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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1277613
審判番号 不服2011-27790  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-26 
確定日 2013-08-06 
事件の表示 特願2006-542773「熱電装置およびその用途」拒絶査定不服審判事件〔平成18年1月5日国際公開、WO2006/001827、平成19年7月5日国内公表、特表2007-518252〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2004年12月2日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2003年12月2日、2003年12月2日及び2004年3月30日 アメリカ合衆国)を国際出願とする特許出願であって、平成19年11月26日に手続補正書が提出され、平成21年2月19日付けの拒絶理由通知に対して同年8月24日に意見書及び手続補正書が提出され、平成22年1月15日付けの拒絶理由通知に対して同年7月20日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに、同年8月17日付けの拒絶理由通知に対して同年9月29日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年9月29日付けで拒絶査定がなされた。
それに対して、同年12月26日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、その後、平成24年3月1日付けの最後の拒絶理由通知に対して応答はなされなかった。

第2.平成23年12月26日に提出された手続補正書による補正について
1.補正の内容
平成23年12月26日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1?27を、請求項1?19及び25?27を削除するとともに、当該削除に伴って請求項の番号及び引用する請求項の番号を修正して、補正後の特許請求の範囲の請求項1?5とするものであり、補正前の請求項20及び補正後の請求項1は、各々次のとおりである。

(補正前)
「【請求項20】
コイル構成、折り畳み構成、または巻構成である可とう性の基板を設ける段階;
n型熱電材料の複数の薄膜を可とう性の基板上に、xが約2であり、yが約3である、Bi_(x)Te_(y)合金、Sb_(x)Te_(y)合金、およびBi_(x)Se_(y)合金またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれた2つから同時にスパッタ堆積させる段階;
p型熱電材料の複数の薄膜を可とう性の基板上に、xが約2であり、yが約3である、Bi_(x)Te_(y)合金、Sb_(x)Te_(y)合金、およびBi_(x)Se_(y)合金またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれた2つから同時にスパッタ堆積させる段階;
p型熱電材料の薄膜をn型熱電材料の薄膜に電気的に接続することによって可とう性の基板上に複数の熱電対を形成する段階
を含む、熱電電源を製造する方法。」

(補正後)
「【請求項1】
コイル構成、折り畳み構成、または巻構成である可とう性の基板を設ける段階;
n型熱電材料の複数の薄膜を可とう性の基板上に、xが約2であり、yが約3である、Bi_(x)Te_(y)合金、Sb_(x)Te_(y)合金、およびBi_(x)Se_(y)合金またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれた2つから同時にスパッタ堆積させる段階;
p型熱電材料の複数の薄膜を可とう性の基板上に、xが約2であり、yが約3である、Bi_(x)Te_(y)合金、Sb_(x)Te_(y)合金、およびBi_(x)Se_(y)合金またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれた2つから同時にスパッタ堆積させる段階;
p型熱電材料の薄膜をn型熱電材料の薄膜に電気的に接続することによって可とう性の基板上に複数の熱電対を形成する段階
を含む、熱電電源を製造する方法。」

2.補正の適否について
本件補正は、特許法第17条の2第4項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項をいう。以下同じ。)第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当するから、本件補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たす。
また、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定を満たすことは明らかである。
したがって、本件補正は適法になされたものである。

第3.本願発明
本願の請求項1?5に係る発明は、本件補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項1に記載されている事項により特定される上記第2.1.の「(補正後)」の箇所に記載したとおりのものであって、再掲すると次のとおりである。

「【請求項1】
コイル構成、折り畳み構成、または巻構成である可とう性の基板を設ける段階;
n型熱電材料の複数の薄膜を可とう性の基板上に、xが約2であり、yが約3である、Bi_(x)Te_(y)合金、Sb_(x)Te_(y)合金、およびBi_(x)Se_(y)合金またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれた2つから同時にスパッタ堆積させる段階;
p型熱電材料の複数の薄膜を可とう性の基板上に、xが約2であり、yが約3である、Bi_(x)Te_(y)合金、Sb_(x)Te_(y)合金、およびBi_(x)Se_(y)合金またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれた2つから同時にスパッタ堆積させる段階;
p型熱電材料の薄膜をn型熱電材料の薄膜に電気的に接続することによって可とう性の基板上に複数の熱電対を形成する段階
を含む、熱電電源を製造する方法。」

第4.引用刊行物に記載された発明
1.引用例1:特公昭43-25391号公報
(1)本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布され、平成24年3月1日付けの最後の拒絶理由通知において引用された刊行物である特公昭43-25391号公報(以下「引用例1」という。)には、第1図?第3図とともに次の記載がある(ここにおいて、下線は当合議体が付加したものである。以下同じ。)。

a.「本発明は熱電素子群体の製造方法に関する。」(1ページ左欄18行)

b.「第1図に示すように熱伝導率が小さく可撓性の電気絶縁材料例えばクラフト紙の基体リボン1に真空蒸着法またはスパツタリング法等により所定のマスクを通してP型およびN型の金属薄膜素子帯2,3を所定の間隔で交互にほぼ並行して被着させた後該被着金属膜の相隣るP型、N型金属膜の両端部を交互に金属導電薄膜4の被着により短絡し、さらに基体リボン1の両端にあるP型、N型金属膜に接する金属導電薄膜4’にリード線5をそれぞれ接続することによつて可撓性のある直列熱電素子群体10を形成させる。
上記のごとくにして形成させた熱電素子群体は第2図aに示すように筒状に巻き上げたりまたは第2図cのように折り曲げて重ね合わせた後防湿性の樹脂例えばエポキシ樹脂を含浸させて一体に固化して第3図b(審決注:「第2図b」の誤記)に示すように金属導電薄膜を被着させた端部に伝熱板6を電気絶縁的に取着して熱電素子装置を形成させる。
実際上記本発明の方法により幅5mm、長さ200mm、厚さ0.05mmのクラフト紙の片面に(Bi,Sb)_(2)(Te,Se)_(3)系のP型、N型金属薄膜帯を幅1mm、厚さ1μ、間隔0.5mmで66対被着し、該P型、N型の金属薄膜帯を直列接続となるように該金属膜帯の両端部にSnの導電薄膜を真空蒸着した後円筒状に巻回しエポキシ樹脂液に浸漬して一体に固化し、両端にアルマイトの伝熱板をエポキシ系接着剤で固着した装置ではIoptの最適電流値は1mAで、そのときの温度差ΔTは熱接点の温度Th=27℃のとき35°であつた。なお端子間電圧は5.5Vである。」(1ページ右欄13行?42行)

c.「本発明は上記構成を有するため1A以下の低電流用熱電素子群体を容易に製作することが可能でありまた素子群は一度に多数対製作し必要に応じた素子対数を切り取つて組立てる等の作業も可能で製作能率上著しく有効である。さらに装置の設計変更の場合には被膜の幅、厚さを変更するのみで簡単に行うことが可能であり、さらにまた従来品の不良原因であつた導電板の接着不良は本方法においては皆無となる等種々の利点を有する。」(2ページ左欄15行?右欄6行)

(2)以上を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「可撓性の電気絶縁材料の基体リボン1を設ける段階と、
前記基体リボン1にスパッタリング法により所定のマスクを通して(Bi,Sb)_(2)(Te,Se)_(3)系のP型金属薄膜素子帯2及び(Bi,Sb)_(2)(Te,Se)_(3)系のN型金属薄膜素子帯3を所定の間隔で交互にほぼ並行して被着させる段階と、
被着させた相隣る前記P型金属薄膜素子帯2と前記N型金属薄膜素子帯3の両端部を交互に金属導電薄膜4の被着により短絡させて、可撓性のある熱電素子群体10を形成させる段階と、
前記熱電素子群体10を筒状に巻き上げ、または折り曲げて重ね合わせる段階を含む熱電素子群体の製造方法。」

2.引用例2:特開平5-182911号公報
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布され、平成24年3月1日付けの最後の拒絶理由通知において引用された刊行物である特開平5-182911号公報(以下「引用例2」という。)には、図1とともに次の記載がある。

a.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はトンネル接合素子、反射鏡、超伝導体、超格子半導体、強磁性体などの作製に使用される物理的薄膜作製法の一つであるスパッタ成膜法に関し、異なる二つの物質の合金膜、あるいは交互且つ任意の厚さで積み重ねた積層膜を作製するスパッタ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のスパッタ装置の解説の一例が、産業技術サービスセンター発刊、実用真空技術総覧(1991)608頁から675頁にある。最も主要なマグネトロンスパッタ法で合金膜を作製する場合、合金を構成する物質のスパッタ電極を用い同時にスパッタするか、合金ターゲットを使用していた。」

b.「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この対向ターゲット式スパッタ装置で異なる物質の合金膜や、異なる物質を交互且つ任意の厚さで積み重ねた積層膜を作製することができなかった。本発明の目的は、対向ターゲット式スパッタ装置の利点を活かし、任意の組成の合金膜を作製することにある。さらに、異なる物質を交互且つ任意の厚さで積み重ねた積層膜において、組成のずれがない膜厚分布の均一なものを作製することにある。」

c.「【0014】
【実施例】(実施例1)スパッタ電極に印加する入力電力を独立に制御することによって、任意な組成の合金膜を作製した例について説明する。
【0015】本発明の実施例のスパッタ装置の構造を図1に示す。一つのスパッタ電極は、アノード電極1とカソード電極2で構成されている。アノード電極は電気的にアースされている。カソード電極内には中空円盤状の磁石3が貼付けてあり、内部は水冷されている。このスパッタ電極を向かい合わせて配置し、それぞれのカソード電極には異なる成分又は組成のターゲット(A)4とターゲット(B)5が設置されている。ターゲットは、直径50ミリメートル、厚さ5ミリメートルの大きさである。ターゲットの組成は、一方がシリコン、他方がモリブデンである。向かい合うターゲット間の距離は、表面から表面まで50ミリメートルである。磁石3により発生する磁力線は、一方のターゲットを貫き他方のターゲットに入るようになっている。磁力線はターゲットの間の空間をほぼ直線に走っており、磁束密度もほぼ一定である。基板保持台(基板ヒータ)6に置かれている基板7は、2つのターゲットの中心を結ぶ線から、5センチメートル離れた場所に置かれている。ターゲット間隔及び基板保持台位置はターゲットの大きさや成膜条件(スパッタガス圧力、基板温度、入力電力)によって変化し、必ずしも今回の値には限定されない。
【0016】シリコンとモリブデンの合金を作製する。基板には(100)面のシリコンウェハを使用し、基板温度は室温とした。真空ポンプ12で容器内を10のマイナス5乗パスカルまで減圧し、ガス導入バルブ13からアルゴンガスを導入し10のマイナス1乗パスカルまで加圧した。まず最初に、スパッタエッチング電極によって基板表面の不純物をエッチング除去する。双方のカソード電極に電源10、電源11によって負の電位の入力電力を4時間印加する。この電源は電圧一定または電流一定でも印加入力することが可能なものである。作製した合金膜の組成は高周波誘導結合プラズマ分光法で測定した。それぞれのターゲット電極に印加した入力電力及び作製した膜の組成分析結果を表1に示す。」

3.引用例3:特開平7-173623号公報
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布され、平成24年3月1日付けの最後の拒絶理由通知において引用された刊行物である特開平7-173623号公報(以下「引用例3」という。)には、図1?3及び5とともに次の記載がある。

a.「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は高真空中に設けられた基板の表面に窒化物薄膜又は酸化物薄膜を形成するときに使用される薄膜作成装置に関するものである。」

b.「【0006】その次に、従来の装置の第3例が図5に示されている。同図において、真空チャンバー1内の下部には2つのカソード2がハの字状に並列に配置され、各カソード2の上にはターゲット3が載置されている。真空チャンバー1内の上部には基板4を載せた基板回転機構10がカソード2およびターゲット3と対向するように配設されている。なお、その他の符号で従来の装置の第1例を示す図3の符号と同一のものは同一物につきその説明を省略する。
【0007】このような従来の第3例においても、カソード2と基板4との間でプラズマ放電が起こり、そのプラズマ中のイオンターゲット3をスパッタし、基板4の表面にターゲット3より飛び出したスパッタ粒子が付着して薄膜が形成されるようになる。その際、ハの字状に並列に配置されたカソード2の上にターゲット3を載置しているので、基板4の表面にターゲット材料の同時付着が可能になる。」

c.「【0010】更に、第3例は、ハの字状に並列に配置されたカソード2上のターゲット3を同時にスパッタできるようにしているが、各ターゲット3のエロージョンが必ずしも均一にはならず、不均一になり易くなる問題が起きた。
【0011】更にその上、第1例、第2例および第3例は、窒素ガスやアンモニアガス、あるいは酸素ガスを供給して、窒素又は酸素の補足を行っいるが、必ずしも完全とはいえない問題が起きた。
【0012】この発明の目的は、従来の上記問題を解決して、複数のターゲットを同時にスパッタして、薄膜の膜厚制御および組成比の調整を可能にするとともに、ターゲットのエロージョンを均一にし、窒素又は酸素の補足を十分に行うことのできる薄膜作成装置を提供することにある。」

d.「【0015】
【実施例】以下、この発明の実施例について図面を参照しながら説明する。この発明の実施例の薄膜作成装置は図1に示されており、同図において、真空チャンバー21内の下部には2つの高真空高速プラズマスパッタ源22がハの字状に並列に配置され、その高真空高速プラズマスパッタ源22のカソード23の上にはターゲット24が載置されている。真空チャンバー21内の上部には基板25を載せた基板回転機構26が配設され、基板25がターゲット24と対向している。基板25の背後には基板加熱機構27が配設されている。また、高真空高速プラズマスパッタ源22前方のターゲット24側にはシャッタ38が配設されている。更に、真空チャンバー21には活性ガス供給機構28が設けられ、その活性ガス供給機構28より真空チャンバー21内に活性窒素又は活性酸素が供給される。活性ガス供給機構28には活性ガス供給機構用電源29と活性ガス供給機構用ガス制御装置30とが接続されている。なお、図中、31は膜厚モニタである。
【0016】図2は高真空高速プラズマスパッタ源22の詳細を示しており、同図において、真空ケース32の下部にはカソード23が取り付けられ、そのカソード23の上にはターゲット24が載置されている。真空ケース32内にはヘリカルコイル33が配設され、そのヘリカルコイル33の中心軸はターゲット24面に直交している。ヘリカルコイル33には高周波発振源34が接続されている。図2において、35は電磁石、36は高周波電源、37は永久磁石である。
【0017】このような実施例においては、基板25とカソード23との間で放電が起こりプラズマが発生するが、プラズマ中のヘリコン波はヘリカルコイル33により励起され、高真空高速プラズマスパッタ源22内で高密度プラズマが生成される。この高密度プラズマ中のイオンはターゲット24をスパッタし、スパッタ粒子が基板25に付着して、そこに薄膜が形成されるようになる。その際、複数のターゲット24を同時にスパッタすることが可能になるとともに、基板回転機構26で基板25を回転することが可能になり、膜厚および組成比の調整ができるようになる。更に、真空チャンバー21内に活性窒素又は活性酸素を供給する活性ガス供給機構28を備えているので、真空チャンバー21内に窒素又は酸素の補足が可能になり、窒化又は酸化させながら薄膜を形成することが出来るようになる。」

第5.本願発明と引用発明との対比
1.本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「可撓性の電気絶縁材料の基体リボン1」は、本願発明の「可とう性の基板」に相当し、また、引用発明の「前記熱電素子群体10を筒状に巻き上げ、または折り曲げて重ね合わせる」ことにおいて、引用発明の「筒状に巻き上げ」ることは、本願発明の「コイル構成」、又は「巻構成」に相当し、引用発明の「折り曲げて重ね合わせる」ことは、本願発明の「折り畳み構成」に相当する。
したがって、引用発明は、本願発明と同様に、「コイル構成、折り畳み構成、または巻構成である可とう性の基板を設ける段階」を備えているものと認められる。

2.引用発明の「前記基体リボン1にスパツタリング法により所定のマスクを通して(Bi,Sb)_(2)(Te,Se)_(3)系のP型金属薄膜素子帯2及び(Bi,Sb)_(2)(Te,Se)_(3)系のN型金属薄膜素子帯3を所定の間隔で交互にほぼ並行して被着させる段階」において、引用発明の「N型金属薄膜素子帯3」は、本願発明の「n型熱電材料の」「薄膜」に相当し、また、引用発明の「N型金属薄膜素子帯3」が複数あることは明らかであるから、引用発明の「前記基体リボン1にスパツタリング法により所定のマスクを通して」「(Bi,Sb)_(2)(Te,Se)_(3)系のN型金属薄膜素子帯3を」「被着させる段階」は、本願発明の「n型熱電材料の複数の薄膜を可とう性の基板上に、」「スパッタ堆積させる段階」に相当する。

3.引用発明の「前記基体リボン1にスパツタリング法により所定のマスクを通して(Bi,Sb)_(2)(Te,Se)_(3)系のP型金属薄膜素子帯2及び(Bi,Sb)_(2)(Te,Se)_(3)系のN型金属薄膜素子帯3を所定の間隔で交互にほぼ並行して被着させる段階」において、引用発明の「P型金属薄膜素子帯2」は、本願発明の「p型熱電材料の」「薄膜」に対応し、また、引用発明の「P型金属薄膜素子帯2」が複数あることは明らかであるから、引用発明の「前記基体リボン1にスパツタリング法により所定のマスクを通して(Bi,Sb)_(2)(Te,Se)_(3)系のP型金属薄膜素子帯2」「を」「被着させる段階」は、本願発明の「p型熱電材料の複数の薄膜を可とう性の基板上に、」「スパッタ堆積させる段階」に相当する。

4.引用発明の「被着させた相隣る前記P型金属薄膜素子帯2と前記N型金属薄膜素子帯3の両端部を交互に金属導電薄膜4の被着により短絡させて、可撓性のある熱電素子群体10を形成させる段階」において、引用発明の「被着させた相隣る前記P型金属薄膜素子帯2と前記N型金属薄膜素子帯3の両端部を交互に金属導電薄膜4の被着により短絡させ」ることは、本願発明の「p型熱電材料の薄膜をn型熱電材料の薄膜に電気的に接続する」ことに相当し、引用発明の「可撓性のある熱電素子群体10」は、本願発明の「可とう性の基板上に」形成した「複数の熱電対」に相当するので、引用発明の「被着させた相隣る前記P型金属薄膜素子帯2と前記N型金属薄膜素子帯3の両端部を交互に金属導電薄膜4の被着により短絡させて、可撓性のある熱電素子群体10を形成させる段階」は、本願発明の「p型熱電材料の薄膜をn型熱電材料の薄膜に電気的に接続することによって可とう性の基板上に複数の熱電対を形成する段階」に相当する。

5.引用発明の「熱電素子群体の製造方法」は、本願発明の「熱電電源を製造する方法」に相当する。

6.したがって、本願発明と引用発明とは、

「コイル構成、折り畳み構成、または巻構成である可とう性の基板を設ける段階;
n型熱電材料の複数の薄膜を可とう性の基板上に、スパッタ堆積させる段階;
p型熱電材料の複数の薄膜を可とう性の基板上に、スパッタ堆積させる段階;
p型熱電材料の薄膜をn型熱電材料の薄膜に電気的に接続することによって可とう性の基板上に複数の熱電対を形成する段階
を含む、熱電電源を製造する方法。」

である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本願発明は、「n型熱電材料の複数の薄膜を可とう性の基板上に」「スパッタ堆積させる」際に、「xが約2であり、yが約3である、Bi_(x)Te_(y)合金、Sb_(x)Te_(y)合金、およびBi_(x)Se_(y)合金またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれた2つから同時にスパッタ堆積させる」のに対して、引用発明は、「前記基体リボン1にスパツタリング法により所定のマスクを通して」「(Bi,Sb)_(2)(Te,Se)_(3)系のN型金属薄膜素子帯3を」「被着させる」ものの、本願発明のように、「xが約2であり、yが約3である、Bi_(x)Te_(y)合金、Sb_(x)Te_(y)合金、およびBi_(x)Se_(y)合金またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれた2つから同時にスパッタ堆積させる」ことが特定されていない点。

(相違点2)
本願発明は、「p型熱電材料の複数の薄膜を可とう性の基板上に」「スパッタ堆積させる」際に、「xが約2であり、yが約3である、Bi_(x)Te_(y)合金、Sb_(x)Te_(y)合金、およびBi_(x)Se_(y)合金またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれた2つから同時にスパッタ堆積させる」のに対して、引用発明は、「前記基体リボン1にスパツタリング法により所定のマスクを通して(Bi,Sb)_(2)(Te,Se)_(3)系のP型金属薄膜素子帯2」「を」「被着させる」ものの、本願発明のように、「xが約2であり、yが約3である、Bi_(x)Te_(y)合金、Sb_(x)Te_(y)合金、およびBi_(x)Se_(y)合金またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれた2つから同時にスパッタ堆積させる」ことが特定されていない点。

第6.相違点についての当審の判断
1.相違点1及び2は互いに関連するものであるから、合わせて検討する。
引用例2には、「マグネトロンスパッタ法で合金膜を作製する場合、合金を構成する物質のスパッタ電極を用い同時にスパッタする」(0002段落)、「本発明の目的は、対向ターゲット式スパッタ装置の利点を活かし、任意の組成の合金膜を作製することにある。」(0005段落)、「本発明の実施例のスパッタ装置の構造を図1に示す。一つのスパッタ電極は、アノード電極1とカソード電極2で構成されている。アノード電極は電気的にアースされている。カソード電極内には中空円盤状の磁石3が貼付けてあり、内部は水冷されている。このスパッタ電極を向かい合わせて配置し、それぞれのカソード電極には異なる成分又は組成のターゲット(A)4とターゲット(B)5が設置されている。ターゲットは、直径50ミリメートル、厚さ5ミリメートルの大きさである。ターゲットの組成は、一方がシリコン、他方がモリブデンである。」(0015段落)、及び「シリコンとモリブデンの合金を作製する。」(0016段落)ことが、記載されている。

2.また、引用例3には、「従来の装置の第3例が図5に示されている。同図において、真空チャンバー1内の下部には2つのカソード2がハの字状に並列に配置され、各カソード2の上にはターゲット3が載置されている。真空チャンバー1内の上部には基板4を載せた基板回転機構10がカソード2およびターゲット3と対向するように配設されている。」(0006段落)、「ハの字状に並列に配置されたカソード2の上にターゲット3を載置しているので、基板4の表面にターゲット材料の同時付着が可能になる。」(0007段落)、「この発明の実施例の薄膜作成装置は図1に示されており、同図において、真空チャンバー21内の下部には2つの高真空高速プラズマスパッタ源22がハの字状に並列に配置され、その高真空高速プラズマスパッタ源22のカソード23の上にはターゲット24が載置されている。真空チャンバー21内の上部には基板25を載せた基板回転機構26が配設され、基板25がターゲット24と対向している。」(0015段落)、及び「その際、複数のターゲット24を同時にスパッタすることが可能になるとともに、基板回転機構26で基板25を回転することが可能になり、膜厚および組成比の調整ができるようになる。」(0017段落)ことが、記載されている。

3.したがって、上記引用例2及び3には、異なる材料から構成される2つのスパッタリングターゲットを用いてスパッタ堆積を行うことにより、堆積される物質の組成比を調整可能とする技術が記載されているものと認められる。

4.そして、熱電素子の技術分野では、Sb_(2)Te_(3)系の材料及びBi_(2)Se_(3)系の材料は、いずれも周知であり、これらの材料のスパッタリングターゲットも普通に用いられているものであるであるところ、引用例1の「さらに装置の設計変更の場合には被膜の幅、厚さを変更するのみで簡単に行うことが可能であり、・・・」(2ページ右欄2行?4行)という記載から明らかなように、引用発明は、装置の設計変更に簡単に対応することを技術課題の一つとしているのであるから、引用発明に接した当業者であれば、装置の設計変更で組成比を変えることとなった場合にも簡単に対応できるよう、「前記基体リボン1にスパッタリング法により所定のマスクを通して(Bi,Sb)_(2)(Te,Se)_(3)系のP型金属薄膜素子帯2及び(Bi,Sb)_(2)(Te,Se)_(3)系のN型金属薄膜素子帯3を」「被着させる」に際し、引用例2及び3に記載された技術を適用し、「(Bi,Sb)_(2)(Te,Se)_(3)系」のスパッタリング・ターゲットを用いるのではなく、熱電素子の技術分野において周知のSb_(2)Te_(3)系の材料及びBi_(2)Se_(3)系の材料をターゲットとして用い、2つのターゲットを用いて同時にスパッタ堆積を行うこと、すなわち、本願発明のように、「n型熱電材料の複数の薄膜を可とう性の基板上に、xが約2であり、yが約3である、Bi_(x)Te_(y)合金、Sb_(x)Te_(y)合金、およびBi_(x)Se_(y)合金またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれた2つから同時にスパッタ堆積させる段階」及び「p型熱電材料の複数の薄膜を可とう性の基板上に、xが約2であり、yが約3である、Bi_(x)Te_(y)合金、Sb_(x)Te_(y)合金、およびBi_(x)Se_(y)合金またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれた2つから同時にスパッタ堆積させる段階」を備える構成とすることは、容易になし得たことである。
したがって、相違点1及び2は、当業者が容易になし得た範囲に含まれる程度のものである。

5.相違点1及び2については以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-12 
結審通知日 2013-03-13 
審決日 2013-03-27 
出願番号 特願2006-542773(P2006-542773)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀧内 健夫後谷 陽一加藤 浩一池渕 立  
特許庁審判長 北島 健次
特許庁審判官 恩田 春香
早川 朋一
発明の名称 熱電装置およびその用途  
代理人 新見 浩一  
代理人 川本 和弥  
代理人 刑部 俊  
代理人 清水 初志  
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