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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1276206 |
審判番号 | 不服2011-25450 |
総通号数 | 164 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-08-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-11-25 |
確定日 | 2013-07-03 |
事件の表示 | 特願2002-502405「リアルタイム指表面パターン測定システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月13日国際公開、WO01/94902、平成15年12月 2日国内公表、特表2003-535629〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成13年6月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2000年6月9日,(NO)ノールウェー)を国際出願日とする出願であって,平成23年7月22日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年11月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付けにて手続補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。 さらに,平成24年2月7日付けで審尋がなされ,回答書が同年5月9日付けで請求人より提出されたものである。 第2 本件補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 補正後の本願発明 本件補正により,補正前の特許請求の範囲の請求項1は, 「【請求項1】 表面におけるパターンを測定するためのシステムであって, 電気絶縁材料で覆われた多数のセンサー電極と, 少なくとも1つの刺激電極と を具備し, 前記表面は,電気絶縁材料の全面にわたって移動でき, 前記少なくとも1つの刺激電極は,前記表面を通して,該刺激電極と多数のセンサーとの間に,変動電流または変動電圧を供給するシステムにおいて, 前記センサー電極は,本質的に線形アレイを構成し, 前記刺激電極は,センサー電極のアレイから分離して配置され, 前記システムは,変動する振幅または位相を備えた電流または電圧を前記表面に印加するための,刺激電極に連結された生成器を具備し, 前記システムは,センサー電極に連結された測定装置を具備し,該測定装置は,前記表面のパターンの表示を生成すべく,電流または電圧の印加中に,センサー電極におけるインピーダンスを時間順に測定し,前記表面の所定の特徴の値を計算し,かつ,該センサー電極に関して計算された値を時間順にわたって結合するためのものであり, 当該システムは,前記センサーのアレイに対する前記表面の移動を測定するために,測定装置に連結され,かつ,該線形アレイの外側に配置された少なくとも1つの電極をさらに具備し, 前記センサー電極に関して,伝導性材料からなる電気的なアース層が設けられることを特徴とするシステム。」 と補正された。(下線は補正箇所を示す。) 本件補正は,請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「システム」について「当該システムは,前記センサーのアレイに対する前記表面の移動を測定するために,測定装置に連結され,かつ,該線形アレイの外側に配置された少なくとも1つの電極をさらに具備し, 前記センサー電極に関して,伝導性材料からなる電気的なアース層が設けられる」として,「システム」の構成を特定し限定した補正を含むものである。 したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成18年法改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2 引用刊行物およびその記載事項(下線は当審で付与した。) (1)本願出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物であるWO98/58342号公報(以下「刊行物1」という。)には,「指紋の構造を測定する方法および装置」について,図面とともに次の事項が記載されている。(刊行物1のパテントファミリーである特表2002-505778号公報を翻訳文として用い,刊行物1の記載を省略している。) (1-ア) 「【特許請求の範囲】 ・・・ 6. 指紋表面に接近または接触して配置されるようになされるセンサーアレーを含み,このセンサーアレーは複数位置で例えばキャパシタンスまたは抵抗を測定することで指紋表面の選択された特徴部分を測定するようになされている指紋等の構造を測定する装置において, センサーアレーは所定の時間間隔のもとで前記特徴部分を測定するようになされた少なくとも1つのセンサー線を含む実質的に一次元のアレーであり,表面はセンサーアレーに対して実質的に直角方向の相対的な動きを有しており, センサーから成る前記センサー線に対して直角方向に前記センサー線から選択された距離を隔てて配置された少なくとも1つのセンサーを含み, 指紋表面の特徴部分を表す区分された二次元表示を得るために,異なる時間間隔で得た測定値を組合わせる手段を含むことを特徴とする指紋等の構造の測定装置。 7. 実質的に一次元のセンサーアレーが実質的に等間隔で隔てられた,複数のセンサーから成る2以上の平行な直線を含み,前記少なくとも1つのセンサーは前記アレーに含まれている請求項6に記載された指紋等の構造の測定装置。」(8頁1行?10頁5行) (1-イ) 「【発明の詳細な説明】 指紋の構造を測定する方法および装置 本発明は,指紋等の構造を測定する方法および装置に係り,指紋の表面に接触または接近して配置される複数のセンサーで構成されたセンサーアレーを使用して,指紋表面における選ばれた特徴(例えば,キャパシタンスや抵抗)の測定を含む,指紋等の構造の測定方法および装置に関するものである。」(1頁1?7行) (1-ウ) 「 図1aにはセンサー1の成す単列線形アレーが示されている。これらのセンサーは,圧力センサーや温度センサーのようなさまざまな種類のものであってよいが,それらのセンサーは導電体とされて指紋のさまざまな部分における状態,すなわちインピーダンスまたはキャパシタンスを測定できるようにすることが好ましい。測定すべき表面は,センサーの成す直線に対して直角方向へ動かされる。 好適例では,センサー1はエポキシのような絶縁材3で隔離された導電体である。図示実施例では,導電材2がセンサーを囲んでおり,これは基準電位を与えるために使用される。したがって,指紋全体にわたって各センサー1とそれを囲む基準レベルとの間における状態,すなわちインピーダンスまたはキャパシタンスが測定できる。 等間隔に隔てられたセンサーを有する図示例が好ましいが,他の解決法,例えば指紋の或る部分を測定するためのセンサー群を含んで成る方法もまた可能である。 センサーの成す直線(センサー線)から1以上の選ばれた距離を隔てて配置された1以上のセンサーを使用すれば,センサー線からの信号,および表面の対応構造部の測定の間の時間経過や空間的偏位を比較することで,センサーに対する指紋の速度を測定できる。図1bは,センサーアレーが2線(列)のセンサー1を含んで成る本発明の好適例を示す。」(3頁28行?4頁14行) (1-エ) 「図5は,時間的に変化(例えば,振動やパルス)する外部電圧12がセンサー領域の側にある導電領域14を経て指に加えられる本発明の実施例を示している。一定電圧13に保たれた面が導体11に接近して平行に配置されている。これは,外部電源によるクロストーク(混信)およびノイズを減らし,測定で生じた画像のコントラストを改善する。これは,1以上の導電層が一定電圧である多層プリント回路基板を使用することでによって実行される。絶縁層(図示せず)が導体1,11およびシールド面13を覆うことが好ましい。」(6頁14?25行) (1-オ)図5には,シールド面13がアースされた状態が記載されている。 上記(1-ア)?(1-オ)の記載と第1?5図を参照すると,上記刊行物1には, 次の発明が記載されていると認められる。 「指紋表面に接近または接触して配置されるようになされるセンサーアレーを含み,このセンサーアレーは複数位置で例えばキャパシタンスまたは抵抗を測定することで指紋表面の選択された特徴部分を測定するようになされており, 時間的に変化(例えば,振動やパルス)する外部電圧12がセンサー領域の側にある導電領域14を経て指に加えられる指紋等の構造を測定する装置において, センサーアレーは所定の時間間隔のもとで前記特徴部分を測定するようになされた少なくとも1つのセンサー線を含む実質的に一次元のアレーであり,表面はセンサーアレーに対して実質的に直角方向の相対的な動きを有しており, 絶縁材3で隔離された導電体であるセンサー1から成る前記センサー線に対して直角方向に前記センサー線から選択された距離を隔てて配置された少なくとも1つのセンサーを含み, 指紋表面の特徴部分を表す区分された二次元表示を得るために,異なる時間間隔で得た測定値を組合わせる手段を含む 基準電位を与えるために導電材2がセンサーを囲んでいる 指紋等の構造を測定する装置」 (以下,「引用発明」という。) 3 対比・判断 補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「センサーアレー」,「導電領域14」,「絶縁材3で隔離された導電体であるセンサー1」,及び「指紋等の構造を測定する装置」は,補正発明の「センサー電極のアレイ」,「刺激電極」,「電気絶縁材料で覆われた」「センサー電極」,及び「表面におけるパターンを測定するためのシステム」に相当することは明らかである。 イ 引用発明の「センサー線に対して直角方向に前記センサー線から選択された距離を隔てて配置された少なくとも1つのセンサー」は,補正発明の「センサーのアレイに対する前記表面の移動を測定するために,測定装置に連結され,かつ,該線形アレイの外側に配置された少なくとも1つの電極」に相当する。 ウ 引用発明の「このセンサーアレーは複数位置で例えばキャパシタンスまたは抵抗を測定することで指紋表面の選択された特徴部分を測定するようになされており」,「指紋表面の特徴部分を表す区分された二次元表示を得るために,異なる時間間隔で得た測定値を組合わせる手段」が,補正発明の「センサー電極に連結された測定装置を具備し,該測定装置は,前記表面のパターンの表示を生成すべく,電流または電圧の印加中に,センサー電極におけるインピーダンスを時間順に測定し,前記表面の所定の特徴の値を計算し,かつ,該センサー電極に関して計算された値を時間順にわたって結合するためのもの」に相当することは明らかである。 そうすると,両者は, (一致点) 「表面におけるパターンを測定するためのシステムであって, 電気絶縁材料で覆われた多数のセンサー電極と, 少なくとも1つの刺激電極と を具備し, 前記表面は,電気絶縁材料の全面にわたって移動でき, 前記少なくとも1つの刺激電極は,前記表面を通して,該刺激電極と多数のセンサーとの間に,変動電流または変動電圧を供給するシステムにおいて, 前記センサー電極は,本質的に線形アレイを構成し, 前記刺激電極は,センサー電極のアレイから分離して配置され, 前記システムは,変動する振幅または位相を備えた電流または電圧を前記表面に印加するための,刺激電極に連結された生成器を具備し, 前記システムは,センサー電極に連結された測定装置を具備し,該測定装置は,前記表面のパターンの表示を生成すべく,電流または電圧の印加中に,センサー電極におけるインピーダンスを時間順に測定し,前記表面の所定の特徴の値を計算し,かつ,該センサー電極に関して計算された値を時間順にわたって結合するためのものであり, 当該システムは,前記センサーのアレイに対する前記表面の移動を測定するために,測定装置に連結され,かつ,該線形アレイの外側に配置された少なくとも1つの電極をさらに具備するシステム。」 である点で一致し,以下の点で相違するといえる。 (相違点) センサー電極に関して,補正発明では,「前記センサー電極に関して,伝導性材料からなる電気的なアース層が設けられる」のに対して,引用発明では,そのようなものを設けていない点。 (1)相違点についての検討 本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-164824号公報(以下,刊行物2という。)に,「容量型指紋検知アレイの静電気電荷保護」に関して「【0033】本発明は,図2,4,5の誘電体によって被覆されているか又は誘電体に埋設されているコンデンサプレート23及び24から電気的に分離されているがそれらと物理的に関連している接地されている金属グリッド又はメッシュ構成体40を取扱う。 【0034】本発明にとって,この電気的に接地されているグリッド/メッシュ40が,接地されていない指先18を配置させる誘電体層25の上側表面125から物理的且つ電気的に分離されていることが重要である。接地されている金属グリッド/メッシュ40は図2の誘電体層25の上部表面125上に指又は指先部分18を物理的に配置させることによって指紋を検知すべき人によって担持される場合のある何等かの静電気から例えばノード16,17のような多数の個別的な接地されていない電気的ノードを保護すべく動作する。」と記載され,図5の各コンデンサプレートが,電気的に接地されているグリッド/メッシュに囲まれており,「コンデンサプレート」,「電気的に接地されているグリッド/メッシュ」が,それぞれ,「センサー電極」,「伝導性材料からなる電気的なアース層」に相当するから,引用発明及び本願発明の指表面パターン測定の技術分野において「伝導性材料からなる電気的なアース層が各センサー電極毎に設けられる」ことは,指紋検知アレイとして周知技術である。 してみると,引用発明に上記周知技術を付加して,相違点に記載の補正発明の構成とすることは,十分動機付けがあり,阻害要因もなく,当業者が容易に想到するものといえる。 (2)そして,補正発明の作用効果は,引用発明,周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。 (3)したがって,補正発明は,引用発明,周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4 まとめ 以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は,上記のとおり却下されることとなるので,本願の請求項1?10に係る発明は,平成23年6月1日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されたものであって,その請求項1に係る発明は,次のとおりであると認める。 「【請求項1】 表面におけるパターンを測定するためのシステムであって, 電気絶縁材料で覆われた多数のセンサー電極と, 少なくとも1つの刺激電極と を具備し, 前記表面は,電気絶縁材料の全面にわたって移動でき, 前記少なくとも1つの刺激電極は,前記表面を通して,該刺激電極と多数のセンサーとの間に,変動電流または変動電圧を供給するシステムにおいて, 前記センサー電極は,本質的に線形アレイを構成し, 前記刺激電極は,センサー電極のアレイから分離して配置され, 前記システムは,変動する振幅または位相を備えた電流または電圧を前記表面に印加するための,刺激電極に連結された生成器を具備し, 前記システムは,センサー電極に連結された測定装置を具備し,該測定装置は,前記表面のパターンの表示を生成すべく,電流または電圧の印加中に,センサー電極におけるインピーダンスを時間順に測定し,前記表面の所定の特徴の値を計算し,かつ,該センサー電極に関して計算された値を時間順にわたって結合するためのものであることを特徴とするシステム。」(以下,「本願発明」という。) 2 引用刊行物およびその記載事項 本願出願前に頒布された刊行物1およびその記載事項は,上記「第2 2」に記載したとおりである。 3 当審の判断 本願発明は,補正発明から「当該システムは,前記センサーのアレイに対する前記表面の移動を測定するために,測定装置に連結され,かつ,該線形アレイの外側に配置された少なくとも1つの電極をさらに具備し, 前記センサー電極に関して,伝導性材料からなる電気的なアース層が設けられる」という「システム」を特定し限定する構成を省いたものに相当する。 そうすると,本願発明の構成要件を全て含む補正発明が,上記「第2 3」において検討したとおり,引用発明,周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。 第4 まとめ 以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その他の請求項について言及するまでもなく,本願出願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-01-23 |
結審通知日 | 2013-01-29 |
審決日 | 2013-02-20 |
出願番号 | 特願2002-502405(P2002-502405) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮澤 浩 |
特許庁審判長 |
岡田 孝博 |
特許庁審判官 |
後藤 時男 信田 昌男 |
発明の名称 | リアルタイム指表面パターン測定システム |
代理人 | 渡邊 隆 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 志賀 正武 |