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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24F |
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管理番号 | 1278842 |
審判番号 | 不服2012-11234 |
総通号数 | 166 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-10-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-06-15 |
確定日 | 2013-09-05 |
事件の表示 | 特願2007-232668号「空気調和機」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月26日出願公開、特開2009-63257号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成19年9月7日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成25年3月12日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(以下「本願発明」という。) 「キャビネットの前面から底面にかけて湾曲面とされ、該湾曲面に吹出口が形成されると共に、キャビネットの一部を構成する導風パネルが前記吹出口を開閉するように設けられ、前記導風パネルは、上下の軸により上下両開き可能とされ、内面が前記吹出口から吹出された吹出空気を遠方に導く湾曲面とされ、さらに、上下の軸を中心にして、異なる方向に回動することにより、上下いずれかの方向に開放可能とされ、 導風パネルの下端が上軸周りに前側に開放した上開き姿勢のとき、吹出口の前方を遮蔽し、前方に向かって吹き出される吹出空気を押さえ込み、下方に導くようにし、また、導風パネルの上端が下軸周りに下開きした下開き姿勢のとき、導風パネルの後端とキャビネットとを接触させて吹出口の下壁とつなげ、導風パネルと吹出口の上壁とによってロングノズルを形成し、前記ロングノズルの上下幅は吹出し方向に対して広がるように形成されており、前記吹出口の上壁が吹出し方向で途中までは斜め下方に向かいその後斜め上方向に向かうように形成されていることを特徴とする空気調和機。」 2.引用刊行物 (1)引用刊行物1 これに対して、当審で平成25年3月29日付けで通知した拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された特開2006-2984号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図1?4とともに以下の事項が記載されている。 ア.「この空気調和機は図1(A)に示すように、正面側が開放されたベース1と、同ベース1の開放された前面に装着される前面パネル2とで本体を構成し、本体の正面上部に前面吸込口11を、上面に上面吸込口12を設け、正面下部に吹出口3を設けている。前面吸込口11及び上面吸込口12と、吹出口3とを結ぶ空気通路には、・・・(中略)・・・熱交換器6と、同熱交換器6により熱交換された空気を室内に送出する、クロスフローファンからなる送風ファン7とが設けられている。 吹出口3には、複数の左右風向板5と、上下風向板4とが設けられており、・・・(中略)・・・上下風向板4により上下方向の向きを偏向するようになっている。 ・・・(中略)・・・ そして、空気調和機を正面から見た場合にほぼ中央となる位置に、回転軸22aを挿通すると共にステッピングモータ22が固定されたリブ10cがリアガイダ10から立設されており、この回転軸22aには連結板21の一方の端が固定されている。また、連結板21の他方の端にはステッピングモータ23が固定され、このステッピングモータ23の回転軸23aには、上下風向板4の内面から立設されたリブ4cが固定されている。 従って、この上下風向板4は、ステッピングモータ22とステッピングモータ23とによる2つの回動軸を備えており、所謂2軸駆動が可能となっている。これは、冷房運転時に駆動するステッピングモータ22と、暖房運転時に駆動するステッピングモータ23とをそれぞれ専用に設けることにより、それぞれの運転で最適な上下風向板4の角度制御を行なうためである。」(段落【0023】?【0028】) イ.「図2(A)及び図2(B)は左右に吹き出す場合を示している。この場合、上下風向板4を運転停止時と同じ位置、つまり、吹出口3を閉塞する位置になるようにステッピングモータ22とステッピングモータ23とを回動させ、冷房や暖房運転を通常通りに行なう。・・・(中略)・・・ 図2(C)及び図2(D)は、従来と同じように暖房運転時に、下方に吹き出す場合を示している。この場合、ステッピングモータ23を回動させ、上下風向板4を下方に向ける。 図2(E)及び図2(F)は、従来と同じように冷房運転時に、前方に吹き出す場合を示している。この場合、ステッピングモータ22を回動させ、上下風向板4を前方にに向ける。」(段落【0030】?【0034】) ウ.図1、図2(A)及び図2(B)には、前面パネル2が正面から下面にかけて湾曲面となっており、前面パネル2の正面下部の湾曲面に吹出口3が設けられ、上下風向板4が吹出口3を閉塞する位置にあって、湾曲する形状により前面パネル2の一部となっている様子が図示される。 エ.図2(C)及び図2(D)には、上下風向板4の上端が、回転軸23aの場所で吹出口3の上部に位置し、下端が下方に開き、 前方を覆うように配置されることや風のながれの矢印が下方本体側に向くことが図示される。 オ.図2(E)及び図2(F)には、上下風向板4の下端が、ステッピングモータ22の回転軸22aの場所で、吹出口3の下部に位置し、上端が前方に開き、 上下風向板4の湾曲する内面が上向きとなって、吹出口3に到る空気通路の下壁であるリアガイダ10に連続するように配置されることや、 風の流れの矢印が、上下風向板4の湾曲に沿うようにやや下向きからやや上向きに湾曲して前方に向いている様子が図示される。 また、図1及び図2(F)を合わせみると、吹出口3に到る空気通路は徐々に上下に広がることが図示され、さらに空気の流れが図示されることを合わせみると、空気通路の上壁が、連続するリアガイダ10と上下風向板4とに対向して、連続する空気通路を形成している様子が図示される。 上記ア.及びイ.の記載事項並びにウ.?オ.の図示内容を総合すると、引用刊行物1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「前面パネル2の正面から下面にかけて湾曲面とされ、 前面パネル2の正面下部の湾曲面に吹出口3が設けられと共に、 前面パネル2の一部となっている上下風向板4が吹出口3を閉塞したり下端を開いたり上端を開いたりするように設けられ、 上下風向板4は、下端の回転軸22a及び上端の回転軸23aで2軸駆動され、 暖房運転時に、回転軸23aをステッピングモータ23で回動して、上下風向板4の上端を吹出口3の上部に位置させて、下端を下方に開き、上下風向板4を前方を覆うように配置させて、風を下方の本体側に吹き出させ、 冷房運転時に、回転軸22aをステッピングモータ22で回動して、上下風向板4の下端を吹出口3の下部に位置させて、上端を前方に開き、上下風向板4を前方に向けるとともに、上下風向板4の湾曲する内面が上向きとなって、吹出口3に到る空気通路の下壁であるリアガイダ10に連続するように配置され、風を上下風向板4の湾曲に沿うようにやや下向きからやや上向きに湾曲して前方に吹き出させるものであって、 吹出口3に到る空気通路は徐々に上下に広がり、空気通路の上壁が、連続するリアガイダ10と上下風向板4とに対向して、連続する空気通路を形成している 空気調和機。」 (2)引用刊行物2 同じく引用され、本願出願前に頒布された特開2007-120896号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、図1?11とともに以下の事項が記載されている。 ア.「【請求項1】 吸込口を開閉するパネルと、吹出口に配置される風向変更羽根とを有し、前記風向変更羽根が変動可能な腕部を介して上下方向の風向を制御する空気調和機の運転方法であって、前記風向変更羽根を湾曲面で構成し、暖房運転モードでは、前記湾曲面で形成される凹面が下向きとなる状態で前記風向変更羽根を用い、冷房運転モードでは、前記凹面が上向きとなる状態で前記風向変更羽根を用いることを特徴とする空気調和機の運転方法。 ・・・(中略)・・・ 【請求項6】 前記冷房運転モードでは、前記風向変更羽根を、空気調和機本体側の前記風向変更羽根端部が前記吹出口の下流側端部の下端に当接する位置に動作させて運転し、前記暖房運転モードでは、前記風向変更羽根を、空気調和機本体側の前記風向変更羽根端部が前記吹出口の下流側端部の上端に当接する位置に動作させて運転することを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の運転方法。」(特許請求の範囲) イ.「本発明の第1の実施の形態は、風向変更羽根を湾曲面で構成し、暖房運転モードでは、湾曲面で形成される凹面が下向きとなる状態で風向変更羽根を用い、冷房運転モードでは、凹面が上向きとなる状態で風向変更羽根を用いるものである。本実施の形態によれば、冷房運転モードでは冷風を部屋の遠方まで運ぶことができ、暖房運転モードでは温風を効率よく足下に導くことができる。 ・・・(中略)・・・ 本発明の第6の実施の形態は、第1の実施の形態において、冷房運転モードでは、風向変更羽根を、空気調和機本体側の風向変更羽根端部が吹出口の下流側端部の下端に当接する位置に動作させて運転し、暖房運転モードでは、風向変更羽根を、空気調和機本体側の風向変更羽根端部が吹出口の下流側端部の上端に当接する位置に風向変更羽根を動作させて運転するものである。本実施の形態によれば、冷房運転モードには冷風を部屋の遠方まで運ぶことができ、暖房運転モードには温風を効率よく足下に導くことができる。」(段落【0007】) ウ.「本実施例における水平吹出とは、吹出空気を部屋の遠方まで運ぶ吹出であり、主に冷風吹出(冷房運転モード)に利用する。 図3は空気調和装置の停止状態を示し、図6は水平吹出状態を示す。 ・・・(中略)・・・ そして、図6に示すように、中羽根駆動機構41の動作によって中羽根40は、その上端部がパネル20と当接する位置まで動作する。一方、羽根用モータ35によって風向変更羽根30が回動し、空気調和機10本体側の風向変更羽根30端部が吹出口6の下流側端部6aの下端に当接する。 図6に示す状態で、水平方向あるいは斜め上方への吹出が行われる。 吹出口6から吹き出される空気は、風向変更羽根30によって水平方向に導かれるとともに、風向変更羽根30の下流側端部が上方へ湾曲しているため、斜め下方向へは流れないので、効果的に部屋の遠方まで空気を送ることができる。」(段落【0011】及び【0012】) (3)引用刊行物3 同じく引用され、本願出願前に頒布された特開2007-187405号公報(以下「引用刊行物3」という。)には、図1?6とともに以下の事項が記載されている。 ア.「冷房運転モードにおいては、前記風向変更羽根2の凹面側が略上向きとなる状態で用いるものとする。 次に動作について説明する。上下風向変更羽根2の凹面側が上向きに設定されると、吹出しの風は、吹出口1下側の壁と羽根下面2aとの間に副流Bが、吹出口1上側の壁と羽根上面2bの間に主流Aが形成される。 冷房運転を行う場合、冷却された吹出風が周囲の温かい空気と比較して比重が大きいため、住環境特性を向上させるために、出来るだけ上向きに風を送る必要がある。 このような図1の場合には、吹出風の温度と周辺温度の差や、主流A、副流Bの気流の乱れによる上下風向変更羽根2表面あるいは吹出口1周辺へに結露が発生してしまう。また、さらに吹出風を全て上向きあるいは下向きへと仕向け、かつ気流の乱れを抑制するために、図2に示されるように、上下風向変更羽根2の端部を吹出口1の下端または上端と連結させるような場合には、冷たい吹出風と周囲の温かい空気との間に上下風向変更羽根2がはさみこまれるように配置される為、特に外郭表面に結露15が発生してしまう。」(段落【0013】?【0016】) イ.「冷却された吹出風(約16℃)が直接触れる上面2bを通じて室温に直接触れる下面2aが冷却され、結露が発生してしまうが、前記のように断熱材8を貼り付けることによって結露の発生を抑制することができる。」(段落【0022】) (4)引用刊行物4 同じく引用され、本願出願前に頒布された特許第3767373号公報(以下「引用刊行物4」という。)には、空気調和機に関して、図1?11とともに以下の事項が記載されている。 ア.「図3において、13は吹き出し口4に連続した筐体内の吹き出し通路2の前記吹き出し口部分に形成した上向き空気流れ促進流路で、吹き出し口4に連続した吹き出し通路2の上部内面を吹き出し口4へ近づくほど上向きに傾斜させた形状にしている。 上記実施の形態において、吹き出し口4からの空気流れを上向き略水平方向に変更するため、実施の形態1で説明したように上下風向変更板10を吹き出し口4の下部側に位置させると、上向き空気流れ促進流路13に空気流れが案内されて広がり確実に上向き方向へ案内でき、かつ前記空気の上向き成分がより大きくなるため、より遠方まで空気を到達させることができる。また、吹き出し口4の開口面積が全体として大きくなるため、風量性能を向上できる。」(段落【0030】及び【0031】) イ.図3や8には、吹き出し口4に連続した筐体内の吹き出し通路2が、斜め下向きに上下幅を徐々に広げるように設けられ、その途中から上部内面を吹き出し口4へ近づくほど上向きに傾斜させた形状の上向き空気流れ促進流路13が設けられる様子が図示される。 (5)引用刊行物5 同じく引用され、本願出願前に頒布された特開2005-164065号公報(以下「引用刊行物5」という。)には、図1?43とともに以下の事項が記載されている。 ア.「上記構成の空気調和機において冷房運転を開始すると、風向可変部113a、113b、113cは図16に示すように配置される。・・・(中略)・・・ そして、調和空気を矢印Aに示すように前方下方に送出する。これにより、暖房運転時の前方下方吹出しよりも上方に調和空気を送出し、温度の低い調和空気が自重により降下して室内に拡散される。 ・・・(中略)・・・ 冷房運転を開始して一定時間が経過した場合・・・(中略)・・・、図17に示すように風向可変部113a、113b、113cが配置される。・・・(中略)・・・ これにより、調和空気は吹出口5から矢印Eに示すように前方上方に例えば風速約5?6m/秒で送出される。室内に送出された調和空気は図18に示すように、居室Rの天井に到達する。・・・(中略)・・・ 更に、図19に示すように、風向可変部113aの向きを水平にすると、矢印Dに示すように調和空気を吹出口5から水平方向に送出することができる。」(段落【0101】?【0107】) イ.図16,17,19や図27,28,29には、吹出口5に連通する送風経路6の上下幅が、徐々に広がると共に、送風経路6の上壁が途中まで斜め下方であり、その後斜め上方に向かう形状であること、そして、送風経路6や風向可変部113、114により、空気の流れが徐々に広がる様子が図示される。 (6)引用刊行物6 同じく引用され、本願出願前に頒布された特開2004-101128号公報(以下「引用刊行物5」という。)には、図1?17とともに以下の事項が記載されている。 ア.「第2開口部5bは送風経路6から上方に傾斜して分岐する分岐通路13により送風経路6と連通している。送風経路6及び分岐通路13により空気が流通する空気流通経路が構成されている。」(段落【0029】 イ.「図4に示すように、導風板14が回動して第2開口部5bが開放される。 同時に、横ルーバ11a、11bが回動して第1開口部5aが上方に向けて少しだけ開いた状態に設定される。横ルーバ11a、11bにより第1開口部5aを少しだけ開放することによって、第1開口部5aから吹き出される空気がコアンダ効果によって横ルーバ11a、11bに沿って上方に導かれる。 これにより、吸込口4a、4cから取り込まれた空気が送風経路6及び分岐通路13を流通して第2開口部5b及び横ルーバ11a、11bの隙間から上方に送出される。・・・(中略)・・・ 分岐通路13の上壁面13aは前方へ向かって上方に傾斜する傾斜面から成っているため、分岐通路13に導かれた空気はスムーズに第2開口部5bに送られる。このため、上方に送出される空気の圧力損失を低減することができ、風量の減少を防止することができる。」(段落【0043】?【0046】) ウ.図4には、送風経路6の上下幅が、徐々に広がると共に、送風経路6の上壁が途中まで斜め下方であり、その後分岐通路13により上壁が斜め上方へ向かう様子が図示される。 3.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「前面パネル2」は、その機能・構成からみて、前者の「キャビネット」に相当し、以下同様に、後者の「下面」は前者の「底面」に、後者の「上下風向板4」は前者の「導風パネル」に、後者の「2軸駆動」する「下端の回転軸22a及び上端の回転軸23a」は前者の「上下の軸」又は「下軸」及び「上軸」に、後者の「前面パネル2の正面下部の湾曲面に吹出口3が設けられ」ることは前者の「湾曲面に吹出口が形成される」ことに、後者の「前面パネル2の一部となっている上下風向板4」は前者の「キャビネットの一部を構成する導風パネル」に、後者の「上下風向板4が吹出口3を閉塞したり下端を開いたり上端を開いたりするように設けられ」ることは前者の「導風パネルが前記吹出口を開閉するように設けられ」ることに、後者の「上下風向板4」が「湾曲する内面」を有することは前者の「導風パネル」の「内面が」「湾曲面とされ」ることにそれぞれ相当する。 また、後者の「上下風向板4は、下端の回転軸22a及び上端の回転軸23aで2軸駆動され」、「暖房運転時に、回転軸23aをステッピングモータ23で回動して、上下風向板4の上端を吹出口3の上部に位置させて、下端を下方に開き、」「冷房運転時に、回転軸22aをステッピングモータ22で回動して、上下風向板4の下端を吹出口3の下部に位置させて、上端を前方に開」くことは、前者の「導風パネルは、上下の軸により上下両開き可能とされ」ること及び「上下の軸を中心にして、異なる方向に回動することにより、上下いずれかの方向に開放可能と」されることに相当する。 後者の「暖房運転時に、回転軸23aをステッピングモータ23で回動して、上下風向板4の上端を吹出口3の上部に位置させて、下端を下方に開き、上下風向板4を前方を覆うように配置させて、風を下方の本体側に吹き出させ」ることは、前者の「導風パネルの下端が上軸周りに前側に開放した上開き姿勢のとき、吹出口の前方を遮蔽し、前方に向かって吹き出される吹出空気を押さえ込み、下方に導くように」することに相当する。 後者は「連続するリアガイダ10と上下風向板4とに対向して、連続する空気通路を形成している」から、「空気通路の上壁」とこれに対向する「上下風向板4」とによる空気通路が設けられているといえ、さらに、「上下風向板4」が「吹出口3を閉塞」する「前面パネル2の一部となってい」ること、「上下風向板4」が「空気通路の上壁」と「空気通路を形成し」ていること、その「空気通路」は空気通路の上壁とリアガイダ10による「吹出口3に到る空気通路」に連続したものであることから、後者の「空気通路の上壁」とこれに対向する「上下風向板4」とによる空気通路が設けられることは、前者の「導風パネルと吹出口の上壁とによってロングノズルを形成し」ていることに相当する。 そして、後者の「冷房運転時に、回転軸22aをステッピングモータ22で回動して、上下風向板4の下端を吹出口3の下部に位置させて、上端を前方に開き、上下風向板4を前方に向けるとともに、上下風向板4の湾曲する内面が上向きとなって、」「空気通路の上壁が、連続するリアガイダ10と上下風向板4とに対向して、連続する空気通路を形成し」、「風を上下風向板4の湾曲に沿うようにやや下向きからやや上向きに湾曲して前方に吹き出させる」ことは、前者の「導風パネルの上端が下軸周りに下開きした下開き姿勢のとき、」「導風パネルと吹出口の上壁とによってロングノズルを形成」することに相当する。 そうすると、両者は、 「キャビネットの前面から底面にかけて湾曲面とされ、該湾曲面に吹出口が形成されると共に、キャビネットの一部を構成する導風パネルが前記吹出口を開閉するように設けられ、前記導風パネルは、上下の軸により上下両開き可能とされ、内面が湾曲面とされ、さらに、上下の軸を中心にして、異なる方向に回動することにより、上下いずれかの方向に開放可能とされ、 導風パネルの下端が上軸周りに前側に開放した上開き姿勢のとき、吹出口の前方を遮蔽し、前方に向かって吹き出される吹出空気を押さえ込み、下方に導くようにし、また、導風パネルの上端が下軸周りに下開きした下開き姿勢のとき、導風パネルと吹出口の上壁とによってロングノズルを形成されている空気調和機。」 である点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。 相違点A:導風パネルの内面に関して、本願発明が「吹出口から吹出された吹出空気を遠方に導く湾曲面」とされているのに対して、引用発明は「湾曲する」ものの、吹出空気を遠方に導くものかどうか不明である点。 相違点B:下開き姿勢のとき、本願発明が「導風パネルの後端とキャビネットとを接触させて吹出口の下壁とつなげ」、「前記ロングノズルの上下幅は吹出し方向に対して広がるように形成されており」、「吹出口の上壁が吹出し方向で途中までは斜め下方に向かいその後斜め上方向に向かうように形成されている」のに対して、引用発明は「上下風向板4の湾曲する内面が上向きとなって、吹出口3に到る空気通路の下壁であるリアガイダ10に連続するように配置され、風を上下風向板4の湾曲に沿うようにやや下向きからやや上向きに湾曲して前方に吹き出させるものであって、吹出口3に到る空気通路は徐々に上下に広がり、空気通路の上壁が、連続するリアガイダ10と上下風向板4とに対向して、連続する空気通路を形成している」ものの上記のようなものではない点。 そこで、上記相違点について検討する。 (1)相違点Aについて 引用発明は、「上下風向板4の湾曲する内面が上向きとなって、吹出口3に到る空気通路の下壁であるリアガイダ10に連続するように配置され、風を上下風向板4の湾曲に沿うようにやや下向きからやや上向きに湾曲して前方に吹き出させるものであって」、本願発明のロングノズルを形成する、湾曲面である導風パネルの内面と同様の形状・配置を有し、湾曲に沿うように風を前方に吹き出させる作用についても同様である。 また、引用刊行物2にも、冷房運転モードでは、凹面が上向きとなる状態で、引用発明の上下風向板4に当たる風向変更羽根を用いることで、冷風を部屋の遠方まで運ぶことができることが記載されている。 そうすると、引用発明の上下風向板4の湾曲する内面も吹出空気を遠方に導くものといえ、相違点Aについて、本願発明と引用発明とは、実質的に相違していない。 (2)相違点Bについて ア.本願発明の「導風パネルの後端とキャビネットとを接触させて吹出口の下壁とつなげ」ることについて 引用刊行物2には、冷房運転モードで、吹出口に配置される風向変更羽根を凹面が上向きとなる状態で用いるものにおいて、空気調和機本体側の風向変更羽根端部が吹出口の下流側端部の下端に当接する位置に動作させることで冷房運転モードには冷風を部屋の遠方まで運ぶことができることが記載されている。 引用刊行物3にも、吹出風を全て上向きあるいは下向きへと仕向け、かつ気流の乱れを抑制するために、上下風向変更羽根2の端部を吹出口1の下端または上端と連結させることが記載されている。 そして、引用発明は「冷房運転時に」「上下風向板4の下端を吹出口3の下部に位置させて」「吹出口3に到る空気通路の下壁であるリアガイダ10に連続するように配置」し、「連続する空気通路を形成」するものであるから、引用刊行物2や3に記載されるように、気流の乱れを抑制してより遠く風をながすべく、引用発明のリアガイダ10に連続するように配置された上下風向板4の下端を吹出口3の下部に接触させることは当業者が容易になし得たことである。 さらにいえば、引用刊行物3には上下風向変更羽根の表面及び吹出口の周辺に結露が発生していたものが、上下風向変更羽根2の端部を吹出口1の下端または上端と連結させるような場合には、上下風向変更羽根2の外郭表面に結露15が発生することや断熱材8を貼り付けることでこの結露の発生をも抑制することができる旨記載されていて、本願発明のキャビネットの一部である吹出口の周辺の結露が抑制されることが示唆されているといえるから、本願発明のキャビネットの底面での結露の発生が防止できるという効果も、当業者が容易に想到できたものである。 イ.本願発明の「ロングノズルの上下幅は吹出し方向に対して広がるように形成されており」、「吹出口の上壁が吹出し方向で途中までは斜め下方に向かいその後斜め上方向に向かうように形成されている」ことについて 引用刊行物4には、空気調和機において、確実に上向き方向へ案内し、かつ空気の上向き成分をより大きくして、より遠方まで空気を到達させるために、また、吹き出し口4の開口面積が全体として大きくして、風量性能を向上するために、斜め下向きに上下幅を徐々に広げるように設けられた吹き出し通路2の吹き出し口部分に、吹き出し通路2の途中から上部内面を吹き出し口4へ近づくほど上向きに傾斜させた形状の上向き空気流れ促進流路13を設けることが記載されている。 そうすると、引用発明の空気調和機において、確実に上向き方向へ案内し、かつ空気の上向き成分をより大きくして、より遠方まで空気を到達させるために、引用刊行物4に記載される上向き空気流れ促進流路13を採用して、吹出口3に到る空気通路の上壁を途中までは斜め下向きとしその後斜め上方とすることは当業者が容易になし得たことである。 また、引用発明は「吹出口3に到る空気通路は徐々に上下に広が」るものであり、これに続く「空気通路の上壁」とこれに対向する「上下風向板4」とによる空気通路は、「吹出口3に到る空気通路」に連続するものであるから、上下風向板4においても、吹出口3に到る空気通路とともに風路を形成し、吹出口3に到る空気通路からの風の流れを滑らかに流すものであるといえる。上記ア.で摘示した引用刊行物2及び3の記載をみても、滑らかに流すようなすことが通常であるといえる。そして引用刊行物1の図2(F)を参酌しても、広がっているとまではいえないものの、吹出口3に到る空気通路とほぼ同様の上下幅の空気通路を、空気通路の上壁と上下風向板4が形成している。 一方、引用刊行物4の上向き空気流れ促進流路13は、吹き出し口4の開口面積が全体として大きくして、風量性能を向上するためのものでもあることから、吹出口3に到る空気通路だけでなく、これに続く空気通路の上壁と上下風向板4と形成される空気通路についても、開口面積が全体として大きくして、風量性能を向上するようなすべく、本願発明のロングノズルにあたる、空気通路の上壁と上下風向板4と形成される空気通路の上下幅を徐々に大きくすることも当業者が容易になし得たことといえる。 引用刊行物5及び6にも、送風経路6の上壁が途中まで斜め下方であり、その後斜め上方に向かう形状のものが示されると共に送風経路6や風向可変部113、114により、空気の流れが徐々に広がるようなすことも示されており、上記したように、吹出口3に到る空気通路の上壁を途中までは斜め下向きとしその後斜め上方とすることや空気通路の上壁と上下風向板4による空気通路についても徐々に広がるようなすことが当業者にとって格別困難であるとはいえない。 また、ア.及びイ.を合わせ考えても、相違点Bに係る効果が格別であるとはいえない。 4.むすび したがって、本願発明は、引用発明及び引用刊行物2?6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そうすると、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-07-03 |
結審通知日 | 2013-07-09 |
審決日 | 2013-07-23 |
出願番号 | 特願2007-232668(P2007-232668) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F24F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山崎 勝司 |
特許庁審判長 |
竹之内 秀明 |
特許庁審判官 |
小野 孝朗 平上 悦司 |
発明の名称 | 空気調和機 |
代理人 | 大島 泰甫 |
代理人 | 小羽根 孝康 |
代理人 | 藤原 清隆 |
代理人 | 稗苗 秀三 |