• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1278584
審判番号 不服2012-23053  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-21 
確定日 2013-08-28 
事件の表示 特願2009-503245号「マルチカートリッジ式流体投与装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月11日国際公開、WO2007/115039、平成21年 9月10日国内公表、特表2009-532117号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年3月28日(パリ条約による優先権主張 平成18年3月30日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成24年7月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成24年11月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年6月27日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「第1薬剤及び第2薬剤を投与するための流体投与装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内にあり、前記第1薬剤を収容するよう構成された第1貯留部と、
前記ハウジング内にあり、前記第2薬剤を収容するよう構成された第2貯留部と、
前記ハウジング内にあり、第1作動流体貯留部を有する第1基礎駆動機構と、
第1流れ規制部を介して前記第1基礎駆動機構の前記第1作動流体貯留部と流体連通し、前記第1貯留部に接続して、使用に際し前記第1薬剤の基礎投与を提供する第1ポンプチャンバと、
前記ハウジング内にあり、第2作動流体貯留部を有する第2基礎駆動機構と、
第2流れ規制部を介して前記第2基礎駆動機構の前記第2作動流体貯留部と流体連通し、前記第2貯留部に接続して、使用に際し前記第2薬剤の基礎投与を提供する第2ポンプチャンバと、
前記第1貯留部と流体連通するよう構成された第1端部と、前記ハウジングから外部へ延出するよう構成された第2端部とを有する針と
を備える流体投与装置。」

第3 引用刊行物の記載事項
1 原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特表平11-505753号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

1ア 「16.制御した流量で患者に薬剤流体を注入するのに使用する超低丈プロファイル注入装置において、
(a) 中央部分及びこの中央部分を包囲する周縁部分を有する上面、患者に掛合可能な下面、及び前記上面と前記下面との中間で前記中央部分及び前記周縁部分の下側に配置し、また第1端部及び第2端部を有する巡回形状のチャンネルを設けたベースと、
(b) 前記ベースと連携して前記ベースの前記周縁部分の上方に位置する第1リザーバ及び前記ベースの前記中央部分の上方に位置する第2リザーバを形成し、前記第1リザーバ及び前記第2リザーバの各々にそれぞれ流体入口及び流体出口を設けた蓄積エネルギ手段であって、前記ベース上に重ね合わせた少なくとも1個の膨張可能な薄膜を具え、この薄膜が前記第1及び第2のリザーバ内に流体を導入することによって発生する圧力で膨張して内部応力を生じ、この内部応力が前記薄膜を少ない膨張状態に向けて移動しようと作用する蓄積エネルギ手段と、
(c) 前記膨張可能な薄膜に掛合するよう前記第1及び第2のリザーバ内に配置した補間画成手段と、
(d) 前記第1リザーバ及び第2リザーバにそれぞれ充填する第1充填手段及び第2充填手段と、
(e) 前記第1及び第2のリザーバから薬剤流体を患者に注入するための注入手段であって、
(i) 前記ベースに形成した前記巡回形状の前記チャンネル内に配置した本体部分、及び
(ii) 前記チャンネルの前記第2端部から外方に突出して患者に挿入する刺し込み可能な部分として形成した出口端部部分
を有する中空カニューレを設けた注入手段と
を具えたことを特徴とする超低丈プロファイル注入装置。」(【特許請求の範囲】)

1イ 「発明の分野
本発は一般に流体投与装置に関するものである。また特に、本発明は歩行できる患者に特定の流量で長時間にわたり薬剤を注入する改良した装置に関するものである。」(15頁24?27行)

1ウ 「図34?図37Aには、本発明による超低丈装置の更に他の実施例を示し、参照符号460によって示す。図34及び図34Aに明示するように、本発明のこの実施例は、若干の部分においては図27?図32の実施例と同様である。従って、同様の構成部材には同一の参照符号を使用する。本発明のこの実施例は、新規な蛇行形状の中空カニューレ(図37A参照)に連通する複式(デュアル)リザーバを有するという独特な特徴を有し、この特徴を以下に説明する。
図36及び図36aに明示するように、装置は、中央部分464aとこの中央部分464aを包囲する周縁部分464bとを含む上面464を設けたベース462を具える。ベース462には、更に、下面466を設ける。ベース462内に巡回形状のチャンネル470(図34A参照)を形成し、このチャンネル内に注入手段の一部即ち、本発明による蛇行形状の中空カニューレ472の一部を収容する。
図34?図37Aに示す装置には、ベース462に関連して、それぞれ出口478及び480を有する1対のリサーバ474,476を形成する蓄積エネルギ手段を設ける。図34Aに明示するように、出口478をカニューレ472に設けた第1入口ポート482に連通するとともに、出口480をカニューレ472に設けた第2入口ポート484に連通させる(図34A,37A参照)。外側リザーバ474の充填は、リザーバ入口474a及びフィルタF-1を経て充填する第1隔壁組立体486を介して行うとともに、中央リザーバ476の充填はリザーバ入口476a及びフィルタF-2(図34A参照)を経て充填する第2隔壁組立体488を介して行う。フィルタF-1及びF-2は、本発明のフィルタ手段の一部を構成する。双方の隔壁組立体は、刺し込み可能な隔壁486aを有し、上述のようにして使用する。
上述したように、蓄積エネルギ手段を、ベース462に重ね合わせる少なくとも1個の膨張可能な薄膜496の形式として設ける。補間画成手段を各リザーバ内に薄膜496に掛合するように配置する。この薄膜496は膨張した後、少なくとも膨張状態に復元しようとする。本発明のこの実施例の補間画成手段は、薄膜が少ない膨張状態に復元しようとするとき膨張可能な薄膜の形状に適合するという上述の独特な特徴を有する形状順応補間部により構成する。外側リザーバ474内に配置した第1形状順応補間部を図36、図36Aにおいて参照符号492で示す。中央リザーバ476内に配置した第2形状順応補間部を参照符号494で示す。補間部492,494の各々は、ジェル、発泡材、流体及び軟質エラストマのような材料で構成した変形可能な物質により構成する。図示の実施例の場合、形状順応補間部をジェルにより構成し、包囲バリヤ薄膜490を使用して補間部媒体を包囲し、流体リザーバから分離する。上述したように、形状順応補間部をバリヤ薄膜とカバー500との間に配置する。特に、補間部492を薄膜490とカバー500に形成した楕円形状のチャンネル502との間に配置するとともに、補間部494を薄膜490とカバー500に形成したほぼドーム状のキャビティ504との間に配置する(図36B参照)。
図37Aにつき説明すると、本発明装置の蛇行形状のカニューレ472は、微細孔管によって構成した本体部分472aと、拡大直径部分472bと、ニードル状の装置外端部472cとを有する。部分472bに形成した入口482,484内に流体手段を収容可能にし、このフィルタ手段によりデュアルリザーバから流出する流体を濾過する。これらのフィルタ手段は、多孔質のフィルタ部材507,509により構成し、このフィルタ部材はポリスルフォンのような種々の材料から構成することができる。
図37に示すように、カバー500の周縁部分には、捕捉溝510と隣接のタング512を設ける。同様に、ベース462にタング514を設け、カバーをベース462に掛合させるときタング514が溝510に整合するようにする。ベース462には更に、隆起する薄膜切断手段又は突出部516を設け、カバー500をベース462に圧着させるとき、ははみ出る蓄積エネルギ手段及びバリヤ薄膜490をきれいにカットする作用をする。この構成により、薄膜のカットに続いてカバーをベースに上述したように、超音波溶接する。
カバー及びベースをシール結合するとき、注入カニューレの端部472cは、図36Bに示すように組立体から突出し、保護カバー手段又はキャップ組立体520によってカバーする。キャップ組立体520は、中心孔を有する細長いニードルカバー520aにより構成し、こき中心孔により図36Bに示すように、カニューレ472の部分472cを密に収容する。キャップ520aの外形はシース522の内径に密接に対応し、このシース522はセレーション部分462fによってベース延長部462eに結合し、このセレーション部分462fによりシース部分522をベース組立体から折り取るかとができ、キャップ520aをカニューレの部分472cから取り外すことができる。
本発明のこの実施例の装置を使用にあたり、リザーバ474には、隔壁組立体486の隔壁486aに貫入するニードル「N」を有する普通の流体収容シリンジ組立体を使用して隔壁組立体486から充填することができる。同様に、中央リザーバ476には、チャンバ474を充填するのに使用した第1流体と同一の又は異なる第2流体を収容する第2シリンジ組立体を使用して隔壁組立体488から充填する。このようにして、チャンバを充填した状態で、カニューレの部分472cをカバーする保護カバー手段を折り取り、装置のニードル端部部分472cを患者の血管に挿入する。上述したように、装置のベースに適当な接着剤を設け、患者の身体例えば、腕又は脚に着脱自在に固定できるようにする。更に、装置には、ベース462に一体に形成したバタフライ組立体523を設ける。組立体523は注入カニューレを所定位置に固定するのに使用するテープのための適当な面積を与える。
装置を患者に接続すると、第1チャンバ474及び中央チャンバ476内に収容した流体は、蓄積エネルギ手段又は膨張可能な薄膜496が少ない膨張状態に復元しようとしてカニューレから押し出されて流出する。上述したように、リザーバ内に収容した形状順応補間部は、蓄積エネルギ手段がベース462の表面464a,464bに向かって移動するとき蓄積エネルギ手段の変化する形状に密に適合する。しかし、装置の外側チャンバの流体出口478は端部472cから離れた位置でカニューレの拡大直径部分に連通するため、外側リザーバから流出する流体は、出口480を経て中央リザーバから流出する流体よりもゆっくりした速度で患者に向かって流出する。出口480から流出する流体は外側チャンバから流出する流体よりもカニューレを通過する距離が短いため、この流体の流量は外側チャンバ内の第1流体の流量よりも大きい。カニューレ組立体472の微細孔管部分は、流体導管として、また装置の外側及び中央のリザーバから流出する流量を可変制御する流量制御手段としても機能する。」(50頁18行?53頁17行)

1a 記載事項1アの「制御した流量で患者に薬剤流体を注入する」、記載事項1イの「本発明は歩行できる患者に特定の流量で長時間にわたり薬剤を注入する改良した装置に関するものである。」、及び記載事項1ウの「本発明のこの実施例の装置を使用にあたり、リザーバ474には、隔壁組立体486の隔壁486aに貫入するニードル「N」を有する普通の流体収容シリンジ組立体を使用して隔壁組立体486から充填することができる。同様に、中央リザーバ476には、チャンバ474を充填するのに使用した第1流体と同一の又は異なる第2流体を収容する第2シリンジ組立体を使用して隔壁組立体488から充填する。」の各記載からして、流体投与装置は、患者に特定の流量で長時間にわたり第1の薬剤流体及び第2の薬剤流体を注入するためのものといえる。

1b 記載事項1ウの「本発明のこの実施例の装置を使用にあたり、リザーバ474には、隔壁組立体486の隔壁486aに貫入するニードル「N」を有する普通の流体収容シリンジ組立体を使用して隔壁組立体486から充填することができる。同様に、中央リザーバ476には、チャンバ474を充填するのに使用した第1流体と同一の又は異なる第2流体を収容する第2シリンジ組立体を使用して隔壁組立体488から充填する。」、「蓄積エネルギ手段を、ベース462に重ね合わせる少なくとも1個の膨張可能な薄膜496の形式として設ける。・・・外側リザーバ474内に配置した第1形状順応補間部を図36、図36Aにおいて参照符号492で示す。中央リザーバ476内に配置した第2形状順応補間部を参照符号494で示す。補間部492,494の各々は、ジェル、発泡材、流体及び軟質エラストマのような材料で構成した変形可能な物質により構成する。図示の実施例の場合、形状順応補間部をジェルにより構成し、包囲バリヤ薄膜490を使用して補間部媒体を包囲し、流体リザーバから分離する。上述したように、形状順応補間部をバリヤ薄膜とカバー500との間に配置する。」、記載事項1aの「流体投与装置は、患者に特定の流量で長時間にわたり、第1の薬剤流体及び第2の薬剤流体を注入するためのもの」、及び図34ないし図37Aの各記載からして、外側リザーバ474は、ベース462及びカバー500内にあり、第1薬剤が充填されるよう構成され、中央リザーバ476は、ベース462及びカバー500内にあり、第2薬剤が充填されるよう構成されているといえる。また、当該各記載からして、包囲バリヤ薄膜490、補間部492、及び薄膜496は、ベース462及びカバー500内にあり、患者に特定の流量で長時間にわたり第1の薬剤流体を注入するものであり、包囲バリヤ薄膜490、補間部494、及び薄膜496は、ベース462及びカバー500内にあり、患者に特定の流量で長時間にわたり第2の薬剤流体を注入するものであるといえる。

1c 記載事項1ウの「図34?図37Aに示す装置には、ベース462に関連して、それぞれ出口478及び480を有する1対のリサーバ474,476を形成する蓄積エネルギ手段を設ける。図34Aに明示するように、出口478をカニューレ472に設けた第1入口ポート482に連通するとともに、出口480をカニューレ472に設けた第2入口ポート484に連通させる(図34A,37A参照)。」、「図37Aにつき説明すると、本発明装置の蛇行形状のカニューレ472は、微細孔管によって構成した本体部分472aと、拡大直径部分472bと、ニードル状の装置外端部472cとを有する。部分472bに形成した入口482,484内に流体手段を収容可能にし、このフィルタ手段によりデュアルリザーバから流出する流体を濾過する。」、及び図34ないし図37Aの記載からして、カニューレ472は、外側リザーバ474と流体連通するよう構成された拡大直径部分472bと、ベース462から外部へ延出するよう構成されたニードル状の装置外端部472cとを有するといえる。

以上の記載事項から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

「患者に特定の流量で長時間にわたり第1の薬剤流体及び第2の薬剤流体を注入するための流体投与装置であって、
ベース462及びカバー500と、
前記ベース462及びカバー500内にあり、前記第1の薬剤流体が充填されるよう構成された外側リザーバ474と、
前記ベース462及びカバー500内にあり、前記第2の薬剤流体が充填されるよう構成された中央リザーバ476と、
前記ベース462及びカバー500内にあり、患者に特定の流量で長時間にわたり第1の薬剤流体を注入する包囲バリヤ薄膜490、補間部492、及び薄膜496と、
前記ベース462及びカバー500内にあり、患者に特定の流量で長時間にわたり第2の薬剤流体を注入する包囲バリヤ薄膜490、補間部494、及び薄膜496と、
前記外側リザーバ474と流体連通するよう構成された拡大直径部分472bと、前記ベース462から外部へ延出するよう構成されたニードル状の装置外端部472cとを有するカニューレ472と
を備える流体投与装置。」

2 原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である国際公開第2004/094823号(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(括弧内は、翻訳文として対応する特表2006-524555号公報を援用した。)

2ア 「HYDRAULICALLY ACTUATED PUMP FOR LONG DURATION MEDICAMENT ADMINISTRATION
(長い持続時間の医薬投与のための液圧作動式ポンプ(【発明の名称】))」(1頁1?2行)

2イ 「DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
Described herein is a drug delivery system, uses thereof and methods for making the same. In one embodiment, the systems described herein provide pump devices for delivering a medicant, agent, fluid or some other material to a patient, typically through the skin. To this end, the system includes an actuator that operates on a reservoir of viscous fluid. The actuator causes the viscous fluid to apply pressure to medicant to the medicant being delivered. The viscous fluid is controlled by a restrictor that, in one practice, controls the rate of flow of the fluid so that an uneven application of pressure to the reservoir is mediated, and a controlled rate of fluid movement is achieved. This controlled rate of fluid movement is employed to cause a medicant to be delivered at a selected rate.
((発明の詳細な説明)
本明細書中に、薬物送達システム、その使用およびその製造方法が記載される。1つの実施形態において、本明細書中に記載されるシステムは、医薬、薬剤、流体、または他の何らかの材料を、患者に、代表的には皮膚を通して送達するための、ポンプデバイスを提供する。この目的で、このシステムは、粘性の流体のためのレザバを作動させるアクチュエータを備える。このアクチュエータは、この粘性の流体に、医薬に圧力を付与させて、この医薬を送達する。この粘性の流体は、拘束器によって制御され、この拘束器は、1つの実施において、このレザバへの圧力の不均一な付与が媒介されるように、そして流体の動きの制御された速度が達成されるように、この流体の流れの速度を制御する。この流体の動きの制御された速度は、医薬が、選択された速度で送達されるように、使用される。(段落【0051】))」(8頁8?18行)

2ウ 「The hydraulic pump system can be employed in a fluid delivery system that can be manufactured inexpensively, and could take advantage of the slow, yet relatively constant delivery rate associated with the hydraulic pump system. Partly due to the slow rate of delivery, the fluid delivery system can be used to continuously deliver a fluid over a long period of time, e. g. 6 hrs, 12 hrs, 1 day, 3 days, 5 days, 10 days, one month, etc.
(この液圧式ポンプシステムは、安価に製造され得る流体送達システムにおいて使用され得、そしてこの液圧式ポンプシステムに関連する、ゆっくりであるが比較的一定な送達速度を利用し得る。このゆっくりとした送達速度に部分的に起因して、この流体送達システムは、長い時間にわたって(例えば、6時間、12時間、1日、3日、5日、10日、1ヶ月など)、流体を連続的に送達するために使用され得る。(段落【0060】))」(10頁19?24行)

2エ 「1. A hydraulically actuated fluid delivery system for sustained delivery of a liquid component, comprising: a pump chamber, and a fluid storage chamber having an orifice and being functionally connected to said pump chamber by a moveable barrier; a hydraulic fluid reservoir for storing a high viscosity fluid, said reservoir being connected to said pump chamber via a restrictor capable of controlling the rate of flow of the high viscosity fluid, and, an actuator functionally connected to said hydraulic fluid reservoir to cause said hydraulic fluid to flow into said pump chamber through said restrictor, thereby expanding the volume of said pump chamber, displacing said moveable barrier and causing a quantity of said liquid component stored in said fluid storage chamber to be delivered at a sustained rate.
(【請求項1】
液体成分の持続送達のための、液圧作動式流体送達システムであって、以下:
ポンプチャンバおよび流体貯蔵チャンバであって、該流体貯蔵チャンバは、オリフィスを有し、そして可動障壁によって、該ポンプチャンバに流体接続されている、ポンプチャンバおよび流体貯蔵チャンバ;
高粘度の流体を貯蔵するための、液圧流体レザバであって、該レザバは、拘束部を介して該ポンプチャンバに接続されており、該拘束部は、該高粘度の流体の流量を制御し得る、液圧流体レザバ;ならびに
該液圧流体レザバに機能的に接続されたアクチュエータであって、該アクチュエータは、該液圧流体を、該拘束部を通して該ポンプチャンバに流入させ、これによって、該ポンプチャンバの体積を拡張させ、該可動障壁を移動させ、そして該流体貯蔵チャンバ内に貯蔵された、ある量の該液体成分を、持続された速度で送達させる、アクチュエータ、
を備える、流体送達システム。(【特許請求の範囲】))」(CLAIMS)

以上の記載事項から、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。

「長い持続時間の医薬投与のための液圧作動式流体送達システムであって、
薬剤を貯蔵する流体貯蔵チャンバと、
高粘度の流体を貯蔵するための液圧流体レザバ及び該液圧流体レザバに機能的に接続されたアクチュエータと、
高粘度の流体の流量を制御し得る拘束部を介して前記液圧流体レザバと接続し、可動障壁によって前記流体貯蔵チャンバに流体接続するポンプチャンバであって、アクチュエータが、前記液圧流体を、前記拘束部を通して前記ポンプチャンバに流入させ、これによって、前記ポンプチャンバの体積を拡張させ、前記可動障壁を移動させ、そして前記流体貯蔵チャンバ内に貯蔵された、ある量の液体成分を、持続された速度で送達させるポンプチャンバと、
を備える液圧作動式流体送達システム。」

第4 対比
1 本願発明と引用発明1を対比すると、その意味、構造又は機能からみて、引用発明1の「第1の薬剤流体」は、本願発明の「第1薬剤」に相当し、以下同様に、「第2の薬剤流体」は「第2薬剤」に、「注入する」は「投与する」に、「ベース462及びカバー500」は「ハウジング」に、「が充填される」は「を収容する」に、「外側リザーバ474」は「第1貯留部」に、「中央リザーバ476」は「第2貯留部」に、「拡大直径部分472b」は「第1端部」に、「ニードル状の装置外端部472c」は「第2端部」に、「カニューレ472」は「針」に、それぞれ相当する。

2 引用発明1の「薄膜490、補間部492、及び薄膜496」は、患者に特定の流量で長時間にわたり第1の薬剤流体を注入するものであるところ、本願明細書でいうところの「薬剤の持続的な基礎投与」(段落【0001】)を提供するための機構といえるから、引用発明1の「薄膜490、補間部492、及び薄膜496」と、本願発明の「第1作動流体貯留部を有する第1基礎駆動機構」及び「第1流れ規制部を介して第1基礎駆動機構の第1作動流体貯留部と流体連通し、第1貯留部に接続して、使用に際し第1薬剤の基礎投与を提供する第1ポンプチャンバ」とは、「第1薬剤の基礎投与を提供するための機構」である点で共通する。

3 同様に、引用発明1の「包囲バリヤ薄膜490、補間部494、及び薄膜496」と、本願発明の「第2作動流体貯留部を有する第2基礎駆動機構」及び「第2流れ規制部を介して第2基礎駆動機構の第2作動流体貯留部と流体連通し、第2貯留部に接続して、使用に際し第2薬剤の基礎投与を提供する第2ポンプチャンバ」とは、「第2薬剤の基礎投与を提供するための機構」である点で共通する。

4 そこで、本願発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「第1薬剤及び第2薬剤を投与するための流体投与装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内にあり、前記第1薬剤を収容するよう構成された第1貯留部と、
前記ハウジング内にあり、前記第2薬剤を収容するよう構成された第2貯留部と、
前記ハウジング内にある第1薬剤の基礎投与を提供するための機構と、
前記ハウジング内にある第2薬剤の基礎投与を提供するための機構と、
前記第1貯留部と流体連通するよう構成された第1端部と、前記ハウジングから外部へ延出するよう構成された第2端部とを有する針と
を備える流体投与装置。」

5 そして、両者は次の点で相違する。
(相違点)
「第1薬剤の基礎投与を提供するための機構」が、本願発明では「第1作動流体貯留部を有する第1基礎駆動機構」及び「第1流れ規制部を介して第1基礎駆動機構の第1作動流体貯留部と流体連通し、第1貯留部に接続して、使用に際し第1薬剤の基礎投与を提供する第1ポンプチャンバ」であるのに対して、引用発明1では「薄膜490、補間部492、及び薄膜496」であり、また、「第2薬剤の基礎投与を提供するための機構」が、本願発明では「第2作動流体貯留部を有する第2基礎駆動機構」及び「第2流れ規制部を介して第2基礎駆動機構の第2作動流体貯留部と流体連通し、第2貯留部に接続して、使用に際し第2薬剤の基礎投与を提供する第2ポンプチャンバ」であるのに対して、引用発明1では「包囲バリヤ薄膜490、補間部494、及び薄膜496」である点。

第5 相違点の判断
上記相違点について検討する。

引用発明2における長い持続時間の医薬投与のための液圧作動式流体送達システム(「薬剤を投与するための流体投与装置」に相当)は、薬剤を貯蔵する流体貯蔵チャンバ(「薬剤を収容するよう構成された貯留部」に相当)と、高粘度の流体を貯蔵するための液圧流体レザバ(「作動流体貯留部」に相当)及び該液圧流体レザバに機能的に接続されたアクチュエータ(「作動流体貯留部を有する基礎駆動機構」に相当)と、高粘度の流体の流量を制御し得る拘束部を介して前記液圧流体レザバと接続し(「流れ規制部を介して基礎駆動機構の作動流体貯留部と流体連通し」に相当)、可動障壁によって前記流体貯蔵チャンバに流体接続する(「貯留部に接続して」に相当)ポンプチャンバであって、アクチュエータが、前記液圧流体を、前記拘束部を通して前記ポンプチャンバに流入させ、これによって、前記ポンプチャンバの体積を拡張させ、前記可動障壁を移動させ、そして前記流体貯蔵チャンバ内に貯蔵された、ある量の液体成分を、持続された速度で送達させるポンプチャンバ(「使用に際し薬剤の基礎投与を提供するポンプチャンバ」に相当)を備えるものである。

引用発明1と引用発明2とは、患者に特定の流量で長時間にわたり薬剤流体を注入するための流体投与装置という共通の技術分野に属し、患者に特定の流量で長時間にわたり薬剤流体を注入するという課題において共通する。また、刊行物1には「カニューレ組立体472の微細孔管部分は、流体導管として、また装置の外側及び中央のリザーバから流出する流量を可変制御する流量制御手段としても機能する。」(記載事項1ウ)と、流れを規制する部分によって、患者に注入される薬剤流体の流量を可変制御することが示唆されていることを踏まえれば、引用発明1において、「第1薬剤の基礎投与を提供するための機構」及び「第2薬剤の基礎投与を提供するための機構」として、「薄膜490、補間部492、及び薄膜496」及び「包囲バリヤ薄膜490、補間部494、及び薄膜496」に代えて、患者に特定の流量で長時間にわたり薬剤流体を注入するという共通の機能を有する引用発明2における流体貯蔵チャンバ、液圧流体レザバ、アクチュエータ、拘束部及びポンプチャンバに係る構成を採用し、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明による効果も、引用発明1及び引用発明2から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-29 
結審通知日 2013-04-02 
審決日 2013-04-16 
出願番号 特願2009-503245(P2009-503245)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土田 嘉一  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 松下 聡
高田 元樹
発明の名称 マルチカートリッジ式流体投与装置  
代理人 一色国際特許業務法人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ