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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1275529
審判番号 不服2012-16809  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-29 
確定日 2013-06-12 
事件の表示 特願2008-507378「光学フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月 4日国際公開、WO2007/111026〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2007年3月28日(優先権主張2006年3月29日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成24年4月23日付けで手続補正がなされ、同年5月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月29日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。
なお、請求人は、当審における平成24年11月30日付けの審尋に対して平成25年2月1日付けで回答書を提出している。

第2 平成24年8月29日付け手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成24年8月29日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成24年8月29日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであって、特許請求に範囲については、本件補正前の請求項1に、

「透光性基体上に、樹脂層を積層した積層体であって、
該樹脂層は、透光性樹脂微粒子と放射線硬化型樹脂組成物とを含有し、ヘイズ値が40?60、0.5mm幅の光学くしを用いた透過像鮮明度が5?35%であり、
該樹脂層の最表面の平均傾斜角度が0.8?1.15度の微細な凹凸形状を有することを特徴とする光学フィルム。」とあったものを、

「透光性基体上に、樹脂層を積層した積層体であって、
該樹脂層は、透光性樹脂微粒子と放射線硬化型樹脂組成物とを含有し、ヘイズ値が40?60、0.5mm幅の光学くしを用いた透過像鮮明度が5?35%であり、
該樹脂層の最表面の平均傾斜角度が0.8?1.15度の微細な凹凸形状を有し、
該凹凸形状が該樹脂層に該透光性樹脂微粒子を分散・含有せしめて形成されたものであることを特徴とする光学フィルム。」とする補正を含むものである(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「凹凸形状」が、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「樹脂層」に本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「透光性樹脂微粒子」を「分散・含有せしめて形成されたものである」と限定するものである。

2 本件補正の目的
本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された「本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-4417号公報(以下「引用例」という。)」には、次の事項が図とともに記載されている。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)、フラットパネルディスプレイ(FPD)、有機EL、PDPなどの表示装置において、画面の視認性の低下を抑えるために用いられている光拡散性シート、また当該光拡散性シートが設けられている光学素子に関する。さらには当該光学素子が用いられている画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、LCDなどの画像表示装置は、表示装置表面に蛍光燈などの室内照明、窓からの太陽光の入射、操作者の影などの写り込みにより、画像の視認性が妨げられる。そのため、LCD表面には、画像の視認性を向上するために、表面反射光を拡散し、外光の正反射を抑え、外部環境の写り込みを防ぐことができる(防眩性を有する)微細凹凸構造を形成させた光拡散層が設けられている。光拡散層の形成方法としては、構造の微細化が容易なこと、また生産性がよいことから微粒子を分散した樹脂をコーティングして透明樹脂層を形成する方法が主流となっている。
【0003】
しかし、高精細(たとえば、120ppi以上)なLCDの場合に、これに上記光拡散層を装着すると、光拡散層の表面で突出した粒子により形成される微細凹凸構造の凸形状のレンズ効果により、LCD表面でのギラツキがひどく画質の低下を招く。また白ボケ、画像鮮明性の低下により表示品位が著しく損なわれる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高精細なLCDに適用した場合にも防眩性を維持しつつ、画面のギラツキ、白ボケを抑えることができ、画像鮮明性に優れた光拡散性シートを提供することを目的とする。また当該光拡散性シートが設けられている光学素子、さらには当該光学素子を用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す光拡散性シートにより前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0006】
すなわち本発明は、透明基板の少なくとも片面に、表面に微細凹凸形状が形成されている透明樹脂層が設けられている光拡散性シートにおいて、
当該光拡散性シートのヘイズ値が30%以上であり、
中心線平均表面粗さ(Ra:μm)と平均山谷間隔(Sm:μm)の比(Ra/Sm)が0.005以下、かつ、0.1≦Ra≦0.4、
を満足することを特徴とする光拡散性シート、に関する。
【0007】
一般にLCDのギラツキ現象の発生メカニズムとして、表面凹凸構造のレンズ効果によりランダムな強弱光により生じるレンズ効果によって引き起こされると考えられることから、上記本発明は、ヘイズ値を30%以上になるようにしてギラツキを抑えている。ヘイズ値は35%以上、さらには40%以上であるのが好ましい。なお、ヘイズ値は、画像鮮明性の点から50%以下、さらには45%以下であるのが好ましい。上記へイズ値は、表面凹凸による透過光の表面拡散により調整でき、また透明樹脂層の内部に埋没させた添加粒子などによる内部拡散により調整することができる。
【0008】
また、白ボケは、表面凹凸構造によって、外光が散乱することで引き起こされると考えられる。画像鮮明性の低下は、透過光が表面凹凸構造によって散乱することで引き起こされると考えられる。そのため、本発明では、表面凹凸構造の中心線平均表面粗さ(Ra:μm)と平均山谷間隔(Sm:μm)の比(Ra/Sm)を0.005以下にし、かつ、0.1≦Ra≦0.4とすることにより、良好な防眩性を維持しつつ、画面のギラツキ、白ボケを低減し、画像鮮明度の低下を抑えている。比(Ra/Sm)が0.005を超えると、白ボケが多くなり、また画像鮮明性が低下する。比(Ra/Sm)は0 .004以下、さらには0.003以下であるのが好ましい。また、Raが0.4μmを超えると、比(Ra/Sm)が0.005以下であってもギラツキなどの特性が低下する。Raが0.1μm未満では防眩性が不十分な点で好ましくない。一方、Raは0.3μm以下であるのが好ましい。なお、Smは、Raとの関係で、前記比(Ra/Sm)が0.005以下であれば特に制限されないが、30≦Sm≦80、さらには40≦Sm≦60、であるのが好ましい。」

(2)「【0009】
また本発明は、透明基板の少なくとも片面に、表面に微細凹凸形状が形成されている透明樹脂層が設けられており、さらに微細凹凸形状表面に、透明樹脂層の屈折率よりも低い屈折率の低屈性率層が設けられている光拡散性シートにおいて、
当該光拡散性シートのヘイズ値が30%以上であり、
中心線平均表面粗さ(Ra:μm)と平均山谷間隔(Sm:μm)の比(Ra/Sm)が0.005以下、かつ、0.1≦Ra≦0.4、
を満足することを特徴とする光拡散性シート、に関する。
【0010】
低屈折率層を設けた場合にも前記表面特性を満足することにより、防眩性を維持しつつ、画面のギラツキ、白ボケを抑えることができ、画像鮮明性の良好な光拡散性シートが得られる。また低屈折率層により反射防止機能を付与でき、ディスプレイ等の画像表面の乱反射により、画面の黒表示の視認性を低下させる、白ボケを有効に抑えることができる。
【0011】
前記光拡散性シートにおいて、微細凹凸形状表面の写像鮮明度が20%以上であることが好ましい。良好な画像鮮明度を得るためには、写像鮮明性が20%以上、さらには良好な画像鮮明度を得るためには、写像鮮明性が30%以上、であるのが好ましい。
【0012】
前記光拡散性シートにおいて、微細凹凸形状表面の60°光沢度が70%以下であることが好ましい。前記60°光沢度を70%以下とすることにより、写り込みの防止が良好であり防眩性が良い。前記60°光沢度は60%以下、さらには40?50%とするのが好ましい。
【0013】
前記光拡散性シートにおいて、透明樹脂層が微粒子を含有しており、かつ透明樹脂層の表面凹凸形状が微粒子によって形成されていることが好ましい。また、透明樹脂層が紫外線硬化型樹脂により形成されていることが好ましい。
【0014】
微粒子を用いることにより、表面凹凸形状を有する透明樹脂層を簡易かつ確実に実現でき、また上記中心線平均表面粗さ(Ra)および平均山谷間隔(Sm)の調整も容易である。特に、微粒子として有機系微粒子を用いた場合には、ギラツキを抑えるうえで有効である。また、紫外線硬化型樹脂は紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく透明樹脂層(光拡散層)を形成することができる。
【0015】
また本発明は、前記光拡散性シートが、光学素子の片面又は両面に設けられていることを特徴とする光学素子、に関する。さらには前記光学素子を用いたことを特徴とする画像表示装置、に関する。」

(3)「【0072】
【実施例】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何等限定されるものではない。
【0073】
実施例1
ウレタンアクリル系紫外線硬化型樹脂(屈折率1.51)100重量部に対して、微粒子として平均粒子径3.5μmのポリスチレンビーズ14重量部、ベンゾフェノン系光重合開始剤5重量部、チキソトロピー剤(スメクタイト)2.5重量部及びその固形分が32重量%となるように計量された溶剤(トルエン)とを混合した塗工液を、トリアセチルセルロース上に塗布し、120℃で5分間乾燥した後、紫外線照射により硬化処理して、厚さ約5μmの微細凹凸構造表面の透明樹脂層を有する光拡散性シートを作製した。
【0074】
実施例2
実施例1において、透明樹脂層の微細凹凸構造表面に、さらに透明樹脂層の屈折率(1.51)よりも低い低屈折率層(材料:フッ素変性ポリシロキサン,屈折率:1.39)を0.1μm設けたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0075】
実施例3
実施例1において、微粒子である平均粒子径3.5μmのポリスチレンビーズの添加量を12重量部に変えたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0076】
実施例4
実施例1において、固形分濃度34%に調整した塗工液を用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0077】
実施例5
実施例1において、微粒子である平均粒子径3.5μmのポリスチレンビーズの添加量を16重量部に変えたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。」

(4)「【0082】
上記実施例、比較例で得られた光拡散性シートの表面凹凸構造の形状(Sm,Ra)を、JIS B0601(1982年)に準じ、測定長さを3mmとし、触針式表面粗さ測定機として株式会社東京精密製のサーフコム470Aを用いて測定した。
【0083】
光拡散性シートのヘイズ値をJIS-K7105に準じ、スガ試験機(株)製ヘイズメーターにより測定した。また、写像鮮明度はJIS K7105-1981に準じて、スガ試験機(株)製(ICM-1)を用いて測定した。また、60°光沢度をJIS K7105-1981に準じて、スガ試験機(株)製(デジタル変角光沢計UGV-5DP)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0084】
(評価)
上記実施例、比較例で得られた光拡散性シートの透明基板に偏光板(185μm)を貼り合わせた偏光板をガラス基板に接着したもの(サンプル)を用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。なお、室内蛍光灯下における写り込み(防眩性)はいずれも良好であった。
【0085】
(ギラツキ)
サンプルのガラス基板側を、ライトテーブル上に固定されたマスクパターン(200ppi)上に載せ、ギラツキ度合い(ギラツキ)を目視により以下の基準で評価した。
◎…ギラツキが全くない。
○…ギラツキがほとんどない。
△…ギラツキが小さく実用上問題はない。
×…ギラツキがある。
【0086】
(白ボケ)
サンプルのガラス基板側に黒テープを貼り付けて、室内蛍光灯下(700ルクス)での、光拡散性シートの微細凹凸構造表面の白色度を目視により以下の基準で評価した。
◎…表面の白さは全くない。
○…表面の白さはほとんどない。
△…表面の白さはあるが実用上問題ない。
×…表面が白く画像がみえない。
【0087】
(画像鮮明性)
サンプルのガラス基板側をライトテーブル上に固定されたマスクパターンに載せ、ピントが合ったときのパターン像をルーペにて以下の基準で評価した。
◎…画像の輪郭がぼやけない。
○…画像の輪郭がほとんどぼけない。
△…画像の輪郭がばやけるが実用上問題ない。
×…画像の輪郭がぼやける。
【0088】
【表1】



(5)表1の記載から、実施例1、3、5の(ヘイズ(%)、Ra(μm)、Sm(μm)、写像鮮明度)は、それぞれ、(42.1%、0.20μm、50(=0.20÷0.004)μm、30.5%)、(40.5%、0.14μm、70(=0.14÷0.002)μm、35.9%)、(44.3%、0.25μm、50(=0.25÷0.005)μm、15.5%)であることが見て取れる。

(6)上記(1)ないし(5)から、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。
「透明基板の少なくとも片面に、防眩性を有する微細凹凸構造を有する透明樹脂層が設けられている光拡散性シートにおいて、
高精細(たとえば、120ppi以上)なLCDの場合には、光拡散層の表面で突出した粒子により形成される微細凹凸構造の凸形状のレンズ効果により、LCD表面でのギラツキがひどく画質の低下を招き、白ボケ、画像鮮明性の低下により表示品位が著しく損なわれるので、
表面凹凸による透過光の表面拡散により調整でき、また透明樹脂層の内部に埋没させた添加粒子などによる内部拡散により調整することができる当該光拡散性シートのへイズ値を30%以上、好ましくは40%以上になるようにしてギラツキを抑え、
白ボケは、表面凹凸構造によって、外光が散乱することで引き起こされ、画像鮮明性の低下は、透過光が表面凹凸構造によって散乱することで引き起こされると考えられるため、中心線平均表面粗さ(Ra:μm)と平均山谷間隔(Sm:μm)の比(Ra/Sm)を0.005以下とし、かつ、中心線平均表面粗さ(Ra)は、0.1μm未満では防眩性が不十分な点で好ましくないので、中心線平均表面粗さ(Ra)が0.1≦Ra≦0.4、を満足するようにして、
高精細なLCDに適用した場合にも良好な防眩性を維持しつつ、画面のギラツキ、白ボケを低減し、画像鮮明度の低下を抑えて、画像鮮明性に優れたものとした光拡散性シートであって、
中心線平均表面粗さ(Ra)は好ましくは0.3μm以下であり、Smは、Raとの関係で、前記比(Ra/Sm)が0.005以下であれば特に制限されず、
ウレタンアクリル系紫外線硬化型樹脂(屈折率1.51)100重量部に対して、微粒子として平均粒子径3.5μmのポリスチレンビーズ14重量部、ベンゾフェノン系光重合開始剤5重量部、チキソトロピー剤(スメクタイト)2.5重量部及びその固形分が32重量%となるように計量された溶剤(トルエン)とを混合した塗工液を、トリアセチルセルロース上に塗布し、120℃で5分間乾燥した後、紫外線照射により硬化処理して、厚さ約5μmの微細凹凸構造表面の透明樹脂層を有する光拡散性シートを作製した実施例1、実施例1において、微粒子である平均粒子径3.5μmのポリスチレンビーズの添加量を12重量部に変えたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した実施例3、及び、実施例1において、微粒子である平均粒子径3.5μmのポリスチレンビーズの添加量を16重量部に変えたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した実施例5について、それぞれ、得られた光拡散性シートの表面凹凸構造の形状(Sm,Ra)を、JIS B0601(1982年)に準じ、測定長さを3mmとし、触針式表面粗さ測定機として株式会社東京精密製のサーフコム470Aを用いて測定し、光拡散性シートのヘイズ値をJIS-K7105に準じ、スガ試験機(株)製ヘイズメーターにより測定し、また、写像鮮明度をJIS K7105-1981に準じて、スガ試験機(株)製(ICM-1)を用いて測定したところ、実施例1、3及び5の“ヘイズ値、Ra、Sm、写像鮮明度”は、それぞれ、“42.1%、0.20μm、50μm、30.5%”、“40.5%、0.14μm、70μm、35.9%”、“44.3%、0.25μm、50μm、15.5%”であった、光拡散性シート。」(以下「引用発明」という。)

4 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「『透明基板』、『トリアセチルセルロース』」、「透明樹脂層」、「透明樹脂層が設けられている光拡散性シート」、「透明基板の少なくとも片面に、防眩性を有する微細凹凸構造を有する透明樹脂層が設けられている光拡散性シート」、「ポリスチレンビーズ」、「ウレタンアクリル系紫外線硬化型樹脂」、「ヘイズ値」、「写像鮮明度」及び「微細凹凸構造」は、それぞれ、本願補正発明の「透光性基体」、「樹脂層」、「『積層体』、『光学フィルム』」、「透光性基体上に、樹脂層を積層した積層体」、「透光性樹脂微粒子」、「放射線硬化型樹脂組成物」、「ヘイズ値」、「透過像鮮明度」及び「微細な凹凸形状」に相当する。

(2)引用発明の実施例1、3及び5の「光学フィルム(光拡散性シート)」は、「放射線硬化型樹脂組成物(ウレタンアクリル系紫外線硬化型樹脂)」(屈折率1.51)100重量部に対して、微粒子として平均粒子径3.5μmの「透光性樹脂微粒子(ポリスチレンビーズ)」14重量部、12重量部又は16重量部、ベンゾフェノン系光重合開始剤5重量部、チキソトロピー剤(スメクタイト)2.5重量部及びその固形分が32重量%となるように計量された溶剤(トルエン)とを混合した塗工液を、「透光性基体(トリアセチルセルロース)」上に塗布し、120℃で5分間乾燥した後、紫外線照射により硬化処理して作製した、厚さ約5μmの「微細な凹凸形状(微細凹凸構造)」表面の「樹脂層(透明樹脂層)」を有するものであり、そのヘイズ値42.1%、40.5%、44.3%は、本願補正発明のヘイズ値の範囲40?60の範囲内の値であるから、引用発明の「樹脂層」と本願補正発明の「樹脂層」とは「透光性樹脂微粒子と放射線硬化型樹脂組成物とを含有し、ヘイズ値が40?60であ」る点で一致し、引用発明の「光学フィルム」と本願補正発明の「光学フィルム」とは「該樹脂層に該透光性樹脂微粒子を分散・含有せしめて形成された、該樹脂層の最表面の微細な凹凸形状を有し」ている点で一致する。

(3)上記(1)及び(2)から、本願補正発明と引用発明とは、
「透光性基体上に、樹脂層を積層した積層体であって、
該樹脂層は、透光性樹脂微粒子と放射線硬化型樹脂組成物とを含有し、ヘイズ値が40?60であり、
該樹脂層の最表面の微細な凹凸形状を有し、
該凹凸形状が該樹脂層に該透光性樹脂微粒子を分散・含有せしめて形成されたものである光学フィルム。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
前記光学フィルムの0.5mm幅の光学くしを用いた透過像鮮明度が、本願補正発明では、5?35%であるのに対して、引用発明では明らかでない点。

相違点2:
前記微細な凹凸形状の平均傾斜角度が、本願補正発明では「0.8?1.15度」であるのに対して、引用発明では明らかでない点。

5 判断
上記相違点1及び2について検討する。
(1)相違点1について
引用発明では、「透過像鮮明度(写像鮮明度)」をJIS K7105-1981に準じて、スガ試験機(株)製(ICM-1)を用いて測定しているところ、スガ試験機(株)製(ICM-1)で用いる光学くしの幅は0.125mmであるが、0.5mm幅の光学くしを用いて透過像鮮明度を測定することは、本願の優先日前に周知である(以下「周知技術1」という。例.特開2001-281411号公報(5頁右欄19?23行、【0019】の最初の記載参照。)、特開平10-20103号公報(【0040】、【0041】【表1】参照。)、特開2005-227407号公報(【0049】))。
ここで、上記特開平10-20103号公報の【表1】の実施例1や比較例1ないし3における、光学くし0.125mmを用いた像鮮明度と光学くし0.5mmを用いた像鮮明度とは、光学くし0.5mmを用いた像鮮明度の方が光学くし0.125mmを用いた像鮮明度よりも2%ないし4%低い値となっていることが把握される。
ところで、引用発明の実施例1、3及び5における光学くし0.125mmを用いた像鮮明度は、それぞれ、30.5%、35.9%、15.5%であるから、引用発明の実施例1、3及び5における光学くし0.5mmを用いた像鮮明度は3%低い値であるとすると、27.5%、32.9%、12.5%程度であるともいえる。
したがって、引用発明において、前記「光学フィルム」の0.5mm幅の光学くしを用いた透過像鮮明度を5?35%程度となすこと、すなわち、引用発明において上記相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が周知技術1に基づいて適宜なし得た程度のことである。

(2)相違点2について
ア 平均傾斜角度が0.1°ないし2.5°である微細な凹凸形状を有する光学フィルムは、本願の優先日前に周知である(以下「周知技術2」という。例.国際公開第2005/124405号(14頁4行参照。)、特開2006-30983号公報(11頁2行、【0044】参照。)、上記特開2005-227407号公報(【請求項3】参照))。
イ 引用発明において、前記「微細な凹凸形状」の平均傾斜角度を0.1°ないし2.5°となすことは、当業者が周知技術2に基づいて適宜なし得た程度のことである。
ウ 本願明細書の発明の詳細な説明には、「 本発明では、以上説明した樹脂層中に透光性樹脂微粒子を分散・含有せしめて、樹脂層表面に微細な凹凸を形成するものであり、この樹脂層の最表面の平均傾斜角度が0.8?3.0度の範囲にあり、好ましくは0.9?2.0度、より好ましくは0.9?1.5度である。平均傾斜角度が0.8度未満では防眩性が悪化し、平均傾斜角度が3.0度を超えるとコントラストが悪化するため、ディスプレイ表面に用いる光学フィルムに適さなくなる。」(【0023】)と記載されている。
エ 本願補正発明において微細な凹凸形状の平均傾斜角度を0.8?1.15度にした技術上の意義は、上記ウからみて、平均傾斜角度が0.8度未満では防眩性が悪化し、平均傾斜角度が3.0度を超えるとコントラストが悪化するためであると解されるところ、微細な凹凸形状の平均傾斜角度が上記の範囲0.8?1.15度内である光学フィルムは、上記特開2005-227407号公報の【0043】に「0.895°」として、同公報の【0091】【表1】の実施例1の「1.12」として記載されており、0.8?1.15度の範囲も新規な範囲でもない。
オ 上記アないしエからして、引用発明において、前記「微細な凹凸形状」の平均傾斜角度を「0.8?1.15度」の範囲内の値となすこと、すなわち、引用発明において、上記相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が周知技術2に基づいて適宜なし得た程度ことである。

(3)効果について
本願補正発明の奏する効果は、当業者が引用発明の奏する効果、周知技術1の奏する効果及び周知技術2の奏する効果から予測することができた程度のものである。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、当業者が引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものである。
本願補正発明は、当業者が引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成24年4月23日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年4月23日付けで補正された明細書及び特許請求の範囲の記載からみて、上記「第2〔理由〕1(1)」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものであると認める。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びそれらの記載事項は、上記「第2〔理由〕3」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、上記「第2〔理由〕1(2)」のとおり、本願発明の発明特定事項を限定するものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2〔理由〕5」に記載したとおり、当業者が引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-17 
結審通知日 2013-04-18 
審決日 2013-05-01 
出願番号 特願2008-507378(P2008-507378)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 最首 祐樹後藤 亮治  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 鉄 豊郎
西村 仁志
発明の名称 光学フィルム  
代理人 末成 幹生  

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