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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08G |
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管理番号 | 1277193 |
審判番号 | 不服2011-9462 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-05-06 |
確定日 | 2013-07-24 |
事件の表示 | 特願2001-575672「ポリカーボネートの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月18日国際公開、WO2001/77204、平成16年 1月 8日国内公表、特表2004-500476〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成13年1月18日(パリ条約による優先権主張 2000年4月7日 米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、平成22年5月28日付けで拒絶理由が通知され、同年12月1日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同年同月27日付けで拒絶査定がなされ、平成23年5月6日に拒絶査定不服審判が請求され、同年6月23日に審判請求書の手続補正書(方式)が提出されたものである。 第2.本願発明 本願の請求項1?17に係る発明は、平成22年12月1日に提出された手続補正書により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「 (a)ホスゲンと2価フェノールとを2価フェノール中のヒドロキシル基の少なくとも25%がクロロホルメート基に変換されるまで反応させ、(b)該ヒドロキシル基の少なくとも25%が変換された後に反応混合物にホスゲン以外のアシルハライドを添加し、(c)該ヒドロキシル基の少なくとも25%が変換された後に反応混合物に連鎖停止剤を添加しそして(d)重合反応を完結せしめる諸工程からなることを特徴とするポリカーボネート組成物の製造方法。」 第3.原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由は、要するに、「本願発明は、その優先日前に日本国内において頒布された下記刊行物Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 刊行物A:特開昭58-217519号公報」 というものを含むものである。 第4.刊行物Aの記載事項 本願の優先日前に頒布された刊行物Aには、以下の事項が記載されている。 A1「 ・・・・ 」(特許請求の範囲 請求項1?2,5?6) A2「 」(第5頁右下欄12行目?第6頁左上欄6行目) A3「 」(第5頁右上欄15行目?左下欄10行目) 第5.刊行物Aに記載された発明 摘示A1には、規則エステル/カーボネートコポリマーの製造方法として、(1)?(3)の少なくとも3工程を有する手法が記載されており、その(1)で示される第1段階、(3)で示される第3段階について、刊行物Aには、第1段階における「十分な条件下」として、カーボネート前駆体物質対二価の有機化合物のモル比が、0.09:1?0.95:1である旨の記載(摘示A2参照。)があること、同様に、第3段階における「十分な条件下」として、規則エステル/カーボネートコポリマーの分子量を調整するための条件下で、連鎖停止剤を用いる旨の記載(摘示A3参照。)があること、得られるコポリマーは反応混合物であることから、コポリマー組成物である点からみて、刊行物Aには以下の発明(以下「刊行物A発明」という。)が記載されている。 (1)有機液体媒質中で二価のフェノールをホスゲンと、二価のカーボネートを形成するために0.09:1?0.95:1のモル比で、接触させ、(2)前記二価のカーボネートをテレフタロイルハライド、イソフタロイルハライドまたはそれらの混合物と、エステル/カーボネートオリゴマーを形成するために十分な条件下に、接触させ、そして(3)前記オリゴマーを、規則エステル/カーボネートコポリマーを形成するためにホスゲンと連鎖停止剤とを、接触させ、 オリゴマー中に形成するカーボネートの量は、有機媒質からのオリゴマーの沈殿を本質的に防止するために十分である、 規則エステル/カーボネートコポリマー組成物の製造法。 第6.対比・判断 1.本願発明について 本願発明と刊行物A発明とを比較する。 ホスゲンとヒドロキシル基とが、加水分解等の副反応を除けばほぼ定量的に反応するものであることは、請求人が平成22年12月1日付け意見書中において主張するとおり、当該技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)によく知られていることであるところ、刊行物A発明における第1段階の(1)においては、まず二価のフェノールとホスゲンとが反応することによりクロロホルメート基を有する化合物が定量的に生成し、該化合物がさらに反応することで、二価のカーボネートが形成されることとなるが、上記クロロホルメート基を生成する反応の転化率は、ホスゲンと二価フェノールとの両者の配合モル比により定量的に推定可能であることは、上記意見書中で請求人が主張するとおりであり、刊行物A発明は「二価のフェノールをホスゲンと、二価のカーボネートを形成するために0.09:1?0.95:1のモル比で、接触させ」る旨の規定があることからすると、この工程は、本願発明における「2価フェノール中のヒドロキシル基の少なくとも25%がクロロホルメート基に変換されるまで反応させ」と重複一致する。 刊行物A発明における「テレフタロイルハライド、イソフタロイルハライドまたはそれらの混合物」は、本願発明における「ホスゲン以外のアシルハライド」に相当する。 刊行物A発明における「二価のカーボネート」は、ホスゲンと二価フェノールとの反応生成物であることから、本願発明における、ホスゲンと2価フェノールとを反応させた「反応混合物」に相当する。 刊行物A発明における第2段階である(2)は、第1段階である(1)で「二価のフェノールをホスゲンと、二価のカーボネートを形成するために0.09:1?0.95:1のモル比で、接触させ」た「後、」であり、上記のとおり第1段階である(1)は、「2価フェノール中のヒドロキシル基の少なくとも25%がクロロホルメート基に変換されるまで反応させ」ていることから、第2段階である(2)は、「2価フェノール中のヒドロキシル基の少なくとも25%がクロロホルメート基に変換されるまで反応させ」た「後、」を備えている。 そうすると、刊行物A発明における第2段階である(2)において、「前記二価のカーボネートをテレフタロイルハライド、イソフタロイルハライドまたはそれらの混合物と、エステル/カーボネートオリゴマーを形成するために十分な条件下に、接触させ」は、第1段階である(1)で「2価フェノール中のヒドロキシル基の少なくとも25%がクロロホルメート基に変換されるまで反応させ」た「後、」「二価のカーボネート」に「テレフタロイルハライド、イソフタロイルハライドまたはそれらの混合物」を添加していることから、本願発明における「(b)該ヒドロキシル基の少なくとも25%が変換された後に反応混合物にホスゲン以外のアシルハライドを添加し」に相当する。 刊行物A発明における第3段階である(3)において、「規則エステル/カーボネートコポリマーを形成するためにホスゲンと連鎖停止剤とを、接触させ」は、第1段階である(1)で「2価フェノール中のヒドロキシル基の少なくとも25%がクロロホルメート基に変換されるまで反応させ」た「後、」に「連鎖停止剤」を添加していることから、本願発明における「(c)該ヒドロキシル基の少なくとも25%が変換された後に反応混合物に連鎖停止剤を添加し」に相当する。 刊行物A発明における「規則エステル/カーボネートコポリマー組成物の製造方法」は、本願発明における「ポリカーボネート組成物の製造方法」に相当する。 そして、「重合反応を完結せしめる諸工程」を設けることは、記載されているに等しい事項であることからすると、刊行物A発明も上記態様を実質的に含むものと認められる。 よって、本願発明と刊行物A発明との間に差異はない。 第7.請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、本願発明は、界面重合法であり、溶液重合法である刊行物A発明とは、重合法が根本的に異なる旨の主張をしている。 しかし、本願発明において、重合方法は何ら規定されていない。そればかりか、本願明細書中、【0021】、【0041】段落には、「本発明は溶液重合又は界面重合プロセスによってポリカーボネート組成物を製造するのに適した方法である。」との記載があるとおり、本願発明は溶液重合をもその技術的範囲に含むことからしても、上記主張を採用することはできない。 第8.まとめ 以上のとおり、本願発明は、刊行物Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないとする原査定の理由は妥当なものであり、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-02-20 |
結審通知日 | 2013-02-26 |
審決日 | 2013-03-11 |
出願番号 | 特願2001-575672(P2001-575672) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(C08G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤井 勲 |
特許庁審判長 |
蔵野 雅昭 |
特許庁審判官 |
加賀 直人 大島 祥吾 |
発明の名称 | ポリカーボネートの製造方法 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 畑 泰之 |