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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B65D
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
審判 全部無効 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正  B65D
審判 全部無効 特174条1項  B65D
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  B65D
管理番号 1279056
審判番号 無効2012-800101  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-06-14 
確定日 2013-08-07 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4557295号発明「食品収納容器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 特許第4557295号の請求項1、2、4、5、7、8に係る発明についての特許を無効とする。 特許第4557295号の請求項3、6に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その8分の2を請求人の負担とし、8分の6を被請求人の負担とする。 
理由
第1 手続の経緯
本件無効審判の請求に係る特許第4557295号(以下、「本件特許」という。)の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成19年 7月 5日 本件特許出願
平成22年 7月30日 設定登録
平成24年 6月14日 審判請求書
同年 7月30日 手続補正書(請求人)
同年 8月31日 審判事件答弁書、「審判請求書」と表記された
書面(被請求人)
同年 9月28日 手続補正書(被請求人)
同年11月21日 弁駁書(請求人)
同年12月28日 審理事項通知書
平成25年 2月15日 口頭審理陳述要領書(請求人)
同年 2月15日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 3月 1日 口頭審理

上記請求人の平成24年7月30日付け手続補正書による補正は、審判請求書の要旨を変更するものではなく、この点で当事者間に争いは無い。
上記被請求人の平成24年8月31日付けの「審判請求書」と表記された書面は、審判事件の表示を「特許第4557295号訂正審判事件」、請求の趣旨を「特許第4557295号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり請求項ごとに訂正することを認める、との審決を求める。」とするものであって、訂正した明細書及び特許請求の範囲が添付されている。
上記被請求人の平成24年9月28日付け手続補正書は、上記平成24年8月31日付けの「審判請求書」と表記された書面を、「訂正請求書」に補正しようとするものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「特許第4557295号は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」ことを請求の趣旨とし、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証を提出し、次の無効理由を主張する。

<無効理由1>
平成22年3月20日付け手続補正書による補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、請求項1ないし8に係る発明についての特許は、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由2>
請求項1ないし8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、請求項1ないし8に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由3>
請求項1、2、4及び5に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるから、請求項1、2、4及び5に係る発明についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由4>
請求項1、2、4、5及び8に係る発明は、甲第3号証、甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、4、5及び8に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由5>
請求項3及び6に係る発明は、甲第3号証、甲第4号証に記載された発明に、甲第5号証に記載された周知技術を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3及び6に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由6>
請求項7に係る発明は、甲第3号証、甲第4号証に記載された発明に、甲第6号証に記載された周知技術を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項7に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由7>
請求項7に係る発明は明確でないから、請求項7に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由8>
請求項1ないし8に係る発明は、甲第8号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし8に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由9>
請求項3及び6に係る発明は、甲第3号証、甲第4号証に記載された発明に、甲第7号証に記載された周知技術を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3、6に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

<証拠方法>
甲第1号証:特開2009-12814号公報
甲第2号証:本件特許出願に係る平成22年3月20日付け手続補正書
甲第3号証:特開2007-1621号公報
甲第4号証:特開2001-240042号公報
甲第5号証:特開2006-321510号公報
甲第6号証:特開2003-160122号公報
甲第7号証:「PAPERWARE総合カタログ」、ペーパーウェア株式会

甲第8号証:特開2000-118523号公報
甲第9号証:本件特許公報

ここで、上記無効理由8及び無効理由9は、平成25年2月15日付け口頭審理陳述要領書において新たに追加されたものであって、請求人は、同無効理由を追加することにつき、特許法第131条の2第2項の規定に基づく補正の許可を審判長に求めた。しかし、審判長は、平成25年3月1日の口頭審理において、同無効理由の追加は、審判請求書の要旨を変更する補正に該当するものとして許可しなかった(第1回口頭審理調書)。よって、上記無効理由8及び無効理由9は、本件審判において審理しない。
また、甲第1号証ないし甲第9号証の成立につき当事者間に争いは無い。

第3 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」ことを答弁の趣旨とし、無効理由がいずれも成り立たないと主張する。

第4 訂正請求について
1.訂正請求の有無
被請求人の平成24年8月31日付け「審判請求書」と表記された書面は平成24年9月28日付け手続補正書により「訂正請求書」に補正されたから、上記補正された平成24年8月31日付け訂正請求書により、特許法第134条の2第1項の規定に基く訂正請求がなされたと認める。

請求人は、被請求人の平成24年8月31日付けの「審判請求書」による訂正審判の請求は、特許法第126条第2項の規定に違反してされたものであり同法第135条の規定により却下すべきであると主張した上で、被請求人の平成24年9月28日付け手続補正書は、補正対象たる訂正請求書が存在しないから、不適法な手続きであり、特許法第133条の2第1項の規定に基づき却下されるべき旨主張する。
しかし、被請求人の平成24年8月31日付けの「審判請求書」と表記された書面は、訂正審判請求書の外形をとるものではあるが、本件無効審判の係属中に提出されたものであること、同日付けで提出された審判事件答弁書において「本件特許は、本書と同日付けで提出の訂正審判請求書によって、請求項を次のように訂正請求している。」として、上記添付した訂正明細書、特許請求の範囲に基づく主張をしていること、に照らせば、実質的には特許法第134条の2に規定される訂正請求であることが明らかである。
よって、上記請求人の主張は採用できない。

2.訂正請求の内容
平成24年9月28日付け手続補正書により補正された平成24年8月31日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり請求項1ないし8からなる一群の請求項ごとに訂正することを求めるものである。具体的な訂正事項は以下のとおりである。

(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に「短い折込片とを具備し、」とあるのを、「短い折込片とを具備し、前記厚紙状物の一方の対向する側面片は、他方の対向する側面片より先に起立させ、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2ないし8も同様に訂正する)。
(訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項1に「該折込片は」とあるのを、「前記折込片は凹凸一対のプレス金型で加熱プレスして」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2ないし8も同様に訂正する)。
(訂正事項3)
特許請求の範囲の請求項1に「隣接する側面片に重なって食品収容容器上端部を外方に折り返して鍔状部を形成するに際し、前記短い折込片よりも上の部分」とあるのを、「隣接する側面片に重なって四隅に側面片の重合部を形成し、食品収容容器上端部を外方に折り返して鍔状部を形成するに際し、前記側面片の重合部の前記短い折込片よりも上の部分」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2ないし8も同様に訂正する)。
(訂正事項4)
特許請求の範囲の請求項7に「請求項?6」とあるのを「請求項1?6」に訂正する。
(訂正事項5)
願書に添付した明細書の段落【0011】に「即ち請求項1に記載の本発明は、パルプ材料から形成した厚紙状物と、該厚紙状物の四隅に形成した隣接する側面片を連結する隣接する部分よりも短い折込片とを具備し、該折込片は、隣接する側面片に重なって食品収容容器上端部を外方に折り返して鍔状部を形成するに際し、前記短い折込片よりも上の部分を折り返えしたことを特徴とする。」とあるのを、「即ち請求項1に記載の本発明は、パルプ材料から形成した厚紙状物と、該厚紙状物の四隅に形成した隣接する側面片を連結する隣接する部分よりも短い折込片とを具備し、前記厚紙状物の一方の対向する側面片は、他方の対向する側面片より先に起立させ、前記折込片は凹凸一対のプレス金型で加熱プレスして、隣接する側面片に重なって四隅に側面片の重合部を形成し、食品収容容器上端部を外方に折り返して鍔状部を形成するに際し、前記側面片の重合部の前記短い折込片よりも上の部分を折り返えしたことを特徴とする。」に訂正する。

3.訂正の適否
訂正事項1は、請求項1記載の特許発明について、厚紙状物の一方の対向する側面片は、他方の対向する側面片より先に起立させる旨の発明特定事項を付加して特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項2は、請求項1記載の特許発明について、凹凸一対のプレス金型で加熱プレスする旨の発明特定事項を付加して特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項3は、請求項1記載の特許発明について、四隅に側面片の重合部を形成する旨の発明特定事項を付加するとともに、訂正前の「前記短い折込片よりも上の部分」が「前記側面片の重合部の前記短い折込片よりも上の部分」であることを明らかにして特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項4は、請求項7について、訂正前の「請求項?6」を「請求項1?6」と訂正するものである。そして、訂正前の「請求項?6」は、その記載自体から誤記であることが明らかであり、また、請求項2、3、4、6、8のいずれもが、それ以前の全ての請求項を引用する形式で記載されていること、及び、請求項1ないし請求項6記載の特許発明は、いずれも請求項7に記載された「前記食品収納容器の内面に、熱ラミネートした熱可塑性樹脂フィルムを具備する」との技術事項を適用できるものであって、請求項7の引用対象から除外すべき理由は無いことが明らかであることに照らせば、「請求項1?6」の誤記であることが明らかである。よって、訂正事項4は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものに該当する。
訂正事項5は、訂正事項1ないし訂正事項3に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項1ないし訂正事項5は、いずれも、願書に添付した(訂正事項4については願書に最初に添付した)明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

請求人は、訂正事項4について、訂正前の「請求項?6」が「請求項1?6」の誤記であることは自明ではなく、請求項7を請求項1ないし5に従属するものとすることは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであると主張し、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び同条第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合しない旨主張する。
しかし、上記のとおり、訂正前の「請求項?6」は、「請求項1?6」の誤記であることが明らかであるから、訂正事項4は特許法第134条の2第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものに該当し、当業者であれば、誤記を認識し、その意味するところを正しく理解し得るから、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。よって、上記請求人の主張は採用できない。

したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第5 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明8」という。)は、訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
パルプ材料から形成した厚紙状物と、該厚紙状物の四隅に形成した隣接する側面片を連結する隣接する部分よりも短い折込片とを具備し、前記厚紙状物の一方の対向する側面片は、他方の対向する側面片より先に起立させ、前記折込片は凹凸一対のプレス金型で加熱プレスして、隣接する側面片に重なって四隅に側面片の重合部を形成し、食品収容容器上端部を外方に折り返して鍔状部を形成するに際し、前記側面片の重合部の前記短い折込片よりも上の部分を折り返えすことにより形成したことを特徴とするラッピングして容器開口部を覆うことができる食品収容容器。
【請求項2】
前記厚紙状物の裏面にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングし、前記折込片は、隣接する側面片に重なって、隣接する一方の側面片裏面と他方の側面片表面とが貼着する請求項1に記載の食品収容容器。
【請求項3】
該鍔状部を下面が開口した断面半多角形状に形成する請求項1又は2記載の食品収容容器。
【請求項4】
前記折込片は、V字形に形成されている請求項1?3のいずれかに記載の食品収容容器。
【請求項5】
前記V字形の折込片先端は、形成する容器底面に達している請求項4に記載の食品収容容器。
【請求項6】
前記鍔状部は、断面コ字形に形成されている請求項1?5のいずれかに記載の食品収容容器。
【請求項7】
前記食品収納容器の内面に、熱ラミネートした熱可塑性樹脂フィルムを具備する請求項1?6のいずれかに記載の食品収容容器。
【請求項8】
前記厚紙状物は、230g?320g/m^(2)となる厚さである請求項1?7のいずれかに記載の食品収容容器。」

第6 当審の判断
1.無効理由1について
請求人は、平成22年3月20日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものではない旨主張する。そして、具体的には、本件補正後の【請求項1】に、「折込片は、隣接する側面片に重なって」と記載され、同じく【0030】に、「折込片8は、側壁7a,7cの表面に重なる」と記載されていることを指摘し、当初明細書等には、折込片が側面片(側壁)に「貼着する」形態のみが開示されていたのに、本件補正によって「貼着する」形態のほか、「貼着していない」形態等を含む、「重なる」ものとして把握されるに至った旨主張する。
そこで、折込片が側面片(側壁)に貼着するか否かに関し、本件補正により、新たな技術的事項が導入されたか否かを検討する。
甲第2号証によれば、本件補正後の【0030】は、図3の実施例について説明する部分であるところ、図3の実施例について、本件補正後の【0028】ないし【0030】に次のように記載されている。
「【0028】
図3は、本発明に使用する食品収容容器の他の実施例を示すものであり、四隅に隣接する側面片7aと7b(7bと7c)を連結する折込片8を有し、該折込片8は隣接する両側部よりも短く形成され、熱可塑性樹脂は、裏面のみにコーティングしている。これを図1に示す金型で押圧加熱プレスして、容器を形成すると同時に、四隅をヒートシールして、図6に示す断面コ字形の鍔状部3´を有する食品収納容器4´を一工程で製造することができる。
…(中略)…
【0030】
図3で側壁7bを先に起立させると、短いV字形の折込片8も一緒に起立し、図5及び図6に示すように、短いV字形の折込片8は、側壁7a,7cの表面に重なる。側壁7a,7cの短いV字形の折込片8より長い部分の表面は、同時に側壁7bの裏面に貼着する。」
上記【0028】の記載によれば、図1に示す金型で押圧加熱プレスして容器を形成するに際し、裏面のみに熱可塑性樹脂がコーティングされている。このことは、当初明細書等(甲第1号証)の【0033】にも記載されていた事項である。
ところで、当初明細書等の【0035】に、「図3で側壁7bを先に起立させると…(中略)…折込片8は、側壁7a,7cの表面に貼着する。」と記載されていたが、折込片8及び側壁7a,7cの表面には熱可塑性樹脂がコーティングされていないのであるから、折込片8が側壁7a,7cの表面に貼着することはない。すなわち、当初明細書等の【0033】と【0035】の記載は整合しないものであった。
そこで、当初明細書等の【0035】の記載を、上記本件補正後の【0030】のとおり、「図3で側壁7bを先に起立させると…(中略)…折込片8は、側壁7a,7cの表面に重なる。」と補正して、本件補正後の【0028】と【0030】の整合を図ったものと理解できる。この補正により、貼着することが明示的には記載されないこととなったが、裏面に熱可塑性樹脂がコーティングされていることから、図3で側壁7bを先に起立させた場合に、折込片8が、側壁7bの裏面に貼着されることは明らかである。
よって、本件補正後の【0030】に、「折込片8は、側壁7a,7cの表面に重なる」と記載されていても、折込片が側面片に貼着しない形態が新たに導入されたものではない。
また、「特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない」(特許法第36条第5項)のであって、発明を特定するために必要でない事項までを記載する必要はないから、本件補正後の【請求項1】に貼着する旨の記載が無いことをもって、直ちに、貼着していない形態が含まれるということはできず、発明の詳細な説明の記載や技術常識も考慮する必要がある。そして、本件補正後の発明の詳細な説明には、上記のとおり、折込片8が側壁7bの裏面に貼着される実施例が記載されており、一方、折込片が側面片に貼着しないことに関する具体的な記載は見当たらない。更に、技術常識に照らしても、本件補正後の【請求項1】に記載された容器において、折込片や側面片が貼着されなければ、実用性からみて容器に形成できないから、明示的な記載がなくとも、当然に貼着したものと解し得る。
よって、本件補正後の【請求項1】に、「折込片は、隣接する側面片に重なって」と記載されていても、折込片が側面片に貼着しない形態が新たに導入されたものではない。
したがって、折込片が側面片(側壁)に貼着するか否かに関し、本件補正により、新たな技術的事項が導入されたものではなく、請求人が主張する無効理由1によっては、本件特許発明1ないし8についての特許を無効とすることはできない。

2.無効理由2について
請求人は、本件特許の発明の詳細な説明には、折込片が側面片に「貼着する」形態のみが開示されているのに、本件特許発明1ないし8は、折込片が側面片に「貼着していない」形態等を含むものであるから、発明の詳細な説明に記載したものではない旨主張する。
しかし、「1.無効理由1について」で述べたように、特許請求の範囲には発明を特定するために必要でない事項までを記載する必要はないのであり、技術常識に照らせば、本件特許発明1ないし8において、折込片や側面片が貼着されなければ、実用性からみて容器に形成できないから、明示的な記載がなくとも、当然に貼着したものと解し得る。よって、本件特許発明1ないし8は、折込片が側面片に「貼着していない」形態を含むということはできない。
したがって、本件特許発明1ないし8は、発明の詳細な説明に記載したものではないということはできず、請求人が主張する無効理由2によっては、本件特許発明1ないし8についての特許を無効とすることはできない。

3.無効理由3及び無効理由4について
(1)甲第3号証の記載
甲第3号証には、図面と共に、以下の記載がある。

「【請求項1】
パルプ及びパルプ以外の植物性繊維材料の1種若しくは2種以上から所定の大きさの厚紙状物に形成する工程と、ヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングする工程と、前記厚紙状物の四隅に隣接する側面片を連結する折込片を形成する工程と、このようにして得た厚紙状物を凹凸一対のプレス金型で加熱プレスして食品収納容器若しくは蓋体を形成する工程とを具備し、前記一方の対向する側面片は、他方の対向する側面片よりも先に起立するように構成したことを特徴とする食品収納容器若しくは蓋体の製造方法。
【請求項2】
前記ヒートシール能を有する熱可塑性樹脂を、形成する食品収納容器若しくは蓋体の外周となる前記厚紙状物の片面にコーティングする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記連結する折込片は、折り立てた状態で前記側面片に重合貼着する請求項1又は2記載の製造方法。
…(中略)…
【請求項6】
前記連結する折込片は、略V字形に形成され、V字形の形状で折曲して前記側面片に重合貼着する請求項3記載の製造方法。
【請求項7】
前記略V字形の折込片の上端に切欠部を形成し、該折込片が重合貼着する側面片表面と前記切欠部を挟んだ他方の側の側面片裏面が当接貼着する請求項6記載の製造方法。」

「【0022】
本発明は、下記の工程からなる。
(1)パルプ及びパルプ以外の植物性繊維材料の1種若しくは2種以上から所定の大きさの厚紙状物に形成する。
(2)ヒートシール能を有する熱可塑性樹脂を塗布する。
(3)前記厚紙状物に折り目を形成する。
(4)このようにして得た厚紙状物を凹凸一対のプレス金型で加熱プレスして食品収納容器を形成する。」

「【0027】
第(2)工程のヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングする工程は、第(1)工程の展開形状に切断する前であっても後であってもよいが、この実施例では、展開形状に切断する前にコーティングされている。熱可塑性樹脂は、厚紙状物の表裏の一方に形成するのがよい。両面に塗布すると、現在はコスト的理由で本発明容器の普及を妨げるし、どちらの面にも印刷ができなくなるからである。また、熱可塑性樹脂は、食品収容面(容器表面)にコーティングするのが良い。食品収容面にコーティングするのは、液汁などの浸み込みが防止できるからである。熱可塑性樹脂としては、特にポリエチレン又はポリプロピレンを使用するのが好ましい。」

「【0030】
図1は、本発明の食品収納容器の一実施例を示す斜視図である。尚、説明の便宜上、図1においては、側面片の一部は展開状態となっている。
【0031】
底板1に折り目2a,2b,2c,2dを介して、側壁(側面片)3a,3b,3c,3dが連設されている。隣接する側壁3aと3b,3bと3c,3cと3dとは、折り目5,6を介して、折込片4a,4b,4c,4dで連結されている。
【0032】
折込片4a?4dは、略V字形に形成され、V字形の中央には、折り目7が形成され、容器内方に向けて山形に折曲し得るようになっている。折込片4a?4dは、折り目7を介して長い略V字形折込部8と上端に切欠き9が形成された短い略V字形折込部10に形成されている。
【0033】
上記食品収納容器には。表面にしかヒートシール能を有する熱可塑性樹脂がコーティングされていないので、切欠き9が形成されていないと、長い略V字形折込部8と短い略V字形折込部10とは接着されない。上記実施例では、切欠き9が形成されているので、長い略V字形折込部8の上端と側壁3cとが接着するので、長い略V字形折込部8と短い略V字形折込部10とは固定される。
【0034】
側壁3a,3b,3c上端には、折り目11a,11b,11cを介して、鍔状部分13a,13b,13cが連設され、側壁3dには折り目11dを介して、蓋14が連設されている。
【0035】
図2は、本発明の他の実施例を示すものであり、側壁3aと3b,3bと3cとを連結する折込片4a´,4b´は、略V字形に形成され、V字形の形状で折曲して側面片3a,3c又は3bに重合貼着するようになっている。
【0036】
略V字形の折込片4a´,4b´の上端には切欠部15a,15bが形成され、該折込片が重合貼着する側面片表面と前記切欠部を挟んだ他方の側の側面片裏面が当接貼着するようになっている。」

「【0037】
第(4)工程の凹凸一対の加熱プレス金型で食品収納容器を形成するには、図1及び図2に示す厚紙状物の一方の対向する側面片は、他方の対向する側面片よりも先に起立させ、これを凹金型上に載置し、上から凸金型で押圧加熱プレスして、容器を形成すると同時に、ヒートシールして、食品収納容器を形成する。
【0038】
図1の実施例においては、対向する側面片は、3b,3d(図示せず)を先に起立させなければならない。長い略V字形折込部8に連設した側壁を先に起立させる必要があるからである。これを逆にすると、折込片4a,4bが側面片3bに貼着するので、長い略V字形折込部8と短い略V字形折込部10とは固定されなくなるからである。
【0039】
図2の実施例においては、対向する側面片は、いずれを先に起立させても良いが、起立させ易いことから一対の短い側面片3b,3d(図示せず)を先に起立させるのが好ましい。短い側面片3b,3d(図示せず)を先に起立させると、折込片4a´,4b´は、それぞれ側壁3a,3cに重合貼着するが、長い側面片3a,3cを先に起立させると、折込片4a´,4b´は、いずれも側壁3bに重合貼着する。
【0040】
側面片を紙折機で先に起立させれば、通常のプレス金型で容器を形成することが出来る。」

「【0043】
このようにすると、一方の対向する側面片3b,3d(図示せず)は、他方の対向する側面片3a,3cよりも先に起立するようになるので、完全嵌合させて加熱プレスすることにより、本発明の容器を一工程で製造することができる。尚、図2に示すように、容器凹部の上端縁部の鍔状部分13a´?13d´と凹部17は、凹凸金型で加熱プレスすることにより形成されるようになっている。
【0044】
上端縁部の鍔状部分13a´?13d´を形成するため、図3に示すように、ロッド18,18´は凹部両側端よりもその分離れている。凹部17に段部を形成し、凸金型をこのような凹部に嵌合するような段部を形成した形状とし、凹金型と凸金型とが密接する段部で鍔状部分を形成しても勿論良い。」

図2、及び【0036】の記載より、折込片4a´,4b´は、側面片の隣接する部分よりも短いことが認められる。また、図2より、V字形の折込片4a´,4b´の先端は、容器底面に達していることが見て取れる。
更に、図1に、容器上端部に鍔状部を形成した容器が記載され、図2に、側壁3a,3b,3c上端の、折込片4a´,4b´と対応する高さ位置に、折り目を示すと解し得る実線が記載され、【0043】には、図面と符号が整合しないものの、「図2に示すように、容器凹部の上端縁部の鍔状部分13a´?13d´」との記載があることから、図2の実施例の容器も、上端部に鍔状部を形成したものと認められる。
よって、甲第3号証には、図2に対応する発明として、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。

「パルプ及びパルプ以外の植物性繊維材料から形成した厚紙状物の表裏の一方にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングし、前記厚紙状物の四隅に隣接する側面片を連結する隣接する部分よりも短いV字形に形成された折込片を形成し、V字形の折込片の先端は、容器底面に達しており、前記厚紙状物を凹凸一対のプレス金型で加熱プレスして食品収納容器を形成し、一方の対向する側面片は、他方の対向する側面片よりも先に起立するように構成し、折込片の上端に切欠部を形成し、該折込片が重合貼着する側面片表面と前記切欠部を挟んだ他方の側の側面片裏面が当接貼着し、食品収容容器上端部に鍔状部を形成した食品収容容器。」

(2)本件特許発明1について
ア.本件特許発明1と甲3発明との対比
甲3発明の「パルプ及びパルプ以外の植物性繊維材料」は、パルプを主成分とする植物性繊維材料であるから、本件特許明細書(甲第9号証)の【0005】の記載も考慮すると、本件特許発明1の「パルプ材料」に相当する。甲3発明の「厚紙状物の四隅に隣接する側面片を連結する隣接する部分よりも短いV字形に形成された折込片を形成」することは、本件特許発明1の「厚紙状物の四隅に形成した隣接する側面片を連結する隣接する部分よりも短い折込片とを具備」することに相当する。甲3発明は、「厚紙状物を凹凸一対のプレス金型で加熱プレスして食品収納容器を形成」し、「折込片が重合貼着する側面片表面と前記切欠部を挟んだ他方の側の側面片裏面が当接貼着する」のであるから、甲3発明は、「前記折込片は凹凸一対のプレス金型で加熱プレスして、隣接する側面片に重なって四隅に側面片の重合部を形成し」の点でも、本件特許発明1と一致する。
よって、本件特許発明1と甲3発明との一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「パルプ材料から形成した厚紙状物と、該厚紙状物の四隅に形成した隣接する側面片を連結する隣接する部分よりも短い折込片とを具備し、前記厚紙状物の一方の対向する側面片は、他方の対向する側面片より先に起立させ、前記折込片は凹凸一対のプレス金型で加熱プレスして、隣接する側面片に重なって四隅に側面片の重合部を形成し、食品収容容器上端部に鍔状部を形成した食品収容容器。」
[相違点1]
鍔状部を形成する態様について、本件特許発明1が、「外方に折り返して」及び「前記側面片の重合部の前記短い折込片よりも上の部分を折り返えすことにより」と特定しているのに対し、甲3発明は、このような特定が無い点。
[相違点2]
本件特許発明1が、「ラッピングして容器開口部を覆うことができる」ことを特定しているのに対し、甲3発明は、このような特定が無い点。

イ.判断
(ア)相違点1について
甲第3号証には、図1の実施例について、側壁3a,3b,3c上端に、折り目11a,11b,11cを介して、鍔状部分13a,13b,13cを形成したものが記載されている。該鍔状部分は、折込片よりも上の部分を外方に折り返して形成されている。また、図2には、側壁3a,3b,3c上端の、折込片4a´,4b´と対応する高さ位置に、折り目を示すと解し得る実線が記載されている。よって、甲3発明において、側面片の折込片よりも上の部分を外方に折ることにより鍔状部を形成することが、甲第3号証に示唆されているといえる。そして、上記「側面片の折込片よりも上の部分を外方に折ること」は、本件特許発明1の「外方に折り返して」及び「前記側面片の重合部の前記短い折込片よりも上の部分を折り返えすこと」に相当する。
よって、甲3発明において、相違点1に係る本件特許発明1の構成を採用することは、甲第3号証の記載に基いて、当業者が容易に想到しえたことである。
被請求人は、平成25年2月15日付け口頭審理陳述要領書において、水平に折り返したのでは、ラッピングして容器開口部を覆う容器とはならないことは明細書の記載から明らかであるから、「折り返す」というのは下方に向けて折り返す意味に解釈できると主張する。
しかし、下面が開口した断面半多角形状ないし断面コ字形の鍔状部については、別途本件特許発明3及び6に特定されていることから、本件特許発明1の鍔状部が、上記形状の鍔状部を意味すると解することはできない。
また、本件特許明細書(甲第9号証)には、
「また、請求項3に記載の発明は、上記目的に加えて、パルプ材料からなる厚紙状物から形成した食品収納容器の開口部を、自動機械でラッピングして覆っても変形し難くした食品収納容器を提供することを目的とする。」(【0009】)、
「更に、鍔状部を断面半多角形状に形成することによって、自動機械でラッピングして開口部をフイルムで覆っても変形し難くなるという事実を見出し、請求項3に記載の本発明に到達した。食品収納容器の内面に熱可塑性樹脂フィルムをラミネートすると更に変形し難くなる。」(【0010】)、
「また、鍔状部を断面コ字形のような角部を有する形状とすることにより、鍔状部角部と鍔状部先端の両方でラッピングフイルムを保持し得るから変形し難くなると考えられている。熱可塑性樹脂フィルムをラミネートすると、更に容器の変形が効果的に防止される。」(【0016】)、
と記載されており、本件特許発明3が、鍔状部を断面半多角形状に形成するとの構成を備えることにより、自動機械でラッピングしても変形し難いことが記載されているものの、鍔状部を下方に向けて折り返して形成すれば、ラッピングして容器開口部を覆う容器となし得る旨の記載は無い。
よって、上記請求人の主張は採用できない。

(イ)相違点2について
食品収納容器をラッピングして容器開口部を覆うことは周知であり(例えば、甲第5号証【0002】、【0024】、甲第7号証3頁中程「ラッピングに耐える強度があります。」との記載参照。)、甲3発明も食品収容容器である以上、その開口部をラッピングして覆う場合のあることは普通に想定されることである。そして、甲3発明に、相違点1に係る鍔状部を形成した場合であっても、容器を形成する厚紙状物の厚さや、ラッピング時に加わる力を加減する等して、開口部をラッピングして覆うことに不都合は無いから、甲3発明に上記周知技術を適用できない理由は無い。
よって、甲3発明に、上記周知技術を採用し、相違点2に係る本件特許発明1の構成となすことは、当業者が容易に想到しえたことである。

そして、本件特許発明1が、甲3発明及び周知技術から予測できない格別顕著な効果を奏するものとも認められない。

(ウ)小括
したがって、本件特許発明1は、甲3発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(3)本件特許発明2について
ア.本件特許発明2と甲3発明との対比
本件特許発明2は、本件特許発明1に、さらに「前記厚紙状物の裏面にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングし、前記折込片は、隣接する側面片に重なって、隣接する一方の側面片裏面と他方の側面片表面とが貼着する」との発明特定事項を付加したものである。
このことを踏まえ、本件特許発明2と甲3発明とを対比する。
甲3発明は、「折込片が重合貼着する側面片表面と前記切欠部を挟んだ他方の側の側面片裏面が当接貼着する」のであるから、「前記折込片は、隣接する側面片に重なって、隣接する一方の側面片裏面と他方の側面片表面とが貼着する」点は、本件特許発明2と甲3発明との一致点である。
よって、本件特許発明2と甲3発明とは、前記「(2)ア.」に示す相違点1、相違点2で相違し、更に次の点で相違している。
[相違点3]
本件特許発明2は「厚紙状物の裏面にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティング」しているのに対し、甲3発明は、「厚紙状物の表裏の一方にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティング」している点。

イ.判断
相違点1及び相違点2についての判断は、前記「(2)イ.」の(ア)及び(イ)に示したとおりであり、いずれも当業者が容易に想到し得たものである。
相違点3について、甲3発明の「表裏の一方」と二者択一形式で特定した内の一方を選択することは、当業者が容易になし得ることであるから、裏面を選択することにより、相違点3に係る本件特許発明1の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件特許発明2が、甲3発明及び周知技術から予測できない格別顕著な効果を奏するものとも認められない。
したがって、本件特許発明2は、甲3発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(4)本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1ないし3のいずれかに、さらに「前記折込片は、V字形に形成されている」との発明特定事項を付加したものであるところ、甲3発明は、「V字形に形成された折込片」を備えているから、上記「前記折込片は、V字形に形成されている」点は、本件特許発明4と甲3発明との一致点である。
よって、本件特許発明4と甲3発明とは、前記「(2)ア.」に示す相違点1、相違点2で相違し、他に相違点は無い。
そして、相違点1及び相違点2についての判断は、前記「(2)イ.」の(ア)及び(イ)に示したとおりであり、いずれも当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、本件特許発明4は、甲3発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(5)本件特許発明5について
本件特許発明5は、本件特許発明4に、さらに「前記V字形の折込片先端は、形成する容器底面に達している」との発明特定事項を付加したものであるところ、甲3発明は、「V字形の折込片の先端は、容器底面に達しており」との構成を備えているから、上記「前記V字形の折込片先端は、形成する容器底面に達している」点は、本件特許発明5と甲3発明との一致点である。
よって、上記(4)で検討した本件特許発明4と甲3発明との相違点も考慮すると、本件特許発明5と甲3発明とは、前記「(2)ア.」に示す相違点1、相違点2で相違し、他に相違点は無い。
そして、相違点1及び相違点2についての判断は、前記「(2)イ.」の(ア)及び(イ)に示したとおりであり、いずれも当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、本件特許発明5は、甲3発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(6)本件特許発明8について
ア.本件特許発明8と甲3発明との対比
本件特許発明8は、本件特許発明1ないし7のいずれかに、さらに「前記厚紙状物は、230g?320g/m^(2)となる厚さである」との発明特定事項を付加したものである。
このことを踏まえ、本件特許発明8と甲3発明とを対比すると、本件特許発明8と甲3発明とは、前記「(2)ア.」に示す相違点1、相違点2で相違し、更に次の点で相違している。
[相違点4]
本件特許発明8は「厚紙状物は、230g?320g/m^(2)となる厚さである」のに対し、甲3発明は、厚紙状物の厚さの特定がなされていない点。

イ.判断
相違点1及び相違点2についての判断は、前記「(2)イ.」の(ア)及び(イ)に示したとおりであり、いずれも当業者が容易に想到し得たものである。
相違点4について検討する。
甲3発明において、厚紙状物の厚さが容器の強度や重量に影響することは明らかであって、所望の容器性状に応じて厚紙状物の厚さを選択することは、当業者が普通になすべき設計事項である。そして、甲第7号証に示される紙製容器の厚さを概算すると、例えば14頁に示される「CT-1 クリーントレーNo.1」では、170?280g/m^(2)程度(16.5×10×1.5cm及び13.5×6.5×1.5cmの直方体状容器とみなして算出した概算値の幅)であり、16頁に示される「T-7D デラックスプレートNo.7」では、270g/m^(2)程度(φ18cmの円盤とみなして算出した概算値)であることから、「230g?320g/m^(2)となる厚さ」は、当業者が普通に採用し得た範囲内の値であるといえる。
よって、相違点4に係る本件特許発明8の構成は、当業者が容易になし得た設計事項にすぎない。
そして、本件特許発明8が、甲3発明及び周知技術から予測できない格別顕著な効果を奏するものとも認められない。
したがって、本件特許発明8は、甲3発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(7)小括
本件特許発明1、2、4、5及び8についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求人が主張する無効理由4により、無効とすべきものである。

4.無効理由5について
(1)本件特許発明3について
ア.甲3発明に基づく進歩性の有無について
(ア)本件特許発明3と甲3発明との対比
本件特許発明3は、本件特許発明1又は2に、さらに「該鍔状部を下面が開口した断面半多角形状に形成する」との発明特定事項を付加したものである。
このことを踏まえ、本件特許発明3と甲3発明とを対比すると、本件特許発明3と甲3発明とは、前記「3.(2)ア.」に示す相違点1、相違点2で相違し、更に次の点で相違している。
[相違点5]
本件特許発明3は「鍔状部を下面が開口した断面半多角形状に形成する」ことを特定しているのに対し、甲3発明は、このような特定が無い点。

(イ)判断
相違点1及び相違点2についての判断は、前記「3.(2)イ.」の(ア)及び(イ)に示したとおりであり、いずれも当業者が容易に想到し得たものである。
相違点5について検討する。
甲第5号証には、パルプモールド製のトレイについて、鍔状部を逆U形ないし断面コ字形に形成することが記載されている(【0020】、【図1】、【図4】)。
しかしながら、甲3発明は、パルプモールド製のトレイではなく、厚紙状物を凹凸一対のプレス金型で加熱プレスして形成した食品収納容器であるから、甲3発明と甲第5号証の上記技術とは、前提とする容器が相違する。そして、甲第3号証の【図2】も参照すれば、「厚紙状物の四隅に隣接する側面片を連結する隣接する部分よりも短いV字形に形成された折込片を形成し」、「折込片の上端に切欠部を形成し、該折込片が重合貼着する側面片表面と前記切欠部を挟んだ他方の側の側面片裏面が当接貼着する食品収容容器」との構成を備える甲3発明において、食品収容容器上端部を外方に折り返して鍔状部を形成しようとすれば、鍔状部を形成する部分の厚紙状物が四隅において引き伸ばされることが明らかであり、上記鍔状部を形成する部分の幅を大きくすると、引き伸ばされる程度も大きくなることから、当業者は、当該幅をあまり大きくすることには構造上無理があると考えると認められる。そうすると、仮に、鍔状部を逆U形ないし断面コ字形に形成しようとすれば、上記鍔状部を形成する部分の幅を、甲第3号証の【図2】に示されるものに比べて大きくしなければならないのであるから、そのようなことを当業者が容易に想到し得たということはできない。よって、パルプモールド製のトレイにおいて、鍔状部を逆U形ないし断面コ字形に形成することが知られていたことを考慮しても、甲3発明において、鍔状部を逆U形ないし断面コ字形に形成することを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
請求人は、平成24年7月30日付け手続補正書で補正された審判請求書(同手続補正書27頁15行?21行)において、甲第5号証より、パルプモールド製のトレイに限らず、鍔状部を断面コ字型に形成することが周知技術であると主張しているとも解され、また、平成25年2月15日付け口頭審理陳述要領書(6頁11行?18行)において、甲第5号証の周知技術を、ラッピング等に耐え得るように強度を上げるという課題を解決するために、甲第5号証に記載されたパルプモールド製トレイと同じ技術分野に係る食品等を包装するトレイである甲3発明に適用することは、当業者にとって容易である旨を主張する。
しかし、上記のとおり、当業者は、甲3発明に逆U形ないし断面コ字形の鍔状部を適用することには構造上無理があると考えるのであるから、鍔状部を断面コ字型に形成すること自体が周知であって、課題や技術分野の共通性を考慮したとしても、上記適用が当業者にとって容易であるとはいえず、請求人の主張は採用できない。
よって、相違点5に係る本件特許発明3の構成は、甲第5号証の技術事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件特許発明3は、甲3発明に、甲第5号証に記載された周知技術を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

イ.甲第4号証に記載された発明に基づく進歩性の有無について
(ア)甲第4号証の記載
甲第4号証には、図面と共に、以下の記載がある。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食品等の包装に用いられる包装用トレイに関する。」

「【0016】本発明の包装用トレイは、厚紙等からなる所望のカートンを折り畳んで成形したトレイであり、例えば食品等を収容した状態で電子レンジによる加熱調理に対応できるようにする場合には、厚紙片の一方の面(内面)にポリ塩化ビニリデン等の耐熱性のプラスチックフィルムをラミネートし、他方の面(外面)に所望の印刷を施したカートンが用いられる。
【0017】本発明の包装用トレイの一例を図1乃至図3に示す。図1は、包装用トレイの展開図、図2は、組み立て状態を示す斜視図、図3は、図2中のA部分を詳細に表した2方向の側面図である。
【0018】本例のカートンは、図1に示すように、方形状の底壁1の四方の端縁に折り目線2,3を介してそれぞれ側壁4,5を設け、隣り合う側壁4,5の端縁間に折り目線16,17を介して折込壁6を設けている。この折込壁6は、中折れ線15を介して折り畳み自在に形成されている。
【0019】側壁4,5の外縁には、折り目線7,8を介してそれぞれフランジ片9,10を設けている。長辺側のフランジ片9には、折り目線11を介して折返片12が設けられており、この折返片12の両端には扇状の接合片13が形成されている。一方、短辺側のフランジ片10には、その両端に扇状の接合片14が形成されている。
【0020】上記のように形成したカートンを組み立てて包装用トレイを製造するには、折り目線3,4,7,8,11,16,17及び中折れ線15を介してそれぞれ側壁4,5、フランジ片9,10、折返片12及び折込壁6を折り曲げる。そして、折返片12をフランジ片9の下面に、折込壁6を側壁5の外面に固着すると共に、隣り合う折返片12の接合片13とフランジ片10の接合片14を固着することにより、図2に示すようなトレイとなる。
【0021】この時、接合片13を下に接合片14を上にして重ね合わせて固着することにより、図3に示すように、フランジ片9と折返片12とによって構成される二重壁構造のフランジ21の上面と、フランジ片10によって構成されるフランジ22の上面を面一とし、フランジ全周に渡って段差を無くすることができ、別途の蓋部材をフランジ上面にヒートシール等によって固着する際に高い密封性が得られる。
【0022】上記各部の固着方法は特に限定されるものではなく、カートン材料に応じて、例えばヒートシール、コールドグルー、ホットメルト、その他接着剤等による方法を適宜選択して用いることができる。」

「【0033】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の包装用トレイによれば、フランジ片9と折返片12とによって二重壁構造を有する一対のフランジ21と、フランジ片10によって構成される単層の他の一対のフランジ22とを、接合片13を下に接合片14を上にして重ね合わせて固着したことにより、フランジ全周に渡って段差を無くすることができ、別途の蓋部材をフランジ上面にヒートシール等によって固着する際に高い密封性を確保することができる。」

これらの記載によれば、甲第4号証には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。

「厚紙と、厚紙の四隅に形成した隣接する側壁4、5を連結する隣接する部分よりも短い折込壁6とを具備し、前記折込壁6は隣接する側壁5に重なって、包装用トレイ上端部を外方に折り返して鍔状部を形成するに際し、前記側壁4、5の前記短い折込壁6よりも上の部分を折り返えすことにより形成した食品等の包装に用いられる包装用トレイ。」

(イ)本件特許発明3と甲4発明との対比
本件特許発明3は、本件特許発明1又は2に、さらに「該鍔状部を下面が開口した断面半多角形状に形成する」との発明特定事項を付加したものである。このことを踏まえ、本件特許発明3と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「厚紙」、「側壁」、「折込壁」、「食品等の包装に用いられる包装用トレイ」は、それぞれ、本件特許発明3の「パルプ材料から形成した厚紙状物」、「側面片」、「折込片」、「食品収容容器」に相当する。

よって、本件特許発明3と甲4発明との一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「パルプ材料から形成した厚紙状物と、該厚紙状物の四隅に形成した隣接する側面片を連結する隣接する部分よりも短い折込片とを具備し、前記折込片は隣接する側面片に重なって、食品収容容器上端部を外方に折り返して鍔状部を形成するに際し、前記側面片の前記短い折込片よりも上の部分を折り返えすことにより形成した食品収容容器。」
[相違点A]
本件特許発明3が、「前記厚紙状物の一方の対向する側面片は、他方の対向する側面片より先に起立させ」ることを特定しているのに対し、甲4発明は、このような特定が無い点。
[相違点B]
本件特許発明3が、「折込片は凹凸一対のプレス金型で加熱プレスして、隣接する側面片に重なって四隅に側面片の重合部を形成」することを特定しているのに対し、甲4発明は、このような特定が無い点。
[相違点C]
本件特許発明3が、「ラッピングして容器開口部を覆うことができる」ことを特定しているのに対し、甲4発明は、このような特定が無い点。
[相違点D]
本件特許発明3は「鍔状部を下面が開口した断面半多角形状に形成する」ことを特定しているのに対し、甲4発明は、このような特定が無い点。

(ウ)判断
甲4発明の鍔状部に関し、甲第4号証の【0020】、【0021】には、折返片12をフランジ片9の下面に固着すると共に、隣り合う折返片12の接合片13とフランジ片10の接合片14を固着することによって形成されることが記載され、同号証の【0033】には、上記鍔状部の構造に基づき、フランジ全周に渡って段差を無くすとの効果を得ることが記載されている。
このことを前提に、まず、相違点Bについて検討すると、甲第4号証には、凹凸一対のプレス金型で加熱プレスすることについて示唆するところは無いし、仮に、凹凸一対のプレス金型で加熱プレスして容器を形成することが周知技術であったとしても、この周知技術を適用して甲4発明の容器を形成するに際して、甲第4号証に記載された上記構造の鍔状部を如何に形成できるかが理解できない。
よって、甲4発明に、凹凸一対のプレス金型で加熱プレスするとの技術事項を適用して、相違点Bに係る本件特許発明3の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
次に、相違点Dについて検討すると、甲第4号証には、鍔状部を下面が開口した断面半多角形状に形成する旨の示唆は無いし、甲第5号証によりパルプモールド製のトレイにおいて、鍔状部を逆U形ないし断面コ字形に形成することが知られていたとしても、そのような鍔状部を採用すると、甲第4号証に記載された上記効果が期待できなくなる。
よって、甲4発明に、相違点Dに係る本件特許発明3の構成を採用することは、甲第5号証の技術事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、本件特許発明3は、甲4発明に、甲第5号証に記載された周知技術を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(2)本件特許発明6について
ア.甲3発明に基づく進歩性の有無について
(ア)本件特許発明6と甲3発明との対比
本件特許発明6は、本件特許発明1ないし5のいずれかに、さらに「前記鍔状部は、断面コ字形に形成されている」との発明特定事項を付加したものである。
このことを踏まえ、本件特許発明6と甲3発明とを対比すると、本件特許発明6と甲3発明とは、前記「3.(2)ア.」に示す相違点1、相違点2で相違し、更に次の点で相違している。
[相違点6]
本件特許発明6は「鍔状部は、断面コ字形に形成されている」ことを特定しているのに対し、甲3発明は、このような特定が無い点。

(イ)判断
相違点1及び相違点2についての判断は、前記「3.(2)イ.」の(ア)及び(イ)に示したとおりであり、いずれも当業者が容易に想到し得たものである。
相違点6について検討する。
甲第5号証により、パルプモールド製のトレイにおいて、鍔状部を逆U形ないし断面コ字形に形成することが知られていたことを考慮しても、甲3発明において、鍔状部を逆U形ないし断面コ字形に形成することを、当業者が容易に想到し得たとはいえないことは、前記「(1)ア.(イ)」に示したとおりである。
よって、相違点6に係る本件特許発明6の構成は、甲第5号証の技術事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件特許発明6は、甲3発明に、甲第5号証に記載された周知技術を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

イ.甲第4号証に記載された発明に基づく進歩性の有無について
(ア)本件特許発明6と甲4発明との対比
本件特許発明6は、本件特許発明1ないし5のいずれかに、さらに「前記鍔状部は、断面コ字形に形成されている」との発明特定事項を付加したものであることを踏まえ、前記「(1)イ.」の(ア)及び(イ)における指摘事項も考慮して本件特許発明6と甲4発明とを対比すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「パルプ材料から形成した厚紙状物と、該厚紙状物の四隅に形成した隣接する側面片を連結する隣接する部分よりも短い折込片とを具備し、前記折込片は隣接する側面片に重なって、食品収容容器上端部を外方に折り返して鍔状部を形成するに際し、前記側面片の前記短い折込片よりも上の部分を折り返えすことにより形成した食品収容容器。」
[相違点A’]
本件特許発明6が、「前記厚紙状物の一方の対向する側面片は、他方の対向する側面片より先に起立させ」ることを特定しているのに対し、甲4発明は、このような特定が無い点。
[相違点B’]
本件特許発明6が、「折込片は凹凸一対のプレス金型で加熱プレスして、隣接する側面片に重なって四隅に側面片の重合部を形成」することを特定しているのに対し、甲4発明は、このような特定が無い点。
[相違点C’]
本件特許発明6が、「ラッピングして容器開口部を覆うことができる」ことを特定しているのに対し、甲4発明は、このような特定が無い点。
[相違点D’]
本件特許発明6は「鍔状部は、断面コ字形に形成されている」ことを特定しているのに対し、甲4発明は、このような特定が無い点。

(イ)判断
前記「(1)イ.(ウ)」に示したのと同様の理由により、甲4発明に、凹凸一対のプレス金型で加熱プレスするとの技術事項を適用すること、及び、甲第5号証に示された断面コ字形の鍔状部を採用することは、いずれも当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、相違点B’及び相違点D’に係る本件特許発明6の構成は、いずれも当業者が容易に想到し得たものとはいえず、本件特許発明6は、甲4発明に、甲第5号証に記載された周知技術を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3)小括
本件特許発明3及び6は、甲3発明、甲4発明に、甲第5号証に記載された周知技術を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
よって、請求人が主張する無効理由5によっては、本件特許発明3及び6についての特許を無効とすることはできない。

5.無効理由6について
(1)本件特許発明7と甲3発明との対比
本件特許発明7は、本件特許発明1ないし6のいずれかに、さらに「前記食品収納容器の内面に、熱ラミネートした熱可塑性樹脂フィルムを具備する」との発明特定事項を付加したものである。
このことを踏まえ、本件特許発明7と甲3発明とを対比すると、本件特許発明7と甲3発明とは、前記「3.(2)ア.」に示す相違点1、相違点2で相違し、更に次の点で相違している。
[相違点7]
本件特許発明7は「食品収納容器の内面に、熱ラミネートした熱可塑性樹脂フィルムを具備する」のに対し、甲3発明は、このようなフィルムを具備しない点。

(2)判断
相違点1及び相違点2についての判断は、前記「3.(2)イ.」の(ア)及び(イ)に示したとおりであり、いずれも当業者が容易に想到し得たものである。
相違点7について検討する。
紙容器の内面に熱可塑性樹脂層をラミネートすることは、例えば甲第6号証(【0017】、【0021】)に示されるように周知である。そして、甲第3号証には、「熱可塑性樹脂は、食品収容面(容器表面)にコーティングするのが良い。食品収容面にコーティングするのは、液汁などの浸み込みが防止できるからである。」(【0027】)と記載され、食品収納容器の内面に熱可塑性樹脂をコーティングすることが記載されているから、かかる熱可塑性樹脂をコーティングすることに代えてラミネートすることは、上記周知技術を採用して当業者が容易になし得たことである。
そして、本件特許発明7が、甲3発明及び周知技術から予測できない格別顕著な効果を奏するものとも認められない。
したがって、本件特許発明7は、甲3発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明7についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、請求人が主張する無効理由6により、無効とすべきものである。

6.無効理由7について
請求人は、請求項7の「請求項?6」が何を示すのか明確でない旨を主張するが、前記「第4」のとおり、本件訂正が認められ、本件特許発明7は、前記「第5」の【請求項7】に示すとおりのものとなったから、上記請求人が主張するような不明確な点は無い。
したがって、本件特許発明7についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできず、請求人が主張する無効理由7によっては、本件特許発明7についての特許を無効とすることはできない。

第7 結び
本件特許発明1、2、4、5及び8についての特許は、請求人が主張する無効理由4により、本件特許発明7についての特許は、請求人が主張する無効理由6により、無効とすべきものである。
また、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては本件特許発明3及び6についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第64条の規定により、その8分の2を請求人が負担し、8分の6を被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
食品収納容器
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ材料から形成した厚紙状物と、該厚紙状物の四隅に形成した隣接する側面片を連結する隣接する部分よりも短い折込片とを具備し、前記厚紙状物の一方の対向する側面片は、他方の対向する側面片より先に起立させ、前記折込片は凹凸一対のプレス金型で加熱プレスして、隣接する側面片に重なって四隅に側面片の重合部を形成し、食品収容容器上端部を外方に折り返して鍔状部を形成するに際し、前記側面片の重合部の前記短い折込片よりも上の部分を折り返すことにより形成したことを特徴とするラッピングして容器開口部を覆うことができる食品収容容器。
【請求項2】
前記厚紙状物の裏面にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングし、前記折込片は、隣接する側面片に重なって、隣接する一方の側面片裏面と他方の側面片表面とが貼着する請求項1に記載の食品収容容器。
【請求項3】
該鍔状部を下面が開口した断面半多角形状に形成する請求項1又は2記載の食品収容容器。
【請求項4】
前記折込片は、V字形に形成されている請求項1?3のいずれかに記載の食品収容容器。
【請求項5】
前記V字形の折込片先端は、形成する容器底面に達している請求項4に記載の食品収容容器。
【請求項6】
前記鍔状部は、断面コ字形に形成されている請求項1?5のいずれかに記載の食品収容容器。
【請求項7】
前記食品収納容器の内面に、熱ラミネートした熱可塑性樹脂フィルムを具備する請求項1?6のいずれかに記載の食品収容容器。
【請求項8】
前記厚紙状物は、230g?320g/m2となる厚さである請求項1?7のいずれかに記載の食品収容容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パルプ材料から形成されたラッピングして容器開口部を覆うことができる食品収納容器に係り、詳記すれば肉、魚、レバー等を収容し、フイルムでラッピングして容器開口部を覆っても容器が変形しないようにした食品収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を収容するトレー等の食品収納容器としては、従来から発泡ポリウレタン等のプラスチック材料が使用されていた。しかしながら、プラスチック材料は使用後の後処理が容易ではないので、環境保全の観点から植物性繊維材料製食品収納容器が強く求められている。
【0003】
パルプの厚紙からの容器は、四隅に切込みを形成し、側面片を起立させ、コーナー部で側面片の端部同士を重ね合わせて糊付けをし、手作業で貼り合わせる方法で製造しているので、極めてコスト高になる欠点があった。そのため、スーパー等で販売される安価なトレーのような食品収納容器としては、殆ど普及していない。
【0004】
また、コーナー部に多数の皴をジャバラ状に形成し、表面にフィルムをコーティングした紙製容器も知られていたが、このジャバラは容易に開くので、強度が弱い問題があった。
【0005】
このような問題を解決するため本出願人は、パルプ材料(パルプ又はパルプを主成分とする植物性繊維材料)から厚紙状物を形成する工程と、前記厚紙状物の裏面にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングする工程と、前記厚紙状物の四隅に側面片を形成する切断部を形成する工程と、このようにして得た厚紙状物を凹凸一対のプレス金型で加熱プレスして四隅に側面片の重合部を有する食品収納容器を開発し、先に特許出願した(特許文献1)。
【0006】
更に本出願人は、パルプ材料から所定の大きさの厚紙状物に形成する工程と、前記厚紙状物の裏面にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングする工程と、前記厚紙状物の四隅に隣接する側面片を連結する折込片を形成する工程と、このようにして得た厚紙状物を凹凸一対のプレス金型で加熱プレスして折込片を側面片に重合貼着する食品収納容器を開発し、先に特許出願した(特許文献2)。
【0007】
しかしながら、上記容器上端を折り返して鍔状部を形成すると、皺が多く生じたり破けたりする場合が生じ、綺麗な鍔状部が形成できなかった。そればかりか、上記容器はいずれもパルプ材料から形成されているので、強度が弱いことから、自動機械でラッピングして開口部をフイルムで覆うと容器が変形する問題があった。容器上端に断面半円状の鍔状部を連設しても容器の変形を避けることはできなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2006-315687
【特許文献2】特開2007-1621
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、このような点に鑑みなされたものであり、請求項1に記載の発明は、商品価値のある綺麗な鍔状部を形成できる食品収納容器を提供することを目的とする。
また、請求項3に記載の発明は、上記目的に加えて、パルプ材料からなる厚紙状物から形成した食品収納容器の開口部を、自動機械でラッピングして覆っても変形し難くした食品収納容器を提供することを目的とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明者は、鋭意研究の結果、隣接する側面片を連結する隣接する部分よりも短い折込片を形成し、該折込片は、隣接する側面片に重なって食品収容容器上端部を外方に折り返して鍔状部を形成するに際し、前記短いV字形の折込片よりも上の部分を折り返えすことにより形成した鍔状部は、皺が無く、綺麗に形成できることを見出し本発明に到達した。
更に、鍔状部を断面半多角形状に形成することによって、自動機械でラッピングして開口部をフイルムで覆っても変形し難くなるという事実を見出し、請求項3に記載の本発明に到達した。食品収納容器の内面に熱可塑性樹脂フィルムをラミネートすると更に変形し難くなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち請求項1に記載の本発明は、パルプ材料から形成した厚紙状物と、該厚紙状物の四隅に形成した隣接する側面片を連結する隣接する部分よりも短い折込片とを具備し、前記厚紙状物の一方の対向する側面片は、他方の対向する側面片より先に起立させ、前記折込片は凹凸一対のプレス金型で加熱プレスして、隣接する側面片に重なって四隅に側面片の重合部を形成し、食品収容容器上端部を外方に折り返して鍔状部を形成するに際し、前記側面片の重合部の前記短い折込片よりも上の部分を折り返えしたことを特徴とする。
前記厚紙状物の裏面にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングし、前記折込片は、隣接する側面片に重なって、隣接する一方の側面片裏面と他方の側面片表面とが貼着することにより、裏面のみコーティングして食品収容容器が形成できる(請求項2)。
裏面を熱可塑性樹脂でコーティングするのは、食品収納容器を容易に形成できることと、外面も防水・防油性となり、色が着いても落とせるので、容器が汚れ難くなることから好ましい。
【0012】
前記鍔状部を下面が開口した断面半多角形状に形成すると、自動機械でラッピングして覆っても変形し難くした食品収納容器とすることができる(請求項3)。前記折込片は、V字形に形成するのが好ましく(請求項4)、前記V字形の折込片先端は、形成する容器底面に達しているのが好ましい(請求項5)。
前記鍔状部は、断面コ字形に形成するのが容易に形成できることから好ましい(請求項6)。尚、コ字形とは、開口部に向けて先細若しくは拡開した形状も含む意味である。
【0013】
前記食品収納容器の内面に、熱ラミネートした熱可塑性樹脂フィルムを貼ることにより更に変形し難くなる(請求項7)。また前記厚紙状物は、230g?320g/m2となる厚さとするのがコスト的理由から好ましい(請求項8)。
【0014】
前記パルプ材料としては、パルプ単体のほか、パルプとパルプ以外の植物性繊維材料(葦、サトウキビ又はケナフ等)との混合物を使用することもできる。尚、パルプの材料として、新聞紙などの古紙を使用してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、隣接する側面片を連結する隣接する部分よりも短い折込片を形成し、該折込片は、隣接する一方の側面片に重なって食品収容容器上端部を外方に折り返して鍔状部を形成するに際し、前記短い折込片よりも上の部分を折り返えすことにより形成しているので、皺がない綺麗な鍔状部を形成できる。
また、該鍔状部を下面が開口した断面半多角形状に形成すれば、パルプ材料からなる容器の開口部を自動機械でラッピングして上面をフイルムで覆っても、容器が変形し難いので、従来トレー等として使用されていなかったパルプ材料からトレーを形成できるから、プラスチックトレーと比較して廃棄処理が容易になるという絶大な効果を奏する。
【0016】
本発明の効果の原因は、前記短いV字形の折込片よりも上の部分を折り返えすことにより二重の部分を折り返すので綺麗な鍔状部を形成できる。
また、鍔状部を断面コ字形のような角部を有する形状とすることにより、鍔状部角部と鍔状部先端の両方でラッピングフイルムを保持し得るから変形し難くなると考えられている。熱可塑性樹脂フィルムをラミネートすると、更に容器の変形が効果的に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
本発明の容器を製造するには、まず、パルプ材料(パルプ又はパルプを主成分とする材料)から食品収納容器を形成する。
パルプ材料から食品収納容器を形成するには、パルプ材料から所定の大きさの厚紙状物に形成し、裏面にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂を塗布し、前記厚紙状物の四隅に側面片を形成する切断部を形成した厚紙状物を、凹凸一対のプレス金型で加熱プレスすれば良い。プレス金型でプレスするには、対向する一方の側面片は、先に起立させなければならない。
【0019】
図1は、この目的に使用する金型の一例を示すものであり、金型凹部1の周縁の一方の対向部には、ロッド2,2´が固定されている。先に起立させる側面片は、このロッド2,2´上に載せるようにすれば良い。
【0020】
パルプ材料から厚紙状物を製造するには公知の方法によって行えば良い。即ち、パルプ材料を水に懸濁させたものを、すき工程、みず切り工程及び乾燥工程を経て、厚紙状物とすればよい。このようにして得た厚紙状物は、形成しようとする容器若しくは蓋体の展開形状に切断する。尚、厚紙状物には、耐水剤を含有させるのが良い。尚、バージンパルプの代わりに古新聞紙のような古紙からのパルプを使用することもできる。
【0021】
本発明にパルプと共に使用する植物性繊維材料としては、葦、サトウキビ又はケナフを使用することができるが、バージンパルプ単独若しくは古紙からのパルプ単独とするのが、前者が強度と衛生面の点から、後者が価格の点から好ましい。
【0022】
ヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングする工程は、展開形状に切断する前であっても後であってもよい。熱可塑性樹脂は、厚紙状物の裏面にコーティングするのがよい。熱可塑性樹脂をコーティングするのは、金型で容器に容易に形成できると共に、水分、血液、液汁などの浸み込みが防止できるからである。熱可塑性樹脂としては、特にポリエチレン又はポリプロピレンを使用するのが好ましい。
【0023】
熱可塑性樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂の種類によっても異なるが、好ましくは、3%?6%の含有量とするのが良い。これより少ないとコーティングの効果が十分得られないし、多すぎると焼却の際黒煙の出が多くなり、炉のフィルターを詰まらせる。ここで「含有量」というのは、熱可塑性樹脂を片面に塗布した厚紙状物の全質量に対する「塗布されたヒートシール剤の質量」の百分率である。
【0024】
このようにして形成した厚紙状物には、四隅に側面片を連結する折込片を形成する。折込片先端は、形成する容器底面に達するようにする。折込片は、20?60°の角度のV字形に形成するのが好ましい。
【0025】
それから、底面と側面との境界に折り目を形成する。折り目は、抜き金型によって形成するのが好ましい。
【0026】
凹凸一対の加熱プレス金型で食品収納容器を形成するには、厚紙状物を図5に示す凹金型上に載置し、一方の対向する側面片は、他方の対向する側面片よりも先に起立させ、上から凸金型で押圧加熱プレスして、容器を形成すると同時に、四隅をヒートシールして、図2に示す断面コ字形の鍔状部3を有する食品収納容器4を一工程で製造することができる。鍔状部3は、断面コ字状に形成されているが、これは図1に示すように、凹金型の凹部上端外周に断面四角形のリング状凸条5を設けたからである。
【0027】
断面コ字形の鍔状部3の下端には、外方水平方向の折曲部(フランジ)6が連設されている。このように折曲部6を設けることによって、ラミネートした熱可塑性樹脂フィルムの容器からはみ出した部分を容易に切断することができる。容器からはみ出した熱可塑性樹脂フィルムは、折曲部6と一緒に切断する。
【0028】
図3は、本発明に使用する食品収容容器の他の実施例を示すものであり、四隅に隣接する側面片7aと7b(7bと7c)を連結する折込片8を有し、該折込片8は隣接する両側部よりも短く形成され、熱可塑性樹脂は、裏面のみにコーティングしている。これを図1に示す金型で押圧加熱プレスして、容器を形成すると同時に、四隅をヒートシールして、図6に示す断面コ字形の鍔状部3´を有する食品収納容器4´を一工程で製造することができる。
【0029】
図3で側壁7a,7cを先に起立させると、短いV字形の折込片8も一緒に起立し、図4に示すように、短いV字形の折込片8は、矢印で示すように側壁7bの表面に貼着する。側壁7bの短いV字形の折込片8より長い部分の表面は、同時に側壁7aの裏面に貼着する。
【0030】
図3で側壁7bを先に起立させると、短いV字形の折込片8も一緒に起立し、図5及び図6に示すように、短いV字形の折込片8は、側壁7a,7cの表面に重なる。側壁7a,7cの短いV字形の折込片8より長い部分の表面は、同時に側壁7bの裏面に貼着する。
【0031】
上記実施例においては、凹凸金型でプレスして短いV字形の折込片8よりも上の部分を折り返しているので、図6に示すように断面コ字状の鍔状部3´を容易に形成することができる。V字形の折込片8を長くし、V字形の折込片8と一緒に折り返すと皺が多く生じたり破けたりする場合が生じ、綺麗な鍔状部3´が形成できない。
【0032】
上記のようにして、図6に示すように、隅角部に厚紙状物の切断面9が折込片より上方に位置し、容器上端部が外方に折り返して形成した断面コ字形の鍔状部3,3´を具備した容器が得られる。図7に示すように折込片を短い折込片8と長い折込片8´とを連設した形状とすると、短い折込片8の裏面が長い折込片8´の裏面に貼着した状態で、長い折込片8´の裏面の短い折込片8より上の部分が側壁7bに貼着する。この容器は、長い折込片8´の長さを側壁7cより短くすれば、上端に厚紙状物の切断面が位置する容器とすることができる。
【0033】
このようにして得られた容器は、バージンパルプとして320g/m2よりも厚くすれば自動機械でラッピングしても変形し難くすることができるが、コスト低減のためこれより薄くすると、変形し易くなる。そればかりか、厚紙状物の切断面9が容器内面若しくは上端に位置しているので、肉、魚等を収容して斜めにしたり逆さにすると、血液や液汁が切断面9から滲入して容器を汚くする欠点が生じる。
【0034】
この容器に熱可塑性樹脂フィルムをラミネートすると、230g?320g/m2となるまで薄くしても、ラッピング工程で変形し難い容器とすることができる。また、血液や液汁が切断部9から滲入するのを完全に防止することができる。熱可塑性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン又は生分解性樹脂フィルム等を使用することができる。
【0035】
熱可塑性樹脂フィルムをラミネートするには、次のようにして行うことができる。
(1)図8に示すように、食品収納容器に空気吸引孔又は空気吸引用ミシン目10を形成する。
(2)このようにして空気吸引孔又は空気吸引用ミシン目10を形成した容器を、容器の個数の嵌合孔(例えば5?10個)が形成された金型に容器の個数嵌合する。金型の真上には間隔付けて熱板が配設されている。
(3)ついで、食品収納容器と熱板の間まで、熱可塑性樹脂フィルムを引き出す。
(4)それから、熱可塑性樹脂フィルムを下降させて、食品収納容器上に載置する。この状態で熱可塑性樹脂フィルムは、若干下方にたるんでいる。金型内を減圧にして、食品収容容器の空気吸引孔又は空気吸引用ミシン目10から空気を吸引除去すると、熱可塑性樹脂フィルムは食品収納容器に密着し、下降した熱板で加熱されてラミネートする。熱板は元の位置まで上昇する。
(5)金型をスライドさせ、フイルム後端を切断する。ラミネートした食品収容容器が例えば5?10個連結された状態で金型から取り出す。金型は、元の位置に戻す。連結された容器は、フィルム切断機で1個1個の製品に切断する。上記実施例では、鍔状部3,3´の下端に外方水平方向の折曲部6が連設されているので、ラミネートしたフイルムを折曲部6と一緒に容易に切断することができる。
【0036】
四隅の側面片の重合部11の近傍に多数の皺(凹凸条)が形成されている容器を使用すれば、この皺と熱可塑性樹脂フィルムとで、空気流出路が形成されるので、空気吸引孔を穿設する必要が無くなる。この皺、凸条又は凹凸部等は、底面から上端に達する空気流出路が形成されるものであれば良く、特に限定されない。熱可塑性樹脂フィルムを均一に密着させ易いことから、皺は四隅に形成するのが好ましい。特に、側面片の重合部11や図6の折込片8近傍に形成するのが好ましい。
【0037】
食品収納容器は、まな板の上に置いて、刺身などを収容する場合があるので、水分、血液等が滲入しないように、外周面にも予め合成樹脂をコーティングするのが良い。この目的の場合は、底面に上方に凹んだ凹部を形成し、その凹部上端(凹部空間の底面)に空気吸引孔又は空気吸引用ミシン目を形成すれば、まな板上の水、血液等は空気吸引孔に触れないようにすることができる。底面に形成する空気吸引孔又は空気吸引用ミシン目の数は、容器と熱可塑性樹脂フィルムとの間が同じような減圧度となるように、所定の間隔で4個以上形成するのが好ましい。凹部の高さは、凹部の大きさにもよるが、通常水の溜まる高さは2mmより低いので、2?4mm程度とするのが好ましい。
【0038】
また、凹部を設けなくとも、底面から2mm以上、好ましくは4mm以上の位置の外周面に空気吸引孔若しくはミシン目を形成しても良い。この場合も外周(好ましくは四隅)に所定の間隔で対向して4個以上設けるのが好ましい。
【0039】
本発明の方法により製造する食品収容容器は、トレーのようにフイルムでラッピングする食品収容容器である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に使用する食品収納容器を製造する金型の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の食品収容容器の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の食品容器の一例を示す一部展開図である。
【図4】本発明の食品収容容器の製法を示す一部斜視図である。
【図5】本発明の食品収容容器の製法を示す一部斜視図である。
【図6】本発明の食品収容容器の他の例を示す一部斜視図である。
【図7】本発明の食品容器の他の例を示す一部展開図である。
【図8】本発明の食品容器に熱可塑性樹脂フィルムをラミネートする例を示す一部展開図
である。
【符号の説明】
【0041】
1・・・・・・金型凹部
2,2´・・・・・・ロッド
3,3´・・・・・・鍔状部
4,4´・・・・・・折込片
5・・・・・・リング状凸条
6・・・・・・折曲部
7a,7b,7c,7d・・・・・・側面片
8・・・・・・V字形の折込片
9・・・・・・切断面
10・・・・・・空気吸引孔又は空気吸引用ミシン目
11・・・・・・側面片の重合部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2013-06-13 
結審通知日 2013-06-17 
審決日 2013-06-28 
出願番号 特願2007-176950(P2007-176950)
審決分類 P 1 113・ 852- ZDA (B65D)
P 1 113・ 55- ZDA (B65D)
P 1 113・ 537- ZDA (B65D)
P 1 113・ 121- ZDA (B65D)
P 1 113・ 113- ZDA (B65D)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 石田 宏之  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 ▲高▼辻 将人
紀本 孝
登録日 2010-07-30 
登録番号 特許第4557295号(P4557295)
発明の名称 食品収納容器  
代理人 田村 拓也  
代理人 福田 伸一  
代理人 稲垣 仁義  
代理人 加藤 恭介  
代理人 水崎 慎  
代理人 稲垣 仁義  
代理人 福田 賢三  

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