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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1276008
審判番号 不服2010-14760  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-02 
確定日 2013-06-26 
事件の表示 特願2002-306819「歯周炎治療における補助剤としてのカルメグゲル」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月20日出願公開、特開2003-171301〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2002年10月22日(パリ条約による優先権主張2001年11月9日、タイ国)を出願日とする出願であって、平成22年1月21日に手続補正書が提出され、平成22年2月24日付けで拒絶査定がなされたところ、同年7月2日に本件審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後、平成23年10月28日付けで審尋が通知され、平成24年5月1日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成22年7月2日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成22年7月2日付けの手続補正を却下する。

[理 由]
(1)補正事項
平成22年7月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲に、
「【請求項1】歯周炎の補助治療のための成分であって、
(1)カルメグ抽出物及びカルメグの活性を促進する植物の抽出物と、
(2)生分解性のトリグリセリド/リン脂質、又はチップ、もしくは軟膏を含むゲル基体
の混合物とから成る、含有成分。」
とあったのを、
「【請求項1】歯周炎の補助治療のための成分であって、
(1)カルメグ抽出物と、
(2)生分解性のトリグリセリド/リン脂質、又はチップ、もしくは軟膏を含むゲル基体
の混合物とから成る、含有成分。」
とする補正を包含するものである。

(2)補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1において、成分(1)を「カルメグ抽出物及びカルメグの活性を促進する植物の抽出物」から「カルメグ抽出物」にするものである。
そして、本件補正により、請求項1に記載の発明は、成分(1)の点で拡張されたものと認められるから、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。また、請求項の削除、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明のいずれの事項を目的とするものでもない。
したがって、本件補正は平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に反するものであって、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
3.本願発明について
(1)本願発明
平成22年7月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1?12に係る発明は、平成22年1月21日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されたものであるところ、そのうち請求項1に係る発明は、以下のとおりである。

「【請求項1】歯周炎の補助治療のための成分であって、
(1)カルメグ抽出物及びカルメグの活性を促進する植物の抽出物と、
(2)生分解性のトリグリセリド/リン脂質、又はチップ、もしくは軟膏を含むゲル基体
の混合物とから成る、含有成分。」(以下、「本願発明」という。)

4.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない(理由3)、及び、本願は、特許請求の範囲の記載が同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない(理由4)という理由を含み、その内容として以下の点が指摘されている。
「本願明細書において、実際に有効成分として使われているのは、カルメグの有機溶剤による抽出物のみである。
そして、上記カルメグと同一の殺菌活性を持つ他の植物の抽出物、及びカルメグの活性を促進する植物の抽出物を使用することについては何等記載されていない。
したがって、上記請求項に包含される発明のうち、カルメグと同一の殺菌活性を持つ他の植物の抽出物や、カルメグの活性を促進する植物の抽出物を含有する態様については、発明の詳細な説明で十分裏付けられて記載されているとはいえない。
よって、本願の発明の詳細な説明は、これらの請求項に記載の発明について当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものとすることはできず、また、これらの請求項に記載の発明は、発明の詳細な説明において裏付けられた範囲を超える発明を含むものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明を記載したものとはいえない。」

5.当審の判断
5-1.特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について
本願発明は、歯周炎の補助治療のための成分であって、上記本願請求項1に記載の(1)及び(2)の混合物をその必須含有成分とする、「物の発明」である。そして、「物」の発明における「発明の実施」には「その物の生産・・をする行為」(特許法第2条第3項第1号)が含まれるから、本願発明において、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)がその実施をすることができる程度の明確かつ十分に記載したものであること」(いわゆる実施可能要件)とは、発明の詳細な説明が、“本願請求項1に記載の(1)及び(2)の成分を生産できることを当業者が理解できるように、記載されていること”が必要であると認められ、そのような成分が生産(調製)できるためには、本願請求項1に記載の必須含有成分混合物中に含有されるすべての成分が入手或いは製造可能であることを当業者が理解できるように、発明の詳細な説明が記載されている必要がある。そして、本願請求項1には、該請求項の含有成分混合物中の必須成分として、(1)に「カルメグの活性を促進する植物の抽出物」が記載されている。
しかしながら、本願明細書の発明の詳細な説明には、「カルメグの活性を促進する植物の抽出物」に関し、その入手方法も、そのような抽出物を製造する為の原体となる植物種や抽出法についても全く記載されておらず、単に「カルメグの活性を促進する植物の抽出物」(段落【0008】、【0009】)なる用語が記載されるのみであるから、本願明細書の発明の詳細な説明の記載からは、「カルメグの活性を促進する植物の抽出物」が入手或いは製造可能であることを当業者は理解できない。
また、本願出願時、「歯周炎の補助治療のための成分」として含有される「カルメグの活性を促進する植物の抽出物」の入手・製造が可能であるとの技術常識があったと認めることもできない。
してみると、本願出願時の技術常識を参酌しても本願明細書の発明の詳細な説明からは、当業者は、「カルメグの活性を促進する植物の抽出物」の入手・製造ができないのであるから、当該抽出物を必須とする混合物である、本願請求項1に記載の歯周炎の補助治療のための成分は調製(生産)できないというほかはない。

したがって、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
5-2.特許法第36条第6項第1号について
(1)特許法第36条第6項第1号に規定する要件について
特許法第36条第6項第1号には、特許請求の範囲の記載は、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」と規定されており、当該規定を満たすか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)検討
まず、本願明細書の記載によれば、本願の「発明が解決しようとする課題」は、「生分解性物質を用いた局所送達系において、安全な歯周炎治療のための手段を提供すること」とされている(【0006】、【0007】)。
本願明細書の発明の詳細な説明には、この課題の解決手段に関し、「請求項1に記載の発明は、歯周炎の補助治療のための成分であって、カルメグ抽出物、及び/又はカルメグと同一の殺菌活性を持つ他の植物抽出物(例、マンゴスチン、ターメリック)及びカルメグの活性を促進する植物の抽出物と、生分解性のトリグリセリド/リン脂質、又はチップ、もしくは軟膏を含むことを要旨とする。」(【0008】)と記載され、本願請求項1に記載の(1)及び(2)の混合物含有成分からなる歯周炎の補助治療のための成分に相当するものについての形式的な記載はされているが、5-1.で述べたとおり、発明の詳細な説明の他の記載も含め、本願明細書には、混合物含有成分である(1)の「カルメグの活性を促進する植物の抽出物」の入手・製造に関する記載は全くなく、出願時の技術常識を参酌しても該抽出物の入手・製造が可能であるとも認められない。
すなわち、本願明細書の発明の詳細な説明の記載や本願出願時の技術常識によっては、「カルメグの活性を促進する植物の抽出物」を必須成分とする本願請求項1に記載の成分自体が調製できないから、そのような成分を課題の解決手段として含む本願発明について、上記課題を解決できると当業者が認識できる範囲は見い出せない。
してみると、本願発明は、本願明細書の発明の詳細な説明の記載から、本願発明の課題が解決できると認識できる範囲内の発明とはいえないし、また、発明の詳細な説明の記載によらなくても、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められない。

したがって、本願の特許請求の範囲の記載は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

なお、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明及び平成24年5月1日付け回答書で示された補正案の請求項1に係る発明は、いずれも、原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物に記載された発明であるから、新規性を有しないと認められる点付言する。

6.むすび
以上のとおり、本願は、第36条第4項第1号及び第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-28 
結審通知日 2013-01-29 
審決日 2013-02-12 
出願番号 特願2002-306819(P2002-306819)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (A61K)
P 1 8・ 57- Z (A61K)
P 1 8・ 537- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 理文  
特許庁審判長 内藤 伸一
特許庁審判官 平井 裕彰
渕野 留香
発明の名称 歯周炎治療における補助剤としてのカルメグゲル  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  
代理人 本田 淳  

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