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審決分類 |
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 C12N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N |
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管理番号 | 1277621 |
審判番号 | 不服2010-18040 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-08-10 |
確定日 | 2013-08-08 |
事件の表示 | 特願2006-528867「ブレビバチルス属細菌を用いたプロテインA様蛋白質の生産方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月12日国際公開、WO2006/004067〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う2005年7月1日(優先日 平成16年7月6日、特願2004-198831号)を国際出願日とする国際出願であって、平成22年5月7日付けで拒絶査定がされたところ、同年8月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。 第2 補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年8月10日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成22年8月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)は、拒絶査定不服審判の請求と同時にしたものであって、補正前の特許請求の範囲と補正後の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 補正前: 「 【請求項1】 プロテインA様蛋白質、または、その配列の任意の一部分から構成されイムノグロブリン結合活性を有する蛋白質をコードするDNA、およびその配列に作動可能に連結されたブレビバチルス(Brevibacillus)属細菌で機能しうるプロモーターを含む、DNA。 【請求項2】 該プロモーターが、ブレビバチルス属細菌の細胞壁蛋白質のプロモーターであり、該プロモーターの下流に、ブレビバチルス属細菌で機能しうるシャインダルガノ配列、及びブレビバチルス属細菌で機能しうる分泌シグナルペプチドをコードするDNAをさらに含む、請求項1記載のDNA。 【請求項3】 請求項1または2記載のDNAを含む、発現ベクター。 【請求項4】 請求項3記載の発現ベクターを含む、ブレビバチルス属細菌形質転換体。 【請求項5】 請求項4に記載の形質転換体を培養する工程、および、該形質転換体によって分泌生産されるプロテインA様蛋白質またはその配列の任意の一部分から構成されイムノグロブリン結合活性を有する蛋白質を回収する工程を含む、蛋白質の製造方法。 【請求項6】 請求項5に記載の製造方法によってプロテインA様蛋白質またはその配列の任意の一部分から構成されイムノグロブリン結合活性を有する蛋白質を製造する工程、および該蛋白質を適当な基材に固定化する工程を含む、イムノグロブリン吸着担体の製造方法。」 補正後: 「 【請求項1】 プロテインA様蛋白質、または、その配列の任意の一部分から構成されイムノグロブリン結合活性を有する蛋白質をコードするDNA、およびその配列に作動可能に連結されたブレビバチルス(Brevibacillus)属細菌で機能しうるプロモーターを含む、DNA。 【請求項2】 該プロモーターが、ブレビバチルス属細菌の細胞壁蛋白質のプロモーターであり、該プロモーターの下流に、ブレビバチルス属細菌で機能しうるシャインダルガノ配列、及びブレビバチルス属細菌で機能しうる分泌シグナルペプチドをコードするDNAをさらに含む、請求項1記載のDNA。 【請求項3】 該プロモーターが、ブレビバチルス・ブレビス細胞壁蛋白質MWPのP2プロモーターである、請求項1または2に記載のDNA。 【請求項4】 請求項1?3のいずれか1項に記載のDNAを含む、発現ベクター。 【請求項5】 請求項4記載の発現ベクターを含む、ブレビバチルス属細菌形質転換体。 【請求項6】 請求項5に記載の形質転換体を培養する工程、および、該形質転換体によって分泌生産されるプロテインA様蛋白質またはその配列の任意の一部分から構成されイムノグロブリン結合活性を有する蛋白質を回収する工程を含む、蛋白質の製造方法。 【請求項7】 請求項6に記載の製造方法によってプロテインA様蛋白質またはその配列の任意の一部分から構成されイムノグロブリン結合活性を有する蛋白質を製造する工程、および該蛋白質を適当な基材に固定化する工程を含む、イムノグロブリン吸着担体の製造方法。」(下線は、補正箇所を示す。) 2.補正の適否 上記手続補正により、新たな請求項3が設けられ、それに伴い、補正前の請求項3?6が、それぞれ補正後の請求項4?7とされ、当該請求項4?7が、新たな請求項3をも直接的又は間接的に引用するものとなった。 当該補正は、プロモーターを特定する新たな請求項3を追加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という)第17条の2第4項各号に規定された、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、及び、明りょうでない釈明のいずれにも該当しないことは明らかである。 3.小括 したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成22年8月10日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成22年2月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された発明特定事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1.に「補正前」の請求項1として記載したとおりのものである。 2.引用例の記載事項 本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭62-111688号公報(以下、「引用例1」という。原査定の拒絶理由で引用された「引用例1」に同じ。)には、以下の事項が記載されている。 ア.「4.プロテインA様物質の遺伝子を含有する組み換えプラスミドであって, (a)ベクター, (b)λplac5DNAのラクトースオペロンのプロモーターおよびβ-ガラクトシダーゼ領域,および (c)該プロモーターの制御下にあるプロテインA様物質の遺伝子, を有する組み換えプラスミド。 ・・・ 7.前記プロテインA様物質の遺伝子が,プロテインA様物質の活性部分(IgGのFc-結合能力を有する部分)のN末端あるいはC末端のアミノ酸にシステインを付加せしめたことを特徴とする特許請求の範囲第4項に記載の組み換えプラスミド。 8.前記プロテインA様物質の遺伝子が,次のポリアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有する特許請求の範囲第7項に記載の組み換えプラスミド。 ADNKFNKEQQNAFYEILHLPNLNEEQRNGFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAPKC ここで, A;アラニン,C;システイン,D;アスパラギン酸,E;グルタミン酸,F;フェニルアラニン,G;グリシン,H;ヒスチジン,I;イソロイシン,K;リジン,L;ロイシン,M;メチオニン,N;アスパラギン,P:プロリン,Q;グルタミン,R;アルギニン,S;セリン,Y;チロシン を意味する。」(特許請求の範囲) イ.「(産業上の利用分野) 本発明は,遺伝子工学の方法により,プロティンA様物質の遺伝子を含有する組み換えプラスミドによって形質転換された宿主細胞,およびこの形質転換体を用いてプロテインA様物質を製造する方法に関する。」(4頁左下欄5?10行) ウ.「宿主細胞としては特にエセリシア属の菌株に限定されず,例えばバチルス属やシュードモナス属の菌株,酵母およびその他の真菌類,ヒトおよびその他の動物の培養細胞あるいは植物の培養細胞を宿主としてもよい。」(10頁左上欄5?10行) エ.「実施例6:組み換えプラスミドによるエセリシアコリ- K-12株 HB101の形質転換 実施例5で得られた組み換えプラスミドDNAの沈澱を100 mMトリス塩酸緩衝液(pH7.6),6mM MgCl_(2),66mM NaClよりなる溶液100μlに溶解した。 ・・・。 このようにしてCaCl_(2)処理されたエセリシア・コリ-K-12株 HB101と先に得た組み換えプラスミドDNAの溶液とを0℃にて混合後(トータルで200μl),0℃にて10分間放置し,次いで42℃で1分間ヒートショックし,・・・1時間振とうした。 」(14頁左下欄9行?右下欄12行)(下線は、当審が付与した。) オ.「実施例10:エセリシア・コリー K12 SPA-FcによるプロテインA様物質の生産及びその精製 プロテインA様物質DNAが組み込まれた組み換えプラスミドを保有するエセリシア・コリ-K12 SPA-Fcを・・・増殖させた。・・・。この結果より計算すると、エセリシア・コリ-K-12 SPA-Fcは少なくとも細胞1個あたり3×10^(5)分子のプロテインA様物質を生成していることがわかった。」(15頁左下欄2行?右下欄最終行) カ.「実施例11:プロテインA様物質固定化不活性担体の調製-1 ・・・。活性化された活性チオールセファロース4Bを20mgのプロテインA様物質を含むカップリング緩衝液・・・中に4℃にて一夜懸濁させ,プロテインA様物質を結合せしめた。」(16頁右上欄7?15行) キ.「実施例13:プロテインA様物質固定化不活性カラムによるIgGの分画-1 実施例11で得られたカラムをpH8.0のリン酸緩衝液で平衡化し,これに,2倍に稀釈されたマウス血清をチャージした。IgM,IgAおよびIgEは溶出液中に定量的に回収された。IgG_(1),IgG_(2)a,IgG_(2)bはそれぞれpH6.0-7.0,4.5-5.0,3.5-4.0で順に溶出され,プロティンAを固定化したカラムとほぼ同様の挙動を示した。しかしながら,実施例11で得られたプロティンA様物質固定化不活性カラムの吸着容量は約30?40mg/mlであり,市販品のプロティンA-セファロースCL-4B(ファルマシア製)のヒトIgGに対する吸着容量が約12?15mg/mlであるのに比べ,約3倍の吸着容量を有していた。」(16頁左下欄14行?右下欄8行) 上記記載事項ア.エ.より、引用例1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「プロテインA様物質の遺伝子を含有する組み換えプラスミドDNAであって, (a)ベクター, (b)λplac5DNAのラクトースオペロンのプロモーター,および (c)該プロモーターの制御下にある「ADNKFNKEQQNAFYEILHLPNLNEEQRNGFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAPKC」のポリアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有するプロテインA様物質の遺伝子, を有する組み換えプラスミドDNA。」(以下、「引用発明」という。) 本願の優先日前に頒布された刊行物であるBIO INDUSTRY,1992,Vol.9,No.2,p.23-31(以下、「引用例7」という。原査定の拒絶理由で引用された「引用例7」に同じ。)には,以下の事項が記載されている。 ク.「優れたタンパク質分泌能を有する微生物は,同時にプロテアーゼをよく生産する場合が多いにもかからわず,B.brevisに属する菌は菌体外プロテアーゼ活性が低く,中にはその活性が検出できない菌株がある。 筆者らが開発した系による異種タンパク質の生産効率が以下に述べるように非常に高いのは,タンパク質生産系開発のスタートにおいてB.brevisを宿主に用いたためであり,それがその後の発展の原動力になったことを強調したい。」(24頁左欄9?18行) ケ.「2.1 宿 主 上記のように,強いタンパク質生産能を持っている菌として,スクリーニングによって選出された中から,B.brevis 47株とHPD31株を日常的に用いる宿主とした。両菌とも菌体外プロテアーゼの活性が非常に低く,細胞表面には細胞壁タンパク質があり,47株では2層、HPD31株では1層の細胞壁タンパク質層(S-layerともいわれる)で覆われている。」(24頁左欄28?36行) コ.「ここで,本菌のタンパク質生産機構について説明する。本菌は大量のタンパク質を培養液中に蓄積する性質があるが,その蓄積するタンパク質は,細胞表層の細胞壁タンパク質に由来することが,電子顕微鏡による細胞表層構造の解析から明らかになった。」(24頁右欄7?12行) サ.「異種遺伝子の発現,その生産物の分泌には,B.brevisで高発現,効率的分泌がなされているその主要な菌体外タンパク質,すなわち細胞壁タンパク質の遺伝子を活用することにした。そのために細胞壁タンパク質(CWP)の遺伝子をクローン化し,その遺伝子の近傍も含めて塩基配列を決定した後,転写開始部位(プロモーター領域)の解析などを行った。その結果,期待通り本遺伝子には強力なプロモーター,リボソーム結合部位と2つの翻訳開始部位,およびシグナルペプチドをコードする配列が見出された。そこで,これらを含むDNA断片を上述の各種プラスミドに挿入して発現・分泌ベクターとした(図1)^(1),7))。異種遺伝子をそのCWPシグナル配列に直結して構築したプラスミドでB.brevisを形質転換すれば,異種タンパク質の効率よい生産が期待できる。」(25頁左欄17?33行) シ.「これまで述べてきたB.brevisによる生産技術で,数々の異種タンパク質の効率的生産に成功している。これまでの成果をまとめて示したのが表1である。」(25頁右欄25?28行) ス.「 」(26頁) セ.「 」(27頁表1) ソ.「しかし,大腸菌では,B.brevisのような分泌生産はほとんど期待できない。」(28頁右欄24?25行) タ.「このように大腸菌を発現系に用いると生産物の可溶化,活性化を行わなければならないので,分泌生産に較べて余計な手間がかかるが,不溶化したタンパク質は細胞内のプロテアーゼのアタックを受けずにすむという利点にもなる。」(29頁左欄13?17行) 3.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 本願明細書段落【0018】には、「プロテインA様蛋白質」について、「本発明にいうプロテインA様蛋白質には、プロテインA、またはプロテインAと実質的に同一の蛋白質が含まれる。また、プロテインA様蛋白質には、当業者にとって公知の配列比較アルゴリズムを使用して、プロテインAのアミノ酸配列と比較され、そして最大の一致のためにアラインメントされるときに、少なくとも60%、好ましくは80%、より好ましくは90-95%、そして最も好ましくは少なくとも99%のアミノ酸残基の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、イムノグロブリン結合活性を有する蛋白質が含まれる。」と記載されている。 そして、スタフィロコッカス・アウレウス・コワン(Cowan)I株のプロテインAのアミノ酸配列を示す本願図1と、引用発明のアミノ酸配列とを比較すると、引用発明のアミノ酸配列は、本願図1のBドメインに対して、C末端に1アミノ酸「C」を付加したものである。 よって、引用発明のアミノ酸配列を有するプロテインA様物質は、スタフィロコッカス・アウレウス・コワン(Cowan)I株のプロテインAのBドメインのC末端に1アミノ酸を付加したものであって、かつ、記載事項オ.?キ.より、ヒトIgGに対する吸着する活性、すなわちイムノグロブリン結合活性をもつものであるから、本願発明の「その配列の任意の一部分から構成されイムノグロブリン結合活性を有する蛋白質」に包含される。 また、引用発明は、記載事項エ.にあるように、エセリシア・コリを宿主として形質転換するものであり、得られた形質転換体は、記載事項オ.よりプロテインA様物質を発現するものであるから、引用発明の「λplac5DNAのラクトースオペロンのプロモーター」は、細菌であるエセリシア・コリで機能するプロモーターといえる。 したがって、両者の一致点、相違点は以下のようになる。 一致点:「プロテインA様蛋白質の配列の一部分から構成されイムノグロブリン結合活性を有する蛋白質をコードするDNA、およびその配列に作動可能に連結された細菌で機能しうるプロモーターを含む、DNA。」 相違点:細菌で機能しうるプロモーターが、本願発明では「ブレビバチルス(Brevibacillus)属」細菌で機能しうるものであるのに対し、引用発明においては、エセリシア属細菌で機能しうる「λplac5DNAのラクトースオペロンのプロモーター」である点。 4.相違点についての検討 引用例1は、記載事項イ.に記載されるように、プロティンA様物質の遺伝子を含有する組み換えプラスミドによって形質転換された宿主細胞を用いてプロテインA様物質を製造する方法に関するものである。そして、引用例1には、宿主細胞としてエセリシア属の菌株に限定されず、他の属の菌株等も利用可能である旨が記載されている(記載事項ウ.)。 一方、引用例7には、大腸菌(エセリシア・コリ)を宿主として異種タンパク質の生産させる場合、B.brevisのような分泌生産はほとんど期待できず、可溶化、活性化を行わなければならないので、分泌生産に比べて余計な手間がかかることが記載され(記載事項ソ.タ.)、これに対し、異種タンパク質の生産にB.brevisを宿主に用いると、培養液中に当該異種タンパク質が分泌され、非常に生産効率が高いことが記載され、その具体的手段として、B.brevis の細胞壁タンパク質のプロモーター領域を用いたことが記載されている(記載事項ク.?セ.)。そして、記載事項シ.セ.より、Bacillus brevis を宿主として用いて、異種タンパク質を分泌生産する技術は、本願優先日前周知であったといえる。 ここで、B.brevis が、ブレビバチルス属に属することは、本願優先日前の当業者の技術常識である(必要であれば、International Journal of Systematic Bacteriology,1996,Vol.46,No.4,p.939-946)。 してみれば、引用発明の「ADNKFNKEQQNAFYEILHLPNLNEEQRNGFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAPKC」のポリアミノ酸配列を有するプロテインA様物質を生産するために、引用例1に記載されるエセリシア・コリにかえて、引用例7において、エセリシア・コリに比して生産効率が良いことが記載されるB.brevisすなわち、ブレビバチルス属細菌を宿主に用いることは、当業者が容易に想到し得たことであり、その際、当該宿主で機能しうるプロモーターを用いることは当然に行うことにすぎない。 そして、本願発明が、引用例1、7及び周知技術より、予想外の顕著な効果を奏するとも認められない。 5.審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書の手続補正書において、ア.ブレビバチルスを宿主細胞として使用することが開示されている引用例7には、ブレビバチルス属菌株はどのようなタンパク質にも適用できるように開示されているが、実際にはどのようなタンパク質にでも適用できるものではない、イ.他の一般的なタンパク質とは異なり、プロテインAの生産においては、構造面での恒常品質が維持されることが極めて重要であり、プロテアーゼによる分解を受けない完全なタンパク質分子のみを高い収率で発現する必要がある、本願発明では、構造の同一性の観点で検討を行い、これまで使用されていた大腸菌や枯草菌と比較して、ブレビバチルス属菌株であれば、プロテインAがプロテアーゼにより分解されず、構造の同一性が維持できることを見出し完成したものであり、引用例から、プロテインAをブレビバチルス属細菌で生産した場合にプロテアーゼによる分解を回避できることは予想できない旨主張するが、以下のとおりいずれも理由がない。 ア.について 第3 4.で述べたとおり、引用例1に記載されるプロテインA様物質を、引用例1、7の記載から、B.brevisすなわち、ブレビバチルス属細菌を宿主として用いて調製することは、当業者が容易に想到し得ることであり、記載事項シ.セ.にあるように、ブレビバチルス属細菌を宿主として用いて、種々の異種タンパク質が生産されているのだから、ブレビバチルス属菌株がプロテインA様物質に適用できないとする理由はない。 イ.について 記載事項ク.にあるように、引用例7には、B.brevisに属する菌は菌体外プロテアーゼ活性が低いことが記載されているのだから、ブレビバチルス属菌株を宿主として用いた場合に、プロテインAがプロテアーゼにより分解されず、構造の同一性が維持できるとしても、格別予想外のことではない。 第4 まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用例1及び引用例7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-06-07 |
結審通知日 | 2013-06-11 |
審決日 | 2013-06-24 |
出願番号 | 特願2006-528867(P2006-528867) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C12N)
P 1 8・ 57- Z (C12N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福間 信子 |
特許庁審判長 |
今村 玲英子 |
特許庁審判官 |
田中 晴絵 冨永 みどり |
発明の名称 | ブレビバチルス属細菌を用いたプロテインA様蛋白質の生産方法 |
代理人 | 特許業務法人 安富国際特許事務所 |