された層を設けることによって製造される。層を構造化するために、それらは最初に、例えば深紫外線(DUV)スペクトル範囲の光といった所定の波長範囲の光に感光性であるフォトレジストで被覆される。被覆されたウェハはその後、投影露光装置で露光される。マスクに配置された構造から構成されるパターンが、投影レンズによってフォトレジスト上に結像される。結像スケールは一般に1:1未満であるので、そうした投影レンズはしばしば縮小レンズと呼ばれる。」 (2)「【0006】 解像度を小さくする別の手法は、像側の投影レンズのうちの最終レンズと露光されるフォトレジストまたは別の感光層との間に位置する空間に、高屈折率を有する液浸液を導入するという概念に基づく。液浸動作用に設計されており、従って液浸レンズとも呼ばれる投影レンズは、例えば1.3または1.4といった1より大きい開口数を達成できる。しかし液浸は、高い開口数を、従って改善された解像度を可能にするばかりでなく、焦点深度にも有利な効果を及ぼす。焦点深度が大きくなればなるほど、投影レンズの像面におけるウェハの精確な位置決めの必要性はそれほど高くなくなる。」 (3)「【0012】 液浸空間における温度の不均一を生じる原因は多様である。液浸液の加熱の主要な理由は、液浸液による投影光の吸収である。たとえわずかな百分率にすぎない投影光が液浸液によって吸収されたとしても、それは、短波長長の、従ってエネルギーに富んだ投影光のために、比較的高い熱入力を生じる。液浸液の冷却につながる作用は、周囲ガスとの境界面における液浸液の蒸発である。加えて、液浸液の温度は、周囲の固体との間での熱移動によって影響される。それらの物体は、例えば、投影レンズの加熱した最終レンズ、そのハウジングまたは露光されるウェハである。」 (4)「【0036】 本発明のさらなる態様によれば、液浸空間を包囲しそれと流体連通している外室内で液浸液の蒸気相が多くなるという、液浸液の蒸発が完全にまたは少なくとも部分的に防止される。 【0037】 この外室内で液浸液の蒸気相が多くなることによって、外室内の蒸気圧は、ほとんどいずれの液浸液も液相から蒸気相に移行できないほどまで増加される。理想的な場合、外室内の蒸気相の圧力は、外室内で支配的な温度時の蒸気相の飽和蒸気圧に少なくともほぼ等しいように調整される。 【0038】 この場合、蒸気相から凝縮すると同時に、まさに同じ量の液浸液が、液浸液と蒸気相との間の境界面において蒸発する。この平衡の結果、境界面の近傍における液浸液の温度は不変のままである。 【0039】 外室において液浸液の蒸気相を産生するために、外室に液浸液の蒸気相を導入する供給装置を設けてもよい。」 (5)「【0049】 図1は、相当に簡略化した表現で10によって全体として指示されたマイクロリソグラフィ投影露光装置のメリジオナル断面を示している。投影露光装置10は、投影光13を生成するための照明システム12を含み、後者は光源14、16で指示された照明光学系と開口18を備える。例示された実施形態において、投影光13は193nmの波長λを有する。投影露光装置10はまた、多数のレンズを包含する投影レンズ20も含み、そられのうちの一部だけが簡明の理由で図1に例として示されており、それらはL1?L5によって指示されている。 【0050】 投影レンズ20は、投影レンズ20の物体平面22に配置されたマスク24を縮尺して感光層26上に結像させる働きをする。例えばフォトレジストである層26は、投影レンズ20の像面28に配置され支持体30に適用される。 【0051】 支持体30は、トラバース装置によって(詳細に図示されていない様態で)像面28に平行に移動可能なたらいのような上方に開いた容器32の底部に固定されている。容器32は、投影レンズ20の像側の最終レンズL5が投影露光装置10の動作中に液浸液34に浸漬される液位まで液浸液34が満たされている。レンズの代わりに、投影レンズ20の像側の最終光学素子は、例えば平行平面端板とすることもできる。液浸液34の屈折率は、感光層26の屈折率におおよそ一致する。193nmまたは248nmの波長を有する投影光の場合、例えば、高純度脱イオン水が液浸液34として可能である。157nmといったより短い波長では、例えば、Demnum(登録商標)やFomblin(登録商標)を含む商品名で市販されているペルフルオロポリエーテル(PEPE)が適切である。 【0052】 容器32は入口管36と出口管38によってコンディショニングユニット40に接続されており、その中には循環ポンプおよび、液浸液34を浄化するためのフィルタを含む要素が収容されている。コンディショニングユニット40、入口管36、出口管38、容器32は一緒に、42で指定された液浸装置を形成し、そこでは液浸液34が浄化され一定の温度に維持されながら循環する。液浸液34の温度は、投影レンズ20による結像が基準温度から逸脱した場合に焦点合わせエラーやイメージシェル欠陥によって損なわれるので、できる限り正確に設定されなければならない。そのような結像欠陥は転じて、露光に使用可能なプロセス窓のサイズの縮小につながることがある。」 (6)「【0071】 図9は、図1に図示されたものに類似の投影露光装置10’の一部を示している。しかし、投影露光装置10’の場合、液浸液34が位置する容器32は、まわり全体が気密式にシールされた室78に収容されている。室78は投影レンズ20が通る開口82を有するフード状カバー80によって実質的に形成されている。 【0072】 加えて、投影露光装置10’は、液浸液34用のタンク86と蒸発器88を含む要素が収容されている供給装置84を含む。供給装置84は、蒸気圧を増加させるために室78に蒸気相の液浸液を導入する機能を有する。この目的で、タンク86から引き出された液浸液が蒸発器88で蒸発し、コンジット90によって室78に供給される。液浸液の蒸気相は、出口92を通じてバルブ制御式に室78から吐出される。 【0073】 室78内部の増加した蒸気圧によって、少量の液浸液34だけが液相の液浸液34と蒸気相との間の境界面47で蒸発する。室78において支配的な温度に飽和蒸気圧が達すると、周囲の蒸気相から逆に凝縮するのとまったく同じ量の液浸液34が境界面47において蒸発する。従って、室78において飽和蒸気圧に達すると、容器32に位置する液浸液34を冷却するいかなる蒸発熱も消費されない。このようにして、図8に図示された実施形態によるものと類似の効果が、蒸発バリヤ72の備えを要することなく得られる。従って、投影露光装置10’は、液浸液34を閉じた循環で液浸空間44内を通して導くことができる。」 (7)「【図1】 」 (8)「【図9】 」 これらの記載事項及び図面を含む先願明細書等全体の記載並びに当業者の技術常識を総合すれば、先願明細書等には、以下の発明が記載されている。 「シリコンウェハ等の支持体(30)を被覆するフォトレジスト層(26)上の像面(28)に像を結像させる投影レンズ(20)を有し、 支持体は上方に開いた容器(32)の底部に固定され、容器は、投影レンズの像側の最終レンズ(L5)が液浸液(34)に浸漬される液位まで液浸液が満たされており、 容器は入口管(36)と出口管(38)によってコンディショニングユニット(40)に接続されており、その中には循環ポンプおよび、液浸液を浄化するためのフィルタを含む要素が収容され、コンディショニングユニット、入口管、出口管、容器は一緒に液浸装置(42)を形成し、 液浸液用のタンク(86)と蒸発器(88)を含む要素が収容されている供給装置(84)をさらに含み、供給装置は、蒸気圧を増加させるためにまわり全体が気密式にシールされた室(78)に蒸気相の液浸液を導入する機能を有し、タンクから引き出された液浸液が蒸発器で蒸発し、コンジット(90)によって該室に供給され、該室が飽和蒸気圧に達し、液浸液の蒸気相は出口(92)を通じてバルブ制御式に該室から吐出される、 投影露光装置(10’)。」(以下「先願発明」という。) 3.対比 補正発明と先願発明を対比する。 (1)先願発明の「支持体等のシリコンウェハ」、「像を結像させる投影レンズ」、「液浸装置」及び「投影露光装置」は、それぞれ本願発明の「ウェハー」、「像を投影するレンズ」、「液浸流体供給手段」及び「液浸リソグラフィシステム」に相当する。 ここで、各図面を参酌すれば、先願発明が本願発明の「ウェハーステージ」に相当する構成を有することは明らかである。 また、先願発明の「液浸装置」が投影レンズとシリコンウェハの間に液浸液体を供給することも明らかである。 (2)同様に、先願発明の「蒸気相の液浸液を導入する機能を有」する「供給装置」は、該供給装置によって「液浸液」が「まわり全体が気密式にシールされた室」に「供給され」ることによって、「該室が飽和蒸気圧に達」することから、補正発明の「供給された液浸流体について前記液浸液体の成分で飽和した」「パージ流体を運搬するパージ流体運搬手段」に相当する。 (3)補正発明の「安定した流れのパージ流体」という構成は、本願明細書の段落【0023】に「格納装置22内のパージ流体の安定した流れを維持するために、パージ流体排出システムは、格納装置22の出口48と通ずる導管46を経由して格納装置22からのパージ流体を引き出すことで提供される。」と記載されているとおり、「格納装置22の出口48と通ずる導管46を経由して格納装置22からのパージ流体を引き出すこと」(以下「特定構成」という。)で実現されているものと認められる。 そこで、上記特定構成と先願発明を対比すると、先願発明の「まわり全体が気密式にシールされた室」及び「出口」は、それぞれ特定構成の「格納装置」及び「出口」に相当する。また、先願発明の「出口」と通ずる「バルブ」が補正発明の「出口と通ずる導管」に相当する構成を有することは明らかである。 すなわち、先願発明は、補正発明の「安定した流れのパージ流体」という構成を実現するための上記特定構成を有するから、補正発明の「安定した流れのパージ流体」に相当する構成を有することは明らかである。 したがって、両者は、 「ウェハーステージと、 前記ウェハーステージ上に配置されるウェハーに像を投影するレンズと、 前記レンズと前記ウェハーの間に液浸液体を供給する液浸流体供給手段と、 供給された液浸流体について前記液浸液体の成分で飽和した安定した流れのパージ流体を運搬するパージ流体運搬手段とを備えた液浸リソグラフィシステム。」 の点で一致し、相違点はない。 4.判断 してみると、補正発明は先願発明と同一である。 5.小括 よって、補正発明は、先願発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 なお、請求人が回答書(前記「第1 手続の経緯」参照)に添付した補正案の内容を参酌しても、上記判断に変わりはない。 6.むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成23年12月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成23年5月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「ウェハーステージと、 前記ウェハーステージ上に配置されるウェハーに像を投影するレンズと、 前記レンズと前記ウェハーの間に液浸液体を供給する液浸流体供給手段と、 供給された液浸流体について前記液浸液体の成分で飽和したパージ流体を運搬するパージ流体運搬手段とを備えた液浸リソグラフィシステム。」(以下「本願発明」という。) 2.先願発明 先願、先願明細書等及び先願発明は、前記「第2」の「2.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記「第2」で検討した補正発明から、パージ流体に関して「安定した流れの」という特定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに上記特定事項を含む補正発明が、上記のとおり、先願発明と同一なのであるから、同様の理由により、本願発明と先願発明は同一である。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-01-08 |
結審通知日 | 2013-01-10 |
審決日 | 2013-01-23 |
出願番号 | 特願2007-518676(P2007-518676) |
審決分類 |
P
1
8・
161-
Z
(H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 久保田 創 |
特許庁審判長 |
神 悦彦 |
特許庁審判官 |
森林 克郎 伊藤 昌哉 |
発明の名称 | 液浸フォトリソグラフィシステム |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 熊倉 禎男 |