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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q |
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管理番号 | 1277183 |
審判番号 | 不服2012-10571 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-06-06 |
確定日 | 2013-07-22 |
事件の表示 | 特願2001-290965「移動電子薬歴管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月 4日出願公開、特開2003- 99536〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は,平成13年9月25日の出願であって,平成22年10月29日付けの拒絶理由通知に対して同年12月24日付けで手続補正がなされ,平成23年7月8日付けの拒絶理由通知に対して同年8月31日付けで手続補正がなされたが,平成24年3月2日付けで拒絶査定がなされ,同年6月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成24年12月6日付けの当審の審尋に対して同年12月28日に回答書が提出され,さらに,平成25年3月22日付けの当審の拒絶理由通知に対して同年5月1日付けで手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成25年5月1日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「 【請求項1】 各種の薬剤情報を電子化して記憶させた記憶装置を有する電算機と,前記記憶装置に通信回線を介して接続可能であるとともに前記記憶させてある薬剤情報の内で出力を要するものを選択するための入力機器,表示装置を有する端末機器および前記入力された情報に基づいて前記端末機器に送信されてくる必要な薬剤情報を出力するための印刷機,前記各機器を駆動させるためのバッテリ,薬剤や医療器具を病院内外での移動診察用の台車に搭載した移動用端末装置と,前記端末機器と通信回線を介して接続可能な薬価算定電算機と,前記端末機器と通信回線を介して接続可能な電子カルテ用電算機と,前記端末機器と通信回線を介して接続可能なオーダリングシステムなどを行う管理用の電算機(サーバ)とからなることを特徴とする移動電子薬歴管理システム。」 3.引用例 (1)引用例1の記載事項及び引用例1発明 当審で通知した拒絶理由において引用した「特開2000-172712号公報」(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の(ア)?(オ)の事項が記載されている。(下線は関連する箇所を示すために当審において付加したものである。) (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は,データベースシステム,例えば,医療機関におけるデータベースシステム,該システムにおけるデータ抽出方法,オーダリングシステムに関する。 【0002】 【従来の技術】データベースを利用した情報システムは,現在あらゆる職種で利用されている。これらは,端末よりデータベースへアクセスし,ユーザの指定内容の該当するデータを読み込み表示する構成を持つものである。 【0003】このデータベースを利用した情報システムの代表な物の一つとして,医療機関で利用されているオーダリングシステムがある。このシステムは,患者ごとの診療データ,検査結果データ等が格納されているデータベースと,このデータベースに接続された端末とを具備するものである。すなわち,例えば,医師が利用する場合,端末からデータ表示の入力指示(患者のカルテ番号の入力等)を行なってデータベースへアクセスし,所定の属性を持つデータ(例えば,現在から30日前の期間に該当する診療データ,検査データ等)の検索,抽出を行ない表示部に表示するものである。この医療に関するオーダリングシステムは,必要に応じて患者の過去の診療データ,検査結果データ等をデータベースから読み出し見ることができ,診療時等において多くの情報提供を可能とした。」 (イ)「【0018】 【発明の実施の形態】以下,本発明の実施形態を,データベースシステムの一つであり医療機関等において利用されるオーダリングシステムを例として図面に従って説明する。 【0019】図1は,実施形態に係るオーダリングシステムを示す概略構成図である。 【0020】サーバ1と各端末2とは,ケーブル3を介して接続されている。そして,サーバ1内には,各患者ごとの診療履歴,薬の処方箋内容等のオーダデータと称されるデータを格納しているオーダデータベース11と,同じく各患者ごとの検査結果データ(検査項目,検査日,数値等)を格納している検査結果データベースが設定されていている。 【0021】端末2は,例えば,診療する各医師等が使用するものとして設置されていて,この端末よりサーバ1へアクセスをする。」 (ウ)「【0022】図2は,端末2の概略構成を示すブロック図である。 【0023】CPU21は,記憶装置22内に設定されている記憶媒体23に記憶されているオーダリングシステム管理アプリケーションプログラムを読み出して,RAM25のワークメモリエリアに格納し,該プログラムに従ってオーダリングシステム管理処理(図4参照)を実行する。 (途中省略) 【0026】記憶装置22には,プログラムやデータを記憶する記憶媒体23が,固定的に設定,若しくは脱着自在に装着されている。この記憶媒体23は,磁気的,光学的記録媒体,若しくは半導体メモリで構成されていて,当該端末2に対応する各種アプリケーションプログラム,及び各処理プログラムで処理されたデータ等が記憶される。 (途中省略) 【0029】図3は本実施形態におけるパラメータ定義テーブルを示す図である。このテーブルは,診療科毎に定義可能であり,図3に示す様に,データ読込み処理の際のオーダデータと検査結果データの抽出量を定義する[オーダデータ読込み],[検査結果データ読込み]と,データ表示処理の際のオーダデータと検査結果データの抽出量を定義する[オーダデータ表示],[検査結果表示]の四項目に分かれている。さらに,この四項目において,それぞれ入院患者に対しては病棟自科と病棟他科に,外来患者に対しては外来自科と外来他科に分類して表示するようになっている。ユーザは,当該テーブルを利用して合計16個の日数パラメータをそれぞれ予め定義しておくものとする。ただし,上記の対応する各項目において,(データ読込み処理パラメータ)≧(データ表示処理パラメータ)として定義するものとする。 (途中省略) 【0032】RAM25は,指定されたアプリケーションプログラム,入力指示,入力データ及び処理結果等を格納するワークメモリエリアを有する。 【0033】入力装置27は,カーソルキー,テンキー,及び各種機能キー等を備えたキーボードと,ポインティングデバイスであるマウスと,を備え,キーボードで押下されたキーの押下信号及びマウスによる操作信号をCPU21に出力する。 【0034】表示装置28は,CRT,液晶表示装置等により構成され,CPU21から入力されるデータを表示する。 【0035】印刷装置29は,端末2に対応する各種アプリケーションプログラムによって作成されたデータ等を印刷する。」 (エ)「【0036】次に,上記のように構成したオーダリングシステムの動作を,図4,図5を参照して説明する。 【0037】図4は,本実施形態のオーダリングシステムにおいて,ユーザにより入力装置27からデータ表示の指示入力がされてから,表示装置28に所定のデータを表示するまでの当該システムの動作を示すフローチャートである。 【0038】以下,簡単のため,外科医が診療の際に当該システムを使用する場合とし,また,データ読込み処理,データ表示処理における日数パラメータは,図3に示した日数として定義されたものとして以下説明を行なう。 【0039】ユーザにより入力装置27からデータ表示の指示入力(患者のカルテ番号入力等)がなされると,CPU21はサーバ1のオーダデータベース11及び検査結果データベース12にアクセスし,図3で定義したように,当該患者のカルテ番号の90日間のオーダデータ,及び検査結果データのデータ読み込み処理を実行する。すなわち,現在の日付から90日過去にさかのぼった日付までのデータの検出をし,当該期間内の日付をもつデータの抽出を行ない,当該抽出されたデータを,中間サーバ24内のオーダ中間データベース241と検査結果中間データベース242に格納する(ステップS1)。 【0040】そして,ステップS2において,オーダ中間データベース241及び検査結果中間データベース242にデータ表示処理を行なうことが可能なデータ量が存在するかどうかの判断をし,データが存在する場合にはステップS3のデータ表示処理へ移行する。 (途中省略) 【0042】ステップS3において,オーダ中間データベース241及び検査結果中間データベース242から,図3で定義したように30日間のオーダデータ,及び検査結果データの検索,抽出を行なうデータ表示処理を実行する。すなわち,現在の日付から30日過去にさかのぼった日付までのデータの検出をし,当該期間内の日付をもつデータの抽出を行ない,表示装置28へ表示する(ステップS3)。 【0043】なお,ステップS3において表示装置28に表示される内容は,例えば,オーダデータの場合には当該患者の診療履歴等が,検査結果データの場合には検査項目ごとに検査日,検査結果(数値等)が,それぞれ外科(自科)と他の診療科で診療を受けている場合他の診療科(他科)に分かれて表示される。」 (オ)「【0054】第4に,パラメータ定義テーブルにより定義するデータ属性は,診療科毎に定義可能であり,当該診療科毎に抽出したデータをオーダデータと検査結果データとに分類し,それぞれのデータを自科と他科に分類して抽出,表示することが可能であるので,医師の診療等の際の利便性を向上させることができる以上,本発明を第1実施形態に基いて説明したが,上記実施形態に限定されるものではなく,例えば以下に示す(1)?(4)のように,その要旨を変更しない範囲で種々変形可能である。 (途中省略) (2)上記実施形態においては,医師が患者の診療時等に使用する場合について説明したが,例えば,オーダデータは薬の処方箋,医療費等を含むものとし,診療時に限らず,薬剤の調合や事務管理等の際に使用するものであってもよい。 (以下省略)」 引用例1の上記(ア)?(オ)の記載及び図面の記載を総合すれば,引用例1には,次の発明(以下,「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。 「医師が患者の診療時等に使用する端末2と,当該端末2とケーブル3で接続されているサーバ1とからなるオーダリングシステムであって, 端末2は,CPU21,記憶装置22,RAM25,入力装置27,表示装置28,印刷装置29などを備えており, サーバ1内には,各患者ごとの診療履歴,薬の処方箋内容等のオーダデータを格納しているオーダデータベース11と,同じく各患者毎の検査結果データを格納している検査結果データベース12とが設定されており, 外科医が診療の際に当該システムを使用する場合, ユーザにより入力装置27からデータ表示の指示入力として患者のカルテ番号入力等がなされると,CPU21はサーバ1のオーダデータベース11及び検査結果データベース12にアクセスし,オーダデータ,及び検査結果データのデータ読み込み処理を実行して表示装置28へ表示し, オーダデータは薬の処方箋,医療費等を含むものであってもよい オーダリングシステム。」 (2)引用例2の記載事項 当審で通知した拒絶理由において引用した「満武巨裕 外1名,情報通信の発展と医療-アメリカ医療システム事情(11)-,医療とコンピュータ,株式会社日本電子出版,1999年10月20日,第10巻,第10号,p73?75」(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに,次の(カ)の事項が記載されている。(下線は関連する箇所を示すために当審において付加したものである。) (カ)「ハイテク機器のニュー・フェース 最近,アメリカの病院で新たな話題となっているのがワイヤレス端末である。写真は,このところ医学雑誌などでしばしば宣伝されているワイヤレス端末の一例である。 (写真) これが登場したからには,患者のベッドサイドでの治療・看護・介護の記録までが完全にコンピュータ化される日も間近であろう。 車をつけた台車で自由に移動させられるワイヤレス端末は小回りがきき,病室が狭いために従来のデスクトップ端末は置けなかったという問題も容易に解決できる。これを使えば,ドクターもナースもこれまでのようにベッドサイドでまずメモをとり,それらの情報をあとでわざわざナースステーシヨンやドクターのオフイスにあるコンピュータから入力するという手間や時間が省ける。 便利なのはそれだけではない。これまでは,たとえ患者のベッドサイドにデスクトップが取り付けられていても,医師や看護婦は一人一人の患者をみるたびに,毎回それぞれのデスクトップごとにセキュリテイーと認証のためのログオン・ログオフを繰り返さなければならなかった。しかし,医師や看護婦(のグループ)が一台のワイヤレス端末と共に移動しながら回診できれば,端末は一台で事足りるので,個々の患者のチェックアップのたびに認証のためのログオン・ログオフを繰り返す必要がなくなり,大幅に手間がはぶけることになる。デューク大学病院からの報告によれば,ワイヤレス携帯端末導入以前には,ドクターは一日平均16回もこのログオン・ログオフを繰り返していたそうであるが,導入後はこの手間が解消されておおいに喜ばれているという。 さらに,携帯型のワイヤレス端末はいつでも必要な時に台車からはずして持ち運びができるので,オフイス以外の場所,たとえばカフェテリアなどにいても,あるいは廊下を歩きながらでも情報の入力や参照ができる。入力はともあれ,通信可能範囲内であればいつでもどこでも必要な情報が参照できるのが好評の理由だといわれているが,一理ある。 作業の手間をはぶければ,患者のケアに費やせる時間が増える。そうすればケアの質が上がるというのがアメリカ流の考え方だ。」(第73頁左欄第1行?第74頁左欄第11行) 引用例2の上記(カ)の記載を総合すれば,引用例2には,次の事項(以下,「引用例2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「医師や看護婦が,車をつけた台車で自由に移動させられるワイヤレス端末と共に移動しながら病室の患者を回診でき, ドクターもナースもこれまでのようにベッドサイドでまずメモをとり,それらの情報をあとでわざわざナースステーシヨンやドクターのオフイスにあるコンピュータから入力するという手間や時間が省け, 携帯型のワイヤレス端末はいつでも必要な時に台車からはずして持ち運びができるので,オフイス以外の場所,たとえばカフェテリアなどにいても,あるいは廊下を歩きながらでも情報の入力や参照ができ,通信可能範囲内であればいつでもどこでも必要な情報が参照できる。」 4.対比 本願発明と引用例1発明とを対比する。 引用例1発明の「端末2」は,入力装置27,表示装置28を備え,病院内で医師が患者の診療時等に使用するものであるから,本願発明の「入力機器,表示装置を有する端末機器」に相当する。 引用例1発明の「サーバ1」は,各患者ごとの診療履歴,薬の処方箋内容等のオーダデータを格納しているオーダデータベース11を備えており,ケーブル3で端末2と接続されているものであるから,本願発明の「端末機器と通信回線を介して接続可能な電子カルテ用電算機」に相当するとともに,「前記端末機器と通信回線を介して接続可能なオーダリングシステムなどを行う管理用の電算機(サーバ)」に相当する。 引用例1発明の「サーバ1」は,各患者ごとの診療履歴,薬の処方箋内容等のオーダデータを格納しているオーダデータベース11を備えており,患者の「薬歴」を「電子的」に「管理」していることは自明のことであるから,引用例1発明のオーダリングシステムは,「電子薬歴管理システム」であるといえる。 そうすると,本願発明と引用例1発明とは, 「入力機器,表示装置を有する端末機器と, 前記端末機器と通信回線を介して接続可能な電子カルテ用電算機と,前記端末機器と通信回線を介して接続可能なオーダリングシステムなどを行う管理用の電算機(サーバ)とからなることを特徴とする電子薬歴管理システム。」 の点で一致し,以下の点で相違する。 [相違点1] 本願発明のシステムは,「各種の薬剤情報を電子化して記憶させた記憶装置を有する電算機」を備え,記憶装置に「記憶させてある薬剤情報の内で出力を要するもの」を端末機器の入力機器で選択すると,この「入力された情報に基づいて端末機器に送信されてくる必要な薬剤情報」が「出力」されるのに対して,引用例1発明のシステムは,そのような構成を備えていない点。 [相違点2] 本願発明のシステムは,「記憶装置に通信回線を介して接続可能」な「端末機器」,「情報を出力するための印刷機」,「各機器を駆動させるためのバッテリ」,「薬剤や医療器具」を「病院内外での移動診察用の台車に搭載した移動用端末装置」を備えているのに対して,引用例1発明のシステムは,単に「医師が患者の診療時等に使用する端末」を備えているものである点。 [相違点3] 本願発明のシステムでは,「前記端末機器と通信回線を介して接続可能な薬価算定電算機」を備えているのに対して,引用例1発明のシステムはそのような構成を備えていない点。 [相違点4] 本願発明のシステムは,「移動電子薬歴管理システム」であるのに対して,引用例1発明は,「電子薬歴管理システム」である点。 5.当審の判断 上記相違点について検討する。 [相違点1]について オーダリングシステムにおいて,処方を作成する際に,医師が薬剤情報を参照できるようにすることは,例えば「熊本一朗 外1名,コンピュータと産婦人科診療-診療の全電算化(トータルシステム)-,産科と婦人科,診断と治療社,1992年11月01日,第59巻,第11号,p1609?1615」(特に第1610頁左欄第5行?第1613頁左欄末行の記載参照)等に記載されているように周知技術であるから,引用例1発明のオーダリングシステムにおいて,サーバが,「各種の薬剤情報」のデータベースを備え,入力機器で端末から選択すると,「薬剤情報」が出力されるように構成すること,すなわち相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 [相違点2]及び[相違点4]について 引用例2には,「医師や看護婦が,車をつけた台車で自由に移動させられるワイヤレス端末と共に移動しながら病室の患者を回診でき,ドクターもナースもこれまでのようにベッドサイドでまずメモをとり,それらの情報をあとでわざわざナースステーシヨンやドクターのオフイスにあるコンピュータから入力するという手間や時間が省け,携帯型のワイヤレス端末はいつでも必要な時に台車からはずして持ち運びができるので,オフイス以外の場所,たとえばカフェテリアなどにいても,あるいは廊下を歩きながらでも情報の入力や参照ができ,通信可能範囲内であればいつでもどこでも必要な情報が参照できる。」との事項(引用例2記載事項)が記載されている。 ここで,引用例2のワイヤレス端末は,上記のとおり通信可能範囲内であればどこでも必要な情報が参照できるものであるから,通信可能範囲内であれば「病院」の「内外」を問わず,必要な情報が記憶されている「記憶装置」に「通信回線を介して接続可能である」ことは自明のことである。 例えば引用例1発明の端末2も印刷装置29を備えているように,医師の端末に印刷装置を備えるように構成することは普通に行われていることである。 台車に搭載した各機器で必要となる電源を確保するために,「バッテリ」を用いることは常套手段である。 また,回診用の台車(回診車)に「薬剤や医療器具」を載せて回診を行うことは,例えば実願平4-5864号(実開平5-63535号)のCD-ROM(特に【0002】段落の記載参照),実願平5-59527号(実開平7-27551号)のCD-ROM(特に【0002】段落の記載参照)等に記載されているように周知事項である。 してみれば,引用例1発明に引用例2記載事項を適用して,医師が患者の診療時に使用する端末2をワイヤレス端末とし,これを「病院内外での移動診察用の台車に搭載」して移動しながら回診を行う「移動用端末装置」とし,システム全体を「移動電子薬歴管理システム」とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 その際に上記周知事項を考慮して,上記「移動診察用の台車」に,端末機器に加え,「印刷機」,「バッテリ」及び「薬剤や医療器具」を搭載することは,当業者が適宜なし得る設計的事項である。 [相違点3]について 病院内のオーダリングシステムと会計システムとを接続して,医師の端末から会計システムに対してオーダを発行するように構成することは,例えば特開2000-276548号公報(特に【0002】【0039】段落の記載参照),特開平11-213066号公報(特に第3図及びその説明の記載参照)等に記載されているように周知技術であるから,引用例1発明のオーダリングシステムシステムにおいて「端末機器と通信回線を介して接続可能な薬価算定電算機」を備えるように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。 以上判断したとおり,本願発明における上記[相違点1]?[相違点4]に係る発明特定事項は,いずれも当業者が容易に想到することができたものであり,また,本願発明の作用効果も,引用例1発明,引用例2記載事項,周知技術及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。 よって,本願発明は,引用例1発明,引用例2記載事項,周知技術及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.審判請求人の主張について 審判請求人は平成25年5月1日付けの意見書において,次のとおり主張している。 (1)「3.一致点について 本拒絶理由通知では,本願発明と引用発明とは,「入力機器,表示装置を有する端末機器と,前記端末機器と通信回線を介して接続可能な電子カルテ用電算機と,前記端末機器と通信回線を介して接続可能なオーダリングシステムなどを行う管理用の電算機(サーバ)とからなることを特徴とする電子薬歴管理システム。」の点で一致すると判断されておられますが,本願発明は,引用発明のような医療機関の医師が外来患者に対して使用する例えば診察室のテーブルなどに設置された従来の端末によるものであり,本願発明のような病院内であっても入院患者,在宅患者,病院や自宅以外での救急患者など従来のオーダリングシステムでは不可能な患者や場所に対してオーダリングシステムを可能にして患者を有効に救うというのが発想であり,このような考え方は引用発明にはなく,両者は全く異なるものです。 従って,両者は単に端末機器が一致するものでないことは明白です。」(主張1) (2)「更に,[相違点3]について,病院内のオーダリングシステムと会計システムとを接続して,医師の端末から会計システムに対してオーダを発行するように構成することは,例えば特開2000-276548号公報(特に〔0002〕〔0039〕段落の記載参照),特開平11-213066号公報(特に第3図及びその説明の記載参照)等に記載されているように周知技術であるから,引用発明に「端末機器と通信回線を介して接続可能な薬価算定電算機」を備えるように構成することにも何ら困難性はなく,当業者が適宜なし得たことである,と判断されておられます。 しかしながら,本館発明は病院内に限る訳でもなく,従来,病院外から会計システムに接続するものなどありません。」(主張2) (主張1)について 本願発明では,「病院内であっても入院患者,在宅患者,病院や自宅以外での救急患者など従来のオーダリングシステムでは不可能な患者や場所に対してオーダリングシステムを可能にして患者を有効に救う」との事項を特定する記載はなされていないから,主張1は,本願発明の構成に基づかない主張であり,採用することができない。 (主張2)について 引用例1発明の端末2をワイヤレス端末として病院外からオーダリングシステムに接続可能とすることは,上記「[相違点2]及び[相違点4]について」で判断したように,当業者が容易に想到し得たことであり,また,オーダリングシステムに「端末機器と通信回線を介して接続可能な薬価算定電算機」を備えるように構成することは,上記「[相違点3]について」で判断したように当業者が容易に想到し得たことである。そして,引用例1発明の端末2をワイヤレス端末として病院外からオーダリングシステムに接続可能とすることに加えて,オーダリングシステムに「端末機器と通信回線を介して接続可能な薬価算定電算機」を備えるように構成すれば,その結果として「病院外から会計システムに接続するもの」となることは自明のことである。 したがって,審判請求人の意見書における上記主張は採用することができない。 7.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用例1発明,引用例2記載事項,周知技術及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は当審で通知した上記拒絶理由によって拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-05-27 |
結審通知日 | 2013-05-28 |
審決日 | 2013-06-10 |
出願番号 | 特願2001-290965(P2001-290965) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小林 正和 |
特許庁審判長 |
金子 幸一 |
特許庁審判官 |
須田 勝巳 石川 正二 |
発明の名称 | 移動電子薬歴管理システム |
代理人 | 橋本 克彦 |
代理人 | 橋本 京子 |