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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B22D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B22D
管理番号 1276767
審判番号 不服2012-6652  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-12 
確定日 2013-07-10 
事件の表示 特願2007-545099「薄鋳造ストリップの連続鋳造における熱流束局所制御方法及び局所熱流制御を備えた薄鋳造ストリップ連続鋳造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月22日国際公開、WO2006/064476、平成20年 7月 3日国内公表、特表2008-522830〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2005年12月13日(パリ条約による優先権主張 2004年12月13日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年5月31日付けで拒絶理由通知がされ、これに対して同年8月27日付けで意見書及び手続補正書が提出され、さらに平成23年4月5日付けで最後の拒絶理由通知がされ、これに対して同年7月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年7月8日付けの手続補正書による手続補正が同年12月7日付けの補正の却下の決定により却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成24年4月12日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けの手続補正書が提出されたものである。

2.平成24年4月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年4月12日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成24年4月12日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項9は、
「【請求項9】
横方向に離間して間に薄鋳造ストリップを下方に放出できるロール間隙を形成する周方向鋳造面を有し、ロール間隙付近の周方向鋳造面上に溶融金属の鋳造溜めを支持して鋳造域を形成できる相互方向に回転する1対の水平な鋳造ロールと、
各鋳造ロール鋳造面から酸化物を除去でき、鋳造面から斯かる酸化物を鋳造域から離れた域へと除去するよう配置した回転ブラシとからなり、
鋳造ロール鋳造面に沿ってガスノズルを配置し、各鋳造ロール鋳造面の回転ブラシと鋳造領域入口との間の鋳造面の所定周方向位置にガスを向けて、回転ブラシとの係合から離れると、回転ブラシとの係合により清浄された状況の鋳造面を覆うガス層を鋳造面に形成し、該鋳造面が鋳造域に入るようにし、それにより鋳造領域における溶融金属と鋳造ロール面との間の熱流速局所制御を行い得るよう構成したことを特徴とする、局所熱流束制御を備えた薄鋳造ストリップ連続鋳造装置。」と補正された。
(上記下線は、当該請求項に対応する平成22年8月27日付けの手続補正書の請求項13の記載に対する補正箇所を示すものとして当審において付したものである。)

上記特許請求の範囲についての補正は、補正前の請求項13に記載された、「鋳造ロール」及び「ガスノズル」に関し、上記下線部記載のように限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項9に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)刊行物
(ア)原査定の平成23年4月5日付け最後の拒絶理由通知書における拒絶の理由2(以下「最後の拒絶理由2」という。)に引用文献1として示された、特開平11-277187号公報(以下「刊行物1」という。)には、「金属ストリップ鋳造方法及び装置並びに双ロール鋳造装置」と題して、図面とともに次の技術事項が記載されている。
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、単一ロール鋳造装置及び双ロール鋳造装置の鋳造ロールの清掃に適用される、金属ストリップ鋳造方法及び装置並びに双ロール鋳造装置に関するものである。」
・「【0003】金属酸化物やスラグ等の異物が鋳造ロール表面上に堆積するのを防ぐため、鋳造ロールと溶融金属との接触域から離れた位置で、鋳造ロール表面を清掃する清掃装置が全般に用いられる。双ロール鋳造装置では、ブラシや清掃ベルト等の清掃装置をロール長手方向外側部に当て、ロール間隙手前のロールが溶融金属と接触する位置へと至る前にロール表面を連続的に清掃することができる。・・・」
・「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、斯かる清掃を行っても、鋳放しストリップにおいて、チャターマーク、時折の横方向表面割れ、眉型欠陥等、或る種の表面欠陥は依然として残る。現在、このような欠陥の大きな原因は、ダスト、特にロール清掃ブラシにより生ずるダストであり得ると推測されている。この種のダストはブラッシングした鋳造表面や、その直上に配した構成部品を含む鋳造装置の種々の構成部品上に堆積しやすい。ダストがこれらの構成部品上に堆積するにつれて、堆積したダストが作業の振動によりロール表面へと落下し得ることが判明している。溜めシールヘッダ等の構成部品がロール表面に落下するダストの大きな源であると推測される。特に、ダストはヘッダの長手方向端の下部に堆積して貼り付きやすいことが判明している。堆積したダストはヘッダ端から鋳造表面へと落下し、溶融金属と鋳造表面との界面へ掃き出されて、ストリップ欠陥となりがちである。」
・「【0021】ロール回転方向に関して異物除去装置の上流側に更にロール清掃装置を設けるのが好ましい。」
・「【0032】本発明は、鋼ストリップを連続鋳造する双ロール鋳造装置において鋳造ロールを有効に清掃する必要から生まれた。そのような鋳造装置において鋳造ロールは通常クロムメッキされた鋳造表面を有し、その鋳造表面は鋳造するストリップの組成に基づいて滑らかにすることができ、より普通には、テクスチャーを付すことができる。鋳造プロセス時の溶融金属成分の酸化でロール鋳造表面は金属酸化物等の固体成分により被覆されることとなる。典型的に、被覆は、大割合のAl_(2)O_(3)、MnO、SiO_(2)、FeO等の種々の酸化物と少量のMnS及びFeSからなることができる。この被覆を除去しなければ、被覆が溶融金属と鋳造表面との界面での熱流束に劇的に影響し、熱流束の局在ピークをもたらして、鋳造欠陥となり得る。熱流束の制御を維持するには有効な連続清掃が必要であり、清掃した鋳造表面にダストが堆積するのを防いで鋳造欠陥を避けるのが必要であり/望ましいことが判明している。」
・「【0041】図4は本発明の別の実施の形態を示し、清掃ブラシは図示していない。この実施の形態では、シュラウド19がロール11側部に当てられて異物除去チャンバ21を形成し、その中で異物除去用のブラストガスがブラストノズル13からロール11の表面14に吹きつけられることにより、異物がロール11の表面14から擦り取られて、ダストが異物除去チャンバ21内のブラストガスカーテンに同伴される。」
・「【0044】図5乃至図7は、ロール間隙32を形成する一対の鋳造ロール31からなり、ロール間隙32の上方に溶融金属の鋳造溜め33が支持され、それから凝固ストリップ34が鋳造される、双ロール鋳造装置の、異物除去装置を示す。鋳造溜め33は供給ノズル35から供給される溶融金属で構成され、側部堰又は側部プレート36で形成される。」
・「【0045】ロール31各々は、図3に示した種類の異物除去装置を備えている。この場合、カーテンブラストが、ロール31に沿って掃き出す連続カーテンブラストを提供する形状をした内部ノズル通路38(図6及び図7参照)を備えロール31に沿って離間配置した一連のブラストノズル37で生み出される。ブラストノズル37には個々のブラストガス供給ダクト39を介してブラストガスが供給される。ブラストノズル37は、ブラストガス内に異物を同伴してロール31表面に亘った掃き出しをするガスのブラストを提供する。」

ここで、刊行物1の特に【図5】【図6】の双ロール鋳造装置に関し、次のことが明らかである。
・鋳造ロール31は、段落【0044】に「ロール間隙32を形成する一対の鋳造ロール31からなり、ロール間隙32の上方に溶融金属の鋳造溜め33が支持され、それから凝固ストリップ34が鋳造される」とあることなどから、1対の水平な鋳造ロールであって、横方向に離間して間に凝固ストリップを下方に放出できるロール間隙を形成する周方向鋳造面を有しており、ロール間隙付近の周方向鋳造面上に溶融金属の鋳造溜めを支持して鋳造域を形成できる相互方向に回転するものと言える。
・【図4】のものは、刊行物における本発明の好適な実施の形態とされ、そこに図示はないが、段落【0041】の記載から、【図2】【図3】のような清掃ブラシが存在していると言える。そして、その位置は、段落【0021】などを参酌すれば、ロール回転方向に関して異物除去装置の上流側である。そこで、【図5】【図6】の装置であるが、これも【図4】と同じ好適な実施の形態であるから、この装置にも清掃ブラシが備えられていてもよいものと理解することができて、その位置は、異物除去装置の上流側と言える。
・そうした清掃ブラシとは、段落【0003】にある清掃装置のことであるから、金属酸化物やスラグ等の異物が鋳造ロール鋳造面上に堆積するのを防ぐためにその鋳造面を清掃するものであり、鋳造ロール鋳造面から酸化物を除去するものと言える。
・ブラストノズル37は、シュラウド42とともに鋳造ロール鋳造面に沿って配置され、各鋳造ロール鋳造面の清掃ブラシと鋳造領域入口との間の鋳造面の所定周方向位置にガスを向けており、鋳造面に沿って掃き出す連続カーテンブラストを提供する。
・双ロール鋳造装置は、段落【0032】に「熱流束の制御を維持するには有効な連続清掃が必要であり、清掃した鋳造表面にダストが堆積するのを防いで鋳造欠陥を避けるのが必要であり/望ましいこと」と記載されているように、熱流束制御を行うものである。

以上をふまえると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が実質的に記載されているものと認められる。
「横方向に離間して間に凝固ストリップを下方に放出できるロール間隙を形成する周方向鋳造面を有し、ロール間隙付近の周方向鋳造面上に溶融金属の鋳造溜めを支持して鋳造域を形成できる相互方向に回転する1対の水平な鋳造ロールと、各鋳造ロール鋳造面から酸化物を除去できる清掃ブラシとからなり、鋳造ロール鋳造面に沿ってブラストノズルとシュラウドを配置し、各鋳造ロール鋳造面の清掃ブラシと鋳造領域入口との間の鋳造面の所定周方向位置にガスを向けて、鋳造面に沿って掃き出す連続カーテンブラストを提供するよう構成した、熱流束制御を備えた凝固ストリップ双ロール鋳造装置。」

(イ)同じく、最後の拒絶理由2に引用文献4として示された、特開平11-207445号公報(以下「刊行物2」という。)には、刊行物1と同じく双ロール鋳造装置に関して、図面とともに次の技術事項が記載されている。
・「【0004】
【発明が解決しようとする課題】双ロール鋳造装置で鋼ストリップの鋳造を多く経験した結果、鋳造ロール清掃を有効に行うことが良好な品質のストリップを得るのに絶対的に重要であること、及び、鋳造ロール上での酸化物形成は厳格な限度内に保たねばならないことが判明した。鋳造ロール表面での金属凝固時に均一熱流束に確実制御するには、酸化堆積物が薄いのが有利となり得る。鋳造ロール表面が溶融金属鋳造溜めに入るにつれて酸化堆積物が溶解し、鋳造表面と鋳造溜めの溶融金属との間に薄い液体界面層を確立して良好な熱流束を促進する助けとなる。しかしながら、あまり多くの酸化物が堆積すると、酸化物の溶解により非常に高い初期熱流束が生み出されるが、酸化物は再凝固して熱流束が急速に減少する。高い初期熱流束と急速な減少とが組合わさった結果、凝固する溶融金属に応力が生じてストリップに局部歪みが発生し、ストリップは「鰐皮」(crocodile skin)として公知の表面欠陥を呈する。」
・「【0008】鋳造ロール表面と溶融金属との間の界面での熱伝達状態は、鋳造ロールに沿った酸化物状態を制御することにより変えることができる。
【0009】その替わりに、又はそれに加えて、そのような状態は鋳造表面に可変テクスチャーを提供することにより変えることができる。
【0010】鋳造ロール表面端部にガス等の物質を当てることにより、相応する熱伝達状態を変えることもできる。」
・「【0016】それに替えて、又はそれに加えて、テクスチャーを有する鋳造ロール端部での熱伝達状態を当該部分にヘリウムガス噴流を当てることにより変化させ、前記ガスがテクスチャーに載って熱流束を高めるようにすることができる。」
・「【0034】図2に示した鋳造ロール清掃装置は、清掃すべき鋳造ロール12の長手方向に延び、周方向に離間した一対の円筒胴のブラシ31,32で構成されて、ブラシ31,32が重なるので、鋳造ロール12の中央部33がブラシ31,32の両方で清掃されるのに対し、鋳造ロール12の端部34が各々ブラシ31,32の一方のみで清掃される。ブラシ31,32は各軸35,36に取付けて適宜の回転手段(図示せず)で回転させることができる。」
・「【0036】図4は、更なる構成の代替例を示し、単一胴ブラシ42が鋳造ロール12のほぼ全幅に亘って延び、及んでいない2つの鋳造ロール端43は一対の端胴ブラシ44によりブラッシングされる。端胴ブラシ44のブラシ作用は、矢印45に示すようにブラシを当てる角度を調節することにより、及び/又は当てる圧力を変えることにより、変更して、2つの鋳造ロール端43での酸化物層厚を制御できる。そのような調節は、例えばX線スキャンによるストリッププロフィール測定結果に応じて鋳造時に連続的に行うことができ、所望ストリッププロフィールを維持するよう端胴ブラシ44のフィードバック制御を提供できる。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、次のことが明らかである。
・引用発明の「凝固ストリップ」「双ロール鋳造装置」が、本願補正発明の「薄鋳造ストリップ」「連続鋳造装置」に相当する。また、引用発明の「ブラストノズル」は、ガスを噴出するノズルであるから、本願補正発明の「ガスノズル」に相当すると言える。
・本願補正発明の「回転ブラシ」と、引用発明の「清掃ブラシ」とは、ともに「ブラシ」との概念で共通する。

そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「横方向に離間して間に薄鋳造ストリップを下方に放出できるロール間隙を形成する周方向鋳造面を有し、ロール間隙付近の周方向鋳造面上に溶融金属の鋳造溜めを支持して鋳造域を形成できる相互方向に回転する1対の水平な鋳造ロールと、
各鋳造ロール鋳造面から酸化物を除去できるブラシとからなり、
鋳造ロール鋳造面に沿ってガスノズルを配置し、各鋳造ロール鋳造面の回転ブラシと鋳造領域入口との間の鋳造面の所定周方向位置にガスを向けるように構成した、熱流束制御を備えた薄鋳造ストリップ連続鋳造装置。」

〈相違点〉
(ア)本願補正発明のブラシが「各鋳造ロール鋳造面から酸化物を除去でき、鋳造面から斯かる酸化物を鋳造域から離れた域へと除去するよう配置した回転ブラシ」であるのに対して、引用発明は「各鋳造ロール鋳造面から酸化物を除去できる清掃ブラシ」である点。
(イ)本願補正発明が、そのガスノズルを「回転ブラシとの係合から離れると、回転ブラシとの係合により清浄された状況の鋳造面を覆うガス層を鋳造面に形成し、該鋳造面が鋳造域に入るようにし、それにより鋳造領域における溶融金属と鋳造ロール面との間の熱流速局所制御を行い得るよう構成」し、「局所熱流束制御を備えた」装置としているのに対して、引用発明では、ブラストノズルであって「鋳造面に沿って掃き出す連続カーテンブラストを提供するよう構成」し、「熱流束制御を備えた」装置としている点。

(4)相違点についての判断
相違点(ア)について
刊行物2の段落【0034】【0036】等を参照すれば、【図4】のような鋳造装置には、単一胴ブラシ42、一対の端胴ブラシ44が存在し、これらが回転ブラシを構成していることは明らかである。そして、これらブラシは各鋳造ロール鋳造面から酸化物を除去するものである。
引用発明の清掃ブラシも酸化物除去を行うものであるから、このブラシに替えて刊行物2記載のもののような回転ブラシを採用することは当業者にとって容易であって、しかも、この場合、除去した酸化物の鋳造ロール鋳造面への再付着が好ましくないことは明らかであるから、これらブラシにより鋳造面から除去した酸化物を鋳造域から離れた域へと除去できるよう配置することは、当業者が設計上適宜採用する程度の事項である。
なお、刊行物2の段落【0036】には、端胴ブラシ44について、その鋳造ロールに当てる角度、圧力を変化させることにより酸化物層厚を制御できるとされている。そして、段落【0004】などによれば、均一熱流束に確実に制御するには酸化堆積物が薄い方が有利となり得るとしている。これによれば、ブラシの鋳造ロールへの圧力などを変化させることにより、熱流束の制御が行えるということが理解できるのであって、引用発明において、このような熱流束の制御を行うことも格別のことではない。

相違点(イ)について
引用発明のブラストノズルはガスを扱うガスノズルである。また、このブラストノズルにはシュラウドが備えられているが、このシュラウドにより、その内部において鋳造ロール鋳造面がガスで覆われ、異物の鋳造面への堆積が防止される。このことから、引用発明のものも、清掃ブラシとの係合から離れ、清掃ブラシにより異物が除去されて清浄にされた鋳造ロール鋳造面をガス層が覆っていると言え、その鋳造面が鋳造域に入ることとなる。
ところで、刊行物2の段落【0016】などには、テクスチャーを有する鋳造ロール端部にガス噴流を当てることにより熱流束を高めることができる旨の記載がある。
そうすると、引用発明での熱流束制御に関し、刊行物2記載のものを勘案して、ガス噴流の当て方を変化させ、鋳造領域における溶融金属と鋳造ロール面との間の局所的な部分の熱流束制御を行えるようにし、本願補正発明の相違点(イ)に係る発明特定事項とすることは、当業者にとって想到容易と言える。

そして、本願補正発明の発明特定事項により得られる効果も、引用発明及び刊行物2記載のものから当業者であれば予測できた範囲のものであって、格別のものとは言えない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び刊行物2記載のものに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成24年4月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成22年8月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるところ、請求項13には次のとおり記載されている。
「【請求項13】
横方向に離間して間に薄鋳造ストリップを下方に放出できるロール間隙を形成する周方向鋳造面を有し、ロール間隙付近の周方向鋳造面上に溶融金属の鋳造溜めを支持して鋳造域を形成できる相互方向に回転する1対の鋳造ロールと、
各鋳造ロール鋳造面から酸化物を除去でき、鋳造面から斯かる酸化物を鋳造域から離れた域へと除去するよう配置した回転ブラシと、
鋳造ロール鋳造面に沿って配置し、各鋳造ロール鋳造面の、回転ブラシ・鋳造域入口間の回転ブラシ付近にガスを向かわせて酸化物が除去された鋳造ロール鋳造面にガス層を形成することができるガスノズル
とで構成される、局所熱流束制御を備えた薄鋳造ストリップ連続鋳造装置。」(以下、この請求項13に係る発明を「本願発明」という。)

(2)刊行物
刊行物1,2及びその記載事項並びに刊行物1に記載される引用発明は、前記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から前記の限定事項を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)において検討したとおり、引用発明及び刊行物2記載のものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものということができる。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-12 
結審通知日 2013-02-14 
審決日 2013-02-26 
出願番号 特願2007-545099(P2007-545099)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B22D)
P 1 8・ 121- Z (B22D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川崎 良平  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 加藤 友也
井上 茂夫
発明の名称 薄鋳造ストリップの連続鋳造における熱流束局所制御方法及び局所熱流制御を備えた薄鋳造ストリップ連続鋳造装置  
代理人 特許業務法人山田特許事務所  

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