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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1279365
審判番号 不服2012-20230  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-15 
確定日 2013-09-19 
事件の表示 特願2011-175400「タグ用アンテナ及びそれを用いたタグ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月 5日出願公開、特開2012- 5140〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成18年4月26日に出願した特願2006-122459号の一部を平成23年8月10日に新たな特許出願としたものであって、平成24年3月28日付けの拒絶理由通知に対して同年6月4日付けで意見書が提出されたが、同年7月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月15日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明

1 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
同一平面内に導体により形成されたダイポールアンテナと給電部とインダクタンス部とを有するタグ用アンテナであって、
前記給電部は、前記ダイポールアンテナの中心にチップを搭載可能に形成され、
前記インダクタンス部は、前記給電部に対し前記ダイポールアンテナの双極と並列に接続され、
前記ダイポールアンテナは、前記双極を曲げ部にて両側から曲げて形成され、前記曲げ部を直線に伸ばしたときの全長が、使用する周波数に対応する波長であるアンテナ共振波長の1/2よりも短くなりインピーダンスがアンテナ最適値に近くなるようにアンテナ全長およびインダクタンス部が調整されている、
ことを特徴とするタグ用アンテナ。」

2 引用例及びその記載事項

(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願のもとの出願の日前に頒布された刊行物である特開2005-92699号公報(平成17年4月7日公開、以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

a「【請求項1】
所定の情報を記憶し得る情報記憶部を有するIC回路部と、該IC回路部に接続されて非接触にて該情報の送受信を行うアンテナ部とを、備えた無線タグであって、
該アンテナ部は、前記IC回路部に接続された少なくとも2本の線状エレメントから成り、それら線状エレメントそれぞれにおける前記IC回路部に接続されていない側に誘導性パターン部が構成されていることを特徴とする無線タグ。」

b「【請求項3】
前記誘導性パターン部は、前記線状エレメントの端部が雷文状に形成されたものである請求項1の無線タグ。」

c「【0032】
図4は、前記無線タグ24の外観を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は底面図である。また、図5は、図4のV‐V視断面図である。この図4(a)に示すように、前記無線タグ24の片側の面(表面)には、例えば、その無線タグ24の種類を示す「RF-ID」等の印字78が印刷されている。図5に示すように、上記整流部66、電源部68、クロック抽出部70、メモリ部72、変復調部74、及び制御部76等を含むIC回路部80は、PET(ポリエチレンテレフタラート)等から成る色付きのベースフィルム82と一体的に設けられており、上記アンテナ部64は、そのベースフィルム82の表面に印刷等により形成されている。そして、そのベースフィルム82の表側には粘着層84を介して透明なカバーフィルム86が、裏側には粘着層88を介して剥離紙90がそれぞれ接着されている。上記印字78は、上記カバーフィルム86の裏面すなわち上記粘着層84側の面に印刷されている。また、前記無線タグ24が所定の商品等に貼り付けられる際には、上記剥離紙90が剥がされて粘着層88により接着される。」

d「【0039】
図11乃至図19は、前記無線タグ24のアンテナパターンを例示する図である。これらの図に示すように、本実施例の無線タグ24に備えられたアンテナ部64は、前記IC回路部80に一端が接続された少なくとも2本の線状エレメントから成る300MHz以上の共振周波数を有するダイポールアンテナであり、それら線状エレメントそれぞれにおける前記IC回路部80に接続されていない他端側に誘導性パターン部が構成されている。この線状エレメントの長さは、好適には、それぞれ1×10-3m以上250×10-3以下の範囲内である。図20は、前記無線タグ24のアンテナ部64と電極54との静電結合によりその無線タグ24に情報が書き込まれる様子を概略的に示す図である。前記アンテナ部64に電流を流して前記IC回路部80に情報を書き込むためには、正負一対の電極54の間に電位差を生じさせる必要があるため、それら一対の電極54は、前記一対の線状エレメントにおける前記IC回路部80に接続されていない側の端部付近に近接させられる。上記誘導性パターン部は、その電極54の近接位置に対応する部分に上記線状エレメントが集約されたものであり、斯かる誘導性パターン部と前記電極54との間で静電結合を行うことにより結合容量を増大させることができ、効率的な通信を行うことができるのである。
【0040】
前記無線タグ生成装置12は、図2及び図8に示すように、前記一対の電極54の代替として前記無線通信回路56の出力を電磁誘導により前記無線タグ24に伝達するための一対の一次コイル148を備え、図21に示すように、その一次コイル148により前記線状エレメントの誘導性パターン部と電磁結合してそれらの間で電磁誘導を行うことで前記情報の読み書きを行うものであってもよい。この態様において、前記無線通信回路56は、好適には、周波数30MHz以下の搬送波を用いて情報の送受信を行う。図11は、前記線状エレメントの端部が渦巻状に形成された誘導性パターン部150を、図12、図16は、前記線状エレメントの端部が雷文状に形成された誘導性パターン部152、154を、図13は、前記線状エレメントの端部がΩ字状に形成された誘導性パターン部156を、図14は、前記線状エレメントの端部が周状に形成された誘導性パターン部158をそれぞれ例示している。これらの図に示すように、上記誘導性パターン部は、好適には、周状乃至は渦巻状を成すものであり、その誘導性パターンが二次コイルとして機能することにより、電磁誘導による前記無線タグ24への情報の書き込みが可能とされている。」

上記引用例1の記載及び関連する図面、並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

まず、引用例1記載の「無線タグ24」は、「300MHz以上の共振周波数を有するダイポールアンテナ」からなる「アンテナ部64」(上記d(【0039】))を備えるから、「アンテナ部64」は「タグ用アンテナ」ということができ、
該「ダイポールアンテナ」が「同一平面内に導体により形成」されているのは、上記c、図5及び技術常識より明らかであり、
該「ダイポールアンテナ」の「2本の線状エレメント」(即ち、「双極」)は、「IC回路部80」に接続される側の端部、すなわち「ダイポールアンテナの中心」部において、いわゆる「給電部」を形成しており、
該「IC回路部80」は、半導体などで構成されたいわゆる「チップ」と呼ばれる部材であり、当該チップ部材は図5の記載から明らかなように前記「給電部」に搭載されているから、「前記給電部は、前記ダイポールアンテナの中心にチップを搭載可能に形成され」ている。
そして、前記「ダイポールアンテナ」の「2本の線状エレメント」の両他端には、それぞれ「雷文状に形成された」(即ち「曲げ部にて両側から曲げ込まれて角形の渦巻き状に形成された」)「誘導性パターン部」が配置されている。(上記d(【0040】)、図16)

したがって、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されている。

「同一平面内に導体により形成されたダイポールアンテナと給電部とを有するタグ用アンテナであって、
前記給電部は、前記ダイポールアンテナの中心にチップを搭載可能に形成され、
前記ダイポールアンテナは、2本の線状エレメントを曲げ部にて両側から曲げ込まれて角形の渦巻き状に形成される、
タグ用アンテナ。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願のもとの出願の日前に頒布された刊行物である特開2005-80200号公報(平成17年3月24日公開、以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

a「【請求項1】
メアンダ形状の一対の放射素子の相対向する側の端部に給電して励振させる半波長ダイポールアンテナであって、一方の前記放射素子の給電点近傍と他方の前記放射素子の給電点近傍とを短絡するショートバーを設けたことを特徴とするダイポールアンテナ。」

b「【0012】
以下、発明の実施の形態を図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係るダイポールアンテナの平面図である。
【0013】
同図に示すダイポールアンテナ11は、略同形なメアンダ形状に形成された一対の放射素子12,13と、両放射素子12,13を給電点近傍で短絡しているショートバー14とを備えた構成になっている。このダイポールアンテナ11は、放射素子12,13の相対向する側の端部に給電して励振させるというものであり、給電点12a,13aは図示せぬ給電回路に接続されている。また、ショートバー14の一端は放射素子12の給電点12a近傍に接続されており、ショートバー14の他端は放射素子13の給電点13a近傍に接続されている。これらの放射素子12,13およびショートバー14は、誘電体等からなる絶縁基板10上に形成された導体パターンからなる。
【0014】
このように構成されるダイポールアンテナ11では、放射素子12,13がメアンダ形状に形成されているため、等価的にインダクティブなローディングコイルを装荷したことになって電気長が延びている。それゆえ、同調電波の波長をλとしたとき、このダイポールアンテナ11の長手寸法Lはλ/2よりも短くて済む。また、このダイポールアンテナ11では、放射素子12,13がそれぞれ給電点12a,13aからすぐにメアンダ形状の導体パターンとして延設されているが、各放射素子12,13は給電点12a近傍と給電点13a近傍とがショートバー14によって短絡されているため、入力インピーダンスはさほど大きくはならない。しかも、入力インピーダンスはショートバー14の長さや接続位置を調整することによって適宜変化させることが可能なので、結局、このダイポールアンテナ11は、一対の放射素子12,13のメアンダ形状部どうしの間隔dをかなり狭く設定してもインピーダンスのマッチングに支障をきたす心配がない。したがって、このダイポールアンテナ11の長手寸法Lはλ/2よりも大幅に短縮することが可能であり、放射素子がメアンダ形状部を有する従来の半波長ダイポールアンテナに比べて顕著な小型化が実現できる。」

引用例2には、「一対の放射素子12,13と、両放射素子12,13を給電点近傍で短絡しているショートバー14とを備えたダイポールアンテナ11」(上記b(【0013】))が開示されており、「ダイポールアンテナの給電点近傍にダイポールアンテナの双極と並列にショートバーを接続」した構成ということができる。
また、該「ショートバー14」は「導体パターン」であり(上記b(【0013】))、また図1の記載から明らかなように部分的にせよ「メアンダ形状」に形成されているから、その効果も加えて放射素子の端部形状と同様に等価的にインダクティブなコイル(即ち、「インダクタンス部」)を構成するものである。
そして、「前記ダイポールアンテナは、一対の放射素子12,13と、両放射素子12,13を給電点近傍で短絡しているショートバー14とを備えた構成になって」おり(上記b(【0013】))、「入力インピーダンスはショートバー14の長さや接続位置を調整することによって適宜変化させることが可能」である(上記b(【0014】))ことから、「ショートバー14」は「入力インピーダンスを適宜調整するダイポールアンテナのインピーダンスマッチング手段」を構成するものである。

したがって、上記引用例2には、以下の発明(以下、引用発明2という。)が開示されている。

(引用発明2)
「ダイポールアンテナの給電点近傍にダイポールアンテナの双極と並列にショートバー(即ち、インダクタンス部)を接続し、該ショートバーの長さや接続位置を調整することによって入力インピーダンスを適宜調整するダイポールアンテナのインピーダンスマッチング手段」

3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(A)引用発明の「同一平面内に導体により形成されたダイポールアンテナと給電部とを有するタグ用アンテナ」は、本願発明の「同一平面内に導体により形成されたダイポールアンテナと給電部とインダクタンス部とを有するタグ用アンテナ」と、「同一平面内に導体により形成されたダイポールアンテナと給電部とを有するタグ用アンテナ」である点で共通する。

(B)引用発明の「前記給電部は、前記ダイポールアンテナの中心にチップを搭載可能に形成され」ることは、本願発明の 「前記給電部は、前記ダイポールアンテナの中心にチップを搭載可能に形成され」ることに相当する。

(C)引用発明の「ダイポールアンテナ」の「2本の線状エレメント」は、ダイポールアンテナの「双極」ということができるから、引用発明の「前記ダイポールアンテナは、2本の線状エレメントを曲げ部にて両側から曲げ込まれて角形の渦巻き状に形成され」ることは、本願発明の「前記ダイポールアンテナは、前記双極を曲げ部にて両側から曲げて形成され」ることに相当する。


すると、本願発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>
「同一平面内に導体により形成されたダイポールアンテナと給電部とを有するタグ用アンテナであって、
前記給電部は、前記ダイポールアンテナの中心にチップを搭載可能に形成され、

前記ダイポールアンテナは、前記双極を曲げ部にて両側から曲げて形成される、
タグ用アンテナ。」

<相違点>
(ア)本願発明が、「インダクタンス部」を有し、「前記インダクタンス部は、前記給電部に対し前記ダイポールアンテナの双極と並列に接続され」るのに対し、引用発明は、このような特定がない点。
(イ)本願発明が、「前記曲げ部を直線に伸ばしたときの全長が、使用する周波数に対応する波長であるアンテナ共振波長の1/2よりも短くなりインピーダンスがアンテナ最適値に近くなるようにアンテナ全長およびインダクタンス部が調整されている」ものであるのに対し、引用発明には、このような特定がない点。

4 判断
<相違点>(ア)について
引用例2には、「ダイポールアンテナの給電点近傍にダイポールアンテナの双極と並列にショートバー(即ち、インダクタンス部)を接続し、該ショートバーの長さや接続位置を調整することによって入力インピーダンスを適宜調整するダイポールアンテナのインピーダンスマッチング手段」(引用発明2)が記載されている(上記2(2))。
そして、アンテナの「インピーダンスマッチング」とは、アンテナが効率的に電波を送信/受信するための当然の要求項目であるから、引用発明2の「インピーダンスマッチング手段」を同様なダイポールアンテナを有する引用発明1に適用することに格別の困難性はなく、引用発明2の「インピーダンスマッチング手段」の構成に基づいて、引用発明1の「ダイポールアンテナ」において、「ダイポールアンテナの給電点近傍にダイポールアンテナの双極と並列にショートバー(即ち、インダクタンス部)を接続」することにより、本願発明のような「インダクタンス部」を有し、「前記インダクタンス部は、前記給電部に対し前記ダイポールアンテナの双極と並列に接続され」る構成とする程度のことは当業者であれば容易になし得ることである。

よって、本願発明の<相違点>(ア)に係る構成のようにすることは格別なことではない。

<相違点>(イ)について
ダイポールアンテナのアンテナ素子に、等価的にインダクティブなローディングコイルを装荷することにより、電気長を延ばすことは周知技術であって(例えば、引用例2(上記2(2)b(【0014】))、この場合、ローディングコイルを直線状に伸ばしたときの全長を、使用する周波数に対応する通常のアンテナ(すなわち、インダクティブなローディングコイルを装荷しない、直線状のアンテナ)共振波長の1/2より短くすることは常套手段である。
一方、引用発明1の「前記ダイポールアンテナは、2本の線状エレメントを曲げ部にて両側から曲げ込まれて角形の渦巻き状に形成される」ことにおいて、「両側から曲げ込まれて角形の渦巻き状に形成される」ことは、インダクティブな機能を付加するものであるから、等価的にインダクティブなローディングコイルを装荷することと同等であって、このような場合、「曲げ部にて両側から曲げ込まれて角形の渦巻き状に形成される」「2本の線状エレメント」を、直線状に伸ばしたときの全長は、使用する周波数に対応する波長であるアンテナ共振波長の1/2よりも短くし得るものであって、この点に格別の困難性を有しない。
また、アンテナのインピーダンスは、一般に、アンテナの全長により変化するものであり、また、インダクタンス部によってインピーダンスが変化することも、引用例2に記載されている(上記2(2))。そして、アンテナのインピーダンスを調整することは、当業者が普通に行う事項であるから、、引用発明1に引用発明2を適用して(上記<相違点>(ア)について 参照)、アンテナのインピーダンスが最適値になるよう、アンテナの全長およびインダクタンス部を調整することは、当業者が適宜なし得る事項である。

よって、本願発明の<相違点>(イ)に係る構成のようにすることは格別なことではない。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は引用発明1、引用発明2及び周知な事項から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

よって、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知な事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-19 
結審通知日 2013-07-23 
審決日 2013-08-06 
出願番号 特願2011-175400(P2011-175400)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米倉 秀明  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 石井 研一
萩原 義則
発明の名称 タグ用アンテナ及びそれを用いたタグ  
代理人 ▲徳▼永 民雄  
代理人 大菅 義之  

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