• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H03B
管理番号 1278618
審判番号 不服2012-6965  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-17 
確定日 2013-08-30 
事件の表示 特願2006- 23955「表面実装水晶発振器の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月16日出願公開、特開2007-208568〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年1月31日の出願であって、平成23年12月12日付けで拒絶査定がなされ、平成24年4月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。

2.平成24年4月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年4月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]
2-1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「一主面側に水晶片を固定する保持端子が形成され、他主面に前記保持端子と電気的に接続して前記水晶片と共に発振回路を形成する回路素子を集積したICチップのバンプを固着する回路端子および前記水晶片の振動特性を測定する水晶検査端子が形成された単層の底壁層と、該底壁層の前記一主面側のみに枠壁層を積層して枠壁段差のない凹部を形成した積層セラミックからなる一部屋構造の容器本体に、前記水晶片と前記ICチップを一体化してなる表面実装水晶発振器の製造方法において、
前記容器本体の前記凹部の内底面を構成する前記底壁層の前記一主面側に形成された前記保持端子に前記水晶片の引出電極を固着し、
前記容器本体の前記凹部を形成する前記枠壁層に金属リングを介在させて金属カバーを溶接することで前記水晶片を前記凹部に密閉封止し、
前記水晶検査端子を用いて前記水晶片の振動特性を測定し、
しかる後、
前記容器本体の他主面の回路端子が形成されて外底面を構成する前記底壁層に、実装するICチップの外形より大きい異方性導電材を予備加熱によって仮固着し、
次ぎに、
前記底壁層に仮固着された前記異方性導電材を介して前記ICチップのバンプを前記回路端子に熱圧着した後に、前記底壁層の4角部に、実装用の金属ボールを設けることを特徴とする表面実装水晶発振器の製造方法。」
と補正された。(この記載の事項により特定される発明を以下、「本願補正発明」という。)
上記補正は、補正前の発明を特定する事項である「底壁層」を「単層の底壁層」と限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以
下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-2.引用発明
原査定の拒絶理由に引用された特開2005-159574号公報(以
下、「引用例6」という。番号は拒絶理由と同じ番号とし、他の引用例も同様にする。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装型圧電発振器に関し、特に多層基板に実装した圧電振動素子の周波数を確認するための機能端子の構造及び該端子を設けた集合基板に関するものである。」

(2)「【0015】
図1(a)は本発明の第1の実施形態の表面実装型圧電発振器としての水晶発振器の構成を示す縦断面図、図1(b)は封止樹脂を省略した状態の下面図である。
第1の実施形態の水晶発振器(TCXO)40は、略矩形状のATカット水晶基板と該水晶基板の両主面に配設する励振電極(不図示)と該励振電極夫々から長手方向の一方端部に延在するリード電極(不図示)とを備える水晶振動素子1と、発振回路および温度補償回路を構成する回路素子、例えばICチップ2と、複数のセラミック絶縁層からなる積層体であって上面に前記水晶振動素子1を収容するためのキャビティー部3aを形成するシームリングを備えると共に下面に前記ICチップ2を実装するための接続端子11を備える略矩形状の多層基板3と、前記キャビティー部3aを閉止するための蓋体4と、外部接続用電極として用いられる突起電極5と、を備えてい
る。前記キャビティー部3aの内底面に形成したパッド電極12に導電性接着剤13を介して前記水晶振動素子1の一方端部(前記リード電極)で片持ち支持すると共に電気的な接続をした上で前記蓋体4によりキャビティー部3aを気密封止し、前記接続端子11に導体バンプ14を介して前記IC
チップ2をフリップチップ実装すると共に前記多層基板3の下面四隅近傍に前記ICチップ2の実装高さより高い前記突起電極5、例えば金属ボールをはんだ実装し前記ICチップ2を封止樹脂15で封止する構造を有する。
【0016】
前記ICチップ2が有する水晶振動素子入力端子に対応する前記接続端子と前記パッド電極12とを電気的に接続する配線パターンの一部を前記水晶振動素子1単体の入出力検査用電極として用いるためのモニタ端子20を前記ICチップ2と重複しない前記多層基板3の下面のスペースに且つ該多層基板3の短手方向の対向する一対の辺部の一方側(図1(b)中の上側)の周縁部に密接する。また前記モニタ端子20に対向する位置、即ち多層基板3の短手方向の対向する一対の辺部の他方側(図1(b)中の下側)の周縁部に前記水晶振動素子1、前記ICチップ2及び前記突起電極5と電気的不通である空き電極19が密接する。
【0017】
図2は第1の実施形態の水晶発振器に係わる多層基板集合体の下面の部分拡大図である。なお、図2中に記載する記号51a及び51bは水晶振動素子を示したものである。
前記水晶発振器40の製造方法は、前記多層基板3に前記水晶振動素子1をマウント(実装)し該水晶振動素子1の周波数を調整する工程と、前記水晶振動素子1を収容した前記キャビティー部3aを気密封止する工程と、前記多層基板3に前記ICチップ2を実装する工程と、前記ICチップ2を樹脂封止する工程と、を少なくとも備えたものであって、これらの工程をバッチ処理にて順次実施することで前記水晶発振器を低コストで製造することが可能となる。そのためには複数の前記多層基板を(平面方向に)碁盤状に連設した大面積の多層基板集合体(集合基板)を用いる必要があり該集合基板には(その面積当りの前記多層基板の数量を多くするために)所謂ダミー基板を前記多層基板同士の間に設けない、即ち多層基板同士が隣接するものが最適である。例えば図2に示すように、最適化した集合基板24を構成する(分割し個片化する前の)多層基板21の上面に前記パッド電極(不図
示)、下面に前記接続端子(省略)、前記突起電極を導通固定するための外部端子25及び多層基板21の長手方向に対向配置する外部端子25同士の間隙のそれぞれにモニタ端子30a及び30bが形成しており、該各モニタ端子は多層基板21を挟んで該多層基板21をの短手方向に隣接するその他の(分割し個片化する前の)多層基板22及び23に延出、換言すれば前記モニタ端子30aは前記多層基板21(の左側端辺部)と該多層基板21の左側に隣接する前記多層基板22(の右側端辺部)との境界線(前記集合基板24を複数の多層基板に分割し個片化するための折り割り作業の案内として用いる凹設した線:スナップライン)を、前記モニタ端子30bは前記多層基板21(の右側端辺部)と該多層基板21の右側に隣接する前記多層基板23(の左側端辺部)とのスナップラインを被うように配設する。前記モニタ端子30aは前記多層基板22に配設する前記パッド電極(に導通固定する水晶振動子51a)と電気的に接続し且つ多層基板22以外の多層基板に配設する回路パターン群、例えば前記多層基板21に配設する前記パッド電極(に導通固定する水晶振動子51b)とは電気的不通に、また前記モニタ端子30bは前記多層基板21に配設する前記パッド電極(に導通固定する水晶振動子51b)と電気的に接続し且つ多層基板21以外の多層基板に配設する回路パターン、例えば前記多層基板23に配設する前記パッド電極とは電気的不通に形成することで前記各モニタ端子を大型化(大面積化)することが可能となる。このような構造にすることで、例えば前記多層基板21にマウントした水晶振動素子(51b)の周波数調整する時、(該水晶振動素子51bと電気的に接続する)前記モニタ端子30bと(前記周波数調整装置の)前記プローブとの接触ミスを抑止することが可能となり周波数調整を失敗するということがほぼ無くなるという効果を有する。」

したがって、引用例6には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「略矩形状のATカット水晶基板と該水晶基板の両主面に配設する励振電極と該励振電極夫々から長手方向の一方端部に延在するリード電極とを備える水晶振動素子1と、発振回路および温度補償回路を構成するICチップ2
と、複数のセラミック絶縁層からなる積層体であって上面に前記水晶振動素子1を収容するためのキャビティー部3aを形成するシームリングを備えると共に下面に前記ICチップ2を実装するための接続端子11を備える略矩形状の多層基板3と、前記キャビティー部3aを閉止するための蓋体4と、外部接続用電極として用いられる突起電極5と、を備え、前記キャビティー部3aの内底面に形成したパッド電極12に導電性接着剤13を介して前記水晶振動素子1の一方端部(前記リード電極)で片持ち支持すると共に電気的な接続をした上で前記蓋体4によりキャビティー部3aを気密封止し、前記接続端子11に導体バンプ14を介して前記ICチップ2をフリップチップ実装すると共に前記多層基板3の下面四隅近傍に前記ICチップ2の実装高さより高い前記突起電極5となる金属ボールをはんだ実装し前記ICチップ2を封止樹脂15で封止する構造を有し、前記ICチップ2が有する水晶振動素子入力端子に対応する前記接続端子と前記パッド電極12とを電気的に接続する配線パターンの一部を前記水晶振動素子1単体の入出力検査用電極として用いるためのモニタ端子20を前記ICチップ2と重複しない前記多層基板3の下面のスペースに且つ該多層基板3の短手方向の対向する一対の辺部の一方側の周縁部に密接する表面実装型圧電発振器としての水晶発振器40の製造方法において、
前記多層基板3に前記水晶振動素子1をマウント(実装)し該水晶振動素子1の周波数を調整する工程と、
前記水晶振動素子1を収容した前記キャビティー部3aを気密封止する工程と、
前記多層基板3に前記ICチップ2を実装する工程と、
を少なくとも備えたものであって、これらの工程をバッチ処理にて順次実施する表面実装型圧電発振器としての水晶発振器40の製造方法。」

2-3.対比
引用発明の「複数のセラミック絶縁層からなる積層体であって上面に前記水晶振動素子1を収容するためのキャビティー部3aを形成するシームリングを備えると共に下面に前記ICチップ2を実装するための接続端子11を備える略矩形状の多層基板3」を備える「表面実装型圧電発振器としての水晶発振器40」は、後記の相違点を除いて、底壁層と、該底壁層の一主面側のみに枠壁層を設け枠壁段差のない凹部を形成した一部屋構造の容器本体
に、水晶片とICチップを一体化してなる表面実装水晶発振器である点で、本願補正発明の「表面実装水晶発振器」と共通する。
引用発明の「パッド電極12」、「導体バンプ14」、「接続端子1
1」、及び「モニタ端子20」は、それぞれ本願補正発明の「保持端子」、「ICチップのバンプ」、「回路端子」、及び「水晶検査端子」に対応す
る。
引用発明の「前記多層基板3に前記水晶振動素子1をマウント(実装)
し」とすることは、「前記キャビティー部3aの内底面に形成したパッド電極12に導電性接着剤13を介して前記水晶振動素子1の一方端部(前記
リード電極)で片持ち支持すると共に電気的な接続をした」ことによるものであるから、本願補正発明の「前記容器本体の前記凹部の内底面を構成する前記底壁層の前記一主面側に形成された前記保持端子に前記水晶片の引出電極を固着し」に対応する。
引用発明の「前記水晶振動素子1を収容した前記キャビティー部3aを気密封止する工程」は、「前記キャビティー部3aを閉止するための蓋体4」によるものであるから、後記の相違点を除いて、本願補正発明の「前記容器本体の前記凹部を形成する前記枠壁層に金属リングを介在させて金属カバーを溶接することで前記水晶片を前記凹部に密閉封止し」とすることと、容器本体の凹部を形成する枠壁層にカバーをすることで水晶片を前記凹部に密閉封止する点で共通する。
引用発明の「前記多層基板3に前記ICチップ2を実装する工程」は、
「前記接続端子11に導体バンプ14を介して前記ICチップ2をフリップチップ実装する」ことによるものであるから、後記の相違点を除いて、本願補正発明の「前記容器本体の他主面の回路端子が形成されて外底面を構成する前記底壁層に、実装するICチップの外形より大きい異方性導電材を予備加熱によって仮固着し、
次ぎに、
前記底壁層に仮固着された前記異方性導電材を介して前記ICチップのバンプを前記回路端子に熱圧着」することと、底壁層にICチップのバンプを前記回路端子に固着して、ICチップを実装する点で共通する。
引用発明の「前記多層基板3の下面四隅近傍に前記ICチップ2の実装高さより高い前記突起電極5となる金属ボールをはんだ実装し」とすること
は、本願補正発明の「前記底壁層の4角部に、実装用の金属ボールを設けること」に対応する。
したがって、本願補正発明と引用発明とを対比すると、次の点で一致す
る。

「一主面側に水晶片を固定する保持端子が形成され、他主面に前記保持端子と電気的に接続して前記水晶片と共に発振回路を形成する回路素子を集積したICチップのバンプを固着する回路端子および前記水晶片の振動特性を測定する水晶検査端子が形成された底壁層と、該底壁層の前記一主面側のみに枠壁層を設け枠壁段差のない凹部を形成した一部屋構造の容器本体に、水晶片とICチップを一体化してなる表面実装水晶発振器の製造方法において、 前記容器本体の前記凹部の内底面を構成する前記底壁層の前記一主面側に形成された前記保持端子に前記水晶片の引出電極を固着し、
前記容器本体の前記凹部を形成する前記枠壁層にカバーをすることで前記水晶片を前記凹部に密閉封止し、
前記底壁層に前記ICチップのバンプを前記回路端子に固着して、IC
チップを実装し、
前記底壁層の4角部に、実装用の金属ボールを設けることを特徴とする表面実装水晶発振器の製造方法。」

また次の点で相違する。

相違点1
本願補正発明の「容器本体」は、「単層の底壁層と、該底壁層の前記一主面側のみに枠壁層を積層して枠壁段差のない凹部を形成した積層セラミックからなる一部屋構造」であるのに対して、引用発明のものは、「複数のセラミック絶縁層からなる積層体であって上面に前記水晶振動素子1を収容するためのキャビティー部3aを形成するシームリングを備える」ものであるから、底壁層と、該底壁層の前記一主面側のみに枠壁層を設け枠壁段差のない凹部を形成した一部屋構造といえるものであるが、単層の底壁層と枠壁層を積層した積層セラミックではない点。

相違点2
本願補正発明は「前記容器本体の前記凹部を形成する前記枠壁層に金属リングを介在させて金属カバーを溶接することで前記水晶片を前記凹部に密閉封止し」とするのに対して、引用発明の「前記キャビティー部3aを閉止するための蓋体4」による「前記水晶振動素子1を収容した前記キャビティー部3aを気密封止する工程」は、容器本体の凹部を形成する枠壁層にカバーをすることで水晶片を前記凹部に密閉封止する工程といえるが、金属リングを介在させて金属カバーを溶接することは特定されていない点。

相違点3
本願補正発明は「……密閉封止し、
前記水晶検査端子を用いて前記水晶片の振動特性を測定し、
しかる後、」とするのに対して、引用発明は「水晶振動素子1単体の入出力検査用電極として用いるためのモニタ端子20」を有し、「前記多層基板3に前記水晶振動素子1をマウント(実装)し該水晶振動素子1の周波数を調整する工程」を備えるものであるから、モニタ端子20を用いて調整のために水晶振動素子1の振動特性を測定することは、当然に行っているとしても、本願補正発明のように密閉封止した後に行うものではない点。

相違点4
本願補正発明はICチップの実装が、
「前記容器本体の他主面の回路端子が形成されて外底面を構成する前記底壁層に、実装するICチップの外形より大きい異方性導電材を予備加熱によって仮固着し、
次ぎに、
前記底壁層に仮固着された前記異方性導電材を介して前記ICチップのバンプを前記回路端子に熱圧着した」
とするのに対して、引用発明では「異方性導電材」を用いる実装については特定されていない点。

相違点5
本願補正発明はICチップの実装後に、「前記底壁層の4角部に、実装用の金属ボールを設ける」とするのに対して、引用発明は「前記ICチップ2をフリップチップ実装すると共に前記多層基板3の下面四隅近傍に前記ICチップ2の実装高さより高い前記突起電極5となる金属ボールをはんだ実装し」と、ICチップの実装後に「金属ボール」を実装するか否か明らかでない点。

2-4.相違点に対する判断
相違点1について
単層の底壁層と、該底壁層の前記一主面側のみに枠壁層を積層した積層セラミックからなる一部屋構造の容器本体は、例えば、前置報告書で周知例として引用した特開2001-111344号公報及び特開2004-135090号公報(前置報告書の内容は、平成24年11月7日付けの審尋に記載した。)に記載されているように周知のものであり、このことは本願明細書及び図面に従来技術の一例として記載されたものからも明らかである。
(この従来技術の一例として記載されたものと同様の構造が、平成23年6月16日付けの拒絶理由通知で引用された特開2002-190710号公報に示されており、必要であれば参照されたい。)
引用発明においても、周知の構造の容器本体を用いることに困難な点はない。

相違点2について
原査定の拒絶理由に引用された特開2005-151116号公報(以
下、「引用例7」という。)には、開口縁部に、金属リングを介して金属板のフタを溶接することで、水晶振動子を気密封止するすることが記載されており(段落【0021】、【0024】等)、引用発明も、同様にして気密封止することに困難な点はない。

相違点3について
密閉封止した後に水晶振動素子を検査することは、周知のことであり(例えば、拒絶査定の備考で引用した特開2005-65140号公報)、引用発明も、調整する工程だけでなく、密閉封止した後においても、水晶振動素子の振動特性を測定することに困難な点はない。

相違点4について
原査定の拒絶理由に引用された特開2000-277566号公報(以
下、「引用例8」という。)には、ICチップの実装面よりも一回り大きいフィルム状の異方性導電接着剤を加熱かつ加圧して、仮接着し、次いで、ICチップを加圧するとともに、異方性導電接着剤を加熱して、ICチップを本接着することが記載されており(段落【0020】、【0026】-【0028】等)、引用発明も、同様にしてICチップを実装することに困難な点はない。

相違点5について
引用発明は「前記ICチップ2をフリップチップ実装すると共に前記多層基板3の下面四隅近傍に前記ICチップ2の実装高さより高い前記突起電極5となる金属ボールをはんだ実装し」とするものであるが、ICチップ2のフリップチップ実装と、ICチップ2の実装高さより高い金属ボールのはんだ実装を、同時に行うことが不可能でないとしても困難であることは明らかで、その記載された順序のように、ICチップ2の実装後に金属ボールのはんだ実装を行うことに困難な点はない。
このことは、金属ボールのはんだ実装を先に行い、その後にICチップ2のフリップチップ実装を行うことは、実装高さのより高いものから実装するという不自然なものとなることからも明らかである。

以上のように、引用発明において、各相違点を本願補正発明のようにすることに困難な点はなく、本願補正発明は、各引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

2-5.むすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成24年4月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成23年11月25日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「一主面側に水晶片を固定する保持端子が形成され、他主面に前記保持端子と電気的に接続して前記水晶片と共に発振回路を形成する回路素子を集積したICチップのバンプを固着する回路端子および前記水晶片の振動特性を測定する水晶検査端子が形成された底壁層と、該底壁層の前記一主面側のみに枠壁層を積層して枠壁段差のない凹部を形成した積層セラミックからなる一部屋構造の容器本体に、前記水晶片と前記ICチップを一体化してなる表面実装水晶発振器の製造方法において、
前記容器本体の前記凹部の内底面を構成する前記底壁層の前記一主面側に形成された前記保持端子に前記水晶片の引出電極を固着し、
前記容器本体の前記凹部を形成する前記枠壁層に金属リングを介在させて金属カバーを溶接することで前記水晶片を前記凹部に密閉封止し、
前記水晶検査端子を用いて前記水晶片の振動特性を測定し、
しかる後、
前記容器本体の他主面の回路端子が形成されて外底面を構成する前記底壁層に、実装するICチップの外形より大きい異方性導電材を予備加熱によって仮固着し、
次ぎに、
前記底壁層に仮固着された前記異方性導電材を介して前記ICチップのバンプを前記回路端子に熱圧着した後に、前記底壁層の4角部に、実装用の金属ボールを設けることを特徴とする表面実装水晶発振器の製造方法。」

原査定の拒絶の理由に引用された引用例6の記載事項は、前記のとおりである。
そして、本願発明は、「底壁層」について「単層の」とする限定がないものであるから、本願補正発明と同様、各引用例に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

以上のとおり、本願発明は、各引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-16 
結審通知日 2013-06-11 
審決日 2013-06-24 
出願番号 特願2006-23955(P2006-23955)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H03B)
P 1 8・ 121- Z (H03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 和志  
特許庁審判長 加藤 恵一
特許庁審判官 吉村 博之
吉田 隆之
発明の名称 表面実装水晶発振器の製造方法  
代理人 大川 晃  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ