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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1276098
審判番号 不服2012-11111  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-14 
確定日 2013-06-24 
事件の表示 特願2005-306136「情報処理装置および方法、プログラム、並びに記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月10日出願公開、特開2007-115045〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯・本願発明
本願は、平成17年10月20日の出願であり、平成24年3月12日付けで拒絶査定がなされ、それに対して同年6月14日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものであって、その請求項1に係る発明は、平成24年6月14日に提出された手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「スタイラスペンによる入力を受け付けて所定の処理を実行する情報処理装置において、
前記スタイラスペンを脱着可能に格納する格納部と、
前記スタイラスペンの前記格納部に対する脱着を検出する検出手段と、
前記検出手段による検出結果に応じて、所定の処理を実行する実行手段と
を備え、
前記実行手段は、前記情報処理装置の電源が入っていない場合、前記検出手段により、
前記スタイラスペンが前記格納部から取り外されたことが検出されたことに応じて、前記情報処理装置の電源を投入する
情報処理装置。」

第2 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-121287号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の記載がある。
「【0017】つぎに、本発明の第2の実施例(請求項3)について説明する。この第2の実施例では、ペン2を所定の位置に収納したとき自動的に電源が切れるものであり、即ち、またペン2を所定の位置に収納しないかぎり、使用者は、ペン入力電子機器10の電源を切ることができないように制御する制御手段を設けた構成である。尚、この制御手段は、図1に示した制御回路7で行うように構成するか、また、図3に示すように、検出手段(例えばプッシュスイッチ)6に直列に電源回路が接続され、このプッシュスイッチ6と電源スイッチ8とを1つにした構成であって良い。
【0018】更に、本発明の第3の実施例(請求項4)を示す。この第3の実施例では、ペン入力電子機器10の電源だけでなくペン2自身の電源の切り忘れ等をなくすために、ペン2の収納状態に応じて機器本体10側の電源及び入力用ペン2側の電源のオン/オフを連動させるよう構成したものである。図4(a)は図3と同じようにプッシュスイッチ6を電源スイッチ8としたものである。図4(b)はペン2を示し、48はペン用電源スイッチである。このペン用電源スイッチ48によりペン2の電源をオン/オフすることができる。
【0019】動作は次のようになる。ペン入力電子機器10の作業を終らせるため、ペン2をペン収納室4に収納する。この状態を図5に示す。収納すると自動的に機器本体側の電源スイッチ8が押されてオフとなり電源が切れる。同時に、ペン2のペン側のペン用電源スイッチ48も押されてオフとなりペン側のペン用電源が切れる。以上のようにペン入力電子機器10の電源とペン2自身の電源を同時にオフさせて電源の切り忘れをなくす。
【0020】一方ペン入力電子機器10の作業を開始するときは、ペン2をペン収納室4から取り出す。取り出されると、本体側電源スイッチ8がオンとなる。同時にペン2のペン側ペン用電源スイッチ48もオンとなり、作業を開始することができる。この第3の実施例ではペン2の電源もオフさせて電源の切り忘れをなくし、バッテリの節約を計ることができるし、ペン2の紛失防止にも役立つ。」(段落【0017】?【0020】)

以上の記載によれば、この引用文献には、以下のような発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「ペン2の収納状態に応じて機器本体10側の電源及び入力用ペン2側の電源のオン/オフを連動させるよう構成したものであり、
ペン入力電子機器10の作業を終らせるため、ペン2をペン収納室4に収納すると自動的に機器本体側の電源スイッチ8が押されてオフとなり電源が切れ、同時に、ペン2のペン側のペン用電源スイッチ48も押されてオフとなりペン側のペン用電源が切れ、ペン入力電子機器10の電源とペン2自身の電源を同時にオフさせて電源の切り忘れをなくし、
一方ペン入力電子機器10の作業を開始するときは、ペン2をペン収納室4から取り出すと、本体側電源スイッチ8がオンとなり、同時に、ペン2のペン側ペン用電源スイッチ48もオンとなり、作業を開始することができるペン入力電子機器10。」

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「ペン2」は、本願発明の「スタイラスペン」に相当する。
そして、引用発明の「ペン入力電子機器10」は、本願発明の「スタイラスペンによる入力を受け付けて所定の処理を実行する情報処理装置」に相当するといえる。

(イ)引用発明の「ペン収納室4」は、本願発明の「前記スタイラスペンを脱着可能に格納する格納部」に相当するといえ、引用発明の「ペン2をペン収納室4から取り出す」こと、及び「ペン2をペン収納室4に収納」することは、本願発明の「前記スタイラスペンの前記格納部に対する脱着」に相当する。

(ウ)引用発明は、「ペン2をペン収納室4に収納すると自動的に機器本体側の電源スイッチ8が押されてオフとなり」、「ペン2をペン収納室4から取り出すと、本体側電源スイッチ8がオン」となるものであり、電源スイッチ8によりペン2のペン収納室4に対する取り出し又は収納を検出しているといえるから、引用発明の「機器本体側の電源スイッチ8」は、本願発明の「前記スタイラスペンの前記格納部に対する脱着を検出する検出手段」に相当するといえる。
また、引用発明の、「電源スイッチ8が押されてオフ」となった時に機器本体側の電源を切り、「電源スイッチ8がオン」となった時に機器本体側の電源を入れる構成は、本願発明の「前記検出結果に応じて、所定の処理を実行する実行手段」に相当するといえ、さらに、ペン2をペン収納室4から取り出して本体側電源スイッチ8がオンとなり電源が入るのは、ペン入力電子機器の電源が入っていない場合であることは明らかであるから、引用発明の「ペン入力電子機器10の作業を開始するときは、ペン2をペン収納室4から取り出すと、本体側電源スイッチ8がオンとなり、」「作業を開始することができる」構成は、本願発明の「前記実行手段は、前記情報処理装置の電源が入っていない場合、前記検出手段により、前記スタイラスペンが前記格納部から取り外されたことが検出されたことに応じて、前記情報処理装置の電源を投入する」と「前記実行手段は、前記情報処理装置の電源が入っていない場合、前記検出手段により、前記スタイラスペンが前記格納部から取り外されると、前記情報処理装置の電源を投入する」点で共通するといえる。

したがって、本願発明の用語を用いて表現すると、両者は、
(一致点)
「スタイラスペンによる入力を受け付けて所定の処理を実行する情報処理装置において、
前記スタイラスペンを脱着可能に格納する格納部と、
前記スタイラスペンの前記格納部に対する脱着を検出する検出手段と、
前記検出手段による検出結果に応じて、所定の処理を実行する実行手段と
を備え、
前記実行手段は、前記情報処理装置の電源が入っていない場合、前記検出手段により、前記スタイラスペンが前記格納部から取り外されると、前記情報処理装置の電源を投入する
情報処理装置。」で一致し、
(形式上の相違点)本願発明は、「検出手段により、前記スタイラスペンが前記格納部から取り外されたことが検出されたことに応じて、前記情報処理装置の電源を投入する」のに対し、引用発明は、「ペン2をペン収納室4から取り出すと、本体側電源スイッチ8がオンとなり、」「作業を開始することができる」ことが記載されているが、ペン2をペン収納室4から取り出すと、自動的に本体側電源スイッチ8がオンとなり、ペン入力電子機器の電源が入ることが明記されていない点で一応相違する。

第4 判断
上記相違点について検討する。
引用文献には、「ペン2を所定の位置に収納したとき自動的に電源が切れるものであり、即ち、またペン2を所定の位置に収納しないかぎり、使用者は、ペン入力電子機器10の電源を切ることができないように制御する制御手段を設けた構成である。尚、この制御手段は、図1に示した制御回路7で行うように構成するか、また、図3に示すように、検出手段(例えばプッシュスイッチ)6に直列に電源回路が接続され、このプッシュスイッチ6と電源スイッチ8とを1つにした構成であって良い。」(段落【0017】)、及び「ペン2の収納状態に応じて機器本体10側の電源及び入力用ペン2側の電源のオン/オフを連動させるよう構成したものである。図4(a)は図3と同じようにプッシュスイッチ6を電源スイッチ8としたものである。」(段落【0018】)と記載されており、ペン2の収納状態に応じて機器本体10側の電源のオン/オフを連動させるよう構成したものであるから、ペン2をペン収納室4から取り出すと、自動的に本体側電源スイッチ8がオンとなり、ペン入力電子機器の電源が入ることは明らかである。
そうすると、本願発明の構成と引用発明の構成は、その構成に実質的な相違は認められない。
したがって、本願発明は、引用文献記載の発明と同一と認められ、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。

第5 請求人の主張
請求人は、審判請求書「【本願発明が特許されるべき理由】(2)」において、
「(a)引用発明の説明
引用文献1には、ペンをペン格納室に収納すると自動的に機器本体側の電源スイッチが押されてオフとなり電源が切れることが開示されています。また、引用文献1には、ペン格納室からペンが取り出されると、本体側電源スイッチがオンとなることが開示されています。
引用文献2には、カメラ画像とインタフェース画像との合成を実行制御し、その合成画像の表示を行わせることが開示されています。
(b)本願発明と引用発明との対比
本願請求項1及び6乃至8に係る発明は、特許請求の範囲に記載された構成のうち、特に「前記実行手段(ステップ)は、前記情報処理装置の電源が入っていない場合、前記検出手段(ステップの処理)により、前記スタイラスペンが前記格納部から取り外されたことが検出されたことに応じて、前記情報処理装置の電源を投入する」ことを特徴的構成(特徴点)としています。
本願請求項1及び6乃至8に係る発明は、このような特徴的構成を採用したことにより、情報処理装置の電源が入っていない場合に、スタイラスペンを格納部から取り外すだけで、情報処理装置の電源が投入されるので、例えば、スタイラスペンによる入力の開始を行なう際に、情報処理装置の電源を入れる操作(例えば、電源ボタンの押下操作)を明示的に行う必要がある場合と比較して、スタイラスペンによる入力の開始を、簡易に行うことが可能となるという顕著な作用効果を奏するものです。
これに対して、引用文献1及び2には、本願請求項1及び6乃至8に係る発明が有する上述した特徴的構成について開示は勿論、示唆もされていません。
すなわち、本願請求項1及び6乃至8に係る発明が容易想到であると判断するためには、先行技術の内容の検討に当たっても、当該発明の特徴点に到達できる試みをしたであろうという推測が成り立つのみでは十分ではなく、当該発明の特徴点に到達するためにしたはずであるという示唆等が存在することが必要ですが(知的財産高等裁判所平成20年(行ケ)第10096号、平成20年(行ケ)第10153号)、引用文献1及び2には、これらの示唆等が存在しません。
このため、本願請求項1及び6乃至8に係る発明は、引用文献1及び2に記載されたいずれの発明とも同一ではなく、引用文献1及び2に記載された発明から、当業者が容易に想到することができたとは到底認められません。」と主張している。
しかしながら、上記「第4 判断」で述べたように、引用文献1記載の発明は、ペン2をペン収納室4から取り出すと、自動的に本体側電源スイッチ8がオンとなり、ペン入力電子機器の電源が入ることが明らかであり、スタイラスペンによる入力の開始を行なう際に、情報処理装置の電源を入れる操作(例えば、電源ボタンの押下操作)を明示的に行う必要があるものではないから、上記主張は採用しない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明と同一と認められ、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

なお、請求人は、前置審尋の回等書「2.前置報告書の内容についての意見 」において、
「引用文献1には、ペン2のペン収納状態に応じて機器本体1の電源のオン/オフを連動させる構成、より具体的には、ペン2をペン収納室4に収納すると電源がオフになり、ペン2をペン収納室4から取り出すと電源がオンになる構成が開示されています。

しかしながら、本願発明は、スタイラスペンが取り外されたことが検出されると、「情報処理装置の電源が入っていない場合に限り」、電源を投入する点で、引用文献1記載の発明と相違します。

すなわち、本願発明は、電源がオンされている状態でスタイラスペンが格納部から取り外されることも想定し、電源が入っていない場合に限り、スタイラスペンの取り外しに応じて、電源の投入を行うことを特徴とします。

これに対して、引用文献1では、ペン2が未収納状態で電源がオフされたときの挙動、及び、ペン2の収納状態に応じて機器本体1の電源のオン/オフを連動させる構成についての開示はあるものの、上述した本願発明の特徴的構成については開示されていません。

以上より、本願発明は、引用文献1および2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反ないものと思料します。
従って、本願の請求項1乃至8に係る発明は、いずれも特許されるべきものです。
よって、原査定を取り消す。この出願の発明は、これを特許すべきものとするとの審決を求めます。

なお、本出願人は、上述した本願発明の特徴について、引用発明との差異をより明確にするべく、次のように補正を考えておりますので、補正の機会を与えていただきたく存じます。

【請求項1】
スタイラスペンによる入力を受け付けて所定の処理を実行する情報処理装置において、
前記スタイラスペンを脱着可能に格納する格納部と、
前記スタイラスペンの前記格納部に対する脱着を検出する検出手段と、
前記検出手段による検出結果に応じて、所定の処理を実行する実行手段と を備え、
前記実行手段は、前記情報処理装置の電源が入っていない場合、前記検出手段により、前記スタイラスペンが前記格納部から取り外されたことが検出されたことに応じて、前記情報処理装置の電源を投入するとともに、前記情報処理装置の電源が入っている場合には、前記検出手段による前記スタイラスペンが前記格納部から取り出されたことの検出があっても電源が投入された状態を維持する
情報処理装置。」と述べている。
しかしながら、本願明細書及び図面には、「情報処理装置の電源が入っていない場合に限り」、電源を投入することや「前記情報処理装置の電源が入っている場合には、前記検出手段による前記スタイラスペンが前記格納部から取り出されたことの検出があっても電源が投入された状態を維持する」ことは記載されていない事項であるから、上記主張及び補正案は採用できない。
さらに、例えば特開平10-13893号公報には、収納手段にペンが収納されたか否かを検出する手段と、前記検出手段の検出結果により装置各部の電源の供給、遮断を自動的に行う制御手段を有する無線選択呼出受信機が記載され、その図3には、ペンが収納されているか?Yで電源はON状態?YまたはN、電源はON状態?Nでペンが引き抜かれたか?Yで電源ONが示されており、ペンが収納されていても電源がON状態のときに、ペンが引き抜かれた場合、電源をON状態に維持するようなことは、当業者であれば容易になし得るものでもあるから、上記補正案は採用できない。
 
審理終結日 2013-04-19 
結審通知日 2013-04-23 
審決日 2013-05-10 
出願番号 特願2005-306136(P2005-306136)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 秀樹  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 五十嵐 努
山田 正文
発明の名称 情報処理装置および方法、プログラム、並びに記録媒体  
代理人 稲本 義雄  

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