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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N |
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管理番号 | 1279714 |
審判番号 | 不服2012-14186 |
総通号数 | 167 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-07-24 |
確定日 | 2013-09-26 |
事件の表示 | 特願2007- 57163「扁平上皮細胞癌関連抗原を指標とする肌の感受性の程度の評価方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月25日出願公開、特開2007-279024〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成19年(2007年)3月7日(優先権主張 平成18年3月17日)の出願(特願2007-57163号であって、平成23年10月7日付けで拒絶理由が通知され、同年12月19日付けで意見書が提出され、平成24年4月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 その後、当審において平成25年4月9日付けで前置報告書の内容について請求人に事前に意見を求める審尋をなし、同年6月14日付けで回答書が提出された。 第2 平成24年7月24日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成24年7月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載の、 「皮膚角層細胞の扁平上皮細胞癌関連抗原(SCCA)の発現を指標とする、肌の感受性の程度の評価方法。」が 「皮膚角層細胞の扁平上皮細胞癌関連抗原(SCCA)の発現を指標とする、肌の外部刺激に対する感受性の程度の評価方法。」と補正された。(下線は補正箇所を示す。) そして、この補正は、補正前の「(肌の)感受性」について「外部刺激に対する」感受性であるとする補正事項からなり、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とする補正であるといえる。 すなわち、本件補正における請求項1に係る発明の補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下単に「特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものである。 2 独立特許要件違反についての検討 そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について検討する。 (1)引用例 ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である 出原賢治, "マイクロアレイ法による新規診断マーカーの探索1 -扁平上皮細胞癌抗原の診断マーカーとしての意義-", 第52回臨床検査医学会総会・第45回臨床化学会年会 連合大会 抄録集, S1-3(p.23), 2005(以下「引用例1」という。) には、次の事項が記載されている。(なお、下記「イ 引用例1に記載された発明の認定」に直接関与する記載に下線を付した。) 「マイクロアレイを用いることにより,数千の遺伝子に関する発現解析を同時に,しかも比較的簡便に行うことが可能である。我々は,最近マイクロアレイ法を用いることにより扁平上皮細胞癌抗原(SCCA)を新規のアレルギー疾患診断マーカーとして同定したので,それについて本講演で紹介したい。」(左欄本文第7?13行) 「我々は,Affymetrix社の5600個の既知遺伝子に相当するオリゴヌクレオチドが付着してあるHuGeneFLArrayを用いて気管支上皮細胞におけるIL-13誘導遺伝子を同定した。正常ヒト気管支上皮細胞をIL-13で24時間刺激した後RNAを回収し,それを用いて解析を行ったところ,12個の遺伝子が再現性よく誘導されたが,これらの中で発現誘導が最も強かった遺伝子は,SCCA1とSCCA2であった。さらに定量的PCRとFLISA法により気管支上皮細胞がSCCA蛋白質を産生するとともに分泌していることを確認した。 SCCAと気管支喘息との関連を明らかにするために,喘息患者と正常者の気道組織におけるSCCAの発現を解析した。4人のアトピー性正常者と3人のアトピー性喘息患者に気管支生検を行い,得られたRNAをプールしてライブラリーを作製し,それぞれのライブラリーからランダムに約4000強個のクローンを選択してシークエンスを行った。その結果,SCCAの発現は喘息患者の病変部位で正常者に比べて著名に強くなっていた(11クローン体3クローン)。」(左欄本文第28行?末行) 「次にSCCAが気管支喘息のみならず,アトピー性皮膚炎の診断マーカーとなりうるか解析を行った。順天堂大学皮膚科を受診したアトピー性皮膚炎患者の皮膚組織を解析したところ,患者の病変部ではSCCAの発現が増強していた一方で,健常部では増強は見られなかった。さらに,血中SCCAレベルと種々の臨床病態あるいは検査マーカーを比較したところ,臨床的重症度,好酸球数,LDH値と非常によく相関した。これらのことより,SCCAは気管支喘息のみならず,アトピー性皮膚炎の病態を示す有用なマーカーにもなりうることが明らかとなった。」(右欄本文第12?22行) 「以上のように,そのアレルギー疾患の病因における役割については不明であるが,SCCA1とSCCA2の測定が気管支喘息あるいはアトピー性皮膚炎の診断に有用であることを明らかにした。今後,さらに詳細な臨床解析を行って,この新規マーカーが病態の評価のみならず,治療方針の決定に役立つようになることが期待される。」(右欄本文下から第7行?末行) イ 引用例1に記載された発明の認定 上記記載から、引用例1には、 「SCCAの発現をアトピー性皮膚炎の病態を示すマーカーとし、SCCAを測定してアトピー性皮膚炎の病態を評価する方法。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 (2)本願補正発明と引用発明との対比 ア 対比・一致点 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「マーカー」が、本願補正発明の「指標」に相当する。また、本願補正発明の「肌」は技術用語といえないとしても、本願補正発明における当該「肌」が「皮膚」のことを意味していることは明細書全体の記載からして明らかであり、引用発明の「アトピー性皮膚炎の病態を評価する」ことは、特定の刺激に対して皮膚(肌)の反応のしやすさ(感受性)がどれだけ高いかを評価することであるといえるから、本願補正発明の「肌」の「刺激に対する感受性」の「評価」に相当するといえる。 以上を踏まえると、本願補正発明と引用発明は、 「皮膚角層細胞の扁平上皮細胞癌関連抗原(SCCA)の発現を指標とする、肌の刺激に対する感受性の評価方法。」の発明である点で一致し、次の各点で相違する。 イ 相違点 (ア)相違点1 感受性を評価するための刺激が、本願補正発明においては「外部」刺激であるのに対して、引用発明においてはその点が明確でない点。 (イ)相違点2 感受性の評価が、本願補正発明においては「(感受性の)程度」を評価するものであるのに対して、引用発明においてはその点が明確でない点。 (3)当審の判断 ア 上記各相違点について検討する。 (ア)相違点1について アトピー性皮膚炎の中には、例えば、アトピー性乾燥肌のように外部の乾燥状態が病状発生の1つの要因となるなど、外部からの皮膚の刺激が病状発生の要因となっているものが知られていることから、引用発明においても、アトピー性皮膚炎として、外部からの皮膚の刺激が病状発生の要因となるようなアトピー性皮膚炎を想定し、アトピー性皮膚炎の病態の評価を、「外部」刺激を要因とするアトピー性皮膚炎の病態の評価、すなわち、「肌の外部刺激に対する感受性」の評価と特定することに格別の困難性は認められない。 (イ)相違点2について 引用発明のアトピー性皮膚炎の病態の評価は、「SCCAを測定して」行われているのであるから、何らかの評価値を得るものである。 そして、一般に、特定のものの状態等を何らかの物理量を測定して評価する手法として、測定値が一定のしきい値を超えたか否かで評価する手法も、測定値の大きさからものの状態の程度を評価する手法も、ともに慣用されている周知の手法であるから、引用発明のアトピー性皮膚炎の病態の評価においても、測定値からアトピー性皮膚炎の病態の程度を評価するものとすること、すなわち、「感受性の程度」を評価するものとすることに格別の困難性は認められない。 イ 本願補正発明の奏する作用効果 そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明から当業者が予測し得る程度のものである。 ウ まとめ 以上のとおり、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (4)結言 上記のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成24年7月24日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成24年7月24日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「1 本件補正について」の記載参照。) 2 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成24年7月24日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(1)引用例」に記載したとおりである。 3 対比・判断 上記「第2 平成24年7月24日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「1 本件補正について」に記載したように、本願発明に対して、「(肌の)感受性」について「外部刺激に対する」感受性であると限定したものが本願補正発明である。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、本願発明をさらに限定したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成24年7月24日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2)本願補正発明と引用発明との対比」及び「(3)当審の判断」において記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-07-24 |
結審通知日 | 2013-07-30 |
審決日 | 2013-08-13 |
出願番号 | 特願2007-57163(P2007-57163) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮澤 浩 |
特許庁審判長 |
森林 克郎 |
特許庁審判官 |
信田 昌男 岡田 孝博 |
発明の名称 | 扁平上皮細胞癌関連抗原を指標とする肌の感受性の程度の評価方法 |
代理人 | 古賀 哲次 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 渡辺 陽一 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 中島 勝 |
代理人 | 福本 積 |
代理人 | 武居 良太郎 |