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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25B
管理番号 1278165
審判番号 不服2012-19603  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-05 
確定日 2013-08-15 
事件の表示 特願2008-109787号「熱交換器ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月 5日出願公開、特開2009-257708号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年4月21日の出願であって、平成24年7月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成24年10月5日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成24年10月5日付け手続補正についての補正却下の決定
【補正却下の決定の結論】
平成24年10月5日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

【理由】
2-1.本件補正
本件補正は、補正前の請求項1に、
「複数のプレート熱交換器を直列に接続して構成される熱交換器ユニットにおいて、
熱交換器が蒸発器として機能する場合には冷媒上流側のプレート熱交換器の冷媒分配機構における分配機能が冷媒下流側のプレート熱交換器の冷媒分配機構における分配機能よりも高くなり、熱交換器が凝縮器として機能する場合には冷媒上流側のプレート熱交換器の冷媒分配機構における圧力損失が冷媒下流側のプレート熱交換器の冷媒分配機構における圧力損失よりも少なくなるように、各プレート熱交換器における冷媒分配機構を相対的に設定したことを特徴とする熱交換器ユニット。」
とあるのを、
「3個以上のプレート熱交換器を直列に接続して構成される熱交換器ユニットにおいて、熱交換器が蒸発器として機能する場合には冷媒上流側のプレート熱交換器の冷媒分配機構における分配機能が冷媒下流側のプレート熱交換器の冷媒分配機構における分配機能よりも高くなり、熱交換器が凝縮器として機能する場合には冷媒上流側のプレート熱交換器の冷媒分配機構における圧力損失が冷媒下流側のプレート熱交換器の冷媒分配機構における圧力損失よりも少なくなるように、上記全てのプレート熱交換器における冷媒分配機構を相対的に設定したことを特徴とする熱交換器ユニット。」
とする補正を含むものである。

本件補正後の請求項1は、補正前の請求項1の記載において、直列に接続されるプレート熱交換器の個数が「3個以上」であること及び、冷媒分配機構を相対的に設定するプレート熱交換器の対象が「全て」であることの限定を付加するものである。また、この補正により、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでもないことは明らかである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-2.本願補正発明
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「2-1.本件補正」の補正後の請求項1参照)により特定されたとおりのものと認める。

2-3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2005-337688号公報(以下「引用例」という。)には、以下の各事項が記載されている。

(a)「【0001】
本発明は、冷凍装置に係り、特に、冷凍サイクルを循環する冷媒の蒸発潜熱により被冷却媒体を冷却する複数の熱交換器を直列に多段に接続して構成された冷凍装置に関する。」

(b)「【0009】
すなわち、本発明は、プレート式熱交換器を直列多段に設けて熱交換量を増大させるにあたって、最上段のプレート式熱交換器のみにオリフィス機構である貫通孔を設け、それよりも後段側のプレート式熱交換器の各冷媒流路の入口部にはオリフィス機構を設けない構成としたことを特徴とする。その結果、プレート式熱交換器を直列多段に設けても、全体の圧力損失を低減して、最上段の蒸発圧力と最後段の蒸発圧力の差を低減できる。これにより、例えば、最上段の蒸発圧力を下げて設定しても最後段の蒸発圧力を高く保持でき、また、最後段の蒸発圧力を上げて設定しても最上段の蒸発圧力を低く保持できるから熱交換効率や冷凍サイクル効率が低下して成績係数が下がるという問題を解決できる。」

(c)「【0010】
ところで、冷媒入口部における冷媒の偏流は、比重の高い液冷媒の流れの慣性に関係することが考えられる。したがって、オリフィス機構による冷媒の偏流抑制効果は、液冷媒の混合率に相関すると考えられるから、液冷媒の混合率が比較的高い最上段のプレート式熱交換器に設けることは効果的である。一方、後段に向かうにつれて液冷媒の混合率が低下するから、オリフィス機構による冷媒の偏流抑制効果が小さいと考えられる。したがって、本発明によれば、プレート式熱交換器を直列多段に設けて熱交換量を増大させることができるとともに、全体の蒸発圧力差を狭い範囲に抑えることができるから、効果的に成績係数の低下を抑制することができる。」

(d)「【0016】
本実施形態の冷凍装置は、図1に示すように、圧縮機1、空気熱交換器3、膨張弁5、最上段のプレート式熱交換器7、および後段のプレート式熱交換器8が冷媒配管で順次連結された冷凍サイクルを備えて構成されている。圧縮機1は、四方切替弁9を介して冷媒配管に連結されている。この四方切替弁9は、冷却運転時は圧縮機1の吐出側を空気熱交換器3に接続するとともに吸引側をプレート式熱交換器8に接続し、加熱運転時は圧縮機1の吐出側をプレート式熱交換器8に接続するとともに吸引側を空気熱交換器3に接続する。図中において、四方切替弁9の実線は冷却運転、破線は加熱運転を示す。また、圧縮機1の吸引側にはアキュムレータ11が設けられ、圧縮機1にガス冷媒を導くようになっている。空気熱交換器3は冷媒と空気とを熱交換させるもので、送風ファン13により空気が送風されるようになっている。最上段のプレート式熱交換器7および後段のプレート式熱交換器8は、冷媒と被冷却媒体である水とを熱交換させるもので、膨張弁5側から最上段のプレート式熱交換器7、後段のプレート式熱交換器8の順で直列多段に連結されている。
【0017】
このような構成の冷凍装置は、冷房運転時、圧縮機1から吐出されるガス冷媒が空気熱交換器3で凝縮され、凝縮した液冷媒が膨張弁5を介して最上段のプレート式熱交換器7に流入する。プレート式熱交換器7では液冷媒の一部が蒸発し、残りの液冷媒は後段のプレート式熱交換器8に流入して蒸発し、これによって水が冷却される。プレート式熱交換器8から排出されたガス冷媒はアキュムレータ11を介して圧縮機1に戻される。一方、加熱運転時は、圧縮機1から吐出されるガス冷媒がプレート式熱交換器7、8で凝縮し、この凝縮熱で水が加熱される。プレート式熱交換器7で凝縮された液冷媒は、膨張弁5を介して空気熱交換器3に流入し、空気の熱で蒸発気化させて圧縮機1に戻される。」

(e)「【0019】
最上段のプレート式熱交換器7の複数の冷媒流路17の上部は、図2に示すように、連結管21で連結されて連通され、下部には、入口管路23が設けられている。入口管路23は、複数の冷媒流路17と複数の水流路19を配列方向に貫通して一端から他端まで挿入して配置され、入口管路23の管壁の各冷媒流路17内に位置する部分に貫通孔25が穿設されている。なお、貫通孔25は、入口管路23の管壁の下側に形成されている。また、プレート式熱交換器7は、下部の入口管路23に連通する冷媒入口と、上部の連結管21に連通する冷媒出口が片側の側壁に設けられている。プレート式熱交換器7の冷媒出口は、冷媒配管を介して後段のプレート式熱交換器8の冷媒入口に連結されている。また、水流路19の入口は上部に設けられ、出口は下部に設けられている。
【0020】
一方、図3に示すように、後段のプレート式熱交換器8の複数の冷媒流路17の上部および下部は、それぞれ連結管21で連結して連通されている。また、プレート式熱交換器8は、下部の連結管21に連通する冷媒入口と、上部の連結管21に連通する冷媒出口が片側の側壁に設けられている。プレート式熱交換器8の水出口は、最上段のプレート式熱交換器7の水入口に連結されている。
【0021】
すなわち、本発明は、プレート式熱交換器を直列多段に設けて熱交換量を増大させるにあたって、最上段のプレート式熱交換器7のみにオリフィス機構である貫通孔25を設け、それよりも後段のプレート式熱交換器8の各冷媒流路の入口部にはオリフィス機構を設けない構成としたことを特徴とする。」

(f)「【0029】
また、本実施形態では、最上段のプレート式熱交換器7と後段のプレート式熱交換器8を直列に2段備えたものを挙げて説明したが、これに限らず、後段のプレート式熱交換器を複数設けてもよい。」

以上の記載によると、引用例には、
「最上段のプレート式熱交換器、および複数の後段のプレート式熱交換器が冷媒配管で順次連結された冷凍サイクルを備えた冷凍装置であって、
各プレート式熱交換器は、複数の冷媒流路の上部および下部がそれぞれ連結管で連結して連通されるものであって、
最上段のプレート式熱交換器のみに各冷媒流路の入口部にオリフィス機構である貫通孔を設け、それよりも後段のプレート式熱交換器の各冷媒流路の入口部にはオリフィス機構を設けない構成とし、
冷房運転時は、各プレート式熱交換器で液冷媒が蒸発し、加熱運転時は、各プレート式熱交換器でガス冷媒が凝縮する冷凍装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

2-4.対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「プレート式熱交換器」は、本願補正発明の「プレート熱交換器」に相当し、引用発明の「最上段のプレート式熱交換器、および複数の後段のプレート式熱交換器」は、本願補正発明の「熱交換器ユニット」を構成し、引用発明のプレート式熱交換器は、最上段及び複数の後段を備え、冷媒配管で順次連結されていることから、その個数は「3個以上」であり、「直列に接続して構成され」ているといえ、
引用発明において、各プレート式熱交換器で液冷媒が蒸発する「冷房運転時」及び各プレート式熱交換器でガス冷媒が凝縮する「加熱運転時」は、それぞれ本願補正発明の「熱交換器が蒸発器として機能する場合」及び「熱交換器が凝縮器として機能する場合」に相当する。
また、本願補正発明の「冷媒分配機構」は、熱交換器が蒸発器として機能する場合には「冷媒上流側のプレート熱交換器」が「冷媒下流側のプレート熱交換器」よりも高くなる「分配機能」を有し、熱交換器が凝縮器として機能する場合には「冷媒上流側のプレート熱交換器」が「冷媒下流側のプレート熱交換器」よりも少なくなる「圧力損失」を生じるものであって、その具体的な構成例には、本願の請求項2に記載されているように「各プレート熱交換器に設けられたヘッダー部から各冷媒流路への冷媒流入口の口径を変化させる」ものが含まれる。一方、引用発明の「最上段のプレート式熱交換器のみに各冷媒流路の入口部にオリフィス機構である貫通孔を設け、それよりも後段のプレート式熱交換器の各冷媒流路の入口部にはオリフィス機構を設けない構成」は、最上段のプレート式熱交換器の各冷媒流路の入口部は口径が小さく、それよりも後段のプレート式熱交換器の各冷媒流路の入口部は口径が大きいことを意味するものであり、プレート式熱交換器の各冷媒流路の入口部の口径を変化させているものといえることから、引用発明の各プレート式熱交換器の各冷媒流路の入口部は、本願補正発明の「冷媒分配機構」に相当する。
そして、最上段のプレート式熱交換器のオリフィス機構が設けられた入口部は、それよりも後段のプレート式熱交換器のオリフィス機構を設けない入口部より、相対的に、分配機能が高く、圧力損失が大きいことは明らかなことから、両者は、
「3個以上のプレート熱交換器を直列に接続して構成される熱交換器ユニットにおいて、熱交換器が蒸発器として機能する場合には冷媒上流側のプレート熱交換器の冷媒分配機構における分配機能が冷媒下流側のプレート熱交換器の冷媒分配機構における分配機能よりも高くなり、熱交換器が凝縮器として機能する場合には冷媒上流側のプレート熱交換器の冷媒分配機構における圧力損失が冷媒下流側のプレート熱交換器の冷媒分配機構における圧力損失よりも少なくなるように、上記プレート熱交換器における冷媒分配機構を相対的に設定した熱交換器ユニット。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点;本願補正発明では、冷媒分配機構を相対的に設定するプレート熱交換器の対象が「全て」であるのに対し、引用発明では、最上段のプレート式熱交換器のみに各冷媒流路の入口部にオリフィス機構である貫通孔を設け、それよりも後段のプレート式熱交換器には各冷媒流路の入口部にオリフィス機構を設けない構成、すなわち複数の後段のプレート式熱交換器には機構的な相違がない点。

2-5.判断
そこで、上記相違点を検討すると、
引用例の上記記載事項(b)及び(c)に記載されているように、引用発明は、最上段のプレート式熱交換器のみに各冷媒流路の入口部にオリフィス機構である貫通孔を設け、それよりも後段のプレート式熱交換器には各冷媒流路の入口部にオリフィス機構を設けない構成とすることにより、全体の圧力損失を低減し、最上段の蒸発圧力と最後段の蒸発圧力の差を低減するものではあるが、オリフィス機構は、液冷媒の混合率に相関すると考えられる冷媒入口部における冷媒の偏流を抑制し、成績係数の低下を抑制することができるものである。ここで、直列に接続された各プレート式熱交換器は、後段に向かうにつれて液冷媒の混合率が低下するものであるので、引用発明の最後段を除く複数の後段のプレート式熱交換器においても、オリフィス機構である貫通孔を設けることにより、圧力損失は増大するものの、冷媒の偏流を抑制し、成績係数の低下を抑制する効果があることは、当業者が容易に想到し得る事項である。そして、その際に、液冷媒の混合率が低下すれば、液冷媒の偏流の度合いも小さくなることが予測され、また、過度の圧力損失を避けることは必要なことより、液冷媒の混合率の低下に合わせて各プレート式熱交換器に設ける該貫通孔の孔径を順次大きなものとすることは、当業者なら容易に想到し得る事項である。
さらに、一般的に、直列に接続された3個以上の熱交換要素を備えた熱交換器において、冷媒の状態変化に合わせて該熱交換要素の寸法的特徴(内径)を順次変化させることは、例えば、特開平10-205919号公報や特開2001-201227号公報にも記載されているように、当業者が適宜になす程度のことであるので、引用発明において、プレート式熱交換器の冷媒流路の入口部での孔径の変化が2段階のものから、順次大きなものとするように変更を試みることは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。
よって、引用発明において、冷媒の偏流を抑制し、成績係数の低下を抑制するとともに過度の圧力損失を避けるようにするために、最後段を除く複数の後段のプレート式熱交換器の各冷媒流路の入口部にオリフィス機構である貫通孔を設け、また、該貫通孔の孔径は最上段のプレート式熱交換器から順次大きくなるように設定することにより、上記相違点の本願補正発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-6.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するもので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成24年10月5日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年6月4日付けで補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「2-1.本件補正」の補正前の請求項1参照。)により特定されたとおりのものと認める。

4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、その記載事項及び引用発明は、前記「2-3.引用例」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、直列に接続されるプレート熱交換器の個数が「3個以上」であること及び、冷媒分配機構を相対的に設定するプレート熱交換器の対象が「全て」であることの限定を省いたものである。

そうすると、本願発明を特定するための事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2-4.対比」及び「2-5.判断」に記載したとおり引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-12 
結審通知日 2013-06-18 
審決日 2013-07-02 
出願番号 特願2008-109787(P2008-109787)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25B)
P 1 8・ 575- Z (F25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川上 佳  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 小野 孝朗
竹之内 秀明
発明の名称 熱交換器ユニット  
代理人 白川 孝治  

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