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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1275464
審判番号 不服2012-10448  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-06 
確定日 2013-06-13 
事件の表示 特願2006-319335「複合型監視制御システム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月12日出願公開、特開2008-135887〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成18年11月27日の出願であって、平成24年 2月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年 6月 6日付けで審判請求がなされたものである。
特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「 【請求項1】
ポーリング/セレクティング方式での通信を行い固有のアドレスを割り当てた端末器に対して、そのアドレスを含んだ制御信号を送信するセンタ装置と、その制御信号で指定された処理をなす端末器とを多重伝送線で接続した1次側通信システムと、
1次側通信システムと同様な構成に加えて自システムの端末器を制御可能な制御端末器をも具備する2次側通信システムと、
1次側および2次側通信システムの相互間を通信可能に接続するシステム拡張端末器とを備えて構成され、1次側通信システムをメインシステムとし、そのサブシステムとしての2次側通信システムを構成する制御端末器を、1次側通信システムからシステム拡張端末器を介して制御可能とした複合型監視制御システムであって、
前記システム拡張端末器は、
前記1次側通信システムで端末器に割り当てられていないアドレスである1次側アドレスと、前記2次側通信システムで制御端末器を制御可能なアドレスである2次側アドレスとを1対1に対応させたアドレス変換データを予め登録するメモリ部と、
前記アドレス変換データを変更操作するための表示操作部とを備えており、
前記1次側通信システムのセンタ装置を少なくとも含み、前記アドレス変換データの編集機能を有するアドレス変換データ編集装置で編集された前記アドレス変換データを、前記1次側通信システムの多重伝送線を通じてダウンロードし、前記メモリ部に登録更新して運用し、
1次側通信システムのセンタ装置は、アドレス変換データを編集するGUIに、1次側通信システムの未使用なアドレスを一覧できる機能を有することを特徴とする複合型監視制御システム。」

2.引用発明
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された特開2001-16244号公報(以下、「引用例」という。)には、「システム拡張端末器及び中央監視制御システム」として図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、監視制御装置が多重伝送線を介して接続した端末器を監視制御するシステムを拡張するため、多重伝送線に更に接続されるシステム拡張端末器、及びこのシステム拡張端末器を備えた中央監視制御システムに関する。」(2頁2欄)

ロ.「【0020】図2に示すように、ビルの中央監視室などに設置された中央監視制御装置10は、1又は複数の端末器11(図では、n台(#1?#n))を、多重伝送線L1を介して接続しており、各端末器11を監視制御することによって、各端末器11に接続した負荷装置を監視制御している。中央監視制御装置10は、多重伝送線L1を通じたポーリング等によって、各端末器11の状態を監視する一方、端末器11の状態が変化したときには、その端末器11から中央監視制御装置10に、割込信号等で状態を示す信号が送信される。また、中央監視制御装置10から、端末器11を指定した制御信号を送信することによって、その端末器11及び負荷装置を制御する。
【0021】一方、ビルなどには、中央監視制御装置10による監視制御システムとは別系統の監視制御システムとして、照明監視制御システムを導入しており、中央監視室などに設置された照明制御装置20が、ビル内に負荷装置として設置された照明装置を接続した1又は複数の端末器21(図では、n台(#1?#n))を監視するとともに、制御信号を送信して、照明装置の点灯(ON)、消灯(OFF)などの制御をしている。
【0022】本発明では、システム拡張端末器としてインタフェースユニットUを備えることによって、システム規模の拡張を図っている。インタフェースユニットUは、1次側の監視制御装置である中央監視制御装置10から導出され、1又は複数の端末器11を接続した多重伝送線L1と、2次側の監視制御装置である照明制御装置20から導出され、1又は複数の端末器21を接続した多重伝送線L2の両方に接続されている。
【0023】すなわち、中央監視制御システムは、1又は複数の端末器11を多重伝送線L1を介して接続した1次側の監視制御装置10と、1又は複数の端末器21を多重伝送線L2を介して接続した2次側の監視制御装置20と、1次側の監視制御装置10から導出された多重伝送線L1と、2次側の監視制御装置20から導出された多重伝送線L2に接続されたシステム拡張端末器であるインタフェースユニットUとで構成される。
【0024】このような構成にすることによって、中央監視制御装置10(1次側)が監視制御しているシステムを拡張することができ、中央監視制御装置10によって、照明制御装置(2次側)に接続されている端末器21を監視制御できるようになる。ここでは、図示しているように、1次側の監視制御装置として、動力用端末器11を監視制御する中央監視制御装置10、2次側の監視制御装置として、照明用端末器21を監視制御する照明制御装置20の場合を示したが、これらに限定されることはない。」(4頁6欄?5頁7欄)

ハ.「【0025】図1に示すように、インタフェースユニットUは、メモリを内蔵したメインCPU1と、中央監視制御装置10と多重伝送線L1を通じて信号を伝送する1次側伝送手段である端末伝送ドライバ2と、データの設定などのために操作するスイッチ3と、スイッチ3による操作手順などを表示する液晶表示部4と、メモリを内蔵したサブCPU5と、照明制御装置20と多重伝送線L2を通じて信号を伝送する2次側伝送手段である端末伝送ドライバ6と、不揮発性メモリで構成される外部メモリ7とを備える。
【0026】・・・・・(中略)・・・・・
【0027】外部メモリ7には、1次側の監視制御装置である中央監視制御装置10が管理する1次側アドレスと、2次側の監視制御装置である照明制御装置20が管理する2次側アドレスとを対応させて登録したアドレス管理テーブルを備えており、通常の動作時には、このテーブルは、メインCPU1とサブCPU5の各々の内蔵メモリに展開される。なお、メインCPU1は、サブCPU5を介して、外部メモリ7からアドレス管理テーブルのデータを取り込んでいる。」(5頁7欄)

ニ.「【0029】・・・・・(中略)・・・・・また、制御手段は、1次側の中央監視制御装置10から端末伝送ドライバ2を介して、制御信号を受信したときには、アドレス管理テーブルと2次側状態データテーブルとを参照して、その制御信号に付加された1次側アドレスを2次側アドレスに変換し、その2次側アドレスに対応した端末器21の制御信号を、端末伝送ドライバ6を介して、多重伝送線L2を通じて送信させる。これによって、インタフェースユニットUは、1次側の中央監視制御装置10から送信されて来る制御信号によって、2次側の端末器21を制御できる。」(5頁7?8欄)

ホ.「【0031】次に、図3に、アドレス管理テーブルと2次側状態データテーブルの構成例を示して、上記ユニットUの具体的な動作について説明する。アドレス管理テーブルは、(a)に示したアドレス変換テーブル30と、(b)に示したアドレス有効マップ31とによって構成され、アドレス変換テーブル30には、1次側アドレスに対応した2次側アドレスが登録されており、アドレス有効マップ31には、1次側アドレスに対する2次側アドレスの設定有無を登録している。(c)に示した状態データテーブル32には、2次側の端末器21の各状態が記憶されており、ここでは、1つのアドレスは、4つの管理ポイントを有しており、4種類の管理データによって管理されるようになっている。なお、図示した各テーブル30,31,32の例では、最大256個のアドレスのインタフェースを可能とするが、本発明ではこれに限定されることはない。」(5頁8欄)

ヘ.「【0034】一方、メインCPU1は、中央監視制御装置10から端末伝送ドライバ2を介して、制御信号を受信したときには、その制御信号に付加された1次側アドレスを基にして、アドレス有効マップ31により2次側アドレスが登録されているかを確認し、2次側アドレスが登録されていれば、アドレス変換テーブル30によって変換した2次側アドレスを基にして、状態データテーブル32から管理データを取り出し、その管理データから制御信号を作成して、サブCPU5と端末伝送ドライバ6を介して、2次側の多重伝送線L2に送信する。
【0035】このときの制御信号は、2次側の照明制御装置20に対して送信され、照明制御装置20によって、指定された端末器21が制御される。なお、制御信号を、直接、端末器21に送信して、その端末器21を制御するようにしてもよいが、この場合でも、照明制御装置20が、端末器21の状態を管理するため、その後の照明制御装置20による監視などにより、照明制御装置20に記憶された端末器21の状態データを更新する必要がある。」(6頁9欄)

ト.「【0037】図4には、上記したインタフェースユニットUが1次側から制御信号を受信したときの動作を示している。メインCPU1とサブCPU5の各々が、1次側と2次側のアプリケーション処理を独立して行っている状態において(S100)、メインCPU1が、受信した信号に付加されたアドレスが登録されているかを判別し(S101)、登録がされていれば、システム間インタフェース用アドレス(2次側アドレス)をアドレス変換テーブル30から取り出して(S102)、サブCPU5に、その変換アドレス(2次側アドレス)と制御データとを通知する(S103)。すると、サブCPU5が状態データテーブル32と、メインCPU1から通知されたデータを基にして、制御要求データ(制御信号)を作成して通知して(S104)、2次側が端末器21を制御する(S105)。
【0038】以上には、インタフェースユニットUは、1次側から2次側の監視制御のみが可能である場合について説明したが、これに加えて、2次側から1次側の監視制御を可能にすることもできる。・・・・・(中略)・・・・・
【0039】また、外部メモリ29には、アドレス管理テーブルとして、2次側アドレスに対応した1次側アドレスを登録したアドレス変換テーブル(図3(a)参照)と、2次側アドレスに対する1次側アドレスの設定有無を登録したアドレス有効マップ(図3(b)参照)を設ける。2次側の照明制御装置20から端末伝送ドライバ6を介して、監視信号を受信したときには、アドレス管理テーブルと1次側状態データテーブルとを参照して、その監視信号に付加された2次側アドレスを1次側アドレスに変換し、その1次側アドレスに対応した端末器11の状態信号を、端末伝送ドライバ6を介して、照明制御装置20に送信する。
【0040】これによって、インタフェースユニットUは、2次側の照明制御装置20から送信されて来る監視信号に対して、1次側の端末器11の状態信号を、1次側の中央監視制御装置10や端末器11に監視信号を送信することなく、このユニットUから返信できる。すなわち、このインタフェースユニットUは、1次側の中央監視制御装置10による2次側の端末器21の監視制御とともに、2次側の照明制御装置20による1次側の端末器11の監視も可能にする。
【0041】一方、2次側の照明制御装置20から端末伝送ドライバ6を介して、制御信号を受信したときには、アドレス管理テーブルと1次側状態データテーブルとを参照して、その制御信号に付加された2次側アドレスを1次側アドレスに変換し、その1次側アドレスに対応した端末器11への制御信号を、端末伝送ドライバ2を介して1次側に送信する。
【0042】これによって、インタフェースユニットUは、2次側の照明制御装置20から送信されて来る制御信号を、1次側の中央監視制御装置10を介して、又は、直接に、1次側の端末器11に対して送信できる。すなわち、インタフェースユニットUは、1次側の中央監視制御装置10による2次側の端末器21の監視制御とともに、2次側の照明制御装置20による1次側の端末器11の制御も可能にする。」(6頁9欄?7頁11欄)

チ.「【0043】次に、インタフェースユニットUへのアドレスの登録について説明する。図5に示すように、インタフェースユニットUには、アドレス管理テーブルに、1次側アドレスと2次側アドレスとを対応させて登録するために操作する操作手段として、複数のスイッチ3を備えている。このスイッチ3は、モードキー、設定キー、削除キー、取消キー、「+」キー、「-」キーなどで構成されており、これらの操作によって、液晶表示部4の表示を見ながらのアドレス設定を可能にしている。
【0044】・・・・・(中略)・・・・・
【0045】次に、選択が確定したアドレスを液晶表示し(S201)、スイッチ3を操作することにより、設定するアドレス(2次側アドレス)を選択して、1組のデータ入力を完了する(S202)。具体的には、「+」キーや「-」キーを操作することにアドレスを選択した後、設定キーを1秒間継続して操作すれば、データ入力が完了する。
【0046】ここで、アドレスの重複異常などを判断し、異常時には液晶表示部4のアドレス表示を点滅させること等によって操作者に通知し、アドレスの再入力を促す(S203)。これによって、アドレスの設定ミスを防ぐことができる。一方、アドレス設定が正常であれば、次のデータ設定を可能とし(S204)、次のデータを設定する場合はS200?S203の動作を繰り返す。設定を完了するときには、設定キーの5秒間の継続操作すれば、アドレス設定モードが解除される。このとき、設定したアドレスは、外部メモリ7にアドレス管理テーブル30,31として格納され、これとともに、このテーブル30,31が展開され、メインCPU1とサブCPU5の各々の内蔵メモリに記憶されたアドレス変換テーブル30,31が更新される(S205)。」(7頁11欄)

リ.「【0047】・・・・・(中略)・・・・・また、インタフェースユニットUへのアドレスの登録は、インタフェースユニットUが、1次側の中央監視制御装置10から端末伝送ドライバ2を介して、アドレス設定信号を受信したときに、そのアドレス設定信号が示す指定に従って、アドレス管理テーブル30,31に、1次側アドレスと2次側アドレスとを対応させて登録することができる。」(7頁11?12欄)

ヌ.「【0053】図8には、上記したアドレス設定の動作を示している。1次側の中央監視制御装置10は伝送データの編集を行い(S300)、そのデータをインタフェースユニットUに伝送する(S301)。インタフェースユニットUは、設定スタートコマンドを受信すると(S310)、アドレス設定モードに移行し、監視信号や制御信号の受信を禁止して、通常の動作を停止する。次いで、全データを書き換える場合は、設定データの消去コマンドを受信することによって(S311)、アドレス管理テーブル30,31を初期化する。そして、データの設定のコマンドを受信して(S312)、アドレスデータを更新し、設定エンドコマンドを受信すると(S313)、外部メモリ7に記憶したテーブルデータを更新し、メインCPU1、サブCPU5の各々の内蔵メモリに記憶されたデータも更新して、通常の動作に戻る。すると、中央監視制御装置10においてもアドレス設定のための伝送を終了する(S302)。」(8頁13欄)

上記引用例の記載及び図面を参照すると、
(a)上記イ.及びロ.【0020】、【0022】、【0023】の記載並びに図2から、引用例には「中央監視制御システム」が記載され、当該「中央監視制御システム」は、「ポーリング等」によって、「端末器11」の監視を行い、「端末器11」に対して「制御信号」を送信する「中央監視制御装置10」と当該「制御信号」により制御される「端末器11」とを備え、当該「中央監視制御装置10」と「端末器11」とを「多重伝送線L1」で接続した1次側監視制御システムを有することが記載されていると認められ、「中央監視制御装置10」あるいは1次側監視制御システムは、「ポーリング等」により通信を行うものといえる。

(b)上記ハ.【0027】の「・・・1次側の監視制御装置である中央監視制御装置10が管理する1次側アドレス・・・」及び同ト.【0039】の「・・・その1次側アドレスに対応した端末器11・・・」という記載、あるいは、ポーリングによる通信において、各端末が、それぞれに割当てられたアドレスにより識別されることは技術常識であるから、引用例の「端末器11」が、固有のアドレスを割り当てた端末器であることは自明のことであり、前記(a)に記載した「端末器11」に対して「制御信号を送信する」際に、「制御信号」が「端末器11」の「固有のアドレス」を含むことは明らかである。

(c)上記ロ.【0021】?【0023】の記載及び図2から、引用例の「中央監視制御システム」は、1次側監視制御システムとは別系統の監視制御システムとして、「端末器21」の監視を行い、「端末器21」に「制御信号」を送信する「照明監視制御装置20」と当該「制御信号」により制御される「端末器21」を備え、当該「照明監視制御装置20」と「端末器21」とを「多重伝送線L2」で接続した2次側監視制御システムを有することが記載されていると認められる。

(d)上記ロ.【0022】、【0023】の記載及び図2から、引用例の「中央監視制御システム」は、「システム拡張端末器U」あるいは「インタフェースユニットU」を備えることが明らかであり、同ニ.【0029】の「・・・また、制御手段は、1次側の中央監視制御装置10から端末伝送ドライバ2を介して、制御信号を受信したときには、・・・その2次側アドレスに対応した端末器21の制御信号を端末伝送ドライバ6介して、多重伝送線L2を通じて送信させる。・・・」、同ヘ.【0034】の「・・・メインCPU1は、中央監視制御装置10から端末ドライバ2を介して、制御信号を受信したときには、・・・制御信号をを作成して、サブCPU5と端末伝送ドライバ6を介して、2次側の多重伝送線L2に送信する。・・・」及び同ト.【0041】の「・・・2次側の照明制御装置20から端末伝送ドライバ6を介して、制御信号を受信したときには、・・・その1次側アドレスに対応した端末器11への制御信号を、端末伝送ドライバ2を介して1次側に送信する。」という記載から、引用例の「システム拡張端末器U」が1次側監視制御システムと2次側監視制御システムとを相互に通信可能に接続することは明らかである。
そして、上記ロ.【0024】及びニ.【0029】の記載から、引用例の「中央監視制御システム」は、2次側監視制御システムの「端末器21」を1次側の監視制御システムから「システム拡張端末器U」を介して制御可能としたことは明らかである。

(e)上記ハ.【0027】及びホ.の記載並びに図3(a)から、引用例の「システム拡張端末器U」は、1次側監視制御システムの「1次側アドレス」と2次側監視制御システムの「2次側アドレス」とを対応させた「アドレス変換テーブル30」を登録した「外部メモリ7」を備えることが明らかである。
そして、同図3(a)から、当該「アドレス変換テーブル30」が、「1次側アドレス」と「2次側アドレス」とを「1対1に対応させた」ものであること、同ニ.【0029】の記載から、当該「2次側アドレス」が2次側監視制御システムで「端末器21」を制御可能なアドレスであることも明らかである。

(f)上記チ.【0043】の「・・・インタフェースユニットUには、・・・1次側アドレスと2次側アドレスとを対応させて登録するために操作する操作手段として、複数のスイッチ3を備えている。・・・」、「・・・これらの操作によって、液晶表示部4の表示を見ながらのアドレス設定を可能にしている。」、同【0046】の「・・・設定したアドレスは、外部メモリ7にアドレス管理テーブル30,31として格納され、・・・」という記載及び図1、5から、引用例の「システム拡張端末器U」は、「アドレス変換テーブル30」(【図面の簡単な説明】、【符号の説明】を参照すると、「アドレス管理テーブル30」は、「アドレス変換テーブル30」を指すものと認められる。)にアドレスを設定するための「操作手段」及び「液晶表示部4」を備えることが明らかであり、同【0043】の「・・・このスイッチ3は、・・・削除キー・・・などで構成されており、・・・」から、当該「操作手段」はアドレスを削除することもできるものと認められる。

(g)上記リ.及びヌ.の記載並びに図8から、引用例の「中央監視制御システム」では、「中央監視制御装置10」が「アドレス変換テーブル30」の編集機能を有し、「システム拡張端末器U」は、当該「中央監視制御装置10」で編集されたデータを受信して、「外部メモリ7」の「アドレス変換テーブル30」を更新することが明らかであり、「システム拡張端末器U」が、1次側監視制御システムの「多重伝送路L1」を通じて、「中央監視制御装置10」で編集された伝送データを受信することは自明のことである。

したがって、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ポーリング等により通信を行い、固有のアドレスを割り当てた端末器11に対して、その固有のアドレスを含んだ制御信号を送信する中央監視制御装置10と、その制御信号により制御される端末器11とを多重伝送線L1で接続した1次側監視制御システムと、
制御信号を送信する照明制御装置20と、その制御信号により制御される端末器21とを多重伝送線L2で接続した2次側監視制御システムと、
1次側および2次側監視制御システムを相互に通信可能に接続するシステム拡張端末器Uとを備えて構成され、2次側監視制御システムの端末器21を、1次側監視制御システムから拡張端末器Uを介して制御可能とした中央監視制御システムであって、
前記システム拡張端末器Uは、
前記1次側監視制御システムの1次側アドレスと、前記2次側通信システムで端末器21を制御可能なアドレスである2次側アドレスとを1対1に対応させたアドレス変換テーブル30を登録する外部メモリ7と、
前記アドレス変換テーブル30にアドレスを設定、削除するための操作手段と液晶表示部4とを備えており、
前記アドレス変換テーブル30の編集機能を有する前記1次側監視制御システムの中央監視制御装置10で編集されたデータを、前記1次側監視制御システムの多重伝送線L1を通じて受信し、前記外部メモリ7のアドレス変換テーブルを更新する中央監視制御システム。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
イ.引用発明の「中央監視制御装置10」、「多重伝送線L1」は、本願発明の「センタ装置」、「多重伝送線」にそれぞれ相当し、引用発明の「制御信号により制御される」と本願発明の「制御信号で指定された処理をなす」とは実質的な差異はなく、引用発明の「端末器11」は本願発明の「端末器」に相当する。
そして、引用発明の「ポーリング等」と本願発明の「ポーリング/セレクティング方式」とは、いずれも「ポーリング等」という点で一致し、引用発明の「1次側監視制御システム」と本願発明の「1次側通信システム」とは、いずれも監視制御のために通信をするものであるから、実質的な差異はない。

ロ.引用発明の「制御信号を送信する照明制御装置20と、その制御信号により制御される端末器21とを多重伝送線L2で接続した2次側監視制御システム」と本願発明の「1次側通信システムと同様な構成に加えて自システムの端末器を制御可能な制御端末器をも具備する2次側通信システム」は、いずれも監視制御のために通信をするものであるから、「2次側通信システム」という点で一致する。

ハ.引用発明の「システム拡張端末器U」は、本願発明の「システム拡張端末器」に相当し、引用発明の「端末器21」と本願発明の「制御端末器」とは、いずれも「端末器」という点で一致し、引用発明の「中央監視制御システム」と本願発明の「複合型監視制御システム」とは、いずれも「1次側通信システム(1次側監視制御システム)」と「2次側通信システム(2次側監視制御システム)」とを備え、「2次側通信システム(2次側監視制御システム)」の「端末器」を「1次側通信システム(1次側監視制御システム)」から「システム拡張端末器(U)」を介して制御可能とするものであるから、実質的な差異はない。

ニ.引用発明の「1次側監視制御システムの1次側アドレス」と本願発明の「1次側通信システムで端末器に割り当てられていないアドレスである1次側アドレス」とは、いずれも「1次側通信システムの1次側アドレス」という点で一致する。
そして、引用発明の「アドレス変換テーブル30」、「外部メモリ7」は、本願発明の「アドレス変換データ」、「メモリ部」にそれぞれ相当し、引用発明の「登録する」と本願発明の「予め登録する」とは実質的な差異はない。

ホ.引用発明の「アドレス変換テーブル30にアドレスを設定、削除する」ことは、「アドレス変換テーブル30」を変更することと実質的な差異はないので、引用発明の「アドレス変換テーブル30にアドレスを設定、削除するための操作手段と液晶表示部4」は、本願発明の「アドレス変換データを変更操作するための表示操作部」に相当する。

ヘ.引用発明の「前記アドレス変換テーブル(アドレス変換データ)の編集機能を有する前記1次側監視制御システム(1次側通信システム)の中央監視制御装置10(センタ装置)」は、本願発明の「前記1次側通信システムのセンタ装置を少なくとも含み、前記アドレス変換データの編集機能を有するアドレス変換データ編集装置」に含まれるものであるから、両者の間に差異はなく、引用発明の「受信」、「外部メモリ7のアドレス変換テーブルを更新する」と本願発明の「ダウンロード」、「メモリ部に登録更新して運用し」とは実質的な差異はない。
また、引用発明の「編集されたデータ」は、「アドレス変換テーブル30」を更新するものであるから、アドレス変換に関するデータといえ、本願発明の「編集されたアドレス変換データ」と実質的な差異はない。
したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「ポーリング等での通信を行い固有のアドレスを割り当てた端末器に対して、そのアドレスを含んだ制御信号を送信するセンタ装置と、その制御信号で指定された処理をなす端末器とを多重伝送線で接続した1次側通信システムと、
2次側通信システムと、
1次側および2次側通信システムの相互間を通信可能に接続するシステム拡張端末器とを備えて構成され、2次側通信システムを構成する端末器を、1次側通信システムからシステム拡張端末器を介して制御可能とした複合型監視制御システムであって、
前記システム拡張端末器は、
前記1次側通信システムの1次側アドレスと、前記2次側通信システムで端末器を制御可能なアドレスである2次側アドレスとを1対1に対応させたアドレス変換データを予め登録するメモリ部と、
前記アドレス変換データを変更操作するための表示操作部とを備えており、
前記1次側通信システムのセンタ装置を少なくとも含み、前記アドレス変換データの編集機能を有するアドレス変換データ編集装置で編集された前記アドレス変換データを、前記1次側通信システムの多重伝送線を通じてダウンロードし、前記メモリ部に登録更新して運用することを特徴とする複合型監視制御システム。」

<相違点>
(a)上記「ポーリング等」に関し、本願発明は「ポーリング/セレクティング方式」であるのに対し、引用発明では当該「セレクティング方式」が明示されていない点。
(b)上記「2次側通信システム」に関し、本願発明では「1次側通信システムと同様な構成に加えて自システムの端末器を制御可能な制御端末器をも具備する」のに対し、引用発明では「制御信号を送信する照明制御装置20と、その制御信号により制御される端末器21とを多重伝送線L2で接続した」ものであり、「1次側通信システムと同様な構成」であることは明示されておらず、また、「自システムの端末器を制御可能な制御端末器」は具備していない点。
(c)上記「複合型監視制御システム」に関し、本願発明は「1次側通信システムをメインシステムとし、そのサブシステムとしての2次側通信システム」であるのに対し、引用発明では当該構成は明示されていない点。
(d)上記「2次側通信システムを構成する端末器」に関し、本願発明は「2次側通信システムを構成する制御端末器」であるのに対し、引用発明では「制御端末器」を具備していない点。
(e)上記「アドレス変換データ」における「1次側通信システムの1次側アドレス」に関し、本願発明では「1次側通信システムで端末器に割り当てられていないアドレスである」のに対し、引用発明では当該構成を具備していない点。
(f)上記「1次側通信システムのセンタ装置」に関し、本願発明は「アドレス変換データを編集するGUIに、1次側通信システムの未使用なアドレスを一覧できる機能を有する」のに対し、引用発明では当該構成は明示されていない点。

4.検討
上記相違点(a)について検討する。
引用発明のような監視制御装置と端末器を備え、監視制御装置から端末器に制御信号を送信する監視制御システムにおいて、監視制御装置と端末器との間の通信が、ポーリング及びセレクティング方式で行われることは周知(例えば、特開平9-46774号公報(【0003】?【0005】及び図5)、特開2006-13861号公報(【0015】?【0017】、【0040】、【0041】及び図1、2)参照。)のことであり、引用発明において「ポーリング等」を「ポーリング/セレクティング方式」とすることは、当業者が周知技術に基づいて適宜なし得ることである。

次に、上記相違点(b)、(d)について検討する。
上記相違点(a)についての検討と同様に、監視制御装置と端末器を備えた監視制御システムにおいて、監視制御装置と端末器との間の通信が、ポーリング及びセレクティング方式で行われることは周知のことである。
すると、引用発明の「2次側監視制御システム(2次側通信システム)」は、「1次側監視制御システム(1次側通信システム)」と同様に、監視制御装置としての「照明制御装置20」と「端末器21」を「多重伝送線L2」で接続し、「照明制御装置20」が送信する制御信号により「端末器21」を制御するものであるから、周知のポーリング及びセレクティング方式で通信を行えることは明らかであり、引用発明の「2次側監視制御システム(2次側通信システム)」を「1次側監視制御システム(1次側通信システム)と同様の構成」とすることは、当業者が周知技術に基づいて適宜なし得ることである。
一方、本願発明の「制御端末器」に関し、本願明細書【0009】、【0021】?【0027】を参照すると、本願発明の「制御端末器」が「端末器」を制御可能であることは、「制御端末器」が制御された結果に基づいて、「端末器」が表示を変更するよう制御されることを指すものと認められるが、監視制御システムにおいて当該「制御端末器」を備えることは周知(例えば、上記相違点(a)について例示した特開平9-46774号公報(【0003】?【0005】及び図5において、操作表示端末器の表示が監視制御端末器からの状態信号により制御される旨の記載)、同特開2006-13861号公報(【0015】?【0017】、【0021】及び図1において、操作表示器の表示が設備機器からの状態変化の情報に基づいて制御される旨の記載)、特開2002-325290号公報(【0022】及び図2)参照。)のことであり、引用発明の「2次側監視制御システム(2次側通信システム)」に端末器を制御可能な制御端末器を具備すること、そして、「2次側監視制御システム(2次側通信システム)を構成する端末器」を「2次側通信システムを構成する制御端末器」とすることも、当業者が周知技術に基づいて適宜なし得ることである。

続いて、上記相違点(c)について検討する。
上記「2.引用例」のロ.【0024】の「このような構成にすることによって、中央監視制御装置10(1次側)が監視制御しているシステムを拡張することができ、中央監視制御装置10によって、照明制御装置(2次側)に接続されている端末器21を監視制御できるようになる。・・・」という記載から、引用発明では、「1次側監視制御システム(1次側通信システム)」が主として存在していたものといえ、「1次側監視制御システム(1次側通信システム)」から「2次側監視制システム(2次側通信システム)」の「端末器21」を監視制御することができるので、引用発明において、「1次側監視制御システム(1次側通信システム)」をメインシステムとし、拡張された「2次側監視制システム(2次側通信システム)」をサブシステムとすることは、当業者であれば自ずと想到し得ることである。

さらに、上記相違点(e)について検討する。
上記「2.引用例」のト.【0038】、【0041】及び【0042】に記載されるように、引用発明では、「2次側監視制御システム(2次側通信システム)」から「1次側監視制御システム(1次側通信システム)」を監視制御することもできるため、「アドレス変換テーブル(アドレス変換データ)」の「1次側アドレス」の構成が、必ずしも本願発明とは一致していない。
しかしながら、引用発明において、「1次側監視制御システム(1次側通信システム)」から「2次側監視制御システム(2次側通信システム)」を監視制御する場合には、「アドレス変換テーブル(アドレス変換データ)」の「1次側アドレス」として、「2次側監視制御システム(2次側通信システム)」の「端末器21」を指定するためのアドレスのみが必要であることは自明のことであり、その際、当該「1次側アドレス」は、「1次側監視制御システム(1次側通信システム)」の「端末器11」に「割り当てられていないアドレス」とすることは当然のことであり、上記相違点(e)は、当業者であれば適宜なし得ることである。

最後に、上記相違点(f)について検討する。
引用発明において、「1次側監視制御システム(1次側通信システム)」の「中央監視制御装置10(センタ装置)」が、「システム拡張器U」と同様に「アドレス変換テーブル(アドレス変換データ)」の編集を行えることから、「システム拡張器U」が備える「操作手段と液晶表示部4」と同等の構成をアドレス変換データを編集するGUIとして、「中央監視制御装置10(センタ装置)」に設けることは、当業者であれば自ずと想到し得ることである。
一方、監視制御システムにおいてアドレスを設定する際に、監視制御装置等が、監視制御システムにおいて未使用なアドレスを一覧できる機能を有することは周知(例えば、特開平4-156099号公報(第2頁左上欄第11行?右上欄第14行、第4頁右上欄第7?9行、第5頁左上欄第18行?左下欄第10行及び第1、5、6、12図)、特開平11-298978号公報(【請求項4】他)、拒絶査定において記載された特開2003-198597号公報(【0036】)参照。)のことであるから、引用発明の「1次側監視制御システム(1次側通信システム)」の「中央監視制御装置10(センタ装置)」の「アドレス変換テーブル(アドレス変換データ)」を編集するGUIに、「1次側監視制御システム(1次側通信システム)」の未使用なアドレスを一覧できるようにすることは、引用発明に周知技術を採用することにより適宜なし得ることである。
なお、請求人は、審判請求書において、上記原審において周知技術として例示した特開2003-198597号公報は、オフィスビル等の設備機器を監視、制御する第1、2のシステム間を通信可能に接続するシステム拡張端末器についての記載はなく、本願発明の動機にならない旨主張しているが、システム内の未使用なアドレスを一覧できるようにすることは、様々なアドレス設定作業において、当該設定作業を容易にするためのものであることは明らかであり、システム拡張端末器に特有のものとは認められないので、請求人の主張を採用することはできない。

よって、上記相違点(a)?(f)は、いずれも格別なものではない。
そして、本願発明の作用効果も引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-12 
結審通知日 2013-04-16 
審決日 2013-04-30 
出願番号 特願2006-319335(P2006-319335)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 脇水 佳弘  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 山中 実
山本 章裕
発明の名称 複合型監視制御システム  
代理人 中井 宏行  

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