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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47K |
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管理番号 | 1278833 |
審判番号 | 不服2012-8212 |
総通号数 | 166 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-10-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-05-07 |
確定日 | 2013-09-02 |
事件の表示 | 特願2005-104720号「エンボス付与シート製品」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月19日出願公開、特開2006-280616号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成17年3月31日の出願であって、平成24年2月1日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、平成24年5月7日に本件審判が請求されるとともに、審判請求と同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成24年5月7日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年5月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の請求項1に記載された発明 本件補正により、特許請求の範囲の【請求項1】は、 「【請求項1】 二枚以上の原紙シートが重ねられたシート製品であって、 少なくとも一枚の原紙シートがシート面に複数本の点線状のラインエンボスと、前記ラインエンボスよりも深さが浅いマイクロエンボスとを有し、 他の原紙シートが、前記ラインエンボスよりも深さが浅いマイクロエンボスのみが全体に形成されたものであり、 前記ラインエンボスが付与された原紙シートのラインエンボス凸面と、マイクロエンボスのみが形成された原紙シートのマイクロエンボス凸面とが向い合っており、 前記ラインエンボスが付与された原紙シートは、ラインエンボスの付与態様が、ラインエンボスが交差して区切られた前記ラインエンボスで囲まれる同形状の複数の区画が規則正しく配列され、かつ、前記マイクロエンボスの付与範囲と非付与範囲とがラインエンボスで囲まれる区画単位毎に分けられて、前記マイクロエンボスが付与されたラインエンボスで囲まれる区画とマイクロエンボスが付与されていないラインエンボスで囲まれる区画とを有し、 かつ、ラインエンボスを有する原紙シートは、前記ラインエンボスの凸部に付与された糊を介して隣接する原紙シートに接着され、ラインエンボスで囲まれる区画内のマイクロエンボスは隣接する原紙シートに対して接着されていない、 ことを特徴とするエンボス付与シート製品。」 と補正された。 上記補正は、補正前の請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項である少なくとも一枚の原紙シートの「単数本又は複数本の点線状のラインエンボス」について、「複数本の点線状のラインエンボス」と、 ラインエンボスよりも深さが浅いマイクロエンボスのみが形成されている原紙シートについて、「他の原紙シートが、前記ラインエンボスよりも深さが浅いマイクロエンボスのみが全体に形成されたものであり」と、 ラインエンボスが形成された原紙シートと、このラインエンボスよりも深さが浅いマイクロエンボスのみが形成されている原紙シートと、が重ねられていることに関して、「前記ラインエンボスが付与された原紙シートのラインエンボス凸面と、マイクロエンボスのみが形成された原紙シートのマイクロエンボス凸面とが向い合っており」と、 「ラインエンボスが接触又は交差して区切られた複数の区画からなる模様を有し」、「ラインエンボスを有する原紙シートはマイクロエンボスの付与範囲と非付与範囲とがラインエンボスにより形成される区画単位毎に分けられて」いることに関して、「ラインエンボスが付与された原紙シートは、ラインエンボスの付与態様が、ラインエンボスが交差して区切られた前記ラインエンボスで囲まれる同形状の複数の区画が規則正しく配列され、かつ、前記マイクロエンボスの付与範囲と非付与範囲とがラインエンボスで囲まれる区画単位毎に分けられて、前記マイクロエンボスが付与されたラインエンボスで囲まれる区画とマイクロエンボスが付与されていないラインエンボスで囲まれる区画とを有し」と、限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 2.引用刊行物とその記載事項 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2004-130053号公報には、図柄入り薄葉衛生紙およびこれを用いたラミネート紙に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、複数のエンボス凸部によって図柄が表現された図柄入り薄葉衛生紙およびこれを用いたラミネート紙に関する。 【0002】 【従来の技術】 一般に、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、キッチンペーパー、および化粧用紙といった薄葉衛生紙の紙面には、主に嵩高性及び柔軟性を高める目的で複数のエンボス凸部が形成されている。そして、通常、このエンボス凸部は、所定の規則性や対称性等をもって配置されて図柄を構成し、その意匠性を良くするようにしている。これは、規則性や対称性をもって近接配置された複数のエンボス凸部を、まとめて一つの図形や図柄と認識する人間の視覚的性質を利用したものである。」 (イ)「【0026】 【発明の実施の形態】 以下、本発明に係る一実施形態をキッチンペーパーを例に説明する。 === 第1実施形態 === --- 薄葉衛生紙の全体構成 --- 図1は本第1実施形態の薄葉衛生紙の一部を示す平面図であり、図2は、図1中のII-II線矢視の縦断面図である。 本第1実施形態は、坪量が17?32g/m^(2)のパルプ製薄葉衛生紙1の単シートである。その平面形状は矩形で、一辺の長さは100?300mmであり、その紙面1aには全面に亘って複数のエンボス凸部13が形成されている。尚、図1中、エンボス凸部13は黒塗りで示している。」 (ウ)「【0027】 このエンボス凸部13は、図2に示すように円錐の頭部を裁断したような裁頭円錐状を呈する円形エンボス凸部であり、もってこのエンボス凸部13の天部13aの平面外形は平坦な真円状になっている。この天部13aの直径は1.0?1.5mmに、底部の直径は前記天部13aの直径の1.0?1.5倍に、またエンボス凸部13の高さは0.4?1.5mmに設定されている。尚、このエンボス凸部13の寸法は、上記数値に限るものではなく、互いに近接するエンボス凸部13同士が連続しない範囲で大きくしたり、逆に小さくしても良い。 【0028】 図1に示すように、このエンボス凸部13は、紙面1a全面に亘って、所定の規則性と対称性をもって複数が配置されており、この紙面1aを見た者に対して、これらエンボス凸部13を仮想的に繋いで形成される後記基本図形要素や、この基本図形要素を組み合わせて構成される後記図柄を視認させるようになっている。」 (エ)「【0039】・・・本発明にあっては4種類の図柄が用いられ、具体的には、葉っぱをモチーフとした大小2種類のリーフ状図柄51,53、真円の円形状図柄55、および点状図柄57の計四種類が使用されている。 【0040】 前記大小のリーフ状図柄51,53のうちの大きい方(以下、リーフ状図柄(大)と言う)51は、一対の大湾曲線分要素41a,41aと、一対の小湾曲線分要素41c,41cとを組み合わせて構成される。前記一対の大湾曲線分要素41a,41aは、リーフ状図柄(大)51の外形輪郭をなすものであり、互いの間隔を最大箇所で20mm隔てつつ、その内周側同士を互いに対向させて線対称に配されている。そして、これら一対の大湾曲線分要素41a,41aを見た者は、その配置の近接性および対称性からこれを一つの図柄として視認する。 【0041】 また、この内側には、大湾曲線分要素41a,41aに沿って平行にかつ7mmの間隔を隔てて、一対の小湾曲線分要素41c,41cが対向して配されている。これら小湾曲線分要素41c,41cは、前記リーフ状図柄(大)51の内形輪郭をなし、これによってリーフ状図柄(大)51の葉っぱらしさを高めている。 ・・・ 【0046】 図1に戻って、前記円形状図柄55は、前述した基本図形要素の一つである前記円形要素43のみからなる。」 (オ)「【0054】 更に望ましくは、図3の薄葉衛生紙の平面図に示すように、前記リーフ状図柄(大)51、(小)53、および円形状図柄55に関しては、各外形輪郭の外側領域たる抜き柄領域1b(図中斜線にて示す)に、前記エンボス凸部13よりも小さい大きさの複数のマイクロエンボス凸部(不図示)を形成する一方で、前記外形輪郭の内側領域には、前記マイクロエンボス凸部を形成しないようにすると良い。このマイクロエンボス凸部は、前記抜き柄領域1bの縦横に亘って、1mmの等ピッチの格子状に配置される。そして、図3中のIV-IV線矢視の概略縦断面図である図4に示すように、そのマイクロエンボス凸部14の形状は、円錐の頭部を裁断したような裁頭円錐状を呈し、もってその天部は平坦な真円状になっている。この天部の直径は0.508mmに、底部の直径は、天部直径の1.0?1.5倍に、また高さは0.1?0.3mmに設定されている。尚、このマイクロエンボス凸部14の寸法は、上記数値に限るものではなく、互いに近接するマイクロエンボス凸部14同士が連続しない範囲で大きくしたり、逆に小さくしても良い。 【0055】 そして、この構成によれば、前記図柄51,53,55の外形輪郭の外側領域たる抜き柄領域1bに形成されたマイクロエンボス凸部14によって、抜き柄領域1bから図柄51,53,55が浮き上がって鮮明に見えるようになり、より立体感が生じる。また、マイクロエンボス凸部14の形成によって、見た目上の風合いをより一層布に近づけることができる。」 (カ)「【0058】 === 第2実施形態 === 前記第1実施形態の薄葉衛生紙1は単シートであったところ、本第2実施形態は、第1実施形態と同じ図柄の薄葉衛生紙を二枚重ね合わせて接着したラミネート紙である点で相違する。そして、その接着形態にはいわゆる「ネステッド」を用いている。」 (キ)「【0064】 === 第3実施形態 === 前記第2実施形態は、接着形態が「ネステッド」のラミネート紙1’であったところ、本第3実施形態は、接着形態が「Tip to Tip」のラミネート紙1’’である点で相違する。 【0065】 この「Tip to Tip」の接着形態は、図7の当該ラミネート紙の概略縦断面図に示すように、表面側の薄葉衛生紙11面のマクロエンボス凸部13の天部と裏面側の薄葉衛生紙21のエンボス凸部23の天部とを互いに突き合わせて接着剤31で接着してなるものであり、エンボス凸部13,23の周囲に位置するエンボス凹部15,25同士の間に大きな空間Sを画成できるものである。よって、嵩を高くできて吸収性を向上できる。」 (ク)「【0068】 本第2および第3実施形態のラミネート紙1’,1’’においては、表面側の薄葉衛生紙11および裏面側の薄葉衛生紙21の両者に対してマイクロエンボス凸部14を形成しなかったが、これに限るものではなく、一方または両方の抜き柄領域1bにマイクロエンボス凸部14を形成するようにしても良い。」 (ケ)記載事項(ア)?(キ)の「エンボス凸部13」は、記載事項(カ)に記載されるように「マクロエンボス凸部13」といえる。 すると、記載事項(ク)の第3実施形態のラミネート紙1’’において、一方の抜き柄領域1bにマイクロエンボス凸部14を形成するようにしたものに着目して、 刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものということができる。 「薄葉衛生紙を二枚重ね合わせて接着したラミネート紙であるキッチンペーパーであって、 表面側の薄葉衛生紙11となる単シートが、その紙面1aには全面に亘って複数のマクロエンボス凸部13が形成され、 このマクロエンボス凸部13は、紙面1a全面に亘って、所定の規則性と対称性をもって複数が配置されており、この紙面1aを見た者に対して、これらマクロエンボス凸部13を仮想的に繋いで形成される基本図形要素や、この基本図形要素を組み合わせて構成される後記図柄を視認させるようになっていて、 図柄は、葉っぱをモチーフとした大小2種類のリーフ状図柄51,53、真円の円形状図柄55、および点状図柄57の計四種類が使用されており、 リーフ状図柄(大)51、(小)53、および円形状図柄55に関しては、各外形輪郭の外側領域たる抜き柄領域1bに、マクロエンボス凸部13よりも小さい大きさの複数のマイクロエンボス凸部を形成する一方で、前記外形輪郭の内側領域には、前記マイクロエンボス凸部を形成しないようにし、 表面側の薄葉衛生紙11面のマクロエンボス凸部13の天部と裏面側の薄葉衛生紙21のエンボス凸部23の天部とを互いに突き合わせて接着剤31で接着してなるものであり、マクロエンボス凸部13,エンボス凸部23の周囲に位置するエンボス凹部15,25同士の間に大きな空間Sを画成できるものである キッチンペーパー。」 (2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-116741号公報(以下「刊行物2」という。)には、2プライ以上の衛生紙製品に関し、次の技術的事項が記載されている。 (ア)「【請求項4】 同一の第1のエンボスパターンを有する対のペーパーシートを、各ペーパーシートのエンボス凸面同士が近接して向い合うように対面し、この対面された対のペーパーシートのいずれか一方に、第1のエンボスパターンと異なりかつエンボス深さが大きい第2のエンボスパターンを第1のエンボスパターンの近接して向い合った凸面同士の上を通過するように施したことを特徴とする2プライ以上の衛生紙製品。」 (イ)「【0002】 【従来の技術】トイレットペーパーやキッチンタオル等の衛生紙製品には、風合い、拭き取りやすさ、吸液性など要求される特性に応じて2ply以上の積層加工やエンボス加工が施されている。」 (ウ)「【0012】[実施例1]図1に示すペーパーシート(1)および(2)には30?100個/cm^(2)のエンボス密度および0.2?2.0mmのエンボス深さを有するベーシックエンボス(第1エンボス)(3)が夫々施されてあるが、シート(1)(2)は図2に示すようにシート面が表裏逆に対面しており、エンボス凸面(a)同士が近接して向い合っており、従ってエンボス凹面(b)同士も向い合っている。このシート(1)(2)のベーシックエンボスパターン(3)の1部上に重ねて図柄模様形成用の第2のエンボスパターン(ベーシックエンボスよりエンボス密度が疎でエンボス深さの深いもの)(4)が加工され、シート(1)(2)のベーシックエンボス凸面(a)同士と第2のエンボスパターン(4)とが重畳してシート(1)(2)はこの重畳部(c)で接合される。」 (エ)記載事項(ア)(ウ)と共に図1?図2を見ると、そこには、 「2プライの衛生紙製品であって、 ペーパーシート(1)がベーシックエンボス(第1エンボス)(3)と、図柄模様形成用の第2のエンボスパターン(ベーシックエンボスよりエンボス密度が疎でエンボス深さの深いもの)(4)とを有し、 ペーパーシート(2)が、第2のエンボスパターンよりも深さが浅いベーシックエンボス(3)のみが全体に形成されたものであり、 ペーパーシート(1)の第2のエンボスパターン(4)凸面と、ペーパーシート(2)のベーシックエンボス(3)凸面とが向い合っており、 ペーパーシート(1)は、第2のエンボスパターン(4)の凸部を介してペーパーシート(2)に接合され、ペーパーシート(1)のベーシックエンボス(3)はペーパーシート(2)に対して接合されていない、 2プライの衛生紙製品。」の発明(以下「刊行物2記載の発明」という。)が記載されている。 3.本願補正発明と引用発明との対比 (1)両発明の対応関係 (a)引用発明の「薄葉衛生紙を二枚重ね合わせて接着したラミネート紙であるキッチンペーパー」は、本願補正発明の「二枚以上の原紙シートが重ねられたシート製品」及び「エンボス付与シート製品」に相当し、以下同様に、 「表面側の薄葉衛生紙11となる単シート」は、「少なくとも一枚の原紙シート」に、 「マクロエンボス凸部13よりも小さい大きさの複数のマイクロエンボス凸部」は、「ラインエンボスよりも深さが浅いマイクロエンボス」に相当する。 また、引用発明の「複数のマクロエンボス凸部13」は、「これらマクロエンボス凸部13を仮想的に繋いで形成される基本図形要素や、この基本図形要素を組み合わせて構成される後記図柄を視認させるようになって」いるものであり、その図柄が「葉っぱをモチーフとした大小2種類のリーフ状図柄51,53、真円の円形状図柄55」を視認させる複数本の点線状のラインであることが自明なので、本願補正発明の「複数本の点線状のラインエンボス」に相当する。 そして、引用発明の「表面側の薄葉衛生紙11となる単シートが、その紙面1aには全面に亘って複数のマクロエンボス凸部13が形成され、 このマクロエンボス凸部13は、紙面1a全面に亘って、所定の規則性と対称性をもって複数が配置されており、この紙面1aを見た者に対して、これらマクロエンボス凸部13を仮想的に繋いで形成される基本図形要素や、この基本図形要素を組み合わせて構成される後記図柄を視認させるようになっていて、 図柄は、葉っぱをモチーフとした大小2種類のリーフ状図柄51,53、真円の円形状図柄55、および点状図柄57の計四種類が使用されており、 リーフ状図柄(大)51、(小)53、および円形状図柄55に関しては、各外形輪郭の外側領域たる抜き柄領域1bに、マクロエンボス凸部13よりも小さい大きさの複数のマイクロエンボス凸部を形成する一方で、前記外形輪郭の内側領域には、前記マイクロエンボス凸部を形成しないように」することは、本願補正発明の「少なくとも一枚の原紙シートがシート面に複数本の点線状のラインエンボスと、前記ラインエンボスよりも深さが浅いマイクロエンボスとを有」することに相当する。 (b)引用発明の「リーフ状図柄(大)51、(小)53、および円形状図柄55」は、刊行物1図3に図示されているように同形状の複数の区画が規則正しく配列されたものであるので、その配置態様は、本願補正発明の「ラインエンボスで囲まれる同形状の複数の区画が規則正しく配列され」に相当し、以下同様に、 「外形輪郭の内側領域」の「マイクロエンボス凸部を形成しない」部分は、「マイクロエンボスの」「非付与範囲」及び「マイクロエンボスが付与されていないラインエンボスで囲まれる区画」に相当する。 また、引用発明の「外形輪郭の外側領域たる抜き柄領域1bに、マクロエンボス凸部13よりも小さい大きさの複数のマイクロエンボス凸部を形成する一方で、前記外形輪郭の内側領域には、前記マイクロエンボス凸部を形成しないように」したことと、本願補正発明の「マイクロエンボスの付与範囲と非付与範囲とがラインエンボスで囲まれる区画単位毎に分けられ」たこととは、「マイクロエンボスの付与範囲と非付与範囲とがラインエンボスで分けられ」たことで共通する。 そして、引用発明の「マクロエンボス凸部13は、紙面1a全面に亘って、所定の規則性と対称性をもって複数が配置されており、この紙面1aを見た者に対して、これらマクロエンボス凸部13を仮想的に繋いで形成される基本図形要素や、この基本図形要素を組み合わせて構成される後記図柄を視認させるようになっていて、 図柄は、葉っぱをモチーフとした大小2種類のリーフ状図柄51,53、真円の円形状図柄55、および点状図柄57の計四種類が使用されており、 リーフ状図柄(大)51、(小)53、および円形状図柄55に関しては、各外形輪郭の外側領域たる抜き柄領域1bに、マクロエンボス凸部13よりも小さい大きさの複数のマイクロエンボス凸部を形成する一方で、前記外形輪郭の内側領域には、前記マイクロエンボス凸部を形成しないように」した態様と、本願補正発明の「ラインエンボスの付与態様が、ラインエンボスが交差して区切られた前記ラインエンボスで囲まれる同形状の複数の区画が規則正しく配列され、かつ、前記マイクロエンボスの付与範囲と非付与範囲とがラインエンボスで囲まれる区画単位毎に分けられて、前記マイクロエンボスが付与されたラインエンボスで囲まれる区画とマイクロエンボスが付与されていないラインエンボスで囲まれる区画とを有し」とは、「ラインエンボスの付与態様が、ラインエンボスで区切られた前記ラインエンボスで囲まれる同形状の複数の区画が規則正しく配列され、かつ、マイクロエンボスの付与範囲と非付与範囲とがラインエンボスで分けられて、前記マイクロエンボスが付与された区画とマイクロエンボスが付与されていないラインエンボスで囲まれる区画とを有し」たものである点で共通する。 (c)本願補正発明の「前記ラインエンボスが付与された原紙シート」は、上記(a)の「少なくとも一枚の原紙シートがシート面に複数本の点線状のラインエンボスと、前記ラインエンボスよりも深さが浅いマイクロエンボスとを有し」とされた「原紙シート」であって、引用発明の「表面側の薄葉衛生紙11となる単シート」が、それに相当するものであるので、引用発明の「表面側の薄葉衛生紙11面のマクロエンボス凸部13の天部」は、本願補正発明の「前記ラインエンボスが付与された原紙シートのラインエンボス凸面」に相当する。 引用発明の「裏面側の薄葉衛生紙21」は、本願補正発明の「前記ラインエンボスが付与された原紙シート」に「隣接する原紙シート」に相当する。 引用発明の「マクロエンボス凸部13,エンボス凸部23の周囲に位置するエンボス凹部15,25同士の間に大きな空間Sを画成できる」ことは、本願補正発明の「接着されていない」ことに相当する。 そして、引用発明の「裏面側の薄葉衛生紙21のエンボス凸部23の天部」と、本願補正発明の「マイクロエンボスのみが形成された原紙シートのマイクロエンボス凸面」とは、後者の「マイクロエンボスのみが形成された原紙シート」が「隣接する原紙シート」でもあるので、「前記ラインエンボスが付与された原紙シートに隣接する原紙シートのエンボス凸面」で共通する。 さらに、引用発明の「抜き柄領域1bに、マクロエンボス凸部13よりも小さい大きさの複数のマイクロエンボス凸部を形成する」とされた「マイクロエンボス」と、本願補正発明の「ラインエンボスで囲まれる区画内のマイクロエンボス」とは、「前記ラインエンボスが付与された原紙シートのマイクロエンボス」で共通する。 そして、引用発明の「表面側の薄葉衛生紙11面のマクロエンボス凸部13の天部と裏面側の薄葉衛生紙21のエンボス凸部23の天部とを互いに突き合わせて接着剤31で接着してなるものであ」ることと、本願補正発明の「前記ラインエンボスが付与された原紙シートのラインエンボス凸面と、マイクロエンボスのみが形成された原紙シートのマイクロエンボス凸面とが向い合っており」、「かつ、ラインエンボスを有する原紙シートは、前記ラインエンボスの凸部に付与された糊を介して隣接する原紙シートに接着され、ラインエンボスで囲まれる区画内のマイクロエンボスは隣接する原紙シートに対して接着されていない」ことは、「前記ラインエンボスが付与された原紙シートのラインエンボス凸面と、前記ラインエンボスが付与された原紙シートに隣接する原紙シートのエンボス凸面とが向い合っており」、「かつ、前記ラインエンボスを有する原紙シートは、前記ラインエンボスの凸部に付与された糊を介して隣接する原紙シートに接着され、その他の箇所は隣接する原紙シートに対して接着されていない」ことで共通する。 (2)両発明の一致点 「二枚以上の原紙シートが重ねられたシート製品であって、 少なくとも一枚の原紙シートがシート面に複数本の点線状のラインエンボスと、前記ラインエンボスよりも深さが浅いマイクロエンボスとを有し、 前記ラインエンボスが付与された原紙シートのラインエンボス凸面と、前記ラインエンボスが付与された原紙シートに隣接する原紙シートのエンボス凸面とが向い合っており、 前記ラインエンボスが付与された原紙シートは、 ラインエンボスの付与態様が、ラインエンボスで区切られた前記ラインエンボスで囲まれる同形状の複数の区画が規則正しく配列され、かつ、マイクロエンボスの付与範囲と非付与範囲とがラインエンボスで分けられて、前記マイクロエンボスが付与された区画とマイクロエンボスが付与されていないラインエンボスで囲まれる区画とを有し、 かつ、前記ラインエンボスを有する原紙シートは、前記ラインエンボスの凸部に付与された糊を介して隣接する原紙シートに接着され、その他の箇所は隣接する原紙シートに対して接着されていない、 エンボス付与シート製品。」 (3)両発明の相違点 ア.「シート面に複数本の点線状のラインエンボスと、前記ラインエンボスよりも深さが浅いマイクロエンボスとを有し」た「原紙シート」に隣接する原紙シートが、本願補正発明は「他の原紙シートが、前記ラインエンボスよりも深さが浅いマイクロエンボスのみが全体に形成されたものであり」、 ラインエンボスが付与された原紙シートのラインエンボス凸面と「マイクロエンボスのみが形成された」原紙シートの「マイクロエンボス」凸面とが向い合っているのに対して、引用発明はそうでない点。 イ.本願補正発明は、ラインエンボスの付与態様が、「ラインエンボスが交差して区切られた」前記ラインエンボスで囲まれる同形状の複数の区画が規則正しく配列されたものであり、マイクロエンボスの付与範囲と非付与範囲とが、「ラインエンボスで囲まれる区画単位毎に分けられ」て、前記マイクロエンボスが付与された「ラインエンボスで囲まれる」区画とマイクロエンボスが付与されていないラインエンボスで囲まれる区画とを有するのに対して、引用発明は区画が「ラインエンボスが交差して区切られた」ものでなく、マイクロエンボスの付与範囲、及び付与された区画が、「ラインエンボスで囲まれる区画単位毎に分けられ」た範囲、及び「ラインエンボスで囲まれる」区画でない点。 ウ.本願補正発明は、「マイクロエンボスが隣接する原紙シートに対して接着されていない」のに対して、引用発明は、表面側の薄葉衛生紙11面のマクロエンボス凸部13の天部と裏面側の薄葉衛生紙21のエンボス凸部23の天部とを互いに突き合わせて接着剤31で接着してなるものであり「マクロエンボス凸部13,エンボス凸部23の周囲に位置するエンボス凹部15,25同士の間に大きな空間Sを画成できるものである」が、マイクロエンボス凸部が接着されていないかどうかは不明である点。 4.本願補正発明の容易推考性の検討 (1)相違点ア.ウ.について (a)刊行物2記載の発明の「2プライの衛生紙製品」は、本願補正発明の「二枚以上の原紙シートが重ねられたシート製品」及び「エンボス付与シート製品」に相当し、以下同様に、 「図柄模様形成用の第2のエンボスパターン(ベーシックエンボスよりエンボス密度が疎でエンボス深さの深いもの)(4)」は、「ラインエンボス」に、 「ベーシックエンボス(3)」は、「ラインエンボスよりも深さが浅いマイクロエンボス」に、 「ペーパーシート(1)」は、「少なくとも一枚の原紙シート」、及び「前記ラインエンボスが付与された原紙シート」に、 「ペーパーシート(2)」は、「他の原紙シート」、「マイクロエンボスのみが形成された原紙シート」、及び「隣接する原紙シート」に相当する。 (b)刊行物2記載の発明の「接合」と、本願補正発明の「接着」とは、接合することで共通する。 刊行物2記載の発明の「ペーパーシート(1)のベーシックエンボス(3)」と、本願補正発明の「ラインエンボスで囲まれる区画内のマイクロエンボス」とは、「前記ラインエンボスが付与された原紙シートのマイクロエンボス」で共通する。 (c)そうすると、刊行物2記載の発明と本願補正発明とは、次の点で一致するものである。 「二枚以上の原紙シートが重ねられたシート製品であって、 少なくとも一枚の原紙シートがラインエンボスと、前記ラインエンボスよりも深さが浅いマイクロエンボスとを有し、 他の原紙シートが、前記ラインエンボスよりも深さが浅いマイクロエンボスのみが全体に形成されたものであり、 前記ラインエンボスが付与された原紙シートのラインエンボス凸面と、マイクロエンボスのみが形成された原紙シートのマイクロエンボス凸面とが向い合っており、 ラインエンボスを有する原紙シートは、前記ラインエンボスの凸部を介して隣接する原紙シートに接合され、前記ラインエンボスが付与された原紙シートのマイクロエンボスは隣接する原紙シートに対して接合されていない、 エンボス付与シート製品。」 (d)そして、刊行物2記載の発明は、2プライの衛生紙製品である点において引用発明と共通するものであり、共に同様の基本的な要求事項を有するものと認識される。 そして、引用発明の裏面側の薄葉衛生紙21として、刊行物2記載の発明のベーシックエンボス(3)のみが全体に形成されたものを採用することに特段の困難性は存在せず、引用発明の裏面側の薄葉衛生紙21を、そのようなものとして本願補正発明の相違点ア.ウ.の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 (2)相違点イ.について 引用発明のキッチンペーパーのエンボス部も含めて、一般に製品に付す図柄は、意匠性等を考慮して、当業者が適宜選択する事項であり、かつ、エンボスが交差する図柄も、例えば、実公平3-49598号公報に従来技術として、特開2004-466号公報【図3】や、特許第3490608号公報【図1】【図2】に異なる図柄と並記して適宜選択しえる形状として記載されている様に、シート製品におけるエンボスで構成される図柄として周知のものにすぎない。 さらに、引用発明のキッチンペーパーのエンボス凸部は、基本的に刊行物1記載事項(ア)の「主に嵩高性及び柔軟性を高める目的で複数のエンボス凸部が形成されている」ものであって、上記エンボスが交差する図柄の選択により、該エンボス凸部形成の基本的機能が生じなくなる様なものでもない。 そして、引用発明の図柄を視認させるマクロエンボス凸部13の配置として、周知のエンボスが交差する図柄を選択してすることは当業者が容易になし得ることであり、かつ、そうすることにより、引用発明のマイクロエンボスの付与範囲が、マクロエンボス凸部13(本願補正発明の「ラインエンボス」に相当するもの)で囲まれる区画となることも自明であるので、引用発明の図柄を視認させるマクロエンボス凸部13の配置として、周知のエンボスが交差する図柄を選択して本願補正発明の相違点イ.の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 (3)総合判断 そして、本願補正発明の作用効果は、引用発明、刊行物2記載の発明、及び当業者に周知の事項から当業者であれば予測できた範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2記載の発明、及び当業者に周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成24年5月7日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?8に係る発明は、平成22年12月22日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、そのうち請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)を請求項1を引用した形で書き下すと次のとおりである。 「【請求項2】 二枚以上の原紙シートが重ねられたシート製品であって、 少なくとも一枚の原紙シートのシート面に単数本又は複数本の点線状のラインエンボスが接触又は交差して区切られた複数の区画からなる模様を有し、 ラインエンボスを有する原紙シートはラインエンボスよりも深さが浅いマイクロエンボスを有し、 ラインエンボスを有する原紙シートはマイクロエンボスの付与範囲と非付与範囲とがラインエンボスにより形成される区画単位毎に分けられており、 ラインエンボスを有する原紙シートは前記ラインエンボスの凸部に付与された糊を介して隣接する原紙シートに接着されており、 ラインエンボスを有する原紙シートに形成されたマイクロエンボスは隣接する原紙シートに対して接着されていない、 ラインエンボスが形成された原紙シートと、このラインエンボスよりも深さが浅いマイクロエンボスのみが形成されている原紙シートと、が重ねられていることを特徴とするエンボス付与シート製品。」 2.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1?2とその記載事項は、前記の「第2 2.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明の構成を全て含むとともに、本願発明の構成に更に限定を付加した本願補正発明が、前記「第2」の「3.」、「4.」に記載したとおり、引用発明、刊行物2記載の発明、及び当業者に周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も本願補正発明と同様の理由により、引用発明、刊行物2記載の発明、及び当業者に周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび したがって、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-06-27 |
結審通知日 | 2013-06-28 |
審決日 | 2013-07-23 |
出願番号 | 特願2005-104720(P2005-104720) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A47K)
P 1 8・ 121- Z (A47K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 七字 ひろみ |
特許庁審判長 |
中川 真一 |
特許庁審判官 |
住田 秀弘 筑波 茂樹 |
発明の名称 | エンボス付与シート製品 |
代理人 | 永井 義久 |