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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1279137 |
審判番号 | 不服2012-22613 |
総通号数 | 167 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-11-15 |
確定日 | 2013-09-05 |
事件の表示 | 特願2010-536868「マーカ構造およびマーカ構造を形成する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月11日国際公開、WO2009/072881、平成23年 3月 3日国内公表、特表2011-507229〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2008年12月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年12月5日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年1月24日付けで拒絶理由が通知され、同年4月26日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、同年7月12日付けで拒絶査定がなされた。本件は、これに対して、同年11月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 第2 本願発明について 1.本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年4月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「基板の、また基板上に設けられた光学アライメント用のマーカ構造において、 第1のレベルにある第1の反射表面と、 第2のレベルにある第2の反射表面であって、前記第1のレベルと前記第2のレベルとの間の離隔距離が位相深さ条件を決定する、第2の反射表面と、 前記マーカ構造の製造中に前記離隔距離が修正されるように、化学機械研磨中に使用される化学成分に対する前記マーカ構造の研磨抵抗を変える追加の構造と、 を備えるマーカ構造。」 2.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2007-214560号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付した。) (a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 複数の第1構造要素および複数の第2構造要素を備え、基板を光学的に位置合わせするための基板上マーカ構造であって、 使用に際して、 前記マーカ構造上に向けられる少なくとも1本の光ビームを提供すること、 前記マーカ構造から受け取った光をセンサで検出すること、および 前記基板の位置を前記センサに関連づける情報を含む位置合わせ情報を前記検出光から求めることに基づいて前記光学的位置合わせを行うことができるマーカ構造であって、 前記第1構造要素が第1レベル上に第1反射面を有し、前記第2構造要素がほぼ非反射性であり、 第2反射面がより下方の第2レベル上に位置し、 前記第1および第2反射面の間隔が前記検出光の位相深さ条件を決め、 陥凹部(R1;R2;R3)が前記第2反射面内に存在し、それによって前記位相条件が改変されることをさらに特徴とする、 マーカ構造。」 (b)「【技術分野】 【0001】 本発明は、請求項1のプリアンブルに定義するマーカ構造、前記マーカ構造を使用するウエハ位置合わせ用装置を備えるリソグラフィ投影機器および前記マーカ構造を使用してウエハを位置合わせする方法に関する。」 (c)「【0092】 従来技術では、タングステンで充填したトレンチを備える半導体基板上のマーカは、CMPプロセスにかけられてタングステンが除去され、基板表面が平坦化される。タングステンCVDとCMPを組み合わせるため、タングステン構造は充填状態あるいは不完全充填状態になる。充填の程度は、マーカによって生成される光学信号の位相深さに関係する。すなわち、2つの離散位相深さレベルが存在する。 【0093】 一方のレベルは、構造の上面までほぼ完全に充填するため、浅く小さな位相深さを有する充填タングステン構造に関係するものである。 【0094】 他方のレベルは、比較的深く大きな位相深さを有する不完全充填タングステン構造に関係するものである。 【0095】 小さな位相深さによって生じる位置合わせ誤差は比較的大きいので、充填マーカの小さな位相深さは望ましくない。また、大きな位相深さにより、位置合わせ誤差が小さくなることも保証されない。すなわち、位相深さにより、光学信号の消失が生じることがある。 【0096】 図7aに、タングステンCMP前の、従来技術の充填されたタングステン・マーカおよび完全に充填されていないタングステン・マーカの断面を示す。 【0097】 二酸化シリコン層中にエッチングしたトレンチ中に、ブランケット・モードのCVDプロセスによってタングステンを被着させる。図7aに、トレンチの幅により、共形に成長させたタングステン層がトレンチを「充填」モードあるいは「不完全充填」モードで充填するのが決まる様子を示す。 【0098】 共形成長特性を有するタングステンCVD時に、狭いトレンチが「充填」トレンチになり、広いトレンチが「不完全充填」トレンチになる。 【0099】 トレンチの底面はバリア層で覆われることがある。 【0100】 次いで、CMPプロセスを行って構造を平坦化する。このようにして、二酸化シリコン表面とほぼ同じレベルの表面を有する金属(タングステン)構造を形成する。その結果、「充填」構造の位相深さはほぼゼロになる。「不完全充填」金属構造は、二酸化シリコン表面とほぼ同じレベルである部分(すなわち側壁)と、表面が二酸化シリコン表面のレベルよりもかなり下である中央部分とを備える。CMP後、中央のタングステン部分は、二酸化シリコン表面のレベルに対して相対的な所与の位相深さを有する。 【0101】 当業者には周知のように、所与のトレンチ深さおよび所与の加工パラメータを有する(すなわち、所与の厚さを有する共形タングステン層を形成する)タングステン被着プロセスでは、トレンチ幅により、タングステン・ラインが充填されるかあるいは完全には充填されないかが決まる。したがって、位相深さは、トレンチ幅の作用として、2つの離散レベルを含むことになる。さらに、タングステンおよび二酸化シリコンのCMPに対する抵抗が異なるので、CMPプロセスを極めて正確に制御することはできない。 【0102】 上記で述べたように、不完全充填金属マーカ・ラインを備えるマーカ構造では、金属ラインの中央部分の深さは、位相深さがほぼゼロになることがある。すなわち、位相深さの制御を実現することはできない。 【0103】 図7bに、本発明の第6実施例による二酸化シリコン中のタングステン・マーカ構造の平面図(TOP)および断面図(SIDE)を示す。 【0104】 本発明の第6実施例では、光学マーカ構造は、二酸化シリコンのライン中にタングステンの副セグメントを備える。 【0105】 副セグメントとして、二酸化シリコンのライン中に、副トレンチの長さ方向がマーカ構造の周期Pに平行な方向に延びる複数の副トレンチを形成する。複数の副トレンチは、位置合わせ手順中にいわゆる非走査方向になる方向に周期的に配置されているので、このPsub方向の副トレンチの周期的配置による光学的な影響は、基板位置合わせシステムによって検出されない。副トレンチ(の周期性)によって生成される発生し得る回折信号は、実際のマーカ構造(すなわち、タングステン・トレンチおよび二酸化シリコン・ラインの繰返し)の回折信号の方向に直交する方向に向けられるので、この発生し得る信号は、基板位置合わせシステムによって検出されない。 【0106】 この第6実施例では、やはり、タングステンCVDプロセスによって、トレンチおよび副トレンチをタングステンで充填する。次いで、CMPプロセスを行って構造を平坦化する。副トレンチ中にタングステンが存在するため、CMPプロセスは、より良好に制御される。副トレンチを用いることによって、CMPに対して特定の抵抗を有する充填タングステン構造を備えるマーカ構造の面積は、比較的大きくなる(タングステンは酸化物よりもCMPに対してより大きな抵抗を有する)。これにより、より高い精度で所与の高さに充填トレンチを研磨することができる。不完全充填構造のより低い部分のレベルに対して相対的に充填トレンチの研磨高さをより良好に制御することによって、位相深さを制御することができる。不完全充填領域中のタングステンのより低いレベルに対する相対的な充填タングステン構造の上面レベルの高さを、所望の位相深さが得られるように適合させることができる。充填タングステン構造の相対面積を変更するために二酸化シリコンのライン中の副トレンチ間の間隔(およびその数)を変更することによって位相深さを適合させることができる。 【0107】 副トレンチの幅は、共形タングステン層の厚さの倍である(したがって、その結果、ゼロ位相深さを有する完全に充填された副トレンチが生じる)。」 (d)「 」 (e)「 」 上記記載事項(c)中の、「「不完全充填」金属構造」(段落【0100】)と「タングステン・トレンチ」(段落【0105】)、「中央のタングステン部分」(段落【0100】)と「不完全充填領域中のタングステンのより低いレベル」(段落【0106】)、「二酸化シリコンの表面のレベル」(段落【0100】と「充填タングステン構造の上面レベル」(段落【0106】)」とは同一のものを示すこと、また、「酸化物」(段落【0106】)は二酸化シリコンであることは明らかであるから、上記引用文献1の記載事項から、引用文献1には、以下の発明が記載されている。 「基板を光学的に位置合わせするための基板上マーカ構造であって、 マーカ構造はタングステン・トレンチおよび二酸化シリコン・ラインの繰り返しであって、タングステン・トレンチの中央のタングステン部分は二酸化シリコン表面のレベルに対して相対的な所与の位相深さを有し、 二酸化シリコン・ラインには、二酸化シリコン・ライン中に複数設けられた副トレンチにタングステンを充填した充填タングステン構造が設けられ、 タングステンは二酸化シリコンよりもCMPに対してより大きな抵抗を有し、 充填タングステン構造により、タングステン・トレンチの中央のタングステン部分に対する相対的な二酸化シリコン表面のレベルの高さを、所望の位相深さが得られるように適合させた マーカ構造。」(以下「引用発明」という。) 3.対比・判断 (1)本願発明と引用発明との対比 (a)引用発明の「基板を光学的に位置合わせするための基板上マーカ構造」は、本願発明の「基板の、また基板上に設けられた光学アライメント用のマーカ構造」に相当する。 (b)引用発明の「タングステン・トレンチ」および「二酸化シリコン・ライン」の表面は反射表面であることは明らかであるから、引用発明の「マーカ構造はタングステン・トレンチおよび二酸化シリコン・ラインの繰り返しであって、タングステン・トレンチの中央のタングステン部分は二酸化シリコン表面のレベルに対して相対的な所与の位相深さを有」する構成は、本願発明の「第1のレベルにある第1の反射表面と、第2のレベルにある第2の反射表面であって、前記第1のレベルと前記第2のレベルとの間の離隔距離が位相深さ条件を決定する、第2の反射表面と」「を備える」構成に相当する。 (c)引用発明の「二酸化シリコン・ライン中に複数設けられた副トレンチにタングステンを充填した充填タングステン構造」において、「タングステンは二酸化シリコンよりもCMPに対してより大きな抵抗を有」するのであるから、「充填タングステン構造」を有する「二酸化シリコン・ライン」は、「充填タングステン構造」を有さない「二酸化シリコン・ライン」よりもCMPに対してより大きな抵抗を有する、すなわち、「充填タングステン構造」が「二酸化シリコン・ライン」のCMPに対する抵抗を変えることは明らかである。 また、CMPは機械的な研磨と化学作用により対象物を研磨するものであるから、二酸化シリコン中にタングステンという異なる材料を充填すれば、CMPの機械的な研磨に対する抵抗だけでなく、化学作用に対する抵抗も変わることは自明のことである。 すると、引用発明の「二酸化シリコン・ラインには、二酸化シリコン・ライン中に複数設けられた副トレンチにタングステンを充填した充填タングステン構造が設けられ、タングステンは二酸化シリコンよりもCMPに対してより大きな抵抗を有」する構成は、本願発明の「化学機械研磨中に使用される化学成分に対する前記マーカ構造の研磨抵抗を変える追加の構造と、を備える」構成に相当する。 (d)引用発明の「充填タングステン構造により、タングステン・トレンチの中央のタングステン部分に対する相対的な二酸化シリコン表面のレベルの高さを、所望の位相深さが得られるように適合させ」ることは、本願発明の「前記マーカ構造の製造中に前記離隔距離が修正される」ことに相当する。 (2)一致点 してみると、両者は、 「基板の、また基板上に設けられた光学アライメント用のマーカ構造において、 第1のレベルにある第1の反射表面と、 第2のレベルにある第2の反射表面であって、前記第1のレベルと前記第2のレベルとの間の離隔距離が位相深さ条件を決定する、第2の反射表面と、 前記マーカ構造の製造中に前記離隔距離が修正されるように、化学機械研磨中に使用される化学成分に対する前記マーカ構造の研磨抵抗を変える追加の構造と、 を備えるマーカ構造。」 で一致し、相違点はない。 (3)判断 したがって、本願発明は引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は引用発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-04-10 |
結審通知日 | 2013-04-11 |
審決日 | 2013-04-24 |
出願番号 | 特願2010-536868(P2010-536868) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮川 数正 |
特許庁審判長 |
伊藤 昌哉 |
特許庁審判官 |
神 悦彦 土屋 知久 |
発明の名称 | マーカ構造およびマーカ構造を形成する方法 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 大貫 敏史 |