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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01G |
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管理番号 | 1277386 |
審判番号 | 不服2012-865 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-01-17 |
確定日 | 2013-07-31 |
事件の表示 | 特願2009-111750号「重金属含有土壌における作物栽培方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月17日出願公開、特開2009-291190号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成21年5月1日(優先権主張平成20年5月8日)の出願であって、平成23年10月11日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、平成24年1月17日に本件審判が請求されるとともに、審判請求と同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成24年1月17日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年1月17日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の請求項1に記載された発明 本件補正により、特許請求の範囲の【請求項1】は、 「スギ皮裁断物を主成分として、発酵促進用の有効土壌菌類群を添加し、発酵温度60?80℃を維持させながら、且つ適時加水を行なって含水率を約40?50%の範囲を維持させて48?72時間の発酵処理を行って製出したバーク堆肥を、土壌に対して適宜量混入して作物を栽培してなることを特徴とする重金属含有土壌における作物栽培方法。」 と補正された。 上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である発酵処理して製出したバーク堆肥について、「発酵促進用の有効土壌菌類群を添加し、発酵温度60?80℃を維持させながら、且つ適時加水を行なって含水率を約40?50%の範囲を維持させて48?72時間の発酵処理を行って製出したバーク堆肥」と限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 2.引用刊行物とその記載事項 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-346555号公報には、緑化基盤材に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】焼却灰と、 重金属を吸着する有機系の孔質吸着材とを主材として構成することを特徴とする、 緑化基盤材。 ・・・ 【請求項3】請求項1又は請求項2に記載の緑化基盤材において、多孔質吸着材がバーク堆肥、ピートモス、ベントナイトの単一又は複数の組み合わで構成する構成することを特徴とする、緑化基盤材。」 (イ)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は緑化を目的とした厚層基材吹付工法や客土吹付工法に用いられる緑化基盤材に関し、より詳細には下水汚泥の焼却灰(以下「焼却灰」という)の有効活用を図る緑化基盤材に関する。」 (ウ)「【0002】 【従来の技術】焼却灰に多量に含まれるリンや窒素等に着目し、焼却灰を肥料材料として有効活用することが特開平9-328385号公報に開示されている。焼却灰には植物成育に望ましい肥料成分が含まれている反面、重金属が微量含まれることが知られている。 ・・・ 【0004】データの最大値をとれば、概ね産廃基準を満たしているものの、As,Seについては排水基準及び土壌環境基準を上回る傾向にあることが判明した。このなかで土壌環境基準が数値的に最も厳しいが、この基準を満たせば一般の良質土砂と同様に用いることができる。」 (エ)「【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは、重金属の影響を回避し、環境に優しく安全性の高い緑化基盤材を提供することにある。」 (オ)「【0009】 【発明の実施の形態1】以下、発明の実施の形態の一例について説明する。 【0010】〈イ〉緑化基盤材 本発明は焼却灰を主材とし、これに多孔質吸着材を配合して緑化基盤材を構成する。緑化基盤材は少なくとも上記二つ配合要素を含むものであればよく、その他の配合要素については用途や植生植物の種類、植生環境、施工方法等を考慮して適宜選択する事項のものである。 【0011】〈ロ〉多孔質吸着材 多孔質吸着材は例えば樹皮を堆肥化して成熟させたバーク堆肥、ミズゴケを腐食化したピートモス及びベントナイトを含み、これらの単一又は複数の組み合わよりなる。 【0012】一般にバーク堆肥やピートモスは緑化基盤材の肥料成分として用いられてきたが、重金属(Cd,Pb,Cr(VI),As,Hg,Se,Cu等)を積極的に吸着して溶出抑制する原材料として用いることは知られておらず、またこの目的で実施された事実もない。 【0013】バーク堆肥やピートモス或いはベントナイトは多孔質であり、上記した重金属を吸着して保持する性質の点で優れている。多孔質吸着材は重金属をイオンにより吸着保持できる多孔質性の部材であればよく、例示したバーク堆肥、ピートモス、ベントナイトに限定されるものではない。」 (カ)「【0024】 【発明の実施の形態3】〈イ〉バーク堆肥及びピートモス単独の重金属吸着能について 焼却灰を主材料とする緑化基盤材に混合するバーク堆肥及びピートモスが重金属を吸着する性能について以下のような実験を行った。」 (キ)記載事項(ア)の「緑化基盤材」は、記載事項(イ)の「緑化を目的とした厚層基材吹付工法や客土吹付工法に用いられる」ものであって、緑化植物を生育させるためのものであることが自明であり、緑化基盤材の用法から見ると、当該緑化基盤材を用いて緑化植物を生育する方法ということができる。 すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものということができる。 「焼却灰と、重金属を吸着する樹皮を堆肥化したバーク堆肥とを主材として構成する緑化基盤材を用いて緑化植物を生育する方法。」 (2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である国際公開第99/55834号(以下「刊行物2」という。)には、ダイオキシン分解能を有する堆肥の製造方法に関し、次の技術的事項が記載されている。 (ア)「〔実施例1〕 ・・・ (3)堆肥の製造 堆肥原料として、杉の樹皮を粉砕機により粉砕した樹皮粉砕物100重量部に対して、牛糞10重量部と硫安肥料1重量部の割合で使用した。これら原料の総量は、40m^(3)であった。屋根付きの堆肥化場に、樹皮粉砕物と、牛糞および硫安肥料とを交互に積層して、その発熱発酵を開始した。発熱発酵を開始して2日後には、この発酵物の中心部の温度は、52℃に昇温していた。そして、発酵開始から4日後には、発酵物の中心部温度は69℃に達した。そこで、発酵開始後は1週間に1度の頻度で、発酵物の切り返しを行った。この切り返しの直後には、散水をして水分の補給をした。 このようにして発酵開始から9週間を経過すると、発熱が終息し、発酵物の中心部温度が45℃まで降温した。そこで、この発酵物に、上記(2)で得られた糸状菌の培養物1kgを接種した。この糸状菌の培養物を接種した直後は、50℃まで温度が上昇したが、その後は徐々に下降して、12週間後には38℃になった。 このようにして得られた堆肥中の糸状菌の濃度は、第1表に示すとおりであった。なお、第1表に示した菌濃度は、堆肥乾燥重量1gあたりのコロニー形成単位(cfu)数を示す。」(第11頁第7行?第12頁第19行) (3)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平2-289481号公報(以下「刊行物3」という。)には、杉・桧樹皮等の爆砕処理方法及び処理物に関し、次の技術的事項が記載されている。 (ア)「(産業上の利用分野) この発明は、杉・桧の樹皮等を爆砕処理し、これを醗酵させることにより、特殊肥料又は土壌改良材を得ることを目的とした杉・桧樹皮等の爆砕処理方法及び処理物に関するものである。 (従来の技術) 従来、杉・桧等の長繊維樹皮を処理するには、円筒状の回転ドラムとカッターによって粉砕処理する方法が提案されている(特公昭62-8283号)。」(第1頁右下欄第8?17行) (イ)「(発明により解決すべき課題) 前記従来の方法によれば、長繊維を粉砕化することはできるけれども、これに含まれたリグニンを除去することはできないし、ヘミセルロースの可溶化などは困難である。従って、前記粉砕物に微生物又は酵素等を作用させても醗酵分解が困難であり、分解される場合であっても極めて長時間(例えば3年以上)を要する問題点があった。 (課題を解決する為の手段) 然るにこの発明は、杉・桧等、針葉樹の樹皮又は木質部の単独又は混合物を高圧・高温の飽和水蒸気下で爆砕することにより、ヘミセルロース及びリグニンがヘミセルロースのアセチル基から生成する酢酸の触媒作用により、組織中のヘミセルロース及びリグニンが自己加水分解を受けて可溶化すると共に、樹皮等の組織が分離し、微生物又は微生物及び酵素による分解が容易となり、短時間(例えば3ケ月以内)の醗酵が容易となったのである。」(第1頁右下欄第18行?第2頁左上欄第16行) (ウ)「(作用) この発明によれば、杉・桧の樹皮等を高温・高圧下で爆砕処理するので、樹皮に含まれた不溶性物質又は微生物等の繁殖を妨害する物質を可溶化又は分解することができる。前記爆砕処理した物に微生物又は酵素を添加することによって容易に醗酵し、有用物質に変化させることができる。 (実施例1) 杉の樹皮15kgを爆砕装置に入れてゲージ圧力25kg/cm^(2)、蒸煮温度約220℃の飽和水蒸気で10分間処理する。この爆砕処理により約20%(乾燥重量)が蒸気側に分解され(揮発成分)、残りの処理物12kg(約80%)ができる。この処理物は樹皮が綿のごとく繊維化して軟化しているのみならず、リグニン及びセルローズが自己加水分解を受けて可溶化している。 前記処理物50kg(水分50%)に、乾燥鶏糞を5kg(20%乾物当り)加え、更に少量の尿素を加えて炭素率(C/N比)を20に調整し、水20kgを加え(水分60%にする)均一に撹拌して、醗酵槽(200l)内に静置したところ、醗酵を開始した。醗酵温度は徐々に上昇し、7日目に最高の62℃となった。その後、切り返し90日間醗酵して得た処理物を0.25?1.5%混合土壌を用いて、小松菜及び麦による発芽試験を実施したところ、阻害性も認められず、比較区と比し、生育が良好となり土壌改良材として好適と認められた。」(第2頁左下欄第14行?右下欄第20行) 3.本願補正発明と引用発明との対比 (1)両発明の対応関係 (a)引用発明の「焼却灰」と、本願補正発明の「土壌」とは、共に植物を生育する基材であるので、植物を生育する基材である点で共通する。 さらに、引用発明の「焼却灰」と、本願補正発明の「重金属含有土壌」とは、前者が、刊行物1の記載事項(ウ)の「重金属が微量含まれることが知られている」ものであるので、重金属を含有した植物を生育する基材である点で共通する。 (b)引用発明の「樹皮を堆肥化したバーク堆肥」と、本願補正発明の「スギ皮裁断物を主成分として、発酵促進用の有効土壌菌類群を添加し、発酵温度60?80℃を維持させながら、且つ適時加水を行なって含水率を約40?50%の範囲を維持させて48?72時間の発酵処理を行って製出したバーク堆肥」とは、樹皮を主成分として、堆肥化したバーク堆肥で共通する。 (c)引用発明の「緑化基盤材を用いて緑化植物を生育する方法」と、本願補正発明の「作物を栽培してなる」こと、及び、「作物栽培方法」とは、植物を生育すること、及び植物を生育する方法で共通する。 (d)そして、引用発明の「焼却灰と、重金属を吸着する樹皮を堆肥化したバーク堆肥とを主材として構成する緑化基盤材を用いて緑化植物を生育する方法」と、本願補正発明の「スギ皮裁断物を主成分として、発酵促進用の有効土壌菌類群を添加し、発酵温度60?80℃を維持させながら、且つ適時加水を行なって含水率を約40?50%の範囲を維持させて48?72時間の発酵処理を行って製出したバーク堆肥を、土壌に対して適宜量混入して作物を栽培してなる」「重金属含有土壌における作物栽培方法」とは、前者の「緑化基盤材」の「焼却灰」と「バーク堆肥」とが、例えば、刊行物1の記載事項(オ)に「本発明は焼却灰を主材とし、これに多孔質吸着材を配合して緑化基盤材を構成する」と記載されているように、配合したものであり、一方を他方に適宜量混入したものといえるものであるので、両者は、樹皮を主成分として、堆肥化したバーク堆肥を、植物を生育する基材に対して適宜量混入して植物を生育する重金属を含有した植物を生育する基材における植物を生育する方法で共通する。 (2)両発明の一致点 「樹皮を主成分として、堆肥化したバーク堆肥を、植物を生育する基材に対して適宜量混入して植物を生育する重金属を含有した植物を生育する基材における植物を生育する方法」 (3)両発明の相違点 ア.植物を生育する基材が、本願補正発明は、「土壌」であるのに対して、引用発明は「焼却灰」である点。 イ.樹皮が、本願補正発明は、「スギ皮裁断物」であるのに対して、引用発明はそのようなものであるか不明な点。 ウ.バーク堆肥が、本願補正発明は、「発酵促進用の有効土壌菌類群を添加し、発酵温度60?80℃を維持させながら、且つ適時加水を行なって含水率を約40?50%の範囲を維持させて48?72時間の発酵処理を行って製出した」ものであるのに対して、引用発明は「堆肥化」の具体的手法が不明な点。 エ.植物の生育目的が、本願補正発明は、「作物を栽培してなる」「作物栽培」であるのに対して、引用発明は「緑化植物」の生育である点。 4.本願補正発明の容易推考性の検討 (1)相違点ア.について 植物を生育する基材として、所謂「土」で代表される「土壌」は、例示するまでもなく代表的なもので有る。 そして、引用発明の焼却灰が、刊行物1の記載事項(イ)に「客土吹付工法に用いられる緑化基盤材に関し、より詳細には下水汚泥の焼却灰(以下「焼却灰」という)の有効活用を図る」と、記載事項(ウ)に「一般の良質土砂と同様に用いることができる」と、通常の土と同様に植物を生育する基材として用いられるものであること、さらに、該所謂「土」で代表される「土壌」においても、引用発明の焼却灰と同様に、重金属が含まれる可能性が存在し、記載事項(エ)の「重金属の影響を回避」することが望ましいことが変わるものでないことを考慮すると、引用発明の植物を生育する基材である「焼却灰」にかえて、代表的な土等の「土壌」として、相違点ア.に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 (2)相違点イ.について バーク堆肥の原料としてスギ皮裁断物は、例えば、刊行物2記載事項(ア)や刊行物3記載事項(ア)に記載されているように周知慣用のものであり、引用発明のバーク堆肥の原料となる「樹皮」として、該周知のスギ皮裁断物を用いて、相違点イ.に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 (3)相違点ウ.について ア.まず、堆肥化において、処理期間を可及的に短縮化することは、例えば、刊行物3記載事項(イ)に「前記従来の方法によれば・・・長時間(例えば3年以上)を要する問題点があった。」と、他にも特開平7-39848号公報、特許2663242号公報、再公表特許WO00/64603、特開平8-103751号公報に「堆肥化の促進」等と記載されている様に代表的な要求事項であり、引用発明のバーク堆肥においても処理期間の短縮が望ましいことに変わりはない。 イ.そして、堆肥化期間短縮手法として、予め有効土壌菌類等の発酵促進用の菌を添加すること(例えば、上記特開平7-39848号公報【0010】「温水循環ポンプ23aを介して85度程度の温水が温水ボイラー23bから温水ジャケット24に供給されて、発酵処理槽5内の温度が60度乃至85度程度に温められて高温で活動する放線菌が活動し生ゴミの肥料化を促進する。すなわち、発酵処理槽5内では、微生物供給部7から生ゴミに混合するように投入される放線菌からなる微生物6が発酵処理槽5内で60度以上に温められると、生ゴミの発酵処理を開始するため、極めて衛生的な生ゴミの発酵処理が行えることになる。」等参照)、適切な発酵温度を維持すること(同じく、上記例示参照)、適切な含水率を維持すること(例えば、刊行物3記載事項(ウ)「水20kgを加え(水分60%にする)均一に撹拌して、醗酵槽(200l)内に静置したところ、醗酵を開始した。」や、上記特許2663242号公報【0002】「従来、有機質廃棄物に好気性高温菌を加え、発酵槽中で加温、撹拌してこの種微生物の最適活動環境を保持して発酵を促進させ、堆肥化や飼料化する方法が行われているが・・・最適な水分率である60%を越えると発酵菌の活動が阻害され、本来の高速発酵が不可能になるので、処理槽に投入する前に前処理機による水分調整をしていた。・・・含水率を50%?60%に強制脱水していた。」等参照)は周知のものである。 ウ.さらに、含水率調整手段としての加水(上記刊行物3記載事項(ウ)参照)も周知慣用手段である。 エ.そうすると、引用発明の堆肥化を、上記周知慣用の手法を用いて、処理期間を可及的に短縮化したものとすると共に、発酵温度、含水率、発酵期間を適宜選択して、相違点ウ.に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 オ.なお、本願明細書を見ても、本願発明が、バーク堆肥として、相違点ウ.に係る手法で製造されたものを選択したことにより、本願発明の目的である重金属取り込み抑制に関して、引用発明から予期しがたい格別の効果が生ずる様なものであるとは認められない。 また、発酵温度としての「60?80℃」、発酵処理時の含水率としての「約40?50%」、発酵処理期間としての「48?72時間」も、それぞれ上記特開平7-39848号公報に「60度」、上記特許2663242号公報に「50%」、上記再公表特許WO00/64603第13頁に「木の葉や小木片、小枝は3?7日」が例示されている様に特別なものでもない。 (4)相違点エ.について 植物の生育の目的として、作物栽培は、例示するまでもなく代表的なもので有り、引用発明の育成する植物である「緑化植物」を「作物」として、相違点エ.に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 なお、引用発明の「重金属の影響を回避」は、作物栽培においても望まれることである。 (5)総合判断 そして、本願補正発明の作用効果は、引用発明、刊行物2、3記載の事項、及び当業者に周知の事項から当業者であれば予測できた範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2、3記載の事項、及び当業者に周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成24年1月17日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。 「スギ皮裁断物を主成分として発酵処理して製出したバーク堆肥を、土壌に対して適宜量混入して作物を栽培してなることを特徴とする重金属含有土壌における作物栽培方法。」 2.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1?3とその記載事項は、前記の「第2 2.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明の構成を全て含むとともに、本願発明の構成に更に限定を付加した本願補正発明が、前記「第2」の「3.」、「4.」に記載したとおり、引用発明、刊行物2、3記載の事項、及び当業者に周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も本願補正発明と同様の理由により、引用発明、刊行物2、3記載の事項、及び当業者に周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび したがって、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-05-22 |
結審通知日 | 2013-05-28 |
審決日 | 2013-06-11 |
出願番号 | 特願2009-111750(P2009-111750) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A01G)
P 1 8・ 121- Z (A01G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坂田 誠 |
特許庁審判長 |
中川 真一 |
特許庁審判官 |
住田 秀弘 筑波 茂樹 |
発明の名称 | 重金属含有土壌における作物栽培方法 |
代理人 | 近藤 彰 |
代理人 | 近藤 彰 |
代理人 | 近藤 彰 |