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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E02B
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  E02B
審判 全部無効 2項進歩性  E02B
管理番号 1279055
審判番号 無効2012-800124  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-08-17 
確定日 2013-08-05 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4627464号発明「土嚢の傾斜積み工法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 特許第4627464号の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とする。 特許第4627464号の請求項6に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その6分の1を請求人の負担とし、6分の5を被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件の手続の経緯は以下のとおりである。

平成17年 8月19日 出願(特願2005-239074号)
平成22年 7月29日 拒絶理由通知
平成22年10月 4日 意見書,手続補正書提出
平成22年10月28日 特許査定
平成22年11月19日 本件特許権の設定登録(請求項1?6)
(特許第4627464号)
平成24年 8月17日 本件無効審判請求
平成24年11月 6日 被請求人より答弁書提出
平成24年11月27日 審理事項通知
平成24年12月28日 請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成25年 1月 4日 被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成25年 1月15日 請求人,被請求人より上申書提出
平成25年 1月15日 口頭審理
平成25年 1月29日 被請求人より上申書提出
平成25年 2月 7日 請求人より上申書提出
平成25年 2月27日 審決の予告
平成25年 4月25日 訂正請求
平成25年 4月25日 被請求人より上申書提出

第2 当事者の主張
1 請求人の主張
請求人は,特許第4627464号の特許を無効とする,審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,その理由として以下の無効理由を主張し,証拠方法として甲第1号証?甲第12号証,甲第15号証?甲第18号証の1ないし5,及び甲第20号証?甲第23号証を提出した。

[無効理由]
審判請求書の「7 請求の理由」における「(1)請求の理由の要約」,「(3)特許無効審判請求の根拠」及び「(5)本件特許を無効とすべき理由」をまとめると,請求人が主張する無効理由は以下のとおりである。

無効理由1(本件特許発明1につき特許法第29条第1項第3号違反)
本件特許発明1は,特許出願前に日本国内又は外国において電子通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(甲第1号証)であるから,特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し,特許を受けることができないものである。
よって,本件特許は,同法123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。

無効理由2,3(本件特許発明1につき特許法第29条第2項違反)
本件特許発明1は,特許出願前に日本国内又は外国において電子通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明(甲第1?9号証,無効理由2は甲第1号証を主引用例,無効理由3は甲第2号証を主引用例)に基づいていわゆる当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって,本件特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。

無効理由4(本件特許発明2につき特許法第29条第1項第3号違反)
本件特許発明2は,特許出願前に日本国内又は外国において電子通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(甲第1号証)であるから,特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し,特許を受けることができないものである。
よって,本件特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。

無効理由5,6(本件特許発明2につき特許法第29条第2項違反)
本件特許発明2は,特許出願前に日本国内又は外国において電子通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明(甲第1?9号証,無効理由5は甲第1号証を主引用例,無効理由6は甲第2号証を主引用例)に基づいていわゆる当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって,本件特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。

無効理由7(本件特許発明3につき特許法第29条第1項3号違反)
本件特許発明3は,特許出願前に日本国内又は外国において電子通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(甲第1号証)であるから,特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し,特許を受けることができないものである。
よって,本件特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。

無効理由8,9(本件特許発明3につき特許法第29条第2項違反)
本件特許発明3は,特許出願前に日本国内又は外国において電子通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明(甲第1?9号証,無効理由8は甲第1号証を主引用例,無効理由9は甲第2号証を主引用例)に基づいていわゆる当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって,本件特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。

無効理由10,11(本件特許発明4につき特許法第29条第2項違反)
本件特許発明4は,特許出願前に日本国内又は外国において電子通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明(甲第1号証?甲第11号証,無効理由10は甲第1号証が主引用例,無効理由11は甲第2号証が主引用例)に基づいていわゆる当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって,本件特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。

無効理由12,13(本件特許発明5につき特許法第29条第2項違反)
本件特許発明5は,特許出願前に日本国内又は外国において電子通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明(甲第1?12号証,無効理由12は甲第1号証を主引用例,無効理由13は甲第2号証を主引用例)に基づいていわゆる当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって,本件特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。

無効理由14,15(本件特許発明6につき特許法第29条第2項違反)
本件特許発明6は,特許出願前に日本国内又は外国において電子通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明(甲第1?12号証,無効理由14は甲第1号証を主引用例,無効理由15は甲第2号証を主引用例)に基づいていわゆる当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって,本件特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。

無効理由16(本件特許発明1?6につき特許法第36条第6項第1号及び第2号違反)
本件特許発明1?6は,特許を受けようとする発明が明確でなく,特許法第36条第6項第2号により特許を受けることができないものである。
よって,本件特許は,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきものである。
仮にそうでないとしても,本件特許発明1?6は,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえず,特許法第36条第6項第1号により特許を受けることができないものである。
よって,本件特許は,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきものである。

無効理由17(本件特許発明1?6につき特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号違反)
(取り下げ)

[証拠方法]
[審判請求書と共に提出]
甲第1号証:米国陸軍,“FM 5-103 SURVIVABILITY”,目次及び第3章,[online],1985年6月10日,GlobalSecururity.org,[2012年7月13日検索]。
インターネット <URL:http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/5-103/index.html>, 甲第2号証:実願昭61-125739号(実開昭63-31126号)のマイクロフィルム
甲第3号証:特開2005-120754号公報
甲第4号証:特開2001-271322号公報
甲第5号証:実願昭52-79863号(実開昭54-7534号)のマイクロフィルム
甲第6号証:特開平8-85929号公報
甲第7号証:実願昭51-56822号(実開昭51-152228号)のマイクロフィルム
甲第8号証:特開昭61-40914号公報
甲第9号証:植生技術による斜面安定工法 浸食防止のための実務ガイド(発行所:森北出版株式会社,発行日:2004年3月31日,抜粋頁:234?241頁及び284?289頁)
甲第10号証:特開2003-342931号公報
甲第11号証:北海日植株式会社,“提供できる技術”,[online],2000年1月17日,独立行政法人中小企業基盤整備機構,J-Net21ビジネス支援サイトにぎわい広場,[2012年7月27日検索],インターネット<URL:http://j-net21.smrj.go.jp/hiroba/page.do?companyId=ais301e843&categoryNo=2&dataNo=3>
甲第12号証:特開平8-326060号公報
甲第13号証:(撤回)

[口頭審理陳述要領書と共に提出]
甲第14号証:(参考資料)
甲第15号証:広辞苑第5版(発行所:岩波書店,抜粋頁:2135頁)
甲第16号証:日本語大辞典(発行所:講談社,抜粋頁:1555頁)
甲第17号証の1ないし12:米国陸軍,“FM 5-103 SURVIVABILITY”,第3章(証拠の枝番2ないし11については一部),[online],Internet Archive,Waybackmachine,[2012年12月15日検索],インターネット
枝番1(2005年4月24日指定):<URL:http://web.archive.org/web/20050424162020/http://www.globalsecurity.org/military/Policy/army/fm/5-103/CH3.HTM>
枝番2(2005年1月9日指定)<URL:http://web.archive.org/web/20050109144919/http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/5-103/CH3.HTM>
枝番3(2004年11月21日指定)<URL:http://web.archive.org/web/20041121055733/http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/5-103/CH3.HTM>
枝番4(2004年8月25日指定)<URL:http://web.archive.org/web/20040825072452/http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/5-103/CH3.HTM>
枝番5(2004年5月4日指定):<URL:http://web.archive.org/web/20040504202934/http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/5-103/CH3.HTM>
枝番6(2004年1月14日指定):<URL:http://web.archive.org/web/20040114212252/http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/5-103/CH3.HTM>
枝番7(2003年10月6日指定):<URL:http://web.archive.org/web/20031006153156/http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/5-103/CH3.HTM>
枝番8(2003年6月28日指定):<URL:http://web.archive.org/web/20030628022105/http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/5-103/CH3.HTM>
枝番9(2003年4月22日指定):<URL:http://web.archive.org/web/20030422135525/http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/5-103/CH3.HTM>
枝番10(2002年8月21日指定):<URL:http://web.archive.org/web/20020821134344/http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/5-103/CH3.HTM>
枝番11(2002年4月23日指定):<URL:http://web.archive.org/web/20020423052500/http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/5-103/CH3.HTM>
枝番12(2002年2月15日指定):<URL:http://web.archive.org/web/20020215202154/http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/5-103/CH3.HTM>
甲第17号証の13及び14:米国陸軍,“FM 5-103 SURVIVABILITY”,目次[online],Internet Archive, Wayback machine,[2012年12月15日検索],インターネット
枝番13(2005年4月22日指定):<URL:http://web.archive.org/web/20050422060926/http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/5-103/CH3.HTM>
枝番14(2002年2月9日指定):<URL:http://web.archive.org/web/20020209162009/http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/5-103/CH3.HTM>
甲第18号証の1ないし5:GlobalSecurity.org,“Army Filed Manuals”,〔online〕 Internet Archive, Wayback machine, [2012年12月15日検索],インターネット
枝番1(2005年8月12日指定):<URL:http://web.archive.org/web/20050812082002/http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/index.html>
枝番2(2004年8月12日指定):<URL:http://web.archive.org/web/20040812200514/http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/index.html>
枝番3(2003年8月12日指定):<URL:http://web.archive.org/web/20030812180911/http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/index.html>
枝番4(2002年8月3日指定):<URL:http://web.archive.org/web/20020803014754/http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/index.html>
枝番5(2001年12月15日指定):<URL:http://web.archive.org/web/20011215000546/http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/index.html>
甲第19号証の1ないし3:(参考資料)
甲第20号証:広辞苑第5版(発行所:岩波書店,抜粋頁:1107頁)
甲第21号証:国際公開公報 WO87/01148
甲第22号証:特開昭61-294025号公報
甲第23号証:米国特許公報6,896,449号

2 被請求人の主張
被請求人は,平成24年11月6日付けで答弁書を提出し,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め,証拠方法として乙第1号証,乙第2号証を提出した。

[証拠方法]
乙第1号証:「FM5-103 SURVIVABILITY」表紙,目次,3-1頁,3-24ないし3-27頁
乙第2号証:論文「水平および傾斜積層した土嚢のせん断特性」ジオシンセティックス論文集第21巻,発行日:平成18年12月7日, 編集者:国際ジオシンセティックス学会日本支部論文集編集委員会,発行者:国際ジオシンセティックス学会日本支部) 145-152頁

第3 訂正についての判断
1 訂正の内容
平成25年4月25日付けの訂正請求は,本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり請求項ごと又は一群の請求項ごとに訂正することを求めるものであって,その訂正の内容は次のとおりである。

(1)請求項1?5からなる一群の請求項に係る訂正について
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「使用する土嚢」とあるのを,「土嚢を,筒状袋材中に,礫質材料,砕石,建築廃材,粘土,シルト,現場掘削土,山土,川砂または海砂である土石材料を充填して構成し,使用する土嚢」に訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2?5も同様に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「該土嚢の一端が法面表層部に位置し,」とあるのを,「該土嚢の長手方向の一端が法面表層部に位置し,」に訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2?5も同様に訂正する。
ウ 訂正事項3
請求項1に「他端が法面の内部に向かうように積層敷設され」とあるのを,「他端が法面の内部に向かうように土嚢の長手方向に傾斜をつけて積層敷設され」に訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2?5も同様に訂正する。

(2)請求項6に係る訂正について
ア 訂正事項4
請求項6を「使用する土嚢の形状が円柱形状又は楕円柱形状であって,該土嚢の一端が法面表層部に位置し,他端が法面の内部に向かうように積層敷設され,該土嚢の積層面が該端から他端に向けて水平に対する俯角の傾斜をもって配置され,堤体及び盛土から選ばれる盛土構造物に設置されてなり,前記土嚢の少なくとも一部が長尺土嚢であって,前記長尺土嚢が,俯角の傾斜をもって配置された部分と,それに続く水平に配置された部分とを有することを特徴とする盛土構造物の補強構造。」に訂正する。

2 本件訂正の適否
(1)請求項1?5からなる一群の請求項に係る訂正について
ア 訂正事項1について
訂正事項1は,訂正前の請求項1に記載された「使用する土嚢」を,「土嚢を,筒状袋材中に,礫質材料,砕石,建築廃材,粘土,シルト,現場掘削土,山土,川砂または海砂である土石材料を充填して構成し,使用する土嚢」に限定しようとするものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして,願書に添付した明細書等には,【0013】に「本発明で使用される土嚢は,土石材料が,柔軟性,透水性の優れた長尺の筒状袋材中に充填されたものであり」(下線は,当審にて付与。)と,【0014】には「土嚢に充填される土石材料としては,特に制限はないが,排水性良好な土石材料としては,礫質材料,砕石,建設廃材などであり,排水性の低い土石材料として粘土,シルト,現場掘削土などを例示することができる。また排水性に関してこれらの中間的な土石材料として,山土,川砂,海砂などの砂質材料を挙げることができる。・・・具体的には,安価で入手が容易な礫質材料,砕石,建築廃材などを挙げることができる」(同上)と記載されているから,訂正事項1は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
また,訂正事項1は,発明特定事項を直列的に付加するものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。

イ 訂正事項2,3について
訂正事項2は,訂正前の請求項1に記載された「該土嚢の一端が法面表層部に位置し,」を,「該土嚢の長手方向の一端が法面表層部に位置し,」に限定しようとするものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3は,訂正前の請求項1に記載された「他端が法面の内部に向かうように積層敷設され」を,「他端が法面の内部に向かうように土嚢の長手方向に傾斜をつけて積層敷設され」(下線は,当審にて付与。)に限定しようとするものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして,願書に添付した明細書等には,【0015】に「土嚢の設置は,堤体を形成する過程あるいは盛土を行う過程で,土嚢の長手方向に上記した傾斜をつけて,その一端が法面表層部に位置するようにし,法面より内部方向に向かって敷設し,その上に盛土することによって行なわれる。」(下線部は当審にて付与。)と記載されており,ここでいう「その一端」とは,その文脈から長手方向の一端であるといえるから,「土嚢の長手方向の一端が法面表層部に位置し」との構成が記載されていたといえる。また,「土嚢が長手方向に傾斜をつけて」いる点も記載されている。よって,訂正事項2,3は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
また,訂正事項2,3は,発明特定事項を直列的に付加するものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。

(2)請求項6に係る訂正について
ア 訂正事項4について
訂正事項4は,請求項1及び4を引用していた請求項6の引用関係を解消するものであり,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして,訂正事項4は,訂正前の請求項1,4,6の記載から導き出せるものであるから,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。

3 むすび
したがって,本件訂正は,特許法第134条の2ただし書きに適合し,特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので,適法な訂正と認める。

第4 本件の請求項1?6に係る発明
上記「第3」において,本件訂正を適法な訂正と認めたので,本件の請求項1?6に係る発明は,平成25年4月25日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された以下のとおりのものである(以下,「本件発明1」等という。)。

「【請求項1】
土嚢を,筒状袋材中に,礫質材料,砕石,建築廃材,粘土,シルト,現場掘削土,山土,川砂または海砂である土石材料を充填して構成し,
使用する土嚢の形状が円柱形状又は楕円柱形状であって,該土嚢の長手方向の一端が法面表層部に位置し,他端が法面の内部に向かうように土嚢の長手方向に傾斜をつけて積層敷設され,該土嚢の積層面が該端から他端に向けて水平に対する俯角の傾斜をもって配置され,堤体及び盛土から選ばれる盛土構造物に設置されてなる盛土構造物の補強構造。
【請求項2】
前記俯角が,5?35度であることを特徴とする請求項1に記載の盛土構造物の補強構造。
【請求項3】
前記俯角の傾斜をもって配置された土嚢の法面表層部からの長さが,少なくとも50cmであることを特徴とする請求項1に記載の盛土構造物の補強構造。
【請求項4】
前記土嚢の少なくとも一部が長尺土嚢であることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の盛土構造物の補強構造。
【請求項5】
前記長尺土嚢が,高さ方向及び/又は幅方向に間隔を空けて配列して設置されてなることを特徴とする請求項4に記載の盛土構造物の補強構造。
【請求項6】
使用する土嚢の形状が円柱形状又は楕円柱形状であって,該土嚢の一端が法面表層部に位置し,他端が法面の内部に向かうように積層敷設され,該土嚢の積層面が該端から他端に向けて水平に対する俯角の傾斜をもって配置され,堤体及び盛土から選ばれる盛土構造物に設置されてなり,前記土嚢の少なくとも一部が長尺土嚢であって,前記長尺土嚢が,俯角の傾斜をもって配置された部分と,それに続く水平に配置された部分とを有することを特徴とする盛土構造物の補強構造。」


第5 無効理由について

1 証拠方法の記載内容
甲第1号証に係る発明は,第17号証の1ないし14,甲第18号証の1ないし5からみて,本件出願前に日本国内又は外国において電子通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であると認められる。
そして,甲第1号証には,本件特許の出願前に日本国内又は外国において電子通信回線を通じて公衆に利用可能となった次の情報が記載されている。
(1)甲第1号証(FM5-103 SURVIVABILITY)
(1a)28/40ページ下部には,以下の図が記載されている。



(1b)「SANDBAGGING
Walls of fighting and protective positions are built of sandbags in much the same way bricks are used. Sandbags are also useful for retaining wall revetments as shown on the right.

The sandbag is made of an acrylic fabric and is rot and weather resistant. Under all climatic conditions, the bag has a life of at least 2 years with no visible deterioration. (Some older-style cotton bags deteriorate much sooner.) The useful life of sandbags is prolonged by filling them with a mixture of dry earth and portland cement, normally in the ratio of 1 part of cement to 10 parts of dry earth. The cement sets as the bags take on moisture. A 1:6 ratio is used for sand-gravel mixtures. As an alternative, filled bags are dipped in a cement-water slurry. Each sandbag is then pounded with a flat object, such as a 2 by 4, to make the retaining wall more stable.
」(29/40ページ1行?17行)
(以下,訳)
「土嚢積み
戦闘用及び防護用陣地の壁は,レンガが使用される場合とほぼ同じ方式で,土嚢で造られる。土嚢は右図に示されるように,擁壁の壁面材としても有用である。
土嚢はアクリル織物製であり,腐敗及び天候に対する耐性を有する。あらゆる気象条件下で,土嚢は,目に見える劣化もなく少なくとも2年の耐用期間を有する(旧式の綿織物製の土嚢には,格段に早く劣化するものもある)。乾いた土とポルトランドセメントの混合物で土嚢を充填することによって,土嚢の耐用年数は長くなる。その際の混合割合は,標準的にはセメント1に対して乾いた土10である。土嚢としてのセメントの凝固物は,湿気を吸収する。砂礫の混合物では,1:6の割合が用いられる。代案として,充填された土嚢をセメント水スラリーに浸漬する方法もある。続いて各土嚢は,擁壁をより強固にするために,厚さ2インチ幅4インチの断面を有する木材のような平板な物体で強く打ち叩かれる。」
(1c)「As a rule, sandbags are used for revetting walls or repairing trenches when the soil is very loose and requires a retaining wall. A sandbag revetment will not stand with a vertical face. The face must have a slope of 1:4, and lean against the earth it is to hold in place. The base for the revetment must stand on firm ground and dug at a slope of 4:1. 」(29/40ページ18行?23行)
(以下,訳)
「一般に土嚢は,土壌が非常に緩くて擁壁が必要である場合に,壁を留め置くため,あるいは塹壕陣地を修復するために使用される。土嚢の擁壁は,垂直面に位置するものではない。当該面は1:4の勾配を有していなければならず,適切な位置で支えるために地面に寄り掛かっていなければならない。擁壁の基部は固い地盤上に位置していなければならず,4:1の勾配で掘り起こされなければならない。」

(1d)一般的には楕円柱の一端,他端は平面であると認められるところ,本件特許公報の図1および土嚢である点からみて,本件では楕円柱形状の一端,他端とは平面ではなく,凸面であると認められる。そして,そのような意味で一端,他端を用いると,記載事項(1a)の図には,内外方向に2列に並んだ土嚢のうち,外側の土嚢は,一端が斜面の表面に位置して他端が斜面の内部に向かうように置かれた楕円柱形状であり,一端と他端の面が大きな端面であって,斜面の表面から内部に向かう方向に短い楕円柱形状の横長土嚢であり,当該土嚢の上下に位置した土嚢は,一端が斜面の表面に位置して他端が斜面の内部に向かうように置かれた楕円柱形状であり,一端と他端の面が小さな端面であって,斜面の表面から内部に向かう方向に長い楕円柱形状の奥長土嚢であるといえる。そして,それらの土嚢が一端から他端に向けて水平に対する俯角の傾斜をもって交互に積み上げられた構造であると認められる。
また,記載事項(1a)の図と記載事項(1c)からみて,一端から他端へ向けた俯角は水平方向:垂直方向が4:1であると認められる。
さらに,記載事項(1a)の上下左側の図と記載事項(1c)の「土嚢は,土壌が非常に緩くて擁壁が必要である場合に,壁を留め置くため,あるいは塹壕陣地を修復するために使用される。」との記載からみて,記載事項(1a)には土壌側部に土嚢による擁壁を設ける点が記載されていると認められる。

上記記載事項(1a)?(1d)からみて,甲第1号証の電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明は以下のものである。
「戦闘用及び防護用陣地の壁であり,土壌側部に土嚢による擁壁を設ける構造物であって,
一端が斜面の表面に位置して他端が斜面の内部に向かうように置かれた楕円柱形状であり,一端と他端の面が大きな端面であって,斜面の表面から内部に向かう方向に短い楕円柱形状である横長土嚢と,
当該土嚢の上下に位置した土嚢であり,一端が斜面の表面に位置して他端が斜面の内部に向かうように置かれた楕円柱形状であり,一端と他端の面が小さな端面であって,斜面の表面から内部に向かう方向に長い楕円柱形状である奥長土嚢とからなり,
横長土嚢と奥長土嚢が交互に積み上げられ,
横長土嚢と奥長土嚢が一端から他端に向けて水平方向:垂直方向が4:1である水平に対する俯角の傾斜をもって積み上げられた構造物。」(以下,「甲1発明」という。)

また,本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証?甲第12号証,甲第21号証?甲第23号証には,次の事項が記載されている。(下線は,当審にて付与。)
(2)甲第2号証(実願昭61-125739号(実開昭63-31126号)のマイクロフィルム)
(2a)「(イ)産業上の利用分野
本考案は豪雨による堤防決壊に際しての塞き止めを初め,河川,臨海等の土木工事に際し流水や波浪等による洗掘を防止するためには,極めて好適な土嚢に関するものである。」(1ページ16行?20行)
(2b)「そしてこの織物素地(1A)を所要の長さに裁断のうえ,底部(1B)をミシン等で縫合(1C)するとともに,その上端開口部(1D)には,適宜の分径及び長さの閉塞紐(1E)を装着することにより袋体(1)が形成される。」(第6ページ8?12行)
(2c)「かかる構成により本考案品(3)は完成されるものであるが,本考案の目的には堤防決壊場所の如き激流状況下や波浪の激しい臨海土木工事現場等においても,所定の位置に投下し積層敷設をなし且この積層敷設された土嚢の崩壊をも防止するものであるから,仮令1袋当り30?50kg程度に土砂類が充填された土嚢でも単袋では激流や波浪により容易に転動したり流動移動したりして,所要の積層敷設が極めて至難となる。」(8ページ5行?13行)
(2d)「第五図は護岸や築堤面に沿って予め本考案品(3)が積層敷設されたうえ,その底縁部(2)に形成された連接結着ロープ挿通部(2A)内に連接結着ロープ(R)を挿通経由させることにより,崩壊を防止し長期に亘って積層状態を維持させる方法が示されており,かかる場合には積層に際して底縁部(2)が外面に現出される方向で積層されることに留意すべきである。」(11ページ8行?15行)
(2e)「第六図は積層された本考案品(3)のそれぞれの連接結着ロープ挿通部(2A)を縦横並びに斜め方向に連接結着ロープ(R)を挿通経由させ全体を一体的に連接結着させた状態が示されてなり,かかる方法を用うれば浸食や洗掘に十分耐えうるものとなり,恒久的敷設には極めて好適である。」(11ページ18行?12ページ3行)
(2f)第1図,第5図,第6図には以下のように記載されている。







(2g)前記の記載事項(1d)で示した意味で一端,他端を用いると,記載事項(2f)の図には土嚢が楕円柱形状であって,土嚢の一端である底縁部(2)が斜面の外面に現出され,他端が斜面の内側に向かうように積層配置された土嚢の積層構造が記載されているといえる。
また,記載事項(2f)の図から,特に第1図において土嚢は底縁部(2)と上端開口部(1D)とを結ぶ方向(図示上下方向)が,それと直角方向(図示左右方向)よりも長くなっており,第5図及び第6図のように配置される土嚢は斜面の表面から内側に向かう方向に長く積層配置されていると認められる。

上記記載事項(2a)?(2g)からみて,甲第2号証には以下の発明が記載されている。
「築堤面に沿って積層敷設する土嚢の積層構造であって,
土砂類が充填された土嚢が楕円柱形状であって,土嚢の一端である底縁部(2)が斜面の外面に現出され,他端が斜面の内側に向かうように,斜面の表面から内側に向かう方向に長く積層配置された,豪雨による堤防決壊に際しての塞き止めを初め,河川,臨海等の土木工事に際し流水や波浪等による洗掘を防止する土嚢の積層構造。」(以下,「甲2発明」という。)

(3)甲第3号証(特開2005-120754号公報)
(3a)「【技術分野】
【0001】
本発明は,例えば,海岸,河川,湖,池等の護岸形成,落石防止壁,水止め堤等の土木工事に使用される土嚢袋,及びその土嚢袋に中詰め材を充填する充填方法に関する。」
(3b)「【0041】
E)第2閉鎖工程〔図8(E)参照〕
筒状布体1から保形ガイド体3が抜き抜かれたこと確認し,開口している第2端部を閉鎖する。
この場合にも,筒状布体1の端部に通された紐体2の両端を引っ張って絞り込み相互に結束することで,第2端部は,簡単に閉鎖される。
これで筒状布体1に中詰め材4が充填された土嚢袋Aが出来上がる。」
(3c)図8(E)には,以下のように記載されている。



(3d)「【0049】
その他,本発明の土嚢は,河川等に敷設する蛇籠,植生ロール,法面の被覆保護や河川防御として敷設する長尺土嚢,落石防護擁壁に敷設する防護マット等の代わりに使用され多用的である。」

(4)甲第4号証(特開2001-271322号公報)
(4a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は護岸の破損や河床の洗掘等を防止する河川の防護技術に関する。」
(4b)「【0007】<イ>河川の防護手段
図1は河川の一部を省略した概念図で,符号10は護岸,20は河床部を示す。本例の護岸10は例えば擁壁面に略L字形の法面ユニット11を配置すると共に,法面ユニット11に帯状のジオテキスタイル12を接続し,その上に層状に盛土層13を転圧する工程を1サイクルとし,これを所定の高さに達するまで繰り返して構築した補強盛土で構成されている。補強盛土の施工方法は公知の例による。符号14は護岸基礎である。」
(4c)「【0015】
【作用】つぎの防護マット30を用いた護岸の防護方法について説明する。
【0016】<イ>防護マットの覆工
図1に示す如く,護岸10の斜面部に吸出防止用シート40を敷設した後,その表面に縦向きにして複数の緩衝袋体31を並設する。緩衝袋体31は袋体32のみを先行して配置した後,現場で衝撃吸収材33を投入するか,或いは完成済みの緩衝袋体31を重機等を用いて現場に吊り込む。この際,各緩衝袋体31の間に大きな隙間が生じないように隣接させて並設することが肝要である。また水流に対して緩衝袋体31の自重だけで対抗できないときは,護岸10から反力を得てアンカーピン等で固定してもよい。このようにして護岸10の側面を防護マット30で覆工する。図2にその覆工した拡大断面図を示す。」
(4d)図1には,以下のように記載されている。



(5)甲第5号証(実願昭52-79863号(実開昭54-7534号)のマイクロフィルム)
(5a)「本考案は造成地に設けられた仮設水路の両岸を保護する場合等に使用する土のうに関するものである。」(1ページ11行?13行)
(5b)「この土のう1は例えば仮設水路の両岸に敷設する場合,第5図(イ)又は(ロ)に示す如く,仮設水路10の両岸10a,10bに縦又は横方向にそれぞれ平行に並べて敷設すればよい。」(3ページ14行?17行)
(5c)第5図には,以下のように記載されている。


(6)甲第6号証(特開平8-85929号公報)
(6a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は湖沼や河川等の護岸用として施工される堤防造成方法に関し,詳細には耐侵食性が高く且つ植生の可能な堤防造成方法に関するものである。」
(6b)「【0011】また袋内に充填する土壌は粘性土,シルト質土壌,砂質土等制限されるものではなく,どの様な土壌であっても良く,特に耐食性,靭性を備えた良質の土壌を使用することが望ましい。・・・」
(6c)「【0019】図4?図7は本発明堤防の施工例を示す説明図である。図4は土壌を充填した直方体状の袋1を堤防長手方向に沿って配設し,この袋1を階段状に積層して堤体Bの傾斜法面に沿う様に天端まで積重ねるものである。また図5に示す例は直方体状の袋1を堤体Bの傾斜法面に沿って配設し,堤防長手方向に沿う様に袋1を横並びに整列させて上記法面を被覆する様に構成したものである。」
(6d)「【0020】また図6は直方体状の袋1は図4の例と同様に堤防長手方向に沿って配設されるものであり,堤体Bの傾斜法面においては袋1を積重ねずに面状に並べて該傾斜法面を被覆する様に構成したものである。さらに図7は図2に示す袋1を使用しこれを図4と同様に階段状に積重ねたものであり,袋体1に一体的に延設される平板シート13は堤体の土中に埋設される。これは主として堤防を新築するときに採用される。」
(6e)図4,7には,以下のように記載されている。
【図4】

【図7】


(7)甲第7号証(実願昭51-56822号(実開昭51-152228号)のマイクロフィルム)
(7a)「本考案は外力によつて容易に崩壊されない安定な土留構造物を造成する土のうに関する。
堤防,道路等の土留,あるいは,がけくづれの応急処置に際して,従来から,土のう,蛇かご,あるいはふとんかごを積み重ねる工法が広く用いられている。」(1ページ16行?2ページ4行)
(7b)「第9図は第4図の形状の土のうを重ねて作つた土留壁の側面図であり」(3ページ20行?4ページ2行)
(7c)「これらの場合の土留壁の形状は第11図,第12図に示すような断面になる。」(5ページ20行?6ページ1行)
(7d)図9,12には,以下のように記載されている。


(8)甲第8号証(特開昭61-40914号公報)
(8a)「(産業上の利用分野)
本発明は,ダム工,法覆工,水制工などに利用する砂防堤およびその構築方法に関する。」(1ページ左下欄17行?19行)
(8b)「-実施例1-
本例はダム工に関するものである。
第1図および第2図に示す砂防堤1において,2は玉石を詰めた多数のフトン籠3a?3dで構成した堤本体,4?6は堤本体2の背部,つまり溪上流側へ向けて突出した金網パネルである。
堤本体2は山7を切りくずして溪床部に形成した平坦な切土による地面8の上に構築されていて,本例の場合,フトン籠3a?3dを上下に5段連結して構成されている。最下段は台形状フトン籠3aとこれに連結して溪上流側に延ばした直方体状フトン籠3dとを溪岸側へ並設して構成されている。2?4段は平行四辺形状フトン籠3cをもって構成され,最上段は台形状フトン籠3dをもって構成されている。これら各フトン籠3a?3dには玉石9が詰められている。
そうして,金網パネル4?6は第2?第4段の各フトン籠3cの上端位置に,それぞれ溪上流側へ向けて若干下降傾斜して取り付けられている。本例の場合,各金網パネル4?6は第3図にも示す如く矩形状に組んだ主筋枠10に金網11を張設したものであり,これはフトン籠3a?3dを構成する各金網パネルと実質的に同一のものであって,フトン籠3cの金網パネルの主筋枠に連結されている。
そして,上記フトン籠3a?3dよりなる堤本体2の背部,つまり溪上流側に裏込め材12が打設され,この裏込め材12に上記金網パネル4?6が埋設されている。この裏込め材12としては山7を切りくずしたときの土石を利用している。
次に,上記金網パネル4?6の作用を説明する。
この金網パネル4?6は,堤本体2を堤構築地に対し強固に結合するとともに,この堤本体2の背部において,裏込め材12と相俟って第2の堤体13を構成する。つまり,金網パネル4?6は,単にアンカーとして作用するだけでなく,それが金網を構成要素とすることから,金網の網目に土石が介在し,しかもひし形金網の場合,網厚(網を水平面上においたときの網の高さ)が大きいこともあって高いせん断抵抗力をもち,この金網自体が土石流を阻止する結果となり,実質的に第2の堤体13を構成しているということができる。」(2ページ右上欄11行?右下欄12行)
(8c)「-実施例3-
本例は第14図に示し,砂防堤29の堤本体30を最下段の側面三角形状フトン籠31aと,この上に積み重ねた直方体状フトン籠31b,31cとでもって玉石9を詰めて構成し,第2堤体32を構成する金網パネル33?35を実施例1と同様に下降傾斜して突出せしめたものであり,他の構成は実施例1と同様である。」(4ページ左下欄20行?右下欄7行)
(8d)第14図には以下のように記載されている。


(9)甲第9号証(「植生技術による斜面安定工法 浸食防止のための実務ガイド」)
(9a)「8.6 蛇籠擁壁の植生工
8.6.1 はじめに
蛇籠は,多重亜鉛メッキ鋼線で六角形に編まれたメッシュにより組み立てられた矩形の容器である。蛇籠は,通常,作業の簡素化のため平坦に折り重ね束ねられている。図8-9および図8-10に示すように,空の蛇籠が所定の位置に設置され,さまざまな配置で隣接する蛇籠と結束される。その後,岩石を詰め込み,図8-9に示すように,岩石が詰め込まれた蛇籠の間に切枝を水平に設置する。生木挿し木が蛇籠を貫通させて挿入することもあるが(図8-11参照),この方法は,施工がかなり困難である。」(285ページ26行?33行)
(9b)「8.6.5 設置方法
植栽した蛇籠擁壁の構築は,一般的に以下の指針や手順に従って行われる。
・施工は最下部より始め,地表面から0.6?0.9m掘削する。基礎底面は,蛇籠擁壁が少なくとも1:6(H:V)の傾斜(垂直に対する傾斜)を持つように傾ける。この傾斜は,構造物に対し付加的な安定性を与える。
・準備がすんだ基底部に第1段目の蛇籠を設置し,それに岩石を詰める。壁高によって異なるが,図8-9に示すように,第1段目で2つまたはそれ以上の蛇籠の設置が必要とされる。
(中略)
・岩石が詰め込まれた蛇籠の段上に,裏込め土を天端に薄く敷き均し,蛇籠の背面の天端高さまで裏込めする。
・土・岩石が詰め込まれた蛇籠上に,切枝または生木挿し木を植栽する。それらは壁面に対して直角に枝先を前方に向け,根元部を擁壁背面の裏込め土中に設置する。挿し木の先端は,壁面から数cm外へ出ているように,また根元部は蛇籠背面の裏込め土中まで十分に達するようにする。
・生木挿し木や切枝に土を少しかぶせる。最後に,裏込め土を切枝と十分密着するように突き固めるか,締め固める。
・蛇籠の植生工の構築は,同様の手順によって所定の高さになるまで繰り返す。」(288ページ1行?21行)
(9c)286ページの図8-9には以下のように記載されている。


(10)甲第10号証(特開2003-342931号公報)
(10a)「【請求項2】複数の長尺土嚢を製造する土嚢製造装置であって,
複数の長尺土嚢袋を設置する架台と,
前記架台の上方に配置するホッパーと,からなり,
前記架台に設置された長尺土嚢袋が順次移動して前記ホッパーの下方に配置されることで複数の長尺土嚢袋に充填材を充填することを特徴とする,
土嚢製造装置。」
(10b)「【0010】<ロ>長尺土嚢袋
長尺土嚢袋2は,幅に対して長さの長い筒状の土嚢袋である。横断面は,円形に限定されるものではなく,三角形,四角形等の多角形であってもよい。・・・」
(10c)「【0014】<ホ>充填材
充填材6は,長尺土嚢袋2に充填する材料である。充填材6には,土砂,砂礫,砕石,陶器やガラス等を焼却してできるリサイクル骨材,鉄材等を使用することができる。土嚢製造装置1は,重力式で充填材6を充填するため,ホッパー4の排出口が適応すれば充填材6の径など大きさや重さの制限を受けることがない。」

(11)甲第11号証(北海日植株式会社,“提供できる技術”)
(11a)「技術の概要
ジオグリッド材を用いた長尺土のう(単筒状)や,それらを複数列繋げた長尺土のう群(マット状)に」(枠内8行?9行)

(12)甲第12号証(特開平8-326060号公報)
(12a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,法面の保護構造に関するものである。」
(12b)「【0012】
【発明の実施の形態】以下,本発明を,岩盤斜面を切り取ってつくられた切土法面の保護構造に具体化した実施形態について,図1及び図2を参照して説明する。
【0013】図において1は土留用の格子枠柵であり,金属棒を縦横格子状に溶接してなる網状体をその上下中央部で折曲することにより形成され,水平な底面部2と,傾斜した斜面部3と,底面部2の後端及び斜面部3の上端の間を連結するフック4とを備えている。この格子枠柵1は,その複数をその斜面部3同志が連続するように順に積み上げて使用した。
【0014】本実施例で使用した標準的な土留用格子枠柵1の左右長さは約2600mm,底面部2の奥行は約700mm,斜面部3の傾斜長さは約600mm(底面部2に対する斜面の傾斜角は30?60度)である。また,縦金属棒5の相互間隔は約150mm,横金属棒6の相互間隔は底面部2においては200?300mm,斜面部3においては100?150mmである。各金属棒5,6の直径は6?10mmである。勿論,これらの数値は適宜変更できる。
【0015】7は前記底面部2の下に敷いた強化繊維シートであり,破砕岩石の安定に必須であるとともに,排水機能を果たす。
【0016】25は斜面部3の背面側に充填された破砕岩石であり,本実施例では岩盤斜面の破砕によってできた破砕岩石が使用され,この破砕岩石25によって法面11が形成される。26は破砕岩石25の所々に配置された植生部材であって,布袋27の内部に土28が詰められてなるものである。本実施例では,布袋27として使用済みの穀物輸送用布袋が再利用され,布袋27の口は紐29で縛られている。また,土28には肥料,土壌改良剤,成形剤等の機能剤が適宜添加されている。各布袋27の底部は,斜面部3の1つの格子内をくぐって正面側に露出している。
【0017】14は植生部材26の内部の土28に種,苗又は挿し木の状態で植え付け又は植栽した緑化用植物であり,植生部材26の露出部から正面側へ成長したものである。本実施例ではムクゲ,サルスベリ,ヤナギ,ドロノキ,ツツジ,ウツゲ,イヌガヤ,タイミンチク,カンノンチク,ネコヤナギ,マツ,スギ,ヒノキ,ヤシャブシ,ブナ,サルスベリ,ポプラ等を使用したが,特にムクゲ,サルスベリ,ヤナギの結果が良好であった。なお,植生部材26の内部の深所には,肥料,土壌改良剤,成形剤等の機能剤を土28と混合して装填し,緑化用植物14の成長の促進等を図った。」
(12c)図1には,以下のように記載されている。


(13)甲第21号証(国際公開公報 WO87/01148)
以下,aのウムラウトをae,oのウムラウトをoe,uのウムラウトをue,エスツェットをssと表記する。
(13a)「Bei der Errichtung der aus den Fig. 1 ,2 und 3 ersichtlichen Boeschungswaenden werden schLauchfoermige , verrottungssichere und mit Erde, Sand, Mischboeden und dergleichen gefuellte kurze Saecke 1 und lange Saecke 2 als Baumaterial verwendet.」(3ページ26行?30行)
(以下,訳)
「図1,2および3に示された傾斜壁の築造時には,管状かつ耐腐食性である,土,砂,混合土等が充填された短い袋1と長い袋2が建材として使用される。」
(13b)「Die Bodenlage der im Abstand voneinander verlegten quer zur Boeschungswand verlegten Saecke 1 liegt auf einem Planum 4, das um 5 bis 15°, insbesondere um 10° nach rueckwaerts geneigt ist.」(4ページ8行?11行)
(以下,訳)
「互いに間隔を置いて敷設され,傾斜壁に対して横方向に敷設された袋1の底層は基面4の上にあり,この基面は5°?15°,具体的には10°後方に傾斜している。」
(13c)「kurzer Sack 1 : Laenge ca. 85 cm, Breite ca. 55 cm und Hoehe ca. 25 cm.
Langer Sack: Laenge: 135 cm, Breite 25 cm, Hoehe 15 cm.」(4ページ29行?32行)
(以下,訳)
「短い袋1:長さ約85cm,幅約55cm,高さ約25cm。
長い袋:長さ135cm,幅25cm,高さ15cm。」
(13d)「Nach Verlegen der naechsten Lage quer zur Wand liegender Saecke 1 wird der ueberhaengende Teil des grobmaschigen Gittergewebes 6 zurueckgeschlagen und in die Schuettung des Wallkerns oder des Boeschungskerns eingebaut bzw. verankert. In steinigen Boeden bringt die Durchdringung des Gittergewebes mit Steinen eine ausreichende Verzahnung zur Aufnahme der Zugkraefte. Bei feinkoernigen Boeden ist noch eine zusaetzliche Verankerung erforderlich.

Wie Fig. 3 zeigt, kann die Verankerung durch rueckwaertig verlegte Saecke 7 erfolgen, um welche das grobmaschige Gittergewebe 5 herumgeschlungen ist. Die einander ueberlappenden Enden des grobmaschigen Gittergewebes sind miteinander zu verbinden, beispielsweise zu verklammern oder zu verroedeln ..」(5ページ17行?31行)
(以下,訳)
「壁に対して横方向の袋1の次の層を敷設した後,目の粗い網状のメッシュ素材6の覆いかぶさった部分を折り返し,土塁中心部または斜面中心部に取り付けまたは係留することができる。石だらけの地面に石を伴ったメッシュ素材を入れ込むと,張力を受容するための十分なかみ合わせが得られる。土壌の粒が細かい場合には,さらに付加的な係留が必要である。
図3に示すように,後方に敷設された袋7を目の粗いメッシュ素材6が周回することにより係留を行うことができる。目の粗いメッシュ素材の互いに重なり合った端部同士は互いに接続され,たとえばかみ合わされ,または結合される。」
(13e)甲第21号証のFIG.1?3には,以下のように記載されている。



(13f)記載事項(13e)のFIG.1?3には,短い袋1は傾斜壁後方に長く,長い袋2は傾斜壁後方に短い点が記載されている。

そうすると,FIG1?3および記載事項(13a)?(13f)からみて,甲第21号証には「傾斜壁の築造時に使用される,土,砂,混合土等が充填された『短い袋1』と『長い袋2』が交互に積層された傾斜壁であって,
『短い袋1』は傾斜壁後方に向けて基面が10°下がっており,傾斜壁後方に長く,
『長い袋2』も傾斜面後方に向けて基面が10°下がっており,傾斜壁後方に短い傾斜壁」が記載されていると認められる。

(14)甲第22号証(特開昭61-294025号公報)
(14a)「(問題点を解決するための手段)
即ち本発明は,法面(30)に形成する小段部(1)を山側に向って低くなるように傾斜させるか,させずして小段部(1)と山側法面(2)の折曲点附近を適宜深さに掘削して凹部(3)を形成し,小段部(l)の谷側先端部附近に土のう等の土留材料(4)を適宜の高さに形成し,該土留材料(4)と小段部山側法面(2)とによって形成された凹部(5)に土壌を充填して樹木の植栽基盤(6)とすることを特徴とする法面の小段植栽基盤方法である。
本発明を更に詳細に実施例をあげながら説明する。
本発明の実施される法面において谷側から山側に向って約5°程度山側が低くなるように傾斜させた小段部(1)を形成する。」(2ページ左上欄5行?19行)
(14b)「次に上記のように形成された小段部先端附近に土留材料(4)として,土のうとか土のうの内側に種子,肥料を貼着した植生土のう等を40?60cmの高さに積み上げ土留とする。」(2ページ右上欄13行?16行)
(14c)図には,以下のように記載されている。


(14d)記載事項(14a)及び記載事項(14c)の図からみて,土嚢である土留め材料4は谷側から山側に向って約5°程度山側が低くなるように傾斜して積層されていると認められる。

(15)甲第23号証(米国特許公報6,896,449号)
(15a)「The embankment 100 is typically excavated away from ground line 102 to define a wall at an angle to the vertical of approximately 10° to 20°, with the retaining wall 10 similarly having a batter angle of 10° to 20°. In the preferred embodiments depicted, the retaining wall 10 has a batter angle of approximately 14° (eg. the central axis of each tyre in the wall is inclined at 14° with respect to vertical). Taller walls will typically require a larger batter angle for stability, whilst smaller walls can employ smaller batter angles so as to reduce the space occupied by the retaining wall 10 . As well as for retaining typical embankments as used in landscaping and the like, retaining walls of the current invention may be used with other embankments including those used as noise barriers or waterway walls (see walls) etc.」(5欄65行?6欄11行)
(以下,訳)
「盛土100は,一般的には,垂直線に対して約10°?20°の角度にて壁を形成するように地盤面102から掘削され,擁壁10も同様に10°?20°の縦の傾斜角度を有する。図示される好ましい実施形態においては,擁壁10は,約14°の縦の傾斜角度を有する(例えば,壁内の各タイヤの中心軸が垂直線に対して14°傾斜する)。一般的に,より高い壁の場合には,安定性を得るためにより大きな縦の傾斜角度を必要とするのに対し,より低い壁の場合には,擁壁10が占める空間を減じるように,より小さな縦の傾斜角度を用いてもよい。本発明の擁壁は,造園等で使用されるような一般的な盛土を保持する場合のみならず,遮音壁又は河川の堤防(見る壁(原文ママ。seawall(護岸)の誤りと思われる)等として使用されるものを含め,他の盛土に使用してもよい。」
(15b)「The tyres 11 are typically arranged such that the tyres 11 of a given course 14 are offset from those of the adjacent lower course 14 in a typical brickwork fashion. In the preferred embodiments depicted, adjacent courses 14 are separated by the further filler material 15 , here giving a separation between courses 14 of approximately half a tyre 11 diameter. Alternatively, the tyres 11 of adjacent courses 14 may abut, with the further filler material 15 filling gaps between surfaces of the adjacent tyres 11 which do not abut.」(6欄22行?30行)
(以下,訳)
「タイヤ11は,通常,任意の段14のタイヤ11が,隣接する下側の段14のタイヤ11から一般的なれんが積み様式でオフセットするように配列される。図示される好ましい実施形態においては,隣接する段14同士は,追加の充填材料15により離間されており,この実施形態では,段14同士の間がタイヤ11の直径の約半分だけ離間されている。あるいは,隣接する段14のタイヤ11同士が当接して,隣接するタイヤ11の当接していない表面同士の間の空隙を追加の充填材料15が充填していてもよい。」
(15c)「The fill material 13 typically comprises a free draining material in at least some of the courses 14 . Here the fees draining fill material 13 is granular and is used in all but the lowermost course 14a. Cobble has been found to be a suitable fill material 13 , whilst the use of other free draining materials, including shredded tyres is also desirable. Use of shredded tyres further increases the recyclability of the discarded tyres, but they are typically not used where the wall construction relies on its mass for stability.」(6欄56行?64行)
(以下,訳)
「充填材料13は通常,少なくともいくつかの段14において,排水を妨げない材料を含む。ここでは,料金(原文ママ。free(妨げない)の誤りと思われる)排水充填材料13は粒状であり,最下段14aを除く全ての段に使用される。玉石は,好適な充填材料13であることが分かっているが,細断されたタイヤを含め,排水を妨げない他の材料の使用も好ましい。細断されたタイヤの使用は,廃棄されたタイヤのリサイクル性をさらに高めるが,壁構造物が安定性を得るために質量に依存する場合には,通常は使用しない。」

2 無効理由についての判断
(1)無効理由1について(本件発明1につき特許法第29条第1項第3号違反)
本件発明1と甲1発明を比較すると,
甲1発明の「横長土嚢」と「奥長土嚢」は,本件発明1の「土嚢」に,
甲1発明の奥長土嚢に注目すると「一端が斜面の表面に位置し,他端が斜面の内部に向かうように置かれた」,「一端と他端の面が小さな端面であって,斜面の表面から内部に向かう方向に長い」との点は,本件発明1の「長手方向の一端が法面表層部に位置し,他端が法面の内部に向かうように」との点に,
甲1発明の奥長土嚢の「斜面の表面から内部に向かう方向に長」く「一端から他端に向けて水平方向:垂直方向が4:1である水平に対する俯角の傾斜をもって積み上げられた」との点は,本件発明1の「長手方向に傾斜をつけて積層敷設」に,
それぞれ相当する。
ここで,被請求人は平成25年4月25日付け上申書3ページの(3)において,横長土嚢は積層面にせん断力が付加された場合コロのように回転しやすくなってしまうが,本件発明1のような奥長土嚢はコロのように回転しにくく回転を抑えることで,ズレを抑えることができる格別の効果を奏するものであり,甲1発明のように「奥長土嚢」と「横長土嚢」とを傾斜させて上下に交互に積み重ねた構成としても,訂正後の請求項1に特有の作用効果を奏することはない旨を主張している。しかしながら,被請求人の主張する上記作用効果は本件特許明細書等に何ら記載のないものであり,また,特許請求の範囲には全ての土嚢を奥長土嚢とするとの限定もないから,本件発明1は使用する全ての土嚢を奥長土嚢とするものと解することはできない。そうすると,甲1発明は奥長土嚢を使用するという点において本件発明1と相違はない。
また,甲1発明の「土壌側部に土嚢による擁壁を設ける構造物」と,本件発明1の「盛土構造物」とは,「法面を有する土構造物」である点で共通する。

以上のことから,本件発明1と甲1発明は,
「使用する土嚢の形状が楕円柱形状であって,該土嚢の長手方向の一端が法面表層部に位置し,他端が法面の内部に向かうように土嚢の長手方向に傾斜をつけて積層敷設され,該土嚢の積層面が該端から他端に向けて水平に対する俯角の傾斜をもって配置され,法面を有する土構造物に設置されてなる法面を有する土構造物の補強構造。」で一致し,次の点で一応相違する。

<相違点1>
法面を有する土構造物が本件発明1では「堤体及び盛土から選ばれる盛土構造物」であるのに対し,甲1発明では「土壌側部に土嚢による擁壁を設ける構造物」である点。
<相違点2>
使用される土嚢が本件発明1では「筒状袋材中に,礫質材料,砕石,建築廃材,粘土,シルト,現場掘削土,山土,川砂または海砂である土石材料を充填して構成」するのに対し,甲1発明ではそのように限定されていない点。

<相違点1についての検討>
上記相違点1について検討すると,甲1発明は「戦闘用及び防護用陣地の壁」であり,盛土に土嚢を設置するものも当然に想定されていると認められるから,上記相違点1は実質的に相違点ではない。
被請求人は,答弁書10ページの(ウ),11,12ページ(ホ),平成25年1月4日付け口頭審理陳述要領書4,5ページの(3)において,甲第1号証では緩い土壌を条件にしているので,自然由来の自然斜面であるから盛土ではない旨を主張しているが,上記したように甲1発明は「戦闘用及び防護用陣地の壁」であり,盛土に土嚢を設置するものも当然に想定されていると認められ,「緩い土壌」であるからといって自然斜面であるとか,盛土でないということはできないから,上記被請求人の主張を採用することはできない。

<相違点2についての検討>
上記相違点2について検討すると,甲1発明には土嚢が記載されており,筒状袋材中に,礫質材料,砕石,建築廃材,粘土,シルト,現場掘削土,山土,川砂または海砂である土石材料を充填して構成されたものも当然に想定されていると認められるから,上記相違点2は実質的に相違点ではない。
また,被請求人は答弁書12,13ページの(ヘ)?(チ),平成25年1月4日付け口頭審理陳述要領書5,6ページにおいて,甲第1号証に記載された土嚢は土とポルトランドセメントの混合物で充填され,剛体化された土嚢であるから,本件発明1に特有の作用効果を奏し得ない旨を主張している。
しかしながら,甲第1号証には,記載事項(1b)に「土嚢はアクリル織物製であり,腐敗及び天候に対する耐性を有する。あらゆる気象条件下で,土嚢は,目に見える劣化もなく少なくとも2年の耐用期間を有する(旧式の綿織物製の土嚢には,格段に早く劣化するものもある)。乾いた土とポルトランドセメントの混合物で土嚢を充填することによって,土嚢の耐用年数は長くなる。」と記載されており,「乾いた土とポルトランドセメントの混合物で土嚢を充填する」耐用年数が長くなるものでない,セメントを用いないものもあることを示唆している。また,甲1発明は「戦闘用及び防護用陣地の壁であり,壁用擁壁を保持する土嚢で造られる構造」であって,製造される現場に必ずしも全ての物資が揃うとは限らない状況での構造であるから,セメントを用いないものも記載されていると考えるのが合理的である。
被請求人はまた,平成25年1月4日付け口頭審理陳述要領書3ページ28行?4ページ10行において,水平方向に荷重がかかると土嚢が硬くなる効果を主張しているが,甲1発明が「土嚢の積層面が該端から他端に向けて水平に対する俯角の傾斜をもって配置され」との点に相当する構成を有し,上記のとおりセメントを用いないものが記載ないし示唆されている以上,同様の効果を奏するものと認められる。

したがって,本件発明1はその出願前に日本国内又は外国において,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。

(2)無効理由2について(本件発明1につき特許法第29条第2項違反 主引用例:甲第1号証)
仮に,「(1)無効理由1について」で検討した相違点1及び2が実質的に相違点であったとして,さらに検討する。

<相違点1についての検討>
甲第2号証の記載事項(2a),甲第3号証の記載事項(3a),甲第6号証の記載事項(6d),甲第7号証の記載事項(7a),甲第22号証の記載事項(14a)にも記載されているように,土嚢は自然斜面のみならず堤体等の盛土の斜面にも設けられるものであるから,本件発明1の相違点1に係る構成とすることは当業者が容易に想到したことである。

<相違点2についての検討>
土嚢は,甲第3号証の記載事項(3b)や甲第10号証の記載事項(10b)に記載されているように,筒状袋材から構成されるものであり,また,甲第6号証の記載事項(6b)や甲第10号証の記載事項(10c)に記載されているように,粘性土やシルト質土壌,土砂,砂礫,砕石等を充填するものであるから,本件発明1の相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に想到したことである。

また,その他の点については,「(1)無効理由1について」で検討したとおりである。

したがって,本件発明1はその出願前に日本国内又は外国において,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)無効理由3について(本件発明1につき特許法第29条第2項違反 主引用例:甲第2号証)
本件発明1と甲2発明とを比較すると,
甲2発明の「土嚢の一端である底縁部(2)が斜面の外面に現出され,他端が斜面の内側に向かうように,斜面の表面から内側に向かう方向に長く積層配置され」との点は,本件発明1の「該土嚢の長手方向の一端が法面表層部に位置し,他端が法面の内部に向かうように」「積層敷設され」との点に,
同様に「築堤面に沿って積層敷設する」及び「豪雨による堤防決壊に際しての塞き止めを初め,河川,臨海等の土木工事に際し流水や波浪等による洗掘を防止する構造」は,「堤体である盛土構造物の補強構造」に相当する。

以上のことから,本件発明1と甲2発明は,
「使用する土嚢の形状が楕円柱形状であって,該土嚢の長手方向の一端が法面表層部に位置し,他端が法面の内部に向かうように積層敷設され,堤体である盛土構造物に設置されてなる盛土構造物の補強構造。」で一致し,次の点で相違する。

<相違点3>
本件発明1が「土嚢の長手方向に傾斜をつけて」,「土嚢の積層面が該端から他端に向けて水平に対する俯角の傾斜をもって配置され」るものであるのに対し,甲2発明はそのような構成がない点。
<相違点4>
使用される土嚢が本件発明1では「筒状袋材中に,礫質材料,砕石,建築廃材,粘土,シルト,現場掘削土,山土,川砂または海砂である土石材料を充填して構成」するのに対し,甲2発明では「土砂類」である点。

<相違点3についての検討>
上記相違点3について検討すると,
甲第1号証や,甲第8号証の記載事項(8d),甲第9号証の記載事項(9b),(9c),甲第21号証の記載事項(13b),甲第22号証の記載事項(14c)に記載されているように,内容物を有した袋や籠を積み上げて,法面を形成する際に当該袋や籠を法面からその内部に向かって俯角に傾けて設置することは当業者に周知な技術事項であると認められ,そのことにより崩れにくい法面を形成する効果を奏することは自明である。
そして甲2発明においても,より一層崩れにくい丈夫な斜面を形成することは当業者であれば当然に考慮することであるから,当該周知な技術事項を甲2発明に適用して,本件発明1の相違点3に係る構成とすることは当業者が容易に想到したことである。
ここで,被請求人は平成25年1月4日付け口頭審理陳述要領書3ページ28行?4ページ10行において,本件発明1のものは水平方向に荷重がかかると土嚢の積層接触面に作用する垂直力が増大し,土嚢自体が硬くなり盛土と土嚢が一体化されて補強性能を発揮すると主張している。
しかしながら,土嚢等を積層する際に傾けることは甲第1,8,9号証や,甲第21,22号証に記載されているように当業者に周知な技術事項であって,同様に土嚢等は硬くなると認められるから,当該周知な技術事項を甲2発明に適用して,本件発明1の相違点3に係る構成とすることは当業者が容易に想到したことである。

<相違点4についての検討>
上記相違点4について検討すると,
土嚢は,甲第3号証の記載事項(3b)や甲第10号証の記載事項(10b)に記載されているように,筒状袋材から構成されるものであり,また,甲第6号証の記載事項(6b)や甲第10号証の記載事項(10c)に記載されているように,粘性土やシルト質土壌,土砂,砂礫,砕石等を充填するものであるから,本件発明1の相違点4に係る構成とすることは当業者が容易に想到したことである。

したがって,本件発明1はその出願前に日本国内又は外国において,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明及び当業者に周知な技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(4)無効理由4について(本件発明2につき特許法第29条第1項第3号違反)
本件発明2は本件発明1の構成に「俯角が,5?35度である」との構成が付加されたものであり,本件発明1の構成は,無効理由1で検討したとおり甲1発明と一致し,相違点はない。そして,甲1発明の「土嚢が一端から他端に向けて水平方向:垂直方向が4:1である水平に対する俯角の傾斜をもって積み上げられた」との構成を角度で表すと,俯角は約14度であるから,本件発明2の「俯角が,5?35度である」との構成に含まれるものであり,この点でも相違点はない。

したがって,本件発明2はその出願前に日本国内又は外国において,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。

(5)無効理由5について(本件発明2につき特許法第29条第2項違反 主引用例:甲第1号証)
本件発明2は本件発明1に「俯角が,5?35度である」との構成が付加されたものであり,本件発明1は,無効理由1で検討したとおり甲1発明と実質的に相違点がないか,無効理由2で検討したとおり甲1発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。そして,甲1発明の「土嚢が一端から他端に向けて水平方向:垂直方向が4:1である水平に対する俯角の傾斜をもって積み上げられた」との構成を角度で表すと,俯角は約14度であるから,本件発明2の「俯角が,5?35度である」との構成に含まれるものであり,記載事項(1c)の「適切な位置で支えるために地面に寄り掛かっていなければならない。」との記載からみて,角度は「地面に寄り掛る」程度であればよいのであって,俯角を5?35度程度にすることは当業者が容易に想到することと認められる。

したがって,本件発明2はその出願前に日本国内又は外国において,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(6)無効理由6について(本件発明2につき特許法第29条第2項違反 主引用例:甲第2号証)
本件発明2は本件発明1に「俯角が,5?35度である」との構成が付加されたものであり,甲2発明と比較すると本件発明2は,無効理由3で検討した一致点で一致し,次の点で相違する。

<相違点5>
本件発明2が「土嚢の積層面が該端から他端に向けて水平に対する俯角の傾斜をもって配置され」るものであり,「俯角が,5?35度である」のに対し,甲2発明はそのような構成がない点。

<相違点5についての検討>
無効理由4で示したように甲1発明の俯角は約14度である。また,甲第8号証の記載事項(8d)や,甲第9号証の記載事項(9c)の図における俯角も本件発明2の相違点5に係る構成と略同じであると認められ,上記甲第21号証の記載事項(13b)には「5°?15°,具体的には10°後方に傾斜している。」と記載され,甲第22号証には記載事項(14d)の「土嚢である土留め材料4は谷側から山側に向って約5°程度山側が低くなるように傾斜して積層されている」との記載事項があることからみて,擁壁部に部材を積み上げる際にこの程度の俯角とすることは当業者に周知な技術事項であると認められる。そして,そのような俯角を持たせることにより擁壁が崩れにくくなることは当業者にとって自明と認められ,擁壁を崩れにくくすることは,甲第2号証の記載事項(2d),(2e)にも記載されているように,当業者であれば当然に考慮する事項とも認められる。
そうすると,本件発明2の相違点5に係る構成とすることは,当業者が容易に想到したことである。

したがって,本件発明2はその出願前に日本国内又は外国において,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及びその出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(7)無効理由7について(本件発明3につき特許法第29条第1項3号違反)
本件発明3は本件発明1に「俯角の傾斜をもって配置された土嚢の法面表層部からの長さが,少なくとも50cmである」との構成が付加されたものであり,甲1発明との相違点である。

<相違点6>
「俯角の傾斜をもって配置された土嚢の法面表層部からの長さが,少なくとも50cmである」

<相違点6についての検討>
上記相違点6について検討すると,甲第1号証には土嚢の大きさや長さに関する記載は認められず,土嚢の長さが50cm以上であることを示す記載はない。
そうすると相違点6は実質的に相違点であるから,本件発明3は特許出願前に日本国内又は外国において電子通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるとはいえない。
したがって,本件発明3は特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するということはできない。

(8)無効理由8,9について(本件発明3につき特許法第29条第2項違反)
本件発明3は本件発明1に上記相違点6が付加されたものである。
そして,本件発明1は無効理由1?3で検討したとおり,甲1発明と一致するか,甲1,2発明等から容易になし得たものである。

<相違点6についての検討>
上記相違点6について検討すると,土嚢の大きさは当業者が必要に応じて適宜決めうるものであると認められ,50cm以上という大きさは,土嚢として格別なものとも認められない。

したがって,本件発明3はその出願前に日本国内又は外国において,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及びその出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(9)無効理由10,11について(本件発明4につき特許法第29条第2項違反)
本件発明4は本件発明1?3のいずれかに「前記土嚢の少なくとも一部が長尺土嚢である」との構成が付加されたものであり,当該構成は甲1,2発明との相違点である。

<相違点7>
「前記土嚢の少なくとも一部が長尺土嚢である」

本件発明1?3は無効理由1?6,8,9で検討したとおり,甲1発明と一致するか,甲1,2発明等から容易になし得たものである。

<相違点7についての検討>
上記相違点7について検討すると,甲1発明の「奥長土嚢」は本件発明4の「長尺土嚢」に相当する。
また,甲第10号証等からみて長尺土嚢は当業者に周知であると認められ,土嚢等の擁壁に用いる積層材の少なくとも一部を長くすることも,甲第8号証の記載事項(8d)における直方体状フトン籠31cと31b,甲第21号証の記載事項(13c)及び記載事項(13e)におけるFIG.2,3の袋1,2の記載からみて当業者に周知であり,このようなものにすることは当業者が必要に応じて適宜なし得ると認められるから,甲1発明又は甲2発明において,本件発明4の相違点7に係る構成とすることは,当業者が容易に想到したことである。

したがって,本件発明4はその出願前に日本国内又は外国において,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及びその出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(10)無効理由12,13について(本件発明5につき特許法第29条第2項違反)
本件発明5は本件発明1?3のいずれかに「前記土嚢の少なくとも一部が長尺土嚢」であり,「前記長尺土嚢が,高さ方向及び/又は幅方向に間隔を空けて配列して設置されてなる」との構成が付加されたものであり,当該構成は甲1,2発明との相違点である。

<相違点8>
「前記土嚢の少なくとも一部が長尺土嚢」であり,「前記長尺土嚢が,高さ方向及び/又は幅方向に間隔を空けて配列して設置されてなる」

本件発明1?3は無効理由1?6,8,9で検討したとおり,甲1発明と一致するか,甲1,2発明等から容易になし得たものである。

<相違点8についての検討>
上記相違点8について検討すると,甲1発明の「奥長土嚢」と「横長土嚢」は交互に積み上げられており,本件発明5の相違点8に係る構成に相当する。
また,長尺土嚢は甲第3号証の記載事項(3d),甲第10号証の記載事項(10a),甲第11号証の記載事項(11a)の記載からみて当業者に周知な技術事項であり,これをどのように配置するかは当業者の設計的事項であるところ,甲第21号証に「傾斜壁の構築に使用される,土,砂,混合土等が充填された『短い袋1』と『長い袋2』が交互に積層された傾斜壁であって,
『短い袋1』は傾斜壁後方に向けて基面が10°下がっており,傾斜壁後方に長く,
『長い袋2』も傾斜面後方に向けて基面が10°下がっており,傾斜壁後方に短い傾斜壁」(記載事項(13f))が記載されているように,長尺土嚢を間隔を空けて配列して設置することは当業者が必要に応じて適宜なし得ることと認められるから,甲1発明又は甲2発明において,本件発明5の相違点8に係る構成とすることは,当業者が容易に想到したことである。

したがって,本件発明5はその出願前に日本国内又は外国において,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及びその出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(11)無効理由14,15について(本件発明6につき特許法第29条第2項違反)
ア 甲第1号証に基づく容易性
本件発明6と甲1発明を比較すると,
甲1発明の「横長土嚢」と「奥長土嚢」は,本件発明6の「土嚢」に,
甲1発明の「一端が斜面の表面に位置し,他端が斜面の内部に向かうように置かれた」との点は,本件発明6の「一端が法面表層部に位置し,他端が法面の内部に向かうように」との点に,
甲1発明の「積み上げられた」との点は,本件発明6の「積層敷設」に,
それぞれ相当する。
ここで,本件発明6の「一端」,「他端」とは,長手方向の一端,他端に限られたものではない。被請求人は平成25年1月29日付け上申書2ページ4行?8行において,「本件特許発明1(当審注:訂正前の請求項1に係る発明)では,『土嚢の一端が法面表層部に位置し,他端が法面の内部に向かうように積層敷設され』ているので,土嚢の一端が法面表層部に位置すれば,他端は盛土側に位置します。つまり,土嚢は長手方向を盛土に向け積層されています。言い換えれば,土嚢が動きにくい長手方向を盛土に向けて積層敷設されています。」と主張しているが,本件発明6の土嚢が長手方向を盛土に向け積層されていることの根拠は認められない。
そして,本件明細書【0015】には「土嚢の設置は,堤体を形成する過程あるいは盛土を行う過程で,土嚢の長手方向に上記した傾斜をつけて,その一端が法面表層部に位置するようにし,法面より内部方向に向かって敷設し,その上に盛土することによって行なわれる。」と記載されているが,これは本件明細書の【発明を実施するための最良の形態】として記載されているものであって,請求項6には一端と他端が長手方向に設けられたものである旨の記載がないうえ,本件明細書の【発明が解決しようとする課題】における「すべりに対する安定性が高く」,「背面土圧に対する抵抗力が高く」との点は,記載事項(1a)の図のように水平に対する俯角の傾斜をもって積み上げられればそのような効果を奏するものと認められるから,「一端」,「他端」とは,長手方向の一端,他端に限られたものではなく,本件明細書【0013】に「長さが0.5?3.0m」(50?300cm),「幅が30?200cm」と記載されていることから,たとえば,長さが50cmで幅が200cmの法面に沿った水平方向に長い横長土嚢も含まれていると認められる。
さらに,甲1発明の「土壌側部に土嚢による擁壁を設ける構造物」と,本件発明6の「盛土構造物」とは,「法面を有する土構造物」である点で共通する。
また,甲1発明の「奥長土嚢」は本件発明6の「長尺土嚢」に相当する。

以上のことから,本件発明6と甲1発明は,
「使用する土嚢の形状が楕円柱形状であって,該土嚢の一端が法面表層部に位置し,他端が法面の内部に向かうように積層敷設され,該土嚢の積層面が該端から他端に向けて水平に対する俯角の傾斜をもって配置され,法面を有する土構造物に設置されてなる法面を有する土構造物の補強構造であり,前記土嚢の少なくとも一部が長尺土嚢である補強構造。」で一致し,次の点で一応相違する。

<相違点9>
法面を有する土構造物が本件発明6では「堤体及び盛土から選ばれる盛土構造物」であるのに対し,甲1発明では「土壌側部に土嚢による擁壁を設ける構造物」である点。
<相違点10>
本件発明6では「前記長尺土嚢が,俯角の傾斜をもって配置された部分と,それに続く水平に配置された部分とを有する」のに対し,甲1発明ではそのような構成を有しない点。

<相違点9についての検討>
上記相違点9は,上記相違点1と同じであるので,上記無効理由1,2において検討したように実質的に相違点はないか,当業者が容易に想到したことである。

<相違点10についての検討>
上記相違点10について検討すると,甲号各証には上記相違点10を示す記載はない。
ここで,甲第21号証のFIG.3における袋1,目の粗いメッシュ素材6,袋7は併せると俯角の傾斜をもって配置された部分と,それに続く水平に配置された部分とを有するが,袋1,目の粗いメッシュ素材6,袋7を併せたものは土嚢ではない。そして,袋1,目の粗いメッシュ素材6,袋7を併せたものを土嚢とすることが容易である理由は見あたらない。

イ 甲2発明に基づく容易性
本件発明6と甲2発明とを比較すると,
甲2発明の「土嚢の一端である底縁部(2)が斜面の外面に現出され,他端が斜面の内側に向かうように,斜面の表面から内側に向かう方向に長く積層配置された」との点は,本件発明6の「土嚢の一端が法面表層部に位置し,他端が法面の内部に向かうように積層配設された」との点に,
同様に,「築堤面に沿って積層敷設する」及び「豪雨による堤防決壊に際しての塞き止めを初め,河川,臨海等の土木工事に際し流水や波浪等による洗掘を防止する構造」は,「堤体である盛土構造物の補強構造」に相当する。

以上のことから,本件発明6と甲2発明は,
「使用する土嚢の形状が楕円柱形状であって,該土嚢の一端が法面表層部に位置し,他端が法面の内部に向かうように積層敷設され,堤体である盛土構造物に設置されてなる盛土構造物の補強構造。」で一致し,次の点で相違する。

<相違点11>
本件発明6が「土嚢の積層面が該端から他端に向けて水平に対する俯角の傾斜をもって配置され」るものであるのに対し,甲2発明はそのような構成がない点。
<相違点12>
本件発明6が「土嚢の少なくとも一部が長尺土嚢である」のに対し,甲2発明はそのような構成がない点。
<相違点13>
本件発明6が「前記長尺土嚢が,俯角の傾斜をもって配置された部分と,それに続く水平に配置された部分とを有する」のに対し,甲1発明ではそのような構成を有しない点。

<相違点11についての検討>
上記相違点11に加えて,さらに「土嚢の長手方向に傾斜をつけ」との点も異なる相違点3が,上記無効理由3において検討したように当業者が容易に想到したことであるから,相違点11についても同様に当業者が容易に想到したことである。

<相違点12についての検討>
上記相違点12は上記相違点7と同様であるから,無効理由10,11において検討したのと同様に当業者が容易に想到したことである。

<相違点13についての検討>
上記相違点13は上記相違点10と同様であるから,無効理由14において検討したのと同様に甲号各証には相違点13を示す記載はなく,容易とする理由もない。

ウ まとめ
したがって,本件発明6はその出願前に日本国内又は外国において,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及びその出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(12)無効理由16について(本件発明1?6につき特許法第36条第6項第1号及び第2号違反)
請求項1には「使用する土嚢の形状が円柱形状又は楕円柱形状であって,該土嚢の長手方向の一端が法面表層部に位置し,他端が法面の内部に向かうように土嚢の長手方向に傾斜をつけて積層敷設され」と記載され,請求項6には「使用する土嚢の形状が円柱形状又は楕円柱形状であって,該土嚢の一端が法面表層部に位置し,他端が法面の内部に向かうように積層敷設され」と記載されている。そして,円柱形状又は楕円柱形状において,端部は柱側面部ではなく,端部であることは明らかであるから,「一端」及び「他端」が不明りょうな記載であるとはいえない。そして,積層される向きも本願の図1及び請求項1,6の記載から明らかであるから,請求項1?6の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。
また,「一端」および「他端」は土嚢表面の任意の部分ではなく,柱側面部でない部分を指すことは明らかであるから,「任意の一端と他端」にまで拡張ないし一般化したものではなく,請求項1?6の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。


第6 むすび
以上のとおり,本件発明1,2はいずれも特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
さらに,本件発明1?5はいずれも,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また,請求人の主張する理由及び証拠方法によっては,本件発明6に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第64条の規定により,請求人が6分の1を,被請求人が6分の5を負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
土嚢の傾斜積み工法
【技術分野】
【0001】
本発明は、背面土圧に対する抵抗力が高く、すべりに対する安定性が高い、土嚢を用いた堤体又は盛土の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
盛土や堤体を築堤するために法面表層部に土嚢を積層し、その背面に盛土を行う工法が採用されている。土嚢は現場の馴染みもよく、安価であり、築堤には有効な材料である。このような築堤工法においては、土嚢を法尻線に沿って水平に連続的に積層して土塁を形成し、その土塁の背面に盛土することによって築堤が行われる。
しかしながら、水平に連続的に積層した土嚢は、地震時などの大きな背面土圧がかかるときにはすべりを起こし、法面が変形したり、崩れたりするおそれがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明らは、すべりに対する安定性が高く、特に地震時にもすべりに対する安定性が高い、土嚢を用いた盛土や堤体の築堤方法の開発を行った結果本発明に到達した。
本発明は、背面土圧に対する抵抗力が高く、すべりに対する安定性が高い、土嚢を用いた堤体又は盛土の補強構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、使用する土嚢の形状が円柱形状又は楕円柱形状であって、該土嚢の一端が法面表層部に位置し、他端が法面の内部に向かうように積層敷設され、該土嚢の積層面が該端から他端に向けて水平に対する俯角の傾斜をもって配置され、堤体及び盛土から選ばれる盛土構造物に設置されてなる盛土構造物の補強構造を提供する。
【0005】
前記俯角が、5?35度である堤体又は盛土の補強構造は、本発明の好ましい態様である。
前記俯角の傾斜をもって配置された土嚢の法面表層部からの長さが、少なくとも50cmである堤体又は盛土の補強構造は、本発明の好ましい態様である。
【0006】
前記土嚢の少なくとも一部が長尺土嚢である盛土構造物の補強構造は、本発明の好ましい態様である。
前記長尺土嚢が、高さ方向及び/又は幅方向に間隔を空けて配列して設置されて盛土構造物の補強構造は、本発明の好ましい態様である。
前記前記長尺土嚢が、俯角の傾斜をもって配置された部分と、それに続く水平に配置された部分とを有するものである盛土構造物の補強構造は、本発明の好ましい態様である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安価な材料を用いて簡単な工事により、背面土圧に対する抵抗力が高く、すべりに対する安定性が高い堤体又は盛土の補強構造が提供される。
本発明により、特に地震時においてすべりに対する安定性が高い、土嚢を用いた堤体又は盛土の補強構造が提供される。
本発明によれば、長尺土嚢を用いることによって法面の一体性が高く、また強度も大きく、法面の耐久性が優れた堤体又は盛土の補強構造が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、土嚢の一端が法面表層部に位置し、該端から他端に向けて水平に対する俯角の傾斜をもって配置され、堤体又は盛土に設置されてなる堤体又は盛土の補強構造を提供する。
【0009】
従来の築堤工法は、土嚢を法尻線に沿って水平に連続的に積層して土塁を形成し、その土塁の背面に盛土することによって築堤する工法であった。図2はこのような従来の築堤工法を示している。このような従来の築堤工法では、土嚢が水平に連続的に積層されているので、地震時などの大きな背面土圧がかかるときにはすべりを起こし、法面が変形したり、崩れたりするおそれがあった。
【0010】
本発明における土嚢の設置工事において、土嚢の設置方法自体は従来公知のものを採用することができる。例えば、クレーンなどの運搬装置にて運搬して設置し、続いて土嚢の転圧を行う方法を挙げることができる。設置する際に土嚢背面土を撒き出し転圧することによって、本発明の傾斜をもって配置された土嚢の設置を行うことができる。
【0011】
本発明の堤体又は盛土の補強構造では、土嚢が法面表層部に位置する端部から他端に向けて、水平に対する俯角の傾斜をもって配置されているので、すべりに対する安定性が高く、地震時にもすべりを起こしにくく、法面が変形したり、崩れたりするおそれが少ない堤体又は盛土の補強構造である。
【0012】
本発明の土嚢が、水平に対する俯角の傾斜をもって配置されるとき、図1に示されているように積層敷設された土嚢の積層面と水平とがなす俯角は5?35度程度、好ましくは15?30度程度であることが望ましい。
本発明で、俯角の傾斜をもって配置される土嚢の長さは、法面表層部からの長さが、少なくとも50cmであることが好ましく、50cm?3m程度を確保することが好ましい
【0013】
本発明で使用される土嚢は、土石材料が、柔軟性、透水性の優れた長尺の筒状袋材中に充填されたものであり、排水性能、補強効果、作業性、締め固め効果の影響範囲などを考慮すると、円柱形状又は楕円柱形状として、長さが0.5?3.0m、高さが30?50cm、幅が30?200cm程度のものが、また長尺土嚢の場合は、長さが1.5?10m、好ましくは3?10m程度が好適である。土石材料を充填した土嚢の重量としては、工事箇所に応じて定めるべきものであるが、設置工事における作業性を考慮すると、バックホウを使用する場合は200?600kg、好ましくは400?600kg程度、クレーンを使用する場合は300?3000kg、好ましくは600?3000kg程度とするのが好ましい。さらに土嚢の袋材としては、透水性を有し、耐水性、耐久性に優れた材料が好ましく、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンやポリエステルの繊維やテープの織布を使用するのが好ましい。
【0014】
土嚢に充填される土石材料としては、特に制限はないが、排水性良好な土石材料としては、礫質材料、砕石、建設廃材などであり、排水性の低い土石材料として粘土、シルト、現場掘削土などを例示することができる。また排水性に関してこれらの中間的な土石材料として、山土、川砂、海砂などの砂質材料を挙げることができる。排水性良好な土石材料が好ましいが、排水性に関し、勾配をつけるように充填した土嚢を使用することもできる。排水性良好な土石材料を使用するときは、パイピングが発生しない透水性がある粒度分布のものである必要があるが、その一方で堤体や盛土の細流分が流出しないような粒度分布のものが望ましい。具体的には、安価で入手が容易な礫質材料、砕石、建築廃材などを挙げることができるが、入手安定性を考慮すると、礫質材料又は砕石の使用が好ましい。
【0015】
土嚢の設置は、堤体を形成する過程あるいは盛土を行う過程で、土嚢の長手方向に上記した傾斜をつけて、その一端が法面表層部に位置するようにし、法面より内部方向に向かって敷設し、その上に盛土することによって行なわれる。
土嚢の設置する際に、土嚢の一部を長尺土嚢とし、規則性をもって高さ方向及び幅方向に間隔を置いて設置すると、堤体あるいは盛土の強度を増すので補強の効果がある。
【0016】
長尺土嚢を使用するとき、法面表層部から50cm?3m程度を、俯角の傾斜をもって配置し、残余の部分を水平に配置してもよい。
【0017】
本発明の堤体又は盛土の補強構造においては、補強効果を高めるために、ジオグリッドを上下の土嚢間の任意箇所に敷設することもできる。また土嚢を並列的に及び/又は積み重ねて配列する場合においては、ジオグリッドを、複数の土嚢を包み込むように敷設することもできる。
【0018】
図1は、土嚢2が堤体1の法面を形成するように、土嚢の一端が法面表層部に位置し、該端から他端に向けて水平に対する俯角の傾斜をもって配置され、積み上げられた状態を示す模式図である。土嚢2は、緩勾配法面あるいは急勾配法面となるように積み上げてもよく、また垂直法面を形成するように積み上げてもよい。図1においては、長尺土嚢3が間隔を空けて配列して設置されている。長尺土嚢3の俯角の傾斜をもって配置された部分に続く部分4は、水平に配置されている。
【0019】
図1の土嚢2の法面表層部からの長さbが、少なくとも50cm以上、好ましくは50cm?3m程度であることが好ましく、また傾斜する土嚢の俯角aが、5?35度程度、好ましくは15?30度程度であることが好ましい。
【0020】
図2は従来の土嚢を水平に積層する築堤工法一例を示す模式図である。堤体1の法面に土嚢2が水平方向に積層されている様子示している。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の堤体又は盛土の補強構造では、土嚢による拘束によって、土嚢の滑りに対して補強効果を発揮するので、堤体全体の安全性が高められる。
本発明により、背面土圧に対する抵抗力が高く、すべりに対する安定性が高い堤体又は盛土の補強構造が提供される。
本発明によれば、安価な材料を用いて簡単な工事により、背面土圧に対する抵抗力が高く、すべりに対する安定性が高い堤体又は盛土の補強構造の構築を可能となる。
本発明により提供される土嚢を用いた堤体又は盛土の補強構造は、すべりに対する安定性が高いので、地震時などでも法面が変形したり、崩れたりし難い堤体又は盛土の補強構造が提供される。
本発明によれば、長尺土嚢を用いることによって法面の一体性が高く、また強度も大きく、法面の耐久性が優れた堤体又は盛土の補強構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の堤体又は盛土の補強構造の一例を示す模式図である。
【図2】従来の築堤工法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0023】
1 堤体
2 土嚢
3 長尺土嚢
a 俯角
b 土嚢部分の長さ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土嚢を、筒状袋材中に、礫質材料、砕石、建築廃材、粘土、シルト、現場掘削土、山土、川砂または海砂である土石材料を充填して構成し、
使用する土嚢の形状が円柱形状又は楕円柱形状であって、該土嚢の長手方向の一端が法面表層部に位置し、他端が法面の内部に向かうように土嚢の長手方向に傾斜をつけて積層敷設され、該土嚢の積層面が該端から他端に向けて水平に対する俯角の傾斜をもって配置され、堤体及び盛土から選ばれる盛土構造物に設置されてなる盛土構造物の補強構造。
【請求項2】
前記俯角が、5?35度であることを特徴とする請求項1に記載の盛土構造物の補強構造。
【請求項3】
前記俯角の傾斜をもって配置された土嚢の法面表層部からの長さが、少なくとも50cmであることを特徴とする請求項1に記載の盛土構造物の補強構造。
【請求項4】
前記土嚢の少なくとも一部が長尺土嚢であることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の盛土構造物の補強構造。
【請求項5】
前記長尺土嚢が、高さ方向及び/又は幅方向に間隔を空けて配列して設置されてなることを特徴とする請求項4に記載の盛土構造物の補強構造。
【請求項6】
使用する土嚢の形状が円柱形状又は楕円柱形状であって、該土嚢の一端が法面表層部に位置し、他端が法面の内部に向かうように積層敷設され、該土嚢の積層面が該端から他端に向けて水平に対する俯角の傾斜をもって配置され、堤体及び盛土から選ばれる盛土構造物に設置されてなり、前記土嚢の少なくとも一部が長尺土嚢であって、前記長尺土嚢が、俯角の傾斜をもって配置された部分と、それに続く水平に配置された部分とを有することを特徴とする盛土構造物の補強構造。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2013-05-30 
結審通知日 2013-06-05 
審決日 2013-06-24 
出願番号 特願2005-239074(P2005-239074)
審決分類 P 1 113・ 121- ZDA (E02B)
P 1 113・ 537- ZDA (E02B)
P 1 113・ 113- ZDA (E02B)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 西田 秀彦  
特許庁審判長 高橋 三成
特許庁審判官 筑波 茂樹
住田 秀弘
登録日 2010-11-19 
登録番号 特許第4627464号(P4627464)
発明の名称 土嚢の傾斜積み工法  
代理人 名古屋国際特許業務法人  
代理人 相川 守  
代理人 松浦 孝  
代理人 小原 正敏  
代理人 相川 守  
代理人 原井 大介  
代理人 松浦 孝  

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