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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1276089
審判番号 不服2012-1508  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-26 
確定日 2013-06-26 
事件の表示 特願2007-542036「呼出者から被呼出者に向けた電話呼出管理方法およびその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 8日国際公開、WO2006/058977、平成20年 6月26日国内公表、特表2008-522471〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2005年11月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年11月30日、フランス共和国)を国際出願日とする出願であって、平成23年3月2日付けで拒絶理由が通知され、同年9月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年1月26日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年1月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は本件補正前の願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載された

「‐予め決められた時刻の間の電話呼出に対する被呼出者の非応答を検知し(E204)、
‐呼出者に宛てた少なくとも1つの伝言を転送すると共に、呼出者から被呼出者に向けた電話呼出を維持するために、呼出者(B)と非応答サーバ(130,140)間で通信を確立し、
‐呼出者からの電話呼出に対する被呼出者の応答を検知し(E219,E227)、
電話呼出に対して被呼出者の応答が検知される場合に、
‐呼出者と非応答サーバ間の通信を遮断し(E220,E228)、
‐呼出者と被呼出者間の通信を確立する(E222,E230)、
以上の各ステップが含まれることを特徴とする電話通信網(180)による呼出者(B)から被呼出者(A)に向けた電話呼出管理方法。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、

「‐予め決められた時刻の間の電話呼出に対する被呼出者の非応答を検知し、
‐呼出者に宛てた少なくとも1つの伝言を転送すると共に、呼出者から被呼出者に向けた電話呼出を維持するために、呼出者と非応答サーバ間で通信を確立し、
‐呼出者からの電話呼出に対する被呼出者の応答を検知し、
電話呼出に対して被呼出者の応答が検知される場合に、
‐呼出者と非応答サーバ間の通信を遮断し、
‐呼出者と被呼出者間の通信を確立し、
‐前記非応答サーバによって、前記伝言に対する呼出者の応答を検知し、
‐前記呼出者の応答が、被呼出者に呼出を与え続けることの承諾を示す場合には、さらに呼出者と非応答サーバ間の通信を中断する、
以上の各ステップが含まれる電話通信網による呼出者から被呼出者に向けた電話呼出管理方法。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された、「非応答サーバ」に関し、「前記非応答サーバによって、前記伝言に対する呼出者の応答を検知し、前記呼出者の応答が、被呼出者に呼出を与え続けることの承諾を示す場合には、さらに呼出者と非応答サーバ間の通信を中断する」と限定して特許請求の範囲を減縮し、また、「括弧付きの参照番号」及び「・・・ことを特徴とする」を削除して明瞭にするものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び特許法第17条の2第4項(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で補正後の発明として認定したとおりである。

(2)引用発明
原審の拒絶理由に引用された特開平9-331396号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する分野】本発明は、電気通信、より詳細には、利用できない被呼者に対して、前払い返答呼オプション(プリペイドリターンコールオプション(pre-paid return calloption))と共に音声メッセージを起呼者が残すことができる方法及び装置に関し、プリペイドリターンコールオプションは利用できなかった当事者に対し起呼者へ前払いされた呼を戻すものである。」(2頁2欄)

ロ.「【0010】図1には、本発明のプリペイドリターンコールオプション(pre-paid returncall option)において使用される要素のシステム配置10が示される。システム10は、電話網12を含むが、これは、複数の電話機20、22および24を接続する。電話網12内には、電話呼発信交換システム14が含まれるが、これは、応答支払いメッセージサーバ(reply paid message server)18と、課金システム16に接続される。メッセージサーバ18は、電話機20によって表される発呼者が、電話機22によって表される宛先の所の意図された被呼者に到達できない場合、交換システム14によってトリガされる。
【0011】本発明において使用されるメッセージサーバ18は、発呼者20が、出ることができない被呼者に対して音声メッセージを録音して残すこと、および発呼者20に対して、プリペイドリターンコールオプション、つまり、発呼者が被呼者からのリターン呼を代わりに前納するオプションを提供することを可能にするが、このプリペイドリターンコールオプションが選択された場合、意図された被呼者からのリターン呼は、発呼者20に課金される。メッセージサーバ18には、課金システム16も接続されるが、課金システム16は、メッセージサーバ18と協力して機能して、メッセージサーバ18によって設定された全てのリターン呼の料金を記録する。本発明のシステム10は、非常に柔軟性に富み、意図された被呼者は、プリペイド呼(pre-paid call)を、電話機22によって表される位置から返すことも、あるいは、電話機24によって表されるような任意の他の異なる(リターン呼)位置から返すこともできる。」(3頁4欄?4頁5欄)

ハ.「【0012】図2Aおよび図2Bは、本発明による応答支払いリターン呼(reply-paid return ca11)法が、上に説明されたシステム10によってどのように実現されるかを図解する。最初に、図2Aから説明するが、本発明のこの方法は、発呼者20が被呼者に呼を掛けることによって開始される(ステップ30)。呼が掛けられたことに応答して、交換システム14は、その呼が被呼者によって応答されたか調べる(ステップ32)。呼が応答され、それによって、発呼者と意図された被呼者との間に電気通信接続が設定された場合は、メッセージサーバ18はトリガされず、交換システム14は、呼を通常の方法にて処理する(ステップ34)。一方、呼が応答されなかった場合は、交換システムは、呼がなぜ応答されなかったかを調べる(ステップ36)。発呼者20が意図された被呼者に到達できない理由には複数の状態が考えられる。例えば、網あるいはユーザが話中である場合は、交換システム14は、被呼者への呼を切断し、メッセージサーバ18に接続する(ステップ38)。メッセージサーバ18は、被呼者が所定の時間(秒)を過ぎても応答しない場合にもトリガされる。この場合は、交換システム14は、接続はそのまま保持し、可聴呼出し音を減衰し(メッセージサーバ18が発呼者によって聞こえるようにし)、メッセージサーバ18に接続する(ステップ40)。ここに示されるトリガ状態は、単に、解説のために示されるものであり、これらが本発明のメッセージサーバ18をトリガする唯一の状態であると考えるべきではないことに注意する。
【0013】いずれにせよ、意図された被呼者に到達することができない場合は、交換システム14は、メッセージサーバ18に接続する。メッセージサーバ18は、呼の状態(被呼者が出られない等)をアナウンスし(ステップ42)、発呼者20が、被呼者のために音声メッセージを録音して残すことを希望するか調べる(ステップ44)。発呼者がメッセージを残すことを選択した場合は、メッセージサーバ18は、発呼者のメッセージを録音する(ステップ52)(このメッセージサーバ18がステップ40を介して接続された場合は、被呼者への呼の切断も行なう)。メッセージサーバ18は、次に、発呼者が、被呼者からのリターン呼を代わって支払うオプションを望か調べる(ステップ54)。発呼者が被呼者からのリターン呼を代わって支払うことを選択する場合は、発呼者は、これを、電話機のキーパッドを使用してこのオプションを指定することによって、音声による起動によって、あるいは、他の類似する方法によって達成する。プリペイドオプション(pre-paid option)が選択された場合は、メッセージサーバ18は、発呼者に対して、正確に被呼者からのリターン呼を掛け、これに課金するために要求される追加の情報を催促する(ステップ56)。これら情報には、発呼者の名前、発呼者のコールバック番号、メッセージを配達するために呼び出す番号、メッセージを配達するために被呼者を呼び出す時間と間隔、メッセージを配達する試みの最大回数、プリペイドコールバックが許される最大回数、その他が含まれる。メッセージサーバ18は、これらデータを、録音し、蓄積する(ステップ56)。次に、メッセージサーバ18は、呼リクエストのレコードを作成し、これをメッセージサーバ18の所に蓄積する(ステップ58)。一方、ステップ54において発呼者がプリペイドリターンコールオプションを選択しなかった場合は、メッセージサーバ18は、メッセージのみのレコードを作成し、これをメッセージサーバの所に蓄積する(ステップ58)。
【0014】ステップ44に戻り、発呼者がメッセージを残すことを選択しなかった場合は、メッセージサーバ18は、発呼者が被呼者からのリターン呼に対して代わって支払うことを希望するか尋ねる(ステップ46)。発呼者がリターン呼に対して代わりに支払うことを選択せず、ここで、メッセージサーバ18がステップ40を介して接続された場合は(否定の答えの状態にある場合)、メッセージサーバ18は、被呼者の呼出しを継続し、メッセージサーバ18にアクセスし直す方法をアナウンスし、その後、呼の制御を交換システム14に戻す(ステップ48)。一方、発呼者がリターン呼に対して支払うことを選択せず、ここで、メッセージサーバ18がステップ38を介して接続された場合は(話し中の状態にある場合)、メッセージサーバ18は、呼を切断する(ステップ50)。
【0015】一方、発呼者がメッセージを残すことを希望しないが、ただし、ステップ46においてリターン呼を代わりに支払うことを選択した場合は、メッセージサーバ18は、発呼者の名前を記録し、コールバックの時間と場所に関する情報を得てこれを記録し(ステップ56)、さらに、呼要求を記録する(ステップ58)。」(4頁5?6欄)

上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ロ.の【0010】の記載、及び図1によれば、システム(10)は、電話網(12)と、交換システム(14)と、メッセージサーバ(18)とを備え、電話機(20)によって表される発呼者から被呼者に呼を掛けるものである。
また、上記ハ.の【0012】における「本発明のこの方法は、発呼者20が被呼者に呼を掛けることによって開始される(ステップ30)。呼が掛けられたことに応答して、交換システム14は、その呼が被呼者によって応答されたか調べる(ステップ32)。・・・一方、呼が応答されなかった場合は、交換システムは、呼がなぜ応答されなかったかを調べる(ステップ36)。・・・メッセージサーバ18は、被呼者が所定の時間(秒)を過ぎても応答しない場合にもトリガされる。この場合は、交換システム14は、接続はそのまま保持し、可聴呼出し音を減衰し(メッセージサーバ18が発呼者によって聞こえるようにし)、メッセージサーバ18に接続する(ステップ40)。」との記載、及び図2Aによれば、交換システム(14)は、所定の時間を過ぎても呼に対して被呼者が応答しない場合を検知している。すなわち、(α)所定の時間の呼に対する被呼者の非応答を検知しているということができる。
また、上記ハ.の【0012】における「メッセージサーバ18は、被呼者が所定の時間(秒)を過ぎても応答しない場合にもトリガされる。この場合は、交換システム14は、接続はそのまま保持し、可聴呼出し音を減衰し(メッセージサーバ18が発呼者によって聞こえるようにし)、メッセージサーバ18に接続する(ステップ40)。」との記載、同ハ.の【0013】における「交換システム14は、メッセージサーバ18に接続する。メッセージサーバ18は、呼の状態(被呼者が出られない等)をアナウンスし(ステップ42)、発呼者20が、被呼者のために音声メッセージを録音して残すことを希望するか調べる(ステップ44)。」との記載、及び図2Aによれば、交換システム(14)は、ステップ(40)及びステップ(42)において、発呼者から被呼者に掛けた呼を保持し、発呼者とメッセージサーバ(18)を接続する。そして、メッセージサーバ(18)は、発呼者にアナウンスをしている。言い換えれば、(β)発呼者にアナウンスをすると共に、発呼者から被呼者に向けた呼を維持するために、発呼者とメッセージサーバ(18)間で通信を確立しているということができる。
また、図2A(ステップ52)における「(まだ被呼者を呼出している場合は)呼を切断し、メッセージを録音する」との記載によれば、ステップ(52)において、まだ発呼者から被呼者を呼出しているから、交換システム(14)は、(γ)発呼者からの呼に対する被呼者の応答を検知し、呼に対して被呼者の応答が検知される場合に、発呼者と被呼者間の通信を確立することは自明である。
また、上記ハ.の【0014】における「ステップ44に戻り、発呼者がメッセージを残すことを選択しなかった場合は、メッセージサーバ18は、発呼者が被呼者からのリターン呼に対して代わって支払うことを希望するか尋ねる(ステップ46)。発呼者がリターン呼に対して代わりに支払うことを選択せず、ここで、メッセージサーバ18がステップ40を介して接続された場合は(否定の答えの状態にある場合)、メッセージサーバ18は、被呼者の呼出しを継続し、メッセージサーバ18にアクセスし直す方法をアナウンスし、その後、呼の制御を交換システム14に戻す(ステップ48)。」との記載、及び図2Aによれば、メッセージサーバ(18)は、アナウンスに対する発呼者の応答を検知し、発呼者がリターン呼に対して代わりに支払うことを選択せず、メッセージサーバ(18)が接続された場合は(否定の答えの状態にある場合)、被呼者の呼出しを継続し、その後、呼の制御を交換システム(14)に戻している。言い換えれば、(δ)メッセージサーバ(18)によって、アナウンスに対する発呼者の応答を検知し、発呼者の応答が、被呼者に呼出しを継続するために発呼者がリターン呼に対して代わりに支払うことを選択しない場合には、さらに発呼者とメッセージサーバ(18)間の通信を中断しているということができる。
ここで、上記(α)乃至(δ)を、システム(10)の方法として纏めると、交換システム(14)及びメッセージサーバ(18)が呼を管理しているから、電話網(12)による発呼者から被呼者に向けた呼管理方法ということができる。

したがって、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「‐所定の時間の呼に対する被呼者の非応答を検知し、
‐発呼者にアナウンスをすると共に、発呼者から被呼者に向けた呼を維持するために、発呼者とメッセージサーバ(18)間で通信を確立し、
‐発呼者からの呼に対する被呼者の応答を検知し、
呼に対して被呼者の応答が検知される場合に、
‐発呼者と被呼者間の通信を確立し、
‐前記メッセージサーバ(18)によって、前記アナウンスに対する発呼者の応答を検知し、
‐前記発呼者の応答が、被呼者に呼出しを継続するために発呼者がリターン呼に対して代わりに支払うことを選択しない場合には、さらに発呼者とメッセージサーバ(18)間の通信を中断する、
以上の各ステップが含まれる電話網(12)による発呼者から被呼者に向けた呼管理方法。」

(3)対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「所定の時間」、「呼」、「被呼者」、「発呼者」、「メッセージサーバ(18)」及び「電話網(12)」は、補正後の発明の「予め決められた時刻の間」、「電話呼出」、「被呼出者」、「呼出者」、「非応答サーバ」及び「電話通信網」にそれぞれ相当する。
b.引用発明の「発呼者にアナウンスをする」は、発呼者(呼出者)に宛てたアナウンス(伝言)を転送することであるから、「呼出者に宛てた伝言を転送する」ということができる。
c.引用発明の「被呼者に呼出しを継続するために発呼者がリターン呼に対して代わりに支払うことを選択しない場合」と、補正後の発明の「被呼出者に呼出を与え続けることの承諾を示す場合」とは、いずれも「特定の条件の場合」という点で一致する。

したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「‐予め決められた時刻の間の電話呼出に対する被呼出者の非応答を検知し、
‐呼出者に宛てた少なくとも1つの伝言を転送すると共に、呼出者から被呼出者に向けた電話呼出を維持するために、呼出者と非応答サーバ間で通信を確立し、
‐呼出者からの電話呼出に対する被呼出者の応答を検知し、
電話呼出に対して被呼出者の応答が検知される場合に、
‐呼出者と被呼出者間の通信を確立し、
‐前記非応答サーバによって、前記伝言に対する呼出者の応答を検知し、
‐前記呼出者の応答が、特定の条件の場合には、さらに呼出者と非応答サーバ間の通信を中断する、
以上の各ステップが含まれる電話通信網による呼出者から被呼出者に向けた電話呼出管理方法。」

(相違点1)
「電話呼出に対して被呼出者の応答が検知される場合」に関し、
補正後の発明は、「呼出者と非応答サーバ間の通信を遮断し」ているのに対し、引用発明は、その様なステップを含まない点。

(相違点2)
「特定の条件の場合」に関し、
補正後の発明は、「被呼出者に呼出を与え続けることの承諾を示す場合」であるのに対し、引用発明は、「被呼者に呼出しを継続するために発呼者がリターン呼に対して代わりに支払うことを選択しない場合」である点。

そこで、まず、上記相違点1について検討する。
引用発明は、「発呼者(呼出者)とメッセージサーバ(18)(非応答サーバ)間で通信を確立し」ているところ、電話呼出管理方法において、発呼者(呼出者)と被呼者(被呼出者)間の通信を確立して、両者で通話が開始されるのだから、発呼者(呼出者)とメッセージサーバ(18)(非応答サーバ)間の通信を遮断することは自然であり、加えて、そのタイミングについて、補正後の発明のように「電話呼出に対して被呼出者の応答が検知される場合に、呼出者と非応答サーバ間の通信を遮断す」ることは当業者が容易になし得ることである。

次に、上記相違点2について検討する。
引用発明は、「被呼者に呼出しを継続するために発呼者がリターン呼に対して代わりに支払うことを選択しない場合」であるところ、被呼者(被呼出者)に呼出しを継続する(与え続ける)ことを選択することにおいて実質的な差異はないから、補正後の発明のように「被呼出者に呼出を与え続けることの承諾を示す場合」とすることは格別のことではない。

そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

以上のとおり、補正後の発明は引用発明に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成24年1月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2 補正却下の決定 1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は上記補正後の発明から当該本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-23 
結審通知日 2013-01-29 
審決日 2013-02-12 
出願番号 特願2007-542036(P2007-542036)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梶尾 誠哉  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 山中 実
萩原 義則
発明の名称 呼出者から被呼出者に向けた電話呼出管理方法およびその装置  
代理人 牛木 護  

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