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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02M
管理番号 1276631
審判番号 不服2012-16546  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-24 
確定日 2013-07-11 
事件の表示 特願2008-228869「EGR装置付きエンジンの給気装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月18日出願公開、特開2010- 59918〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本件出願は、平成20年9月5日の出願であって、平成23年10月7日付けの拒絶理由通知に対して、同年12月19日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年5月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで手続補正書が提出されて明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、その後、当審において同年12月27日付けで書面による審尋がなされ、これに対し、平成25年3月11日付けで回答書が提出されたものである。


【2】平成24年8月24日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成24年8月24日付けの手続補正を却下する。


[理 由]
1.本件補正の内容
平成24年8月24日付けの手続補正書による手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関しては、本件補正により補正される前の(すなわち、平成23年12月19日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記の(b)に示す請求項1を、下記の(a)に示す請求項1へと補正するものである。

(a)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
エンジンの排気ガス通路中の排気ガスの一部を、給気通路に還流するEGR通路を備え、前記EGR通路を前記給気通路と合流部で接続するように構成されてなるEGR装置付きエンジンの給気装置において、
前記合流部に、円筒状に形成された給気通路の端部を向かい合わせて配置することで形成されるスリット部を備え、前記給気通路の内部間を前記スリット部を介して接続し、該スリット部を外部と遮断して覆う外管部を形成し、前記EGR通路を前記外管部の内部に連通し、EGR通路を流れるEGRガスを前記スリット部を通して前記給気通路に流し、給気と混合するように構成され、前記スリット部は、同一径の円筒状に形成された給気通路の端面を、一定間隔を設けて対向させて形成され、前記EGR通路から前記外管部内に流れるEGRガスを、前記スリット部の壁方向に沿って形成される環状の通路を通して周方向から流入させるように構成され、前記スリット部の両端部から前記給気通路の一定長さの断面積を、該スリット部が最小で給気通路の円筒状部になるに従い大きくなるように形成して、該スリット部が最も絞られ、前記スリット部に向かうように前記EGR通路を接続するとともに、前記スリット部の前記EGR通路の接続部近傍の一定長さの部分のみを覆うカバーを設け、該カバーによりEGRガスが流れる前記スリット部の周方向の一部を塞ぎ、
スリット部の周方向の前記カバーを除く全周から給気通路の内部に流入し、該流入したEGRガスと給気通路内の給気とが均一に混合せしめられることを特徴とするEGR装置付きエンジンの給気装置。」(下線部は審判請求人が補正箇所を示したものである。)

(b)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
エンジンの排気ガス通路中の排気ガスの一部を、給気通路に還流するEGR通路を備え、前記EGR通路を前記給気通路と合流部で接続するように構成されてなるEGR装置付きエンジンの給気装置において、
前記合流部に、円筒状に形成された給気通路の端部を向かい合わせて配置することで形成されるスリット部を備え、前記給気通路の内部間を前記スリット部を介して接続し、該スリット部を外部と遮断して覆う外管部を形成し、前記EGR通路を前記外管部の内部に連通し、EGR通路を流れるEGRガスを前記スリット部を通して前記給気通路に流し、給気と混合するように構成され、前記スリット部は、同一径の円筒状に形成された給気通路の端面を、一定間隔を設けて対向させて形成され、前記EGR通路から前記外管部内に流れるEGRガスを、前記スリット部の壁方向に沿って形成される環状の通路を通して周方向から流入させるように構成され、前記スリット部の両端部から前記給気通路の一定長さの断面積を、該スリット部が最小で給気通路の円筒状部になるに従い大きくなるように形成して、該スリット部が最も絞られ、前記スリット部に向かうように前記EGR通路を接続するとともに、前記スリット部の前記EGR通路の接続部近傍の一定長さの部分のみを覆うカバーを設け、該カバーによりEGRガスが流れる前記スリット部の周方向の一部を塞いだことを特徴とするEGR装置付きエンジンの給気装置。」


2.本件補正の目的
本件補正は、請求項1に関し、本件補正前における
「カバーによりEGRガスが流れるスリット部の周方向の一部を塞」いだことによる「EGRガス」の流れを、
「スリット部の周方向の前記カバーを除く全周から給気通路の内部に流入し、該流入したEGRガスと給気通路内の給気とが均一に混合せしめられる」と限定したものであるから、
本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。


3.本件補正の適否の判断
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて、以下に検討する。

3-1.引用文献記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-92592号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【0002】
従来より、自動車のエンジン等では、排気側から排気ガスの一部を抜き出して吸気側へと戻し、その吸気側に戻された排気ガスでエンジン内での燃料の燃焼を抑制させて燃焼温度を下げることによりNOxの発生を低減するようにした、いわゆる排気ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)が行われており、一般的に、この種の排気ガス再循環を行う場合には、排気マニホールドから排気管に至る排気通路の適宜位置と、吸気マニホールドの入口付近の吸気管との間をEGRパイプにより接続し、該EGRパイプを通して排気ガスを再循環するようにしている。
【0003】
ただし、吸気管の側面に単純にEGRパイプを接続するだけでは、吸気管内を流れる吸気に対して排気ガスを均一に混合することが難しく、更には、吸気管に対するEGRパイプの接続部分における開口が狭いために吸気に対する排気ガスの混入割合を急激に高めることができないなどの不都合があった。
【0004】
このような不都合を改善するため、例えば、下記の特許文献1などが既に提案されており、斯かる特許文献1においては、吸気管の途中に吸気の流れを絞り込むベンチュリ部を形成し、該ベンチュリ部に対し主要な吸気の流れ方向に対し横向きの方向で且つベンチュリ部の接線方向から排気ガスを導入するよう複数のEGRガス入口通路を接続した構造が提案されている。
【特許文献1】特開2003-003910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されているように、ベンチュリ部に対してEGRガス入口通路を接線方向から接続した構造では、ベンチュリ部の作用によりEGRパイプからの排気ガスを吸気管に吸引する吸引作用を十分に発揮させることができず、複数のEGRガス入口通路を設けたとしても、瞬時に大量の排気ガスを吸気に混合する要求が生じた場合には対応することができないという問題があった。」(段落【0002】ないし【0005】)

(イ)「【0006】
そこで、本発明者は、図2及び図3に示す如く、吸気管1の途中にベンチュリ部2を形成して該ベンチュリ部2の外周に環状チャンバ3を設け、該環状チャンバ3に対し排気側から排気ガス4の一部を抜き出して導くEGRパイプ5を接続し、前記ベンチュリ部2のスロート部に環状チャンバ3内部と吸気管1内部とを連通する環状スリット6を形成して成るEGRガス混合装置を創案するに至った(特願2004-320348号参照)。
【0007】
ここで、前記環状スリット6は、該環状スリット6により分割されたベンチュリ部2の上流側の縮径部7の終端と下流側の拡径部8の始端とによって、前記ベンチュリ部2の内径が最も小さくなる最小内径部位置Xよりも下流側(拡径部8側)に形成されるようになっており、しかも、環状スリット6を挟んで対峙する縮径部7及び拡径部8の夫々の端面が下流側(拡径部8側)に向けて縮径する傾斜面7a,8aを成すようになっている。
【0008】
このようにすれば、EGRパイプ5により環状チャンバ3に導かれた排気ガス4が、ベンチュリ部2に形成した環状スリット6を通して全周から吸気管1内部に流入し、しかも、前記ベンチュリ部2の拡径部8側に生じる負圧部により環状チャンバ3内の排気ガス4が良好に吸引されることになるので、大量の排気ガス4を吸気管1内の吸気9に対し良好に混合せしめることができる。
【0009】
即ち、図4に模式的に示すように、ベンチュリ部2においては、吸気9の流動によりベンチュリ部2の最小内径部位置Xよりも下流側(拡径部8側)に負圧部Aが生じるので、前記最小内径部位置Xよりも下流側(拡径部8側)に環状スリット6を形成すると共に、ベンチュリ部2の縮径部7及び拡径部8の夫々の端面を下流側(拡径部8側)に向けて縮径する傾斜面7a,8aとして形成すれば、前記負圧部Aが環状スリット6の内部に入り込み易くなって排気ガス4の吸引作用が高まり、該排気ガス4の混合性が効果的に向上されることになる。」(段落【0006】ないし【0009】)

(2)ここで、上記(1)の(ア)及び(イ)並びに図面の記載からみて、次のことが分かる。

(ウ)上記(1)の(ア)及び(イ)並びに図2及び3の記載からみて、EGRガス混合装置は、エンジンの排気管中の排気ガスの一部を、吸気管1に還流するEGRパイプ5を備え、前記EGRパイプ5を前記吸気管1と合流部で接続するように構成されてなることが分かる。
また、前記合流部には、円筒状に形成された吸気管1の端部を向かい合わせて配置することで形成される環状スリット6が備えられ、前記吸気管1の内部間を前記環状スリット6を介して接続し該環状スリット6を外部と遮断して覆う環状チャンバ3が形成され、前記EGRパイプ5は前記環状チャンバ3の内部に連通されてEGRガスを前記環状スリット6を通して前記吸気管1に流して給気と混合するように構成されていることが分かる。

(エ)上記(1)の(ア)、(イ)及び上記(ウ)並びに図2及び3の記載からみて、環状スリット6は、同一径の円筒状に形成された吸気管1の端面を、一定間隔を設けて対向させて形成され、EGRパイプ5から環状チャンバ3内に流れるEGRガスを、前記環状スリット6の壁方向に沿って形成される環状の通路を構成する環状チャンバ3内部を通して周方向から流入させるように構成されていることが分かる。
また、前記環状スリット6の両端部から吸気管1の一定長さの断面積は、該環状スリット6が最小で吸気管1の円筒状部になるに従い大きくなるように形成されて、該環状スリット6が最も絞られていることが分かる。
さらに、前記EGRパイプ5は、前記環状スリット6に向かうように接続されていることが分かる。

(オ)「吸気管の側面に単純にEGRパイプを接続するだけでは、吸気管内を流れる吸気に対して排気ガスを均一に混合することが難しく、更には、・・・(中略)・・・などの不都合があった。」((1)(ア)段落【0003】参照。)という記載、及び、「EGRパイプ5により環状チャンバ3に導かれた排気ガス4が、ベンチュリ部2に形成した環状スリット6を通して全周から吸気管1内部に流入し、しかも、前記ベンチュリ部2の拡径部8側に生じる負圧部により環状チャンバ3内の排気ガス4が良好に吸引されることになるので、大量の排気ガス4を吸気管1内の吸気9に対し良好に混合せしめることができる。」((1)(イ)段落【0008】参照。)という記載からみて、EGRガスは、環状スリット6の周方向の全周から吸気管1の内部に流入し、該流入したEGRガスと吸気管1内の給気とが吸気管1の側面に単純にEGRパイプ5を接続するだけの場合に比べれば、良好に混合せしめられるといえる。

(カ)上記(1)の(ア)、(イ)及び上記(ウ)ないし(オ)並びに図2及び3の記載からみて、給気とは異なる別の流体を給気通路の合流部へ導入して当該別の流体と給気とを均一に混合せしめるエンジンの給気装置であって、吸気管内に前記別の流体を流入させる開口部を外部と遮断して覆う環状チャンバを形成し、前記別の流体の通路を前記環状チャンバの内部の環状通路に連通して給気と混合するように構成される構造において、前記環状チャンバの内部の環状通路では、前記別の流体の流れは前記別の流体の通路の吐出開口の近傍で強く、逆に、前記別の流体の流れは前記吐出開口から離れる程弱くなるものといえる(参考として、例えば、実願昭62-105000号(実開昭64-11313号)のマイクロフィルムの特に、明細書第2ページ第11行ないし第3ページ第3行、第3ページ第10ないし13行及び第6ページ第19行ないし第7ページ第18行並びに第2及び3図参照。当該文献においては、流れの強さを均一にするために、環状チャンバの内部の環状通路に沿って、吸気管内に前記別の流体を流入させる開口部の断面積が、別の流体の通路の吐出開口の近傍に近い程小さく、逆に、前記吐出開口から離れる程大きくなるようにしており、このことから明らかである。)。
このようなことからみて、前記EGRガス混合装置も、環状チャンバ3の内部の給気とは別の流体であるEGRガスの流れは、環状スリット6の周方向の全周から吸気管1の内部に流入し、該流入したEGRガスと吸気管1内の給気とが吸気管1の側面に単純にEGRパイプ5を接続するだけの場合に比べれば、良好に混合せしめられるものといえる。

(3)上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「エンジンの排気管中の排気ガスの一部を、吸気管1に還流するEGRパイプ5を備え、前記EGRパイプ5を前記吸気管1と合流部で接続するように構成されてなるEGRガス混合装置において、
前記合流部に、円筒状に形成された吸気管1の端部を向かい合わせて配置することで形成される環状スリット6を備え、前記吸気管1の内部間を前記環状スリット6を介して接続し、該環状スリット6を外部と遮断して覆う環状チャンバ3を形成し、前記EGRパイプ5を前記環状チャンバ3の内部に連通し、EGRパイプ5を流れるEGRガスを前記環状スリット6を通して前記吸気管1に流し、給気と混合するように構成され、前記環状スリット6は、同一径の円筒状に形成された吸気管1の端面を、一定間隔を設けて対向させて形成され、前記EGRパイプ5から前記環状チャンバ3内に流れるEGRガスを、前記環状スリット6の壁方向に沿って形成される環状チャンバ3内部を通して周方向から流入させるように構成され、前記環状スリット6の両端部から前記吸気管1の一定長さの断面積を、該環状スリット6が最小で吸気管1の円筒状部になるに従い大きくなるように形成して、該環状スリット6が最も絞られ、前記環状スリット6に向かうように前記EGRパイプ5を接続し、
環状スリット6の周方向の全周から吸気管1の内部に流入し、該流入したEGRガスと吸気管1内の給気とが吸気管1の側面に単純にEGRパイプ5を接続するだけの場合に比べれば、良好に混合せしめられるEGRガス混合装置。」


3-2.対比
本件補正発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「排気管」は、その機能、形状、構造又は技術的意義からみて、本件補正発明における「排気ガス通路」に相当し、以下同様に、「吸気管1」は「給気通路」に、「EGRパイプ5」は「EGR通路」に、「EGRガス混合装置」は「EGR装置付きエンジンの給気装置」に、「環状スリット6」は「スリット部」に、「環状チャンバ3」は「外管部」に、「環状チャンバ3内部」は「環状の通路」に、それぞれ相当する。
さらに、引用文献1記載の発明における「環状スリット6の周方向の全周から吸気管1の内部に流入し」は、「スリット部の周方向の所定領域から給気通路の内部に流入し」という限りにおいて、本件補正発明における「スリット部のEGR通路の接続部近傍の一定長さの部分のみを覆うカバーを設け、該カバーによりEGRガスが流れる前記スリット部の周方向の一部を塞ぎ、スリット部の周方向の前記カバーを除く全周から給気通路の内部に流入し」に相当し、以下同様に、
「流入したEGRガスと吸気管1内の給気とが吸気管1の側面に単純にEGRパイプ5を接続するだけの場合に比べれば、良好に混合せしめられる」は、「流入したEGRガスと給気通路内の給気とが均一又は比較的均一に混合せしめられる」という限りにおいて、「流入したEGRガスと給気通路内の給気とが均一に混合せしめられる」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用文献1記載の発明は、次の一致点及び相違点を有するものである。なお、( )内に相当する本件補正発明の発明特定事項を示す。

<一致点>
「排気ガス通路中の排気ガスの一部を、給気通路に還流するEGR通路を備え、前記EGR通路を前記給気通路と合流部で接続するように構成されてなるEGR装置付きエンジンの給気装置において、
前記合流部に、円筒状に形成された給気通路の端部を向かい合わせて配置することで形成されるスリット部を備え、前記給気通路の内部間を前記スリット部を介して接続し、該スリット部を外部と遮断して覆う外管部を形成し、前記EGR通路を前記外管部の内部に連通し、EGR通路を流れるEGRガスを前記スリット部を通して前記給気通路に流し、給気と混合するように構成され、前記スリット部は、同一径の円筒状に形成された給気通路の端面を、一定間隔を設けて対向させて形成され、前記EGR通路から前記外管部内に流れるEGRガスを、前記スリット部の壁方向に沿って形成される環状の通路を通して周方向から流入させるように構成され、前記スリット部の両端部から前記給気通路の一定長さの断面積を、該スリット部が最小で給気通路の円筒状部になるに従い大きくなるように形成して、該スリット部が最も絞られ、前記スリット部に向かうように前記EGR通路を接続し、
スリット部の周方向の所定領域から給気通路の内部に流入し、該流入したEGRガスと給気通路内の給気とが均一又は比較的均一に混合せしめられるEGR装置付きエンジンの給気装置。」


<相違点>
カバー及び当該カバーによるEGRガスの流れに関し、
本件補正発明においては、「スリット部のEGR通路の接続部近傍の一定長さの部分のみを覆うカバーを設け、該カバーによりEGRガスが流れる前記スリット部の周方向の一部を塞ぎ、スリット部の周方向の前記カバーを除く全周から給気通路の内部に流入し、該流入したEGRガスと給気通路内の給気とが『均一に』混合せしめられる」のに対し、
引用文献1記載の発明においては、「環状スリット6(スリット部)の周方向の全周から吸気管1(給気通路)の内部に流入し、該流入したEGRガスと吸気管1(給気通路)内の給気とが『吸気管1(給気通路)の側面に単純にEGRパイプ5(EGR通路)を接続するだけの場合に比べれば、良好に』混合せしめられる」点(以下、「相違点」という。)。


3-3.判断
上記相違点について検討する。
(1)原査定の拒絶の理由において引用された、特開2006-200475号公報(以下、「引用文献2」という。)には、
「EGR装置付きエンジンの給気装置において、EGRガスと給気通路内の給気との均一な混合をするように、吸気通路内のEGR通路の接続部近傍の一定長さの部分のみを覆う部材を設け、該部材によりEGRガスが流れる前記吸気通路内の所定箇所の一部を塞ぎ、吸気通路内の所定箇所の前記部材を除く領域から給気通路の内部に流入し、該流入したEGRガスと給気通路内の給気とを均一に混合せしめる技術。」(以下、「引用文献2記載の技術」という。)
が記載されているものと認められ(特に、段落【0010】及び【0012】並びに図2及び3参照。)、当該技術は、従来周知の技術(以下、「周知技術」という。引用文献2の他にも、例えば、特開2001-304044号公報の特に、段落【0019】並びに図1及び2参照。)でもある。

(2)ここで、本件補正発明、引用文献1記載の発明及び周知技術とは、「EGR装置付きエンジンの給気装置」という技術分野において共通しており、EGRガスと給気通路内の給気との均一又は比較的均一な混合をしようとする点で軌を一にするものである。

(3)また、EGR装置付きエンジンの給気装置において、流入したEGRガスと給気通路内の給気とを、さらに一層均一に混合せしめようとすることは、ごく自然に要求される普遍的な課題といえる。

(4)そうすると、引用文献1記載の発明において、上記普遍的な課題に鑑み、上記周知技術を採用し、その際、EGR通路の接続部近傍の一定長さの部分のみを覆う部材を環状スリット6(本件補正発明の「スリット部」に相当。)の同様の効果を達成する箇所に設けて、上記相違点に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

また、本件補正発明は、全体として検討してみても、引用文献1記載の発明及び周知技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。


3-4.まとめ
したがって、本件補正発明は、引用文献1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。


【3】本件発明について
1.本件発明の内容
平成24年8月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明は、平成23年12月19日付けの手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められ、その請求項1に係る発明(以下、単に「本件発明」という。)は、前記【2】の[理 由]の1.(b)に示した請求項1に記載されたとおりのものである。


2.引用文献記載の発明及び技術
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項及び引用文献1記載の発明並びに引用文献2の記載事項及び引用文献2記載の技術である周知技術は、前記【2】の[理 由]3.の3-1.(1)ないし(3)及び3-3.(1)に記載したとおりである。


3.対比・判断
本件発明は、実質的に、前記【2】で検討した本件補正発明における発明特定事項を全て含むものである。
そうすると、本件発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、前記【2】の[理 由]3.の3-1.ないし3-4.に記載したとおり、引用文献1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、同様の理由により、引用文献1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明は、全体として検討してみても、引用文献1記載の発明及び周知技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものではない。


4.むすび
以上のとおり、本件発明は、引用文献1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-07 
結審通知日 2013-05-14 
審決日 2013-05-28 
出願番号 特願2008-228869(P2008-228869)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02M)
P 1 8・ 575- Z (F02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 しのぶ  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 加藤 友也
柳田 利夫
発明の名称 EGR装置付きエンジンの給気装置  
代理人 特許業務法人 高橋松本&パートナーズ  

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