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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1276225
審判番号 不服2012-12472  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-02 
確定日 2013-07-03 
事件の表示 特願2010- 9154「磁気コンデンサの集積回路パッケージ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月19日出願公開、特開2010-183073〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成22年1月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年2月5日,米国)の出願であって,平成24年3月27日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年7月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正がなされた。その後,平成24年9月24日付けで,前置報告書の内容を通知する審尋を行い,期間を指定して回答書を提出する機会を与えたが,請求人から何ら応答がなかった。

第2.原査定
原査定における拒絶の理由の一つは,以下のとおりのものと認める。
「この出願の請求項に係る発明は,その優先日前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開昭53-103376号公報
2.特開2003-124430号公報
3.特開2005-32763号公報
4.国際公開第2007/086481号
5.特開2008-177536号公報
6.特開2000-12381号公報」

第3.平成24年7月2日付けの手続補正についての補正却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成24年7月2日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1.本件補正の概要
本件補正は,願書に最初に添付された特許請求の範囲及び明細書を補正するもので,請求項1については,補正前に
「【請求項1】
第1の表面と,前記第1の表面と表裏の関係にある第2の表面と,を有する基板と,
前記基板の前記第2の表面に接続された集積回路と,
前記基板にそれぞれ接続された正端子および負端子を有する磁器コンデンサユニットと,を備えることを特徴とする磁器コンデンサの集積回路パッケージ。」
とあるのを,次のとおりに補正するものである。

「【請求項1】
第1の表面と,前記第1の表面と表裏の関係にある第2の表面と,を有する基板と,
前記基板の前記第2の表面に接続された集積回路と,
前記基板にそれぞれ接続された正端子および負端子を有する磁気コンデンサユニットと,を備え,
前記磁気コンデンサユニットは,複数の磁気コンデンサセルを含み,
前記磁気コンデンサセルのそれぞれは,
第1の磁気電極と,
第2の磁気電極と,
前記第1の磁気電極と前記第2の磁気電極との間に配置された誘電体層と,を備え,
前記第1の磁気電極および前記第2の磁気電極は,電気的にバイアスされ,逆方向の磁気分極を有することを特徴とする磁気コンデンサの集積回路パッケージ。」

上記補正は,補正前の発明特定事項である「磁器コンデンサユニット」について,「磁気コンデンサユニットは,複数の磁気コンデンサセルを含み,前記磁気コンデンサセルのそれぞれは,第1の磁気電極と,第2の磁気電極と,前記第1の磁気電極と前記第2の磁気電極との間に配置された誘電体層と,を備え,前記第1の磁気電極および前記第2の磁気電極は,電気的にバイアスされ,逆方向の磁気分極を有する」との限定を付したものと一応考えられる。そして,この補正は,産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではない。
したがって,少なくとも請求項1の補正に関する限り,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するということができる。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。
なお,補正前の「磁器」は「磁気」の誤りと考えられるが,仮に,そうでないとした場合,請求項1の補正は,「磁器」の限定を外すものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものではないことになる。この場合も,補正の却下の結論が変わるものではない。

2.引用刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2005-32763号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
・「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体装置に関し,特に,半導体装置にキャパシタを設ける方法に適用して好適なものである。」
・「【0018】
図1において,配線基板1上には端子電極2が形成されている。一方,半導体チップ3上にはバンプ電極4が形成されるとともに,半導体チップ3の裏面にはキャパシタ6が設けられている。ここで,半導体チップ3の裏面にキャパシタ6を設ける場合,接着層5を介して半導体チップ3の裏面にキャパシタ6を貼り付けることができる。そして,キャパシタ6上には端子電極7が設けられ,端子電極7は,ワイヤ8を介して配線基板1上の端子電極2に接続されている。」
・図1を参照すると,半導体チップ3はバンプ電極4を介して配線基板1に電気的に接続されていることが看取できるとともに,キャパシタ6上には複数の端子電極7が設けられ,その各々がワイヤ8を介して配線基板1上の対応する端子電極2に接続されていることが看取できる。

上記各記載事項及び図面の記載によれば,引用例には,次の発明が記載されているといえる(以下「引用発明」という。)。
「半導体チップ3がバンプ電極4を介して配線基板1に電気的に接続された半導体装置であって,半導体チップ3の裏面に接着層5を介してキャパシタ6が設けられ,キャパシタ6上の複数の端子電極7がそれぞれワイヤ8を介して配線基板1上の対応する端子電極2に接続された半導体装置。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-12381号公報(以下「引用例2」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
・「【請求項5】キャパシタに蓄積した電荷による情報記憶を行なう半導体メモリにおいて,キャパシタの電極材料として有限のスピン分極率を有する磁性体を用いスピン偏極トンネル電流が対抗する電極が反対方向に磁化したときに減少すること事をもちいリーク電流を低減したことを特徴とする薄膜キャパシタ。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体記憶装置等に用いられる薄膜誘電体キャパシタに関する。」
・「【0003】さらに,薄膜キャパシタでは電荷蓄積量の増加のために膜厚を低減する事が必須になる。キャパシタ膜厚の低減はリーク電流の上昇を招き,また高誘電率材料の代表として検討されているSrTiO3,Sr1-xBaxTiO3(以下BSTOと称する)はSi酸化膜よりバンドギャップが小さいため本質的にリーク電流が増加する傾向にある。上記導電性ペロブスカイト電極を用いる事により高い界面整合性が得られ,界面欠陥や界面準位に起因するリーク電流を抑制する事ができるが,さらに薄膜化を行なうにはトンネル電流に起因するリーク電流をも抑制する必要がある。」
・「【0013】また極薄膜化したキャパシタのリーク電流の問題に関して,発明者らは鋭意検討を重ねた結果,この種の絶縁体薄膜における直接トンネルを抑制するためにはトンネル電流のスピン偏極性を用いることによってリーク電流を大幅に低減することが可能であることを見出した。このためには上下電極に有限のスピン偏極率を有する磁性体を用い,上下電極の磁化方向を反対向きに設定しておけばよい。」

(3)本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2008-71720号公報(以下「引用例3」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
・「【0003】
スピン注入磁化反転とは,例えば,強磁性体層(F1層)/非磁性体層(N層)/強磁性体層(F2層)の3層構造において,F1層の厚さがF2層の厚さより充分薄い場合において,積層面に対して垂直方向にバイアス電流を印加すると,F1層の磁気モーメントに比べてF2層の磁気モーメントに強いトルクが働いて,F2層の磁気モーメントのみが回転し,反転する現象をいう(例えば,非特許文献1を参照。)。」
・「【0012】
本発明のバッテリーセルは,二つの強磁性金属層の磁化方向が,磁場を印加することによりともに変化するものである。本明細書において,「強磁性金属層の磁化方向が変化する」とは,強磁性金属層中の電子のスピンに,積層面に垂直な方向に加えられる磁場や積層面に垂直な方向に加えられる電流等によって系外から与えられるトルクが制動トルクを上回り,スピン偏極電流が非磁性金属層に流れだすことを意味する。」
・「【0021】
本発明のバッテリーセルは,構造が極めて単純であることから,微小な二次電池として他のデバイスに組み込んで用いることができる。しかしながら,現存の汎用電池程度の容量を確保するためには,上記バッテリーセルを積層面に対して垂直方向に積み上げることが好ましい。上記バッテリーセルを絶縁層を介して積層したバッテリーもまた本発明の1つの態様である。」
・「【0022】
非磁性金属層の対向電極をリード線で結線すると,図6に示すように,電位差により線間に電流が流れ,系外の負荷61に対して仕事をすることができる。一方,その代償として磁化方向14が反平行に戻り,層間に平衡スピン偏極電流が流れなくなる。そして,再び磁場等を用いることによって,各層の磁化方向をノンコリニアな状態にすることができ(これが充電に対応する),上記状態Aに戻すことができる。」

(4)本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2007/036860号(以下「引用例4」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている(和訳は,当該国際出願に係る国内公表である特表2009-510754号公報の記載による)。
・「Magnetic devices that use a flow of spin-polarized electrons are known for magnetic non volatile memory. Such a device generally includes at least two ferromagnetic electrodes that are separated by a non-magnetic material, such as a metal or insulator. The thicknesses of the electrodes are typically in the range of 1 nm to 50 nm. The resistance of the device depends on the relative magnetization orientation of the magnetic electrodes, such as whether they are oriented parallel or anti-parallel (i.e., the magnetizations lie on parallel lines but point in opposite directions). One electrode typically has its magnetization pinned, i.e., it has a higher coercivity than the other electrode and requires larger magnetic fields or spin-polarized currents to change the orientation of its magnetization. The second layer is known as the free layer and its magnetization direction can be changed relative to the former, to store a "1" or a "0" The device resistance will be different for these two states and thus the device resistance can be used to read the state and distinguish "1" from "0." In conventional magnetic random access memory (MRAM) designs, magnetic fields are used to switch the magnetization direction of the free layer, using current carrying wires located near the magnetic layers. Cross-talk will limit the density of the memory and/or cause errors in memory operations. Further, the magnetic fields generated by such wires are limited to about 0.1 Tesla at the position of the electrodes, which leads to slow device operation.」
(第1頁第5?21行;スピン分極した電子のフローを用いる磁気デバイスは,磁気非揮発性メモリとして知られている。このような磁気デバイスは,一般に,非磁性材料によって分離した,金属又は絶縁体などの少なくとも2つの強磁性電極を有している。この電極の厚さは,通常1nm?50nmの範囲にある。この磁気デバイスの抵抗値は,例えば,平行に指向しているか,又は逆平行(即ち,平行ではあるが,逆方向の磁化)に指向するなど,磁気電極の相対的な磁気的指向性に依存する。一方の電極は,代表的には,そのピン止めした磁化,即ち,他方の電極よりも大きい駆動磁場を有し,且つ磁気的指向性を変えるのに大きめの磁界又はスピン分極電流を必要とする。その次の層は,自由層として知られており,その電極に対して磁化方向を変えることができ,“1”又は“0”を保持する。この磁気デバイスの抵抗値は,これらの2つのステートで異なるものとされるため,この磁気デバイスの抵抗値を用いて,そのステートを読み取り“1”と“0”とを区別する。従来からの磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)の設計では,磁界は,電流搬送ワイヤを用いて,これらの磁化層の近くに位置する自由層の磁化方向を切り換えるのに用いられる。クロストークは,メモリ密度を制限し,及び/又はメモリ動作のエラーを生じさせる。更に,このようなワイヤによって発生した磁場は,電極位置で約0.1テスラを限度とするため,デバイス動作を遅いものにする。)

3.対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「配線基板1」,「半導体チップ3」,「キャパシタ6」及び「半導体装置」は,それぞれ本願補正発明の「基板」,「集積回路」,「コンデンサ」及び「コンデンサの集積回路パッケージ」に相当する。
引用発明のキャパシタ6上に設けられる複数の端子電極7には,正端子と負端子があることは明らかである。
したがって,本願補正発明と引用発明は,本願補正発明の表記にしたがえば,
「第1の表面と,前記第1の表面と表裏の関係にある第2の表面と,を有する基板と,前記基板の前記第2の表面に接続された集積回路と,前記基板にそれぞれ接続された正端子および負端子を有するコンデンサとを備えるコンデンサの集積回路パッケージ。」
の点で一致し,次の点で相違する。
[相違点]
本願補正発明のコンデンサは,複数の磁気コンデンサセルを含むユニットであり,前記磁気コンデンサセルのそれぞれは,第1の磁気電極と,第2の磁気電極と,前記第1の磁気電極と前記第2の磁気電極との間に配置された誘電体層とを備え,前記第1の磁気電極および前記第2の磁気電極は,電気的にバイアスされ,逆方向の磁気分極を有するのに対して,引用発明のキャパシタ6は,そのような構成となっていない点。
上記相違点について検討する。
引用例2には,キャパシタ(コンデンサ)のリーク電流を低減するため,キャパシタの上下電極に有限のスピン偏極率を有する磁性体を用い,上下電極の磁化方向を反対向きに設定する技術が記載されている。また,磁気電極ないし強磁性金属層の磁化方向を変化させる手段として所定の電流を印加すること,すなわち,電気的にバイアスすることは,引用例3及び引用例4に示されるように(引用例3については段落【0003】及び段落【0012】参照),本願の優先日前において周知の技術である。これらの技術を参酌すれば,引用発明のキャパシタについて,第1の磁気電極,第2の磁気電極及びそれらの間に配置される誘電体層からなるものとし,第1の磁気電極と第2の磁気電極を電気的にバイアスして逆方向の磁気分極を有するように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。
また,複数のコンデンサセルからなるコンデンサユニットは,引用例3に示される(段落【0021】参照)ほか,特開平2-174209号公報や特開2006-352808号公報に示されるように,本願の優先日前において周知の技術である。
したがって,上記相違点に係る本願補正発明の構成は,引用例2に記載された技術事項及び周知技術を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。
以上のことから,本願補正発明は,引用発明,引用例2に記載された技術事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。

4.小括
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第4.本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下「本願発明」という。前記「第3」の「1.本件補正の概要」参照。)。

第5.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は,前記「第3」の「2.引用刊行物」の「(1)」及び「(2)」に記載したとおりである。

第6.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
本願発明における「磁器コンデンサ」が「磁気コンデンサ」の誤りであるとした場合,本願発明と引用発明は,本願発明の表記にしたがえば,「第1の表面と,前記第1の表面と表裏の関係にある第2の表面とを有する基板と,前記基板の前記第2の表面に接続された集積回路と,前記基板にそれぞれ接続された正端子および負端子を有するコンデンサユニットとを備えるコンデンサの集積回路パッケージ。」の点で実質的に一致し,本願発明のコンデンサが磁気コンデンサであるのに対して,引用発明のキャパシタがどのような形態のものか不明である点で両者は相違する。しかし,磁気コンデンサは引用例2に記載されており,上記相違点は,引用例2を参酌することにより,当業者が容易になし得たことである。
また,本願発明における「磁器コンデンサ」が「磁気コンデンサ」の誤りではなく,いわゆるセラミックコンデンサのことであるとした場合,本願発明と引用発明は,本願発明のコンデンサがセラミックコンデンサであるのに対して,引用発明のキャパシタがどのような形態のものか不明である点で相違するが,セラミックコンデンサは,コンデンサの種類の一つとしてきわめてありふれたものであるから,上記相違点は当業者が容易になし得たことである。
したがって,本願発明は,引用発明及び引用例2に記載された技術事項に基づいて,または,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7.むすび
以上のとおり,本願発明は,その優先日前において,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
したがって,原査定は妥当であり,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-31 
結審通知日 2013-02-05 
審決日 2013-02-18 
出願番号 特願2010-9154(P2010-9154)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 市川 裕司日比野 隆治  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 杉浦 貴之
小関 峰夫
発明の名称 磁気コンデンサの集積回路パッケージ  
代理人 坂口 武  
代理人 竹尾 由重  
代理人 北出 英敏  
代理人 木村 豊  
代理人 時岡 恭平  
代理人 水尻 勝久  

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