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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20129701 審決 特許
不服201126007 審決 特許
不服201217207 審決 特許
不服201126373 審決 特許
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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04G
管理番号 1277213
審判番号 不服2012-6734  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-13 
確定日 2013-07-24 
事件の表示 特願2008-188593「鉄筋結束機、ワイヤリール及びワイヤリールの識別方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月 4日出願公開、特開2008-291642〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成16年1月9日に出願した特願2004-4816号の一部を平成20年7月22日に新たな特許出願としたものであって、平成23年5月2日及び平成23年9月22日付けで手続補正がなされ、平成23年9月22日付け手続補正が平成24年1月23日付けで却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成24年4月13日に拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、当審において、平成24年11月12日付けで審尋が通知され、平成25年1月11日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成24年4月13日付け手続補正の却下の決定

〔補正の却下の決定の結論〕
平成24年4月13日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成24年4月13日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであって、特許請求の範囲については、本件補正前の請求項1に、
「結束機本体に設けられた収納室に、鉄筋結束用のワイヤを巻き付けたワイヤリールを装着し、前記ワイヤを鉄筋の周囲に巻き回した後に捩って前記鉄筋を結束する鉄筋結束機において、
前記収納室には、凸部又は凹部である第1の被検出部と第2の被検出部が形成された前記ワイヤリールを検出する検出装置が設けられ、
前記検出装置は、
前記ワイヤリールの前記第1の被検出部を検出することによって前記ワイヤリールの回転量を検出する、弾性部材で付勢された接触式センサである第1の検出手段と、
前記ワイヤリールの前記第2の被検出部の数を検出する第2の検出手段とからなり、
前記第1の検出手段によって検出された前記ワイヤリールの回転量の間の前記第2の被検出部の数を前記第2の検出手段が検出することを特徴とする鉄筋結束機。」とあったものを、
「結束機本体に設けられた収納室に、鉄筋結束用のワイヤをハブ部に巻き付け両側にフランジを備えたワイヤリールを装着し、前記ワイヤを鉄筋の周囲に巻き回した後に捩って前記鉄筋を結束する鉄筋結束機において、
前記収納室には、少なくとも一方のフランジの略中央にフランジ凹部が形成され、当該フランジ凹部の外側に凸部又は凹部である第1の被検出部が形成され、さらに前記フランジに第2の被検出部が形成された前記ワイヤリールを検出する検出装置が設けられ、
前記検出装置は、
前記ワイヤリールの前記第1の被検出部を検出することによって前記ワイヤリールの回転量を検出する、弾性部材で付勢された接触式センサである第1の検出手段と、
前記ワイヤリールの前記第2の被検出部の数を検出する第2の検出手段とからなり、
前記第1の検出手段によって検出された前記ワイヤリールの回転量の間の前記第2の被検出部の数を前記第2の検出手段が検出することを特徴とする鉄筋結束機。」と補正するものである。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「ワイヤリール」を「鉄筋結束用のワイヤをハブ部に巻き付け両側にフランジを備えた」ものであって、さらに「少なくとも一方のフランジの略中央にフランジ凹部が形成され」たものに限定し、そして「凸部又は凹部である第1の被検出部」が形成されるのは「当該フランジ凹部の外側」と限定し、「第2の被検出部」が「前記フランジに形成」されたものに限定するものである。

2 補正の目的
本件補正後の請求項1に係る本件補正は、上記1(2)のとおり、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

3 引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された「本願の遡及日前に頒布された刊行物である特開平9-165918号公報(以下「引用例1」という。)」には、次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同様。)

ア 「【0006】
【発明の実施の形態】以下、図面によって本発明の実施の形態について説明する。
【0007】図1は鉄筋結束機の要部を示すもので、この鉄筋結束機はスプール7に巻装されたワイヤ1を前方に送り出すワイヤ送り装置2と、送り出されたワイヤ1をループ状に巻き回すガイドアーム3と、巻き回されたワイヤ1の一部を把持して捩り締める捩り装置4と、元側のワイヤ1からループを分断する切断装置5とを備えている。ワイヤ送り装置2と捩り装置4と切断装置5とは結束機本体に設けられモータにより作動する。
【0008】上記鉄筋結束機は、メインスイッチを入れておき、鉄筋a、bの結束時にトリガ8を引き操作することによりワイヤ送り装置2によりスプール7からワイヤ1が送り出され、ガイドアーム3によってループ状に巻き回された後、捩り装置4によりループの一部をフック9で掴んで捩り回転することにより結束するとともに、切断装置5により元側のワイヤ1からループを切断して分断するものである。
【0009】ところで、上記スプール7には該スプール7に巻装されたワイヤ1の種類(鉄、ステンレス等)や太さを示す表示手段Aが設けられ、上記鉄筋結束機には該表示手段Aを検出する検出手段Bと、該検出手段Bが検出した結果に基づいて上記捩じり装置の捩じりトルクを自動的に調整する制御手段Cとが設けられている。
【0010】表示手段Aはスプール7の一方の側面に貼着された反射シール10で構成され、この反射シール10は裏面に接着剤層を形成したアルミ箔テープを使用すればよい。この反射シール10はワイヤ1の種類に対応して支軸7aの中心からの距離をあらかじめ設定しておき同心円上に少なくとも1か所貼着されていればよい。なお、鉄筋結束機の使用される環境は必ずしもよい環境とはいえない(雨天下での使用もある)ので反射シール10の剥離を想定して同心円上に複数箇所設けることが望ましい。
【0011】検出手段Bは、フォトセンサ(反射型フォトインタラプタ)11で構成され、上記スプール7を支持する支持部12の一方(上記反射シール10の貼着されたスプールの側面に対応する側)の内側面に配置されている。このフォトセンサ11は上記スプール7を軸支する軸受13を中心に所定の距離に配置されている。このフォトセンサ11の位置はスプール7に貼着されている反射シール10に対応することは言うまでもない。
【0012】制御手段Cは、マイクロプロセッサ(MPU)で構成され、内部メモリに記憶されているプログラムに基づいて上記フォトセンサ11の検出信号の有無を判断し、どのフォトセンサ11が反射シール10を検出したかにより、ワイヤ1の種類を判別し、電流制御回路14を制御して捩り装置4を駆動するモータ6に流れる電流を自動的に変えて、ワイヤ1に最適な捩りトルクで捩じり装置4が作動するように設けられている(図3参照)。なお、符号16は電池パック15から供給される電圧を上記検出手段B、制御手段Cを作動させるためのICレベルの電圧に変換するDCーDCコンバータである。
【0013】前記構成の鉄筋結束機によれば、図2に示すように充分に充電された電池パック15を装着し、ワイヤが巻装されたスプール7を鉄筋結束機に装填した後、ワイヤ1の先端をワイヤ1の案内溝(図示せず)に挿入し、メインスイッチ17を入れてトリガ8を引き、ワイヤ送り装置2を作動させてワイヤ1の先端を所定の位置まで空送りする。
【0014】この時、スプール7が回転して反射シール10がフォトセンサ11の前面を通過するのでフォトセンサ11の発光素子が発する光を反射シール10が反射し、反射された光をフォトセンサ11の受光素子が受光して検出信号を制御手段Cに送出する。制御手段Cはフォトセンサ11の検出信号から、スプール7の種類(ワイヤ1の種類)を判別し、モータ6に流れる電流をワイヤ1に最適な電流値に設定し、捩りトルクを自動的に決定する。
【0015】なお、上記支持部12の軸受13にスプール7がセットされたことを認識するマイクロスイッチ(図示せず)を配置してもかまわない。この場合は制御手段CはマイクロスイッチのONを条件としてフォトセンサ11の検出信号を判断し、一旦フォトセンサ11を検出した後は、その後検出するフォトセンサ11の検出信号は無視し、上記マイクロスイッチがOFFするまで同一トルクでモータ6を回転させることができる。
【0016】また、スプール7の径方向に複数の反射シール10を貼着して複数の反射シール10を組み合わせることによって、より多くの種類のワイヤを判別することができる。なお、反射シール10を貼着しない場合もワイヤの1つの種類を表示できることは言うまでもない。
【0017】さらに、上記表示手段Aは反射シール10に限定されるものではなくバーコードラベルで構成し検出手段Bをバーコードスキャナで構成してもよいし、スプール7の側面に磁石を埋設しリードスイッチやホール素子等の磁気センサで検出するようにしてもよいし、スプール7の側面に凹部若しくは凸部を形成しローラーレバー型マイクロスイッチで凹凸を検出してスプールの種類(ワイヤの種類)を判別するようにしてもかまわない。
【0018】また、上記表示手段4をスプール7の周面の一部に設けてもかまわない。
【0019】
【発明の効果】本発明によれば、鉄筋結束機にワイヤを巻装したスプールを装填し、トリガを引いてワイヤを空送りするだけで、ワイヤの種類を判別して自動的に捩りトルクを調整することができるので、ワイヤの種類に合わせて一々ダイヤルやスイッチで捩りトルクの変更を行う必要がなく、ワイヤの種類を頻繁に変える時にも捩りトルクの設定ミスや、変更操作忘れによるトラブルを回避することができ、安全で効率的な鉄筋の結束作業を行うことができる。」

イ 図3をみると、スプール7には、図中の左右両側端にフランジが設けられており、またワイヤが巻き付けられた部分は見えないが、支軸7a付近には、ワイヤが巻き付けられているハブ部が存在していることは、当業者にとって自明である。

ウ 上記アないしイからみて、引用例1には、
「スプール7に巻装されたワイヤ1を前方に送り出すワイヤ送り装置2と、送り出されたワイヤ1をループ状に巻き回すガイドアーム3と、巻き回されたワイヤ1の一部を把持して捩り締める捩り装置4と、元側のワイヤ1からループを分断する切断装置5とを備え、鉄筋a、bの結束時にトリガ8を引き操作することによりワイヤ送り装置2によりスプール7からワイヤ1が送り出され、ガイドアーム3によってループ状に巻き回された後、捩り装置4によりループの一部をフック9で掴んで捩り回転することにより結束するとともに、切断装置5により元側のワイヤ1からループを切断して分断する鉄筋結束機であって、
上記スプール7には、ワイヤを巻き付けたハブ部と、その両側にフランジを備え、該スプール7に巻装されたワイヤ1の種類(鉄、ステンレス等)や太さを示す表示手段Aが設けられ、上記鉄筋結束機には該表示手段Aを検出する検出手段Bと、該検出手段Bが検出した結果に基づいて上記捩じり装置の捩じりトルクを自動的に調整する制御手段Cとが設けられており、
上記表示手段Aはスプール7の一方の側面に貼着された反射シール10で構成され、この反射シール10はワイヤ1の種類に対応して支軸7aの中心からの距離をあらかじめ設定しておき同心円上に少なくとも1か所貼着されるものであって、
検出手段Bは、フォトセンサ(反射型フォトインタラプタ)11で構成され、上記スプール7を支持する支持部12の一方(上記反射シール10の貼着されたスプールの側面に対応する側)の内側面に配置され、このフォトセンサ11は上記スプール7を軸支する軸受13を中心に所定の距離に配置され、このフォトセンサ11の位置はスプール7に貼着されている反射シール10に対応するものであって、
制御手段Cは、マイクロプロセッサ(MPU)で構成され、内部メモリに記憶されているプログラムに基づいて上記フォトセンサ11の検出信号の有無を判断し、どのフォトセンサ11が反射シール10を検出したかにより、ワイヤ1の種類を判別し、電流制御回路14を制御して捩り装置4を駆動するモータ6に流れる電流を自動的に変えて、ワイヤ1に最適な捩りトルクで捩じり装置4が作動するように設けられており、
さらに、上記表示手段Aは反射シール10に限定されるものではなく、スプール7の側面に凹部若しくは凸部を形成しローラーレバー型マイクロスイッチで凹凸を検出してスプールの種類(ワイヤの種類)を判別するようにしてもよい、
鉄筋結束機にワイヤを巻装したスプールを装填し、トリガを引いてワイヤを空送りするだけで、ワイヤの種類を判別して自動的に捩りトルクを調整することができる鉄筋結束機。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。

(2)原査定の拒絶の理由に引用された「本願の遡及日前に頒布された刊行物である特開平10-150890号公報(以下「引用例2」という。)」には、次の事項が記載されている。

ア 「【0019】
【発明の実施の形態】
1.電動リールの構造
図1に、この発明の一実施形態である電動リール105の要部断面図を示す。電動リール105は、リール本体100、側板2a、2b、スプール3、モータ4、モータホルダ7、モータカバー6および減速器41を備えている。リール本体100、側板2a、2bなど、リール本体100およびリール本体100に対し固定的に配置された部材全体が、本体部に該当する。
【0020】リール本体100には、側枠102a、102bが一体に形成されている。側枠102aには、スプール3のフランジの外径よりも大きな開口部100aが設けられている。モータカバー6には、モータ4が取付けられている。モータ4は、モータホルダ7で覆われている。モータホルダ7にはモータカバー6が、ネジ12でネジ止め固定されている。モータカバー6は、側枠102aに形成された開口部100aと回り止め嵌合している。これにより、モータホルダ7は、モータカバー6を介して、側枠102aに固定される。
【0021】モータホルダ7の外径部には、ベアリング5の内輪が嵌合されている。ベアリング5の外輪は、スプール3と嵌合されている。これにより、スプール3の一端側は、モータ4が装着されたモータホルダ7に回転自在に保持されている。
【0022】スプール3の他端側には、減速器41が内蔵されている。減速器41は、減速器筐体であるギヤーボックス48で覆われている。このギヤーボックス48は、後述するように、スプール3と取外し自在に回り止め状態で係合する。
【0023】ギヤーボックス48は、ベアリング19を介して、側枠102bに回動自在に保持されている。これにより、スプール3は、一対の側枠102a、102b間にて回転自在に保持される。なお、減速器41のスプールシャフト42は、側枠102bに、抜け止め状態で嵌合されている。」

イ 「【0029】この状態から、さらにモータ4を矢印β方向に取り外し、スプール3をリール本体100の開口部100aから矢印β方向に抜き取る。スプール3は、内蔵された減速器41と離れて、リール本体100から離脱する。このようにして、側枠102aと側板2aに形成されたスプール3のフランジよりも大きな開口部100a、31から、モータ4およびスプール3を取り外すことができる。」

ウ 「【0033】また、スプール3の交換が容易であるので、数種類のラインを巻いた複数のスプールを予め用意しておくことだけで、釣種にあわせた釣糸を巻いたスプールに容易に交換できる。」

エ 「【0039】図4Aは、スプール3を、図1のV1から見た図である。ただし、図4Aにおいては、説明の便宜上、ギヤーボックス48の記載を省略している。スプール3は、ギヤーボックス48のピン嵌合部48aと係合する係合ピン3aを有している。
【0040】スプール3には、マグネットホルダー210が、着脱可能にねじ止めされている。マグネットホルダー210には、マグネット61を取り付けることができるマグネット取付け孔60が、複数個設けられている。この実施形態においては、マグネット取付け孔60を3つ設けている。3つのマグネット取付け孔60に、1?3個のマグネット61を、スプール3の種類に応じて装着しておく。
【0041】この実施形態においては、マグネット61は、マグネット取付け孔60に対し緩めに嵌着されている。したがって、マグネット61は、スプール3に対し着脱可能に保持されていることになる。このように、被検出要素を、スプール3に対し着脱可能に保持するよう構成すれば、スプール3を1種類用意するとともに、被検出要素の装着パターンを替えるだけで、複数の種類のスプールを実現することができるので好都合である。マグネット61が被検出要素に該当する。また、マグネットホルダー210に装着されているマグネット61全体が被検出部に該当する。
【0042】図2は、電動リール105を、図1のV2から見た部分断面図である。図2に示すように、リール本体100に対し固定的に設けられたコントロールボックス70には、リードスイッチ62が設けられている。リードスイッチ62は、マグネット61の回転通過軌跡212近傍に設けられる。リードスイッチ62が検出要素に該当するとともに、検出部に該当する。すなわち、この実施形態においては、1つの検出要素が検出部を構成している。また、コントロールボックス70が、スプール識別部に該当する。
【0043】スプール3を回転させ、埋め込まれているマグネット61をリードスイッチ62で検出することにより、後述するようにスプール3の種類を判断することができる。
【0044】この実施形態においては、スプール3に、回転量検出用のマグネット(図示せず)が、別途設けられている。また、リール本体100に対し固定的に、回転量検出用の一対のリードスイッチ(図示せず)が、別途設けられている。回転量検出用のマグネットの動きを、回転量検出用の一対のリードスイッチにより検出することで、スプール3の回転位置、回転方向、回転量等を知ることができる。回転量検出用のマグネット、回転量検出用の一対のリードスイッチ、および、該リードスイッチの出力信号を処理してスプール3の回転量を算出するコントロールボックス70が、回転量検出手段に該当する。
【0045】図10に示すコントロールボックス70には、釣糸繰り出し量や釣りモード等を表示する液晶ディスプレイ30、ONスイッチ74、モード切替えスイッチ71、アップダウンスイッチ72、OFFスイッチ73、標準スイッチ216、補正スイッチ82、および設定スイッチ80が設けられている。
【0046】ONスイッチ74は、電動巻取りを開始するためのモータ4の駆動スイッチである。モード切替えスイッチ71は、魚を取込む場合における巻上げモードである第1巻上げモードおよび仕掛けを巻取る場合における第2巻上げモードに移行するモード切替え信号を入力する為のスイッチである。
【0047】アップダウンスイッチ72は、巻上げ速度を調整する速度変更信号を出力するスイッチである。OFFスイッチ73は、モータ4の駆動を停止する停止信号を出力する。
【0048】設定スイッチ80は入力または設定された釣糸のデータとスプール回転量信号とによってスプールからの繰出し糸長を演算表示するモード(表示モード)、スプール判別して該当する演算基礎データの読み出しを行なうモード(判別読み出しモード)または釣糸のデータ入力または設定するモード(設定モード)の切り換えを行うボタンである。一回押すと設定モード、もう一度押すと判別読み出しモード、もう一度押すと表示モード、というように一回押すごとにモードが切り換えられる。設定モード状態のとき標準スイッチ216を押すことにより、装着されたスプールが標準スプールであることをCPUに知らせる。補正スイッチ82は後述する補正命令を与えるスイッチである。
【0049】図11に、コントロールボックス70をCPUで実現したハードウェア構成の一例を示す。コントロールボックス70は、CPU23、ROM25、RAM27、液晶ディスプレイ30、入出力インターフェイス22およびバスライン29を備えている。入出力インターフェイス22には、モータコントローラ26、ONスイッチ74、モード切替えスイッチ71、アップダウンスイッチ72、およびOFFスイッチ73が接続されている。モータコントローラ26には、スプール3を回転駆動するモータ4が接続される。
【0050】ROM25には、CPU23の制御プログラム等が記憶されており、CPU23は、この制御プログラムに従いバスライン29を介して、各部を制御する。CPU23が、演算手段に該当する。
【0051】RAM27には、後述する第1巻上モードにおける巻取設定速度データである速度設定値、演算基礎データ等の各種のデータが記憶される。RAM27が、演算基礎データ記憶手段に該当する。
【0052】液晶ディスプレイ30には、巻取速度、巻上モード、釣糸繰り出し量等が表示されるとともに、スプール番号が表示される。モータコントローラ26に回転制御信号が与えられることにより、モータ4が駆動され、スプール3の巻取制御がなされる。本実施形態においては、液晶ディスプレイ30が表示手段に該当する。」

オ 「【0053】2.電動リールの使用方法
次に電動リール105の使用方法について説明する。まず、演算基礎データを作成する手順について説明する。
【0054】演算基礎データとは、スプール3の累積回転量(累積回転数)に基づいて釣糸繰り出し量を演算する為のデータを全て含み、例えば、繰出し量を計算する計算式の係数である場合、これらの係数の基となる釣糸の太さ、長さ等である場合、また、前記計算式を求める為の釣糸巻取終端における最大巻取径、最大巻取糸長、または最大スプール回転量等であってもよく、さらに、前記計算式ではなく、糸長とスプール回転量との関係を、区分ごとに記憶したテーブルであってもよい。
【0055】演算基礎データの作成にあたり、操作者は、図1に示すように、まずスプール3の係合ピン3a(図4A参照)が、ギヤーボックス48のピン嵌合部48a(図3参照)に係合するよう、スプール3をリール本体100に挿入し、続いてモータホルダー7およびモータ4を挿入する。つぎに、リール本体100に開閉蓋35を取り付ける。そして設定スイッチ80(図10参照)を押して、設定モードとした後、スプール3を回転させ、所望量の釣糸をスプール3に巻取る。これにより演算基礎データ作成が可能となる。
【0056】演算基礎データの作成について図12を用いて説明する。CPU23は、まず、スプール3の種類の判別処理を行う(ステップST3)。本実施形態においては、設定モードにした後のスプール3の最初の数回転で、スプール3の種類を識別するよう構成している。
【0057】回転量検出用のリードスイッチ(図示せず)からの出力信号(a)とリードスイッチ62からの出力信号(b)は、図5Aのようになる。出力信号(a)の(イ)から(ロ)までが、スプール3の1回転に相当する。
【0058】CPU23は、(イ)から(ロ)までの間における出力信号(b)を監視しており、出力信号(b)における矩形部(ホ)の数に基づいて、スプール3の種類を識別し、スプール3の種類に対応したスプール番号(スプール識別信号)を生成する。したがって、図4A,4B,4Cに示すように、スプールの種類に応じて、3つのマグネット取付け孔60にはめ込むマグネット61の数を替えることで、スプールを識別することができる。」

カ 「【0086】3.他の実施形態
なお、上記実施形態では、演算基礎データのみをRAM27に記憶するようにしているが、当該スプールに巻き取られている糸のデータ(号数、種類等のデータ、また糸長等のデータ)も操作者に判断補助データとして入力させるようにしてもよい。これにより、操作者がスプールを選定する際に、かかる判断補助データを、液晶ディスプレイ30に表示できる。したがって、スプール交換の時に複数種類のスプールのいずれを用いるかの選択間違を防止することができる。」

キ 「【0094】また、上記実施形態においては、スプールの種類判別をマグネットとリードスイッチとを用いて行ったが、マグネットとホール素子を用いてもよい。また、光センサによりスプールの外側面に配置された反射板やバーコードの状況を検出してもよい。また、スプールに金属片を装着し、金属片の装着パターンを近接スイッチを用いて検出するよう構成することもできる。さらに、突起等の係合状態で接触させて判断する他、公知の識別手段を用いることができる。」

ク 上記アないしキからみて、引用例2には、
「リール本体100、側板2a、2b、スプール3、モータ4、モータホルダ7、モータカバー6および減速器41を備えている電動リール105において、
スプール3は、リール本体100に一体に形成された一対の側枠102a、102b間にて回転自在に保持され、側枠102aと側板2aに形成されたスプール3のフランジよりも大きな開口部100a、31から取り外すことができるので、スプール3の交換が容易となって、数種類のラインを巻いた複数のスプールを予め用意しておくことだけで、釣種にあわせた釣糸を巻いたスプールに容易に交換できるものであって、
スプール3には、マグネットホルダー210が、着脱可能にねじ止めされ、マグネットホルダー210には、マグネット61を取り付けることができるマグネット取付け孔60が、3つ設けられ、3つのマグネット取付け孔60に、1?3個のマグネット61を、スプール3の種類に応じて装着しておくもので、マグネットホルダー210に装着されているマグネット61全体が被検出部に該当し、マグネット61が被検出要素に該当し、
リール本体100に対し固定的に設けられたコントロールボックス70は、CPU23、ROM25、RAM27、液晶ディスプレイ30、入出力インターフェイス22およびバスライン29が備え、さらにリードスイッチ62が設け、リードスイッチ62は、マグネット61の回転通過軌跡212近傍に設けられて、リードスイッチ62が検出要素に該当するとともに検出部に該当し、1つの検出要素が検出部を構成し、また、コントロールボックス70が、スプール識別部に該当し、
スプール3を回転させ、埋め込まれているマグネット61をリードスイッチ62で検出することにより、スプール3の種類を判断することができるものであって、
スプール3に、回転量検出用のマグネットが別途設けられ、また、リール本体100に対し固定的に、回転量検出用の一対のリードスイッチが別途設けられて、回転量検出用のマグネットの動きを、回転量検出用の一対のリードスイッチにより検出することで、スプール3の回転位置、回転方向、回転量等を知ることができるもので、回転量検出用のマグネット、回転量検出用の一対のリードスイッチ、および、該リードスイッチの出力信号を処理してスプール3の回転量を算出するコントロールボックス70が、回転量検出手段に該当し、
CPU23は、スプール3の1回転に相当する回転量検出用のリードスイッチからの出力信号(a)の間における、リードスイッチ62からの出力信号(b)を監視しており、リードスイッチ62からの出力信号(b)における矩形部(ホ)の数に基づいて、スプール3の種類を識別し、スプール3の種類に対応したスプール番号(スプール識別信号)を生成するので、スプールの種類に応じて、3つのマグネット取付け孔60にはめ込むマグネット61の数を替えることで、スプールを識別することができ、
RAM27には、当該スプールに巻き取られている糸のデータ(号数、種類等のデータ、また糸長等のデータ)も操作者に判断補助データとして入力させて、操作者がスプールを選定する際に、かかる判断補助データを、液晶ディスプレイ30に表示でき、
スプールの種類判別を、光センサによりスプールの外側面に配置された反射板やバーコードの状況を検出してもよく、またスプールに金属片を装着し、金属片の装着パターンを近接スイッチを用いて検出するよう構成することもでき、さらに、突起等の係合状態で接触させて判断する他、公知の識別手段を用いることができる電動リール。」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認める。

4 対比
本願発明と引用発明1を対比する。
(1)引用発明1の「ワイヤ1」,「スプール7」,「『凹部若しくは凸部』である『表示手段A』」及び「ローラーレバー型マイクロスイッチ」は、それぞれ本件補正発明の「鉄筋結束用のワイヤ」,「ワイヤリール」,「凸部又は凹部である第1の被検出部」及び「接触式センサである第1の検出手段」に相当する。

(2)引用発明1において、「鉄筋結束機」が「結束機本体」を有していることは自明であって、「スプール7」は支持部12により支持されているから、引用発明1と本件補正発明は、「結束機本体にワイヤリールを装着した鉄筋結束機」で一致している。

(3)引用発明1の「ローラーレバー型マイクロスイッチ」は、本件補正発明の「検出装置」にも相当している。

(4)引用発明1の「スプール7」の「ハブ部」には、「ワイヤ1」が巻き付けられ、「スプール7」の両側には「フランジ」を備えているので、引用発明1の該スプール7に係る構成と本件補正発明の「鉄筋結束用のワイヤをハブ部に巻き付け両側にフランジを備えたワイヤリール」とは、「鉄筋結束用のワイヤをハブ部に巻き付け両側にフランジを備えたワイヤリール」で一致している。

(5)引用発明1の鉄筋結束機は、鉄筋a、bの結束時にトリガ8を引き操作することによりワイヤ送り装置2によりスプール7からワイヤ1が送り出され、ガイドアーム3によってループ状に巻き回された後、捩り装置4によりループの一部をフック9で掴んで捩り回転することにより結束するものであるので、引用発明1の該鉄筋結束機に係る構成と本件補正発明の「ワイヤを鉄筋の周囲に巻き回した後に捩って鉄筋を結束する鉄筋結束機」とは、「ワイヤを鉄筋の周囲に巻き回した後に捩って鉄筋を結束する鉄筋結束機」で一致している。

(6)引用発明1の「凹部若しくは凸部」は、「スプール7」の側面、つまりスプール7のフランジの外側面に形成されるものであるから、引用発明1の該凹部若しくは凸部に係る構成と本願補正発明の「フランジ凹部の外側に形成される凹部又は凸部である第1の被検出部」とは、「フランジの外側面に形成される凹部又は凸部である第1の被検出部」で共通している。

(7)引用発明1の「ローラーレバー型マイクロスイッチ」は、凹凸を検出するものであることからすると、弾性体で付勢されていることは当業者にとって自明であるので、引用発明1の該ローラーレバー型マイクロスイッチに係る構成と本件補正発明の「弾性部材で付勢された接触式センサ」とは、「弾性部材で付勢された接触センサ」で一致している。

(8) 上記(1)ないし(7)からみて、本件補正発明と引用発明1とは、
「結束機本体に、鉄筋結束用のワイヤをハブ部に巻き付け両側にフランジを備えたワイヤリールを装着し、前記ワイヤを鉄筋の周囲に巻き回した後に捩って前記鉄筋を結束する鉄筋結束機において、
フランジの外側面に凸部又は凹部である第1の被検出部が形成された前記ワイヤリールを検出する検出装置が設けられ、
前記検出装置は、
前記ワイヤリールの前記第1の被検出部を検出する、弾性部材で付勢された接触式センサである第1の検出手段からなる鉄筋結束機。」である点で一致し、次の3点で相違している。

相違点1:
ワイヤリールを、本件補正発明は、「結束機本体に設けられた収納室に装着し」ているのに対し、引用発明1では、結束機本体に装着しているが、収納室かどうか不明な点。

相違点2:
本件補正発明は、「ワイヤリールの略中央にフランジ凹部が形成され」ているのに対し、引用発明1は、フランジ凹部が形成されているかどうか不明な点。

相違点3:本願補正発明は、
「ワイヤリールには、
フランジ凹部の外側に第1の被検出部が形成され、フランジに第2の被検出部が形成され、
検出装置は、
ワイヤリールの回転量を検出する第1の検出手段と、ワイヤリールの第2の被検出部の数を検出する第2の検出手段とからなり、
第1の検出手段によって検出されたワイヤリールの回転量の間の第2の被検出部の数を第2の検出手段が検出する」のに対し、
引用発明1は、
ワイヤリールにおいて、
第1の被検出部が形成されるのは、フランジの外側面であり、さらに第2の被検出部は形成されておらず、
検出装置は、
第1の検出手段が、ワイヤリールの回転量を検出するものではなく、
第2の検出手段が設けられておらず、
そして、第1の検出手段によって検出されたワイヤリールの回転量の間の第2の被検出部の数を第2の検出手段が検出するものでもない点。

5 判断
上記相違点1及び2について検討する。

(1)相違点1について
ア 結束機において、結束材を結束機本体内に収納すること、つまりは結束機本体内の収納室に結束材を収納することは、本願遡及日前に周知の技術である(以下「周知技術1」という。例:実願平5-45776号(実開平7-15502号)のCD-ROM(【0022】、【図4】)、特開昭53-27544号公報(4頁左上欄1?3行、第11図)参照。)。

イ 上記アからみて、引用発明1の結束機本体に収納室を設けて、当該収納室にワイヤリールを装着すること、つまりは上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、上記周知技術1に基いて当業者が適宜なし得たことである。

(2)相違点2について
ア 結束機のワイヤリールの少なくとも一方のフランジの略中央にフランジ凹部を形成することは、本願遡及日前に周知の技術である(以下「周知技術2」という。例:実願平5-26188号(実開平6-80766号)のCD-ROM(各図面の軸穴4,4’付近)、特開平9-240927号公報(軸支部15及び側面凹部17)参照。)。
イ 上記アからみて、引用発明1のワイヤリールの略中央にフランジ凹部を形成すること、つまりは上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、上記周知技術2に基いて当業者が適宜なし得たことである。

(3)相違点3について
ア 引用例2には、上記3(2)クのとおり、引用発明2が記載されている。

イ ここで、引用発明2は、「回転量検出用のマグネット」の動きを「回転量検出用の一対のリードスイッチ」により検出することで、スプール3の回転量を知ることができ、さらにスプール3の1回転の間における「マグネット61」を検出した「リードスイッチ62」からの出力信号(b)を監視して、出力信号(b)における矩形部(ホ)の数に基づいてスプール3の種類を識別し、さらにスプールに巻き取られている糸のデータ(号数、種類等のデータ)を判断しているものであって、スプールの種類判別を、光センサによりスプールの外側面に配置された反射板やバーコードの状況を検出してもよく、またスプールに金属片を装着し、金属片の装着パターンを近接スイッチを用いて検出するよう構成することもでき、さらに、突起等の係合状態で接触させて判断する他、公知の識別手段を用いることができることからすると、引用発明2において、「回転量検出用のマグネット」や「マグネット61」に替えて用いられた「突起等」は、本件補正発明の「凸部である第1の被検出部」や「第2の被検出部」に、同じく「回転量検出用の一対のリードスイッチ」や「リードスイッチ62」に替えて用いられた「突起等の係合状態で接触させて判断する識別手段」は本件補正発明の「第1の検出部」や「第2の検出部」に相当するといえる。

ウ 引用発明2において、スプールの種類判別に用いる「反射板やバーコード」がスプール外側面に配置されていることからすると、「突起等」の装着位置もスプールの外側面を選択可能であるものと認められる。
また、引用発明2の「スプール3」と本件補正発明の「ワイヤリール」とは、「リール」である点で共通している。

エ よって上記イ及びウからすると、引用発明2は、「リール外側面に凸部である第1の被検出部が形成され、さらにリール外側面に第2の被検出部が形成されたリールを検出する検出装置が設けられ、
検出装置は、
リールの第1の被検出部を検出することによってリールの回転量を検出する接触式センサである第1の検出手段と、
リールの第2の被検出部の数を検出する第2の検出手段からなり、
第1の検出部によって検出されたリールの回転量の間の第2の被検出手段の数を第2の検出手段が検出する」発明ともいえる。

オ 引用発明1は鉄筋結束機であるのに対し、引用発明2は電動リールであって、さらにリールに巻かれているものもそれぞれ鉄筋結束用のワイヤと釣糸との違いはあるものの、両発明とも交換可能なリールの種類を判別し、さらにリールに巻かれているものの種類を判別するという共通の課題を有している。
とすれば、引用発明1に引用発明2を適用することに格別の困難性は無い。

カ ここで引用発明2において、第1の検出手段及び第2の検出手段が設けられるのはリールの外側面である。この引用発明2のリールの外側面は、引用発明1でいえば、ワイヤリールのフランジの外側面にあたる。
そして上記(2)から、結束機のワイヤリールの少なくとも一方のフランジの略中央にフランジ凹部を形成することは適宜なし得たことであることも加味すると、引用発明1に引用発明2を適用する際に、第1の被検出部と第2の被検出部を設ける位置を、引用発明1のフランジにおけるフランジ凹部の外側とすることは、引用発明2及び上記(2)からみて、当業者ならば当然選択するであろう事項に過ぎないことである。

キ 上記アないしカからみて、引用発明1を上記相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、引用発明2に基づいて当業者ならば容易になし得たことである。

(4)効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明1及び引用発明2の奏する効果、周知技術1及び周知技術2の奏する効果から当業者が容易に予測できたものである。

(5)回答書の主張について
請求人は平成25年1月11日付け回答書において、
「(2-6)前置報告書には、『(引用文献1の)段落[0017]には、検出手段として、磁気センサや、凹部や凸部を検出するローラーレバー型マイクロスイッチが記載されている。(引用文献2の)段落[0094]には、光センサ、近接センサ、突起等の係合状態で接触させて判断する手段が記載されている。』とある。しかし、この接触式センサについての開示はこの部分のみである。引用文献1には、上記記載しかなく、ワイヤリールの回転時に接触式センサがワイヤリールの凸部又は凹部に弾性部材によって付勢されて接触することによって、ワイヤリールの振ら付きを抑える機能について一切記載されていない。また、引用文献2にも、上記記載しかなく、釣り具のスプールで軽量であるため、重量による振ら付きを想定しなくても良いので、弾性部材によって付勢された接触式センサの接触によりスプールの振ら付きを抑える機能について一切記載されていない。
(2-7)本願発明1は、鉄筋を結束するためのワイヤを巻き付けたワイヤリ-ルが重たいため、ワイヤリ-ル回転時の傾きが大きくなる可能性があり、ワイヤリールの回転時の傾きによる振ら付きや、振動等による振ら付きが発生する可能性がある。しかし、本願発明1は、この振ら付きがあったとしても、弾性部材によって付勢された接触式センサが、ワイヤリールの回転時に傾かないようにガイドする押さえとしての機能をも発揮するので、ワイヤリールの回転時の振らつきを抑えることができ、さらに接触センサが弾性部材によってワイヤリールの凸部又は凹部の第1の被検出部に接触しながら検出するため誤検出を防止することができる。さらに、本願発明1は、フランジの外側になるとワイヤリール回転時の振ら付きが大きくなるが、フランジ凹部の外側に大きな領域を確保できる第1の被検出部を設けることができるので、この振ら付きを弾性部材によって付勢された接触式センサが接触して抑えることができ、上記したように誤検出を防止して、検出の信頼性を高めることができる。」と記載して、弾性部材で付勢された接触式センサを設けたことによる効果等を主張している。
しかしながら、本願補正発明は、弾性部材によって付勢された接触式センサを用いてはいるが、当該接触式センサが常時ワイヤリールを押さえていることの限定がないことから、例えば、接触式センサが、被検出部と当設したときのみ接触して、それ以外のときはワイヤリールから離れている形態をも含むものであるので、本件補正発明の接触式センサが、ワイヤリールの回転時の振ら付きを押さえることができるとの効果を奏するとは認められない。
また、「フランジの外側になるとワイヤリール回転時の振ら付きが大きくなる」との課題を挙げてるが、本願補正発明の「フランジ凹部の外側」も、凹部が存在しないフランジの側面全体を指し、フランジ側面の外端近傍まで含むものである。とすれば、本願補正発明において、第1の被検出部を形成する場所を、フランジ凹部の外側に限定することによって、接触式センサでより効率的にワイヤリールを押さえることができかどうかは不明である。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件補正発明は、当業者が引用例1及び引用例2に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 小括
以上のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし12に係る発明は、平成23年5月2日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2〔理由〕1(1)」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2〔理由〕3」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、上記「第2〔理由〕1(2)」のとおり、本願発明の発明特定事項を限定したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2〔理由〕5」に記載したとおり、当業者が引用例1及び引用例2に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用例1及び引用例2に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基いて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例1及び引用例2に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-10 
結審通知日 2013-05-13 
審決日 2013-06-12 
出願番号 特願2008-188593(P2008-188593)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04G)
P 1 8・ 575- Z (E04G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新田 亮二  
特許庁審判長 高橋 三成
特許庁審判官 中川 真一
住田 秀弘
発明の名称 鉄筋結束機、ワイヤリール及びワイヤリールの識別方法  
代理人 高田 修治  

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