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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1276172
審判番号 不服2012-18264  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-19 
確定日 2013-07-04 
事件の表示 特願2008- 34705「カメラシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月 9日出願公開、特開2008-242442〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年2月15日(優先権主張 平成19年2月15日、平成19年3月1日)を出願日とする出願であって、平成24年6月12日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、前記拒絶査定を不服として、同年9月19日に請求された拒絶査定不服審判であって、請求と同時に手続補正がなされ、その後、当審において同年12月20日付けで審尋を行ったところ、平成25年2月22日付けで回答書が提出された。

第2 平成24年9月19日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成24年9月19日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲及び明細書を補正するものであって、そのうち特許請求の範囲の請求項1の補正は、補正前の
「【請求項1】
交換レンズとカメラボディとを含むカメラシステムであって、
前記カメラボディは、
定期的にタイミング信号を生成する信号生成手段と、
前記信号生成手段で生成されたタイミング信号と相関のあるタイミングで露光して、画像データを生成する撮像素子と、
前記撮像素子で生成された画像データに基づいて、オートフォーカス用の評価値を算出する評価値算出手段と、
前記カメラボディを制御するボディ制御部と、を備え、
前記交換レンズは、
光軸方向に進退することにより、被写体像のフォーカス状態を変化させるフォーカスレンズと、
前記フォーカスレンズを駆動するための駆動手段と、
前記フォーカスレンズ又は前記フォーカスレンズに連動する機構部材の位置を検出する位置検出手段と、
前記ボディ制御部からの制御信号に応じて、前記駆動手段を制御するレンズ制御部と、を備え、
前記レンズ制御部は、前記信号生成手段で生成されたタイミング信号を前記カメラボディから取得し、前記タイミング信号の取得に応じて前記位置検出手段に前記フォーカスレンズ又は前記機構部材の位置を検出させ、その検出された前記フォーカスレンズ又は前記機構部材の位置を前記カメラボディに通知し、
前記ボディ制御部は、前記信号生成手段で生成されたタイミング信号に基づいて、前記レンズ制御部から取得した前記フォーカスレンズ又は前記機構部材の位置と前記評価値算出手段で算出された評価値とを関連付け、該関連付けられた位置及び評価値に基づいて、カメラシステムのオートフォーカス動作を制御する、カメラシステム。」を
「【請求項1】
交換レンズとカメラボディとを含むカメラシステムであって、
前記カメラボディは、
定期的にタイミング信号を生成する信号生成手段と、
前記信号生成手段で生成されたタイミング信号と相関のあるタイミングで露光して、画像データを生成する撮像素子と、
前記撮像素子で生成された画像データに基づいて、オートフォーカス用の評価値を算出する評価値算出手段と、
前記カメラボディを制御するボディ制御部と、を備え、
前記交換レンズは、
光軸方向に進退することにより、被写体像のフォーカス状態を変化させるフォーカスレンズと、
前記フォーカスレンズを駆動するための駆動手段と、
前記フォーカスレンズ又は前記フォーカスレンズに連動する機構部材の位置を検出する位置検出手段と、
前記ボディ制御部からの制御信号に応じて、前記駆動手段を制御するレンズ制御部と、を備え、
前記レンズ制御部は、前記信号生成手段で生成されたタイミング信号を前記カメラボディから取得し、取得した前記タイミング信号に同期して前記位置検出手段に前記フォーカスレンズ又は前記機構部材の位置を検出させ、その検出された前記フォーカスレンズ又は前記機構部材の位置を前記カメラボディに通知し、
前記ボディ制御部は、前記信号生成手段で生成されたタイミング信号に基づいて、前記レンズ制御部から取得した前記フォーカスレンズ又は前記機構部材の位置と前記評価値算出手段で算出された評価値とを関連付け、該関連付けられた位置及び評価値に基づいて、カメラシステムのオートフォーカス動作を制御する、カメラシステム。」と補正するものである。

2 補正の目的についての検討
上記本件補正は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「レンズ制御部」が「位置検出手段に前記フォーカスレンズ又は前記機構部材の位置を検出させ」るのを、補正前は「タイミング信号の取得に応じて」行うとしていたものを、補正後は「取得した前記タイミング信号に同期して」行うこととした補正である。
そして、この補正事項は、明らかに特許請求の範囲を限定して減縮するものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。

3 本件補正発明
本件補正発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された上記のとおりのものである。

4 引用刊行物
(1)引用刊行物1
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である平成3年11月5日に頒布された「特開平3-247179号公報 」(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。(引用例記載の発明の認定に関係する箇所に、当審で下線を付した。)
(a)発明の詳細な説明の記載
「(産業上の利用分野)
本発明は、ビデオカメラ等の撮像装置に係り、特に制御系と制御対象との間において制御情報の通信を行なう通信手段を備えたビデオカメラ等に用いて好適なものである。」(第1頁右下欄第16行?第20行)
「(実施例)
以下本発明におけるレンズ制御装置を、着脱自在のレンズユニットとカメラユニットとからなる交換レンズ式カメラシステムに適用した一実施例について、各図を参照しながら詳細に説明する。
第1図は本発明におけるレンズ制御装置を適用したレンズ交換可能なカメラシステムの構成を示すブロック図である。
同図において、1はレンズユニット、2はカメラユニット(VTR一体型のものも含む)である。
レンズユニット1内において、10は焦点調節用のフォーカシングレンズを含む撮影レンズ系(以下単にフォーカシングレンズと称す)、11は合焦制御の為にフォーカシングレンズを駆動するためのフォーカスモータ、12はその駆動回路である。また13はレンズユニットの入射光量を制御するための絞りと、該絞りを制御して絞り状態を変化させるためのIGメータ等のアクチュエータからなる絞り駆動機構、14はその駆動回路である。
また15はフォーカシングレンズの移動位置を検出してフォーカス位置情報を出力するフォーカスエンコーダ、16は絞り機構13の絞り量(絞り位置)を検出して絞り位置情報を出力する絞りエンコーダとしてのホール素子16である。
17はカメラユニットから送信されてくる制御情報に従ってレンズユニット1内の各種制御を統括して行なう制御用マイクロコンピュータ(以下レンズマイコンと称す)であり、フォーカシングレンズ10を駆動するためのフォーカス駆動信号101を駆動回路12へと出力するとともに、絞り機構13を駆動するための絞り駆動信号103を絞り駆動回路14へとそれぞれ出力する。また変化したフォーカシングレンズ位置、絞り位置は、それぞれフォーカスエンコーダ15、ホール素子16によって検出されフォーカス位置情報と102、絞り位置情報104としてそれぞれレンズマイコン17へと供給される。
これによって、フォーカシングレンズ及び絞りの制御がカメラ側からの指令にしたがって行なわれる。
カメラユニット2内において、20はレンズユニット1によってその撮像面に結像された20は光学的信号108を光電変換して電気的な撮像信号201に変換するためのCCD等の撮像素子、21は撮像素子20により出力された撮像信号201(アナログ信号)をデジタル信号202に変換するA/D変換器、22はA/D変換器21より出力されたデジタル信号202を取り込んで記憶する画像メモリ22である。また、画像メモリ22に信号を取り込む際のタイミング制御は、メモリコントローラ27によるメモリ書き込み制御207W(Write制御)により行なわれるが、メモリコントローラ27は最終的に出力されるビデオ信号23より垂直同期分離回路24によって分離された垂直同期信号205、もしくはカメラユニット内部に持つ発振回路25により発生された内部同期信号206に基づいてタイミング発生回路26により形成されたタイミングに基づいて制御される。
画像メモリ22に記憶された画像メモリ信号は、上述の書き込み時と同様な手段によって発生されるタイミング信号を基に、またVTR側の制御用マイクロコンピュータ(以下レコーダマイコンと称す)28及びカメラ制御用マイクロコンピュータ(以下カメラマイコンと称す)29を介して形成されるメモリ制御信号208に基づいて、メモリコントローラ27を読み出し制御207R(Read制御)することによリデジタル信号203として読み出される。このときメモリからの読み出し方法により、各種の画像処理上の効果が実現される。
画像メモリ22より取り出されたデジタル信号203はD/A変換器30によりアナログ信号204に戻され、信号処理回路31によって所定の信号処理を行なって通常のビデオ信号23に変換され、図示しないレコーダブロックの信号系に供給される。
一方、32はこのビデオ信号23より自動合焦制御(以下AF制御と称す)のためのフォーカス制御用信号(合焦度に応じて変化する例えば高周波成分、エッジ幅等の信号)209を形成して出力するAF用制御信号作成回路、33は同じくビデオ信号23より自動絞り制御(以下AE制御と称す)のための絞り制御用信号210を形成して出力するAE用制御信号作成回路である。これらのAF制御用信号209、AE用制御信号210、それぞれカメラユニット2内の各種制御を統括して行なうカメラマイコン29へと供給される。カメラマイコン29は、これらの情報及びレコーダの電気的制御を総合的に行なうレコーダマイコン28から送られてくるキー情報やモード情報を基にレンズ側駆動系においてのAF制御、AE制御を行なうために必要な駆動制御信号を作成する。
またこの制御情報を作成する場合に、画面上の位置を特定するために、すなわち画面上においてこれらの検出を行なうための領域を設定するために、垂直同期信号分離回路24で分離された垂直同期信号205が使用される。
次にカメラユニットとレンズユニット間における各種情報の授受について説明する。
カメラマイコン29とレンズマイコン17とは、双方向シリアル通信ライン105により接続されており、垂直同期信号分離回路24で分離された垂直同期信号205により決定されるあるタイミングに応じて、双方向にシリアル通信が行なわれる。
すなわちカメラマイコン29よりレンズマイコン17へは、AF、AEを含む各種制御駆動情報106が送信され、レンズマイコン17よりカメラマイコン29へは、レンズ、絞り等のの各種の位置情報107が送られている。
第2図は、カメラユニット内のカメラマイコン29による処理動作の概略を表わしたフローチャートである。ここでは、内部RAMのクリア、各種レジスタの設定等の初期化作業が終了した後の通常の制御中の状態を表わしている。
カメラマイコン29の各種制御動作は、垂直同期信号信号205のタイミングに同期して行なわれる。このメインルーチン(50)において、まず垂直同期信号205を待ち、垂直同期信号205がカメラマイコン29に入力されると処理を開始し(51)、まず通信開始時点を定めるタイマーを設定する(52)。そしてタイマー割り込みを許可し(53)、通信制御をタイマー割り込みルーチン70に移す。
メインルーチン50側は次にAF制御用信号作成回路32よりAF制御用信号209を取り込み(54)、そのデータと前回までに得ているレンズの各種位置情報、レコーダマイコン28より供給されるのキー情報、モード情報に基づきAF用の演算を行なう(55)。
次にAE制御用信号作成回路33よりAE制御用信号を取り込み(56)、そのデータと前回までに得ているレンズの各種位置情報、レコーダマイコン28よりのキー情報、モード情報に基づきAE用の演算を行なう(57)。
次にレンズユニット1内の各種制御を行なうための制御情報を通信するためのタイマー割り込み側の処理(70)の終了を確認した後に(58)、今回の通信によるレンズの各種位置情報の取り込みを行ない(59)、その後レコーダとの通信、撮像素子20より出力された撮像信号のメモリへの書き込み、読み出しを制御するためのメモリコントローラへの制御信号の作成、及びそのメモリ出力信号208の出力、その他各種の処理を行ない(60)、再度垂直同期信号入力を待つ垂直同期信号待機状態へ戻る(51)。
一方、タイマー割り込みルーチン(70)で示されるタイマー割り込み側の処理は、メインルーチン(50)にて垂直同期信号入力により作成されるタイミング後に割り込みをかけることによって実行されるため、すぐにレンズユニットとの通信が開始される(71)。
この中で、AF制御信号の出力(72)、AE制御信号の出力(73)、フォーカスエンコーダ15、ホール素子16の検出情報に基づくレンズの位置情報の取り込み(74)等を行ない、割り込み終了フラグをセットして(75)割り込みを終了するものである。」(第3頁左下欄第7行?第5頁左下欄第13行)
「第3図はシステムの通信のタイミングを説明するためのタイミングチャートである。
同図において、(a)は垂直同期信号、(b)は垂直同期信号のタイミングで行なわれる通信のタイミング、(c)はAF用データ取り込み及び演算処理、AE用データ取り込み及び演算処理のタイミングをそれぞれ示すものである。
同図において、割り込みが入るタイミングを検討すると、各種演算に要する時間が必ずしも決まっていないため、AFの演算処理終了以前(ア)、AFの演算処理終了以降でAEの演算処理終了以前(イ)、AEの演算処理終了以降(ウ)の様なパターンが存在する。
したがって、最悪の場合毎回の通信ごとにタイミングがばらばらになってしまうおそれがある。そしてタイミングがばらつくと、あるデータが2回送信されたり、あるデータがレンズに送られずに欠落されてしまうことがある。
すなわち同図に示すように、(ア)のパターンでは、AF、AEの演算処理終了以前に通信タイミングが来るので、今演算中のデータを送ることは出来ず、通信の内容はAF、AEとも前回の演算データとなる。
また(イ)のパターンでは、AFの演算処理後でAEの演算終了前に通信タイミングが来るので、通信の内容は、AFデータはこの垂直同期期間に演算した新らしいデータとなるが、AEデータは演算が終了していないため、前回のデータとなる。
また(ウ)のパターンでは、通信タイミングがAF、AE両方の演算処理とも終了した後に来るので、通信の内容は、AF、AEいずれも今回の演算による最新のデータとなる。
このようにデータの通信が乱れ、正確な制御を行なうことが出来なくなるおそれがある。
一般にAF制御は、緊急性が高く、最新の映像信号を基に演算した結果をすみやかにレンズに送る必要がある。これはとくにビデオカメラのように、動きのある被写体を撮影するものにおいては必要不可欠の要件である。
これに対してAE制御は1垂直同期信号期間程度のずれではあまり支障がない。」(第5頁右下欄第1行?第6頁右上欄第3行)

(b)図面の記載







引用例1の第3図(a)の垂直同期信号の記載及び技術常識からして、垂直同期信号は定期的なタイミングで発信される信号であることは明らかである。

(c)引用例記載の発明
上記(a)及び(b)の記載事項によると、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「レンズユニット1とカメラユニット2とからなる交換レンズ式カメラシステムであって、
カメラユニット2は、
定期的なタイミングで発信される垂直同期信号205を分離する垂直同期信号分離回路24と、
レンズユニット1によってその撮像面に結像された光学的信号108を光電変換して電気的な撮像信号201に変換する撮像素子20と、
撮像信号201をデジタル変換し、さらにアナログに戻したビデオ信号23より、AF制御のためのフォーカス制御用信号209を形成して出力するAF用制御信号作成回路32と、
垂直同期信号信号205のタイミングに同期して各種制御動作を行うカメラマイコン29と、を備え、
レンズユニット1は、
焦点調節用のフォーカシングレンズ10と、
フォーカシングレンズを駆動するためのフォーカスモータ11と、
フォーカスモータ11の駆動回路12と、
フォーカシングレンズの移動位置を検出してフォーカス位置情報を出力するフォーカスエンコーダ15と、
カメラユニット2から送信されてくる制御情報に従ってレンズユニット1内の各種制御を統括して行い、フォーカシングレンズ10を駆動するためのフォーカス駆動信号101を駆動回路12へと出力するレンズマイコン17と、を備え、
レンズマイコン17よりカメラマイコン29へ、フォーカシングレンズの位置情報107が送られ、
カメラマイコン29は、AF制御用信号209を取り込み、レンズの各種位置情報、レコーダマイコン28より供給されるのキー情報、モード情報に基づきAF用の演算を行い、
カメラマイコン29よりレンズマイコン17へ、AF制御駆動情報106が送信され、この制御情報を作成する場合に、垂直同期信号205が使用される
交換レンズ式カメラシステム。」

5 本件補正発明と引用発明との対比
ここで、本件補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「レンズユニット1」及び「カメラユニット2」は、本件補正発明の「交換レンズ」及び「カメラボディ」にそれぞれ相当する。
そうすると、引用発明の「レンズユニット1とカメラユニット2とからなる交換レンズ式カメラシステム」は本件補正発明の「交換レンズとカメラボディとを含むカメラシステム」に相当する。

(2)引用発明の「垂直同期信号分離回路24」は本件補正発明の「信号生成手段」相当する。
そうすると、引用発明の「カメラユニット2は、定期的なタイミングで発信される垂直同期信号205を分離する垂直同期信号分離回路24」「を備え」る構成は、本件補正発明の「カメラボディは、定期的にタイミング信号を生成する信号生成手段」「を備え」る構成に相当する。

(3)撮像素子を備えたカメラシステムにおいて、垂直同期信号と相関のあるタイミングで露光することは技術常識(例えば、特開2004-279721号公報の【0011】?【0012】、図3、特開2006-197048号公報の【0042】?【0043】、図11参照。)であるから、引用発明の「撮像素子20」は、当然「垂直同期信号205」と相関のあるタイミングで露光しているものと認められる。
そうすると、引用発明の「カメラユニット2は、」「レンズユニット1によってその撮像面に結像された光学的信号108を光電変換して電気的な撮像信号201に変換する撮像素子20」「を備え」る構成は、本件補正発明の「カメラボディは、」「信号生成手段で生成されたタイミング信号と相関のあるタイミングで露光して、画像データを生成する撮像素子」「を備え」る構成に相当する。

(4)引用発明の「AF用制御信号作成回路32」は本件補正発明の「オートフォーカス用の評価値を算出する評価値算出手段」相当する。
そうすると、引用発明の「カメラユニット2は、」「撮像信号201をデジタル変換し、さらにアナログに戻したビデオ信号23より、AF制御のためのフォーカス制御用信号209を形成して出力するAF用制御信号作成回路32」「を備え」る構成は、本件補正発明の「カメラボディは、」「撮像素子で生成された画像データに基づいて、オートフォーカス用の評価値を算出する評価値算出手段」「を備え」る構成に相当する。

(5)引用発明の「カメラマイコン29」は本件補正発明の「ボディ制御部」相当する。
そうすると、引用発明の「カメラユニット2は、」「垂直同期信号信号205のタイミングに同期して各種制御動作を行うカメラマイコン29」「を備え」る構成は、本件補正発明の「カメラボディは、」「カメラボディを制御するボディ制御部」「を備え」る構成に相当する。

(6)引用発明の「レンズユニット1は、焦点調節用のフォーカシングレンズ10」「を備え」る構成は、本件補正発明の「交換レンズは、光軸方向に進退することにより、被写体像のフォーカス状態を変化させるフォーカスレンズ」「を備え」る構成に相当する。

(7)引用発明の「フォーカスモータ11」及び「フォーカスモータ11の駆動回路12」は本件補正発明の「駆動手段」に相当する。
そうすると、引用発明の「レンズユニット1は、」「フォーカシングレンズを駆動するためのフォーカスモータ11と、フォーカスモータ11の駆動回路12と、」「を備え」る構成は、本件補正発明の「交換レンズは、」「フォーカスレンズを駆動するための駆動手段」「を備え」る構成に相当する。

(8)引用発明の「フォーカスエンコーダ15」は本件補正発明の「位置検出手段」に相当する。
そうすると、引用発明の「レンズユニット1は、」「フォーカシングレンズの移動位置を検出してフォーカス位置情報を出力するフォーカスエンコーダ15」「を備え」る構成は、本件補正発明の「交換レンズは、」「フォーカスレンズ又は前記フォーカスレンズに連動する機構部材の位置を検出する位置検出手段」「を備え」る構成に相当する。

(9)引用発明の「レンズマイコン17」は本件補正発明の「レンズ制御部」に相当する。
そうすると、引用発明の「レンズユニット1は、」「カメラユニット2から送信されてくる制御情報に従ってレンズユニット1内の各種制御を統括して行い、フォーカシングレンズ10を駆動するためのフォーカス駆動信号101を駆動回路12へと出力するレンズマイコン17」「を備え」る構成は、本件補正発明の「交換レンズは、」「ボディ制御部からの制御信号に応じて、前記駆動手段を制御するレンズ制御部」「を備え」る構成に相当する。

(10)引用発明の「レンズマイコン17よりカメラマイコン29へ、フォーカシングレンズの位置情報107が送られ」る構成と、本件補正発明の「レンズ制御部は、前記信号生成手段で生成されたタイミング信号を前記カメラボディから取得し、取得した前記タイミング信号に同期して前記位置検出手段に前記フォーカスレンズ又は前記機構部材の位置を検出させ、その検出された前記フォーカスレンズ又は前記機構部材の位置を前記カメラボディに通知」する構成とは、「レンズ制御部は、」「検出された前記フォーカスレンズ又は前記機構部材の位置を前記カメラボディに通知」する構成で一致する。

(11)引用発明は、「カメラマイコン29よりレンズマイコン17へ、AF制御駆動情報106が送信され」るものであるから、当然オートフォーカス動作をするものであるといえる。
そうすると、引用発明の「カメラマイコン29は、AF制御用信号209を取り込み、レンズの各種位置情報、レコーダマイコン28より供給されるのキー情報、モード情報に基づきAF用の演算を行い、カメラマイコン29よりレンズマイコン17へ、AF制御駆動情報106が送信される」構成と、本件補正発明の「ボディ制御部は、前記信号生成手段で生成されたタイミング信号に基づいて、前記レンズ制御部から取得した前記フォーカスレンズ又は前記機構部材の位置と前記評価値算出手段で算出された評価値とを関連付け、該関連付けられた位置及び評価値に基づいて、カメラシステムのオートフォーカス動作を制御する」構成とは、「ボディ制御部は、」「フォーカスレンズ又は前記機構部材の位置」「及び評価値に基づいて、カメラシステムのオートフォーカス動作を制御する」構成で一致する。

上記(1)乃至(11)の点から、本件補正発明と引用発明は、
「交換レンズとカメラボディとを含むカメラシステムであって、
前記カメラボディは、
定期的にタイミング信号を生成する信号生成手段と、
前記信号生成手段で生成されたタイミング信号と相関のあるタイミングで露光して、画像データを生成する撮像素子と、
前記撮像素子で生成された画像データに基づいて、オートフォーカス用の評価値を算出する評価値算出手段と、
前記カメラボディを制御するボディ制御部と、を備え、
前記交換レンズは、
光軸方向に進退することにより、被写体像のフォーカス状態を変化させるフォーカスレンズと、
前記フォーカスレンズを駆動するための駆動手段と、
前記フォーカスレンズ又は前記フォーカスレンズに連動する機構部材の位置を検出する位置検出手段と、
前記ボディ制御部からの制御信号に応じて、前記駆動手段を制御するレンズ制御部と、を備え、
前記レンズ制御部は、検出された前記フォーカスレンズ又は前記機構部材の位置を前記カメラボディに通知し、
前記ボディ制御部は、前記フォーカスレンズ又は前記機構部材の位置及び評価値に基づいて、カメラシステムのオートフォーカス動作を制御する、カメラシステム。」
で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本件補正発明は、レンズ制御部は、信号生成手段で生成されたタイミング信号をカメラボディから取得し、取得したタイミング信号に同期して位置検出手段にフォーカスレンズ又は機構部材の位置を検出させ、ボディ制御部は、信号生成手段で生成されたタイミング信号に基づいて、レンズ制御部から取得したフォーカスレンズ又は前記機構部材の位置と評価値算出手段で算出された評価値とを関連付け、関連付けられた位置及び評価値に基づいて、カメラシステムのオートフォーカス動作を制御するのに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

6 当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
カメラシステムにおいて、フォーカシングレンズは元々焦点を調節するために移動させるレンズであるから、フォーカシングレンズの位置情報、及び、撮像信号より形成されたAF制御用信号に基づいて、AF制御駆動情報を算出するにあたり、該撮像信号はフォーカシングレンズが如何なる位置の撮像信号であるかがわからないとAF制御できないことは自明なことである。
また、引用発明は、AF制御に関する「情報を作成する場合に、垂直同期信号205が使用される」ものであるし、さらに、「第2」[理由]「5」「(3)」でも述べたように、撮像素子を備えたカメラシステムにおいて、垂直同期信号と相関のあるタイミングで露光することは技術常識である。
したがって、引用発明において、レンズユニット1がフォーカシングレンズの位置情報を得る際に、カメラユニット2から取得した垂直同期信号205に基づいて行い、さらに、垂直同期信号に基づいて、フォーカシングレンズの位置情報、及び、撮像信号より形成されたAF制御用信号とを関連付けて、上記相違点に係る本件補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になしえたことである。

相違点については上記のとおりであり、本件補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び技術常識から当業者が当然に予測できる範囲内のものと認められる。
よって、本件補正発明は、引用発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

7 本件補正についての補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成24年9月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。(上記「第2」[理由]「1」参照。)

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物及びその記載事項、ならびに引用発明は、上記「第2」[理由]「4」に記載したとおりである。

3 対比及び当審の判断
本願発明は、上記「第2」[理由]「1」及び「2」で検討したとおり、本件補正発明の構成要素である「レンズ制御部」が「位置検出手段に前記フォーカスレンズ又は前記機構部材の位置を検出させ」るのを、本件補正発明では「取得した前記タイミング信号に同期して」行うこととしたものであったのを、「タイミング信号の取得に応じて」行うとしたものである。
ここで、本願発明の発明特定事項を全て含み、上記構成要素で限定した本件補正発明が、上記「第2」[理由]「5」及び「6」に記載した通り、引用発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-08 
結審通知日 2013-05-09 
審決日 2013-05-21 
出願番号 特願2008-34705(P2008-34705)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 土屋 知久
伊藤 昌哉
発明の名称 カメラシステム  
代理人 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ  

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