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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60C
管理番号 1279370
審判番号 不服2013-1052  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-21 
確定日 2013-09-19 
事件の表示 特願2010- 56172「タイヤ摩耗検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月29日出願公開、特開2011-189795〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成22年3月12日の出願であって、平成24年2月14日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月16日に手続補正がなされ、同年10月22日付けで拒絶査定がされた。
これに対し、平成25年1月21日に拒絶査定に対する審判請求と同時に手続補正がなされ、同年4月17日付けで審尋がされたが、指定期間内に応答がなかったものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成24年4月16日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「車両のホイールに装着されるタイヤのトレッド部に埋設され、同トレッド部の摩耗を検出するための摩耗検出器であって、外部から受ける衝撃に応じて電圧信号を発生する圧電素子、及び同圧電素子で発生した電圧信号から電波信号を生成する信号生成部を有する摩耗検出器と、
前記ホイールに設けられるセンサユニットであって、前記タイヤの内部空気圧を検出する圧力センサ、前記信号生成部で生成された電波信号を受信する受信部、及び前記圧力センサで検出された内部空気圧を示す圧力データ信号を無線送信するとともに前記受信部で受信された電波信号に基づきタイヤの摩耗状態を示す摩耗データ信号を生成して同摩耗データ信号を無線送信する送信部を有するセンサユニットと、
車体に設置され、前記センサユニットから前記圧力データ信号及び前記摩耗データ信号を受信する受信機ユニットと、を備え、
前記信号生成部は、前記圧電素子で発生した電圧信号から、LF帯域の周波数を有する第1の信号を前記電波信号として取り出す共振回路を含み、前記送信部は、前記電波信号に基づきVHF又はUHF帯域の周波数を有する第2の信号を生成して、同第2の信号を前記摩耗データ信号として送信するタイヤ摩耗検出装置。」

3.刊行物記載の発明
(1)刊行物1
これに対し、本願出願前に頒布され、拒絶理由で引用された刊行物である特開2005-100100号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のとおり記載されている。

「【0001】
本発明は、車輪情報を処理する技術に関し、特に、車輪側通信機から車輪情報を受信して処理する車輪情報処理装置および車輪情報処理方法に関する。」

「【0013】
実施の形態1
図1は、実施の形態1に係る車輪情報処理装置を備えた車両10の全体構成を示す。車両10は、4輪の車輪20a?dと、車体12を備える。・・・。
【0014】
各車輪20には、複数のセンサ30が設けられ、それぞれのセンサの出力値は通信機40に送られ、アンテナ50から無線によって車体側通信機200に送信される。・・・。
【0015】
車体側通信機200は、車輪20の近傍に設けられたアンテナ210を介して通信機40から車輪情報を受信し、受信した車輪情報をECU64へ送る。ECU64は、車体側通信機200から受け取った車輪情報に基づいて車輪20の状態を把握する。ECU64は、車輪20のタイヤ温度が所定値を超えたり、車輪20のタイヤ空気圧が所定値を下回ったとき警告ランプ72を点灯させたり、ブザー70に警告音を鳴らさせることにより、車輪20の異常をドライバに知らせる。」

「【0017】
図2は車輪20の断面図であり、この断面図において図1で説明した各車輪20に設けられる複数のセンサ30の搭載箇所および構成の一例を示す。車輪20は、タイヤ21、ホイール22およびリム26を含み、ホイール22のバルブ24にはホイール側センサ31が一体的に組み付けられ、タイヤトレッド28にはタイヤ側センサ32が埋め込まれている。ホイール側センサ31は、タイヤ21の空気圧を検出する空気圧センサと、タイヤ21内の空気の温度を検出する温度センサとを搭載した高機能センサであり、タイヤ側センサ32は、タイヤトレッド28の温度を検出する温度センサである。・・・。ホイール側センサ31およびタイヤ側センサ32は、図1で説明した通信機40およびアンテナ50を内蔵しており、車体12に設けられた車体側通信機200とアンテナ210を介して無線で通信する。」

「【0031】
実施の形態2
実施の形態2は、実施の形態1と同じ構成であるが、車体側通信機200と複数のセンサ30の間の通信手順が実施の形態1とは異なる。図7は実施の形態2に係るホイール側センサ31およびタイヤ側センサ32が車体側通信機200と通信する様子を説明する図である。本実施の形態では、タイヤ側センサ32は、車体側通信機200とは直接通信することなく、センサの出力信号にタイヤ側センサ32の識別情報を付加してホイール側センサ31に無線で送信する。ホイール側センサ31は受信したタイヤ側センサ32の出力信号を車体側通信機200へ転送する。また、ホイール側センサ31は、自己のセンサの出力信号にホイール側センサ31の識別情報を付加して車体側通信機200へ直接送信する。」

「【0035】
本実施の形態では、ホイール側センサ31がタイヤ側センサ32の通信の中継器として働くため、ホイール側センサ31の返信信号とタイヤ側センサ32の返信信号の送信タイミングが重なることはなく、混信は生じない。タイヤ側センサ32は、ホイール側センサ31と近距離の無線通信をするため、車体12側にある車体側通信機200と通信する場合に比べて通信距離が短く、電力が少なくて済む。タイヤ側センサ32が電池駆動される場合、電池の消耗を抑えることができる。」

「【0040】
・・・。また、センサの種類は、空気圧センサ、温度センサに限らず、速度センサ、加速度センサなど車輪状態量を検出するいずれの種類のセンサであってもよい。」

図7
ホイール22にホイール側センサ31が設けられていること。

上記記載を、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理すると、上記刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されている。
「車両10のホイール22に装着されるタイヤ21のタイヤトレッド28に埋め込まれ、タイヤトレッド28の温度を検出するタイヤ側センサ32であって、タイヤ側センサ32の出力信号を送信するタイヤ側センサ32と、
前記ホイール22に設けられるホイール側センサ31であって、前記タイヤ21の空気圧を検出する空気圧センサ、前記タイヤ側センサ32からの出力信号の受信手段、及び前記空気圧センサの出力信号を無線送信するとともに前記受信手段で受信されたタイヤ側センサ32からの出力信号を無線送信する送信手段を有するホイール側センサ31と、
車体12に設置され、前記ホイール側センサ31から前記空気圧センサの出力信号及び前記タイヤ側センサ32からの出力信号を受信する車体側通信機200と、を備える、
車輪情報処理装置。」

(2)刊行物2
同じく特開昭60-13236号公報(以下「刊行物2」という。)には、次のとおり記載されている。

(第2ページ左上欄第2?18行)
「(ハ)本発明の目的
本発明はこれらの問題を解消するためにタイヤに関する現象を小型、軽量、安価でしかも無電源で異常を検知し、回転するタイヤに非接触で車体側に伝達し、車内の集中アラームシステムに信号を送ることのできるタイヤ監視用センサを提供するものである。
(ニ)発明の開示
本発明の監視センサ本体の一例を第1図1に示す。このセンサ1を車輛用タイヤ8の外周ゴム内部に埋込んだものである。監視センサ本体は、ジルコン酸テタン酸鉛磁器等からなる分極処理された圧電素子3とこの圧電素子にタイヤ回転路面との接触圧力によって生ずる圧力によって電圧パルスを電磁波送信に変換するための発信器6からなり両者は弾性体7を介して電気的に結合されている。」

(第2ページ右上欄第8?14行)
「圧電素子は停止している状態では何んら電圧を発生しないが車輛が走行してタイヤの回転が始まると、回転速度、路面との接触状況に応じた電圧パルスを発生し、この電圧パルスはリード線を介して接続された発信器によって車体に伝達する電磁波に変換され、車内の表示装置にタイヤ状況を表示せしめることができる。」

(第2ページ左下欄第7?14行)
「次に本発明の第1図に示す監視センサを第2図に示す如く摩耗限界のタイヤ内部に質量体を位置させて埋込んだ場合には、タイヤのゴムを介してセンサがある場合からタイヤ表面の摩耗が進んで質量体の先端が表面部に近くなるにつれて圧電素子に発生する電圧パルスが著しく高くなり第3図(ハ)受信した電磁波によってタイヤ摩耗を検出できる。」

上記記載を、技術常識を踏まえ整理すると、刊行物2には、次の事項(以下「刊行物2事項」という。)が記載されている。
「タイヤ8の外周ゴム内部に、圧電素子3と、この圧電素子にタイヤ回転路面との接触圧力によって生ずる圧力によって電圧パルスを電磁波送信に変換するための発信器6からなり、タイヤ表面の摩耗が進んで質量体の先端が表面部に近くなるにつれて圧電素子に発生する電圧パルスが高くなり、電圧パルスは発信器によって車体に伝達する電磁波に変換され、車内においてタイヤ摩耗を検出するタイヤ監視用センサ。」

4.対比・判断
本願発明と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明における「タイヤトレッド28」は本願発明における「トレッド部」に相当し、同様に「埋め込まれ」は「埋設され」に、「ホイール側センサ31」は「センサユニット」に、「空気圧」は「内部空気圧」に、「空気圧センサ」は「圧力センサ」に、「受信手段」は「受信する受信部」に、「空気圧センサの出力信号」は「圧力センサで検出された空気圧を示す圧力データ信号」に、「車体側通信機200」は「受信機ユニット」に、相当する。
刊行物1発明の「温度を検出するタイヤ側センサ32」、「車輪情報処理装置」と、本願発明の「摩耗を検出するための摩耗検出器」、「タイヤ摩耗検出装置」とは、「状態を検出するための状態検出器」、「タイヤ状態検出装置」である限りにおいて、一致する。
刊行物1発明の「タイヤ側センサ32の出力信号を送信する」こと、「タイヤ側センサ32からの出力信号」と、本願発明の「外部から受ける衝撃に応じて電圧信号を発生する圧電素子、及び同圧電素子で発生した電圧信号から電波信号を生成する信号生成部を有する」こと、「信号生成部で生成された電波信号」とは、「状態検出器からの信号を送信する」こと、「状態検出器からの信号」である限りにおいて、一致する。
刊行物1発明の「タイヤ側センサ32からの出力信号」とそれを「無線送信する送信手段」と、本願発明の「電波信号に基づきタイヤの摩耗状態を示す摩耗データ信号」とそれを「生成して同摩耗データ信号を無線送信する送信部」とは、「状態検出器からの信号」とそれを「無線送信する送信部」である限りにおいて、一致する。

そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。
「車両のホイールに装着されるタイヤのトレッド部に埋設され、同トレッド部の状態を検出するための状態検出器であって、状態検出器からの信号を送信する状態検出器と、
前記ホイールに設けられるセンサユニットであって、前記タイヤの内部空気圧を検出する圧力センサ、前記状態検出器からの信号を受信する受信部、及び前記圧力センサで検出された内部空気圧を示す圧力データ信号を無線送信するとともに前記受信部で受信された状態検出器からの信号を無線送信する送信部を有するセンサユニットと、
車体に設置され、前記センサユニットから前記圧力データ信号及び前記状態検出器からの信号を受信する受信機ユニットと、を備える、
タイヤ状態検出装置。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1:タイヤ状態の検出について、本願発明は「摩耗を検出するための摩耗検出器」が「外部から受ける衝撃に応じて電圧信号を発生する圧電素子、及び同圧電素子で発生した電圧信号から電波信号を生成する信号生成部」を有し、センサユニットが「信号生成部で生成された電波信号」を受信し「電波信号に基づきタイヤの摩耗状態を示す摩耗データ信号を生成して同摩耗データ信号を無線送信する送信部」を有し、受信機ユニットが「摩耗データ信号」を受信するものであるが、刊行物1発明は「温度を検出するタイヤ側センサ32」が「タイヤ側センサ32の出力信号を送信」し、センサユニットが「タイヤ側センサ32の出力信号」を受信するとともに送信し、受信機ユニットが「タイヤ側センサ32の出力信号」を受信するものである点。
相違点2:信号について、本願発明は「信号生成部は、前記圧電素子で発生した電圧信号から、LF帯域の周波数を有する第1の信号を前記電波信号として取り出す共振回路を含み、前記送信部は、前記電波信号に基づきVHF又はUHF帯域の周波数を有する第2の信号を生成して、同第2の信号を前記摩耗データ信号として送信する」ものであるが、刊行物1発明は明らかでない点。

相違点1について検討する。
刊行物2事項は、上記のとおり、タイヤ状態の一つとして「摩耗」を検出するものであり、そのために「タイヤ回転路面との接触圧力を検出する」「圧電素子」と「電圧パルスを電磁波送信に変換するための発信器」を有している。
そして、刊行物2事項の「タイヤ回転路面との接触圧力を検出する」「圧電素子」は、本願発明の「外部から受ける衝撃に応じて電圧信号を発生する圧電素子」に、「電圧パルスを電磁波送信に変換するための発信器」は、「圧電素子で発生した電圧信号から電波信号を生成する信号生成部」に相当する。
また、刊行物2事項の「発信器(信号生成部)」が送信する情報は、「タイヤの摩耗状態を示す摩耗データ信号」であることは明らかである。
刊行物1には、その段落0040に「温度センサに限らず、速度センサ、加速度センサなど車輪状態量を検出するいずれの種類のセンサであってもよい」との記載があり、他の車輪状態量を検出することが示唆されている。
よって、刊行物1発明において、「他の車輪状態量」として「摩耗」を検出するため、刊行物2事項を適用して、相違点1に係るものとすることは、必要に応じてなしうる設計的事項にすぎない。

相違点2について検討する。
タイヤにおける無線送受信装置において、通信距離が短い場合は、LF帯域の周波数を有する信号を用い、通信距離が長い場合は、VHF又はUHF帯域の周波数を有する信号を用いることは、原査定で引用された特開2008-24180号公報(特に段落0034)、同じく特開2006-7902号公報(特に段落0024)に記載されているように、周知である。
また、センサユニットからデータ信号を無線送信する際に、共振回路を用いることは、審尋で引用した特表2009-530157号公報(特に段落0031)、同じく特開2005-96726号公報(特に段落0036)に記載されているように、周知である。
刊行物1発明において、タイヤ側センサ32(摩耗検出器)とホイール側センサ31(センサユニット)間の通信距離は、ホイール側センサ31(センサユニット)と車体側通信機200(受信機ユニット)間の通信距離よりも短い。
よって、刊行物1発明において、通信距離に応じて、上記周波数に関する周知技術、無線送信回路に関する周知技術を適用することに困難性は認められない。
その結果、相違点1を踏まえると、「VHF又はUHF帯域の周波数を有する第2の信号」は「摩耗データ信号」となり、相違点2に係るものとなる。

また、これら相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとも認められない。

請求人は、審判請求書において、「これら周知技術文献1,2(当審注、周波数に関する周知技術)に記載されているのは、本願発明が着眼した上記技術事項とは全く異なるものである。周知技術文献1,2に記載されている技術事項は、車両走行時において回転しているタイヤ側の送受信機と、車体側の通信機という互いの位置関係が常に激しく変化し、しかも一方が金属製の車体側に設けられているという、非常に悪い通信環境下での通信にLF帯を使用するものである。」と主張している。
しかしながら、周知技術文献1,2には、「悪い通信環境下での通信にLF帯を使用する」技術事項ではなく、「通信距離が短い場合は、LF帯域の周波数を有する信号を用い、通信距離が長い場合は、VHF又はUHF帯域の周波数を有する信号を用いる」技術事項が記載されていると認められるから、請求人の主張は根拠がない。

5.むすび
本願発明は、刊行物1発明、刊行物2事項、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-17 
結審通知日 2013-07-23 
審決日 2013-08-05 
出願番号 特願2010-56172(P2010-56172)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩田 健一  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 渡邊 真
熊倉 強
発明の名称 タイヤ摩耗検出装置  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  

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