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審決分類 |
審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09J |
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管理番号 | 1278636 |
審判番号 | 不服2011-22519 |
総通号数 | 166 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-10-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-10-19 |
確定日 | 2013-08-29 |
事件の表示 | 特願2005-13685「粘着剤組成物および粘着テープ又はシート類」拒絶査定不服審判事件〔平成18年8月3日出願公開,特開2006-199839〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は,平成17年1月21日の出願であって,その請求項1?5に係る発明は,平成22年12月21日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであって,その請求項1及び同4は以下のとおりである。 「【請求項1】 (a)アルキル基の炭素数が4?12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー主成分とするポリマーと,(b)分子中に少なくとも1個の極性基を含有する粘着付与樹脂と,(c´)分子中に2個以上のヒドロキシル基を含有し且つ分子中に窒素原子を含有する化合物とを含む粘着剤組成物であって, ポリマー(a):100重量部に対して,粘着付与樹脂(b)の割合が10?100重量部であるとともに,化合物(c´)の割合が0.01?0.05重量部であり, 且つポリマー(a),粘着付与樹脂(b)及び化合物(c´)を23℃の環境下で混合して粘着剤組成物を調製した際の粘度に対して,前記粘着剤組成物を調製した後に40℃で7日間放置した際の粘度が,2倍以下であることを特徴とする粘着剤組成物。」 「【請求項4】 ポリマー(a),粘着付与樹脂(b)及び化合物(c´)を混合後に,ポリマー(a):100重量部に対して,(d)分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物が0.5?10重量部配合されている請求項1?3の何れかの項に記載の粘着剤組成物。」 ここで,請求項4に係る発明において請求項1を引用する発明を,独立形式に書き直すと次のとおりとなる。 「(a)アルキル基の炭素数が4?12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー主成分とするポリマーと,(b)分子中に少なくとも1個の極性基を含有する粘着付与樹脂と,(c´)分子中に2個以上のヒドロキシル基を含有し且つ分子中に窒素原子を含有する化合物とを含む粘着剤組成物であって, ポリマー(a):100重量部に対して,粘着付与樹脂(b)の割合が10?100重量部であるとともに,化合物(c´)の割合が0.01?0.05重量部であり, 且つポリマー(a),粘着付与樹脂(b)及び化合物(c´)を23℃の環境下で混合して粘着剤組成物を調製した際の粘度に対して,前記粘着剤組成物を調製した後に40℃で7日間放置した際の粘度が,2倍以下であることを特徴とする粘着剤組成物であり, 該粘着剤組成物が,ポリマー(a),粘着付与樹脂(b)及び化合物(c´)を混合後に,ポリマー(a):100重量部に対して,(d)分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物が0.5?10重量部配合されている粘着剤組成物。」(以下,「本願発明4」という。) 2.先願発明 これに対して,原審の平成22年10月19日付けの拒絶理由通知書に引用された,平成17年1月17日の出願である特願2003-426500号(特許第4549057号;同特許掲載公報参照)の請求項1は,以下とおりである。 「(a)アルキル基の炭素数が4?12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー主成分とするポリマーをベースポリマーとして含有する粘着剤組成物であって,前記ポリマー(a):100重量部に対し,(b)分子中に少なくとも1個のヒドロキシル基を含有するキシレンホルムアルデヒド系粘着付与樹脂:10?100重量部,(c)分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物:0.5?10重量部,(d)分子中に2個以上のヒドロキシル基を含有し且つ分子中に窒素原子を含有する化合物:0.01?0.05重量部を含んでいることを特徴とする粘着剤組成物。」(以下,「先願発明」という。) 3.対比 ここで,本願発明4と先願発明とを対比する。 ア 本願発明4は,形式的には,請求項1に記載の「ポリマー(a)」と「粘着付与樹脂(b)」と「ヒドロキシル基含有窒素原子含有化合物(c´)」の3成分系の粘着剤組成物をさらに限定した形式となっているものの,(a)?(c´)の3成分を混合した後,「(d)分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物が…配合されている」となっていることから,実質的には4成分系の粘着剤組成物であると解される。したがって,この点において,本願発明4は先願発明と一致しているものである。 イ 先願発明の「(a)アルキル基の炭素数が4?12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー主成分とするポリマー」は,本願発明4の「(a)アルキル基の炭素数が4?12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー主成分とするポリマー」に相当する。 ウ 先願発明の「(b)分子中に少なくとも1個のヒドロキシル基を含有するキシレンホルムアルデヒド系粘着付与樹脂」は,本願発明4の「(b)分子中に少なくとも1個の極性基を含有する粘着付与樹脂」に相当する。 エ 先願発明の「(c)分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物」は,本願発明4の「(d)分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物」に相当する。(以下ではこれらを「イソシアネート架橋剤(d)」と略称する。) オ 先願発明の「(d)分子中に2個以上のヒドロキシル基を含有し且つ分子中に窒素原子を含有する化合物」は,本願発明4の「(c´)分子中に2個以上のヒドロキシル基を含有し且つ分子中に窒素原子を含有する化合物」に相当する。(以下ではこれらを「ヒドロキシル化合物(c´)」と略称する。) カ したがって,両発明はともに, 「(a)アルキル基の炭素数が4?12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー主成分とするポリマーと,(b)分子中に少なくとも1個の極性基を含有する粘着付与樹脂と,(c´)分子中に2個以上のヒドロキシル基を含有し且つ分子中に窒素原子を含有する化合物と,(d)分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物とを含む粘着剤組成物であって, ポリマー(a):100重量部に対して,粘着付与樹脂(b)の割合が10?100重量部であるとともに,ヒドロキシル化合物(c´)の割合が0.01?0.05重量部であり,イソシアネート系架橋剤(d)の割合が0.5?10重量部である」点で一致し,以下の点で一応相違している。 ・[相違点1] 本願発明4では,ポリマー(a),粘着付与樹脂(b)及びヒドロキシル化合物(c´)を混合後に,イソシアネート系架橋剤(d)が配合されるものであるのに対して,先願発明では,これらの配合順序は特定されていない点。 ・[相違点2] 本願発明4では,ポリマー(a),粘着付与樹脂(b)及びヒドロキシル化合物(c´)を23℃の環境下で混合して粘着剤組成物を調製した際の粘度に対して,前記粘着剤組成物を調製した後に40℃で7日間放置した際の粘度が,2倍以下であるのに対して,先願発明では,ポリマー(a),粘着付与樹脂(b)及びヒドロキシル化合物(c´)の組成物の粘度上昇率について言及がない点。 4.当審の判断 上記一応の相違点について検討する。 ・[相違点1]について 一般に,架橋型の粘着組成物において,架橋剤を配合した段階で,ポットライフの問題が生じるので,架橋剤を配合するのは,塗布の直前に行うのが普通である。 これに対して,先願発明においては,ポリマー(a),粘着付与樹脂(b),ヒドロキシ化合物(c´)及びイソシアネート系架橋剤(d)の混合順序が特定されておらず,また,先願明細書の実施例1では,ポリマー(a)100部に対して,粘着付与樹脂(b)を30重量部,ヒドロキシ化合物(c´)を0.05部,イソシアネート系架橋剤(d)を4部添加し,十分混合して,粘着組成物を製造しており,さらに,先願明細書の他の記載においても,ポリマー(a),粘着付与樹脂(b)及びヒドロキシ化合物(c´)の3成分を先に混合し,その後にイソシアネート系架橋剤(d)を配合する態様が明記されていないものではある。 しかしながら,たとえ,そのような明記がないとしても,架橋剤を塗布直前に配合することが普通に行われているのであるから,当業者は,架橋剤を,他の3成分の混合後に配合する態様も,当然に,先願発明の実施の具体的態様として想定し,該発明の一態様として含まれると理解するというべきである。 したがって,上記相違点1は,実質的な相違点とはいえない。 ・[相違点2]について 本願発明4において,「ポリマー(a),粘着付与樹脂(b)及びヒドロキシ化合物(c´)を23℃の環境下で混合して粘着剤組成物を調製した際の粘度に対して,前記粘着剤組成物を調製した後に40℃で7日間放置した際の粘度が,2倍以下である」ということは,本願明細書の記載からみて,「ポリマー(a),粘着付与樹脂(b)及びヒドロキシ化合物(c´)」の3成分が所定割合で配合されていることに付随して備わる特定事項と解されるものである。 ところで,先願発明は,「ポリマー(a),粘着付与樹脂(b)及びヒドロキシ化合物(c´)」に加えて,さらに「イソシアネート系架橋剤(d)」を配合した4成分系の粘着剤組成物であるが,上記「・[相違点1]について」で検討したように,架橋剤を塗布直前で配合する態様も,当業者が当然に想定するものであり,そのような態様は即ち,「ポリマー(a),粘着付与樹脂(b)及びヒドロキシ化合物(c´)」という3成分系の組成物の状態で一定期間保存されることを意味する態様といえる。 このように,先願発明は,その請求項の記載では4成分が特定された組成物ではあるものの,その記載に触れた当業者ならば,「ポリマー(a),粘着付与樹脂(b)及びヒドロキシ化合物(c´)」の3成分系組成物と「イソシアネート系架橋剤(d)」との2つに分かれた状態の態様も,当然に想定するものといえ,そして当該態様における,一方の3成分系組成物は,本願発明4で「23℃の環境下で混合して粘着剤組成物を調製した際の粘度に対して,前記粘着剤組成物を調製した後に40℃で7日間放置した際の粘度が,2倍以下である」という特定事項を奏するとされている組成物と成分及び配合割合において全く差異のないものであるから,このような特定事項は,先願発明に係る粘着剤組成物においても,当然に有しているというべきものである。 さらに,「ポリマー(a),粘着付与樹脂(b)及びヒドロキシ化合物(c´)」の3成分系組成物と「イソシアネート系架橋剤(d)」という,いわゆる二液型の粘着剤組成物であっても,各液のシェルフライフの長期化は周知の課題であり,当業者が,常に考慮を払っているものといえる上,本願明細書,殊に実施例・比較例において示されているシェルフライフは,その比較対照とする多数の粘着剤組成物と比べて,概ね同程度(本願発明に係る実施例1は「1.1倍」であるのに対して,比較例1?4及び参考例は「1.0?1.1倍」)であることから,単に,シェルフライフについても特に問題とはならないことが確認された,といった程度に過ぎないと解さざるを得ず,本願発明4で特定されている「23℃の環境下で混合して粘着剤組成物を調製した際の粘度に対して,前記粘着剤組成物を調製した後に40℃で7日間放置した際の粘度が,2倍以下である」というシェルフライフに関する特定事項が記載されていることによって,先願発明と比較して技術的に格別の意義を有するとすべきものともいえない。 したがって,上記相違点2は,実質的には相違点ではない。 なお,出願人は,平成22年12月21日付け意見書において,本願発明は,先願発明(「引用文献11に係る発明」)とは同一でない旨,以下のように主張している。 「引用文献11に係る発明は,(a)アルキル基の炭素数が4?12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー主成分とするポリマーと,(b)分子中に少なくとも1個の極性基を含有する粘着付与樹脂と,(c)分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物と,(d)分子中に2個以上のヒドロキシル基を含有し且つ分子中に窒素原子を含有する化合物,の4成分を含んでいることを特徴とする粘着剤組成物(請求項1)に関します。 一方,本願発明は,(a)アルキル基の炭素数が4?12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー主成分とするポリマーと,(b)分子中に少なくとも1個の極性基を含有する粘着付与樹脂と,(c´)分子中に2個以上のヒドロキシル基を含有し且つ分子中に窒素原子を含有する化合物,の3成分を含む粘着剤組成物が,23℃の環境下で混合して粘着剤組成物を調製した際の粘度に対して,前記粘着剤組成物を調製した後に40℃で7日間放置した際の粘度が,2倍以下という性質を有し,シェルフライフが長く,良好な塗工性を発揮できる,という引用文献11には記載のない新たな効果を奏することを見出した発明です。 従って,本願発明と引用文献11に記載の発明は,同一ではなく,本願請求項1-5に係る発明は,特許法第39条第1項の規定に該当しません。」 しかしながら,本願請求項4に係る発明は,実質的には4成分を含んでいる粘着剤組成物の発明であって,その点において先願の粘着剤組成物の発明と差異がないというべきである。 そして,架橋剤が配合される前の組成物の「粘度上昇率が2倍以下である」という効果についても,「・相違点2について」述べたように,比較対照とする多数の粘着剤組成物と比べて,概ね同程度といった程度であって格別顕著なものといえないし,また,そのことをもって,本願発明4と先願発明とにおける格別な差異ということもできない。 したがって,出願人の上記主張は採用できない。 5.むすび 以上のように,本願請求項4に係る発明は,特許第4549057号に係る発明と同一であるから,特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができないものである。 よって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-06-27 |
結審通知日 | 2013-07-02 |
審決日 | 2013-07-17 |
出願番号 | 特願2005-13685(P2005-13685) |
審決分類 |
P
1
8・
4-
WZ
(C09J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大熊 幸治 |
特許庁審判長 |
星野 紹英 |
特許庁審判官 |
松浦 新司 小石 真弓 |
発明の名称 | 粘着剤組成物および粘着テープ又はシート類 |
代理人 | 後藤 幸久 |