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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  C11D
審判 全部無効 2項進歩性  C11D
管理番号 1277543
審判番号 無効2011-800146  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-08-25 
確定日 2013-08-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第3927623号「洗浄剤組成物」の特許無効審判事件についてされた平成24年 5月 7日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成24年(行ケ)第10221号平成25年 2月27日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第3927623号の請求項1?9に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3927623号は、平成 8年 8月 1日(特願平8-203811号)に出願され、平成19年 3月 9日に特許権の設定登録がなされたものである(請求項の数9。以下、その明細書を「本件特許明細書」という。)。
これに対して、アクゾノーベル株式会社(以下、「請求人」という。)より本件特許について本件無効審判の請求がなされ、昭和電工株式会社(以下、「被請求人」という。)より答弁書が提出された。

平成23年 8月25日 請求人 :審判請求書、
甲第1?8号証、
甲第1号証の1、
甲第3号証の1、
甲第8号証の1提出
同年11月11日 被請求人:答弁書、
乙第1?2号証、
乙第1号証の1?5提出
同年11月24日 被請求人:手続補正書、
乙第1号証の1-1、
乙第1号証の2-1提出

平成24年 1月24日 審理事項通知書
同年 2月28日 請求人 :上申書(1)、
甲第9?10号証、
甲第10号証の1提出 甲10翻訳文
同年 2月28日 被請求人:上申書、
乙第3?10号証、
乙第1号証の1-2?3、
乙第1号証の3-2、
乙第1号証の5-2、
乙第6号証の1、
乙第6号証の2-1?2提出
同年 3月13日 請求人 :上申書(2)、
甲第1号証の3提出
同年 3月13日 被請求人:上申書(2)提出
同年 3月27日 請求人 :口頭審理陳述要領書、
甲第1号証の2提出
同年 3月27日 被請求人:口頭審理陳述要領書提出
同年 4月10日 請求人 :上申書(3)提出
同年 4月17日 請求人 :4月16日付け上申書(4)提出
同年 4月17日 被請求人:4月16日付け上申書(3)、
乙第1号証の3-2-1提出
同年 4月17日 第1回口頭審理(審理終結)
同年 5月 7日 審決(請求不成立)
同年 6月15日 審決取消訴訟提起
平成25年 2月27日 判決(審決取消)
同年 6月13日 審理終結
なお、判決の確定の日から一週間以内に、被請求人から、願書に添付した明細書又は図面の訂正の請求についての申立てはなかった。

第2 本件発明
本件特許第3927623号の請求項1?9に係る発明は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
A)アスパラギン酸二酢酸塩類及び/またはグルタミン酸二酢酸塩類、B)グリコール酸塩、及びC)陰イオン界面活性剤及び/又は非イオン界面活性剤を主成分とし、C)陰イオン界面活性剤及び/又は非イオン界面活性剤1重量部に対してアスパラギン酸二酢酸塩類及び/またはグルタミン酸二酢酸塩類が0.01?1重量部、かつアスパラギン酸二酢酸塩類及び/またはグルタミン酸二酢酸塩類1重量部に対してグリコール酸塩が0.01?0.5重量部含有され、pHが10?13であることを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項2】
請求項1記載の洗浄剤組成物からなることを特徴とする衣料用洗剤。
【請求項3】
請求項1記載の洗浄剤組成物からなることを特徴とする床、壁、家具等住居用洗剤。
【請求項4】
請求項1記載の洗浄剤組成物からなることを特徴とする調理用レンジ、台所収納庫等台所用洗剤。
【請求項5】
請求項1記載の洗浄剤組成物からなることを特徴とする石鹸。
【請求項6】
請求項1記載の洗浄剤組成物からなることを特徴とするトイレ用洗剤。
【請求項7】
請求項1記載の洗浄剤組成物からなることを特徴とする浴室、浴槽用洗剤。
【請求項8】
請求項1記載の洗浄剤組成物からなることを特徴とするガラス用洗剤。
【請求項9】
請求項1記載の洗浄剤組成物からなることを特徴とする自動車用洗剤。」
(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明9」といい、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)

第3 請求人の主張の要点
1 本件審判の請求の趣旨
請求人が主張する本件審判における請求の趣旨は、「特許第3927623の請求項1?9に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」である。

2 請求人が主張する無効理由及び証拠方法の概要
請求人は、以下の無効理由1?8を主張し、証拠方法として甲第1?10号証(枝番を含む)を提出した。

(1)無効理由1(新規性欠如の裏付けに甲第3号証を利用するもの)
本件発明1?7及び9は、本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。
よって、本件発明1?7及び9についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(2)無効理由2(新規性欠如の裏付けに甲第3号証を利用するもの)
本件発明1?7及び9は、本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。
よって、本件発明1?7及び9についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(3)無効理由3
本件発明1?7及び9は、本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。
よって、本件発明1?7及び9についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(4)無効理由4
本件発明1?7及び9は、本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。
よって、本件発明1?7及び9についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(5)無効理由5
本件発明1?9は、本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許出願の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件発明1?9についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(6)無効理由6
本件発明1?9は、本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許出願の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件発明1?9についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(7)無効理由7
本件発明1?9は、本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明及び甲第4号証ないし甲第8号証に記載された周知技術に基いて、本件特許出願の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件発明1?9についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(8)無効理由8
本件発明1?9は、本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明及び甲第4号証?甲第8号証に記載された周知技術に基いて、本件特許出願の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件発明1?9についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(9)証拠方法
請求人は、上記第1に指摘したそれぞれの時点において、以下のものを提出した。
ア 甲第1号証 英国特許第1439518号明細書
イ 甲第1号証の1 甲第1号証の抄訳
ウ 甲第1号証の2 甲第1号証の全訳
エ 甲第1号証の3 甲第1号証の全訳
オ 甲第2号証 特開昭50-3979号公報
カ 甲第3号証 Experimental Report(2011年 6月 7日付け Akzo Nobel Functional Chemicals BVの従業員Marcellinus Alexander van Doorn の署名のあるもの)
キ 甲第3号証の1 甲第3号証の全訳
ク 甲第4号証 特開平7-238299号公報
ケ 甲第5号証 特開昭59-133382号公報
コ 甲第6号証 特開昭61-188500号公報
サ 甲第7号証 特表平5-502683号公報
シ 甲第8号証 独国特許出願公開第4240695号公報
ス 甲第8号証の1 甲第8号証の全訳
セ 甲第9号証 PQ Corporation、「PQ^((R)) Sodium Silicates Liquids and Solids」、Copyright(C)2004と記載のあるもの[(R)はRに丸囲み、(C)はCに丸囲み、をそれぞれ意味する。以下全て同じ。]
ソ 甲第10号証 Experimental Report(2012年 1月27日付け Akzo Nobel Functional Chemicals BVの従業員Marcellinus Alexander van Doorn の署名のあるもの)
タ 甲第10号証の1 甲第10号証の全訳


第4 被請求人の主張の要点
1 答弁の趣旨
被請求人が主張する答弁の趣旨は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」である。

2 証拠方法の概要
被請求人は、上記第1に指摘したそれぞれの時点において、以下のものを提出した。
(1)乙第1号証 「市販珪酸ナトリウム製品のカタログ値」として提出された表
(2)乙第1号証の1 「PQ Corporationのカタログ」として提出されたもの(乙第1号証の1-2及び乙第1号証の1-3からの抜粋)
(3)乙第1号証の1-1 乙第1号証の1の抄訳
(4)乙第1号証の1-2 「PQコーポレーション(PQ Corporation)のカタログ-1」として提出されたもの、PQ Corporation「Typical Property Data for PQ^((R)) Liquid Sodium Silicates」(Copyright(c)2007との記載あり。)
(5)乙第1号証の1-3 「PQコーポレーション(PQ Corporation)のカタログ-2」として提出されたもの、PQ Corporation「PQ^((R)) Sodium Silicates」(Copyright(c)2004との記載あり。)
(6)乙第1号証の2 「SILMACO(Silicates Manufacturing Company)のカタログ」として提出されたもの(last changed on 31/01/2003との記載あり。)
(7)乙第1号証の2-1 乙第1号証の2の抄訳
(8)乙第1号証の3 「愛知珪曹工業(株)のカタログ」として提出されたもの、愛知珪曹工業株式会社「1.珪酸ソーダの種類」(http://www.aichikeiso.co.jp/soda01.html)
(9)乙第1号証の3-2 「愛知珪曹工業(株)のカタログ」として提出されたもの、愛知珪曹工業株式会社「5,珪酸ソーダの用途」(http://www.aichikeiso.co.jp/soda.html)(2003 Aichikeisokogyo Co.All rights reserved.との記載あり。)
(10)乙第1号証の3-2-1 「乙第1号証の3-2(差替え)」として提出されたもの、愛知珪曹工業株式会社「5.珪酸ソーダの用途」(http://www.aichikeiso.co.jp/soda05.html)

(11)乙第1号証の4 「富士化学(株)のカタログ」として提出されたもの、富士化学株式会社「珪酸ソーダ」
(12)乙第1号証の5 「セントラル硝子(株)のカタログ」として提出されたもの(乙第1号証の5-2からの抜粋)
(13)乙第1号証の5-2 「セントラル硝子(株)のカタログ」として提出されたもの、セントラル硝子株式会社「セントラル硝子の珪酸ソーダ」
(14)乙第2号証 「珪酸ナトリウム製品のボーメ度とNa_(2)O/SiO_(2)(モル比)との関係」として提出された表
(15)乙第3号証 米国特許第3868227号明細書
(16)乙第4号証 「セントラル硝子三十五年史」、第282頁?第283頁、第332頁?第335頁、第338頁?第339頁、セントラル硝子株式会社、昭和47年 7月 1日 発行
(17)乙第5号証 「改訂 製造工程図全集」第1巻、第348頁?第351頁、株式会社化学工業社、昭和52年10月25日改訂第1刷 発行
(18)乙第6号証 「市販珪酸ナトリウム製品のカタログ値」として提出された表(2)
(19)乙第6号証の1 「東曹産業(株)のカタログ」として提出されたもの、東曹産業株式会社、「東曹産業株式会社 製品情報 珪酸ソーダ」()COPYRIGHT(c)2005との記載あり。)
(20)乙第6号証の2-1 「大阪珪曹(株)のカタログ」として提出されたもの、大阪珪曹株式会社「大阪珪曹株式会社 製品紹介」(http://osaka-keisou.co.jp/product.htm)
(21)乙第6号証の2-2 「大阪珪曹(株)のカタログ」として提出されたもの、大阪珪曹株式会社「大阪珪曹株式会社 技術資料」(http://osaka-keisou.co.jp/tech.html)
(22)乙第7号証 「珪酸ナトリウム製品のボーメ度とNa_(2)O/SiO_(2)(モル比)との関係」として提出された表(2)
(23)乙第8号証 「15710の化学商品」、第34頁?第35頁、化学工業日報社、2010年 1月26日 発行
(24)乙第9号証 「横河電機(株)製pHメーターの説明書」として提出されたもの、「Instruction Manual Model PH82 パーソナルpHメータ」、第2頁、Copyright 1986, 5th Edition:July 1993(YG)と記載のあるもの
(25)乙第10号証 「SiO_(2)/Na_(2)Oモル比とpHとの関係」として提出された、「モル比とpHとの関係」と題された表

第5 当審の判断
請求人の主張する無効理由の概略を再掲すると、
無効理由1として、本件発明1?7及び9は、甲3の実験結果によれば、甲1に記載された発明であるとの理由、
無効理由2として、本件発明1?7及び9は、甲3の実験結果によれば、甲2に記載された発明であるとの理由、
無効理由3として、本件発明1?7及び9は甲1に記載された発明であるとの理由、
無効理由4として、本件発明1?7及び9は甲2に記載された発明であるとの理由、
無効理由5として、本件発明1?9は甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものであるとの理由、
無効理由6として、本件発明1?9は甲2に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものであるとの理由、
無効理由7として、本件発明1?9は甲1に記載された発明、甲2に記載された発明及び甲4?8に記載された周知技術に基いて当業者が容易になし得たものであるとの理由、
無効理由8として、本件発明1?9は甲2に記載された発明及び甲4ないし8に記載された周知技術に基いて当業者が容易になし得たものであるとの理由
である。

これに対して当審は、本件発明1?9についての特許は、請求人の主張する無効理由5によって無効とすべきものである、と判断する。
その理由は、以下のとおりである。

1 主な証拠方法の内容
(1) 英国特許第1439518号明細書(甲第1号証)について
英国特許第1439518号明細書(甲第1号証、以下「甲1」という。)は、1976年 6月16日に頒布されたものであって、本件特許出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であることは明らかである。
そして、甲1には、以下の事項が記載されている。ただし、甲1は英文の書証のため、記載事項の摘記については、請求人の提出した全訳(甲1の2)の記載により行う。

1a 第1頁第14行?第27行(全訳第1頁下から9行?下から3行)
「本発明は、無毒性、非汚染性かつ生物学的易分解性の金属イオン封鎖剤組成物、その製造方法およびその使用法に関する。
トリポリホスフェート、エチレンジアミン四酢酸等のごとき多数の金属イオン封鎖剤が知られている。しかしながら、これらの化合物の多くは生物により分解されずかつ河川に排出されたときにそれを汚染する。更に、リンの化合物は、これらが非常に顕著な還元性を有するため、河川の酸素を固定し、これが生物についてよく知られている極めて有害な結果を生ぜしめている。」

1b 第1頁第56行第2頁第3行(全訳第2頁第10行?第23行)
「本発明に従い、無毒性、非汚染性かつ生物学的易分解性の金属イオン封鎖剤組成物が提供され、該組成物はN、N-ジカルボキシメチル-2-アミノ-ペンタン二酸又はその塩を含有し、該酸はモノクロル酢酸の溶液とアルカリの溶液をグルタミン酸またはグルタミン酸モノまたはジナトリウム塩の水溶液に同時に添加することにより得られ、ここで(a)該アルカリは反応媒体のpHが8?10に維持される量で使用され;(b)反応は50?100℃の範囲の温度で行われ、かつ;(c)グルタミン酸のモルあたり2.4?2.7モルのモノクロル酢酸が使用される。
本発明はまた、本発明の金属イオン封鎖剤組成物を含有する洗浄剤組成物を提供する。
本発明の無毒性かつ非汚染性の生物学的易分解性の金属イオン封鎖剤組成物は、高い効果を有しかつ85?90%まで生物学的に容易に分解し得る天然産物の誘導体を含有するという利点を有する。しかも、本発明の金属イオン封鎖剤組成物の有効成分は炭素、酸素および窒素のみを含有し、リンを含有していない故に、それは河川の生物に対し有害な影響をおよぼすことはない。最後に、本発明の金属イオン封鎖剤組成物の必須の有効成分が天然産物を原料とする故に、それらが毒性を持たないように処方され得る。」

1c 第2頁第19行?第3頁第6行(全訳第2頁下から2行?第4頁第6行)
「本発明に従い起きる反応は、水性媒体中かつアルカリの存在下で起きる置換反応であり、次の図式で表わされる。


グルタミン酸のα-アミノ基の2個の水素原子が、モノクロル酢酸から生ずる2個のカルボキシメチル基により置換される。
二置換誘導体を高収率で得ることが困難である主原因の一つは、モノクロル酢酸が加水分解することであり;この二次的反応によりグリコール酸ナトリウムが生成する[下記の反応式(2)参照]。この欠点を防止するためには、上記(1)式の反応に有利なようにかつ、下記(2)式の反応に不利なように、遊離のモノクロル酢酸の存在下で反応を行いかつアルカリを徐々にのみ添加することが必要である。実際に、この二つの反応の相対的な反応速度は、遊離のOH基の濃度により影響される。

前記反応を弱アルカリ性pH値で行うことにより、(2)式の加水分解反応を最少に減少させ得ることが今見出された。従って前記したことを考慮して、pHを8?10好ましくは9?9.7の範囲で反応を行うことが必要である。これらの条件下において得られる収率は、使用したモノクロル酢酸に対して理論値の75%より良く、グルタミン酸塩に関しては100%に近い。
pHの調整は、アルカリ土類化合物を使用することによって有利には行われず、アルカリ金属化合物、特に濃厚なアルカリ溶液の形の苛性ソーダを使用して好ましく行われる。反応剤は水性媒体中で反応させ得る。この目的のために軟水または脱塩水または蒸留水でも使用し得る。
反応(1)の反応速度は、反応(2)の反応速度よりも、温度の上昇によりより有利に影響されるので、反応は50?100℃、好ましくは70?100℃、より好ましくは80?90℃の温度で行われる。
出発原料としては、廉価でかつ豊富に入手し得るグルタミン酸モノナトリウムを使用することが有利であるが、グルタミン酸自体およびジナトリウム塩も使用し得る。
起り得る加水分解(反応2)を補填するためにモノクロル酢酸を過剰に使用して反応を行うことが必要である。従ってグルタミン酸1モルに対し2.4?2.7モル、最も好ましくは2.7モル(理論モル比2/1の代わりに)のモノクロル酢酸を使用して反応を行う。
たとえばグルタミン酸ジナトリウム溶液に、モノクロル酢酸の溶液と、アルカリたとえば苛性ソーダの溶液を同時に添加することにより、カルボキシメチル基の移動を伴う置換反応が有利に行われる。
反応の終点は、下記の手段のいずれかにより検出されうる:
(1)形成された塩素イオンの測定により
(2)錯化力(complexing power)の電位測定により
(3)ニンヒドリンによる-NH_(2)または-NHR基の判定により。」

1d 第3頁第7行?第45行(全訳第4頁第7行?第22行)
「反応生成物を含有する溶液を金属イオン封鎖剤組成物として直接に使用することが可能である。あるいは、該溶液を噴霧乾燥して、不純なN,N-ジカルボキシメチル-2-アミノ-ペンタン二酸又はその塩を得てもよい。この粗生成物を慣用の手段で精製してもよく、好ましくは、したがってそれは少なくとも95%純度である。50%に近い乾燥物含有量を有するこの溶液を熱空気流中に噴霧し白色粉末を得ることができる。
本発明の金属イオン封鎖剤組成物の製造は連続的に行うことが有利であり、これによって比較的大きな規模で生産が行われるので設備費用が減少しまた金属イオン封鎖剤組成物販売価格が低下するというかなりな工業的利点が得られる。
噴霧乾燥操作により得られる粉末をつぎの二つの方法により精製することができる。
(1)濃塩酸によりpH3に酸性化し、次に噴霧乾燥し、アセトンにより乾燥製品を抽出し、ついで抽出物を乾燥まで蒸発させる。得られた油状物をメタノールで処理し、そしてこれは、金属イオン封鎖力の測定に従うと約95%の純度を有する最終生成物を晶出する。
(2)強酸性カチオン樹脂に吸着させ、苛性ソーダで溶出させ、ついで濃縮する。得られた油状物をメタノールで処理し、そしてこれは、その金属イオン封鎖力の測定に従うと96?98%の純度を有する最終生成物を晶出する。」

1e 第3頁第46行?第81行(全訳第4頁第23行?第5頁第5行)
「本発明の組成物は、アルカリ性剤に関してばかりでなく重金属イオンに対しても顕著な金属イオン封鎖性を示し、この封鎖性は従来得られた金属イオン封鎖性よりもはるかに良好であり、その結果つぎに示す分野において極めてすぐれた工業的利点および用途が生じる。
-イオン交換塔での金属の分離、
-金属の処理および金属表面の脱脂、
-放射能を持った表面の浄化、
-織物の処理、
-洗浄剤、洗濯用水(lyes)、および陶器の洗浄に使用する製品の調製、
-香料および化粧品に関する利用、
-および牛乳工業での利用。
本発明の組成物は、その金属イオン封鎖機能を完全に発揮する。この組成物は、水溶液中、特に緩衝アルカリ性媒体中で通常沈澱を生ずる化学物質の存在下でカチオン(Ca,Mg,Li,Fe,等)の溶解する鎖体を形成する。
本発明の組成物は、沈澱反応以外の反応においてカチオンの化学的活性を封鎖しあるいは変性するのにも使用し得る。特に硬水中のナトリウム石鹸溶液に添加された場合に、本発明の組成物は、さもなくば洗浄作用を低下させるカルシウムと錯体を形成する。すなわち該金属イオン封鎖組成物は、カチオンを不活性化する作用を行う他に、石鹸の洗浄剤作用を可能にする。」

1f 第3頁第127行?第4頁第4行(全訳第5頁第28行?第30行)
「更に、本発明の組成物は、広いpH領域、特に中性またはアルカリ性媒体中でその全ての性質を保持すること、特にその金属イオン封鎖作用は、通常の洗浄剤媒体のアルカリ性のレベルに相当するpH8?11において最大であることが確認された。」

1g 第4頁第27行?第31行(全訳第6頁第5行?第7行)
「本発明の金属イオン封鎖剤組成物は好ましくは、洗浄剤組成物での使用のためには、少くとも40%のN,N-ジカルボキシメチル-2-アミノペンタン二酸のナトリウム塩を含有する。」

1h 第4頁第67行?第79行(全訳第6頁第22行?第26行)
「洗浄剤組成物の約5%が該金属イオン封鎖剤組成物“OS_(1)”(下記の実施例2で製造された生成物“OS_(1)L”から得られる乾燥された固体)であり、洗浄剤組成物の約1%の珪酸マグネシウムを伴う組成物を使用することにより、重金属を封鎖すると同時に、酸化性媒体中で行われる一連の洗浄操作により生ずるセルロースの分解を抑制することができることにも注目すべきである。」

1i 第4頁第91行?第119行(全訳第6頁第32行?第7頁第11行。ただし、全訳の「グルコール酸ナトリウム」は、甲1では「Sodium glycolate」であり「グリコール酸ナトリウム」とすべき誤訳と認められるので、以下の摘記も「グリコール酸ナトリウム」に修正して記載する。)
「金属イオン封鎖剤としてN,N-ジカルボキシメチル化-2-アミノ-ペンタン二酸またはその塩を含有する全ての洗浄剤組成物の特徴は、リン酸イオンの含有量が低いかあるいは全く含有していないこと、生物学的に易分解性であること、および湖や河川の動植物相に対し毒性がないことである。そのような組成物を汚れた織布を洗浄するのに使用した場合に起きる利点が、後記実施例に示されている。
全ての試験において、モノクロル酢酸とグルタミン酸ナトリウム塩とを水性媒体中でかつアルカリの存在下でかつ前記したごとき条件下で反応させて得られた組成物が使用される。
かく得られた、表でOS_(1)と呼ばれる組成物は、次の成分を含む。
N,N-ジカルボキシメチル-2-アミノ-ペンタン二酸、ナトリウム塩として 60重量%
グリコール酸ナトリウム 12〃
塩 全体が100重量%となる量
それは、見掛密度0.56の白色粉末の形である。
上記の生物学的易分解性の金属イオン封鎖組成物は無毒性であり、目や皮膚に有毒な刺激を与えない。」

1j 第5頁第37行?第72行(全訳第7頁下から4行?第8頁第14行)
「実施例1
N,N-ジカルボキシメチル-2-アミノ-ペンタン二酸の製造
1870g(10モル)のグルタミン酸モノナトリウム一水和物を2.5lの水と0.53lの苛性ソーダ溶液(10モル)に溶解した。これを溶液Aとする。この溶液中に、2.5lの水に溶解した2570g(27モル)のモノクロル酢酸の溶液と19N苛性ソーダ溶液(57モル)とを、反応媒体の温度を80?90℃に保持しながら、11/2時間で、そのpHが8?9に保持されるように同時に注ぐことにより導入した。
N,N-ジカルボキシメチル-2-アミノ-ペンタン二酸の収率は97?100%であった。モノクロル酢酸の過剰量を減少させると、収率が低下した。

一方、窒素原子上での第2のカルボキシメチル残基の置換を保証するために、最低8のpHが必要である。
この溶液を噴霧処理することにより、N,N-ジカルボキシメチル-2-アミノ-ペンタン二酸のナトリウム塩(47%酸型)を60重量%含有し、G.SCHWARZENBACHおよびH.FLAXHKA(第174頁、錯滴定法)[Methuen and Co. Ltd. 1969(GB)]の方法で測定した金属イオン封鎖力が6.9%の白色粉末を得た。この組成物は、14重量%の塩化ナトリウムと12重量%のグリコール酸ナトリウムをも含有していた。」

1k 第5頁第73行?第6頁第19行(全訳第8頁第15行?第9頁第14行)
「実施例2
68kg(364モル)のグルタミン酸モノナトリウムと74lの水を、ジャケット付タンクに装入した。ジャケットにより温度を50℃にし、ついで50.2%苛性ソーダ溶液4lを添加してpHを9.12に調節した。ついでモノクロル酢酸の溶液と50.2%苛性ソーダ溶液とを、つぎの2つのパラメーター:9.2?9.5のpHと70?75℃の温度、に注意しながら同時に添加開始した。78lのモノクロル酢酸溶液と93lの苛性ソーダ溶液を添加する14時間操作の後に、得られた溶液をタンクに保持して30分間攪拌し、ついで測定を行った。測定の結果、N-カルボキシメチル-LまたはDL-グルタミン酸の16%、即ち58モルが存在することが判った。5kgのモノクロル酢酸を4lの水に溶解した溶液を調製し、ついでこの溶液を55?60℃で前記反応混合物に添加し、かつ前記のpH値を保持するために50.2%苛性ソーダ溶液4lを同時に添加した。得られた溶液を21/2時間60℃で攪拌し、ついで以後の濃縮工程に移した。
この操作でつぎの量の原料が使用された:68kg(364モル)のグルタミン酸モノナトリウム、90kg(953モル)のモノクロル酢酸、97l+4lの苛性ソーダ溶液、154kgの50.2%苛性ソーダ、すなわち77.4kgの純苛性ソーダ(1930モル)、グルタミン酸モノナトリウムとモノクロル酢酸により提供された水を含めた水 175.6l。
真空下で濃縮を行い、ついで濃縮物を遠心分離して、N,N-ジカルボキシメチル-2-アミノ-ペンタンニ酸のトリナトリウム塩を46.2重量%の濃度で含有する本発明の液状組成物204kgを得た。
本発明に従って得られた、“OS_(1)L”と呼ばれる液状組成物はつぎの標準組成を有する液体である。
グルタミン酸 ≦0.2%
全窒素 2%±0.2
アンモニア性窒素 <100ppm
乾燥抽出物 64±1g/l
密度 20℃ 1.475±0.005
ナトリウム % 15%±1
鉄 <100ppm
塩素 2.5±0.5g/l
pH(10%に稀釈) 9.2±0.3
粘度 20℃ 8ポイズ±2p
着色(10%に稀釈) ≦ヨード N
錯化力 52mgカルシウム/g
濃度 % ≧45%溶液」

1l 第6頁20行?58行(全訳第9頁第15行?同頁下から2行。ただし、全訳の硬度値「25」は、甲1では「26°」であり誤訳と認められるので、以下の摘記も「26°」に修正して記載する。)
「実施例3
実施例1および2に従う製造物の金属イオンの封鎖力に関する有効性を、石鹸水式硬度測定法(hydrotimetric liquor method)によって測定した。それは、金属イオン封鎖剤の添加量の関数としてハイドロチメーター硬度(hydrotimetric degree)の進行曲線を作ることよりなる。液体状または固体状の本発明の組成物による水の軟化力を、種々の金属イオン封鎖剤、すなわちE.D.T.A(エチレンジアミノ四酢酸)、N.T.A.(ニトリロ酢酸)およびT.P.P.(トリポリホスフェート)の水の軟化力と比較した。それは、硬度26°(フランス標準硬度)の天然硬水を使用して、硬度を、pH10でアンモニア性緩衝液(25ml/l)中の金属イオン封鎖剤の添加量に対する関数として測定することにより求めた。
第1図は、液体状組成物での測定結果を示す。横軸に1l当りの金属イオン封鎖剤の添加量(g)をプロットし、縦軸に石灰硬度(lime hardness)の度Th(フランス標準硬度)をプロットする。曲線(1)はE.D.T.A.四Na塩の90%溶液、曲線(2)は、N.T.A.三Na塩、曲線(3)は液体状の本発明の組成物、曲線(4)はT.P.P.P.に対応する。
第2図は、固体状の本発明の組成物で得られた結果を示す。横軸に金属イオン封鎖剤の添加量(g/l)、縦軸に石灰硬度の度Thをプロットする。第1図と同様、曲線(1)はE.D.T.A.四Na塩の90%溶液、曲線(2)は、N.T.A.三Na塩、曲線(3)は固体状の該組成物、曲線(4)はT.P.P.に対応する。」

1o 第6頁第59行?第7頁第11行(全訳第9頁最終行?第11頁下から11行)
「実施例4
TERG-O-TOMETER装置を使用して洗浄試験を行った。使用した水の硬度はフランス標準硬度で表わして22°であった。洗浄試験に供する布は、人為的に汚染しかつ標準化された亜麻布であった。下記の参照:EMPA101、KREFELD、ACH、TNO綿布およびTNOポリエステルに対応する標準汚染を一緒に行った。洗浄後、洗浄剤効果を測定し、その結果から、処理により得られた白色度の改善を%で求めた。この目的のために、次の式が用いられた。

白色度の改善% DBF-DBS ×100
DBI-DBS
上記の式において、
DBFは洗浄後の白色度、
DBSは洗浄前の汚染布の白色度
DBIは汚染前の当初の布の白色度
を表わす。
白色度は、緑色フィルターを備えたELREPHO型反射計を使用して反射光の量を測定することにより求めた。
試験結果の表中の夫々の値は、数回の有意な試験の平均値である。
洗浄操作は60℃と90℃で行い、これらの温度は現在使用されている極端な操作温度である。
洗浄剤媒体はつぎの組成を有する。
炭酸ナトリウム: 3g/l
石鹸薄片: 0.25g/l および 0.50g/l
ナトリウムトリポリホスフェート(TPP): 0g/lおよび3g/l
本発明の金属イオン封鎖剤組成物
(“OS_(1)”で表わされる): 0、1.5、および2g/l
硬度22°の水: 全体が1lとなる量




炭酸ナトリウムと石鹸を含有する簡単な洗浄剤媒体において、組成物OS_(1)(実施例2で調製された組成物からの固形物)を1.5g/l添加することにより硬水中での洗浄が実質的に改善されたことが確認された。同じ結果を得るために、ナトリウムトリポリホスフェートの2倍重量すなわち3g/lを加えることが必要であった。」

1p 第7頁第12行?第8頁第27行(全訳第11頁下から10行?第12頁下から4行)
「実施例5
直上の実施例と異なりかつより複雑な洗浄剤混合物を調製した。詳細には、これらの全ては、石鹸、非イオン界面活性剤、“ビルダー”、過酸化物型の漂白剤および充填剤を含有した。処方は、用いられた金属イオン封鎖剤または金属イオン封鎖混合物の点で異る。洗浄試験はTERGO-O-TOMETER型装置を使用してフランス標準硬度22°の水中で60℃で行った。各洗浄操作において、基本的洗濯水1lあたり8gの等価物、すなわち洗浄作用を意図される物質の6g/lとペルオクソホウ酸ナトリウムの2g/lを使用した。
用いられた布は、EMPA101、KREFELD、TNO綿布、TNOポリエステル布およびACHのごとき標準予備汚染布であった。洗浄後、直上の実施例で述べた方法で白色度の改善を測定した。
試験した組成物は、つぎの組成(g/溶液l)を有する。

CMCの添加量を僅かに増加させる、すなわち溶液l当り0.10?0.12gまで増加させると、組成物OS_(1)の1.6g/lによる汚染布試料の白色度の改善が、トリポリホスフェート40重量%を含有する溶液で得られるそれと同じであることが判る。
従って、トリポリホスフェートを含有せず、金属イオン封鎖剤がN,N-ジカルボキシメチル-2-アミノ-ペンタン二酸のナトリウム塩に基づく組成により構成される処方を使用することにより、良好な洗浄を行うことができる。この場合、同じ洗浄効果を達成するのに必要なトリポリホスフェートの重量の半分の重量を使用することが必要である。
上の表の中の数値は、2つの金属イオン封鎖剤、すなわちTPPおよび組成物OS_(1)が、それぞれの有する性質を失うことなく混合して使用され得ることを示す。従って、トリポリホスフェートをその半分重量の組成物OS_(1)により置き換えることにより、洗浄剤中のトリポリホスフェートの通常の量の1/2?3/4だけ減少させることができる。」

1q 第8頁第28行?第9頁第10行(全訳第12頁下から3行?第14頁第4行)
「実施例6
本実施例の目的は、アルカリ性媒体中の重金属に対する、実施例2で得られた組成物OS_(1)の金属イオン封鎖特性を示すことである。
鉄および銅のごときある種の金属の存在は、過酸化物塩の分解を触媒し、その結果セルロースの化学的分解を起こすことが知られている。この弊害を防止するために、通常、洗浄媒体中に金属イオン封鎖剤が使用される:しばしば使用される処方は、珪酸マグネシウムと、NTAまたはEDTA型の有機酸のナトリウム塩との混合物を含有するが、後者は河川の動物相に対して毒性があると考えられている。
これらの試験は、漂白綿布(EMPA)または未漂白綿布(cretonne)からなる布をTERG-O-TOMETER型装置中で90℃で継続的に洗浄することにより行った。セルロースの分解の測定はAFNOR規格No.12-005に従って行った。
使用した基本の洗浄剤はペルオクソホウ酸化合物を含まない市販の洗浄剤であり、この洗浄剤に溶液の各6gに2gのペルオクソホウ酸ナトリウム四水和物を添加した。
試験を行うにあたっては、更に、1%(上記ペルオクソホウ酸塩を含む全体洗浄剤に対して)の珪酸マグネシウムと、EDTAかまたは組成物OS_(1)のいずれかとを含有する混合物を使用した。また、操作を開始する際に、洗濯浴に触媒量の重金属、すなわち
銅、Cu^(++) として:0.5ppm
鉄、Fe^(+++ )として:1.5ppm
を添加した。
結果を下記の第IV表に示す。

DP =重合度
EDTA=エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩
+OS_(1 )=組成物“OS_(1)”

組成物OS_(1)の5%の添加は、EDTAまたはNTA型の誘導体を含有する慣用処方を使用する場合よりセルロースの保護が良好であることが見られ、これは、布の摩耗が少なくなることに加え、環境に対して有害な物質を含有しない洗浄廃水が得られるという利点を提供する。」

1r 第9頁第12行?第27行(全訳第14頁第6行?第12行)
「1.N,N-ジカルボキシメチル-2-アミノ-ペンタン二酸又はその塩を含有する、無毒性、非汚染性かつ生物学的易分解性の金属イオン封鎖剤組成物であって、該酸又はその塩はモノクロル酢酸の溶液とアルカリの溶液をグルタミン酸またはグルタミン酸モノまたはジナトリウム塩の水溶液に同時に添加することにより得られ、ここで(a)該アルカリは反応媒体のpHが8?10に維持される量で使用され;(b)反応は50?100℃の範囲の温度で行われ、かつ;(c)グルタミン酸のモル当たり2.4?2.7モルのモノクロル酢酸が使用される、上記金属イオン封鎖剤組成物。」

1s 表1,2







(2)特開昭50-3979号公報(甲第2号証)について
特開昭50-3979号公報(甲第2号証。以下、「甲2」という。)は、昭和50年 1月16日に頒布されたものであって、本件特許出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であることは明らかである。
そして、甲2には、以下の事項が記載されている。

2a 特許請求の範囲(甲1の摘記1rに対応)
「モノクロル酢酸とアミノジカルボン酸のジナトリウム塩とをアルカリ性水性媒体中で反応させることによりアミノジカルボン酸のアミノ基の窒素にカルボキシメチル基を結合させて得られるL-またはDL-N,N-ジカルボキシメチルアミノ酸誘導体を含有することを特徴とする無毒性、非汚染性かつ生物学的易分解性の金属イオン封鎖剤組成物。」

2b 第2頁右上欄第6行?第15行
「本発明によれば、N,N-ジカルボキシメチルアミノ酸の誘導体を含有する生物学的易分解性の金属イオン封鎖剤組成物は、モノクロル酢酸とアミノジカルボン酸のジナトリウム塩とをアルカリ性水性媒体中で反応させることによりアミノジカルボン酸のアミノ基の窒素原子にカルボキシメチル基を結合させることにより製造される。
本発明を実施するにあたつてはアミノジカルボン酸としてグルタミン酸とアスパラギン酸を使用することが特に好ましい。」

2c 第2頁左下欄第3行?第3頁右上欄第10行(甲1の摘記1cに対応)
「本発明による反応はアルカリ性水性媒体中での置換反応であり、つぎの図式で表わされる。

グルタミン酸のα-アミノ基の2個の水素原子がモノクロル酢酸から生ずる2個のカルボキシメチル基により置換される。
アミノジカルボン酸のアミノ基を2個のカルボキシメチル基により置換した誘導体を高収率で得ることが困難である本質的原因の一つは、モノクロル酢酸が加水分解することである。すなわちこの二次的反応によりグリコール酸ナトリウムが生成する[反応式(2)参照]。従つてこの欠点を防止するためには(1)式の反応が行われ、(2)式の反応が起らないように、遊離のモノクロル酢酸の存在下で前記の置換反応を行いかつアルカリ性化合物のみを徐々に添加することが必要である。実際に、この二つの反応の相対的な反応速度は遊離のOH基の濃度により影響される。

前記置換反応を弱アルカリ性pH値で行うことにより、(2)式の加水分解反応を最少に減少させ得ることを認めた。従つて前記した二次的反応を考慮した場合、反応時、pHを8?10好ましくは9?9.7に保持して反応を行うことが有利である。これらの条件下において得られる収率は、使用したモノクロル酢酸に対して理論値の75%以上であり、グルタミン酸塩に関してはほとんど100%に近い。
従来既知の方法と異り、pHの調整のためにアルカリ土金属化合物を使用することは有利でなく、アルカリ金属化合物、特に濃厚なアルカリ溶液(lye)の形のカセイソーダ(soda)を使用することが有利である。
反応剤は水性媒体中で反応させ得る。この目的のために軟水または脱塩水または場合により蒸溜水でも使用し得る。
式(1)の反応の反応速度は式(2)の反応の反応速度より温度の上昇により大きくなるので、反応は70?100℃好ましくは80?90℃の温度で行われる。
出発原料としては、廉価でかつ豊富に入手し得るグルタミン酸モノナトリウムを使用することが有利であるが、グルタミン酸自体も使用し得る。
起り得る加水分解[(2)式]で消費される量を補填するためにモノクロル酢酸を過剰に使用して反応を行うことが有利である。従つてグルタミン酸1モルに対し2.4?2.7モル、好ましくは2.7モルのモノクロル酢酸を使用して反応を行う(前者と後者の理論モル比は1/2である)。
グルタミン酸ジナトリウム溶液にモノクロル酢酸の溶液とカセイソーダ(soda)の溶液を同時に添加することによりカルボキシメチル基の置換反応を行うことが有利である。
反応の終了はつぎの試験により判定する:
(1)金属と結合した塩素(mineralised chlorine)の定量
(2)錯化力(complexing power)の電位的測定
(3)ニンヒドリンによる-NH_(2)または-NHR基の定量」

2d 第3頁右上欄第11行?同頁左下欄第13行(甲1の摘記1dに対応)
「粗生成物を単離することが可能であり、このものは直接液体の形で、あるいは得られた溶液を噴霧することにより使用し得る。50%に近い乾燥物含有量を有するこの溶液を熱空気流中に噴霧し白色粉末を得ることができる。
本発明の方法は連続的に行うことが有利であり、これによつて比較的大きな規模で生産が行われるので設備費用が減少しまた原価が低下するという工業的に非常に大きな利点が得られる。
噴霧操作により得られる粉末をつぎの方法により精製することができる。
(1)濃塩酸により酸性化してpHを3とし、噴霧し、アセトンにより乾燥製品を抽出し、ついで抽出物を濃縮して乾燥する。得られる油状物をメタノールで処理し、ついで金属イオン封鎖力に応じて95%の純度を有する目的生成物を晶出させる。
(2)強酸性カチオン樹脂に吸着させ、カセイソーダ(soda)で溶出させ、ついで濃縮する。得られる油状物をメタノールで処理し、ついで目的生成物を晶出させる。
目的生成物の純度は、金属イオン封鎖力に応じて96?98%とする。」

2e 第3頁左下欄第14行?同頁右下欄末行(甲1の摘記1eに対応)
「本発明の金属イオン封鎖剤組成物はアルカリ土金属イオンに対してばかりでなく重金属イオンに対しても顕著な封鎖性を示し、この封鎖性は従来得られた金属イオン封鎖性より良好であり、その結果つぎに示す分野において極めてすぐれた工業的利点が得られかつ広く利用し得る。
-イオン交換塔の金属の分離、
-金属の処理および金属表面の脱脂、
-放射性表面の浄化
-織物の処理
-洗浄剤、洗濯用水(lyes)および陶器の洗浄に使用する製品の調製
-香料および化粧品への利用
-牛乳製品製造工業への利用
本発明の金属イオン封鎖剤組成物はその封鎖機能を完全に発揮する。この組成物は、水溶液中、特にアルカリ性緩衝媒体中で通常沈澱を生ずる化学物質の存在下でカチオン(Ca,Mg,Li,Fe等)の可溶性鎖体を形成する。
本発明の封鎖剤組成物は沈殿反応以外の反応においてカチオンの化学的活性を封鎖しあるいは変性するのにも使用し得る。特に硬水中のナトリウム石鹸溶液に添加された本発明の封鎖剤組成物は洗浄作用を低下させるカルシウムイオンと錯体を形成する。すなわち本発明の封鎖剤組成物はカチオンを不活性化する作用を行う他に、石鹸の洗浄作用を向上(potentialise)させる。」

2f 第4頁右上欄第15行?第19行 (甲1の摘記1fに対応)
「更に、この種の洗浄剤組成物は広いpH領域、特に中性またはアルカリ性媒体中でその全ての性質を保持すること、特にその金属イオン封鎖作用は通常の洗浄剤媒体のアルカリ度に相当するpH8?11において最大であることが確認されている。」

2g 第5頁左上欄第20行?同頁左下欄第1行(甲1の摘記1iに対応)
「金属イオン封鎖剤としてアミノ酸のN,N-ビス-ジカルボキシメチル化誘導体を含有する全ての洗浄剤の特徴は、りんの含有量が低いかあるいは全くりんを含有していないこと、生物学的に易分解性であることおよび湖や河川の動・植物に対し毒性がないことである。・・・
全ての試験において、モノクロル酢酸とグルタミン酸のナトリウム塩とをアルカリ性媒体中でかつ前記したごとき条件下で反応させて得られた金属イオン封鎖剤組成物を使用した。
かく得られたOS_(1)と呼ばれる金属イオン封鎖剤組成物はつぎの成分からなる。
N,N-ビス-カルボキシメチルグルタメート、ナトリウム塩
60重量%
グリコール酸ナトリウム 12 〃
塩 全体が100%となる量
上記組成物は見掛密度0.56の白色粉末である。上記の生物学的易分解性組成物は無毒性であり、目や皮膚に有害な刺戟を与えない。」

2h 第5頁右下欄第20行?第6頁右上欄第7行(甲1の摘記1jに対応)
「実施例1
N,N-ビス(カルボキシメチル)グルタミン酸の製造
1870g(10モル)のグルタミン酸モノナトリウム一水塩を2.5lの水と0.53lのカセイソーダ溶液(10モル)とからなる水溶液中に溶解した。これを溶液Aとする。この溶液中に2.5lの水に溶解した2570g(27モル)のモノクロル酢酸の溶液と19Nカセイソーダ溶液(57モル)とを、反応媒体の温度を80?90℃に保持しながら、11/2時間で、そのpHが8?9に保持されるように同時に添加した。
N,N-ビス(カルボキシメチル)グルタミン酸の収率は97?100%であつた。モノクロル酢酸の過剰量を減少させると収率が低下した。

一方、第2の置換については最小で8のpHが必要であつた。
この溶液を微細化処理することにより、N,N-ビス(カルボキシメチル)グルタミン酸のナトリウム塩(47%酸型)を60重量%含有し、G. SCHWARZENBACHおよびH. FLEXHKA[Methuen and Co. Ltd 1969(GB)]の報文記載の方法(第174頁、錯滴定法)で測定した金属イオン封鎖力が6.9%の白色粉末を得た。この組成物は14%の塩化ナトリウムと12%のグリコール酸ナトリウムとを含有していた。」

2i 第6頁右上欄第8行?同頁右下欄第15行 (甲1の摘記1kに対応)
「実施例2
68Kg(364モル)のグルタミン酸モノナトリウムと74lの水をジヤケツト付反応器に装入した。二重ジヤケツトにより温度を50℃に上昇させついで50.2%カセイソーダ溶液4lを添加してpHを9.12に調製した。ついでモノクロル酢酸の溶液と50.2%カセイソーダ溶液とを、つぎの2つのパラメーター;9.2?9.5のpHと70?75℃の温度に注意しながら同時に添加した。
14時間操作して78lのモノクロル酢酸溶液と93lのカセイソーダを添加した後、得られた反応溶液を30分間攪拌して混合しついで測定を行つた。測定の結果、N-カルボキシメチル-LまたはDL-グルタミン酸が存在することが判つた。5Kgのモノクロル酢酸を4lの水に溶解した溶液を調製し、ついでこの溶液を55?60℃で前記反応混合物に添加しついで前記のpH値を保持するため50.2%カセイソーダ溶液4lを同時に添加した。得られた溶液を21/2時間60℃で攪拌し、ついで以後の濃縮工程に移した。
この操作でつぎの量の原料が使用された。68Kg(364モル)のグルタミン酸モノナトリウム、90Kg(953モル)のモノクロル酢酸、97l+4lのカセイソーダ溶液、154Kgの50.2%カセイソーダ、すなわち77.4Kgの純カセイソーダ(1930モル)、グルタミン酸モノナトリウムとモノクロル酢酸により提供された水、175.6l。
真空下で濃縮を行い、ついで濃縮物を遠心分離してN,N-ビス(カルボキシメチル)グルタミン酸のトリナトリウム塩を46.2重量%の濃度で含有する本発明の液状金属イオン封鎖剤組成物204Kgを得た。
本発明の方法に従つて得られる、“O-S_(1)L”と呼ばれる液状組成物はつぎの標準組成を有する。
未反応グルタミン酸 ≦0.2%
全窒素 2%±0.2
アンモニア性窒素 <100ppm
乾燥抽出物 64±1
密度 20℃ 1.475±0.005
ナトリウム 15%±1
鉄 <100ppm
塩素 2.5±0.5
pH(10%に稀釈) 9.2±0.3
粘度 20℃ 8ホロイズ±2p
着色(10%に稀釈) ≦ヨード N
錯化力 52mgカルシウム/g
濃度“OS_(1)(トリナトリウム)”% ≧ 45%溶液 」

2j 第6頁右下欄第16行?第7頁右上欄第9行 (甲1の摘記1lに対応)
「実施例3
実施例1および2で得られた金属イオン封鎖剤組成物の金属イオン封鎖力の効率を、石鹸水式硬度測定法(hydrotimetric Liquor method)によつて測定した。この方法においてはハイドロチメーター硬度(hydrotimetric degree)は、金属イオン封鎖剤の添加量の関数として曲線で表わすことにより得られる。液体状または固体状の本発明の金属イオン封鎖剤組成物による水の軟化力を種々の金属イオン封鎖剤、すなわちE.D.T.A(ethylene diamine tetraacetic acid)、N.T.A.(nitrilotriacetic acid、およびT.P.P.(tripolyphospate)の水の軟化力と比較した。軟化力は、硬度26°(フランス標準硬度)の天然硬水を使用して、硬度をpHが10のアンモニア性緩衝液(25ml/l)中の金属イオン封鎖剤の添加量に対する関数として表わすことにより求めた。
第1図は本発明の液体状金属イオン封鎖剤組成物と他の金属イオン封鎖剤の軟化力の測定結果を示す。第1図において横軸は水1l当りの金属イオン封鎖剤の添加量(g)を表わし、縦軸は石灰硬度(lime hardness)の度数(フランス標準硬度)を表わす。曲線(1)はE.D.T.A.四Na塩の90%溶液、曲線(2)は、N.T.A.三Na塩、曲線(3)は液体状の本発明の金属イオン封鎖剤組成物、曲線(4)はT.P.P.P.についての測定結果を表わす。
第2図は本発明の固体状金属イオン封鎖剤組成物と他の金属イオン封鎖剤の軟化力の測定結果を示す。横軸は金属イオン封鎖剤の添加量(g/l)、縦軸は石灰硬度の度数を表わす。第1図と同様、曲線(1)はE.D.T.A.四Na塩の90%溶液、曲線(2)は、N.T.A.三Na塩、曲線(3)は固体状の本発明の金属イオン封鎖剤組成物、曲線(4)はT.P.P.についての測定結果を表わす。」

2k 第7頁右上欄第10行?第8頁左上欄第7行 (甲1の摘記1oに対応)
「実施例4
TERG-O-TOMETER装置を使用して洗浄試験を行つた。使用した水の硬度はフランス標準硬度で表わして22°であつた。洗浄試験に供する布として、人為的に汚染しかつ標準化された(standardised)亜麻布を使用した。標準汚染布(standard soilings)すなわちEMPA101、KREFELD、ACH、TNO綿布およびTNOポリエステル布を平行的に試験した。洗浄後洗浄効果を測定し、その結果から洗浄処理により得られる白色度の増加率を%で求めた。この白色度の増加率はつぎの式により求めた。

白色度の増加率%、 DBF-DBS ×100
DBI-DBS
上記の式において、
DBFは洗浄後の白色度、
DBSは洗浄前の汚染布の白色度
DBIは汚染前の布の元の白色度
を表わす。
白色度は、緑色フイルターを備えたELREPHO型回折計を使用して回折光の量を側定することにより求めた。
試験結果を示す表中の白色度の値はいずれも数回の試験結果の平均値である。
洗浄操作は60℃と90℃で行つたが、この温度は現在使用されている最も極端な洗浄温度である。
洗浄媒体としてはつぎの組成を有するものを使用した。
炭酸ナトリウム ・・・3g/l
石鹸片 ・・・0.25g/l,0.50g/l
ナトリウムトリポリホスフエート(TPP) ・・・0,3g/l
本発明の金属イオン封鎖剤組成物
(“OS_(1)”で表わされる) ・・・0,1,1.5,2g/l
硬度22°の水 ・・・全体が1lとなる量



上記の表から、炭酸ナトリウムと石鹸を含有する簡単な洗浄媒体の場合、“金属イオン封鎖剤組成物OS_(1)”を1.5g/l添加することにより硬水中での洗浄が実質的に改善されることが明らかである。同様の効果を得るためにナトリウムトリポリホスフエートは2倍量すなわち3g/lが必要である。」

2l 第8頁左上欄第8行?第9頁左上欄第4行 (甲1の摘記1pに対応)
「実施例5
実施例4の洗浄剤より複雑な組成を有する種々の洗浄剤混合物を調製した。特にこれらの全ての混合物は石鹸、非イオン表面活性剤、“ビルダー”過酸化物型の漂白剤および充填剤を含有する金属イオン封鎖剤または金属イオン封鎖剤混合物としては異る組成物を使用した。洗浄試験はTERGO-O-TOMETER型装置を使用してフランス標準硬度22°水中で60℃で行つた。各洗浄操作において8g/lの塩基性アルカリ溶液(basic lye)均等な物質、すなわち6g/lの洗浄作用を行わせる物質と2g/lのペルオクソホウ酸ナトリウムとを使用した。
試験布としてはEMPA101、KREFELD、TND綿布、TON 綿布、TNOポリエステル布およびACHのごとき標準予備汚染布を使用した。洗浄後、実施例4で述べたごとき方法で白色度を測定した。
試験に使用した洗浄剤組成物はつぎの組成物有する。各成分の使用量は洗浄剤組成物溶液1l当りのg数を表わす


第III表からCMCの添加量を僅かに増加させた場合、すなわち洗浄剤溶液1l当り0.10?0.12gまで増加させた場合、本発明の金属イオン封鎖剤組成物を1.6g/l含有する洗浄剤組成物を使用することにより、トリポリホスフエートを40重量%含有する洗浄剤組成物を使用することにより得られる白色度と同一の白色度が得られることが判る。
従つて、トリポリホスフエートを全く含有しない、金属イオン封鎖剤がN,N-ビス-ジカルボキシメチルグルタミン酸のナトリウム塩からなる組成物である洗浄剤組成物を使用することにより非常に良好な洗浄を行うことができる。この場合、同様な漂白を行うのに必要なトリポリホスフエートの半量の本発明の組成物を使用することが必要である。
第III表の結果から、2つの金属イオン封鎖剤、すなわちTPPおよび“組成物OS_(1)”とを混合してそれぞれの有する性質を失うことなく使用し得ることも判る。従つて本発明の金属イオン封鎖剤組成物によりその半分を置換することにより洗浄剤組成物中のトリポリホスフエートの含有量をその通常の含有量の1/2?3/4まで減少させることができる。」

2m 第9頁左上欄第5行?第9頁右下欄第10行 (甲1の摘記1qに対応)
「実施例6
本実施例はアルカリ性媒体中の重金属に対する“組成物OS_(1)”の金属イオン封鎖力を示す。
……
結果を第IV表に示す。

DP =重合度
EDTA=エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩
+OS =本発明の金属イオン封鎖剤組成物

第IV表の結果から、“組成物OS”を5%添加することにより、EDTAまたはNTA型の誘導体を含有する慣用組成物を使用する場合よりセルロースの保護が良好であり、従つてこの場合、布の摩耗が少なくなることの他に、河川、湖沼に対して有害な生成物を含有しない洗浄廃水が得られるという利点がある。」

2n 第11頁 (摘記1sに対応)







(3)実験報告書(甲第3号証)について
2011年 6月 7日付けの実験報告書(甲第3号証。以下、「甲3」という。)は、Marcellinus Alexander van Doornという署名のあるものであり、甲3には、以下の事項が記載されている。ただし、甲3は英文の書証であるので、記載内容の摘記はその全訳(甲3の1)に基いて行った。また、甲3の「silicate」に対して、全訳では「硅酸」が充てられているが、甲1全訳及び甲2では「珪酸」が用いられているので、以下の摘記事項では、全訳の「硅酸」を「珪酸」と書き換えて示す。

3a 第1頁本文第7行?第9行(全訳第1頁中程)
「実験の目的
GB特許第1439518号に記載され、そして「OS_(1)」を含有する幾つかの洗浄剤組成物のpH値を決定すること。」

3b 第2頁本文第2行?第3頁本文表の下5行(全訳第2頁下から4行?第4頁下から21行)
「II.実験
OS_(1)Lの製造および表IIIの洗浄剤組成物4および5におけるその使用が、再現実験され、そしてpHが測定された。
(1)GLDA-Na_(3)Hを含有するOS_(1)L組成物の製造に用いられた装置
……
(2)OS_(1)L(DOR2011-06C)の製造
製造において、実験の規模は、特許の実施例2の0.002倍であった。反応器に、139.0gのグルタミン酸モノナトリウム 一水和物(純粋のMSGの136.22g、0.728モル)および148.0gの脱イオン水を入れた。
反応器内容物の温度は50℃に上げられ、pHが19.17gの水酸化ナトリウム50.5%溶液で9.12に調節された。反応器の温度が70℃に上げられ、70℃で8.7のpHになった。MCA80%の212.5gを14時間で加え、その間、水酸化ナトリウム50.5%溶液の添加によりpHを9.2?9.5の間(pH設定値9.35)に保った。特許に示された仕込み量に留まるために水酸化ナトリウム50.5%溶液の合計量は、306.6gであった。 ・・・
得られた混合物のうち275.94gを減圧(60℃/110ミリバールの最終条件)下に濃縮して、108.91gとした。該混合物を遠心分離し、得られた液体(OS_(1)L(DOR2011-06C)と呼ぶ)は、下記の特性を示した。

得られたOS_(1)L(DOR2011-06C)は、噴霧乾燥せずに表IIIの処方4および5の再現実験に使用された。特許の実施例4(第7頁第7?8行)に記載されているように、OS_(1)Lは乾燥されて固形分とされ、それは「OS_(1)」と呼ばれ、60重量%のGLDA-Na3Hを含有および12重量%のグリコール酸ナトリウムを含有する。従って、表IIIの処方4および5におけるOS_(1)の量0.6及び0.8は、夫々、0.36および0.48のGLDA-Na3Hを含有する量のOS_(1)L(DOR-2011-06C)の量へと換算された。」

3c 第3頁本文表の下6行?第4頁本文表の下2行(全訳第4頁下から20行?第5頁下から8行)
「(3)表IIIの洗浄剤組成物処方4および5
下記の成分が、GB特許第1439518号に従う処方4および5を再現実験する洗浄剤組成物において使用された。
1.珪酸ナトリウムBW(商標)-50
・16.35%Na_(2)O、26.2%SiO_(2)、50.3°Be
2.ラウリン酸ナトリウム
・コプラ石鹸は本実験の時に入手できなかった。コプラ石鹸は、主としてラウリン酸ナトリウム塩から成る。従って、コプラ石鹸の代わりに、ラウリン酸ナトリウムを使用した。処方4および5のpHがコプラ石鹸かラウリン酸ナトリウムかの選択によって影響されるとは、私は思わない。
3.エトキシル化アルコール Brij30
・Brij30は、ポリエチレングリコールドデシルエーテルである。
4.CMC(カルボキシメチルセルロース)
5.ペルオクソホウ酸ナトリウム 4水和物
・ペルオクソホウ酸ナトリウムは、その水和物(殆ど、1あるいは4水和物)としてのみ入手できる。そのタイプが特定されていないので、4水和物を選択した。
6.STPP
・トリポリホスフェート5ナトリウム塩、即ちトリホスフェート5塩基性ナトリウム
7.12重量%のGLDA-Na3Hを含有するように希釈されたOS_(1)L(DOR2011-06C)
・上記したように、得られたOS_(1)L(DOR2011-06C)は、乾燥されずに使用された。これは、非常に粘稠であるので、正確に秤量するために脱ミネラル水で希釈された。使用された水の量は、組成物の計算に考慮された。
8.充填剤としての無水硫酸ナトリウム
1リットルとするために、22°フランス硬度の水を使用した。22°フランス硬度の水は、220mg/リットルのCaCO_(3)を含有する。
成分は、下記の表に示す量で加えられた。

組成物は、環境温度で攪拌された。pHが測定された。処方4は10.3のpHを有し、処方5は10.2のpHを有した。」

3d 第4頁本文表の下3行?第6行(全訳第5頁下から7行?下から4行)
「結論
新鮮に製造されたGLDA-Na3H組成物を用いて、GB特許第1439518号の表III(第8頁)における処方4および5を再現実験した。処方4の洗浄剤組成物は10.3のpHを有し、処方5の洗浄剤組成物は10.2のpHを有した。」

2 刊行物に記載された発明
甲1に記載された発明
甲1の「実施例5」には「洗浄剤混合物」の調製例が第III表に示されている(摘記1p)。
その表に「4」として示される洗浄剤混合物(以下、「洗浄剤混合物4」という。)は、以下のとおりの組成である。
「珪酸ナトリウム50/52°Be 1
コプラ石鹸 0.5
非イオン界面活性剤 0.5
(エトキシル化アルコール)
CMC(カルボキシメチル 0.12
セルロース)
ペルオクソホウ酸ナトリウム 2
TPP(トリポリホスフェート) 0.8
金属イオン封鎖組成物“OS_(1)” 0.6
充填剤 全体を右の値とする残部 8 (単位はg/溶液L)」
そうすると、甲1には実施例5の洗浄剤混合物4として、
「珪酸ナトリウム50/52°Beを1[g/溶液L]、コプラ石鹸を0.5[g/溶液L]、非イオン界面活性剤(エトキシル化アルコール)を0.5[g/溶液L]、CMC(カルボキシメチルセルロース)を0.12[g/溶液L]、ペルオクソホウ酸ナトリウムを2[g/溶液L]、TPP(トリポリホスフェート)を0.8[g/溶液L]、金属イオン封鎖組成物“OS_(1)”を0.6[g/溶液L]及び全体を8[g/溶液L]とする残部の量の充填剤を含有する洗浄剤混合物」
が記載されている。

また、同第III表に「5」として示される洗浄剤混合物(以下、「洗浄剤混合物5」という。)は、以下のとおりの組成である。
「珪酸ナトリウム50/52°Be 1
コプラ石鹸 0.5
非イオン界面活性剤 0.5
(エトキシル化アルコール)
CMC(カルボキシメチル 0.12
セルロース)
ペルオクソホウ酸ナトリウム 2
TPP(トリポリホスフェート) 1.6
金属イオン封鎖組成物“OS_(1)” 0.8
充填剤 全体を右の値とする残部 8 (単位はg/溶液L)」
そうすると、甲1には実施例5の洗浄剤混合物5として、
「珪酸ナトリウム50/52°Beを1[g/溶液L]、コプラ石鹸を0.5[g/溶液L]、非イオン界面活性剤(エトキシル化アルコール)を0.5[g/溶液L]、CMC(カルボキシメチルセルロース)を0.12[g/溶液L]、ペルオクソホウ酸ナトリウムを2[g/溶液L]、TPP(トリポリホスフェート)を1.6[g/溶液L]、金属イオン封鎖組成物“OS_(1)”を0.8[g/溶液L]及び全体を8[g/溶液L]とする残部の量の充填剤を含有する洗浄剤混合物」
が記載されている。

上記2つの記載事項をまとめると、甲1には、
「珪酸ナトリウム50/52°Beを1[g/溶液L]、コプラ石鹸を0.5[g/溶液L]、非イオン界面活性剤(エトキシル化アルコール)を0.5[g/溶液L]、CMC(カルボキシメチルセルロース)を0.12[g/溶液L]、ペルオクソホウ酸ナトリウムを2[g/溶液L]含有するとともに、
さらに、
TPP(トリポリホスフェート)を0.8[g/溶液L]、金属イオン封鎖組成物“OS_(1)”を0.6[g/溶液L]含有するか、または、
TPP(トリポリホスフェート)を1.6[g/溶液L]、金属イオン封鎖組成物“OS_(1)”0.8[g/溶液L]を含有し、
残部として全体を8[g/溶液L]とする充填剤を含有する、洗浄剤混合物」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

3 無効理由5について
(1)本件発明1について
ア 対比
(ア)前提
引用発明の「金属イオン封鎖組成物“OS_(1)”」について、甲1の実施例5には具体的な成分が示されていないが、甲1には、「かく得られた、表でOS_(1)と呼ばれる組成物は、次の成分を含む。N,N-ジカルボキシメチル-2-アミノ-ペンタン二酸、ナトリウム塩として 60重量%、グリコール酸ナトリウム 12重量%、塩 全体が100重量%となる量」(摘記1i)とあることから、引用発明の「“OS_(1)”」はその「OS_(1)と呼ばれる組成物」であり、そこに示される上記の各成分を含むものと認められる。
そうすると、引用発明の洗浄剤混合物には、
「“OS_(1)”」を0.6[g/溶液L]含む場合には、そのなかに「N,N-ジカルボキシメチル-2-アミノ-ペンタン二酸、ナトリウム塩」としては0.36g/L(“OS_(1)”:0.6g/Lのうち60重量%)、「グリコール酸ナトリウム」としては0.072g/L(”OS_(1)”:0.6g/Lのうち12重量%)が、それぞれ含まれており、
「“OS_(1)”」を0.8[g/溶液L]含む場合には、そのなかに「N,N-ジカルボキシメチル-2-アミノ-ペンタン二酸、ナトリウム塩」としては0.48g/L(“OS_(1)”:0.8g/Lのうち60重量%)、「グリコール酸ナトリウム」としては0.096g/L(“OS_(1)”:0.8g/Lのうち12重量%)が、それぞれ含まれている、といえる。

(イ)対比
これを前提として、本件発明1と引用発明とを対比する。
まず、成分について検討する。
引用発明の洗浄剤組成物には「“OS_(1)”」を構成する「N,N-ジカルボキシメチル-2-アミノ-ペンタン二酸、ナトリウム塩」及び「グリコール酸ナトリウム」が含まれており、これらはそれぞれ本件発明1の洗浄剤組成物の成分「A)グルタミン酸二酢酸塩」及び成分「B)グリコール酸ナトリウム」に相当する。
引用発明の「非イオン界面活性剤(エトキシル化アルコール)」は、本願発明1の成分「C)」のうちの「非イオン界面活性剤」に相当する。
引用発明の「コプラ石鹸」は、コプラに含まれる脂肪酸成分の金属塩を意味すると考えられ、脂肪酸の金属塩である石鹸は陰イオン界面活性剤の代表例の一つとして知られていることから、これは、本件発明1の成分「C)」のうちの「陰イオン界面活性剤」に相当する。
本件発明1は成分「A)」ないし「C)」を「主成分とし」ており、引用発明1ではその成分「A)」ないし「C)」を主成分とするかどうかの記載はないが、いずれも成分「A)」ないし「C)」を含有するものである点では一致しているといえる。
引用発明の「洗浄剤混合物」は本件発明1の「洗浄剤組成物」に相当する。
次に、含有量比について検討する。
引用発明は、「コプラ石鹸」を0.5g/L、「非イオン界面活性剤(エトキシル化アルコール)」を0.5g/L、「N,N-ジカルボキシメチル-2-アミノ-ペンタン二酸、ナトリウム塩」を0.36g/Lまたは0.48g/L、「グリコール酸ナトリウム」を0.072g/Lまたは0.096g/Lという量で含有するものであり、これは本件発明1における「陰イオン界面活性剤及び/又は非イオン界面活性剤1重量部に対してアスパラギン酸二酢酸塩類及び/またはグルタミン酸二酢酸塩類が0.01?1重量部、かつアスパラギン酸二酢酸塩類及び/またはグルタミン酸二酢酸塩類1重量部に対してグリコール酸塩が0.01?0.5重量部含有され」ているという含有量比を満足する。

そうすると、本件発明1と引用発明とは、
「 A)アスパラギン酸二酢酸塩類及び/またはグルタミン酸二酢酸塩類、B)グリコール酸塩、及びC)陰イオン界面活性剤及び/又は非イオン界面活性剤を含み、C)陰イオン界面活性剤及び/又は非イオン界面活性剤1重量部に対してアスパラギン酸二酢酸塩類及び/またはグルタミン酸二酢酸塩類が0.01?1重量部、かつアスパラギン酸二酢酸塩類及び/またはグルタミン酸二酢酸塩類1重量部に対してグリコール酸塩が0.01?0.5重量部含有された洗浄剤組成物。」
である点(以下「一致点」という。)で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1) 本件発明1は洗浄剤組成物の成分「A)」ないし「C)」を「主成分とし」たものであることを規定するのに対し、引用発明は洗浄剤混合物の上記成分に相当する成分についてこれを主成分とは規定していない点

(相違点2) 本件発明1は洗浄剤組成物の「pHが10?13」であることを規定するのに対し、引用発明は洗浄剤混合物のpHを規定していない点

(相違点3) 本件発明1は「アスパラギン酸二酢酸塩類及び/またはグルタミン酸二酢酸塩類」と選択的に規定するのに対し、引用発明は「グルタミン酸二酢酸塩類」についてそのように選択的に規定していない点

イ 判断
(ア)相違点1について
a 本件発明1について
本件明細書によれば、本件発明1は、家庭用又は自動車用に使用される洗浄剤組成物に関する発明であり、従来、家庭用洗剤にはキレート剤としてEDTAが含有されることが多かったが、EDTAは生分解性に欠けており、環境汚染の問題があったところ、A)アスパラギン酸二酢酸塩類及び/又はグルタミン酸二酢酸塩類、B)グリコール酸塩、及びC)陰イオン界面活性剤及び/又は非イオン界面活性剤を主成分とし、pHを10?13とする洗浄剤組成物を提供するというものであり、この洗浄剤組成物は、それぞれの成分の相乗効果によりその単独でのものより優れた洗浄性能を発揮し、従来より広く使用されているEDTAを含有する洗浄剤あるいは他のビルダーを含有する洗浄剤と同等あるいはそれ以上の洗浄性能を発揮するとともに、生分解性に優れた性質を有するものである。
本件明細書の段落【0036】の【表1】によると、上記A)ないしC)の成分を主成分とする洗浄剤組成物は、pH10?13において、EDTA4ソーダと同程度のキレート能を発揮することが認められる。本件明細書の段落【0039】の【表2】及び段落【0041】の【表3】によると、実施例9と比較例28とでは、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ(LAS)15、エチルアルコール5、アスパラギン酸-N,N-二酢酸4ソーダ(ASDA)5、グリコール酸ソーダ(GA)2を含有する点で共通し、実施例9ではpH11、比較例28ではpH8である点で異なるが、その洗浄評価は、実施例9では平均4.3であるのに対し、比較例28では平均2.8であることが認められる。また、本件明細書の段落【0043】の【表4】及び段落【0044】の【表5】によると、実施例12と比較例31とは、LAS10、ヤシ油還元アルコールエチレンオキサイド付加物型非イオン界面活性剤(EO)5、エチルアルコール5、ASDA5、GA2を含有する点で共通し、実施例12はpHが11、比較例31はpHが8である点で異なるが、その洗浄評価は、実施例12では平均4.5であるのに対し、比較例31では平均3.3であることが認められる。以上によれば、上記A)ないしC)を主成分とする洗浄剤組成物は、pH8よりもpH11の方が洗浄効果が高まることが確認できる。
また、本件明細書の【表2】及び【表3】によると、実施例10と比較例30とは、LAS15、エチルアルコール5、グルタミン酸-N,N-二酢酸4ソーダ(GLDA)5を含有し、pHが11の洗浄剤である点で共通し、実施例10の洗浄剤はさらにGA2を含有する点で異なるが、その洗浄評価は、実施例10では平均4.2であるのに対し、比較例30では平均3.5であることが認められる。また、本件明細書の【表4】及び【表5】によると、実施例13と比較例33とは、LAS10、EO5、エチルアルコール5、GLDA5を含有し、pHが11の洗浄剤である点で共通し、実施例13の洗浄剤はさらにGA2を含有する点で異なるが、その洗浄評価は、実施例13では平均4.3であるのに対し、比較例33では平均3.8であることが認められる。以上によれば、上記A)成分、C)成分に、上記B)成分であるグリコール酸塩(GA)を加えることにより、洗浄性能が増すことが確認できる。

b 引用発明について
引用発明の内容は、前記2のとおりである。
そして、甲1の記載によると、トリポリホスフェート(TPP)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の金属イオン封鎖剤が知られているところ、これらの化合物は生物により分解されず、河川を汚染し、また、リンの化合物は、生物に極めて有害な結果を生ぜしめているという問題点があったことから、引用発明は、無毒性、非汚染性かつ生物学的易分解性の金属イオン封鎖剤組成物としてグルタミン酸二酢酸又はその塩を含有する金属イオン封鎖剤組成物を提供するものである(摘記1a及び1b)。
甲1の記載によると、反応式(1)の生成物であるグルタミン酸二酢酸のナトリウム塩を高収率で得ることが困難である原因の1つは、反応式(2)に係る二次的反応によりモノクロル酢酸が加水分解されてグリコール酸ナトリウムが生成されてしまうことであり、そのために、(1)式の反応は行われるが、(2)式の反応は起こらないようにする必要があるとされている(摘記1c)。したがって、引用発明の洗浄剤混合物に含有される金属イオン封鎖剤組成物においては、グルタミン酸二酢酸を製造する際に副生するグリコール酸ナトリウムは、当該金属イオン封鎖剤の効果を発生させるという観点からは、不要な成分と認識されていたことが推測される(摘記1f)。
また、甲1には、引用発明における金属イオン封鎖組成物は、通常の洗浄剤媒体のアルカリ性のレベルに相当するpH8?11において最大であることが確認されたと記載されている。

c 相違点1の容易想到性について
(a)相違点1の具体的な内容
本件発明1及び引用発明は、いずれも、生分解性に優れた洗浄剤(金属イオン封鎖剤)の開発を解決課題の一つとする、組成物の発明である。本件発明1の洗浄剤組成物はグリコール酸塩を含有しており、引用発明の洗浄剤混合物に含まれる金属イオン封鎖剤組成物も、グリコール酸塩の1種であるグリコール酸ナトリウムを含有している。
他方、グリコール酸塩が含有される意義については、本件発明1の洗浄剤組成物では、アスパラギン酸二酢酸塩類及び/又はグルタミン酸二酢酸塩類、陰イオン界面活性剤及び/又は非イオン界面活性剤と共に、主成分である3成分の一つであるのに対し、引用発明における金属イオン封鎖剤組成物では、グリコール酸ナトリウムは、グルタミン酸二酢酸を得る際に、二次的反応によって生成される不純物であって、金属イオン封鎖剤の効果を奏する上では不要な成分であるとされている点において相違する。なお、甲1の前記記載によると、グリコール酸ナトリウムは不純物ではあるが、これを取り除くことなく、反応生成物(グリコール酸ナトリウム)を含有する溶液をそのまま金属イオン封鎖剤組成物として使用することが可能である(摘記1d)。

(b)本件発明1と引用発明における各成分の含有量等
(b-1)グリコール酸塩の含有量について
本件発明1において、グリコール酸塩の含有量は、アスパラギン酸二酢酸塩類及び/又はグルタミン酸二酢酸塩類1重量部に対して0.01?0.5重量部とされているところ、引用発明における“OS_(1)”には、グルタミン酸二酢酸のナトリウム塩が60重量%、グリコール酸ナトリウムが12重量%含まれており(ア(ア)参照)、グリコール酸ナトリウムの含有量は、グルタミン酸二酢酸塩類の1種であるグルタミン酸二酢酸のナトリウム塩1重量部に対して0.2重量部であって、本件発明1におけるグリコール酸塩の含有量の範囲内である。ア(イ)に記載のとおり、本件発明1と引用発明とは、上記の点において一致する。
(b-2)他の成分の含有量について
本件発明1では、アスパラギン酸二酢酸塩類及び/又はグルタミン酸二酢酸塩類、陰イオン界面活性剤及び/又は非イオン界面活性剤も主成分であるが、引用発明においても、グルタミン酸二酢酸塩類の1種であるグルタミン酸二酢酸のナトリウム塩、非イオン界面活性剤の1種であるエトキシル化アルコール、陰イオン界面活性剤の1種であるコプラ石鹸が含まれており、これらの含有量は、本件発明1で特定されている「陰イオン界面活性剤及び/又は非イオン界面活性剤1重量部に対してアスパラギン酸二酢酸塩類及び/またはグルタミン酸二酢酸塩類が0.01?1重量部」の範囲内である(ア(ア)参照)。ア(イ)に記載のとおり、本件発明1と引用発明とは、上記の点においても一致する。

(c)相違点1の容易想到性の有無について--小括
以上を総合して判断する。
引用発明の洗浄剤混合物は、グルタミン酸二酢酸塩類、グリコール酸塩、陰イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤を含んでおり、本件発明1の洗浄剤組成物と組成において一致し、かつ、各成分量は、本件発明1において規定された範囲内である。
このように、引用発明の洗浄剤混合物は、本件発明1の規定する3つの成分をいずれも含み、かつ、その成分量も本件発明1の規定する範囲内であることに照らすと、単に、グリコール酸ナトリウムが主成分の一つであると規定したことをもって、容易想到でなかったということはできない。

なお、上記判断については、本件無効審判事件についての先の審決の取消を請求した知的財産高等裁判所平成24年(行ケ)第10221号事件の確定判決における裁判所の事実認定及び法律判断の内容に従うものである(行政事件訴訟法第33条第1項)。

(イ)相違点2について
引用発明は、甲1に示される金属イオン封鎖剤を含む洗浄剤であり、甲1には、その金属イオン封鎖剤組成物は「硬水中のナトリウム石鹸溶液に添加された場合に……さもなくば洗浄作用を低下させるカルシウムと錯体を形成する。すなわち該金属イオン封鎖剤組成物は、カチオンを不活性化する作用を行う他に、石鹸の洗浄剤作用を可能とする。」(摘記1e)ことが示されている。そして、その金属イオン封鎖剤組成物の金属イオン封鎖作用に関して、甲1には、「本発明の組成物……の金属イオン封鎖作用は、通常の洗浄剤媒体のアルカリ性のレベルに相当するpH8?11において最大であることが確認された」(摘記1f)ことが示されており、その「実施例3」には「液体状または固体状の本発明の組成物による水の軟化力を、……pH10でアンモニア性緩衝液……中の金属イオン封鎖剤の添加量に対する関数として測定することにより求めた」(摘記1l)ことが示されている。
これらの記載をまとめれば、甲1には、「金属イオン封鎖組成物」の有する「金属イオン封鎖作用」を「石鹸」などの洗浄剤に利用し得ること、そしてその「金属イオン封鎖作用」は「pH8?11において最大」であるとされ具体的には「pH10」で確認されていること、が示されているといえる。そして、甲1の金属イオン封鎖組成物を含む洗浄剤混合物は、洗浄に際してその金属イオン封鎖組成物による金属イオン封鎖作用を利用するものであるから、これら記載に接した当業者であれば、洗浄剤混合物のpHとして、その金属イオン封鎖作用が発揮されることの期待されるpHとすることが自然であるといる。
そうすると、引用発明の洗浄剤混合物のpHとして、上記の「pH10」とすること、あるいは若干の幅を持たせて上限をpH「11」程度のものとすることは、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

なお、上記判断については、本件無効審判事件についての先の審決の取消を請求した知的財産高等裁判所平成24年(行ケ)第10221号事件の確定判決において支持されたものである(行政事件訴訟法第33条第1項)。

(ウ)相違点3について
本件発明1の相違点3に係る構成は、「アスパラギン酸二酢酸塩類」を含有する構成、「アスパラギン酸二酢酸塩類及びグルタミン酸二酢酸塩類」を含有する構成、及び「グルタミン酸二酢酸塩類」を含有する構成の、三類型を選択的に規定するものである。
このうち、「グルタミン酸二酢酸塩類」を含有する類型は、上記ア(イ)に示したとおり、引用発明に記載されたものであり両者は一致しているので、相違点には当たらない。
アスパラギン酸二酢酸塩類を含む他の二類型については、引用発明に規定されていないので、以下、この点について検討する。
引用発明は、上記2に示したとおりの洗浄剤混合物に係る発明である。
甲1と優先基礎出願を同じくする甲2には、引用発明に含まれる「金属イオン封鎖組成物“OS_(1)”」と同様の「モノクロル酢酸とアミノジカルボン酸のジナトリウム塩とをアルカリ性水性媒体中で反応させることによりアミノジカルボン酸のアミノ基の窒素にカルボキシメチル基を結合させて得られるL-またはDL-N,N-ジカルボキシメチルアミノ酸誘導体を含有することを特徴とする無毒性、非汚染性かつ生物学的易分解性の金属イオン封鎖剤組成物」(摘記2a)について、発明の詳細な説明にはその「アミノジカルボン酸としてグルタミン酸とアスパラギン酸を使用することが特に好ましい」(摘記2b)ことが示されている。上記の反応にグルタミン酸を使用した場合にはグルタミン酸二酢酸塩類が、アスパラギン酸を使用した場合にはアスパラギン酸二酢酸塩類が、それぞれ含まれる金属イオン封鎖剤組成物が得られることは当業者に明らかであり、上記箇所から甲2にはそれらを含有する組成物とすることが特に好ましいことが示されているといえる。
よって、引用発明のグルタミン酸二酢酸塩類を含む「金属イオン封鎖組成物“OS_(1)”」に替えて、甲2を参照し、アスパラギン酸二酢酸塩類を含む、又はアスパラギン酸二酢酸塩類及びグルタミン酸二酢酸塩類を含む金属イオン封鎖剤組成物を用いることは、当業者が甲2に記載された発明に基づいて適宜になし得たことである。

(エ)本件発明1の効果について
前記のとおり、本件明細書の【表1】ないし【表5】によると、アスパラギン酸二酢酸塩類及び/又はグルタミン酸二酢酸塩類、陰イオン界面活性剤及び/又は非イオン界面活性剤にグリコール酸塩を加えることにより、pH11において、洗浄能力が高まることが認められ、表1によると、上記3成分を含む洗浄剤組成物は、pH10?13において、従来品であるEDTA4ソーダと同程度の洗浄効果を奏することが認められる。
しかし、前記のとおり、引用発明の洗浄剤混合物は本件発明1の洗浄剤組成物と、グリコール酸塩を含む上記3成分を含有する点で一致する。また、甲1の実施例5自体にはpH値は明らかにされていないが、実施例5の処方4及び5を追試した本件実験報告書の結果によると、実施例5の処方4及び5の洗浄剤混合物4及び5は、pHが10.2?10.3又はこれらに近い数値である場合があり得ると認めることができる(甲3)。
なお、引用発明自体には、本件発明1のpH値の開示はないが、前記のとおり、甲3の実験報告書の結果によれば、引用発明の洗浄剤混合物はpH10?13か、少なくともこれに近い数値となる場合があることが確認できる。そして、引用発明の洗浄剤混合物のpHが、結果的に本件発明1のpH値又はこれに近い値になることがあるのであれば、引用発明の洗浄剤混合物は本件発明1の洗浄剤組成物が有する効果、又はこれに近い効果を有する場合があるといえる。引用発明の効果が後に確認されているとしても、これをもって、本件発明1が容易想到ではないということはできない。
また、甲3における実験は、甲1における実施例5の処方4及び5に記載された成分に該当する物質を用いて実施された。そして、上記実験結果におけるpH10.3又は10.2か、少なくともこれに近い数値となる場合があると認められれば、引用発明の洗浄剤混合物は、本件発明1と同等か、少なくともこれに近い効果を内在しているということができる。なお、本件実験では、コプラ石鹸の代わりにラウリン酸ナトリウムを用い、乾燥したOS_(1)を水に溶解する代わりに、これを乾燥させないで用いているが、これらによって、pH値が大きく変わると認めることはできない。
以上によると、引用発明の洗浄剤混合物は、本件発明1の洗浄剤組成物と成分を同じくし、さらに、引用発明には、pH値が本件発明1で規定する10?13の範囲内か、少なくともこれに近い数値が開示されているから、同開示を前提とすれば、引用発明は本件発明1と同等か、少なくともこれに近い効果を奏する。したがって、本件特許出願前に公知であった引用発明に比べ、本件発明1に格別の効果があるということはできない。

なお、上記判断については、本件無効審判事件についての先の審決の取消を請求した知的財産高等裁判所平成24年(行ケ)第10221号事件の確定判決における裁判所の事実認定及び法律判断の内容に従うものである(行政事件訴訟法第33条第1項)。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1は、本件特許出願の出願前に頒布された甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるといえる。

(2)本件発明2について
ア 対比
本願発明2は、本願発明1において「衣料用洗剤」との事項を備えたものであるから、本願発明2と引用発明とを対比すると、両者は、上記一致点で一致し、上記相違点1ないし3及び次の点で相違する。

(相違点4)
本件発明2は、洗浄剤組成物を「衣料用洗剤」と規定するのに対し、引用発明は、衣料用洗剤と規定していない点

イ 判断
(ア)相違点1について
上記(1)イ(ア)に示したとおり、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(イ)相違点2について
上記(1)イ(イ)に示したとおり、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(ウ)相違点3について
上記(1)イ(ウ)に示したとおり、当業者が甲2に記載された発明に基づいて適宜になし得たものである。

(エ)相違点4について
引用発明は、甲1に示される金属イオン封鎖剤を含む洗浄剤であり、甲1には、その金属イオン封鎖剤組成物は「……アルカリ性剤に関してばかりでなく重金属イオンに対しても顕著な金属イオン封鎖性を示し、この封鎖性は従来得られた金属イオン封鎖性よりもはるかに良好であり、その結果つぎに示す分野において極めてすぐれた工業的利点および用途が生じる。……-織物の処理……」(摘記1e)、「実施例4 TERG-O-TOMETER装置を使用して洗浄試験を行った。使用した水の硬度はフランス標準硬度で表わして22°であった。洗浄試験に供する布は、人為的に汚染しかつ標準化された亜麻布であった。下記の参照:EMPA101、KREFELD、ACH、TNO綿布およびTNOポリエステルに対応する標準汚染を一緒に行った。……」(摘記1o)、「実施例5 直上の実施例と異なりかつより複雑な洗浄剤混合物を調製した。……用いられた布は、EMPA101、KREFELD、TNO綿布、TNOポリエステル布およびACHのごとき標準予備汚染布であった。」(摘記1p)ことが示されている。
これらの記載をまとめれば、甲1には、「金属イオン封鎖組成物」の有する「金属イオン封鎖作用」を「織物、布」の洗浄剤に利用し得ることが示されているといえ、また「織物、布」を衣料用として用いることも本件特許出願の出願前の技術常識である。
そうすると、引用発明の洗浄剤混合物を「衣料用織物、布」の洗浄剤に用いることは、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(オ)本件発明2の効果について
引用発明を衣料用洗剤として用いる点に格別の効果を奏するものは認められないから、上記(1)イ(エ)に示したと同様の理由により、本件特許出願前に公知であった引用発明に比べ、本件発明2に格別の効果があるということはできない。

(2-3)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明2は、本件特許出願の出願前に頒布された甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるといえる。

(3)本件発明3について
ア 対比
本願発明3は、本願発明1において「床、壁、家具等住居用洗剤」との事項を備えたものであるから、本願発明3と引用発明とを対比すると、両者は、上記一致点で一致し、上記相違点1ないし3及び次の点で相違する。

(相違点5)
本件発明3は、洗浄剤組成物を「床、壁、家具等住居用洗剤」と規定するのに対し、引用発明は、床、壁、家具等住居用洗剤と規定していない点

イ 判断
(ア)相違点1について
上記(1)イ(ア)に示したとおり、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(イ)相違点2について
上記(1)イ(イ)に示したとおり、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(ウ)相違点3について
上記(1)イ(ウ)に示したとおり、当業者が甲2に記載された発明に基づいて適宜になし得たものである。

(エ)相違点5について
引用発明は、甲1に示される金属イオン封鎖剤を含む洗浄剤であり、甲1には、その金属イオン封鎖剤組成物は「……アルカリ性剤に関してばかりでなく重金属イオンに対しても顕著な金属イオン封鎖性を示し、この封鎖性は従来得られた金属イオン封鎖性よりもはるかに良好であり、その結果つぎに示す分野において極めてすぐれた工業的利点および用途が生じる。……-洗浄剤、洗濯用水(lyes)、および陶器の洗浄に使用する製品の調製……」(摘記1e)ことが示されている。
この記載から、甲1には、「金属イオン封鎖組成物」の有する「金属イオン封鎖作用」を「陶器」の洗浄剤に利用し得ることが示されているといえる。
そうすると、引用発明の洗浄剤混合物を陶器と同様の無機材料からなる「床、壁、家具等住宅用」の洗浄剤に用いることは、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(オ)本件発明3の効果について
引用発明を床、壁、家具等住宅用洗剤として用いる点に格別の効果を奏するものは認められないから、上記(1)イ(エ)に示したと同様の理由により、本件特許出願前に公知であった引用発明に比べ、本件発明3に格別の効果があるということはできない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明3は、本件特許出願の出願前に頒布された甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるといえる。

(4)本件発明4について
ア 対比
本願発明4は、本願発明1において「調理用レンジ、台所収納庫等台所用洗剤」との事項を備えたものであるから、本願発明4と引用発明とを対比すると、両者は、上記一致点で一致し、上記相違点1ないし3及び次の点で相違する。

(相違点6)
本件発明4は、洗浄剤組成物を「調理用レンジ、台所収納庫等台所用洗剤」と規定するのに対し、引用発明は、調理用レンジ、台所収納庫等台所用洗剤と規定していない点

イ 判断
(ア)相違点1について
上記(1)イ(ア)に示したとおり、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(イ)相違点2について
上記(1)イ(イ)に示したとおり、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(ウ)相違点3について
上記(1)イ(ウ)に示したとおり、当業者が甲2に記載された発明に基づいて適宜になし得たものである。

(エ)相違点6について
引用発明は、甲1に示される金属イオン封鎖剤を含む洗浄剤であり、甲1には、その金属イオン封鎖剤組成物は「……アルカリ性剤に関してばかりでなく重金属イオンに対しても顕著な金属イオン封鎖性を示し、この封鎖性は従来得られた金属イオン封鎖性よりもはるかに良好であり、その結果つぎに示す分野において極めてすぐれた工業的利点および用途が生じる。……-金属の処理および金属表面の脱脂……」(摘記1e)ことが示されている。
この記載から、甲1には、「金属イオン封鎖組成物」の有する「金属イオン封鎖作用」を「金属表面の脱脂」のための洗浄剤に利用し得ることが示されているといえる。
そうすると、引用発明の洗浄剤混合物を金属表面を有する「調理用レンジ、台所収納庫等台所」の洗浄剤に用いることは、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(オ)本件発明4の効果について
引用発明を調理用レンジ、台所収納庫等台所用洗剤として用いる点に格別の効果を奏するものは認められないから、上記(1)イ(エ)に示したと同様の理由により、本件特許出願前に公知であった引用発明に比べ、本件発明4に格別の効果があるということはできない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明4は、本件特許出願の出願前に頒布された甲1に記載された発明、甲1の記載及び甲2の記載に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるといえる。

(5)本件発明5について
ア 対比
本願発明5は、本願発明1において「石鹸」との事項を備えたものであるから、本願発明5と引用発明とを対比すると、両者は、上記一致点で一致し、上記相違点1ないし3及び次の点で相違する。

(相違点7)
本件発明5は、洗浄剤組成物を「石鹸」と規定するのに対し、引用発明は、石鹸と規定していない点

イ 判断
(ア)相違点1について
上記(1)イ(ア)に示したとおり、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(イ)相違点2について
上記(1)イ(イ)に示したとおり、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(ウ)相違点3について
上記(1)イ(ウ)に示したとおり、当業者が甲2に記載された発明に基づいて適宜になし得たものである。

(エ)相違点7について
引用発明は、甲1に示される金属イオン封鎖剤を含む洗浄剤であり、甲1には、その金属イオン封鎖剤組成物は「硬水中のナトリウム石鹸溶液に添加された場合に……さもなくば洗浄作用を低下させるカルシウムと錯体を形成する。すなわち該金属イオン封鎖剤組成物は、カチオンを不活性化する作用を行う他に、石鹸の洗浄剤作用を可能とする。」(摘記1e)ことが示されている。
この記載から、甲1には、「金属イオン封鎖組成物」の有する「金属イオン封鎖作用」を「石鹸」などの洗浄剤に利用し得ることが示されているといえる。
そうすると、引用発明の洗浄剤混合物を「石鹸」などの洗浄剤に用いることは、当業者であれば甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(オ)本件発明5の効果について
引用発明を石鹸として用いる点に格別の効果を奏するものは認められないから、上記(1)イ(エ)に示したと同様の理由により、本件特許出願前に公知であった引用発明に比べ、本件発明5に格別の効果があるということはできない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明5は、本件特許出願の出願前に頒布された甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるといえる。

(6)本件発明6について
ア 対比
本願発明6は、本願発明1において「トイレ用洗剤」との事項を備えたものであるから、本願発明6と引用発明とを対比すると、両者は、上記一致点で一致し、上記相違点1ないし3及び次の点で相違する。

(相違点8)
本件発明6は、洗浄剤組成物を「トイレ用洗剤」と規定するのに対し、引用発明は、トイレ用洗剤と規定していない点

イ 判断
(ア)相違点1について
上記(1)イ(ア)に示したとおり、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(イ)相違点2について
上記(1)イ(イ)に示したとおり、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(ウ)相違点3について
上記(1)イ(ウ)に示したとおり、当業者が甲2に記載された発明に基づいて適宜になし得たものである。

(エ)相違点8について
引用発明は、甲1に示される金属イオン封鎖剤を含む洗浄剤であり、甲1には、その金属イオン封鎖剤組成物は「……アルカリ性剤に関してばかりでなく重金属イオンに対しても顕著な金属イオン封鎖性を示し、この封鎖性は従来得られた金属イオン封鎖性よりもはるかに良好であり、その結果つぎに示す分野において極めてすぐれた工業的利点および用途が生じる。……-洗浄剤、洗濯用水(lyes)、および陶器の洗浄に使用する製品の調製……」(摘記1e)ことが示されている。
この記載から、甲1には、「金属イオン封鎖組成物」の有する「金属イオン封鎖作用」を「陶器」の洗浄剤に利用し得ることが示されているといえる。
そうすると、引用発明の洗浄剤混合物を陶器と同様の無機材料からなる「トイレ」の洗浄剤に用いることは、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(オ)本件発明6の効果について
引用発明をトイレ用洗剤として用いる点に格別の効果を奏するものは認められないから、上記(1)イ(エ)に示したと同様の理由により、本件特許出願前に公知であった引用発明に比べ、本件発明6に格別の効果があるということはできない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明6は、本件特許出願の出願前に頒布された甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるといえる。

(7)本件発明7について
ア 対比
本願発明7は、本願発明1において「浴室、浴槽用洗剤」との事項を備えたものであるから、本願発明7と引用発明とを対比すると、両者は、上記一致点で一致し、上記相違点1ないし3及び次の点で相違する。

(相違点9)
本件発明6は、洗浄剤組成物を「浴室、浴槽用洗剤」と規定するのに対し、引用発明は、浴室、浴槽用洗剤と規定していない点

イ 判断
(ア)相違点1について
上記(1)イ(ア)に示したとおり、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(イ)相違点2について
上記(1)イ(イ)に示したとおり、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(ウ)相違点3について
上記(1)イ(ウ)に示したとおり、当業者が甲2に記載された発明に基づいて適宜になし得たものである。

(エ)相違点9について
引用発明は、甲1に示される金属イオン封鎖剤を含む洗浄剤であり、甲1には、その金属イオン封鎖剤組成物は「……アルカリ性剤に関してばかりでなく重金属イオンに対しても顕著な金属イオン封鎖性を示し、この封鎖性は従来得られた金属イオン封鎖性よりもはるかに良好であり、その結果つぎに示す分野において極めてすぐれた工業的利点および用途が生じる。……-洗浄剤、洗濯用水(lyes)、および陶器の洗浄に使用する製品の調製……」(摘記1e)ことが示されている。
この記載から、甲1には、「金属イオン封鎖組成物」の有する「金属イオン封鎖作用」を「陶器」の洗浄剤に利用し得ることが示されているといえる。
そうすると、引用発明の洗浄剤混合物を陶器と同様の無機材料からなる「浴室、浴槽」の洗浄剤に用いることは、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(オ)本件発明7の効果について
引用発明を浴室、浴槽用洗剤として用いる点に格別の効果を奏するものは認められないから、上記(1)イ(エ)に示したと同様の理由により、本件特許出願前に公知であった引用発明に比べ、本件発明7に格別の効果があるということはできない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明7は、本件特許出願の出願前に頒布された甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるといえる。

(8)本件発明8について
ア 対比
本願発明8は、本願発明1において「ガラス用洗剤」との事項を備えたものであるから、本願発明8と引用発明とを対比すると、両者は、上記一致点で一致し、上記相違点1ないし3及び次の点で相違する。

(相違点10)
本件発明8は、洗浄剤組成物を「ガラス用洗剤」と規定するのに対し、引用発明は、ガラス用洗剤と規定していない点

イ 判断
(ア)相違点1について
上記(1)イ(ア)に示したとおり、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(イ)相違点2について
上記(1)イ(イ)に示したとおり、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(ウ)相違点3について
上記(1)イ(ウ)に示したとおり、当業者が甲2に記載された発明に基づいて適宜になし得たものである。

(エ)相違点10について
引用発明は、甲1に示される金属イオン封鎖剤を含む洗浄剤であり、甲1には、その金属イオン封鎖剤組成物は「……アルカリ性剤に関してばかりでなく重金属イオンに対しても顕著な金属イオン封鎖性を示し、この封鎖性は従来得られた金属イオン封鎖性よりもはるかに良好であり、その結果つぎに示す分野において極めてすぐれた工業的利点および用途が生じる。……-洗浄剤、洗濯用水(lyes)、および陶器の洗浄に使用する製品の調製……」(摘記1e)ことが示されている。
この記載から、甲1には、「金属イオン封鎖組成物」の有する「金属イオン封鎖作用」を「陶器」の洗浄剤に利用し得ることが示されているといえる。
そうすると、引用発明の洗浄剤混合物を陶器と同様の無機材料からなる「ガラス」の洗浄剤に用いることは、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(オ)本願発明8の効果について
引用発明をガラス用洗剤として用いる点に格別の効果を奏するものは認められないから、上記(1)イ(エ)に示したと同様の理由により、本件特許出願前に公知であった引用発明に比べ、本件発明8に格別の効果があるということはできない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明8は、本件特許出願の出願前に頒布された甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるといえる。

(9)本件発明9について
ア 対比
本願発明9は、本願発明1において「自動車用洗剤」との事項を備えたものであるから、本願発明9と引用発明とを対比すると、両者は、上記一致点で一致し、上記相違点1ないし3及び次の点で相違する。

(相違点11)
本件発明9は、洗浄剤組成物を「自動車用洗剤」と規定するのに対し、引用発明は、自動車用洗剤と規定していない点

イ 判断
(ア)相違点1について
上記(1)イ(ア)に示したとおり、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(イ)相違点2について
上記(1)イ(イ)に示したとおり、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(ウ)相違点3について
上記(1)イ(ウ)に示したとおり、当業者が甲2に記載された発明に基づいて適宜になし得たものである。

(エ)相違点11について
引用発明は、甲1に示される金属イオン封鎖剤を含む洗浄剤であり、甲1には、その金属イオン封鎖剤組成物は「……アルカリ性剤に関してばかりでなく重金属イオンに対しても顕著な金属イオン封鎖性を示し、この封鎖性は従来得られた金属イオン封鎖性よりもはるかに良好であり、その結果つぎに示す分野において極めてすぐれた工業的利点および用途が生じる。……-金属の処理および金属表面の脱脂……」(摘記1e)ことが示されている。
この記載から、甲1には、「金属イオン封鎖組成物」の有する「金属イオン封鎖作用」を「金属表面の脱脂」のための洗浄剤に利用し得ることが示されているといえる。
そうすると、引用発明の洗浄剤混合物を金属表面を有する「自動車」の洗浄剤に用いることは、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。

(オ)本件発明9の効果について
引用発明を自動車用洗剤として用いる点に格別の効果を奏するものは認められないから、上記(1)イ(エ)に示したと同様の理由により、本件特許出願前に公知であった引用発明に比べ、本件発明9に格別の効果があるということはできない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明9は、本件特許出願の出願前に頒布された甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるといえる。

(10)無効理由5についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?9についての特許は、請求人の主張する無効理由5によって無効とすべきものである。


第6 むすび
結局、本件発明1?9についての特許は、いずれも無効とすべきものである。

本件審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-13 
結審通知日 2013-06-17 
審決日 2013-06-28 
出願番号 特願平8-203811
審決分類 P 1 113・ 113- Z (C11D)
P 1 113・ 121- Z (C11D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 守安 智井上 典之  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 菅野 芳男
橋本 栄和
登録日 2007-03-09 
登録番号 特許第3927623号(P3927623)
発明の名称 洗浄剤組成物  
代理人 松井 光夫  
代理人 林 篤史  
代理人 加藤 由加里  
代理人 大家 邦久  
代理人 村上 博司  
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