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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服20129701 | 審決 | 特許 |
不服201126007 | 審決 | 特許 |
不服201217207 | 審決 | 特許 |
不服201126373 | 審決 | 特許 |
不服2012475 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04G |
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管理番号 | 1279348 |
審判番号 | 不服2012-8299 |
総通号数 | 167 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-05-08 |
確定日 | 2013-09-19 |
事件の表示 | 特願2006- 86224「建物の解体工法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月11日出願公開、特開2007-262688〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は平成18年3月27日の出願であって、平成24年2月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成24年5月8日付けで拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、当審において、平成24年12月11日付けで審尋が通知され、平成25年1月29日に回答書が提出されたものである。 第2 平成24年5月8日付け手続補正の却下の決定 〔補正の却下の決定の結論〕 平成24年5月8日付け手続補正を却下する。 〔理由〕 1 本件補正の内容 (1)平成24年5月8日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであって、特許請求の範囲については、本件補正前の請求項1に、 「解体する建物に沿って昇降可能な貨物用リフトを、タワークレーンを用いることなく設置し、 前記建物を上層階から下層階へ順次、タワークレーンを用いることなく解体し、 解体により生じた解体材を該貨物用リフトで所定の階に降ろすことを特徴とする建物の解体工法。」とあったものを、 「解体する建物の外周面に沿って昇降可能な貨物用リフトを、タワークレーンを用いることなく前記建物に設けられたジブクレーンを用いて設置し、 前記建物を上層階から下層階へ順次、タワークレーンを用いることなく解体し、 解体により生じた解体材を該貨物用リフトで所定の階に降ろすことを特徴とする建物の解体工法。」と補正するものである。 (2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「解体する建物に沿って昇降可能な貨物用リフト」が沿う建物の部位を、「外周面」に限定し、同じく当該「貨物用リフト」を「前記建物に設けられたジブクレーンを用いて」設置するものに限定するものである。 2 補正の目的 本件補正後の請求項1に係る本件補正は、上記1(2)のとおり、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。 3 引用例 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2006-22534号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同様。) ア 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、例えば、老朽化した高層ビル等の建物の解体方法に関する。 【背景技術】 【0002】 一般に、中・低層建物の解体は、圧砕機等の解体用重機を用いて地表から行われるが、建物高さが約40m以上の高層建物では、解体用重機をレッカー等で簡易に揚重出来ない為、躯体をカッターで切断し、解体材をタワークレーンで揚重することが多い。仮に、解体用重機をタワークレーンで屋上に揚重する場合、タワークレーンの揚重能力(積載荷重)として大きなものが必要となり、コスト増の要因となる。」 イ 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は、上記の問題点を踏まえてなされたもので、その目的とするところは、揚重能力(積載荷重)の小さなタワークレーンを用いても、解体用重機を屋上又は最上階に揚重して、建物を上部から能率よく解体できると共に、解体材を地表まで能率よく荷降ろしできる低コスト化が可能で環境に優しい建物の解体方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 上記の目的を達成するために、本発明が講じた技術的手段は、次のとおりである。即ち請求項1に記載の発明は、建物の外部に立設したタワークレーンにより柱材、梁材等を揚重して、タワークレーンのマストを柱に兼用した揚重用大型リフトを構築し、当該揚重用大型リフトで解体用重機を屋上又は最上階に揚重し、当該解体用重機で建物を上部から解体し、解体材を前記揚重用大型リフトで地表まで降ろし、タワークレーンを利用して前記揚重用大型リフトを解体撤去することを特徴としている。 【0009】 尚、揚重用大型リフトの「大型」とは、揚重能力(積載荷重)がタワークレーンより大きくて、少なくとも解体用重機を揚重できる能力を備えていることを意味する。」 ウ 「【発明を実施するための最良の形態】 【0014】 以下、本発明に係る建物の解体方法を例示図に基づいて説明する。先ず、図1に示すように、解体する建物1の外部に基礎2を構築し、基礎2の上にタワークレーンAを立設する。基礎2としては、鉄筋コンクリート造の直接基礎でもよく、杭基礎でもよい。タワークレーンAは、継足し可能なマスト3と、クライミング装置4及び旋回フレーム5を備えたクレーン本体6とで構成されている。クライミング装置4は、既知構造のもので、例えば、上部クライミング装置4a、下部クライミング装置4b、それらをマスト3に固定する上部ピン及び下部ピン、上部クライミング装置4aと下部クライミング装置4bにわたって設けられた油圧ジャッキ4c等で構成され、上部ピン及び下部ピンの挿抜と油圧ジャッキ4cの伸縮とによって、マスト3の上を尺取虫のように昇降するように構成されている。マスト3としては、鉄骨トラス構造のものでもよいが、この実施形態では、円筒状のものが使用されている。 【0015】 そして、図2に示すように、タワークレーンAのクライミングが完了した後、つまり、所定高さのタワークレーンAが立設された後、当該タワークレーンAにより柱材7や梁材8等を揚重して、図3に示すように、タワークレーンAのマスト3を柱に兼用した揚重用大型リフトBを構築する。具体的には、図4に示すように、マスト3を四隅に立設する4本の柱のうちの1本に利用した揚重用大型リフトBを構築する。 【0016】・・・略・・・ 【0017】・・・略・・・ 【0018】 しかる後、図3に示すように、前記揚重用大型リフトBで解体用重機Cや解体材搬送用のダンプ車Dを屋上に揚重する。図3に示す13は揚重用大型リフトBの昇降ステージであり、地表に設置した揚重用巻上げ機14によって昇降駆動される。15は揚重用大型リフトBの梁と建物1の屋上との間に設けられた仮設の乗り入れステージ、16は揚重用大型リフトBの梁と地表との間に設けられた仮設の乗り入れステージである。図示しないが、建物1の屋上又は最上階の外壁に開口を形成し、解体用重機Cや解体材搬送用のダンプ車Dを揚重用大型リフトBで最上階に揚重してもよい。 【0019】 そして、図5に示すように、解体用重機Cを用いて建物1を上部から解体し、解体材はダンプ車Dに積んで、揚重用大型リフトBで地表に降ろす。従って、躯体をカッターで切断する場合よりも能率よく解体できると共に、解体材を開口から投下する場合に比して、騒音、振動等の発生により周辺環境に与える影響を低減できることになる。解体用重機Cの下層階への移動は、下層階の床スラブとそれに対向する揚重用大型リフトBの梁との間にも乗り入れステージ15を架設し、揚重用大型リフトBの昇降ステージ13を経て下層階へ移動するようにしてもよく、従来通り、床スラブに開口を形成し、解体材等で下層階への傾斜路を形成し、傾斜路を自走して下層階へ移動するようにしてもよい。 【0020】 建物1の解体が完了したら、タワークレーンAを利用して前記揚重用大型リフトBを解体撤去し、次いで、タワークレーンAを解体撤去する。建物1の解体に引き続いて、跡地に新築工事を行う場合には、図6に示すように、タワークレーンAを残置し、このタワークレーンAをそのまま新築工事に使用することができる。 【0021】 尚、揚重用大型リフトBの「大型」とは、揚重能力(積載荷重)がタワークレーンAより大きくて、解体用重機Cや解体材搬送用のダンプ車Dを揚重できる能力を備えていることを意味する。」 エ 「【0024】 上記の構成によれば、建物1の外部に立設したタワークレーンAにより、当該タワークレーンAのマスト3を柱に兼用した揚重用大型リフトBを構築し、当該揚重用大型リフトBで解体用重機Cを屋上又は最上階に揚重するため、揚重能力(積載荷重)の小さなタワークレーンAを利用しているにもかかわらず、解体用重機Cを用いて建物1を上部から能率よく解体できると共に、解体材を地表まで能率よく荷降ろしでき、騒音、振動等の発生により周辺環境に与える影響も低減できる。」 オ 上記アないしエからみて、引用例1には、 「解体する建物1の外部に基礎2を構築し、 基礎2の上に、継足し可能なマスト3と、クライミング装置4及び旋回フレーム5を備えたクレーン本体6とで構成されるタワークレーンAを立設し、所定高さのタワークレーンAが立設された後、タワークレーンAにより柱材7や梁材8等を揚重して、タワークレーンAのマスト3を柱に兼用した、具体的には、マスト3を四隅に立設する4本の柱のうちの1本に利用した揚重用大型リフトBを構築し、 揚重用大型リフトBは、地表に設置した揚重用巻上げ機14によって昇降駆動される昇降用ステージ13を有し、揚重用大型リフトBの梁と建物1の屋上との間や、床スラブとそれに対向する揚重用大型リフトBの梁との間に、仮設の乗り入れステージ15を架設して、解体用重機Cや解体材搬送用のダンプ車Dを屋上や最上階に揚重し、または下層階に移動させ、 解体用重機Cを用いて建物1を上部から解体し、解体材はダンプ車Dに積んで、揚重用大型リフトBで地表に降ろし、 建物1の解体が完了したら、タワークレーンAを利用して揚重用大型リフトBを解体撤去し、次いで、タワークレーンAを解体撤去するものであって、 揚重能力(積載荷重)の小さなタワークレーンAを利用しているにもかかわらず、解体用重機Cを用いて建物Aの上部から能率よく解体できると共に、解体材を地表まで能率よく荷降ろしできる、 老朽化した高層ビル等の建物の解体方法」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 (2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平11-200629号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。 ア 「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、建設工事用仮設エレベータのポスト解体および組立方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】一般に、高層ビル等の建設工事では、作業員の移動や必要な資材等の搬送手段として本設エレベータを設置するための空間を利用する等して仮設エレベータを設置し、この仮設エレベータを工事用の搬送手段としている。 【0003】図3(a),(b),(c)は、建設工事用仮設エレベータのポスト1(ポスト1は複数のポスト部材1a,1a,1a,・・・が縦方向に連接されてなる)の従来の解体および組立方法を示す正面図、平面図、側面図である。 【0004】同図では、26階部分の天井に逸らせ車3が吊設され、この逸らせ車3に巻き掛けられたウインチワイヤー4の一端には、ポスト部材1aを吊り下げるための玉掛けワイヤー6を引掛けるフック5が設けられ、他端は1階に設けられたシーブ7を介してウインチ(図示せず)に巻回されている。 【0005】ポスト1の解体作業において、まず、最上部に位置している2段分のポスト部材1aを建物に支持・固定している壁継ぎ材2を建物の側壁から取り外すとともに、ポスト1の接続部の取り付けボルトを外す。 【0006】そして、この切り離されたポスト部材1aにワイヤー6を玉掛けし、ウインチを駆動するとともに、玉掛けワイヤー6をウインチワイヤー4のフック5にて吊り下げ、ポスト部材1aを地上に降下させる。 【0007】このように、ポスト1の上段より適宜な長さ分(通常、ポスト2?4段分程度)を順に切り離し(壁継ぎ材があるときは、壁継ぎ材とともに)、この切り離されたポスト部材1aをウインチ等の揚重手段(クレーンを用いることもできる)を用いて吊り下げ、地上に降下させるといった作業工程を繰り返すことによって、仮設エレベータのポスト解体作業を進めていた。 【0008】また、仮設エレベータのポストは、上記解体作業と逆の手順を践むことにより組み立てられていた。」 イ 「【0028】また、上記実施形態では、建設工事用仮設エレベータのポスト解体方法について説明したが、このポスト解体方法の逆の手順を践むことにより、ポストを組み立てることができる。 【0029】すなわち、既に組み立てられたポスト1に沿って案内台車8を昇降自在に配置し、案内台車8をポスト1に係止する第1の係止手段の係止を外して、新たに組み立てるポスト部材の受け入れ位置である地上付近まで案内台車8を降下するとともに、受け入れ位置から受け入れたポスト部材を第2の係止手段により案内台車8に係止し、案内台車8をポスト1に沿って上昇し、ポスト1の最上部又は該最上部から複数段下方にて第1の係止手段により案内台車8をポスト1に係止し、前記第2の係止手段による係止を外して当該上昇したポスト部材を揚重手段によりポスト1の最上部上に連結することにより、上昇されるポスト部材が壁面に衝突するおそれを回避することができるのである。」 (3)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平5-9981号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ビルの建設方法、特に高層ビルの建設に好適な建設方法に関するものである。」 イ 「【0007】 【作用】本発明のビルの建設方法では、まずビル最上階一階分の架設用構造体を、ガイドを貫通して上へ延長させた数本の本設柱に沿って、架設用構造体の屋上部に立設固定された昇降装置により上昇させ、架設用構造体の下側に2階高さ分余りの作業空間を確保して本設柱上に支持する。 【0008】次に、上昇した架設用構造体の側部に、地上から延長した垂直搬送装置により2階高さ分の柱部材、梁部材、床部材を運び上げる。屋上へ貫通するコア部柱部材は、架設用構造体下の建造階床を仮置場として屋上のクレーンが仮置場から屋上へ取上げ、屋上において本設柱の上へ順に積上げ接合してゆく。 【0009】建造階用のビル躯体部材は、垂直搬送装置から水平搬送装置へ複数のホイストが乗り移って水平方向へ搬送し、建造階上の複数の場所で並行して、梁、床、その他の柱部材を順次積上げ接合する。これにより、屋上階と建造階の各作業を並行して進めることができる。このとき、建造階では架設用構造体を支える数本の本設柱以外に水平搬送を妨げる物は何も存在しないから、水平搬送と上積建造作業は円滑に能率良く行なえ、作業サイクルが短縮できる。 【0010】また、ビル建設の最終段階では、建造階で上積建造した本設柱上に架設用構造体を接合固定し、屋上ジブクレーンで昇降装置を解体して吊り降し、最上階の仕上げ作業を終えた上でジブクレーンを解体すれば良い。」 ウ 「【0019】一方、垂直搬送装置14は、ビル外壁部に支持され地上から下継ぎすることにより順次押し上げ延長される門形架構36と、この門形架構36の内部に配置されて地上のウインチ(図示略)から繰出される巻上索37で昇降される吊ビーム38とを備えている。この吊ビーム38の下面には、水平搬送装置8のIレール9と整合する短いIレール9Sが取り付けられ、このIレール9Sにホイスト10を乗り込ませ、吊ビーム38で昇降することにより、部材の垂直搬送を行なう。例えば、図8に示す位置で部材を吊った垂直搬送装置14上のホイスト10は、水平搬送装置8のIレール9上に移され、さらに図2に示すように建造階の仮置き床16Fへ部材を降して仮置きする。」 エ 「【0022】次いで、垂直搬送装置14を、上昇した架設用構造体1の高さに合わせて延長し、本設柱5用の部材は垂直搬送装置14を介して地上から建造階16へ搬送したうえ、仮置き床16Fに一旦仮置きし、ここから屋上ジブクレーン7で屋上へ吊上げ、屋上で本設柱5へ積み上げて接合する。また建造階用の他の部材は、垂直搬送装置14から水平搬送装置8へ複数のホイスト10を乗り入れさせ、建造階16内へ水平搬送し、既設のビル躯体部上に積み上げて接合する。」 オ 「【0029】また、図2で示すように、建造階16上で所定の階までの建造が済んだ際に、例えば昇降装置6により架設構造体1を降下させ、所定階の本設柱5上にそのまま接合固定することができる。この時、屋上部の昇降装置6、ジブクレーン7は建造階の仕上作業に対し全く障害とならないうえ、屋上部でジブクレーン7を、昇降装置6その他の設備の解体、撤収、および屋上仕上工事に有効に利用することが可能であるという利点も有する。」 カ 「【0036】(e) 屋上のジブクレーンは、本設柱の継ぎ足し作業のほか、ペントハウスの建付け、機器の搬入、昇降装置や搬送装置等の解体や地上への吊り降し等にも使用できるうえ、最終的には、ジブクレーン自体も屋上で解体し、搬入口からホイスト等で地上へ降せば良いから、ビルの建造に非常にうまく利用できる。」 (4)本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平11-6310号公報(以下「引用例4」という。)には、次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、中,高層ビル等の多層階建物を解体する方法に関する。」 イ 「【0014】即ち、本実施形態の解体方法は図1,図2に示すように、中,高層ビルとして構築されたRC造またはSRC造の多層階建物10に適用されるもので、まず、屋上である(R)階の外周に該多層階建物10の上層部分の側面を覆う所定高さの養生枠12を垂設すると共に、屋上スラブ14を含む屋上部分16が分離される。一方、上記養生枠12を仮設支柱として用い、分離した上記屋上部分16を該養生枠12を介して下層部分18に盛替え可能に支持する。ここで、下層部分18とは分離した屋上部分16の下方に位置する既存部分である。また、上記屋上部分16は最上階全体を含めてもよい。 【0015】上記多層階建物10の屋上にはジブクレーン20を組立ててセットしておき、該ジブクレーン20によって上記養生枠12の構成資材とか、多層階建物10を解体するためのブレーカー22,圧砕機24等の解体重機、更には解体に必要なその他の資材および機材,設備等が揚重される。上記ジブクレーン20は図2に示すように、屋上に設置したレール20aに沿って移動できるようになっており、1基の該ジブクレーン20で屋上の全域を網羅できるようになっている。上記屋上スラブ14には、上記解体重機を搬入するための比較的大きな開口部26が形成されると共に、複数の外気取入れ用開口部28および集塵機30が設けられる。」 ウ 「【0018】かかる多層階建物10の解体手順を図3中(a)?(g)によって順を追って説明すると、まず(a)に示すように解体しようとする多層階建物10の内装および設備配管,ダクトを解体すると共に、屋上にジブクレーン20を組み立てて設置しておく。次に(b)に示すようにジブクレーン20によって養生枠12を地上から揚重して、屋上の周囲に取り付けると共に、固定アーム34およびジャッキ付き可動アーム36を取り付ける部分の外壁を解体しておく。そして、(c)に示すように養生枠12のトラス柱12bに上記固定アーム34および可動アーム36を取り付けると共に、ジブクレーン20でブレーカー22および圧砕機24等の解体重機を揚重して、屋上スラブ14に形成した開口部26から建物10内に搬入する。そして、上記解体重機により屋上の直下階となる(R-1)階の梁および床スラブを解体する。この段階では(R-1)階の柱は残した状態にしておく。」 4 対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「解体する建物1」,「タワークレーンA」,「建物1を上部から解体」,「解体材」及び「老朽化した高層ビル等の建物の解体方法」は、それぞれ本件補正発明の「解体する建物」,「タワークレーン」,「建物を上層階から下層階へ順次解体」,「解体により生じた解体材」及び「建物の解体工法」に相当する。 (2)引用発明の「地表に設置した揚重用巻上げ機14によって昇降駆動される昇降用ステージ13を有する」「揚重用大型リフトB」は、本件補正発明の「昇降可能な貨物用リフト」に相当する。 そして、この「揚重用大型リフトB」は、「揚重用大型リフトBの梁と建物1の屋上との間や、床スラブとそれに対向する揚重用大型リフトBの梁との間に、仮設の乗り入れステージ15を架設」されるものなので、その構成は、本件補正発明の「解体する建物の外周面に沿って昇降可能な貨物用リフト」に相当する。 (3)引用発明の「解体用重機Cを用いて建物1を上部から解体し、解体材はダンプ車Dに積んで、揚重用大型リフトBで地表に降ろす」ことと、本件補正発明の「前記建物を上層階から下層階へ順次、タワークレーンを用いることなく解体し、解体により生じた解体材を該貨物用リフトで所定の階に降ろす」こととは、「前記建物を上層階から下層階へ順次、タワークレーン以外のものを用いて解体し、解体により生じた解体材を該貨物用リフトで所定の階に降ろす」点で一致している。 (4)上記(1)ないし(3)からみて、本件補正発明と引用発明とは、 「解体する建物の外周面に沿って昇降可能な貨物用リフトを設置し、 前記建物を上層階から下層階へ順次、タワークレーン以外のものを用いて解体し、 解体により生じた解体材を該貨物用リフトで所定の階に降ろす、 建物の解体工法。」で一致し、以下の点で相違している。 〔相違点1〕貨物用リフトを、本件補正発明は、タワークレーンを用いることなく建物に設けられたジブクレーンを用いて設置するのに対し、引用発明は、タワークレーンで設置する点。 〔相違点2〕建物を上層階から下層階に順次解体する際に、本件補正発明は、タワークレーンを用いていないのに対し、引用発明は、タワークレーン以外のものである貨物用リフト,解体用重機,ダンプ車を用いているが、タワークレーンを用いているのかどうか不明な点。 5 判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1 ア 引用例2に、資材等の搬送手段である建設工事用仮設エレベータのポストを、ウインチ等の揚重装置を用いて設置及び解体することが、また引用例3に、屋上に設けたジブクレーンを用いて、昇降装置や搬送装置等の解体や地上への吊り降し等に使用できること、及び垂直搬送装置は柱部材,梁部材,床部材を運び上げるものであることが、それぞれ記載されており、引用例2ないし3に接した当業者であれば、貨物用リフトの設置もしくは解体に、タワークレーン以外の揚重装置を用い得るであろうことは、当業者ならば容易に気づく事項である。 イ そして、引用例3に記載の垂直搬送装置の解体や地上への吊り降ろしに屋上のジブクレーンを用いることや、引用例4の「多層階建物10の屋上にはジブクレーン20を組立ててセットしておき、該ジブクレーン20によって上記養生枠12の構成資材とか、多層階建物10を解体するためのブレーカー22,圧砕機24等の解体重機、更には解体に必要なその他の資材および機材,設備等が揚重される」との記載があるように、屋上のジブクレーンによって、各種資材,重機や設備等を揚重することからみても、引用発明の貨物用リフトの設置を、タワークレーンを用いることに替えて、屋上のジブクレーンを用いるものとすること、つまり上記相違点1に係る本件補正発明の構成となることは、当業者であれば、容易になし得たことと認められる。 (2)相違点2 ア 引用発明には、揚重用大型リフトBとタワークレーンAとがあって、解体作業時には、その両方もしくはどちらかを選択使用可能とも言えるが、引用発明において、解体作業時に明確に開示されていることは、屋上,最上階又は下層階に解体用重機Cを揚重又は乗り入れし、解体材を積んだダンプ車Dを揚重用大型リフトBで地表に降ろすことであるので、引用発明において、解体時にタワークレーンを用いないで作業することは、当業者が適宜なし得た事項に過ぎないものと認められる。 (3)効果について 本件補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び引用例2ないし4に記載された技術事項の奏する効果から、当業者が容易に予測できたものである。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、本件補正発明は、当業者が引用発明及び引用例2ないし4に記載された技術事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 6 小括 以上のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成23年5月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2〔理由〕1(1)」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。 2 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1ないし3の記載事項は、上記「第2〔理由〕3」に記載したとおりである。 3 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 上記「第2〔理由〕4(1)ないし(4)」からみて、本願発明と引用発明とは、 「解体する建物に沿って昇降可能な貨物用リフト設置し、 前記建物を上層階から下層階へ順次、タワークレーン以外のものを用いて解体し、 解体により生じた解体材を該貨物用リフトで所定の階に降ろす、建物の解体工法。」で一致し、以下の点で相違している。 〔相違点3〕貨物用リフトの設置及び建物の解体に、本願発明は、タワーリフトを用いていないのに対し、引用発明は、貨物用リフトの設置にタワーリフトを用い、建物の解体には、タワーリフト以外のものである貨物用リフト,解体用重機,ダンプ車を用いているが、タワーリフトを用いたかどうか不明な点。 4 判断 ここで上記相違点3について検討する。 (1)相違点3 ア 上記「第2 5(1)ア」のとおり、貨物用リフトの設置において、タワークレーン以外のものを用い得ることは、当業者ならば容易に想到し得る事項である。 イ 上記「第2 5(2)ア」のとおり、建物の解体において、タワークレーンを用いないで作業することは、当業者が適宜なし得た事項に過ぎないものである。 ウ 上記アないしイからすると、引用発明において、貨物用リフトの設置及び建物の解体に、タワーリフトを用いないものとすること、つまり相違点3に係る本願発明の構成となすことは、当業者ならば容易になし得たことである。 (2)効果について 本願発明の奏する効果は、引用発明及び引用例2ないし3に記載された技術事項の奏する効果から当業者が容易に予測できたものである。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明及び引用例2ないし3に記載された技術事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-07-22 |
結審通知日 | 2013-07-23 |
審決日 | 2013-08-08 |
出願番号 | 特願2006-86224(P2006-86224) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E04G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 五十幡 直子 |
特許庁審判長 |
高橋 三成 |
特許庁審判官 |
住田 秀弘 杉浦 淳 |
発明の名称 | 建物の解体工法 |
代理人 | 一色国際特許業務法人 |