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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L |
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管理番号 | 1276919 |
審判番号 | 不服2012-2155 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-02-03 |
確定日 | 2013-07-16 |
事件の表示 | 特願2006-501036「所望のネットワークの性能目標を得るために機器を自動的に配置または構成するシステムおよび方法、ならびにセキュリティ、RFタグ、および帯域幅プロビジョニングのためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月 5日国際公開、WO2004/066077、平成19年 8月30日国内公表、特表2007-525040〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2004年1月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年1月22日、2003年3月13日、2003年11月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年11月17日付けで拒絶理由が通知され、平成22年5月24日付けで手続補正がされ、同年10月29日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成23年5月2日付けで手続補正がされたが、同年9月20日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年2月3日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。 第2 補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年2月3日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は本件補正前の平成22年5月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項42に記載された 「【請求項42】 通信ネットワークをモデリングまたは制御する方法であって、 通信ネットワークが配備されている、またはこれから配備されるサイトのサイトマップを表示すること、 ディスプレイ上の前記サイトマップの前記通信ネットワークに使用されている、または使用することができる複数の構成要素を含む通信ネットワークの可能な構成を構成することであって、前記複数の構成要素のうちの1つまたは複数は、データベースに記憶される性能データ、費用データ、保守データ、および機器設定のうちの少なくとも1つを有する、構成すること、 前記通信ネットワークの望ましい構成の1つまたは複数のパラメータを確立すること、 変更することであって、 a)前記通信ネットワークの前記構成内の1つまたは複数の構成要素、および b)前記通信ネットワークの前記構成内の1つまたは複数の構成要素の機器設定のうちの少なくとも1つを変更すること、 前記構成するステップおよび前記変更するステップにより生成される前記サイト内の前記通信ネットワークの予測パラメータまたは実測パラメータを求めること、および 前記求めるステップによって生成される予測パラメータまたは実測パラメータと、前記確立するステップによって確立される前記望ましい構成の前記1つまたは複数のパラメータとの比較に基づいて、前記通信ネットワークの1つまたは複数の最適または好適な構成を求めること、 を含む通信ネットワークをモデリングまたは制御する方法。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、 「【請求項40】 通信ネットワークをモデリングまたは制御する方法であって、 通信ネットワークが配備されている、またはこれから配備されるサイトのサイトマップを表示すること、 ディスプレイ上の前記サイトマップの前記通信ネットワークに使用されている、または使用することができる複数の構成要素を含む通信ネットワークの可能な構成を構成することであって、前記複数の構成要素のうちの1つまたは複数は、データベースに記憶される性能データ、費用データ、保守データ、および機器設定のうちの少なくとも1つを有する、構成すること、 前記通信ネットワークの望ましい構成の1つまたは複数のパラメータを確立すること、 変更することであって、 a)前記通信ネットワークの可能な構成内の1つまたは複数の構成要素である、基地局、基地局コントローラ、増幅器、減衰器、アンテナ、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、スプリッタ、リピータ、トランスデューサ、コンバータ、カプラ、漏洩フィーダケーブル、ハブ、交換機、ルータ、ファイアウォール、MIMOシステム、センサ、配電線、配線、撚線対ケーブル、および無線または他のアクセスポイントからなる群、および b)前記通信ネットワークの可能な構成内の1つまたは複数の構成要素の機器設定である、構成要素の送信パワー設定、入出力利得設定、チャネル設定、周波数設定、送信信号の帯域幅、受信信号の帯域幅、変調方式、データレート、シンボルレート、プロトコルスタック、符号化、ユーザ優先設定または割当量、アンテナ指向、アンテナ整相パラメータ、および向きのうちの1つまたは複数からなる群、 のうちの少なくとも1つを変更すること、 前記構成するステップおよび前記変更するステップにより生成される前記サイト内の前記通信ネットワークの予測パラメータまたは実測パラメータを求めること、および 前記求めるステップによって生成される予測パラメータまたは実測パラメータと、前記確立するステップによって確立される前記望ましい構成の前記1つまたは複数のパラメータとの比較に基づいて、前記通信ネットワークの1つまたは複数の最適または好適な構成を求めること、 を含む通信ネットワークをモデリングまたは制御する方法。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。 2.新規事項の有無、補正の目的要件について 本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、本件補正前の特許請求の範囲の請求項42に記載された、「構成要素」に関し、「基地局、基地局コントローラ、増幅器、減衰器、アンテナ、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、スプリッタ、リピータ、トランスデューサ、コンバータ、カプラ、漏洩フィーダケーブル、ハブ、交換機、ルータ、ファイアウォール、MIMOシステム、センサ、配電線、配線、撚線対ケーブル、および無線または他のアクセスポイントからなる群」と限定し、また、「構成要素の機器設定」に関し、「構成要素の送信パワー設定、入出力利得設定、チャネル設定、周波数設定、送信信号の帯域幅、受信信号の帯域幅、変調方式、データレート、シンボルレート、プロトコルスタック、符号化、ユーザ優先設定または割当量、アンテナ指向、アンテナ整相パラメータ、および向きのうちの1つまたは複数からなる群」と限定して、特許請求の範囲を減縮するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び同改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。 3.独立特許要件について 本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 (1)補正後の発明 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で補正後の発明として認定したとおりである。 (2)引用発明 原審の平成22年10月29日付け最後の拒絶理由に引用された特開平8-317458号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【特許請求の範囲】 【請求項1】 所定のサービス計画エリアに対して、PHS基地局の複数の異なる設置パターンを用意し、 各設置パターンについて、電界強度分布のシミュレーションを行い、 各設置パターンごとに、シミュレーション結果に基づいて、サービス計画エリアの面積に対する通話可能エリアの面積の比率を品質評価値として算出し、 各設置パターンごとにコスト評価値を算出し、 各設置パターンに対する品質評価値とコスト評価値とに基づいて、全設置パターンの中から、当該サービス計画エリアに対する設置パターンを決定するPHS基地局の設置パターン決定方法。」(2頁1欄) ロ.「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、PHS基地局の設置パターン決定方法に関する。」(2頁1欄) ハ.「【0008】図1は、PHS基地局の設置パターンを決定するためのデータを作成する方法を示している。 【0009】まず、所定のサービス計画エリアに対して、PHS基地局の複数の異なる設置パターンを用意する(ステップ1)。 【0010】次に容易された複数の設置パターンから、1つを選択する(ステップ2)。 【0011】次に、選択された設置パターンに対して、サービス計画エリアの環境条件を考慮して、電界強度分布をシミュレーションにより求める(ステップ3)。このシミューレーションには、たとえばストリートモデルやBD波モデル等が用いられる。 【0012】このシミュレーション結果に基づいて、サービス計画エリア内において電波が届く範囲を求め、品質評価値を算出する(ステップ4)。すなわち、サービス計画エリアの面積に対する通話可能エリアの面積の比率が品質評価値として算出される。 【0013】また、当該設置パターンにおけるコスト評価値を算出する(ステップ5)。コスト評価値に影響を与える変数としては、主としてPHS基地局の設置数が挙げられる。 【0014】このようにして得られた当該設置パターンに対する品質評価値およびコスト評価値を、当該設置パターンを表すデータに関連してデータベースに記憶させる(ステップ6)。 【0015】以下、残りの設置パターンについても、上記ステップ2?ステップ6の処理が行なわれる。このようにして、全ての設置パターンについての処理が行なわれる(ステップ7)。 【0016】設計者が配置パターンの選択を行なう際には、上記のようにして得られたデータに基づいて、たとえば、図3に示すように、各配置パターン(図3では3つの配置パターンA、B、C)に対して、コストと品質との両方が分かるグラフが作成され、表示器に表示される。表示されたグラフに基づいて、設計者は、コストと品質とを加味して、状況に応じた配置パターンを選択する。 【0017】図2の(a)、(b)、(c)は、上記ステップ1で用意された配置パターン例を示している。図2において、符号1は基地局を示している。境界線で規定された基地局1を含む白地領域は、シミューレーションに基づいて求められた当該基地局1による通話可能領域を示している。また、斜線で示す領域は、不感帯領域を示している。 【0018】配置パターンA(図2(a))では、基地局1は3つ設けられている。そして、サービス計画エリアの中央部に不感帯領域が存在している。 【0019】配置パターンB(図2(b))では、基地局1は3つ設けられている。そして、サービス計画エリアの中央部に不感帯領域が存在している。図2(b)の不感帯領域は、図2(a)の不感帯領域より小さくなっている。 【0020】配置パターンC(図2(c))では、基地局1は4つ設けられている。この配置パターンでは、サービス計画エリアの全領域が通話可能エリアとなっている。 【0021】図3は、図1に示す方法で得られたデータに基づいて、図2の各配置パターンA、B、Cを、品質-コスト平面上にプロットしたものである。この図から分かるように、配置パターンAは、品質は悪いが、コストは安いことが分かる。配置パターンBはコストは配置パターンと同じであるが、品質は配置パターンAより高いことが分かる。配置パターンCは、品質は最も良いが、コストが最も高くつくことが分かる。 【0022】設計者の評価基準は、それぞれの状況に応じて異なる。つまり、コストを重視しなければならない場合には、コストをできるだけ抑えようとする。品質を重視しなければならない場合には、コストは多少高くても高い品質を獲得しようとする。本実施例では、設計者は、図3に基づいて、評価基準に応じた配置パターンを容易に選択することができる。」(2頁2欄?3頁4欄) 上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ロ.、ハ.の【0009】?【0011】、【0017】?【0020】の記載、図1及び図2(a)(b)(c)によれば、PHS基地局の設置パターン決定方法は、所定のサービス計画エリアに対して複数のPHS基地局の複数の異なる配置パターンを用意し、配置パターンの電界強度分布をシミュレーションにより求めており、これをシミュレーションするステップと称することは任意である。 また、上記ハ.の【0015】の記載、図1及び図2(a)(b)(c)によれば、PHS基地局の設置パターン決定方法は、全ての配置パターンについて行なわれ、配置パターンA,B,Cにおいて、PHS基地局の配置が変更されていることが見て取れるから、配置パターン内のPHS基地局の設定である、PHS基地局の配置を変更しており、これを変更するステップと称することは任意である。 また、上記ハ.の【0012】、【0013】の記載、及び図1によれば、PHS基地局の設置パターン決定方法は、前述のシミュレーションするステップおよび前述の変更するステップにより生成される所定のサービス計画エリア内の品質評価値及びコスト評価値を算出しており、これを算出するステップと称することは任意である。 また、上記ハ.の【0021】?【0022】の記載、及び図3によれば、PHS基地局の設置パターン決定方法は、前述の算出するステップによって生成される品質評価値及びコスト評価値とに基づいて、全配置パターンの中から、好適な配置パターンを選択することが読み取れる。 したがって、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。 「PHS基地局の設置パターン決定方法であって、 所定のサービス計画エリアに対して複数のPHS基地局の複数の異なる配置パターンを用意し、配置パターンの電界強度分布をシミュレーションすること、 変更することであって、 α)前記配置パターン内のPHS基地局の設定である、PHS基地局の配置 を変更すること、 前記シミュレーションするステップおよび前記変更するステップにより生成される前記所定のサービス計画エリア内の品質評価値及びコスト評価値を算出すること、および 前記算出するステップによって生成される品質評価値及びコスト評価値とに基づいて、好適な配置パターンを選択すること、 を含むPHS基地局の設置パターン決定方法。」 (3)対比・判断 補正後の発明と引用発明とを対比する。 a.引用発明の「所定のサービス計画エリアに対して複数のPHS基地局の複数の異なる配置パターンを用意し、配置パターンの電界強度分布をシミュレーションすること」と、補正後の発明の「通信ネットワークがこれから配備されるサイトのサイトマップを表示すること、ディスプレイ上の前記サイトマップの前記通信ネットワークに使用することができる複数の構成要素を含む通信ネットワークの可能な構成を構成すること」とは、「所定のサービス計画エリア」は、新たなPHS基地局の設置計画を作成するための敷地、用地(site)であり、「これから配備されるサイト」ということができ、「PHS基地局」及び「配置パターン」は、「構成要素」及び「構成」に含まれ、配置パターン(構成)の電界強度分布をシミュレーションして、仮想状況をコンピュータ上で、前記サイトの情報として複数のPHS基地局(構成要素)の配置パターン(構成)を構成するから、いずれも、「これから配備されるサイトの情報を処理すること、前記サイトの情報に使用することができる複数の構成要素の可能な構成を構成すること」という点で一致する。 b.引用発明の「設定」と、補正後の発明の「機器設定」とは、いずれも、「特定の設定」という点で一致する。 c.引用発明の「品質評価値及びコスト評価値」と、補正後の発明の「前記通信ネットワークの予測パラメータ」とは、いずれも、「特定の変数」という点で一致する。 d.引用発明の「算出する」は、「求める」ということができる。 e.引用発明の「選択する」は、配置パターン(構成)を選択して当該構成を求めているから、「求める」ということができる。 f.引用発明の「PHS基地局の設置パターン決定方法」は、シミュレーション、すなわち、仮想状況をコンピュータ上でモデル化するものであるから、「モデリングする方法」の一種である。 したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 「モデリングする方法であって、 これから配備されるサイトの情報を処理すること、 前記サイトの情報に使用することができる複数の構成要素の可能な構成を構成すること、 変更することであって、 b)前記可能な構成内の1つまたは複数の構成要素の特定の設定 のうちの少なくとも1つを変更すること、 前記構成するステップおよび前記変更するステップにより生成される前記サイト内の特定の変数を求めること、および 前記求めるステップによって生成される特定の変数に基づいて、1つまたは複数の好適な構成を求めること、 を含むモデリングする方法。」 (相違点1) 「モデリングする方法」に関し、 補正後の発明は、「通信ネットワークを」モデリングするのに対し、引用発明は、当該「通信ネットワークを」との特定がない点。 (相違点2) 「これから配備されるサイト」に関し、 補正後の発明は、「通信ネットワークが」これから配備されるのに対し、引用発明は、当該「通信ネットワークが」との特定がない点。 (相違点3) 「サイトの情報を処理する」に関し、 補正後の発明は、「サイトのサイトマップを表示する」のに対し、引用発明は、「所定のサービス計画エリアに対して複数のPHS基地局の複数の異なる配置パターンを用意する」点。 (相違点4) 「前記サイトの情報」に関し、 補正後の発明は、「ディスプレイ上の」ものであるのに対し、引用発明は、当該「ディスプレイ上の」ものか不明な点。 (相違点5) 「使用することができる複数の構成要素」に関し、 補正後の発明は、「前記通信ネットワークに」使用することができる複数の構成要素であるのに対し、引用発明は、当該「前記通信ネットワークに」との特定がない点。 (相違点6) 「可能な構成」に関し、 補正後の発明は、複数の構成要素「を含む通信ネットワーク」の可能な構成であるのに対し、引用発明は、当該「を含む通信ネットワーク」との特定がない点。 (相違点7) 「可能な構成を構成すること」に関し、 補正後の発明は、「前記複数の構成要素のうちの1つまたは複数は、データベースに記憶される性能データ、費用データ、保守データ、および機器設定のうちの少なくとも1つを有する」のに対し、引用発明は、その様な構成を備えない点。 (相違点8) 補正後の発明は、「前記通信ネットワークの望ましい構成の1つまたは複数のパラメータを確立すること」を含むのに対し、引用発明は、その様な構成を含まない点。 (相違点9) 「変更すること」の対象に関し、 補正後の発明は、「a)前記通信ネットワークの可能な構成内の1つまたは複数の構成要素である、基地局、基地局コントローラ、増幅器、減衰器、アンテナ、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、スプリッタ、リピータ、トランスデューサ、コンバータ、カプラ、漏洩フィーダケーブル、ハブ、交換機、ルータ、ファイアウォール、MIMOシステム、センサ、配電線、配線、撚線対ケーブル、および無線または他のアクセスポイントからなる群、」であるのに対し、引用発明は、その様な構成を備えない点。 (相違点10) 「特定の設定」に関し、 補正後の発明は、「前記通信ネットワークの可能な構成内の1つまたは複数の構成要素の機器設定である、構成要素の送信パワー設定、入出力利得設定、チャネル設定、周波数設定、送信信号の帯域幅、受信信号の帯域幅、変調方式、データレート、シンボルレート、プロトコルスタック、符号化、ユーザ優先設定または割当量、アンテナ指向、アンテナ整相パラメータ、および向きのうちの1つまたは複数からなる群」であるのに対し、引用発明は、「前記配置パターン内のPHS基地局の設定である、PHS基地局の配置」である点。 (相違点11) 「特定の変数」に関し、 補正後の発明は、「前記通信ネットワークの予測パラメータ」であるのに対し、引用発明は、「品質評価値及びコスト評価値」である点。 (相違点12) 「特定の変数に基づいて」に関し、 補正後の発明は、「予測パラメータと、前記確立するステップによって確立される前記望ましい構成の前記1つまたは複数のパラメータとの比較に基づいて」いるのに対し、引用発明は、「品質評価値及びコスト評価値とに基づいて」いる点。 (相違点13) 「1つまたは複数の好適な構成」に関し、 補正後の発明は、「前記通信ネットワークの」1つまたは複数の好適な構成であるのに対し、引用発明は、当該「前記通信ネットワークの」との特定がない点。 そこで、まず、上記相違点1、2、5、6及び13について検討する。 上記引用例の上記ハ.の【0017】における「図2の(a)、(b)、(c)は、上記ステップ1で用意された配置パターン例を示している。図2において、符号1は基地局を示している。境界線で規定された基地局1を含む白地領域は、シミューレーションに基づいて求められた当該基地局1による通話可能領域を示している。」との記載によれば、引用発明の「PHS基地局」は、通話可能領域を有し、当該通話可能領域にはPHS移動局が収容されることは技術常識である。そうすると、複数の「PHS基地局」(第1のノード)とPHS移動局(第2のノード)とを接続するリンクが構成され、これを通信ネットワークということができるから、「モデリングする方法」に関し、補正後の発明のように「通信ネットワークを」モデリングすること(相違点1)、また、「これから配備されるサイト」に関し、補正後の発明のように「通信ネットワークが」これから配備されること(相違点2)、また、「使用することができる複数の構成要素」に関し、補正後の発明のように「前記通信ネットワークに」使用することができる複数の構成要素とすること(相違点5)、また、「可能な構成」に関し、補正後の発明のように、複数の構成要素「を含む通信ネットワーク」の可能な構成とすること(相違点6)、また、「1つまたは複数の好適な構成」に関し、補正後の発明のように「前記通信ネットワークの」1つまたは複数の好適な構成とすること(相違点13)は格別のことではない。 次に、上記相違点3及び4について検討する。 通信ネットワークをモデリングする方法において、ディスプレイ上にサイトのサイトマップを表示することは、例えば、特開平6-209279号公報(段落【0021】、【0030】、図2、4)、特開平7-235900号公報(段落【0027】、図2)に開示されるように周知であるから、「サイトの情報を処理する」に関し、補正後の発明のように「サイトのサイトマップを表示する」こと(相違点3)、また、「前記サイトの情報」に関し、補正後の発明のように「ディスプレイ上の」ものとすること(相違点4)は当業者が容易になし得ることである。 次に、上記相違点7について検討する。 通信ネットワークをモデリングする方法において、構成要素について、データベースに性能データ、機器設定を記憶していることは、例えば、前述の特開平6-209279号公報(段落【0026】、図2)、特開平7-235900号公報(段落【0028】、図6)に開示されるように周知であるり、また、費用データ、保守データを用いることは普通のことであって、必要に応じて適宜採用すべき設計的事項であるから、補正後の発明のように「前記複数の構成要素のうちの1つまたは複数は、データベースに記憶される性能データ、費用データ、保守データ、および機器設定のうちの少なくとも1つを有する」ことは当業者が容易になし得ることである。 次に、上記相違点9について検討する。 引用発明は、「PHS基地局」を構成要素としており、また、通信ネットワークをモデリングする方法において、構成要素を、基地局、基地局コントローラ、増幅器、減衰器、アンテナ、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、スプリッタ、リピータ、トランスデューサ、コンバータ、カプラ、漏洩フィーダケーブル、ハブ、交換機、ルータ、ファイアウォール、配電線、配線、撚線対ケーブル、または無線アクセスポイントとすることは、例えば、国際公開第02/10942号(27頁5?12行)に開示されるように周知であり、そして、構成要素として、MIMOシステム、センサは普通のものであるから、補正後の発明のように「a)前記通信ネットワークの可能な構成内の1つまたは複数の構成要素である、基地局、基地局コントローラ、増幅器、減衰器、アンテナ、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、スプリッタ、リピータ、トランスデューサ、コンバータ、カプラ、漏洩フィーダケーブル、ハブ、交換機、ルータ、ファイアウォール、MIMOシステム、センサ、配電線、配線、撚線対ケーブル、および無線または他のアクセスポイントからなる群」とすることは格別のことではない。 次に、上記相違点10について検討する。 通信ネットワークをモデリングする方法において、構成要素の機器設定について、構成要素を基地局とした場合、送信パワー設定、周波数設定とすることは、例えば、前述の特開平6-209279号公報(段落【0026】、図2)、特開平7-235900号公報(段落【0028】、図6)に開示されるように周知であり、また、構成要素の機器設定として、入出力利得設定、チャネル設定、周波数設定、送信信号の帯域幅、受信信号の帯域幅、変調方式、データレート、シンボルレート、プロトコルスタック、符号化、ユーザ優先設定または割当量、アンテナ指向、アンテナ整相パラメータ、または向きを用いることは普通のことであって、機器設定の種類は必要に応じて適宜採用すべき設計的事項であるから、補正後の発明のように「前記通信ネットワークの可能な構成内の1つまたは複数の構成要素の機器設定である、構成要素の送信パワー設定、入出力利得設定、チャネル設定、周波数設定、送信信号の帯域幅、受信信号の帯域幅、変調方式、データレート、シンボルレート、プロトコルスタック、符号化、ユーザ優先設定または割当量、アンテナ指向、アンテナ整相パラメータ、および向きのうちの1つまたは複数からなる群」とすることは格別のことではない。 次に、上記相違点8、11及び12について検討する。 引用発明は、「品質評価値及びコスト評価値とに」基づいて、好適な配置パターン(構成)を選択する(求める)ところ、上記引用例の上記ハ.の【0022】における「設計者の評価基準は、それぞれの状況に応じて異なる。つまり、コストを重視しなければならない場合には、コストをできるだけ抑えようとする。品質を重視しなければならない場合には、コストは多少高くても高い品質を獲得しようとする。」との記載によれば、評価基準に品質を重視した場合、配置パターンCの品質評価値及びコスト評価値と、配置パターンA,Bの各品質評価値及びコスト評価値を相互に比較して、望ましい配置パターンC(構成)の品質評価値及びコスト評価値を選択することになる。そうすると、補正後の発明のように「前記通信ネットワークの望ましい構成の1つまたは複数のパラメータを確立すること」(相違点8)ということ、また、引用発明の「品質評価値及びコスト評価値」を、補正後の発明のように「前記通信ネットワークの予測パラメータ」ということ(相違点11)ができ、その際、補正後の発明のように「予測パラメータと、前記確立するステップによって確立される前記望ましい構成の前記1つまたは複数のパラメータとの比較に」基づいて(相違点12)、好適な配置パターン(構成)を求めることになることは当然である。 そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。 以上のとおり、補正後の発明は引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.結語 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成24年2月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2 補正却下の決定 1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。 2.引用発明 引用発明は、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で認定したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は上記補正後の発明から当該本件補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に当該本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-02-19 |
結審通知日 | 2013-02-21 |
審決日 | 2013-03-05 |
出願番号 | 特願2006-501036(P2006-501036) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04L)
P 1 8・ 121- Z (H04L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中木 努 |
特許庁審判長 |
石井 研一 |
特許庁審判官 |
萩原 義則 矢島 伸一 |
発明の名称 | 所望のネットワークの性能目標を得るために機器を自動的に配置または構成するシステムおよび方法、ならびにセキュリティ、RFタグ、および帯域幅プロビジョニングのためのシステムおよび方法 |
代理人 | 市川 朗子 |
代理人 | 北澤 一浩 |
代理人 | 小泉 伸 |