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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01F |
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管理番号 | 1279670 |
審判番号 | 不服2011-23491 |
総通号数 | 167 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-11-01 |
確定日 | 2013-09-25 |
事件の表示 | 特願2009-518618「液晶高分子(LCP)物質を用いる変圧器及び関連する製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月10日国際公開、WO2008/005993、平成21年12月 3日国内公表、特表2009-543361〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2007年7月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年7月6日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年12月24日付けで拒絶理由が通知され、平成23年6月16日付けで手続補正されたが、同年7月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月1日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。 第2 本願発明 特許請求の範囲の請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年6月16日付けで手続補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項5に記載された以下のとおりのものと認める。 「対向する面を有し且つ前記面の少なくとも1面に金属クラッドを有する第1液晶高分子(LCP)シート; 前記金属クラッド上にエッチングされた金属回路としての前半の1次及び2次巻線; 対向する面を有し且つ前記面の少なくとも1面に金属クラッドを有し且つ前記第1LCPシート上に適用された第2LCPシート; 第1及び第2LCPシート間に位置したフェライト層; 前記第2LCPシートの金属クラッド上のエッチングされた金属回路としての後半の1次及び2次巻線;及び 第1及び第2LCPシート内に形成され、且つ各前半及び後半の1次巻き線をお互いに相互接続し、各前半及び後半の2次巻き線をお互いに相互接続する導電ビア を含む変圧器。」 なお、請求項5には「各各」と記載されているが、「各各」は「各」の明らかな誤記と認め、本願発明を上記のように認定した。 第3 引用発明 A 原審の拒絶理由に引用された特開昭61-19109号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「〔発明の技術分野〕 本発明は高周波化スイッチングレギュレータの電圧変換回路に使用されるトランスに関するものである。」(1頁左下欄18行?同頁右下欄1行) ロ.「本発明を実施例に基づき詳細に説明する。第2図に本発明に係わるトランスの一実施例の組立状態を示し、第3図にその分解状態を示す。第2図において、11,12は表面に金属印刷配線が形成された絶縁板、13は磁気回路を構成するコア、14は絶縁板11,12に挟まれた絶縁材料、5a,5b,5c,・・・,6a,6b,6c,・・・は絶縁板11の表面に形成された金属印刷配線である。第3図において、3a,3b,・・・4a,4b,4c,・・・は絶縁板11の金属印刷配線と絶縁板12の金属印刷配線とを接続するために絶縁材料14に設けられたスルーホール、7a,7b,・・・,8a,8b,・・・は絶縁板12の表面(図で下面)に形成された金属印刷配線、3a-1,3b-1,・・・,4a-1,4b-1,4c-1,・・・は金属印刷配線5a,5b,5c,・・・,6a,6b,6c,・・・とスルーホール3a,3b,・・・,4a,4b,4c,・・・とを接続するために絶縁板11に設けられたスルーホール、3a-2,3b-2,・・・,4a-2,4b-2,4c-2,・・・は金属印刷配線7a,7b,・・・,8a,8b,・・・とスルーホール3a,3b,・・・,4a,4b,4c,・・・とを接続するために絶縁板12に設けられたスルーホールである。 次にこのトランスの構造について第3図を用いて説明する。コア13と絶縁材料14はともに絶縁板11,12に挟み込まれ、金属印刷配線5aはスルーホール3aを介して金属印刷配線7aに接続され、金属印刷配線7aはスルーホール3bを介して金属印刷配線5bに接続されているので、金属印刷配線5a,スルーホール3a,金属印刷配線7a,スルーホール3bおよび金属印刷配線5bにより構成される電線路により、コア13の周囲に一回巻線が形成されることになる。同様な接続を複数回繰り返せば複数回巻線が形成されることになる。このようにして必要な一次巻線を得ることができる。同様に金属印刷配線6a,6b,6c,8a,8b,スルーホール4a,4b,4c等を順次に接続することにより必要な二次巻線を得ることができる。また絶縁板11,12には金属印刷配線がなされた回路(図示されていない)を設け、トランスとこの回路との接続を予め金属印刷配線により完了しておけば、接続作業が不要となる効果がある。」(2頁左上欄4行?同頁左下欄4行) 上記引用例1の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ロ.の記載、第2図及び第3図によれば、トランスは、絶縁板(11)、(12)を備え、絶縁板(11)は、絶縁板(12)と対向する面を有し絶縁板(12)上に組立てられている。そして、トランスは、絶縁板(11)及び絶縁板(12)に挟まれたコア(13)及び絶縁材料(14)を備えている。ここで、上記ロ.における「5a,5b,5c,・・・,6a,6b,6c,・・・は絶縁板11の表面に形成された金属印刷配線である。」との記載によれば、前述の絶縁板(11)は、表面に金属印刷配線(5a,5b,5c,6a,6b,6c)を有している。また、上記ロ.における「7a,7b,・・・,8a,8b,・・・は絶縁板12の表面(図で下面)に形成された金属印刷配線」との記載によれば、前述の絶縁板(12)は、表面に金属印刷配線(7a,7b,・・・,8a,8b,・・・)を有している。 また、上記ロ.における「金属印刷配線5aはスルーホール3aを介して金属印刷配線7aに接続され、金属印刷配線7aはスルーホール3bを介して金属印刷配線5bに接続されているので、金属印刷配線5a,スルーホール3a,金属印刷配線7a,スルーホール3bおよび金属印刷配線5bにより構成される電線路により、コア13の周囲に一回巻線が形成されることになる。同様な接続を複数回繰り返せば複数回巻線が形成されることになる。このようにして必要な一次巻線を得ることができる。」との記載、第2図及び第3図によれば、スルーホール(3a,3b,・・・)は、金属印刷配線(5a,5b,5c)と金属印刷配線(7a,7b,・・・)を相互接続し、一次巻線を構成しており、ここで、金属印刷配線(5a,5b,5c)を前半の一次巻線と称し、金属印刷配線(7a,7b,・・・)を後半の一次巻線と称することは任意である。 また、上記ロ.における「同様に金属印刷配線6a,6b,6c,8a,8b,スルーホール4a,4b,4c等を順次に接続することにより必要な二次巻線を得ることができる。」との記載によれば、スルーホール(4a,4b,4c)は、金属印刷配線(6a,6b,6c)と金属印刷配線(8a,8b,・・・)を相互接続し、二次巻線を構成しており、ここで、金属印刷配線(6a,6b,6c)を前半の二次巻線と称し、金属印刷配線(8a,8b,・・・)を後半の二次巻線と称することは任意である。 また、上記ロ.における「3a-1,3b-1,・・・,4a-1,4b-1,4c-1,・・・は金属印刷配線5a,5b,5c,・・・,6a,6b,6c,・・・とスルーホール3a,3b,・・・,4a,4b,4c,・・・とを接続するために絶縁板11に設けられたスルーホール、3a-2,3b-2,・・・,4a-2,4b-2,4c-2,・・・は金属印刷配線7a,7b,・・・,8a,8b,・・・とスルーホール3a,3b,・・・,4a,4b,4c,・・・とを接続するために絶縁板12に設けられたスルーホールである。」との記載、及び第3図によれば、スルーホール(3a-1,3b-1,・・・,4a-1,4b-1,4c-1,3a-2,3b-2,・・・,4a-2,4b-2,4c-2,・・・)は、絶縁板(11)、(12)内に形成されていることが読み取れる。 したがって、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「対向する面を有し且つ表面に金属印刷配線(7a,7b,・・・,8a,8b,・・・)を有する絶縁板(12); 前半の一次及び二次巻線; 対向する面を有し且つ表面に金属印刷配線(5a,5b,5c,6a,6b,6c)を有し且つ前記絶縁板(12)上に組立てられた絶縁板(11); 絶縁板(12)及び絶縁板(11)に挟まれたコア(13)及び絶縁材料(14); 後半の一次及び二次巻線;及び 絶縁板(11,12)内に形成され、且つ各前半及び後半の一次巻線をお互いに相互接続し、各前半及び後半の二次巻線をお互いに相互接続するスルーホール(3a,3b,・・・,4a,4b,4c,3a-1,3b-1,・・・,4a-1,4b-1,4c-1,3a-2,3b-2,・・・,4a-2,4b-2,4c-2,・・・) を含むトランス。」 B 原審の拒絶理由に引用された特開2006-49536号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ハ.「【技術分野】 【0001】 本発明は、複数の絶縁層と複数の導体層とを交互に積層し、絶縁層を貫通するバイアにより隣接する導体層を電気的に接続した多層回路基板に関するものである。」(2頁) ニ.「【0004】 そこで、従来、絶縁層に液晶ポリマーフィルムを用いる技術が提案されている。液晶ポリマー(LCP)は、耐熱性、弾性、寸法安定性、高周波特性に優れた分子構造を備えているので、ガラス布等の強化材を不要にし、絶縁層の厚さを均一化し、レーザ等を用いて微細なバイアホールを容易に形成することができる。また、液晶ポリマーフィルムは熱可塑性樹脂であるから、フィルム自体の熱融着性を利用して積層でき、接着剤層を省いて、多層回路基板を薄形化できる利点がある。」(2頁) ホ.「【0015】 以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、この実施形態の多層回路基板1は、3層の絶縁層2と4層の導体層3とを交互に積層して構成されている。絶縁層2には液晶ポリマーフィルム4が用いられ、液晶ポリマーフィルム4を貫通する多数のバイア5によって4層の導体層3が電気的に接続されている。隣接する液晶ポリマーフィルム4の間において、導体層3とバイア5との間にはメタライズ層6が介装されている。そして、液晶ポリマーフィルム4を加熱圧着するときの熱でメタライズ層6が溶融され、固化したメタライズ層6により導体層3がバイア5に接着されている。 【0016】 多層回路基板1は、図2に示すように、コア基板である1枚の両面回路基板8と、両面回路基板8を挟む2枚の片面回路基板9と、片面回路基板9の外面を覆う2枚の保護カバー10とを備えている。各回路基板8,9において、絶縁層2の液晶ポリマーフィルム4には厚さが25?50μm程度の前記「BIACフィルム」又は「ベクスターフィルム」が使用され、導体層3に厚さ4?35μm程度の配線パターン11が形成されている。液晶ポリマーフィルム4の複数箇所には、直径30?50μmのバイアホール12(図3参照)が穿設され、各バイアホール12にバイア5が充填形成されている。配線パターン11の各部には直径80?100μmのランド13が配設され、パターン形成工程でバイア5の端面に接着されている。 【0017】 両面回路基板8のランド13には、厚さ0.1?10μm程度のメタライズ層6が被着され、片面回路基板9のバイア5の端面に、同じ厚さのメタライズ層6が被着されている。そして、各基板8,9の積層時に、双方のメタライズ層6が融着し、このメタライズ層6を介してランド13とバイア5とが接着されている。各液晶ポリマーフィルム4の両面には、フィルム4の加熱圧着時の溶融樹脂を抑留する複数の溝又はマトリックス状の凹部14が形成されている。なお、保護カバー10には、絶縁層2と同じ材質の液晶ポリマーフィルム又はレジストフイルムが用いられている。 【0018】 次に、多層回路基板1の製造方法について説明する。両面回路基板8は図3(a)?(f)に示す工程順で製造される。 (a)基板8を多数個取りできる大きさの両面銅張り液晶ポリマーフィルム4を出発材料として用意し、片面の導体層3(銅箔)の複数部位をエッチングで除去し、バイアホール穿孔用の穴15を形成する。 (b)穴15と対応する部位の液晶ポリマーフィルム4にバイアホール12をレーザ加工法により穿孔する。 (c)バイアホール12にバイア5を電解又は無電解銅めっきにより充填する。 (d)両面の導体層3をエッチング処理し、液晶ポリマーフィルム4の両面に所要の配線パターン11を形成するとともに、バイア5の両端面にそれと同心のランド13を形成する。 (e)液晶ポリマーフィルム4の両面に凹部14をレーザ加工法により形成する。 (f)ランド13の表面にメタライズ層6を金すず合金めっき(すず20%前後)又はすず金合金めっき(金5?20%前後)により被着する。 【0019】 片面回路基板9は図4(a)?(e)に示す工程順で製造される。 (a)基板9を多数個取りできる大きさの片面銅張り液晶ポリマーフィルム4を出発材料として用意する。 (b)液晶ポリマーフィルム4にバイアホール12と凹部14をレーザ加工法により同時に形成する。 (c)バイアホール12にバイア5を電解又は無電解銅めっきにより充填する。 (d)片面の導体層3(銅箔)をエッチング処理し、液晶ポリマーフィルム4の片面に所要の配線パターン11を形成するとともに、バイア5の一方の端面にそれと同心のランド13を形成する。 (e)バイア5の他方の端面にメタライズ層6を金すず合金めっき(すず20%前後)又はすず金合金めっき(金5?20%前後)により被着する。 【0020】 そして、図2に示すように、両面回路基板8と片面回路基板9と保護カバー10とを積層し、全体を250?335℃で加熱し、同時に1?25MPaで加圧する。この加熱加圧工程では、図1に示すように、各基板8,9の液晶ポリマーフィルム4同士が融着するとともに、片面回路基板9の液晶ポリマーフィルム4と保護カバー10とが融着する。このとき、液晶ポリマーフィルム4の溶融樹脂の一部が凹部14に抑留され、各基板8,9の界面において溶融樹脂の流動が抑制される。また、加熱により両面回路基板8側のメタライズ層6と片面回路基板9側のメタライズ層6とが融着し、固化したメタライズ層6によって両面回路基板8側のランド13と片面回路基板9側のバイア5とが接着される。その後、この積層体を所要の大きさに切断し、多層回路基板1を完成する。 【0021】 従って、この実施形態の多層回路基板1によれば、次のような効果を期待できる。 (1)絶縁層2に液晶ポリマーフィルム4を用いたので、接着剤層を省いて、多層回路基板1を薄形化することができる。 (2)液晶ポリマーフィルム4は絶縁層2の厚さを均一にするので、レーザを用いて微細なバイアホール12を正確に形成し、バイア5の位置精度を高めることができる。 (3)このため、バイア5に接合するランド13を微小化できるとともに、バイア5の真上にバイア5を精度よく積み上げることができる。 【0022】 (4)液晶ポリマーフィルム4に凹部14を設けたので、加熱圧着時における溶融樹脂の界面流動を抑え、導体層3の変形による配線ピッチの変動を防止し、配線パターン11のファイン化を促進することができる。 (5)両面回路基板8と片面回路基板9との間において、ランド13とバイア5とをメタライズ層6により接着したので、銅の酸化や基板8,9の変形による導通不良を確実に防止して、層間接続の信頼性を高めることができる。」(4?5頁) 上記引用例2の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ホ.の【0019】の記載、及び図4(a)?(e)によれば、多層回路基板は、片面に導体層(3)(銅箔)を有する液晶ポリマーフィルム(4)を備え、前記導体層(3)(銅箔)をエッチング処理した配線パターン(11)を含んでいる。 したがって、引用例2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「片面に導体層(3)(銅箔)を有する液晶ポリマーフィルム(4); 前記導体層(3)(銅箔)をエッチング処理した配線パターン(11);を含む多層回路基板。」 第4 対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 a.引用発明1の「金属印刷配線(7a,7b,・・・,8a,8b,・・・)」及び「金属印刷配線(5a,5b,5c,6a,6b,6c)」と、本願発明の「金属クラッド」とは、いずれも、「金属部材」という点で一致する。 b.引用発明1の「絶縁板(12)」及び「絶縁板(11)」と、本願発明の「第1液晶高分子(LCP)シート」及び「第2LCPシート」とは、いずれも、「絶縁部材」という点で一致し、それぞれ「第1絶縁部材」及び「第2絶縁部材」と称することは任意である。 c.引用発明1の「絶縁板(12)及び絶縁板(11)に挟まれたコア(13)及び絶縁材料(14)」と、本願発明の「第1及び第2LCPシート間に位置したフェライト層」とは、上記b.の対比を考慮すれば、「第1絶縁部材及び第2絶縁部材間に位置した特定の部材」という点で一致する。 d.引用発明1の「組立てられた」は、絶縁材(11)を用いて組立てられているから、「適用された」ということができる。 e.引用発明1の「スルーホール」は、本願発明の「導電ビア」と実質的な差異はない。 f.引用発明1の「トランス」は、「変圧器」である。 したがって、本願発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違する。 <一致点> 「対向する面を有し且つ前記面の少なくとも1面に金属部材を有する第1絶縁部材; 前半の1次及び2次巻線; 対向する面を有し且つ前記面の少なくとも1面に金属部材を有し且つ前記第1絶縁部材上に適用された第2絶縁部材; 第1絶縁部材及び第2絶縁部材間に位置した特定の部材; 後半の1次及び2次巻線;及び 第1及び第2絶縁部材内に形成され、且つ各前半及び後半の1次巻き線をお互いに相互接続し、各前半及び後半の2次巻き線をお互いに相互接続する導電ビア を含む変圧器。」 <相違点1> 「金属部材」に関し、 本願発明は、「金属クラッド」であるのに対し、引用発明1は、「金属印刷配線(7a,7b,・・・,8a,8b,・・・)」及び「金属印刷配線(5a,5b,5c,6a,6b,6c)」である点。 <相違点2> 「第1絶縁部材」及び「第2絶縁部材」に関し、 本願発明は、「第1液晶高分子(LCP)シート」及び「第2LCPシート」であるのに対し、引用発明1は、「絶縁板(12)」及び「絶縁板(11)」である点。 <相違点3> 「前半の1次及び2次巻線」に関し、 本願発明は、「前記金属クラッド上にエッチングされた金属回路としての」ものであるのに対し、引用発明1は、当該「前記金属クラッド上にエッチングされた金属回路としての」との特定がない点。 <相違点4> 「特定の部材」に関し、 本願発明は、「フェライト層」であるのに対し、引用発明1は、「コア(13)及び絶縁材料(14)」である点。 <相違点5> 「後半の1次及び2次巻線」に関し、 本願発明は、「前記第2LCPシートの金属クラッド上のエッチングされた金属回路としての」ものであるのに対し、引用発明1は、当該「前記第2LCPシートの金属クラッド上のエッチングされた金属回路としての」との特定がない点。 第5 判断 そこで、まず、上記相違点1、2、3及び5について検討する。 積層型基板を用いた高周波電子部品の技術分野において液晶高分子(LCP)シートを用い高周波回路を形成することは、例えば、特開2002-334806号公報(段落【0017】?【0022】、図1)、特開2000-182872号公報(段落【0022】?【0026】、図2)に開示されるように本願出願前周知であると認められる。 そうすると、引用発明1と引用発明2は積層型基板を用いた高周波電子部品という技術分野で共通し、引用発明1に引用発明2を採用する際に特段の阻害要因は見あたらないから、当業者であれば、引用発明1の「絶縁板(11,12)」に換え、「液晶高分子(LCP)シート」を用い、本願発明のように「第1液晶高分子(LCP)シート」及び「第2LCPシート」とすること(相違点2)は容易になし得ることである。その際、引用発明2の「導体層(3)(銅箔)」及び「配線パターン(11)」は、それぞれ「金属クラッド」及び「金属回路」ということができるから、「金属部材」に関し、本願発明のように「金属クラッド」となること(相違点1)、また、「前半の1次及び2次巻線」に関し、本願発明のように「前記金属クラッド上にエッチングされた金属回路としての」ものとなること(相違点3)、また、「後半の1次及び2次巻線」に関し、本願発明のように「前記第2LCPシートの金属クラッド上のエッチングされた金属回路としての」ものとなること(相違点5)は自然である。 次に、上記相違点4について検討する。 積層基板型の高周波電子部品において、中間層として、フェライト層を設けることは、例えば、請求人が本願明細書の段落【0018】において、先行技術例として引用する米国特許第5349743号明細書(5欄45行?6欄7行、FIG.15)、原審の拒絶理由に引用された特開2005-39187号公報(段落【0020】、【0021】、図1)、特開2004-200227号公報(段落【0018】、【0019】、図5)に開示されるように周知であるから、本願発明のように「フェライト層」とすることは格別のことではない。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明1、2及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1、2及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-04-25 |
結審通知日 | 2013-04-30 |
審決日 | 2013-05-14 |
出願番号 | 特願2009-518618(P2009-518618) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山田 正文 |
特許庁審判長 |
石井 研一 |
特許庁審判官 |
萩原 義則 関谷 隆一 |
発明の名称 | 液晶高分子(LCP)物質を用いる変圧器及び関連する製造方法 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠彦 |