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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01R |
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管理番号 | 1279104 |
審判番号 | 不服2012-3354 |
総通号数 | 167 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-02-21 |
確定日 | 2013-09-12 |
事件の表示 | 特願2009-121509「周波数測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月 2日出願公開、特開2010-271091〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成21年5月20日を出願日とする特許出願であって、平成23年7月8日付けで明細書及び特許請求の範囲についての手続補正(以下、「補正1」という。)がなされ、平成23年11月17日付け(送達日:同年11月21日)で拒絶査定がなされたところ、これに対し、平成24年2月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、当該請求と同時に、明細書及び特許請求の範囲についての手続補正(以下「補正2」という。)がなされたものである。 その後、当審より平成24年9月11日付けで審尋を行い、請求人より平成24年11月12日付けで回答書が提出され、当審において、平成25年4月24日付けで決定をもって補正2についての補正の却下の決定がなされ、同日付で拒絶理由を通知(発送日:同年4月25日)したところ、平成25年6月24日付けで意見書が提出されるとともに同日付で明細書及び特許請求の範囲についての手続補正(以下、「補正3」という。)がなされた。 第2 当審が通知した拒絶理由 当審が平成25年4月24日付けで通知した拒絶理由の概要は、請求項1ないし4に係る発明は、それぞれ、下記の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 記 1.特表昭61-501528号公報 2.特開昭61-223662号公報 3.特開昭64-57189号公報 4.実願平3-78589号(実開平5-30772号)のCDROM 第3 本願発明 本願の請求項1ないし4に係る発明は、補正1、補正3により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 パルス信号を含む被測定信号の周波数を測定する周波数測定装置であって、 前記被測定信号をn(nは整数)逓倍して逓倍信号を出力する信号逓倍部と、 前記逓倍信号を所定のゲート時間で計数して該被測定信号の周波数のカウント値を所定の周期で出力するカウンタ部と、 前記カウント値が入力され、前記所定の周期で出力されるカウント値に基づいて前記被測定信号の周波数に対応する信号を出力するローパスフィルタと、 を備え、 前記カウンタ部は短ゲートタイムカウント方式のカウンタであり、 前記カウント値は2値である、周波数測定装置。」 第4 引用発明 1 引用刊行物1の記載事項 当審が平成25年4月24日付けで通知した拒絶理由において刊行物1として引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特表昭61-501528号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。 「技術分野 この発明は入力信号の周波数をサンプリングし、そして対応するディジタル出力信号を作り出すための技術に関する。 発明の背景 一般的なこの種の計器としては、検出器が信号を作り出し、その信号の周波数が物理的な入力変数に対してある関数、しばしば非線形関数に関連するものが挙げられる。ディジタルシステムでそのような検出器を用いるためには、検出器信号の周波数は一連のディジタルサンプル値に変換されねばならない。周波数を測定するための最も融通のきくシステムは、既知の時間間隔の間検出器信号又は入力信号のサイクル数を数えることにより、或いは検出器信号によって制御される間隔の間基準信号のサイクル数を数えることにより、動作する。どちらの技術を用いても、そのような周波数測定の解像度は計数間隔又はサンプリング間隔の間累積され得る計数に左右される。従って、解像度は高いサンプリング率では非常に低いかもしれない。 加速度計のような広帯域の検出器では、別な周波数と入力整流による誤差を避けるために、システムの帯域要件によって必要とされるよりサンプリング率をしばしばずつと大きくしなければならない。しかしながら、もし解像度がディジタル低域ろ波つまり平均によつて改善できないならば、実質的な誤差は高サンプル率を用いることによつてもたらされるかもしれない。 従来の周波数計数技術では、各サンプル値毎にカウンタがリセットされるので、計数は隣り合うサンプリング間隔の間で失われる。それ故に、従来の周波数サンプリング方法では、幾つかのサンプル値を平均化することは通常その解像度を大巾に改善することにならない。」(第3頁右上欄第3行?左下欄第11行) 2 引用発明 上記記載事項からみて、引用刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「既知の時間間隔の間入力信号のサイクル数を数えてサンプル値を得るカウンタと、 上記サンプル値をディジタル低域ろ波つまり平均する手段と、 を備える入力信号の周波数を測定するためのシステム。」 3 引用刊行物2の記載事項 当審が平成25年4月24日付けで通知した拒絶理由において刊行物2として引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭61-223662号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 <記載事項1> 「〔産業上の利用分野〕 本発明は、被測定信号周波数の計測方式、より詳細には、限られた短い測定基準時間において小さい測定誤差と高い分解能力を持った被測定信号周波数の計測が可能な周波数計測方式に関する。 〔従来の技術〕 被測定信号の周波数を計測する場合、一定の測定基準時間(タイム・ベース)T内に入力された被測定信号の周波数を計数して行っている。この場合、第4図に示す様に、時間Tにおいて1入力数の誤差を生じる。 第4図は、被測定信号がパルスの場合の例を示したもので、図示しないカウンタにより入力パルスの立下りにより計数が行われる。カウンタは、時間t_(0)よりもt_(1)までの一定時間Tをタイム・ベースとして、入力パルス数を非同期で計数する。 この為、計数開始時間t_(0)と入力パルスの位相関係により、図示の(a)、(b)の様に、タイム・ベースTにおいて計数される入力パルス数はP個((a)の場合)又は(P-1)個((b)の場合)となり、1ビツトの周波数誤差が生じる。 従って、計測される入力パルスの周波数は、それぞれP/T又は(P-1)/Tとなり、(1/T)Hzの測定誤差が生じることになる。 この測定誤差はTに反比例することから、測定誤差を小さくして測定の分解能力を高める為、従来は、タイム・ベースの長さTを大きくしていた。 〔発明が解決しようとする問題点〕 従来の周波数計測方式においては、前述の様に、タイム・ベースの長さTを大きくすることにより測定誤差を低減させ、分解能力を高めていた。 然しなから、通信機器等のシステムにおいては、その中で入力信号周波数の計測を行う場合、タイム・ベースに制限があるケースが多い。その場合、タイム・ベースの長さが短かいと、従来の周波数計測方式では測定誤差が大きくなり、満足すべき分解能力が得られないという問題があった。例えば、タイム・ベースの長さTを200msecとすると、5Hzの大きな測定誤差が生じるので、1000Hz,1005Hz,1010Hz等、数Hzの周波数差を持った複数の入力信号があった場合、これ等を確実に識別するに十分な分解能力を得ることが出来なかった。 本発明は、従来の周波数計測方式における前述の問題点を解消する為に成されたもので、限られた短いタイム・ベースにおいて小さい測定誤差と高い分解能力を持って被測定信号周波数の計測が可能な周波数計測方式を提供することを目的とする。」(第1頁右下欄第6行?第2頁右上欄第17行) <記載事項2> 「〔問題点を解決するための手段〕 従来の周波数計測方式における前述の問題点を解決し、前記目的を達成する為に本発明の講じた手段を、第1図により説明する。 第1図は、本発明の構成をブロック図で示したものである。第1図において、110は高調波発生手段で、被測定信号に対して十分に安定したn倍の周波数を持った高調波信号を発生する。120は周波数計測手段で、高調波発生信号110から出力された高調波信号の周波数を、時間Tのタイム・ベースで計数して、被測定信号周波数の計測を行う。 〔作 用〕 第1図に示した構成を持った本発明の作用を、第2図のタイミング・チャートを参照して説明する。第2図には、被測定信号がパルス信号である場合の例が示されているが、以下の説明は、パルス信号や正弦波信号等、各種の被測定信号周波数の計測に共通するものである。 被測定信号は、高調波発生手段110によりn倍に逓倍されて、周波数計測手段120に加えられる。周波数計測手段120は、時間t_(0)を測定開始時間とし時間Tのタイム・ベースで、高調波発生手段110より加えられた高調波信号の周波数を計測する。 周波数計測手段120の計測は、被測定信号の位相と非同期で行われるので、測定開始時間t_(0)と被測定信号の位相関係により、計数値が変化する。 周波数計測手段120が入力信号の立下りで計数を行うものとすると、第2図(a)に示した被測定信号のタイム・ベースTの計数値はPとなる。 この被測定信号を2逓倍した高調波信号の周波数を計数すると、高調波信号の時間t_(0)における位相関係により、計数値は(2P-2)(第2図(b)の場合)又は(2P-1)(第2図(c)の場合)となる。被測定信号を一般にn逓倍した高調波信号の場合の計数値は、(nP-1)又は(nP-2)となる。 周波数計測手段120は、この計数値に(1/nT)を乗算することによって被測定信号の周波数を計測するが、計測された被測定信号周波数は、(P/T-(1/nT)又は(P/T -(2/nT)となる。従って、両者の測定誤差は(1/nT)に大きく低減される。 以上の様にして、本発明によれば、従来の周波数計測方式と同じタイムベースで計測を行って、従来の周波数計測方式よりも測定誤差を(1/n)に低減させることが出来、従って分解能力もn倍に高めることが出来る。」(第2頁右下欄第1行?第3頁左上欄第12行) 4 引用刊行物2に記載された技術事項・引用発明2 上記記載事項1、2及び図面の記載から、以下の技術事項が読み取れる。 (1)上記記載事項1から、「一定の測定基準時間(タイム・ベース)T内に入力された被測定信号の周波数を計数する被測定信号の周波数計測方式において、タイム・ベースTの長さが短かいと、従来の周波数計測方式では測定誤差が大きくなり、満足すべき分解能力が得られないという問題があったことに鑑み、限られた短いタイム・ベースにおいて小さい測定誤差と高い分解能力を持った周波数計測が可能な周波数計測方式を提供することを目的とする」との技術事項が読み取れる。 (2)上記記載事項2、第1図及び第2図の記載から、「被測定信号をn倍の周波数に逓倍した高調波信号を発生する高調波発生手段を設け、当該高調波発生手段から出力された高調波信号の周波数を、時間Tのタイム・ベースで計数して、被測定信号周波数の計測を行う」との技術事項が読み取れる。 以上を総合すると、引用刊行物2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「一定の測定基準時間(タイム・ベース)T内に入力された被測定信号の周波数を計数する被測定信号の周波数計測方式において、タイム・ベースTの長さが短かいと、従来の周波数計測方式では測定誤差が大きくなり、満足すべき分解能力が得られないという問題があったことに鑑み、限られた短いタイム・ベースにおいて小さい測定誤差と高い分解能力を持った周波数計測を可能とするために、被測定信号をn倍の周波数に逓倍した高調波信号を発生する高調波発生手段を設け、当該高調波発生手段から出力された高調波信号の周波数を、時間Tのタイム・ベースで計数して、被測定信号の周波数の計測を行う。」 5 引用刊行物3の記載事項 当審が平成25年4月24日付けで通知した拒絶理由において刊行物3として引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭64-57189号公報(以下、「引用刊行物3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 <記載事項1> 「(発明が解決しようとする問題点) 上記したように、従来の放射線計測などにおける離散パルスの計数は、カウンタは1系列であるので、第6図に示すように、必ず、不惑時間が存在し、ここで、計数時のカウントもれが生じるといった問題があった。 特に、放射線計測における離散パルスは、一般的にポアソン分布に従うと考えられる。ボアソン分布における計数の精度は、パルス数をNとした時に、相対誤差として±√N/Nとなることが知られている。そこで、高精度の計数を実現するためには、Nを大きくする必要があり、このためは長時間にわたる計数を行う必要があった。 そこで、カウンタによって長時間にわたる計数を行った場合には、計数時間内で変化を生じていても、その変化を検知することはできないという欠点がある。」(第1頁右下欄第13行?第2頁左上欄第9行) <記載事項2> 「(問題点を解決するための手段) 本発明によれば、離散的パルスの計数方法において、複数列のカウンタにより計測対象からの検出信号を計数し、その計数データを時間を基準にして切り換え、その切り換えられた計数データを時系列に編成して記憶し、計数もれがないようにしたものである。 (作用) 本発明によれば、第3図に示すように、 (1)カウンタを複数列、ここではカウンタAとカウンタBの2系列用意して、そのカウンタ間の切換を時間を基単にして適切に行い、これから得られる計測データを不惑時間を生じないように編成するようにしたので、カウントもれがなく、しかも正確な連続計数を行うことができる。 (2)正確な時間間隔(1)で計数値が、例えば、計算機のメモリ上に転送されるため、パルス数Nを大きく計数したい時には、メモリ上の値を単に加算するだけで計数時間を長くするのと同等の計数が可能となる。 (3)この時、2系列のカウンタは、実際には加算された計数時間(T)よりは短い計数時間(l)で計測を行っているため、T時間内におけるl時間ごとの計数変化を別に取り出すことが可能であり、より厳密には、第2図に示す、t_(1),t_(2)・・・という時刻に応じた、例えば、線源の減衰補正をC(t_(1))、C(t_(2))・・・に対して行うことも可能である。」(第2頁右上欄第6行?第2頁左下欄第13行) <記載事項3> 「(実施例) 以下、本発明の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。 第1図は本発明の実施例を示す離散的パルスの計数回路図である。 第1図に示すように、2系列のカウンタAとBを並列に設け、これらのカウンタAとBの信号の入力端子11側には第1の切換器12を、これらのカウンタAとBの信号の出力端子14側には第2の切換器13をそれぞれ設け、その出力端子14には外部機器としての電子制御装置15及びデイスプレイ付きデータ入力装置20を接続する。なお、電子制御装置15は、CPU(中央処理装置)16、メモリ17、クロック回路18、I/Oポート19等から構成される。 このように構成するので、カウンタAが計数している時にカウンタBは計数以外の動作を行うことができ、カウンタAが計数していない時には、カウンタBで計数する。この切換は、クロック回路18、I/Oポート19を介した切換クロック信号Scに基づいて第1の切換器12を切り換えることによって行う。第2の切換器13は電子制御装置15に計数値を伝達するものであるから、第1の切換器12と同期する必要はあるが、必ずしも厳密に第1の切換器12とタイミングを合わせなくてもよい。 即ち、切換器12及び13の制御はクロック回路18を用いて行い、正確な時間間隔で計数値を電子制御装置15に転送して、メモリ17上に配置すれば、第2図に示すように、カウンタA及びBからの計数データ列を時系列的に連続して格納することができる。これによって、2系列のカウンタだけでカウントもれがなく連続計数が可能となる。」(第2頁左下欄第14行?第3頁左上欄第5行) 6 引用刊行物3に記載された技術事項 上記記載事項1ないし3、第1図、第2図及び第3図の記載を総合すると、引用刊行物3には、次の技術事項(以下、「技術事項3」という。)が記載されているものと認められる。 「従来の放射線計測などにおける離散パルスの計数は、カウンタが1系列であるので、不惑時間が存在し、ここで、計数時のカウントもれが生じるといった問題があり、また、高精度の計数を実現するためには、計数するパルス数Nを大きくする必要があり、このため長時間にわたる計数を行う必要があったが、長時間にわたる計数を行った場合には、計数時間内で変化を生じていても、その変化を検知することはできないという欠点があったことに鑑み、カウンタAとカウンタBの2系列用意して、そのカウンタ間の切換を時間を基準にして行い、カウンタAが計数している時にカウンタBは計数以外の動作を行うようにし、カウンタAが計数していない時には、カウンタBで計数するようにし、正確な時間間隔で計数値をメモりに格納することにより、カウンタA及びBからの計数データ列を時系列的に連続して格納することができ、これによって、2系列のカウンタだけでカウントもれがなく連続計数が可能となる。」 第5 当審の判断 1 本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「入力信号」、「周波数を測定するためのシステム」、「サンプル値」、「カウンタ」、「ディジタル低域ろ波つまり平均する手段」は、本願発明の「被測定信号」、「周波数測定装置」、「カウント値」、「カウンタ部」、「ローパスフィルタ」にそれぞれ相当する。 (2)周波数測定の対象となる入力信号の典型例はパルス信号であるから、引用発明の「入力信号」は、本願発明の「パルス信号を含む被測定信号」に相当する。 したがって、引用発明の「入力信号の周波数を測定するためのシステム」は、本願発明の「パルス信号を含む被測定信号の周波数を測定する周波数測定装置」に相当する。 (3)引用刊行物1の上記記載事項によると、引用発明の「既知の時間間隔の間入力信号のサイクル数を数えてサンプル値を得るカウンタ」は、「各サンプル値毎にカウンタがリセットされる」ものであるから、当該カウンタは各サンプル値を既知の時間間隔の周期で出力するとみるのが自然であり、これは、既知の時間間隔の入力信号のサイクル数を数えて入力信号の周波数を測定する技術分野における技術常識にも適うものである。 したがって、引用発明の「既知の時間間隔の間入力信号のサイクル数を数えてサンプル値を得るカウンタ」と、 本願発明の「前記逓倍信号を所定のゲート時間で計数して該被測定信号の周波数のカウント値を所定の周期で出力するカウンタ部」とは、ともに、 「信号を所定のゲート時間で計数して該被測定信号の周波数のカウント値を所定の周期で出力するカウンタ部」の点で共通する。 (4)上記「(1)」、「(3)」の相当関係等を踏まえると、引用発明の「上記サンプル値をディジタル低域ろ波つまり平均する手段」は、本願発明の「前記カウント値が入力され、前記所定の周期で出力されるカウント値に基づいて前記被測定信号の周波数に対応する信号を出力するローパスフィルタ」に相当する。 (5)既知の時間間隔の間入力信号のサイクル数を数えてカウント値(サンプル値)を得る場合に、カウント値(サンプル値)が2つの値をとることは、例えば、引用刊行物2に「計数開始時間t_(0)と入力パルスの位相関係により、図示の(a)、(b)の様に、タイム・ベースTにおいて計数される入力パルス数はP個((a)の場合)又は(P-1)個((b)の場合)となり、1ビツトの周波数誤差が生じる。」(上記「第4」の「3 引用刊行物2の記載事項」の記載事項1参照。)と記載されているように、既知の時間間隔の間入力信号のサイクル数を計数して入力信号の周波数を測定する技術分野における技術常識である。 したがって、引用発明のカウンタにおいても、サンプル値は2値であり、このことは、本願発明の「前記カウント値は2値である」に相当する。 (6)そうすると、本願発明と引用発明の一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「パルス信号を含む被測定信号の周波数を測定する周波数測定装置であって、 信号を所定のゲート時間で計数して該被測定信号の周波数のカウント値を所定の周期で出力するカウンタ部と、 前記カウント値が入力され、前記所定の周期で出力されるカウント値に基づいて前記被測定信号の周波数に対応する信号を出力するローパスフィルタと、 を備え、 前記カウント値は2値である、周波数測定装置。」 [相違点1] 本願発明が、被測定信号をn(nは整数)逓倍して逓倍信号を出力する信号逓倍部を備え、前記逓倍信号を計数するのに対し、引用発明は、上記信号逓倍部を備えておらず、逓倍信号ではなく入力信号を計数する点。 [相違点2] カウンタ部が、本願発明では短ゲートタイムカウント方式のカウンタであるのに対し、引用発明のカウンタはそのように特定されていない点。 2 相違点についての検討 上記相違点について検討する。 [相違点1について] 上記「第4」の「4」において記載したように、引用刊行物2には、「一定の測定基準時間(タイム・ベース)T内に入力された被測定信号の周波数を計数する被測定信号の周波数計測方式において、タイム・ベースTの長さが短かいと、従来の周波数計測方式では測定誤差が大きくなり、満足すべき分解能力が得られないという問題があったことに鑑み、限られた短いタイム・ベースにおいて小さい測定誤差と高い分解能力を持った周波数計測を可能とするために、被測定信号をn倍の周波数に逓倍した高調波信号を発生する高調波発生手段を設け、当該高調波発生手段から出力された高調波信号の周波数を、時間Tのタイム・ベースで計数して、被測定信号の周波数の計測を行う。」(引用発明2)ことが記載されている。 引用発明と引用発明2とは、ともに、既知の時間間隔の入力信号のサイクル数を数えて入力信号の周波数を測定する技術に係るものである点で共通しており、しかも、引用発明は、引用刊行物1に、「そのような周波数測定の解像度は計数間隔又はサンプリング間隔の間累積され得る計数に左右される。従って、解像度は高いサンプリング率では非常に低いかもしれない。加速度計のような広帯域の検出器では、別な周波数と入力整流による誤差を避けるために、システムの帯域要件によって必要とされるよりサンプリング率をしばしばずつと大きくしなければならない。しかしながら、もし解像度がディジタル低域ろ波つまり平均によつて改善できないならば、実質的な誤差は高サンプル率を用いることによつてもたらされるかもしれない。」(上記「第4」の「1 引用刊行物1の記載事項」参照。)と記載されているように、高いサンプリング率、すなわち、短い時間間隔の計数による解像度の低下を問題としている点で、引用発明2と課題認識の点でも共通している。 そして、引用発明において、引用発明2のように、入力信号をn倍の周波数に逓倍して計数するようにすることを妨げる特段の阻害要因も見当たらない。 してみると、引用発明において、短い時間間隔において小さい測定誤差と高い解像度の周波数測定を可能とするために、引用発明2を適用して、入力信号をn倍の周波数に逓倍した高調波信号を発生する高調波発生手段を設け、当該高調波発生手段から出力された高調波信号の周波数を、既知の時間間隔で計数して、入力信号の周波数の計測を行うようにすること、すなわち、上記相違点1に係る本願発明のごとく構成することは当業者が容易に想到し得ることである。 [相違点2について] 短ゲートタイムカウント方式について、本願明細書には、「【0007】当該発明は、後述するように、供給されるパルス列信号を短いゲート時間で連続的に計数して該パルス列信号の周波数に対応したパルス列状に振る舞う一連のカウント値を得て、この一連のカウント値から高周波成分を除去して供給されるパルス列信号の周波数に対応する一連の信号を得ることによって周波数変化を抽出するものである(以下、「短ゲートタイムカウント法」と称する。)。」と、その定義が記載されている。 一方、引用発明のカウンタは、既知の時間間隔の間入力信号のサイクル数を数えてサンプル値を得て、上記サンプル値をディジタル低域ろ波つまり平均する手段で処理させるものであるから、上記短ゲートタイムカウント方式のカウンタと比較して、既知の時間間隔が短いという特定がなく、計数が連続であるとの特定がない点で相違している。 したがって、上記相違点2は、本願発明のカウンタと比較して引用発明のカウンタにはこの2つの特定がないという相違点にほかならない。 そこで、この相違点について検討する。 上記相違点1においても指摘したように、引用刊行物1には、「そのような周波数測定の解像度は計数間隔又はサンプリング間隔の間累積され得る計数に左右される。従って、解像度は高いサンプリング率では非常に低いかもしれない。加速度計のような広帯域の検出器では、別な周波数と入力整流による誤差を避けるために、システムの帯域要件によって必要とされるよりサンプリング率をしばしばずつと大きくしなければならない。しかしながら、もし解像度がディジタル低域ろ波つまり平均によつて改善できないならば、実質的な誤差は高サンプル率を用いることによつてもたらされるかもしれない。」(上記「第4」の「1 引用刊行物1の記載事項」参照。)と記載されており、短い時間間隔の計数による解像度の低下を問題としている。 そして、このような問題が発生する原因として、上記記載に続けて、引用刊行物1には、「従来の周波数計数技術では、各サンプル値毎にカウンタがリセットされるので、計数は隣り合うサンプリング間隔の間で失われる。それ故に、従来の周波数サンプリング方法では、幾つかのサンプル値を平均化することは通常その解像度を大巾に改善することにならない。」と記載されており、各サンプル値毎にカウンタがリセットされるので、計数が隣り合うサンプリング間隔の間で失われることが上記原因であり、そのために、幾つかのサンプル値を平均化したとしても解像度を大巾に改善することができないと指摘している。 さらに、続けて、引用刊行物1には、「この発明は検出器計数又は基準計数が失われないような仕方で検出器信号と基準信号のサイクル数を計数するための方法及びその装置を提供する。それ故にこの発明の計数技術は、複数の次々のサンプリング間隔に亘って計数を平均することによって解像度を改善させる。」と記載されているから、上記問題を解決するためには、検出器計数、すなわち、入力信号の計数が失われないような仕方で入力信号を計数して、複数の次々のサンプリング間隔に亘って計数を平均することが必要であるとの指摘がされているのである。 このように、引用刊行物1には、短い時間間隔の計数による解像度の低下が問題であり、その原因が、各サンプル値毎にカウンタがリセットされるので、計数が隣り合うサンプリング間隔の間で失われることであり、上記問題を解決するためには、入力信号の計数が失われないような仕方で入力信号を計数して、複数の次々のサンプリング間隔に亘って計数を平均することが必要であると指摘されているのであるから、引用発明において、短い時間間隔の計数による解像度の低下という問題を解決するためには、短い時間間隔の計数において、計数が失われないような仕方で入力信号を計数して、複数の次々のサンプリング間隔に亘って計数を平均するようにすればよいことは明らかであり、このことは、上記相違点における2つの特定、すなわち、既知の時間間隔が短いという点と、計数が連続であるという点の2点をカウンタの計数に関して特定するということであり、上記相違点2に係る本願発明のごとく、短ゲートタイムカウント方式のカウンタにするということにほかならない。 そして、上記のように、短い時間間隔の計数において、計数が失われないような仕方で入力信号を計数する具体的な構成も、上記「第4」の「6」において示したように、引用刊行物3に示されており、当該構成を引用発明のカウンタに適用することを妨げるような特段の阻害要因も見当たらない。 してみると、引用発明において、引用刊行物3に記載された技術事項3を適用して、短い時間間隔の計数において計数が失われない構成を採用し、入力信号を計数して、複数の次々のサンプリング間隔に亘って計数を平均するようにすること、すなわち、上記相違点2における本願発明のごとく、短ゲートタイムカウント方式のカウンタにすることは当業者が容易に想到し得ることである。 そして、本願発明が奏する効果は、引用発明、引用発明2及び技術事項3から、当業者が予測し得る範囲内のものであって格別のものではない。 よって、本願発明は、引用発明、引用発明2及び技術事項3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 請求人の主張について 請求人は、平成25年6月24日付けの意見書において、概ね以下の(1)、(2)の主張をしている。 (1)引用刊行物1の計数回路10はレシプロカル方式のカウンタである。 これに引用刊行物2の高周波発生手段110を組み合わせても周波数逓倍の効果、すなわち、周波数分解能の向上、ジッタ耐性の向上という効果は得られない。 よって、引用刊行物1と引用刊行物2とを組み合わせても本願発明の効果を得ることはできない。 (2)サンプリング率を高めると解像度が低くなるという考え方が一般であり、この発想から抜け出すことは容易ではない。引用刊行物(レシプロカルカウント方式)にはサンプリング率を高めることで解像度を良くするという記述は存在しない。 一方、本願発明は、ゲート時間を短くする(サンプリング率を高める)ことでSN比を改善するという思想を具現化した短ゲートタイム方式のカウンタの改良に関する発明である。また、短ゲートタイム方式のカウンタはレシプロカルカウンタとは違い、2つの信号を処理する構成であることも相違する。 上記主張(1)、(2)について検討する。 [主張(1)について] 引用発明のカウンタは、「既知の時間間隔の間入力信号のサイクル数を数えてサンプル値を得るカウンタ」であるから、請求人が主張するようなレシプロカル方式のカウンタ、すなわち、本願明細書の段落【0002】に記載されている「パルス周期を正確に計測しその時間の逆数から周波数を求めるレシプロカル方式」のカウンタではない。 そもそも、引用発明のカウンタは、引用刊行物1の計数回路10に関する記載に基づいて認定したものではなく、上記「第4」の「1」、「2」に記載したように、引用刊行物1の「発明の背景」の欄の記載に基づいて認定したものであるから、請求人の主張(1)は、その前提において誤っている。なお、引用刊行物1の計数回路10は、第4図に示されるように、入力信号Fsのパルス周期に依存しない一定の時間間隔T1の間実質的に入力信号Fsのサイクル数を計数するから、直接カウント方式のカウンタでもある。 そして、上記[相違点1について]において述べたように、引用発明と引用発明2とは、ともに、既知の時間間隔の入力信号のサイクル数を数えて入力信号の周波数を測定する技術に係るものである点で共通しており、しかも、両者は、短い時間間隔の計数による解像度の低下を問題としている点で、課題認識の点でも共通しており、さらに、引用発明において、引用発明2を適用する点に特段の阻害要因もないから、引用発明において、短い時間間隔において小さい測定誤差と高い解像度の周波数測定を可能とするために、引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得ることである。 そして、そのことにより、小さい測定誤差と高い解像度(周波数分解能)の周波数測定が可能となるという効果が得られることは明らかである。 また、ジッタ耐性の向上は、引用発明に引用発明2を適用することにより、自ずと得られる効果であって格別のものとはいえない。 したがって、請求人の上記主張(1)を採用することはできない。 [主張(2)について] 上記[相違点2について]において述べたように、引用刊行物1には、短い時間間隔の計数による解像度の低下が問題であり、その原因が、各サンプル値毎にカウンタがリセットされることにより計数が隣り合うサンプリング間隔の間で失われるためであり、上記問題を解決するためには、入力信号の計数が失われないような仕方で入力信号を計数して、複数の次々のサンプリング間隔に亘って計数を平均することが必要であるということが指摘されている。 したがって、引用発明において、短い時間間隔の計数においても十分な解像度が得られるようにするためには、計数が失われないような仕方で入力信号を計数して、複数の次々のサンプリング間隔に亘って計数を平均するようにすればよいことは明らかであり、そのような計数を行うカウンタも引用刊行物3に示されている。 また、引用発明のカウンタもサンプル値が2値であることは、上記「1 本願発明と引用発明との対比」の「(5)」において述べたとおりである。 したがって、請求人の上記主張(2)を採用することはできない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明、引用発明2及び技術事項3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 そして、本願発明(請求項1に係る発明)が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2ないし4に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-07-05 |
結審通知日 | 2013-07-08 |
審決日 | 2013-08-01 |
出願番号 | 特願2009-121509(P2009-121509) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G01R)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉田 久 |
特許庁審判長 |
下中 義之 |
特許庁審判官 |
中塚 直樹 飯野 茂 |
発明の名称 | 周波数測定装置 |
代理人 | 田中 克郎 |
代理人 | 稲葉 良幸 |