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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1274936
審判番号 不服2011-23628  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-02 
確定日 2013-06-06 
事件の表示 特願2009- 19425「通信制御方法および通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月12日出願公開、特開2010-178126〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年1月30日の出願であって、平成23年8月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年11月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、当審において平成25年1月21日付けで拒絶理由通知がなされ、平成25年3月22日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年3月22日付け手続補正書により補正された請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「第1端末と通信可能なターミナルアダプタと、前記ターミナルアダプタと接続され前記第1端末と第2端末とのセッション制御を行って前記第1端末と前記第2端末との通信を制御する制御装置と、を含む通信システムが行う通信制御方法であって、
前記制御装置が、前記第2端末から前記第1端末への接続要求を受信すると、当該制御装置が、当該接続要求を、前記ターミナルアダプタに送信する接続要求通信ステップと、
前記ターミナルアダプタが前記制御装置から前記接続要求を受信した際に、前記ターミナルアダプタが、前記第1端末が応答不可な状態であるかを確認する確認ステップと、
前記第1端末が応答不可な状態であることが確認されると、前記ターミナルアダプタが、前記第1端末が応答不可な状態である旨の状態情報を、前記制御装置に送信する状態情報通信ステップと、
前記制御装置が、前記ターミナルアダプタから前記状態情報を受信すると、前記制御装置が、前記ターミナルアダプタと前記第2端末との通信路を確立することなく、前記第2端末に、前記第1端末が応答不可な状態である旨の応答不可情報を送信する処理ステップと、を含む通信制御方法。」

3.引用例発明
当審で通知した拒絶理由に引用された特開2004-312357号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

イ.「【0047】
【発明の実施の形態】
図1は、本実施の実施形態に係る音声提供装置及びインターネット電話システムの概略構成を示したブロック図である。図1に示すように、インターネット電話システム1は、電話装置2、電話装置3、情報通知装置であるSIPサーバ4、音声提供装置である音声サーバ5、ISP(Internet Service Provider)7、及びISP8から成り、それぞれインターネット9に接続されている。
【0048】
なお、インターネット電話システム1では、複数のSIPサーバや音声サーバ、複数の複数の電話装置が接続されているが、説明を簡略化するために図示を省略している。また、図1ではインターネット9に接続するためのモデムやルータなどの機器の表示を省略している。さらに、インターネット電話の標準プロトコルには、ITU-T H.323、SIP(Session Initiation Protocol)、 MGCP(ITU-T H.248)などがあり、いずれも本発明に適用可能であるが、以下の説明ではプロトコルとしてSIPを用いた場合について説明する。加えて、図1では、SIPサーバ4と、音声サーバ5と、を別の装置として表示したが、両サーバの機能を備えた1つのサーバがインターネット9に接続された構成であっても良い。
【0049】
電話装置2、電話装置3、SIPサーバ4、及び音声サーバ5には、電話番号及びIPアドレスが割り当てられている。
【0050】
電話装置2及び電話装置3は、インターネット電話の端末である。ユーザは、電話装置2
に電話装置3の電話番号を入力すると、インターネット9を介して電話装置2と電話装置3との間で通信することができる。もちろん、ユーザは、電話装置3に電話装置2の電話番号を入力しても、電話装置3と電話装置2との間で通信できる。
【0051】
電話装置2は、電話機11及びVoIPアダプタ12を備えている。また、電話装置3は、電話機21及びVoIPアダプタ22を備えている。なお、電話装置2及び電話装置3において、電話機とVoIPアダプタとは、別々の構成であっても良いし、一体型の構成であっても良い。また、電話機とVoIPアダプタとが別々の構成の場合は、従来の電話機(公衆交換電話網の電話機)をVoIPアダプタに接続して使用することもできるし、専用の電話機を使用することもできる。
【0052】
電話機11及び電話機21は、ユーザが相手と通信(通話)するための装置である。VoIPアダプタ12及びVoIPアダプタ22は、他の電話装置から送信されたパケット単位の音声データを電話機で再生できるように復元して電話機11または電話機21へ出力する。また、VoIPアダプタ12及びVoIPアダプタ22は、電話機11または電話機21から送られてきた音声データをパケット単位に分割して、別の電話装置へ送信する。さらに、VoIPアダプタ12及びVoIPアダプタ22は、SIPサーバ4や音声サーバ5から送信されたトーンや音声メッセージなどの音声データを、電話機の受話器やスピーカで再生できるように復元して電話機11または電話機21へ出力する。
【0053】
SIPサーバ4は、ネットワーク通信手段であるネットワークインタフェース31、管理手段である記憶部32、及び制御手段である制御部33を備えたDNSサーバの一種であり、電話番号とIPアドレスとの対応関係を記述したデータベースなどを記憶部32で記憶・管理している。すなわち、SIPサーバ4は、インターネット電話の利用を登録した電話装置やサーバに関する情報を管理する登録装置データベースと、利用者として登録したユーザに関する情報を管理するユーザデータベースと、インターネット電話を現在利用可能な電話装置を管理する有効電話データベースと、を記憶部32で記憶している。SIPサーバ4の制御部33は、これらのデータベースを管理しており、クライアント(電話装置など)からの要求に応じて、登録装置データベース、ユーザデータベース、及び有効電話データベースを参照し、電話番号に対応するIPアドレスをクライアントに通知したり、電話番号に対応するIPアドレスが割り当てられた装置を呼び出したりする。
【0054】
音声サーバ5は、ネットワーク通信手段であるネットワークインタフェース41、入力部42、記憶手段である記憶部43、及び制御部44を備えている。音声サーバ5は、入力部42などから入力されたトーンや音声メッセージなどの音声データを記憶部43で記憶している。音声サーバ5の制御部44は、電話装置2,3やSIPサーバ4からの要求に応じて音声サービスとして様々な音声データを提供する。音声サーバ5が提供するサービスには、例えば電話装置に対して、リングバック時やビジー時に出力する音声の提供サービスや、各種の案内を行う音声サービス(番号変更案内、番号不使用案内、電話装置の応答無し案内、話し中案内など)などがある。」

ロ.「【0061】
次に、インターネット電話システム1を使用する時の各装置の基本的な動作を説明する。なお、以下の説明では、電話装置2から電話装置3へ電話をかける場合について説明し、便宜上、電話装置2を発信側電話装置2、電話装置3を受信側電話装置3と称する。
【0062】
[初期設定時]
ユーザは、電話装置2の初期設定時にはインターネット9に電話装置を接続し、SIPサーバ4と通信して所定の操作を行う。SIPサーバ4は、この操作に伴う信号を受信すると、この電話装置2に電話番号を割り当てる。そして、SIPサーバ4は、ユーザの電話装置2に割り当てた電話番号と、この操作の際に電話装置2が送信する電話装置2の情報などを関連づけて登録装置データベースに登録する。また、SIPサーバ4は、インターネット電話システム1の利用者としてユーザが登録を行ったユーザ情報をユーザデータベースに登録する。この時、SIPサーバ4はユーザの登録時にユーザの声を入力させて、声でユーザを判別できるようにユーザの声紋をユーザデータベースに登録しても良い。
【0063】
SIPサーバ4は、電話装置2の登録が終了すると、電話装置2へユーザID、パスワード及びSIPサーバ4の情報を送信する。電話装置2のVoIPアダプタ12の制御部57は、この情報を記憶部55に書き込む。この書込みは、制御部57が自動的に行っても良いし、SIPサーバ4から送信された情報に基づいてユーザが操作部56から入力しても良い。
【0064】
なお、ユーザは、電話装置3についても同様に初期設定することで、インターネット電話システム1を利用して他の装置と通信できる。
【0065】
[使用時]
ユーザが初期設定を行った後に電話装置2をインターネット9に接続すると、電話装置2はSIPサーバ4に対して、通信可能になったことを通知する情報を送信する。SIPサーバ4は、この情報を有効電話データベースに登録する。すなわち、ユーザが電話装置2の図外の電源スイッチをオンにしてインターネット9に接続すると、電話装置2のVoIPアダプタ12は、その旨を伝える信号である利用可能信号をSIPサーバ4へ送信する。SIPサーバ4は、この利用可能信号を受信すると、登録装置データベース、ユーザデータベースを参照して電話装置2が利用可能であることを確認し、有効電話データベースにこの電話装置2の電話番号及びIPアドレスを登録する。そして、SIPサーバ4は、他の電話装置から電話装置2へ接続要求があった場合、この有効電話データベースを参照する。これにより、SIPサーバ4は、接続要求のあった電話装置が利用可能な状況か否かを即座に判断する。
【0066】
次に、ユーザが発信側電話装置2の電話機11の操作部46から受信側電話装置3の電話番号を入力すると、発信側電話装置2はSIPサーバ4へこの電話番号を含む電話番号情報を送信する。SIPサーバ4は、この電話番号情報を受信すると、前記の有効電話データベースや登録装置データベースなどの検索や、受信側電話装置3のビジー中、リングバック中などの動作の状況確認などを行い、その結果に応じた状況連絡信号を発信側電話装置2や音声サーバ5へ送信する。なお、受信側電話装置3がビジー中、リングバック中などの状況は、有効電話データベースに逐次記録されるように構成しておくことで、SIPサーバは有効電話データベースを確認するだけで、電話番号情報に対応する電話装置の状況を確認することができる。
【0067】
発信側電話装置2は、受信側電話装置3がインターネット9に接続されて有効電話データベースに登録されていると、SIPサーバ4から受信側電話装置3のIPアドレス情報を取得して、この情報に基づいて発信側電話装置2と受信側電話装置3とが通信できるようになる。ここで、ユーザは、発信側電話装置2に対して、SIPサーバ4を介さず、直接信号のやりとりをして通信するように設定することができる。また、ユーザは、発信側電話装置2と受信側電話装置3との通信を、SIPサーバ4を介して行うように設定することもできる。なお、以下の説明では、ユーザがSIPサーバ4を介して通信するように設定した場合について説明する。
【0068】
次に、本発明の実施形態に係るインターネット電話システム1の特徴的な機能や動作について説明する。なお、以下の説明では、主に発信側電話装置2について説明するが、受信側電話装置3も当然同様の機能を備え、同様の設定を行うことができる。
【0069】
[第1実施形態]
第1実施形態では、VoIPアダプタ12,22が請求項1に記載のインターネット電話装置に相当する。また、電話機11(21)とVoIPアダプタ12(22)とを一体化した構成が請求項2に記載のインターネット電話装置に相当する。さらに、電話機11(
21)とVoIPアダプタ12(22)とを別の装置とした構成が請求項3に記載のインターネット電話装置に相当する。
【0070】
発信側電話装置2及び受信側電話装置3は、電話がかかってきた時に受話器から出力するトーンや音声メッセージとして、好みの音声を音声サーバから取得しておくことができる。例えば、発信側電話装置2のユーザは、ダイヤル時、ビジー時、リングバック時など状況に応じて受話器から出力させる音声として、音声サーバ5から提供されている効果音、動物の鳴き声、人の声、音楽など様々な音声データの中から好みの音声を音声サーバ5からダウンロードして、VoIPアダプタ12の記憶部55に記憶させることができる。そして、発信側電話装置2のユーザは、VoIPアダプタ12の操作部56から所定の設定を行うことで、記憶部55に記憶させた音声データを、電話機11の呼び出し音出力部43や受話器42からトーンなどの代わりとして、相手先の電話装置の状況に応じた音声を出力させることができる。
【0071】
具体的には、SIPサーバ4は、発信側電話装置2から電話番号情報を受信すると、受信側電話装置3の状況などに応じた状況連絡信号を発信側電話装置2へ送信する。発信側電話装置2は、この状況連絡信号に応じて音声データを電話機11の記憶部55から読み出して、電話機11の呼び出し音出力部43や受話器42から出力する。
【0072】
また、発信側電話装置2のユーザは、ダウンロードした音声データをVoIPアダプタ12の記憶部55に記憶させても、記憶部55の空きサイズに余裕がある場合などには、さらに音声サーバ5から音声メッセージをダウンロードして記憶部55に記憶させることができる。なお、ダウンロードする音声メッセージは、例えば、「電話をかけた相手の装置がインターネットに接続されていないため、通信できません。」というような相手の電話の状況を通知する内容のものでも良いし、「呼び出し中です。」というようなリングバックトーンの代わりをする内容のものであっても良い。」

ハ.「【0087】
図4は、発信側電話装置がダウンロードした音声データを出力する手順を説明するためのフローチャートである。図4に示すように、発信者は、発信側電話装置2の電話機11の操作部46を操作して、受信側電話装置3の電話番号を入力する(s31)。電話機11の制御部47は操作部46から入力された電話番号情報をVoIPアダプタ12へ送信し、VoIPアダプタ12の制御部57は音声サーバ5の電話番号情報を、ネットワークインタフェース52及びインターネット9を介してSIPサーバ4へ送信する(s32)。
【0088】
SIPサーバ4の制御部33は、この電話番号情報を受信すると、記憶部32の有効電話データベースや登録装置データベースを検索して、問い合わせのあった電話番号が登録されているか否かを確認する(s41)。SIPサーバ4の制御部33は、この電話番号が有効電話データベースに登録されていない場合や、登録装置データベースに特定のメッセージを通知するよう情報が登録されている場合には、その状況に応じて状況連絡信号を発信側電話装置2へ送信する。一方、SIPサーバ4の制御部33は、この電話番号が有効電話データベースに登録されている場合、この電話番号に対応するIPアドレスを抽出する。そして、制御部33は、このIPアドレスに基づいて受信側電話装置3に、発信側電話装置2との通信が可能であるかを確認する信号を送信する(s42)。
【0089】
受信側電話装置3は、この信号を受信すると、発信側電話装置2との通信が可能な場合、SIPサーバ4へ通信が可能であることを伝える信号を送信する(s51)。
【0090】
SIPサーバ4は、この信号を受信すると、受信側電話装置3が直接発信側電話装置2と通信するように、受信側電話装置3へ通信の確立を指示する信号を送信する(s43)。また、SIPサーバ4は、発信側電話装置2へ相手を呼び出し中であることを伝える状況連絡信号を送信する(s44)。
【0091】
発信側電話装置2では、上記のいずれかの状況連絡信号を受け取ると、VoIPアダプタ12の制御部57は、その信号に応じた音声データ、例えばリングバック時に出力されるよう設定された音声データを記憶部55から読み出して、電話機11の受話器42から出力させる(s33)。
【0092】
受信側電話装置3は、通信の確立を指示する信号を受信すると(s52)、発信側電話装置2と通信を確立するための手続きを行う(s34、s53)。発信側電話装置2では、受信側電話装置3との通信が確立すると、VoIPアダプタ12の制御部57は、電話機11の受話器42から音声データを出力させるのを停止する(s35)。」

引用例1の【0052】の記載によれば、VoIPアダプタ22は電話機21と通信可能なものといえる。
引用例1の【0053】の記載によれば、SIPサーバ4は、VoIPアダプタ22と接続され、電話機21と電話機11との通信を制御するものといえる。
引用例1の【0087】、【0088】、図4の記載によれば、発信者が電話をかけるときに受信側電話装置の電話番号を入力すると、SIPサーバ4は、その電話番号情報を受信して、受信側電話装置に発信側電話装置との通信が可能であるかを確認する信号を送信するものである。この「電話番号情報」は、電話機11から電話機21への接続要求であることは自明であり、受信側電話装置の通信制御はVoIPアダプタ22が行うものである。
したがって、引用例1における通信制御は、SIPサーバ4が、電話機11から電話機21への接続要求を受信するステップ、SIPサーバ4が接続要求を受信した際に、電話機21g発信側の電話機11との通信が可能であるかを確認するステップを有するものであるといえる。
引用例1の【0089】、【0090】には、確認の結果、発信側電話装置との通信が可能な場合には、SIPサーバ4は、発信側電話装置に相手を呼び出し中であることを伝える状況連絡信号を送信することが記載されている。発信側電話装置との通信が不可能な場合(例えばビジーの場合)の動作については明記されていないが、引用例1の【0066】の、「受信側電話装置3のビジー中、リングバック中などの動作の状況確認などを行い、その結果に応じた状況連絡信号を発信側電話装置2や音声サーバ5へ送信する。」という記載を参照すれば、発信側電話装置2の電話機11に電話機21との通信が不可能である旨の状況連絡信号を送信するものであるといえる。
そして、電話機11と電話機21との通信が不可能な場合には、SIPサーバ4は、電話機21に接続されたVoIPアダプタ22と発信側の電話機11との通信を確立することがないことは明かである。

したがって、引用例1には、技術常識を考慮すると、
「電話機21と通信可能なVoIPアダプタ22と、前記VoIPアダプタ22と接続され電話機21と電話機11との通信を制御するSIPサーバ4と、を含むインターネット電話システムが行う通信制御方法であって、
前記SIPサーバ4が、前記電話機11から前記電話機21への接続要求を受信するステップと、
前記SIPサーバ4が前記接続要求を受信した際に、電話機21が発信側の電話機11との通信が可能であるかを確認する確認ステップと、
前記電話機21が通信が可能でないことが確認されると、前記SIPサーバ4は、電話機21に接続されたVoIPアダプタ22と発信側の電話機11との通信を確立することなく、前記電話機11に、前記電話機21が通信が可能でない旨の状況連絡信号を送信する処理ステップと、を含む通信制御方法。」
の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されていると認めることができる。

当審で通知した拒絶理由に引用された特開平4-185042号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

イ.「【特許請求の範囲】
(1)ISDN回線と端末との間に接続され、前記端末が異常か否かの監視を行う端末異常監視部と、この端末異常監視部が前記端末が異常であることを検出すると、前記ISDN回線からの着信がなされた場合に端末異常通知を発呼側へ送出する端末異常通知部とを備えたことを特徴とするISDNターミナルアダプタ。」(1頁左下欄4?15行)

ロ.「(産業上の利用分野〉
本発明は、ISDN回線と端末との間に接続されるISDNターミナルアダプタに関するものである。」(1頁右下欄5?8行)

ハ.「以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。第1図は本発明の一実施例のブロック図である。本実施例のISDNターミナルアダプタ1には、ISDNインタフェース部11、呼制御/プロトコル変換部12、端末インタフェース部13、制御部14が設けられるとともに、端末状態監視部15、端末異常通知部16、相手端末状態検知部17、相手端末異常通知部18が備えられる。ISDNインタフェース部11はISDN回線3に対応した同期制御、速度制御等を行う。端末インタフェース部は13はCCITT、勧告、V24/28によるか、または、CCITT勧告X21によるかのインタフェース条件で信号の送受を行う。呼制御/プロトコル変換部12はISDN回線3のDチャンネル、Bチャンネルの分離、多重、このBチャンネルのデータによる呼制御、プロトコルの変換を行う。制御部14は各部のタイミング制御等の統括制御を行う。
本実施例で設けられた端末状態監視部15は、端末2がCCITT勧告、V24/28のインタフェースを有する場合には、着信があると制御部14が端末インタフェース部13にCI信号を端末2に対し送出させ、端末2が正常であるときにはこれに応答してER倍信号を返送することに鑑み、CI信号を送出してから所定時間経過してもER信号を返送されぬか監視し、検出出力を制御部14へ送出する。また、端末2がCCITT勧告、X21のインタフェースを有する場合には、着信があると制御部14が端末インタフェース部13にR信号を端末2に対し送出させ、端末2が正常であるときにはこれに応答してC信号を返送することに鑑み、R信号を送出してから所定時間経過してもC信号が返送されぬが監視し、検出出力を制御部14へ送出する。制御部14は上記検出出力を受けて端末異常通知部16を制御し、端末異常通知を送出させる。呼制御/プロトコル変換部12は端末異常通知をDチャンネルの信号として送出するように動作し、このDチャンネルの端末異常通知はISDNインタフェース部11がらISDN回線3へ送出される。」(2頁左下欄2行?3頁右上欄1行)

引用例2には、技術常識を考慮すると、
「ISDN回線と端末との間に接続されるISDNターミナルアダプタにおいて、
ISDNターミナルアダプタが着信を受信した際に、端末が異常な状態であるかを確認し、異常な状態であることが確認されると、ISDNターミナルアダプタは端末が異常な状態であることを発呼側へ送信すること。」
の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されていると認めることができる。

4.対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「電話機21」、「電話機11」は、それぞれ本願発明の「第1端末」、「第2端末」に相当する。
引用発明1の「VoIPアダプタ22」は、本願発明の「ターミナルアダプタ」に相当する。
引用発明1の「インターネット電話システム」は、「通信システム」の一種である。
引用発明1の「SIPサーバ4」は、電話機21と電話機11との通信を制御するものであるが、SIPサーバはセッション制御を行って通信を制御することは技術常識であるから、引用発明1の「電話機21と電話機11との通信を制御するSIPサーバ4」は、本願発明の「前記第1端末と第2端末とのセッション制御を行って前記第1端末と前記第2端末との通信を制御する制御装置」に実質的に相当するものである。
引用発明1の「前記電話機21が通信が可能でない」ことは、本願発明の「前記第1端末が応答不可な状態である」ことに相当するので、引用発明1の「前記電話機21が通信が可能でない旨の状況連絡信号」は、本願発明の「前記第1端末が応答不可な状態である旨の応答不可情報」に相当するといえる。

したがって、本願発明と引用発明1とは、
「第1端末と通信可能なターミナルアダプタと、前記ターミナルアダプタと接続され前記第1端末と第2端末とのセッション制御を行って前記第1端末と前記第2端末との通信を制御する制御装置と、を含む通信システムが行う通信制御方法であって、
前記制御装置が、前記第2端末から前記第1端末への接続要求を受信するステップと、
前記第1端末が応答不可な状態であるかを確認する確認ステップと、
前記第1端末が応答不可な状態であることが確認されると、前記制御装置が、前記ターミナルアダプタと前記第2端末との通信路を確立することなく、前記第2端末に、前記第1端末が応答不可な状態である旨の応答不可情報を送信する処理ステップと、を含む通信制御方法。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「前記制御装置が、第2端末から前記第1端末への接続要求を受信するステップ」について、本願発明は、「前記制御装置が、前記第2端末から前記第1端末への接続要求を受信すると、当該制御装置が、当該接続要求を、前記ターミナルアダプタに送信する接続要求通信ステップ」を有するのに対して、引用発明1では、制御装置が、前記第2端末から前記第1端末への接続要求を受信したあとに、当該接続要求をどのように処理するのか明らかでない点。

[相違点2]
「前記第1端末が応答不可な状態であるかを確認する確認ステップ」について、本願発明は、「前記ターミナルアダプタが前記制御装置から前記接続要求を受信した際に、前記ターミナルアダプタが、前記第1端末が応答不可な状態であるかを確認する確認ステップ」であるのに対して、引用発明1は、「前記制御装置が前記接続要求を受信した際に、前記第1端末が応答不可な状態であるかを確認する確認ステップ」である点。

[相違点3]
「前記第1端末が応答不可な状態であることが確認され」たときに、本願発明は、「前記ターミナルアダプタが、前記第1端末が応答不可な状態である旨の状態情報を、前記制御装置に送信する状態情報通信ステップ」と、「前記制御装置が、前記ターミナルアダプタから前記状態情報を受信すると、前記制御装置が、前記ターミナルアダプタと前記第2端末との通信路を確立することなく、前記第2端末に、前記第1端末が応答不可な状態である旨の応答不可情報を送信する処理ステップ」を行うのに対して、引用発明1では、「前記制御装置が、前記ターミナルアダプタと前記第2端末との通信路を確立することなく、前記第2端末に、前記第1端末が応答不可な状態である旨の応答不可情報を送信する処理ステップ」を行う点。

5.当審の判断
まず、上記相違点1について検討する。
引用発明1は、制御装置が、第2端末から第1端末への接続要求を受信した際に、第1端末が第2端末との通信が可能であるかを確認するものであり、また、制御装置と第1端末とは、ターミナルアダプタを介して接続されるものである。そして、第1端末は、接続要求を受信することにより、第2端末からの着信を通知されるものであることは、電話システムの技術常識であるから、引用発明1において、「前記制御装置が、前記第2端末から前記第1端末への接続要求を受信すると、当該制御装置が、当該接続要求を、前記ターミナルアダプタに送信する接続要求通信ステップ」を設けることは、格別のことではない。

次に、相違点2、3について検討する。
引用発明2の「ISDNターミナルアダプタ」は、「ターミナルアダプタ」の一種であり、「着信」は「接続要求」であるといえる。また、「端末」は「第1端末」、「発呼側」は「第2端末」と表現すると、引用発明2は、
「ターミナルアダプタが接続要求を受信した際に、第1端末が異常な状態であるかを確認し、異常な状態であることが確認されると、ターミナルアダプタは第1端末が異常な状態であることを第2端末へ送信すること。」
と表現することができる。
引用発明1と引用発明2とは、電話システムにおいて、第1端末(着信側の端末)の状態を第2端末(発信側の端末)へ送信するという基本的な思想で共通するものであり、第1端末が異常な状態であるときには応答不可になることは自明なことであるから、引用発明1において、第1端末が応答不可な状態であるかを確認することを、ターミナルアダプタが行うようにすることは、引用発明2を考慮すれば格別困難なことではない。
そして、ターミナルアダプタが、第1端末が応答不可な状態であるかを確認するようにしたときには、ターミナルアダプタが、第1端末が応答不可な状態であることを制御装置に送信するのは当然のことである。
したがって、相違点2、3に係る構成を採用することは容易なことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明1及び引用発明2から当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-11 
結審通知日 2013-04-12 
審決日 2013-04-23 
出願番号 特願2009-19425(P2009-19425)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 智康  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 萩原 義則
矢島 伸一
発明の名称 通信制御方法および通信システム  
代理人 豊田 義元  

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