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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
管理番号 1279241
審判番号 不服2011-23721  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-02 
確定日 2013-09-10 
事件の表示 特願2009-530758「通信ネットワークにおける回復法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月17日国際公開、WO2008/043374、平成22年 2月25日国内公表、特表2010-506466〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は,2006年10月9日を国際出願日とする出願であって,平成23年6月30日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年11月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成24年12月18日付けで当審から拒絶理由が通知され,平成25年3月19日付けで手続補正がなされたものである。
その請求項1に係る発明は,明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,平成25年3月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める(以下,「本願発明」という。)。
「【請求項1】
複数のエッジノードを含む複数のノードを備えたコネクション型通信ネットワークであって,
前記ネットワークは,前記エッジノードのプライマリ対を接続するプライマリ・トンネルと,該プライマリ対とは異なる,前記エッジノードのセカンダリ対を接続するセカンダリ・トンネルとを定義するように構成され,
前記ネットワークは,前記プライマリ・トンネルに影響を及ぼす障害が検出された場合に,トラフィックを前記プライマリ・トンネルから前記セカンダリ・トンネルへ切り替えることが可能なように構成され,
前記プライマリ・トンネルの進入ノードと,前記セカンダリ・トンネルの進入ノードは,進入ノードとしてのそれぞれの状態を識別するためのシグナリングメッセージを用いると共に前記セカンダリ・トンネルへの切り替えを要する関連する障害を識別する障害識別通信を用いて,互いに通信するように構成される
ことを特徴とするネットワーク。」


2.引用発明
当審の拒絶理由に引用された特開2005-12812号公報(以下,「引用例」という。)には,「分散型保護スイッチング」として,図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【0017】
本発明は,SPVx接続に関する送信先の障害に応答するシステム(10)に関する。システム(10)は,プライマリーソースノード(14)を具えている。システム(10)は,SPVx接続を実現するプライマリーソーススイッチ(16)を具えている。プライマリーソーススイッチ(16)は,プライマリーソースノード(14)に連繋されている。システム(10)は,プライマリー送信先ノード(20)を具えている。システム(10)は,SPVx接続を受けるプライマリー送信先スイッチ(18)を具えている。プライマリー送信先ノード(20)は,プライマリー送信先スイッチ(18)に連繋されている。この接続により,プライマリーソースノード(14)とプライマリー送信先ノード(20)との間にプライマリー経路(21)が形成される。システム(10)は,代替送信先ノード(24)を具えている。プライマリー送信先スイッチ(18)がプライマリー経路(21)の障害を検出したとき,プライマリー送信先スイッチ(18)は,代替経路(22)に沿って,プライマリー接続を代替送信先ノード(24)へ自動的にリダイレクトする。代替経路(22)は,プライマリー経路(21)に障害があった時にだけ,プライマリーソースノード(14)と代替送信先ノード(24)によって形成される。
【0018】
プライマリー経路(21)は,プライマリーソースノード(14)からプライマリーソーススイッチ(16)へ延び,ネットワーク(32)を通り,プライマリー部(32)の長さ(30)に沿って進み,プライマリー送信先スイッチ(18)からプライマリー送信先ノード(20)へ延びている。
【0019】
代替経路(22)は,本質的に,プライマリー経路(21)以外の任意の経路である。代替経路(22)は,例えば,代替ソースノード(26)から代替ソーススイッチ(28)へ延び,ネットワーク(12)のプライマリー部(34)を通り,プライマリー送信先スイッチ(18)からプライマリー送信先ノード(20)へ延びている。或いはまた,代替経路(22)は,代替ソーススイッチ(28)から,ネットワーク(12)のプライマリー部(34)を通り,代替送信先スイッチ(41)から代替送信先ノード(24)へ延びることもできる。」(9頁)

(2)「【0021】
本発明は,SPVx接続の障害に応答するシステム(10)に関する。システム(10)は,プライマリーソースノード(14)を具えている。システム(10)は,SPVx接続を実現するプライマリーソーススイッチ(16)を具えている。プライマリーソースノード(14)は,プライマリーソーススイッチ(16)に連繋されている。システム(10)は,プライマリー送信先ノード(20)を具えている。システム(10)は,SPVx接続を受けるプライマリー送信先スイッチ(18)を具えている。プライマリー送信先ノード(20)は,プライマリー送信先スイッチ(18)に連繋されている。この接続により,プライマリーソースノード(14)とプライマリー送信先ノード(20)との間にプライマリー経路(21)が形成される。システム(10)は,代替送信先ノード(26)を具えている。プライマリーソーススイッチがプライマリー経路(21)の障害を検出したとき,代替ソーススイッチ(28)は,代替経路(22)に沿って,プライマリー送信先ノード(20)への接続を自動的に再構築する。代替経路(22)は,プライマリー経路(21)に障害があった時にだけ,代替ソースノード(26)とプライマリー代替送信先ノード(20)によって形成される。
【0022】
プライマリーソーススイッチ(16)は代替ソーススイッチ(28)に連繋されており,プライマリー経路(21)に障害があるとき,代替ソーススイッチ(28)を特定することが望ましい。代替ソーススイッチ(28)は,プライマリーソースノード(14)に障害があるとき,SPVx接続を,代替ノード(26)からプライマリー送信先ノード(20)へ再構築することが望ましい。プライマリーソースノード(14)とプライマリーソーススイッチ(16)の間のリンク(30)に障害あるとき,代替ソーススイッチ(28)は,SPVx接続を,代替ソースノード(26)からプライマリー送信先ノード(20)へ再構築することが望ましい。プライマリースイッチに障害があるとき,代替ソーススイッチ(28)は,SPVx接続を,代替ソースノード(26)からプライマリー送信先ノード(20)へ再構築することが望ましい。
【0023】
システム(10)はネットワーク(12)を含むことが望ましい。ネットワーク(12)において,プライマリー経路(21)のプライマリー部(32)に障害があるとき,代替ソーススイッチ(28)は,代替ソースノード(26)から代替ソーススイッチ(28)を経て,ネットワーク(12)の代替経路(22)のプライマリー部(34)を通り,プライマリー送信先ノード(20)に至るSPVx接続を再構築することが望ましい。プライマリーソースノード(14)に障害があり,ネットワーク(12)の代替経路(22)のプライマリー部(34)に障害があるとき,代替ソーススイッチ(28)は,プライマリーソーススイッチ(16)を経て,ネットワーク(12)のプライマリー経路(21)のプライマリー部(32)を通ってプライマリー送信先ノード(20)へのSPVx接続を再構築することが望ましい。障害がクリアされた場合,プライマリーソースノード(14)は,プライマリーソースノードからプライマリー送信先ノード(20)へ接続を再構築する。
【0024】
本発明は,SPVx接続の障害に応答する方法に関する。この方法は,プライマリーソースノード(14)とプライマリー送信先ノード(20)との間にSPVx接続を形成するステップを含んでいる。プライマリーソースノード(14)を有するプライマリー経路(21)の障害を検出するステップがある。SPVx接続を,代替経路(22)に沿ってプライマリー送信先ノード(20)へ再構築するステップがある。
【0025】
プライマリーソースノード(14)に障害があるとき,代替ソーススイッチ(28)を特定するために,プライマリーソースノード(14)に連繋されたプライマリーソーススイッチ(16)と,代替ソースノード(26)に連繋された代替ソーススイッチ(28)との間で通信を行なうステップを有することが望ましい。再構築ステップは,プライマリーソースノード(14)に障害があるとき,代替ソースノード(26)からプライマリー送信先ノード(20)までSPVx接続を再構築するステップを含むことが望ましい。
【0026】
プライマリーソースノード(14)とプライマリーソーススイッチ(16)との間のリンク(30)に障害あるとき,代替ソースノード(26)からプライマリー送信先ノード(20)へのSPVx接続を再構築することが望ましい。プライマリーソーススイッチ(26)(【当審注】:「(16)」の誤記と認められる。)に障害があるとき,代替ソースノード(26)からプライマリー送信先ノード(20)へのSPVx接続を再構築するステップを含むことが望ましい。
【0027】
再構築ステップは,ネットワーク(12)において,プライマリー経路(21)のプライマリー部(34)(【当審注】:「(32)」の誤記と認められる。)に障害があるとき,プライマリーソーススイッチ(16)から代替ソーススイッチ(28)を経て,ネットワーク(12)の代替経路(22)のプライマリー部(34)を通り,プライマリー送信先ノード(20)に至るSPVxを再構築するステップを含むことが望ましい。再構築ステップは,プライマリーソースノード(14)に障害があり,ネットワーク(12)の代替経路(22)のプライマリー部(34)に故障があるとき,代替ソーススイッチ(28)からプライマリーソーススイッチ(16)を経て,プライマリー経路(21)のプライマリー部(32)を通ってプライマリー送信先ノード(20)へSPVx接続を再構築するステップを含むことが望ましい。障害がクリアされた場合,プライマリーソーススイッチ(16)からプライマリー送信先ノード(20)へSPVx接続を再構築するステップを有することが望ましい。
【0028】
本発明は,SPVx接続に関する送信先の障害に応答する方法に関する。この方法は,プライマリーソースノード(14)とプライマリー送信先ノード(20)との間にSPVx接続を行なうステップを有している。プライマリーソースノード(14)とプライマリー送信先ノード(20)との間のプライマリー経路(21)の障害を検出するステップがある。SPVx接続を代替送信先ノード(24)へ自動的にリダイレクトするステップがある。
【0029】
プライマリー送信先ノード(20)とのSPVx接続を再構築するために複数のアテンプトを行なうステップがある。検出ステップは,プライマリー送信先ノード(20)の障害を検出するステップを含むことが望ましい。プライマリー送信先ノード(20)によってSPVx接続を解除するステップを有することが望ましい。リダイレクトするステップは,プライマリーソースノード(14)により,SPVx接続を代替送信先ノード(24)へ自動的にリダイレクトするステップを含むことが望ましい。リダイレクトするステップの後,プライマリー送信先ノード(20)とのSPVx接続を復活させることを試みるステップを有することが望ましい。SPVx接続のリダイレクションをトリガする障害コードを設定するステップを有することが望ましい。
【0030】
本発明は,ネットワーク(12)の接続障害に応答する方法に関する。この方法は,プライマリーソースノード(14)とプライマリー送信先ノード(20)との間のネットワーク(12)について,複数のリルート選択肢があり,単一の末端相互間接続を構築するステップを有している。接続の障害を経験する(experience)ステップがある。プライマリーソースノード(14)とプライマリー送信先ノード(20)との間で唯1つの末端相互間接続を維持することにより,複数のリルート選択肢の1つに従って,ネットワーク(12)における接続をリルートするステップがある。
【0031】
経験ステップは,プライマリー送信先ノード(20)の障害を検出するステップを含むことが望ましい。リルートステップは,接続を代替送信先ノード(24)へ自動的にリダイレクトするステップを含むことが望ましい。検出ステップは,プライマリー送信先ノード(20)の障害を検出するステップを含むことが望ましい。また,プライマリー送信先ノード(20)によって,SPVx接続を解除するステップを有することが望ましい。
【0032】
リダイレクトするステップは,プライマリーソースノード(14)により,SPVx接続を代替送信先ノード(24)へ自動的にリダイレクトするステップを含むことが望ましい。リダイレクトステップの後,プライマリー送信先ノード(20)とのSPVx接続を回復する試みを行なうステップを有することが望ましい。障害コードを設定するステップは,SPVx接続のリダイレクションをトリガすることが望ましい。プライマリー送信先ノード(20)との接続を再構築するアテンプトを複数回行なうステップを有することが望ましい。
【0033】
経験ステップは,プライマリーソースノード(14)を有するプライマリー経路(21)の障害を検出するステップを含むことが望ましく,リルートステップは,プライマリー送信先ノード(20)を有する代替経路(22)に沿って接続を自動的にリダイレクトするステップを含んでいる。プライマリーソースノード(14)に関して障害がある場合,代替ソーススイッチ(28)を特定するために,プライマリーソースノード(14)に連繋されたプライマリーソーススイッチ(16)と,代替ソースノード(26)に連繋された代替ソーススイッチ(28)との間で通信を行なうステップを有することが望ましい。プライマリーソースノード(14)に障害が起こったとき,再構築ステップは,代替ソースノード(26)からプライマリー送信先ノード(20)へのSPVx接続を再構築するステップを含むことが望ましい。」(10?12頁)
(【当審注】:【0022】の「・・・プライマリー経路(21)に障害があるとき,代替ソーススイッチ(28)を特定することが望ましい。」,【0025】の「プライマリーソースノード(14)に障害があるとき,代替ソーススイッチ(28)を特定するために,・・・通信を行なうステップを有することが望ましい。」,【0033】の「プライマリーソースノード(14)に関して障害がある場合,代替ソーススイッチ(28)を特定するために,・・・通信を行なうステップを有することが望ましい。」の「代替ソーススイッチ(28)を特定する」の意味は必ずしも明確でないが,文脈からしても,優先権主張に係る米国出願ではそれぞれ「Preferably, the primary source switch 16 in communication with the alternate source switch 28 to identify to the alternate source switch 28 there is a failure in regard to the primary path 21 .」「Preferably, there is the step of communicating between a primary source switch 16 in communication with the primary source node 14 and an alternate source switch 28 in communication with an alternate source node 26 to identify to the alternate source switch 28 there is a failure in regard to the primary source node 14 .」「 Preferably there is the step of communicating between a primary source switch 16 in communication with the primary source node 14 and a alternate source switch 28 in communication with an alternate source node 26 to identify to the alternate source switch 28 there is a failure in regard to the primary source node 14 .」とされている(引用例のパテントファミリーである米国特許出願公開第2005/0002339号明細書の記載も同様である。)ことに照らしても,「代替ノードスイッチ(28)に・・・に関して障害があることを見分けさせる」の意味を含んでいると理解される。)

(3)「【0039】
切替型相手先固定接続(Switched-Permanent Virtual Circuit; SPVC)は,UNIに手操作で構築され,ネットワーク間インターフェース(NNI)に動的に構築されるPVCである。SPVCは,多くの障害があっても,ATMネットワークを通じて常駐する(stay up)。ATMスイッチに障害があると,SPVCはATMネットワークにリルートされる。
【0040】
図2は,PVCsとSVCsが設定される場合を示している。
ノード1乃至ノード5は,ネットワークを包含する中間ノードであり,SVCはそれらを通過する。ノード5は,ノード3に障害があるとき,送信先ノードへの代替経路を形成する。
【0041】
相手先固定接続(PVC)は,ATM相手先選択ネットワークの特定ソースと特定送信先との間で,ネットワークオペレータの手動操作によってもたらされる接続である。PVCは,1日から数年まで続くように接続される。或いは,サービスが終了するまで接続されるようにしてもよい。
【0042】
相手先選択接続(SVC)は,端末装置により,UNI/NNIシグナリング法を通じて動的に構築される接続である。これは,ATMクラウドを通じてコールを動的にルートする端末装置間のATMスイッチでもよい。ネットワークオペレータは,経路中の全てのATMスイッチを手動操作で設定しなくてもよい。リンクに障害がある場合,端末装置は,SVCコールを再び開始する。
【0043】
<ソフトウエア>
本発明を実行するソフトウエアは,スイッチで稼働する。保護された接続がATM接続の場合,ソフトウエアはATMスイッチにあり,MPLS接続の場合は,ソフトウエアはMPLSスイッチにある。特に,スイッチの内部では,ソフトウエア自体はスイッチコントローラプロセッサ(SCP)のメモリにあり,MCPsは,ポートカード又はネットワークモジュールにある。スイッチのソフトウエアは,SCPs又はMCPsによって実行される。」(13頁)

(4)「【0049】
ローカルサイトのスイッチは,設定されたSPVCsの健全状態を調べるために,互いに周期的にポール(poll)すべきである。ポーリングの間隔は,設定可能であらねばならない。もし,ポーリング中に,SPVXがDOWN状態であることがわかると,ポーリングスイッチはそのコールをセットアップする。ユーザは,ポーリングの間隔及び1回のポーリングでポールされるべき接続数を設定することができる。
【0050】
ポーリング中,SPVCのスイッチがUP状態にあり,そのピア(peer)のSPVCもまたUP状態にある場合,SPVCは,プライマリーソースでのみ維持される。バックアップソースは,その接続を遮断する。
【0051】
データソースの機能停止から防御するために,ユーザは,「デッドサイレンス(dead silence)」の時間間隔を設定することができる。この間,データソースからデータの伝送がない場合,データソースは,デッド状態であることが宣告される。このモニタリングは,1接続をベースとして行われ,データソースが機能停止のときはDOWNとしてマークされる。次のポーリングサイクルでは,ポーリングスイッチはこれらSPVCsの状態を監視し,次に,それらのコールをセットアップする。
(中略)
【0054】
しかして,本発明により,カスタマーは冗長なデータソースを有することができる。
必要な要件は,バックアップSPVCに対するものであるので,一方のソーススイッチが機能停止すると,SPVCは他方のソースからセットアップされる。どの時間においても,SPVCは,スイッチ(16)又はスイッチ(28)からどちらか一方だけであり,両方ではない。パートナーSPVCの状態を調べ,ローカルSPVCを作動又は停止させるために,ソーススイッチ(16)とソーススイッチ(28)の間で通信を行なう必要がある。
【0055】
2つのパートナースイッチ間のこの通信は,2つのソーススイッチ間にシグナリング(UNI3.x,UNI4.x又はPNNI)インターフェースを要求することによって行われる。2つのソーススイッチがコロケートされる(co-located)と,ローカルケーブル/ファイバーによって相互接続される。2つのソーススイッチがコロケートされない場合,ネットワーク(12)における「スルーパス(through-path)」を通じて接続される。次に,シグナリングインターフェースは各ソーススイッチに作られるので,ソーススイッチは互いに隣接することになる。ILMIを用いて,SPVCの状態を互いにポールし,ローカルSPVCを作動又は停止させるので,SPVCは,どの時間でも唯1つだけ作動する。他のプロトコルを用いて,互いにポールし,夫々のSPVCsの状態を調べることができる。
(中略)
【0069】
<デッドサイレンスタイマー及びポーリングパラメータ>
前述したように,パートナースイッチは,パートナーソースレジリエントSPVXsの状態を監視し続けるので,パートナーSPVXが機能停止したとき,ローカルSPVXを受け継いでセットアップすることができる。このポーリングが行われる間隔及びポーリング間隔毎にポールされるSPVXsの数については,ユーザによる設定が可能である。」(14?15頁,20頁)


上記記載及び当該技術分野の技術常識を考慮すると,
ア.上記(1)の【0017】,【0019】及び図1,2の記載によれば,引用例には複数のスイッチ(ノード)を備えたネットワーク(12)が記載されており,上記(3)及び図2の記載によれば,当該ネットワーク(12)は,ATMの相手先選択接続(SVC)やMPLS接続にかかるものであるから,コネクション型通信ネットワークといえる。また,図1の記載によれば,プライマリーソーススイッチ(16),プライマリー送信先スイッチ(18),代替ソーススイッチ(28),代替送信先スイッチ(41)は,ネットワーク(12)のエッジノードといえる。したがって,引用例には,「複数のエッジノードを含む複数のノードを備えたコネクション型通信ネットワーク」が記載されていると認められる。

イ.上記(1)の【0017】,【0018】の記載によれば,プライマリーソースノード(14)とプライマリー送信先ノード(20)との間にプライマリー経路(21)が形成され,これは,ネットワーク(12)についてみれば,プライマリーソーススイッチ(16)とプライマリー送信先スイッチ(18)との間にプライマリー経路(21)が形成されているともいえる。また,上記(1)の【0019】,図1の記載によれば,代替経路(22)は,本質的に,プライマリー経路(21)以外の任意の経路であり,例えば代替ソーススイッチ(28)と代替送信先スイッチ(41)との間に形成される経路や代替ソーススイッチ(28)とプライマリー送信先スイッチ(18)との間に形成される経路等が含まれることは明らかである。
したがって,引用例には,「前記ネットワークは,前記エッジノードのプライマリーソーススイッチとプライマリー送信先スイッチを接続するプライマリー経路と,該プライマリー経路とは異なる,前記エッジノードのソーススイッチと送信先スイッチを接続する代替経路とを定義するように構成され」ることが記載されていると認められる。

ウ.上記(2)の記載によれば,プライマリー経路(21)の障害を検出するステップ,SPVx接続を代替経路(22)に沿って再構築するステップがあり,再構築ステップは,プライマリー経路に障害があるとき,プライマリーソースノードに障害があるとき,プライマリーソースノードとプライマリーソーススイッチの間のリンクに障害があるとき,プライマリーソーススイッチに障害があるとき等に,代替経路に沿って接続を自動的に再構築するから,引用例には,「前記ネットワークは,前記プライマリー経路に影響を及ぼす障害が検出された場合に,代替経路に沿って接続を自動的に再構築するように構成され」ることが記載されていると認められる。

エ.上記(2)の【0025】,【0033】には,障害があるとき,プライマリーソーススイッチ(16)と代替ソーススイッチ(28)との間で通信を行なうことが記載されており,上記(4)の【0054】,【0055】には,パートナーSPVCの状態を調べるために,パートナースイッチであるプライマリーソーススイッチ(16)と代替ソーススイッチ(28)との間でシグナリングにより通信を行なうことが記載されている。
したがって,引用例には,「前記プライマリー経路のプライマリーソーススイッチと,前記代替経路の代替ソーススイッチは,互いに通信するように構成される」ことが記載されていると認められる。

したがって,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「複数のエッジノードを含む複数のノードを備えたコネクション型通信ネットワークであって,
前記ネットワークは,前記エッジノードのプライマリーソーススイッチとプライマリー送信先スイッチを接続するプライマリー経路と,該プライマリー経路とは異なる,前記エッジノードのソーススイッチと送信先スイッチを接続する代替経路とを定義するように構成され,
前記ネットワークは,前記プライマリー経路に影響を及ぼす障害が検出された場合に,代替経路に沿って接続を自動的に再構築するように構成され,
前記プライマリー経路のプライマリーソーススイッチと,前記代替経路の代替ソーススイッチは,互いに通信するように構成される
ネットワーク。」


3.対比・判断
(1)引用発明の「前記エッジノードのプライマリーソーススイッチとプライマリー送信先スイッチを接続するプライマリー経路」は,本願発明の「前記エッジノードのプライマリ対を接続するプライマリ・トンネル」に相当する。また,引用発明の「該プライマリー経路とは異なる,前記エッジノードのソーススイッチと送信先スイッチを接続する代替経路」は,本願発明の「該プライマリ対とは異なる,前記エッジノードのセカンダリ対を接続するセカンダリ・トンネル」に相当する。

(2)上記(1)のとおりであるから,引用発明の「前記ネットワークは,前記プライマリー経路に影響を及ぼす障害が検出された場合に,代替経路に沿って接続を自動的に再構築するように構成され」は,本願発明の「前記ネットワークは,前記プライマリ・トンネルに影響を及ぼす障害が検出された場合に,トラフィックを前記プライマリ・トンネルから前記セカンダリ・トンネルへ切り替えることが可能なように構成され」に相当する。

(3)引用発明の「プライマリー経路のプライマリーソーススイッチ」,「代替経路の代替ソーススイッチ」は,それぞれ「プライマリ・トンネルの進入ノード」,「セカンダリ・トンネルの進入ノード」といえる。
したがって,本願発明の「前記プライマリ・トンネルの進入ノードと,前記セカンダリ・トンネルの進入ノードは,進入ノードとしてのそれぞれの状態を識別するためのシグナリングメッセージを用いると共に前記セカンダリ・トンネルへの切り替えを要する関連する障害を識別する障害識別通信を用いて,互いに通信するように構成される」と引用発明の「前記プライマリー経路のプライマリーソーススイッチと,前記代替経路の代替ソーススイッチは,互いに通信するように構成される」とは,下記の相違点は別として,「前記プライマリ・トンネルの進入ノードと,前記セカンダリ・トンネルの進入ノードは,互いに通信するように構成される」点で一致している。

したがって,本願発明と引用発明とを対比すると,両者は,以下の点で一致し,また,相違している。
(一致点)
「複数のエッジノードを含む複数のノードを備えたコネクション型通信ネットワークであって,
前記ネットワークは,前記エッジノードのプライマリ対を接続するプライマリ・トンネルと,該プライマリ対とは異なる,前記エッジノードのセカンダリ対を接続するセカンダリ・トンネルとを定義するように構成され,
前記ネットワークは,前記プライマリ・トンネルに影響を及ぼす障害が検出された場合に,トラフィックを前記プライマリ・トンネルから前記セカンダリ・トンネルへ切り替えることが可能なように構成され,
前記プライマリ・トンネルの進入ノードと,前記セカンダリ・トンネルの進入ノードは,互いに通信するように構成される
ネットワーク。」

(相違点)
「互いに通信するように構成される」ことに関し,本願発明は,「進入ノードとしてのそれぞれの状態を識別するためのシグナリングメッセージを用いると共に前記セカンダリ・トンネルへの切り替えを要する関連する障害を識別する障害識別通信を用いて,互いに通信する」のに対し,引用発明は当該構成が明らかにされていない点。

以下,上記相違点について検討する。
ア.引用例の【0054】,【0055】(上記2.(4)参照。)の記載に照らせば,引用発明は,プライマリーソーススイッチ(16)と代替ソーススイッチ(28)はシグナリングにより連絡を取り合うことにより相手のSPVCの状態を調べることを含んでおり,また,当審拒絶理由で例示した特開2006-135972号公報(請求項3,【0043】?【0049】,図7参照。)にも示されるように,制御プレーン間で制御メッセージ(シグナリングメッセージに相当)により障害などを伝えることは周知であるから,「それぞれの状態を識別するためのシグナリングメッセージを用いる」ことは格別でない。
そして,引用例の【0025】,【0033】(上記2.(2)参照。)の記載に照らせば,プライマリーソーススイッチ(16)と代替ソーススイッチ(28)との間の通信は,障害があるときに代替ソーススイッチ(28)を特定するために為されることも含まれるところ,
(ア)引用発明はプライマリー経路(21)の障害を検出するステップを有するものであり,引用例の【0022】,【0023】,【0025】,【0033】(上記2.(2)参照。)には,プライマリーソースノード(14)に障害があるとき,プライマリーソースノード(14)とプライマリースイッチ(16)の間のリンク(30)に障害があるとき,プライマリースイッチ(16)に障害があるとき,プライマリー経路(21)のプライマリー部(32)に障害があるとき等について,それぞれの障害に対する接続の再構築態様が示されていること,
(イ)プライマリーソーススイッチ(16)と代替ソーススイッチ(28)とは近隣のスイッチ同士に該当するところ,近隣のLSR同士がLiveness Message を定期的に交換して障害がある場合にWorking Path からRecovery Path に切り換えることは当審拒絶理由で例示したRFC3469(14頁15?30行,17頁1行?18頁11行,22頁1行?23頁17行,26頁23行?28頁12行参照。)にも示されているように普通に行われていること
に鑑みれば,上記(ア)の各障害のうち「プライマリースイッチ(16)に障害があるとき」を検出して当該障害に対応する接続の再構築を為すために,プライマリーソーススイッチ(16)と代替ソーススイッチ(28)との間で,プライマリーソーススイッチ(16)の状態を識別するための情報を通信することは,当業者が容易になし得ることである。
更にいえば,ソフト固定型仮想チャンネル接続(SPVC)において,ソーススイッチから送信先スイッチまでの最適ルーティングパスを動的に用いてソフト固定接続型仮想チャンネルを自動的に設定することはソーススイッチ(すなわち,進入ノード。)の責任であること(引用例の【0036】,【0038】。)に鑑みれば,上記「SPVCの状態」は,ソーススイッチに関連する経路の状態(上記(ア)の各障害が含まれる。)であり,ソーススイッチに代表され得るものであるから,「進入ノードとしての」「状態」といい得るものである。
したがって,「前記プライマリ・トンネルの進入ノードと,前記セカンダリ・トンネルの進入ノードは,」「進入ノードとしてのそれぞれの状態を識別するためのシグナリングメッセージを用い」,「互いに通信するように構成される」ことは,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得ることである。

イ.引用例の【0049】?【0051】,【0069】(上記2.(4)参照。)の記載に照らせば,引用発明はポーリング(生存確認に相当。)を行っているものと理解され,また,上記ア(ア)のとおり,引用発明の通信は,プライマリーソーススイッチ(16)に障害があるときの他に,プライマリー経路(21)のプライマリー部(32)に障害があるとき等を識別するための情報を含み得るものであり,これら障害があるときは代替ソーススイッチ(28)はSPVx接続を再構築するのであるから,「前記セカンダリ・トンネルへの切り替えを要する関連する障害を識別する」ものであることは明らかである。そして,これらの情報を互いに通信することを「障害識別通信」と称することは任意である。
更にいえば,「前記セカンダリ・トンネルへの切り替えを要する関連する障害を識別する障害識別通信を用いて,互いに通信する」ことは,当審拒絶理由で例示した特開2003-218911号公報の【0027】の記載に照らしても格別でない。
したがって,「前記プライマリ・トンネルの進入ノードと,前記セカンダリ・トンネルの進入ノードは」,「前記セカンダリ・トンネルへの切り替えを要する関連する障害を識別する障害識別通信を用いて,互いに通信するように構成される」ことは格別でない。

ウ.上記ア,イのとおりであるから,「前記プライマリ・トンネルの進入ノードと,前記セカンダリ・トンネルの進入ノードは,進入ノードとしてのそれぞれの状態を識別するためのシグナリングメッセージを用いると共に前記セカンダリ・トンネルへの切り替えを要する関連する障害を識別する障害識別通信を用いて,互いに通信するように構成される」ようにすることは,当業者が容易になし得ることである。


そして,本願発明の作用効果も,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測し得る範囲のものであり,格別なものではない。


4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-11 
結審通知日 2013-04-15 
審決日 2013-04-26 
出願番号 特願2009-530758(P2009-530758)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永井 啓司  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 新川 圭二
竹井 文雄
発明の名称 通信ネットワークにおける回復法  
代理人 大塚 康弘  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康徳  
代理人 下山 治  
代理人 高柳 司郎  

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