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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1276642
審判番号 不服2012-24023  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-04 
確定日 2013-07-11 
事件の表示 特願2008-526932「Si含有膜を成膜する連続的成膜処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 2月22日国際公開、WO2007/021385、平成21年 2月 5日国内公表、特表2009-505419〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、2006年7月3日(パリ条約による優先権主張 2005年8月18日)を国際出願日とする出願であって、平成24年4月17日付けで拒絶理由通知がなされ、同年6月22日付けで意見書および手続補正書が提出され、同年8月28日付けで拒絶査定がなされ、同年12月4日付けで拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、平成25年2月4日付けで当審による審尋がなされ、同年4月5日付けで回答書が提出されたものである。

[2]平成24年12月4日付け手続補正についての補正却下の決定
<結論>
平成24年12月4日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
<理由>
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、下記の通りとする補正を含むものである。
(補正前)
「【請求項1】
処理チャンバ内に基板を供する基板提供工程;
前記基板を塩素化されたシランガスに曝露することによって塩素化されたSi膜を成膜する成膜工程;及び
前記塩素化されたSi膜をドライエッチングして、前記塩素化されたSi膜から塩素を解放することで、前記Si膜の塩素含有量を減少させるドライエッチング工程;
を有する、基板処理方法。」

(補正後)
「【請求項1】
処理チャンバ内に基板を供する基板提供工程;
前記基板を塩素化されたシランガスに曝露することによって塩素化されたSi膜を成膜する成膜工程であって、前記塩素化されたシランガスが、SiCl_(4)、SiHCl_(3)、SiH_(2)Cl_(2)、若しくはSi_(2)Cl_(6)又はこれら2以上を混合したものを有する、工程;
及び
前記塩素化されたSi膜をドライエッチングして、前記塩素化されたSi膜から塩素を解放することで、前記Si膜の塩素含有量を減少させるドライエッチング工程;
を有する、基板処理方法。」(下線部が、補正箇所である。)

(2)補正の目的
上記補正は、補正前の請求項1に、請求項5に記載された事項を追加したもの、すなわち、「塩素化されたシランガス」について、特定のガスに限定するとともに、請求項5を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮および請求項の削除を目的とするものに該当する。

(3)独立特許要件
上記補正後の本願請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。) が、特許出願の際独立して特許を受けられるものかどうかを検討する。
(3-1)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本出願の優先日前に日本国内において頒布された特開平6-196422号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。
(a)「【請求項1】真空排気手段を備えた成長槽と、該成長槽にSiCl_(2)を導入するジクロルシラン分解セルと、前記成長槽に還元性気体を導入する還元性気体導入セルとを備え、前記ジクロルシラン分解セルは、ジクロルシランをセル内に導入するジクロルシラン導入管と、該導入管に接続し、ジクロルシランを熱分解する熱分解管とを備えてなることを特徴とする半導体結晶成長装置。
……
【請求項3】請求項1に記載した半導体結晶成長装置を用いたSi単結晶の超高真空中エピタキシャル成長法(UHV-CVD)であって、成長槽内の基板上にSiCl_(2)と還元性気体を交互に供給することを特徴とするSi単結晶成長方法。」(第2頁第1欄第2-18行)

(b)「【従来の技術】メモリーに代表されるSiデバイスでは、高速化および高集積化のため、個々のデバイスの微細化が要求される。……
これらの要求を実現する手段として超高真空中の気相成長法(UHV-CVD)が開発された(B.S.Meyerson, E.Ganin, D.A.Smith and T.N.Nguyen, ジャーナル・オブ・エレクトロケミカル・ソサエティ,第133巻,1232ページ,1986年)。UHV-CVDはシラン(SiH_(4))、ジシラン(Si_(2)H_(6))を原料ガスとし、超高真空下で成長を行うものであり、600℃程度の低温成長、および選択成長が可能であるなどの特徴を有する。……
……
【0003】
【発明が解決しようとする課題】シランおよびジシランは基板表面で解離し、Si原子となって成長に寄与する。しかしこれらのガスは表面での付着係数が小さく、解離効率が悪いという問題点があった。このため供給した原料ガスの一部しか成長に寄与せず、原料利用効率が極めて低い。付着係数を増すためにあらかじめ原料ガスを分解させて基板上に供給することが考えられるが、分解により生じるSi原子の蒸気圧が低いため基板上に供給することが困難であった。さらに選択成長が実現される成長条件が狭いなどの問題点もあった。本発明は、以上述べたような従来の事情に対処してなされたもので、Si単結晶のUHV-CVD成長において、実用的な成長速度と原子層レベルの膜厚制御性を実現する半導体結晶成長装置および成長法を提供することを目的とする。」(第2頁第1欄第24行-第2欄第8行)

(c)「【作用】SiCl_(2)分子は極性が強く、解離することなく表面ダングリングボンドに吸着する。このためシランやジシランに比べ付着係数が高い。Cl原子は原子状水素などの還元性気体により表面から脱離する。Clは原子状水素によりHClとして容易に脱離することが報告されており(C.C.Cheng, S.R.Lucas, H.Gutlebe,W.J.Choyke and J.T.Yates.Jr, ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ,第114巻,1249ページ,1992年)、結果としてシランやジシランを原料としたUHV-CVDと比較して高成長速度が実現される。さらに、SiCl_(2)はジクロルシラン(SiH_(2)Cl_(2))のクラッキングにより効率よく生成されるため、従来のUHV-CVD成長装置との整合性にも優れている。還元性の気体がない場合、Clは700℃まで安定にSi表面に吸着する。Cl終端された表面に対してはSiCl_(2)は吸着しないため、表面でのSiCl_(2)吸着量はCl被覆率が1分子層に達した時点で飽和する。したがって、SiCl_(2)と還元性気体を交互に供給することにより、供給サイクルあたりの成長速度はSiCl_(2)供給量によらず飽和する。これにより、原子層レベルで成長を制御することが可能となる。
【0007】
【実施例】以下、本発明の実施例について詳細に説明する。図2は本発明によるジクロルシラン分解セルの構成図である。ジクロルシランは導入管10により分解セルに導入され、タンタル製ヒーター11により加熱された熱分解管12の中でSiCl_(2)とH_(2)に分解する。熱分解管12はpBNまたは石英製であり、分解効率を上げるためフィン13が設けられている。図1は本発明による半導体結晶成長装置の構成図である。SiCl_(2)ガスはジクロルシラン分解セル20により供給される。ジクロルシランの流量は1?10sccmとした。還元性ガスとしてはAsH_(3)または原子状水素を用いた。これらのガスは還元ガス供給セル21より成長槽22内に導入される。」
(第2頁第2欄第27行-第3頁第3欄第11行)

(d)「【0009】図4はSiCl_(2)と水素を交互に基板上に供給したときの、ジクロルシラン供給時間と成長速度との関係を示す図である。基板温度は600℃、ジクロルシラン分解セル温度は800℃、分解セルに供給するジクロルシラン流量および水素ガス流量はそれぞれ5sccm、10sccmとした。この図よりジクロルシラン供給時間が4秒以上では、成長速度は1サイクルあたり0.5原子層で飽和することがわかる。この現象は次のように理解される。即ち、SiCl_(2)はSi表面でSiClとClに解離吸着することが知られており、解離したClは基板のSiとSi-Cl結合を形成する。これらのSi-Cl結合は極めて安定であり、またCl終端された表面にはSiCl_(2)は吸着しない。したがってSi表面にSiCl_(2)を供給した場合、0.5原子層分のSiCl_(2)吸着により表面は全てClで被覆される。この後還元性ガスが供給されると、表面のClが脱離し、結果としてSiCl_(2)流量によらず0.5原子層分のSiが堆積する。この現象を利用すれば、原料供給量によらず原子層レベルでSiの膜厚を制御することが可能となり、大面積基板に対し高均一成長が実現される。」(第3頁第3欄
第41行-第4欄第15行)

(3-2)引用刊行物記載の発明
成長槽内において、基板上にSi単結晶を成長させる際、成長槽内に基板を供する工程があることは明らかである。
よって、上記記載事項によれば、引用刊行物には、
「真空排気手段を備えた成長槽内に基板を供する基板供給工程;
前記基板をSiCl_(2)ガスに曝露することによって、SiCl_(2)の層を吸着させる工程;
及び
前記SiCl_(2)の層表面に原子状水素などの還元性ガスを供給し、前記SiCl_(2)の層からCl原子を脱離させて、前記SiCl_(2)の層からCl含有量を減少させる工程;
を有するSi単結晶成長方法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

(3-3)対比・判断
本願補正発明と引用発明を対比すると、引用発明における「真空排気手段を備えた成長槽」、「SiCl_(2)の層」、「吸着させる工程」、「Cl原子を脱離させる」、「Si単結晶成長方法」は、本願補正発明の「処理チャンバ」、「塩素化されたSi膜」、「成膜する成膜工程」、「塩素を解放する」、「基板処理方法」に相当する。

よって、両者は、
「処理チャンバ内に基板を供する基板提供工程;
前記基板に塩素化されたSi膜を成膜する成膜工程;
及び
前記塩素化されたSi膜から塩素を解放することで、前記Si膜の塩素含有量を減少させる工程;
を有する、基板処理方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
塩素化されたSi膜が、本願補正発明では、「塩素化されたシランガスに曝露することによって」「成膜」され、「前記塩素化されたシランガスが、SiCl_(4)、SiHCl_(3)、SiH_(2)Cl_(2)、若しくはSi_(2)Cl_(6)又はこれら2以上を混合したものを有する」のに対して、 引用発明では、「ジクロルシラン(SiH_(2)Cl_(2))を分解して生成したSiCl_(2)に曝露することにより」、形成される点。

(相違点2)
塩素化されたSi膜から塩素を解放することで、前記Si膜の塩素含有量を減少させる工程が、本願補正発明では、「塩素化されたSi膜をドライエッチング」して行われるのに対して、引用発明では、「SiCl_(2)の層表面に原子状水素などの還元性ガスを供給し」て行われる点。

上記各相違点について検討する。
・(相違点1)について
引用発明は、熱分解セルにおいて予め「ジクロルシラン(SiH_(2)Cl_(2))を分解して生成したSiCl_(2)ガス」を基板表面に曝露するものであるが、ジクロルシラン(SiH_(2)Cl_(2))のような塩素化されたシランガスを基板表面に供給し吸着させた後、基板温度を高めてこれを分解させる手法も、本願優先日前周知のものであるから(例えば、下記周知例参照)、引用発明において、該手法を適用し、該相違点1に係る構成とすることは当業者が所望に応じ適宜なしえたことである。

周知例:特開平2-102520号公報
「〔実施例〕
以下、本発明の一実施例をシリコン(Si)のエピタキシャル成長を例として、第1図により説明する。……次にH_(2)ガス中に化合物ガスとして例えばジクロルシラン(SiH_(2)Cl_(2))などのソースガスを約0.1mol%の濃度で1分間供給する。……
……表面には(b)に示すように単分子(monolayer)のソースガス吸着層4が形成される。次いで、ウエハ1の加熱温度を約800℃に高めて約15分間保持する。この昇温及び保持の工程で吸着層4のソースガスの分解が速進され、……。」(第2頁右下欄第3行-第3頁左上欄第3行)

・(相違点2)について
「ドライエッチング工程」につき、本願明細書(【0029】)には、「工程210では、ドライエッチング処理が実行されることで、塩素化されたSi膜430の塩素含有量が減少する。ドライエッチング処理は、塩素化されたSi膜430から塩素を脱離させることで、Si膜430の塩素含有量を有効に減少させる。ドライエッチング処理は、F_(2)、Cl_(2)、H_(2)、HCl、若しくはH、又はこれら2以上を混合させたものを有するエッチングガスに曝露することによって実行されて良い。」と記載されており、これによれば、本願補正発明における「ドライエッチング工程」とは、塩素化されたSi膜を、H_(2)、H等を有するガスに曝すことにより行われるものと解され、引用発明における「SiCl_(2)の層表面に原子状水素などの還元性ガスを供給」するものと相違せず、この点は実質的な相違点とはいえない。

そして、本願補正発明が、引用刊行物の記載および周知技術からは予想しえない格別の効果を奏するものとも認められない。
よって、本願補正発明は、引用刊行物に記載された発明および周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-4)まとめ
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[3]本願発明
上記[2]のとおり、平成24年12月4日付け手続補正は却下されたので、本願請求項1に係る発明は、平成24年6月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである(上記[2](1))。

[4]引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本出願の優先日前に日本国内において頒布された特開平6-196422号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、上記[2](3)(3-1)のとおりの事項、および[2](3)(3-2)のとおりの発明(「引用発明」)が記載されている。

[5]対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、
「処理チャンバ内に基板を供する基板提供工程;
前記基板に塩素化されたSi膜を成膜する成膜工程;及び
前記塩素化されたSi膜から塩素を解放することで、前記Si膜の塩素含有量を減少させる工程;
を有する、基板処理方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点3)
塩素化されたSi膜が、本願発明では、「塩素化されたシランガスに曝露することによって」「成膜」されるのに対して、 引用発明では、「ジクロルシラン(SiH_(2)Cl_(2))を分解して生成したSiCl_(2)ガスに曝露することにより」、形成される点。

(相違点4)
塩素化されたSi膜から塩素を解放することで、前記Si膜の塩素含有量を減少させる工程が、本願発明では、「塩素化されたSi膜をドライエッチング」して行われるのに対して、引用発明では、「SiCl_(2)の層表面に原子状水素などの還元性ガスを供給し」て行われる点(上記[2](3)(3-3)における、本願補正発明と引用発明との相違点2に相当)。

そこで、上記相違点について検討する。
・(相違点3)について
上記[2](3)(3-3)で述べたとおり、ジクロルシラン(SiH_(2)Cl_(2))のような塩素化されたシランガスを基板表面に供給し吸着させた後、基板温度を高めてこれを分解させる手法も、本願優先日前周知のものであるから、引用発明において該手法を適用し、相違点3に係る構成とすることは当業者が所望に応じ適宜なしえたことである。

・(相違点4)について
この点については、上記[2](3)(3-3)で述べたとおり、実質的な相違点とはいえないものである。

そして、本願発明が、引用刊行物の記載および周知技術からは予想しえない格別の効果を奏するものとも認められない。
よって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明および周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

[6]むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-07 
結審通知日 2013-05-14 
審決日 2013-05-27 
出願番号 特願2008-526932(P2008-526932)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 113- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 淳一  
特許庁審判長 鈴木 正紀
特許庁審判官 井上 茂夫
川端 修
発明の名称 Si含有膜を成膜する連続的成膜処理方法  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  

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