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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1278402
審判番号 不服2012-397  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-10 
確定日 2013-08-20 
事件の表示 特願2006-204236「アナログ信号のサンプリングにより得られたデータを処理する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 2月 8日出願公開、特開2007- 35047〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成18年7月27日(パリ条約による優先権主張2005年7月28日、ドイツ連邦共和国)の出願であって、平成23年6月3日付けで拒絶理由が通知され、平成23年8月30日付けの手続補正書によって特許請求の範囲について補正する手続補正がなされたが、平成23年9月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年1月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

第2.本願発明について

1.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年8月30日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲並びに出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
アナログ信号のサンプリングにより得られ後続処理のため計算機(5)へ転送される、内燃機関(100)のノッキングセンサ(1)の測定データの処理を行う内燃機関の制御装置において、
複数のサンプリング値が1つのデータブロックにまとめられ、次に計算機(5)が内燃機関の制御のための通常のプログラムの処理を中断し、該データブロックを後続処理することを特徴とする装置。」

2.引用文献

(1)引用文献1の記載
本件出願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平6-180790号公報(以下、「引用文献1」という。)には、例えば、次の記載がある。

ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、赤外線センサにより不法侵入者等を検出した時に、警備センタへ警報信号を送出する警備システムに関する。警備員が常駐しない倉庫や、夜間等に於いて職員等が不在となる事業所等に於いて、不法侵入者を検出して警備センタに通報し、警備センタから警備員が派遣される警備システムが知られており、不法侵入者の検出には赤外線センサが用いられている。この赤外線センサは、不法侵入者からの赤外線以外の赤外線も検出するものであるから、その場合は誤報となる。従って、このような誤報による警備センタへの警報信号送出を低減することが要望されている。」(段落【0001】)

イ.「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の警備システムは、図1を参照して説明すると、分散配置された赤外線センサ1-1?1-nの検出信号を基に端末送受信機2から警備センタ3へ警報信号を送出する警備システムであって、端末送受信機2に、複数の赤外線センサ1-1?1-nの検出信号発生順序の検出パターンを基に真報か誤報かを判定する判定部4を設け、この端末送受信機2は、判定部4の判定によって警備センタ3へ警報信号を送出するものである。又警備センタ3は、送受信部5と処理装置6と表示部7等を備えている。」(段落【0006】)

ウ.「【0031】又警備センタは、予告警報信号又は警報信号を受信した場合、或いは定期的に端末送受信機に対して制御信号を送出し、端末送受信機から赤外線センサの検出信号を送出させることができる。その場合、例えば、図9の(a),(b)(当審注:「(b),(c)」の誤記と考えられる。)に示すように、ファンクションコードFCと端末ステータスSTと端末番号及びファンクションコードFCと警報区分ALとセンサ番号と検出信号とからなるフォーマットにより、端末送受信機から警備センタに検出信号が送出される。なお、端末ステータスSTは警備中か否かを示し、端末番号は端末送受信機に割当てられた番号を示す。又警報区分ALの“0”は異常復旧による正常状態、“1”は異常発生を示す。又センサ番号は赤外線センサ対応に割付けられた番号、検出信号は複数ビットによりそのレベルを示すものである。なお、警報区分ALを2ビット構成として、予告警報であることを示すようにすることもできる。
【0032】赤外線センサS1?Snの検出信号は、図8に示す実施例のように、AD変換部12により複数ビット構成のディジタル信号に変換されるから、それを(b)(当審注:「(c)」の誤記と考えられる。)の検出信号として送出することになる。この場合、警備センタからの指令によって、端末送受信機では、数秒程度の間隔で赤外線センサS1?Snの検出信号をサンプリングし、数10回のサンプリング内容を蓄積しておいて、まとめて警備センタに送出することができる。警備センタでは、検出信号レベルの変化をグラフ表示或いは印字出力し、1個の赤外線センサの検出信号の変化並びに他の赤外線センサの検出信号の変化との関連により、真報か誤報かの判定並びに不法侵入者の移動経路の識別が可能となる。」(段落【0031】及び【0032】)

(2)引用文献1の記載から分かること
上記(1)ア.ないしウ.及び図面の記載から、下記の事項が分かる。

エ.上記(1)ア.及びイ.並びに図1から、引用文献1には、赤外線センサの検出信号を基に端末送受信機2から警備センタ3へ警報信号を送出する警備システムが記載されていることが分かる。

オ.上記(1)ウ.の「赤外線センサS1?Snの検出信号は、図8に示す実施例のように、AD変換部12により複数ビット構成のディジタル信号に変換される」という記載及び図8からみて、赤外線センサの検出信号はアナログ信号であることが分かる。

カ.上記(1)ウ.並びに図8及び図9からみて、端末送受信機2は、警備センタ3からの指令によって、赤外線センサの検出信号をサンプリングし、数10回のサンプリング内容を蓄積しておいて、まとめて警備センタに送出し、警備センタでは当該検出信号を後続処理することが分かる。

(3)引用文献1記載の発明
上記(1)ア.ないしウ.及び(2)エ.ないしカ.並びに図面から、引用文献1には以下の発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が記載されているといえる。

「アナログの検出信号のサンプリングにより得られ後続処理のため警備センタ3の処理装置6へ送出される、端末送受信機の赤外線センサの検出信号の処理を行う警備センタ3において、
複数のサンプリング内容がまとめられ、次に警備センタ3の処理装置6が後続処理する警備システム。」

3.対比
本願発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「アナログの検出信号」は、その機能、構成及び技術的意味からみて、本願発明における「アナログ信号」に相当し、以下同様に、「送出」は「転送」に、「検出信号」は「測定データ」に、「複数のサンプリング内容がまとめられ」は「複数のサンプリング値が1つのデータブロックにまとめられ」に、それぞれ相当する。
また、引用文献1記載の発明における「警備センタ3」は、本願発明における「内燃機関の制御装置」に、「システム制御部」という限りにおいて相当し、「警備センタ3の処理装置6」は「計算機」に、「システム制御部の計算機」という限りにおいて相当し、「端末送受信機の赤外線センサ」は「内燃機関のノッキングセンサ」に、「計測対象側のセンサ」という限りにおいて相当し、「警備システム」は「装置」に、「測定データ処理システム」であるという限りにおいて相当する。

したがって、本願発明と引用文献1記載の発明とは、
「アナログ信号のサンプリングにより得られ後続処理のためシステム制御部の計算機へ転送される、計測対象側のセンサの測定データの処理を行うシステム制御部において、
複数のサンプリング値が1つのデータブロックにまとめられ、次にシステム制御部の計算機が後続処理する測定データ処理システム。」
である点で一致し、次の点において相違する。

<相違点>
(1)本願発明においては、測定データ処理システムが内燃機関のノッキングを測定対象とする「装置」であり、したがって、システム制御部が「内燃機関の制御装置」であり、また、システム制御部の計算機が「計算機」であるのに対し、引用文献1記載の発明においては、測定データ処理システムが不法侵入者等を検出対象とする「警備システム」であり、したがって、システム制御部が「警備センタ3」であり、また、システム制御部の計算機が「警備センタ3の処理装置6」である点(以下、「相違点1」という。)。

(2)本願発明においては、「計算機(5)が内燃機関の制御のための通常のプログラムの処理を中断」し、「データブロックを後続処理する」のに対し、引用文献1記載の発明においては、警備センタ3の処理装置6が、他のブログラム処理を中断し、まとめられたサンプリング内容を後続処理するかどうか不明である点(以下、「相違点2」という。)。

4.判断
上記相違点について検討する。

(1)相違点1について
内燃機関のノッキング検出において、センサによって検出されたアナログ信号をサンプリングし、デジタル信号化してシステム制御部へ転送することは、例えば、本件出願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された刊行物である特開平6-331501号公報(例えば、段落【0011】及び【0012】、【0015】及び【0016】並びに図1及び図2参照。)に記載されているほか、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平4-194711号公報(例えば、第3ページ左上欄第8行ないし右上欄第16行の「ノックセンサからの信号は、増幅器でAD変換器の入力電圧範囲にまで増幅する。…中略…AD変換器はクランク角の一致割込で起動され、所定のクランク角度の間、連続してAD変換を行ない、RAM34に順次結果を残してゆく。…中略…AD変換器は、…中略…AD変換結果のバッファが存在するときはバッファがいっぱいになるごとにCPUに対してAD変換割込を出す。」という記載及び図面参照。)にも記載されているように、周知の技術である(以下、「周知技術」という。)。
一般に、引用文献1記載の発明のような測定データ処理システムは、阻害要因がない限り、データ処理の対象として様々なものに応用可能である。したがって、上記周知技術を考慮すれば、引用文献1記載の発明において、データ処理の対象をノッキングセンサによって検出された信号とすることにより、相違点1に係る本願発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
一般に、ある処理を実行中の計算機に対し、他の処理を実行させる際に、実行中の処理を中断させるか否かは、請求人も審判請求書の【請求の理由】において認めるように、計算機の処理能力に応じて適宜選択できる設計的事項である。
したがって、引用文献1記載の発明において、相違点2に係る本願発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。

さらに、本願発明の全体構成でみても、引用文献1記載の発明及び周知技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものでもない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-26 
結審通知日 2013-03-27 
審決日 2013-04-09 
出願番号 特願2006-204236(P2006-204236)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 正和  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 久島 弘太郎
金澤 俊郎
発明の名称 アナログ信号のサンプリングにより得られたデータを処理する方法および装置  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 星 公弘  
代理人 高橋 佳大  
代理人 久野 琢也  
代理人 篠 良一  
代理人 二宮 浩康  

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