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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
管理番号 1278366
審判番号 不服2012-18796  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-26 
確定日 2013-08-22 
事件の表示 特願2006-249863「画像表示制御装置および撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 3月27日出願公開、特開2008- 70646〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年9月14日の出願であって、平成24年6月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成25年4月1日付けで、当審により拒絶理由の通知がなされ、これに対して、同年6月3日に意見書及び手続補正書が提出された。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年6月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものと認める。
「画像表示手段による撮像画像の表示を制御する画像表示制御装置であって、
前記画像表示手段にて表示される画像を、記録画素数の設定操作とは異なる入力操作であって、表示画像に対する拡大率設定の入力操作に応じた表示画像に対する拡大率で拡大して前記画像表示手段にて表示させる拡大手段と、
前記入力操作に応じた表示画像に対する前記拡大率を記憶する拡大率記憶手段と、
記録のための撮像画像の取得後において、当該記録撮像画像のピント確認のための画像表示を前記画像表示手段で行う際に、前記拡大率記憶手段に記憶されている拡大率に応じて当該画像表示を制御する制御手段とを有することを特徴とする画像表示制御装置。」

第3 引用刊行物
当審の拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平11-196301号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。
1.「【要約】
【課題】 撮影時の画像のピント確認や、ブレ等の画像状態の確認を簡単に行なうことのできる電子カメラ装置の提供。
【解決手段】 記録モード時に表示される被写体のモニター画像と共にフォーカス確認用のフォーカス枠81を表示し(5図(a))、フォーカス枠81内の画像部分を自動的(或いは使用者の指示により)拡大して画面の一部または全体に表示する(5図(b),(b’))。使用者は拡大されたフォーカス位置を見て必要に応じてピント合せをやり直したり、シャッターボタンを押して撮影する(5図(c))。」
2.「【0002】
【従来の技術】デジタルカメラのようにモニター用の表示装置を有する電子カメラ装置がある。デジタルカメラで取り込まれた被写体像は、CCD等による光電変換、信号変換及び信号処理等を経て、被写体のモニター画像(スルー画像)を表示し、使用者が所望のタイミングでシャッターを押すと撮影がなされ、画像データとして記憶媒体に記録保存される(記録モード)。また、記録媒体に記録保存された画像情報を読み出して液晶ディスプレイ等からなる表示装置上に再生表示したり外部装置に出力することもできる(再生モード)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記デジタルカメラでは、通常、表示装置に表示されるスルー画像(又は撮影画像)の解像度は記録媒体に記録保存される撮影画像の解像度より低いので、記録画像より鮮明度が低い画像として表示される。ここで、市販のデジタルカメラのある機種を例にとると、撮影画像の解像度は640×480であり、スルー画像の解像度は220×279となっている。
【0004】このため、使用者がシャッターを押した際に、撮影した画像が手振れ等によってピンボケになっていてもその時点で表示装置に表示される画像からは判断できない場合がある(ピンボケの程度がスルー画像の解像度でも判断できるほどの場合は判断可能)という問題点があった。」
3.「【0006】本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、撮影時の画像のピント確認や、ブレ等の画像状態の確認を簡単に行なうことのできる電子カメラ装置の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、第1の発明は、被写体画像を取り込んで画像表示するとともに、所望のタイミングで取り込んだ被写体画像を記録媒体に記録するフォーカス機構を備えた電子カメラ装置において、取り込んだ被写体画像のフォーカス位置に相当する画像部分を拡大して表示するフォーカス位置拡大表示手段を備えたことを特徴とする。
【0008】第1の発明の電子カメラ装置において、前記フォーカス位置拡大表示手段は、撮影待機時に表示されるスルー画像のフォーカス位置に相当する画像部分を拡大して表示する手段、或いはシャッター操作時に取り込まれた被写体画像のフォーカス位置に相当する画像部分を拡大して表示する手段としてもよい。」
4.「【0025】 <画像の確認>本発明の電子カメラ装置では、記録モードでフォーカス位置を部分的に拡大して表示することにより、簡単にピント確認やブレ等の画像状態の確認を行なうことができる。なお、以下の各実施例ではフォーカス位置としてマニュアルフォーカス或いはオートフォーカス時に液晶ディスプレイ40に合焦確認のためのフォーカス枠を表示するようにし、そのフォーカス枠相当部分をフォーカス位置としている。以下、マニュアルフォーカス(実施例1,2)およびオートフォーカス(実施例3)の場合について、図1のデジタルカメラ100を例として説明する。」
5.「【0026】[実施例1] マニュアルフォーカスの場合
図4は、手動で合焦調整(マニュアルフォーカス)を行なう場合を例とするデジタルカメラ100の動作例を示すフローチャートであり、マニュアルフォーカスは記録モードで表示されるスルー画像を見て行なう使用者のフォーカス調整ボタン操作によってなされる。また、フォーカス確認は拡大表示されるスルー画像のフォーカス位置を基に使用者が行なう。なお、図5はマニュアルフォーカス時に表示されるスルー画像および拡大スルー画像の説明図である。
【0027】図4のS1で、使用者がデジタルカメラ100の側面に設けられた処理モード切換えスイッチを「記録モード」側に切換えると、CPU21にその旨の状態信号が送られる。CPU21は受け取った状態信号が記録モード実行を意味する場合には被写体像の取り込みを開始する。
【0028】S2で、CCD2から周期的に取り込んでくる1フレーム分の画像データが液晶ディスプレイ40上にスルー画像表示が開始される(図5(a))。これにより使用者は画像全体の構図や色合等を見てカメラを移動させてアングル調整を行なうことができる。なお、画面中央にはフォーカス確認用の矩形枠81が表示される。
・・・
【0031】S3で、使用者がフォーカス位置拡大ボタン36を押すと、ROM23に格納されているプログラムモジュールのうちのフォーカス位置拡大表示手段が読み出される。なお、図5(b’)のようにフォーカス位置を含む全体画像80とフォーカス位置の拡大画像83を画面上で区別し、重畳させて表示する場合にはステップS3を省略することができる。つまり、ステップS2?S4に代えて、図5(b’)に示す表示を行なうステップを設けるようにしてもよい。
【0032】S4で、上記S2で表示されているスルー画像のフォーカス位置(画面中央のフォーカス枠81内に相当する部分)の拡大表示が開始される。なお、フォーカス位置拡大画像82を画面の一部分に表示される場合の表示位置はフォーカス位置を中心としてもよいし(図5(b))、画面の所定の場所(例えば、4隅のいずれか)としてもよい(図5(b’))。
・・・
【0034】シグナルジェネレータ16は、また、VRAM17に記憶された画像データを読み出して液晶ディスプレイ40に出力し画像表示させる。これにより画面にフォーカス位置の拡大画像82を表示できる。また、拡大倍率は実施例では固定倍率としモニター時に示されるフォーカス枠81の大きさの4×4(=16)倍としたが、可変倍率(例えば、2×2、3×3、4×4倍の3段階)とし、プラスボタン35を1回押す毎に倍率が変化(循環)するようにしてもよい。
【0035】また、拡大画像82の表示位置を図5(b’)のようにフォーカス位置とは別にするようにフォーカス位置拡大表示手段を構成してもよい。この場合、フォーカス位置拡大表示手段はDRAM13上のスルー画像データからフォーカス枠81に相当する画像データ部分を取り出して補間法等の拡大法を用いて拡大し、DRAM13に設けた画像拡大用ワークエリアに記憶させてから読み出してシグナルジェネレータ16に供給し、ホワイトバランス調整、色演算処理を施し、輝度信号Y、色差信号R-Y、B-Yからなるビデオデータを生成する。
【0036】シグナルジェネレータ16は、また、VRAM17に記憶された拡大画像データを読み出して液晶ディスプレイ40の画面の所定の位置(例えば右下隅)に塗り重ねるようにして画像表示させる。これにより図5(b’)に示すように画面右隅にスルー画像と重ねてフォーカス位置の拡大画像83が表示される。
【0037】S5で、使用者はスルー画像或いはフォーカス位置の拡大画像82(または83)を見てピントを確認し、ピントが合っていない場合にはS6に移行し、ピントが合った場合にはS7に移行する。S6では、使用者はフォーカス調整用ボタン(図示せず)を操作して合焦機構8にフォーカス調整指示を与え、S3に戻る。
【0038】S7で、シャッターボタン37が押された場合には、画像の記録保存処理のためにS8に移行する。また、ピントが合っても使用者がシャッターボタン37を押さなければ依然として被写体像のスルー画像+拡大画像82が表示される(S3で拡大ボタンが押された場合)。使用者がカメラのアングルを変えたり他の被写体像にカメラを向けると上記S2?S6が再び繰り返される。」
6.「【0042】[実施例2] 撮影画像(マニュアルフォーカス)によるフォーカス等確認
図6は、マニュアルフォーカスを行なう場合を例とするデジタルカメラ100の動作例を示すフローチャートであり、マニュアルフォーカスは記録モードで表示されるスルー画像を見て行なう使用者のフォーカス調整ボタンの操作によってなされる。また、フォーカス確認はシャッター操作後に拡大表示される撮影画像のフォーカス位置を基に使用者が行なう。なお、図7はマニュアルフォーカス時に表示される撮影画像および拡大画像の説明図である。
【0043】図7で、ステップT1,T2は図4のS1,S2と同様である。T3で、使用者はスルー画像90全体の構図を見てカメラを移動させてアングル調整を行なうと共にピントを確認し、ピントが合ったと考える場合にはT5でシャッターボタン37を押す。ピントが合っていない場合には、T4で、フォーカス調整のためフォーカス調整ボタンの操作を繰り返す。
【0044】シャッターボタン37の押し下げから記録保存の終了まで数秒間(t秒)かかるので、先ず、T6で、CPU21はDRAM13に記憶されている画像データ(シャッター押し下げ時のスルー画像データ)をシグナルジェネレータ16に供給し、Ye成分,Cy成分,Gr成分の全てを用いて、高密度なビデオデータを生成させ、液晶ディスプレイ40に撮影画像としておおよそ0.5T秒間ぐらい表示する。ここで、表示される撮影画像92はスルー画像90よりも解像度が高いので、鮮明な画像が得られる。そこで、使用者は約0.5t秒程度の間に画像全体の構図や色合等をよく確認することができる(図7(b))。
【0045】次に、T7で、CPU21はROM23に格納されているプログラムモジュールのうちのフォーカス位置拡大表示手段を読み出す。なお、本実施例では撮影画像の表示後、一定の時間をおいて自動的にROM23からフォーカス位置拡大表示手段を読み出すようにしているが、図4のステップS3のように使用者がフォーカス位置拡大ボタン36を押すと、ROM23に格納されているプログラムモジュールのうちのフォーカス位置拡大表示手段が読み出されるようにしてもよい。T7では、上記T6で表示された撮影画像92のフォーカス位置(図7(a)で示されたフォーカス枠91内に相当する部分)が拡大表示される。フォーカス位置拡大画像92を画面全体に表示してもよいし(図7(c))、画面の所定の場所(例えば、フォーカス位置4隅のいずれか)としてもよい(図7(c’))。
【0046】フォーカス位置拡大表示手段は、DRAM13上の撮影画像データを取り出して画像拡大用ワークエリアに記憶させてから、フォーカス枠91に相当する部分を補間法等の拡大法を用いて拡大し、拡大が終了してから読み出してシグナルジェネレータ16に供給し、ホワイトバランス調整、色演算処理を実行させ、輝度信号Y、色差信号R-Y、B-Yからなるビデオデータを生成させてVRAM17に記憶させる。シグナルジェネレータ16は、また、VRAM17に記憶された画像データを読み出して液晶ディスプレイ40に出力し画像表示させる。これにより画面にフォーカス位置の拡大画像93を表示できる。なお、拡大倍率は実施例では固定倍率としたが可変倍率としてもよい。」
7.「【図4】


8.「【図5】


9.「【図6】


10.「【図7】



これらの記載事項を含む引用例1全体の記載及び当業者の技術常識を総合すれば、引用例1には、以下の発明が記載されている。
「記録モード時に表示される被写体のモニター画像と共にフォーカス確認用のフォーカス枠(81)を表示し、フォーカス枠内の画像部分を使用者の指示により可変倍率とし、プラスボタン(35)を1回押す毎に倍率が変化するようにして拡大して画面の一部または全体に表示し、
使用者は拡大されたフォーカス位置を見て必要に応じてピント合せをやり直したり、シャッターボタンを押して撮影する電子カメラ装置。」(以下「引用発明」という。)

第4 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「モニター」及び「被写体のモニター画像」は、それぞれ本願発明の「画像表示手段」及び「撮像画像の表示」に相当する。
(2)同じく、「フォーカス枠内の画像部分」及び「使用者の指示により可変倍率とし・・・拡大して画面の一部または全体に表示し」は、それぞれ「表示画像」及び「拡大率設定の入力操作に応じた表示画像に対する拡大率で拡大して前記画像表示手段にて表示させる拡大手段」に相当する。
ここで、本願発明の「入力操作」に相当する引用発明の「使用者の指示」は、「プラスボタンを1回押す毎に倍率が変化するようにして」あり、「記録画素数の設定操作とは異なる入力操作」であることは明らかである。
(3)引用発明の「被写体のモニター画像」は「シャッターボタンを押して撮影する」ための画像であるから、本願発明の「記録のための撮影画像」に相当する。
また、引用発明が「拡大率に応じて当該画像表示を制御する制御手段を有すること」は明らかである。
してみると、両者は、ともに「記録のための撮像画像のピント確認のための画像表示を前記画像表示手段で行う際に、前記入力操作に応じた拡大率に応じて当該画像表示を制御する制御手段を有する画像表示制御装置。」である点で共通する。

以上のことから、両者は、
「画像表示手段による撮像画像の表示を制御する画像表示制御装置であって、
前記画像表示手段にて表示される画像を、記録画素数の設定操作とは異なる入力操作であって、表示画像に対する拡大率設定の入力操作に応じた表示画像に対する拡大率で拡大して前記画像表示手段にて表示させる拡大手段と、
前記入力操作に応じた表示画像に対する前記拡大率を記憶する拡大率記憶手段と、
記録のための撮像画像のピント確認のための画像表示を前記画像表示手段で行う際に、前記入力操作に応じた拡大率に応じて当該画像表示を制御する制御手段を有する画像表示制御装置。」
の点で一致し、次の各点で相違している。
(相違点1)
本願発明が「拡大率を記憶する拡大率記憶手段を備え」、「拡大率記憶手段に記憶されている拡大率に応じて当該画像表示を制御する」のに対して、引用発明がそのような構成を有するかどうか不明な点。
(相違点2)
記録のための撮影画像の拡大表示を、本願発明が「取得後に」表示するのに対して、引用発明は「取得前に」行う点。

第5 相違点に関する判断
(相違点1について)
複数の設定値を有する画像表示装置において、使用者が適宜の設定値を選択して設定し、設定した値をデフォルト値として記憶しておくための記憶手段を設けることにより、それ以降の使用においては当該デフォルト値を設定値として用いることは、ごく普通に行われている周知技術である。
そして、引用発明の拡大倍率設定に当該周知技術を用いることに、格別の技術的困難性も阻害要因もない。
してみると、引用発明に上記相違点1に係る構成を採用することは、当業者が容易になしうる事項である。
(相違点2について)
引用例1には記録のための撮影画像の拡大率表示を「取得後に」表示する実施例が記載(上記摘記事項「6.」、「9.」及び「10.」参照)されていることからも明らかなとおり、引用発明の拡大表示を画像取得後に行うようにすることに、格別の阻害要因はない。
してみると、引用発明に上記相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易になしうる事項である。

そして、本願発明の効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-11 
結審通知日 2013-06-25 
審決日 2013-07-09 
出願番号 特願2006-249863(P2006-249863)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鷲崎 亮鉄 豊郎  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 伊藤 昌哉
土屋 知久
発明の名称 画像表示制御装置および撮像装置  
代理人 阿部 琢磨  
代理人 黒岩 創吾  

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