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審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1274960
審判番号 不服2012-9299  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-21 
確定日 2013-06-06 
事件の表示 特願2007-156291「受信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月25日出願公開、特開2008-311838〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成19年6月13日の出願であって、平成23年11月25日付けで拒絶理由通知がなされ、平成24年1月20日付けで手続補正書が提出され、同年2月13日付けで拒絶査定がなされ、同年5月21日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。


第2.平成24年5月21日付けの手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年5月21日付けの手続補正書による補正(以下、「本件補正」と呼ぶ。)を却下する。

[理由]
1.補正内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、次のとおりに変更する補正事項を含むものである。

「 【請求項1】
複数の周波数帯の信号を選択的に受信する信号受信部と、クロック信号に基づいて動作するデジタル回路と、前記クロック信号を供給するクロック供給回路とを備えた受信装置において、
前記信号受信部が受信する信号は映像データを含むものであり、
前記デジタル回路は、該映像データをデコード処理するデコーダ回路と、該デコーダ回路がデコードした映像信号に基づき液晶ディスプレイを駆動して映像出力させるLCDコントローラとを含み、
前記クロック供給回路は、周波数可変型のPLL回路を有し、該PLL回路により前記クロック信号を生成する構成であり、
前記PLL回路の発振周波数を切換制御する制御手段と、
前記信号受信部で受信可能な複数の受信チャンネルと、該受信チャンネルの周波数帯と干渉を起こさない前記PLL回路の発振周波数の設定内容とが、それぞれ対応させて格納されたデータテーブルを記憶した記憶手段と
を備え、
前記制御手段は、
マイクロコンピュータが所定のプログラムを実行することによってなるものであり、
前記受信チャンネルが変更された場合に、前記記憶手段のデータテーブルの設定内容に従って前記PLL回路の発振周波数を切り換えて前記デコーダ回路、前記LCDコントローラ及び前記マイクロコンピュータへ同一のクロック信号を供給することを特徴とする受信装置。」

2.補正の目的
本件補正が、特許法第17条の2第5項の規定各号の目的に該当するかどうか検討する。

2-1.請求項の削除(特許法第17条の2第5項第1号)について
審判請求人は、平成24年6月13日付け手続補正書で補正した「審判請求書」の「請求の理由」の中で、「補正前の請求項1を削除し、補正前の請求項2?5を補正後の請求項1?4として繰り上げました。」と主張していることから、以下で、本件補正が請求項の削除を目的とするかどうか検討する。
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(以下、「本件補正前の請求項1」という。)、及び、請求項2(以下、「本件補正前の請求項2」という。)の記載は、平成24年1月20日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された以下のとおりである。

「 【請求項1】
複数の周波数帯の信号を選択的に受信する信号受信部と、クロック信号に基づいて動作するデジタル回路と、前記クロック信号を供給するクロック供給回路とを備えた受信装置において、
前記信号受信部が受信する信号は映像データを含むものであり、
前記デジタル回路は、該映像データをデコード処理するデコーダ回路と、該デコーダ回路がデコードした映像信号に基づき液晶ディスプレイを駆動して映像出力させるLCDコントローラとを含み、
前記クロック供給回路は、周波数可変型のPLL回路を有し、該PLL回路により前記クロック信号を生成する構成であり、
前記PLL回路の発振周波数を切換制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、
前記信号受信部で受信する信号の周波数帯と、前記クロック供給回路のクロック信号の周波数とが干渉する関係にある場合に、前記PLL回路の発振周波数を切り換えて前記デコーダ回路及び前記LCDコントローラへ供給することを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記信号受信部で受信可能な複数の受信チャンネルと、該受信チャンネルの周波数帯と干渉を起こさない前記PLL回路の発振周波数の設定内容とが、それぞれ対応させて格納されたデータテーブルを記憶した記憶手段を有し、
前記制御手段は、
マイクロコンピュータが所定のプログラムを実行することによってなるものであり、
前記受信チャンネルが変更された場合に、前記記憶手段のデータテーブルの設定内容に従って前記PLL回路の発振周波数を切り換えて前記デコーダ回路、前記LCDコントローラ及び前記マイクロコンピュータへ供給することを特徴とする請求項1記載の受信装置。」

本件補正前の請求項2は本件補正前の請求項1を引用していることに鑑みると、本件補正前の請求項2は、「前記制御手段は、前記信号受信部で受信する信号の周波数帯と、前記クロック供給回路のクロック信号の周波数とが干渉する関係にある場合に、前記PLL回路の発振周波数を切り換えて前記デコーダ回路及び前記LCDコントローラへ供給」し、「前記受信チャンネルが変更された場合に、前記記憶手段のデータテーブルの設定内容に従って前記PLL回路の発振周波数を切り換えて前記デコーダ回路、前記LCDコントローラ及び前記マイクロコンピュータへ供給する」という発明特定事項(以下、「発明特定事項A」という。)を含むものである。
これに対して、本件補正後の請求項1は、「前記制御手段は、マイクロコンピュータが所定のプログラムを実行することによってなるものであり、前記受信チャンネルが変更された場合に、前記記憶手段のデータテーブルの設定内容に従って前記PLL回路の発振周波数を切り換えて前記デコーダ回路、前記LCDコントローラ及び前記マイクロコンピュータへ同一のクロック信号を供給する」という発明特定事項(以下、「発明特定事項B」という。)を含むものである。
発明特定事項Aと発明特定事項Bとは、PLL回路の発振周波数の切り換えが「前記受信チャンネルが変更された場合」に行われる点で一致しているものの、発明特定事項Aが含んでいる「前記信号受信部で受信する信号の周波数帯と、前記クロック供給回路のクロック信号の周波数とが干渉する関係にある場合」にPLL回路の発振周波数を切り換えることを、発明特定事項Bは含んでいないことから、補正前の請求項1を削除し、補正前の請求項2を補正後の請求項1に繰り上げたとはいえず、本件補正は、特請求項の削除(特許法第17条の2第5項第1号)を目的として補正されたものとはいえない。

2-2.その他の目的(特許法第17条の2第5項第2号?第4号)について
「2-1」で検討したごとく、本件補正は審判請求人が主張する「請求項の削除」を目的とする補正であるとはいえないため、これ以外の目的に該当するかどうか検討する。

本件補正前の請求項1は、「前記制御手段は、前記信号受信部で受信する信号の周波数帯と、前記クロック供給回路のクロック信号の周波数とが干渉する関係にある場合に、前記PLL回路の発振周波数を切り換えて前記デコーダ回路及び前記LCDコントローラへ供給する」という発明特定事項(以下、「発明特定事項C」という。)を含むものである。
これに対して、本件補正後の請求項1は、「前記制御手段は、マイクロコンピュータが所定のプログラムを実行することによってなるものであり、前記受信チャンネルが変更された場合に、前記記憶手段のデータテーブルの設定内容に従って前記PLL回路の発振周波数を切り換えて前記デコーダ回路、前記LCDコントローラ及び前記マイクロコンピュータへ同一のクロック信号を供給する」という発明特定事項Bを含むものである。
してみると、PLL回路の発振周波数の切り換えが、発明特定事項Cでは「前記信号受信部で受信する信号の周波数帯と、前記クロック供給回路のクロック信号の周波数とが干渉する関係にある場合」であるのに対して、発明特定事項Bでは「前記受信チャンネルが変更された場合」であり、PLL回路の発振周波数の切り換えが行われる場合が異なっているから、発明特定事項Bは発明特定事項Cを限定するものといえず、本件補正は、特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第5項第2号)を目的として補正されたものとはいえない。

そして、本件補正は、明りょうでない記載の釈明(特許法第17条の2第5項第4号)、または誤記の訂正(特許法第17条の2第5項第3号)を目的として補正されたものでないことは明らかである。

3.まとめ
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.上記補正却下の決定を前提とした本願についての検討
1.本願発明
平成24年5月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、平成24年1月20日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「 【請求項1】
複数の周波数帯の信号を選択的に受信する信号受信部と、クロック信号に基づいて動作するデジタル回路と、前記クロック信号を供給するクロック供給回路とを備えた受信装置において、
前記信号受信部が受信する信号は映像データを含むものであり、
前記デジタル回路は、該映像データをデコード処理するデコーダ回路と、該デコーダ回路がデコードした映像信号に基づき液晶ディスプレイを駆動して映像出力させるLCDコントローラとを含み、
前記クロック供給回路は、周波数可変型のPLL回路を有し、該PLL回路により前記クロック信号を生成する構成であり、
前記PLL回路の発振周波数を切換制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、
前記信号受信部で受信する信号の周波数帯と、前記クロック供給回路のクロック信号の周波数とが干渉する関係にある場合に、前記PLL回路の発振周波数を切り換えて前記デコーダ回路及び前記LCDコントローラへ供給することを特徴とする受信装置。」

2.引用文献・周知文献
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-355161号公報(1999年12月24日公開 以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている(なお、下線は当審が付与した。)。

(ア)「【0008】
【発明の実施の形態】以下本発明をページング受信機のクロック発生回路に適用した場合の実施の一形態について図面を参照して説明する。図1はその回路構成を示すもので、アンテナANTにより受信される無線信号を無線部10で図示しない局部発振器による局部発信に基づいて周波数変換、復調及び自己の呼出番号でデコードすることにより、自己宛てのメッセージを出力する。また、11が個別呼出受信の動作制御を司るCPUであり、このCPU11には時刻のカウント等を行なうための周波数f1 の低速クロックを発振する発振子12が接続されている。
【0009】CPU11は、この発振子12からの低速クロックにより常時計時その他の動作を行ない、またこの低速クロックをそのままPLL回路13へ供する一方、VCO(電圧制御発振器)14から入力される周波数f2 (f2 >f1 )の高速クロックを受けて個別呼出受信を受けた際の処理を実行するもので、また、本発明の特徴である受信周波数と高速クロック周波数の整数倍が重なった時、PLL回路13に対して高速クロックの周波数をずらすために制御信号を送出する。
【0010】PLL回路13は、プログラマブル分周器13a、位相比較器13b、及びプログラマブル分周器13cから構成される。プログラマブル分周器13aは、CPU11から供される周波数f1 の低速クロックに対し、CPU11から入力される制御信号で指示される分周比N1 をもって分周することで比較周波数f3 の信号を発生し、これを位相比較器13bへ送出する。
【0011】またプログラマブル分周器13cは、VCO14から入力される周波数f2 の高速クロックに対し、CPU11から入力される制御信号で指示される分周比N2 をもって分周してその結果を位相比較器13bへ送出する。
【0012】位相比較器13bでは、上記各プログラマブル分周器13a,13cからそれぞれ入力される分周結果の位相を比較してその差に応じた電圧信号を発生して上記VCO14へ出力する。VCO14はこの位相比較器13bからの電圧信号に対応して上述したように周波数f2 の高速クロックを発生し、上記CPU11及びPLL回路13のプログラマブル分周器13cへ送出する。 」

(イ)「【0018】したがって、CPU11がPLL回路13への制御信号によりプログラマブル分周器13aの分周比N1 を2、プログラマブル分周器13cの分周比N2 を38、39,41,42のいずれかに設定し、発振子12の発振する周波数f1 の低速クロックを基準としてPLL回路13及びVCO14により周波数f2 の高速クロックを発振させるようにすることで、高速クロックの周波数f2 の整数倍が受信周波数frと一致してしまうのを回避して、受信感度の劣化を未然に防止することができる。
【0019】上記動作で説明した如く、周波数f1 の低速クロックを基準としてPLL回路13及びVCO14で周波数f2 の高速クロックを発振するものとしたため、高速クロックを発振するための例えばセラミック振動子などの発振子が不要となり、全体の回路構成を簡略化することができると共に、高速クロックの周波数f2の整数倍を通信回線の周波数frから離間して設定することで、受信感度の劣化を生じないようにすることができる。」

(ウ)「【0022】また、上記実施の形態はページング受信機のクロック発生回路に適用した場合について例示したものであるが、1チャンネル当たりの受信帯域幅がより広いPHS(Personal Handyphone System:簡易型コードレス電話システム)等の無線あるいは有線通信端末機に適用する場合には、受信帯域幅の上限及び下限をそれぞれ計算し、その範囲内となるような分周比N2 を使用しないものとすればよい。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能であるものとする。」

以上の(ア)?(ウ)の記載と図面とを総合すれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「無線部、CPU、及び、PLL回路を備えたPHSの無線通信端末機であって、
無線部は、アンテナANTにより受信される無線信号を周波数変換、復調及び自己の呼出番号でデコードすることにより、自己宛てのメッセージを出力し、
CPUは、個別呼出受信の動作制御を司るとともに、低速クロックにより常時計時その他の動作を行ない、周波数f1 の低速クロックをそのままPLL回路へ供する一方、VCO(電圧制御発振器)から入力される周波数f2 (f2 >f1 )の高速クロックを受けて個別呼出受信を受けた際の処理を実行するもので、また、受信周波数と高速クロック周波数の整数倍が重なった時、PLL回路に対して高速クロックの周波数をずらすために制御信号を送出し、
PLL回路は、2つのプログラマブル分周器と位相比較器とから構成され、一方のプログラマブル分周器は、CPUから供される周波数f1 の低速クロックに対し、CPUから入力される制御信号で指示される分周比N1 をもって分周することで比較周波数f3 の信号を発生し、これを位相比較器13bへ送出し、他方のプログラマブル分周器は、VCOから入力される周波数f2 の高速クロックに対し、CPUから入力される制御信号で指示される分周比N2 をもって分周してその結果を位相比較器へ送出し、位相比較器では、各プログラマブル分周器からそれぞれ入力される分周結果の位相を比較してその差に応じた電圧信号を発生してVCOへ出力し、VCOはこの位相比較器からの電圧信号に対応して周波数f2 の高速クロックを発生し、CPU及びPLL回路のプログラマブル分周器へ出力することにより、
CPUがPLL回路への制御信号により2つのプログラマブル分周器の分周比を設定し、周波数f1 の低速クロックを基準としてPLL回路及びVCOにより周波数f2 の高速クロックを発振させるようにすることで、高速クロックの周波数f2 の整数倍が受信周波数frと一致してしまうのを回避して、受信感度の劣化を未然に防止することができる
PHS(簡易型コードレス電話システム)の無線通信端末機。」

(2)特開2000-322030号公報(以下、「周知文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審が付与した。)。
「【0002】
【従来の技術】近年、半導体技術や液晶技術の進展、また、通信技術との融合により、携帯電話やポケットベル等の携帯情報端末が急激に普及し、文字や画像を含めた様々な情報の送受信が行われるようになってきている。このような携帯情報端末においては、通常、数インチ程度の小型の液晶表示モジュール(LCDM)と、その表示画面に対応した画像データを格納する画像メモリとを備えており、一般に、文字や線画等の情報を中心とする白黒2値画像、あるいは、中間階調を付加した多値画像を表示する機能を有している。
【0003】従来の液晶表示モジュールの概略構成は、図9に示すように、大別して液晶表示パネル10と、信号ドライバ20と、走査ドライバ30と、コントローラ40と、を有している。50はCPU、60は画像メモリである。液晶表示パネル10は、マトリクス状に配置された液晶画素と、液晶画素に接続され、マトリクスの列方向に延伸する信号ラインと、マトリクスの行方向に延伸する走査ラインと、を有し、後述する信号ドライバ20及び走査ドライバ30により選択される液晶画素に信号電圧を印加することにより、所定の画像情報を表示出力する。信号ドライバ20は、後述するコントローラ40から供給される水平制御信号に基づいて、画像情報に対応する信号電圧を信号ラインを介して各液晶画素に印加する。また、走査ドライバ30は、コントローラ40から供給される垂直制御信号に基づいて、各走査ラインに走査信号を順次印加して選択状態とし、上記信号ラインと交差する位置に配置された液晶画素に、上記信号電圧を印加する。
【0004】コントローラ40は、水平クロック信号、垂直クロック信号及び同期信号に基づいて、水平制御信号及び垂直制御信号を生成して、信号ドライバ20及び走査ドライバ30に供給することにより、所定のタイミングで液晶画素に信号電圧を印加して、液晶表示パネル10に所望の画像情報を表示させる制御を行う。CPU50は、画像情報の信号変換や、同期信号の調整、クロック信号の生成等の処理を行い、コントローラに水平及び垂直同期信号、クロック信号、表示データを出力するほか、図示を省略した通信部や操作部からの信号や指示を処理して、受信動作や表示動作を行う。画像メモリ60は、図示を省略した受信部により受信された画像情報や、あらかじめ用意された文字や画像等の表示データ等を、液晶表示パネル10の表示画面ごとに格納する。
・・・・・・
【0006】なお、図10は、一般的なページャの受信、画像表示部の概略構成を示すものであって、101はRF部、102はデコーダ部、103はID-ROM、104は制御部、105は表示部、106は画像メモリ、107は操作部、108は電源回路である。RF部101は、メッセージ送信者が電話やパソコン等の情報機器からページャセンタを介して、あるいは、ページャセンタから直接送信されるアドレス情報や画像情報等の搬送波を受信し、その周波数を中間周波数に変換して、後段のデコーダ部102に伝達する。デコーダ部102は、ID-ROM33内に記憶された自己アドレス、あるいは、情報サービス用のアドレスを読み出して、ページャセンタから送信された情報の中から自分宛の画像情報を抽出して、後段の信号制御機能を有する制御部104に伝達する。 」

(3)特開2003-283604号公報(以下、「周知文献2」という。)には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審が付与した。)。
「【0009】本実施例は、本発明の表情伝送機能付情報端末装置を携帯電話機100の信号処理部10に適用した場合である。本発明と直接関係のない部分について図示および説明を省略する。以下の説明で、信号はその現れる接続線の参照番号で指示する。
【0010】信号処理部10には、送信側として音声キャプチャ部12、映像キャプチャ部14、音声エンコーダ16、データ選択部18、キャラクタ表情抽出合成部20、画像エンコーダ22、同期処理部24、送受信処理部26、受信側として画像デコーダ28、音声デコーダ30、同期処理部32、液晶コントローラ34および出力アンプ36が含まれている。
・・・・・・
【0024】送受信処理部26は、送信においてあらかじめ決められたデータ形式に合わせて送信データ58や送受信データ54のうちの送信データを、たとえばパケット化し、所定の周波数の電波60により図示しない基地局に送出する。また、送受信処理部26は、受信において基地局からの電波60を受信し、データ形式にパッキングされている受信データにデパケット化を施して画像データ62および音声データ64のデータ分離処理を行っている。送受信処理部26は、受信した画像データ62および音声データ64を画像デコーダ28と音声デコーダ30のそれぞれに出力する。また、送受信処理部26は、前述したように、ASPサーバからダウンロードしたキャラクタ画像データ54をキャラクタ表情抽出合成部20に供給している。
【0025】画像デコーダ28は、供給される画像データ62に対する伸長復号処理を施す回路を用いている。画像データ62は、通信相手がキャプチャした顔の画像データそのものや通信相手が選択したキャラクタ画像データであってもよい。画像デコーダ28は、伸長復号した画像データ66を同期処理部32に出力する。音声デコーダ30は、供給される音声データ64に対する伸長復号処理を施す回路を用いている。音声デコーダ30は、伸長復号した音声データ68を同期処理部32に出力する。
・・・・・・
【0027】液晶コントローラ34は、供給される画像データを前述した液晶モニタに表示させる制御を行う回路である。本実施例では、3つの画像データ44, 50, 70が液晶コントローラ34に供給されている。液晶コントローラ34は、画像データ44, 50を同じ大きさの画像に表示させ、画像データ70を最も大きい画像に表示させる制御を行っている。これにより、液晶モニタには、相手の画像を表示させながら、通信するユーザ本人と相手に送出するキャラクタの画像が表示される。したがって、携帯電話機100は、信号処理部10の処理により相手にどのように見えているかをモニタすることができる。」

(4)特開2006-332857号公報(以下、「周知文献3」という。)には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審が付与した。)。
「【0027】
また、受信装置1は、チャンネルテーブル2aにおいて、この時点で選択されているチャンネル(該当チャンネル)に対応付けられている、デコード部4に供給する動作クロックの周波数を読み出す(s3)。受信装置1は、クロック生成部7に対して、s3で読み出した周波数のクロックの生成を指示する(s4)。これにより、クロック生成部7は、今回指示された周波数のクロックを生成する。具体的には、入力されているシステムクロックを分周し、指示された周波数のクロックを生成する。クロック生成部7で生成されたクロックは、デコード部4に動作クロックとして供給される。デコード部4は、クロック生成部4から供給される動作クロックで動作し、受信部3の出力であるTSから映像データ、および音声データを分離して取り出すとともに、取り出した映像データ、および音声データをそれぞれデコードする。このように、デコード部4はチャンネルテーブル2aにおいて、この時点で選択されているチャンネルに対応付けられている周波数の動作クロックで動作する。映像データは、例えばMPEG2やMPEG4でエンコードされている。デコード部4は、エンコードされた映像データと音声データとをバッファメモリに一時的に記憶し、映像データと音声データとの再生同期をとって出力する。出力部5は、デコード部4から出力された映像データに基づく映像信号を生成し出力するとともに、音声データに基づく音声信号を生成し出力する。
・・・・・
【0030】
上述したように、チャンネルテーブル2aでは、チャンネル毎に、そのチャンネルに対応する周波数帯域に高調波周波数が存在しない周波数が対応付けられている。したがって、受信部3において取り出される、選択されているチャンネルのディジタル放送信号に、デコード部4の動作クロックの高調波が干渉することがない。したがって、デコード部4の動作クロックの高調波がノイズとなって、適正な映像や音声が出力できないという事態が生じるのを防止できる。 」

(5)さらに、特開2003-304164号公報(以下、「周知文献4」という。)には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審が付与した。)。
「【0026】本発明は従来の上記実情に鑑み、従来の技術に内在する上記不具合を解消するためになされたものであり、従って本発明の目的は、簡単な構成により受信周波数で感度劣化及び受信レベル測定誤りの発生を容易かつ的確に除去することを可能とした新規な携帯電話装置を提供することにある。
・・・・・・
【0070】第1のPLL回路1053は、時計CLK発生器1052から出力された時計CLKの32.768kHzを比較基準周波数として、電圧制御発振器1055の周波数を1538分周して、第1のPLL回路1053内の位相比較器に供給する。この位相比較器は、分周された周波数が、比較基準周波数に合致するように、電圧制御発振器1055に制御電圧を供給する。
【0071】このようにして、第1のPLL回路1053と電圧制御発振器1055とにより構成された第1のPLL発振器は、50.397184MHzの周波数を安定にCPU1057にCPUクロックとして供給する。
【0072】また、制御回路1059からその制御により、分周数を1539とすると、この場合には、電圧制御発振器1055は50.429952MHzを安定に発振する。
・・・・・・
【0077】LCDコントローラ1101は、接続線1201を介して制御部105からCPUクロックを受け取る。LCDコントローラ1101は、CPUクロックを5分周してデータクロックを生成し、データクロック線1105よりLCDドライバ1102に供給し、更にバス1106よりデータを出力して同期型データバスを形成する。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、

(1)引用発明が備える「無線部」は「アンテナANTにより受信される無線信号を周波数変換、復調及び自己の呼出番号でデコードすることにより、自己宛てのメッセージを出力」するものであるとともに、引用発明はPHS(簡易型コードレス電話システム)の無線通信端末機であり、その規格である「RCR STD-28」を参酌すると、PHS(簡易型コードレス電話システム)は1895.150MHz?1917.950MHzの77の周波数帯を用いて通信を行うシステムの無線通信端末機であるから、引用発明の「無線部」は「複数の周波数帯の信号を選択的に受信する信号受信部」であるといえ、また、引用発明は「受信装置」であるといえる。

(2)引用発明はPHS(簡易型コードレス電話システム)の無線通信端末機であり、その規格である「RCR STD-28」を参酌すると、PHS(簡易型コードレス電話システム)の無線通信端末は受信した信号をTDMA/TDD処理し、コーディックする構成を具備しているとともに、これらの構成はクロック信号に基づいて動作するものであるといえるから、引用発明は「クロック信号に基づいて動作するデジタル回路」を備えているといえる。

(3)引用発明が備える「PLL回路」は「周波数f2 の高速クロックを発生し、CPU及びPLL回路のプログラマブル分周器へ出力」しているから、引用発明の「PLL回路」は「前記クロック信号を供給するクロック供給回路」であるといえる。
さらに、引用発明は「CPUがPLL回路への制御信号により2つのプログラマブル分周器の分周比を設定し、周波数f1 の低速クロックを基準としてPLL回路及びVCOにより周波数f2 の高速クロックを発振させるようにすることで、高速クロックの周波数f2 の整数倍が受信周波数frと一致してしまうのを回避して」ており、「高速クロックの周波数f2 の整数倍が受信周波数frと一致」することは、高速クロックの周波数f2 の整数倍と受信周波数frとが干渉関係にあるといえるから、引用発明は、「前記クロック供給回路は、周波数可変型のPLL回路を有し、該PLL回路により前記クロック信号を生成する構成であり、前記PLL回路の発振周波数を切換制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記信号受信部で受信する信号の周波数帯と、前記クロック供給回路のクロック信号の周波数とが干渉する関係にある場合に、前記PLL回路の発振周波数を切り換えて」いるといえる。

してみると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「複数の周波数帯の信号を選択的に受信する信号受信部と、クロック信号に基づいて動作するデジタル回路と、前記クロック信号を供給するクロック供給回路とを備えた受信装置において、
前記クロック供給回路は、周波数可変型のPLL回路を有し、該PLL回路により前記クロック信号を生成する構成であり、
前記PLL回路の発振周波数を切換制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、
前記信号受信部で受信する信号の周波数帯と、前記クロック供給回路のクロック信号の周波数とが干渉する関係にある場合に、前記PLL回路の発振周波数を切り換えることを特徴とする受信装置。」

<相違点>
本願発明は、「前記信号受信部が受信する信号は映像データを含むものであり、
前記デジタル回路は、該映像データをデコード処理するデコーダ回路と、該デコーダ回路がデコードした映像信号に基づき液晶ディスプレイを駆動して映像出力させるLCDコントローラとを含み、
前記PLL回路の発振周波数を前記デコーダ回路及び前記LCDコントローラへ供給する」ものであるのに対して、引用発明では、そのような特定はなされていない点。

4.当審の判断
上記相違点について検討すると、PHSの無線通信端末では、内蔵するカメラで撮影した映像データを送受信するとともに、受信した映像データをLCDに表示させることが常套的に行われている事項であり、映像データを受信可能とするために、受信する信号を映像データを含むものとし、映像該映像データをデコード処理するデコーダ回路と、該デコーダ回路がデコードした映像信号に基づき液晶ディスプレイを駆動して映像出力させるLCDコントローラとを無線通信端末に設けることは周知な事項である。
例えば、周知文献1及び2を参照。

さらに、受信機が備えるデコーダ回路やLCDコントローラへ供給するクロック信号の周波数を切り替え、受信する信号の周波数とクロック信号の高調波周波数とが干渉しないようにすることも周知な事項である。
例えば、クロック信号の周波数を切り替えてデコーダ回路へ供給するものとしては周知文献3、クロック信号の周波数を切り替えてLCDコントローラへ供給するものとしては周知文献4を参照。

してみると、引用発明において、映像データを受信可能とするために、受信する信号を映像データを含むものとし、映像該映像データをデコード処理するデコーダ回路と、該デコーダ回路がデコードした映像信号に基づき液晶ディスプレイを駆動して映像出力させるLCDコントローラとを無線通信端末に設けるとともに、受信する信号の周波数とクロック信号の高調波周波数とが干渉することがないように、クロック信号の周波数を切り替えて、受信機が備えるデコーダ回路やLCDコントローラへ供給すること、すなわち、「前記信号受信部が受信する信号は映像データを含むものであり、
前記デジタル回路は、該映像データをデコード処理するデコーダ回路と、該デコーダ回路がデコードした映像信号に基づき液晶ディスプレイを駆動して映像出力させるLCDコントローラとを含み、
前記PLL回路の発振周波数を前記デコーダ回路及び前記LCDコントローラへ供給する」ようにすることは、当業者であれば容易になし得る事項である。

また、本願発明により得られる効果は、引用発明や周知な事項から当業者が予測し得ないようなものではなく、本願発明の進歩性を肯定する根拠となり得るものではない。

よって、本願発明は、引用発明及び周知な事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

5.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知な事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。


第4.むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-03 
結審通知日 2013-04-09 
審決日 2013-04-23 
出願番号 特願2007-156291(P2007-156291)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 571- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 相澤 祐介石川 雄太郎佐藤 敬介  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 佐藤 聡史
近藤 聡
発明の名称 受信装置  
代理人 荒船 博司  

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