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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B32B
管理番号 1279811
審判番号 不服2012-23418  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-27 
確定日 2013-10-03 
事件の表示 特願2007-208739「多層積層フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 2月26日出願公開、特開2009- 39979〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年8月10日の出願であって、その主な手続の経緯は、以下のとおりである。
平成23年10月 6日 拒絶理由通知
平成23年12月 8日 意見書及び手続補正書提出
平成24年 8月31日 拒絶査定
平成24年11月27日 審判請求書提出


2.本願発明
本願の請求項1ないし17に係る発明は、平成23年12月8日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明を引用して記載されているところ、書き下した形で記載すると以下のとおりである(以下、書き下した形で記載した請求項2に係る発明を、「本願発明」という。)。

「白色のポリオレフィン系樹脂層と灰色の遮光性兼バリア性樹脂層との層間、および、灰色の遮光性兼バリア性樹脂層と透明ないし半透明の裏面ポリオレフィン系樹脂層との層間に、それぞれ、接着性ポリオレフィン系樹脂層を介在させることを特徴とする、
ポリオレフィン系樹脂を主成分として含み、更に、白色顔料を含み、かつ、白色顔料の含有量が、上記のポリオレフィン系樹脂に対し、0.5重量%?30.0重量%からなる樹脂組成物による白色のポリオレフィン系樹脂層、
バリア性樹脂を主成分として含み、更に、黒色顔料と白色顔料とを含み、かつ、該黒色顔料の含有量が、上記のバリア性樹脂に対し、0.1重量%?20.0重量%からなり、また、白色顔料の含有量が、黒色顔料の含有量に対し、1倍?30倍からなる樹脂組成物による灰色の遮光性兼バリア性樹脂層、
および、
ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂組成物によるヒ-トシ-ル性樹脂層からなる透明ないし半透明の裏面ポリオレフィン系樹脂層を順次に積層した積層構成からなること
を特徴とする多層積層フィルム。」


3.刊行物の記載事項、及び刊行物記載の発明
原査定において通知した平成23年10月6日付け拒絶理由通知書で引用した、本願出願前に頒布された刊行物である特開2007-136739号公報(以下、「刊行物1」という。)、及び特開2003-40346号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の技術的事項が記載されている。
(1)刊行物1の記載事項及び刊行物1記載の発明
ア.段落【0001】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、多層積層フィルムに関し、更に詳しくは、遮光性、バリア性、および、ヒ-トシ-ル性等に優れ、更に、諸堅牢性等にも優れ、内容物保護適性を有し、更に、美粧性に優れ、包装体の外観を損ねることなく、消費者の購買意欲を喚起し、主に、レトルト食品、油脂類、冷凍食品、スナック菓子類、光学系産業資材、その他等を充填包装するに有用な多層積層フィルムに関するものてある。」

イ.段落【0004】ないし【0005】
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に係る食品包装用積層フィルムを使用し、他の基材フィルム等を積層して包装用材料を製造し、次いで、該包装用材料を使用し、これを製袋して包装用袋を製造し、しかる後、該包装用袋を使用し、例えば、レトルト食品、スナック菓子類、油脂類、冷凍食品等を充填包装して包装製品を製造する場合、特に、レトルト食品、冷凍食品等を充填包装した包装製品においては、レトルト処理あるいは冷凍処理等の加工工程において、包装用袋を構成する包装用材料の内面から、内容物中の成分等が吸着、浸透、透過し、包装用材料を構成する食品包装用積層フィルム等を汚染ないし着色し、その美粧性、外観性等を損なうという問題点があり、更に、内容物中の成分が吸着、浸透、透過することにより、包装用材料のラミネ-ト強度、あるいは、そのヒ-トシ-ル性強度等に欠け、層間剥離あるいは破袋等を生じ、所望の包装製品を製造することが困難であるという問題点がある。
また、上記の特許文献1に係る食品包装用積層フィルムについて、これを産業部材としての感光性材料等を包装する包装用材料として使用し、これで感光性材料を包装して包装製品を製造したところ、遮光性機能に劣り、上記の食品包装用積層フィルムでは、感光性材料等を包装する包装用材料として使用することができないことが判明したものである。
一般に、感光性材料は、内容物の保護、光学機能性の保護等のため、紫外領域から可視領域までの高い遮光性(完全遮光)が要求されるものである。
因みに、産業部材としての感光性材料等の製品を保護するためには、全領域における光線を遮蔽しなければならないものであり、400nm?700nmの可視光域と、400nm以下の紫外光の遮光は必須であり、できる限り700nm以上の赤外光においても遮蔽する必要があるものである。
これまで、感光性材料等を包装する包装用材料としては、その遮光性機能をアルミニウム箔のラミネ-ト材等から補完し、銀色ベ-スからなる包装用材料が主流となっているものである。
しかし、アルミニウム箔等の使用は、前述のような問題点を有するばかりではなく、更に、ラミネ-ト時の接着剤等の使用による作業環境、周辺環境の悪化等を招くという問題点もあるものである。
また、上記の特許文献2に係る遮光性包装材については、これを使用し、製袋して包装用袋を製造し、しかる後、該包装用袋を使用し、例えば、レトルト食品、スナック菓子類、油脂類、冷凍食品等を充填包装して包装製品を製造する場合、特に、レトルト食品、冷凍食品等を充填包装した包装製品においては、上記と同様に、レトルト処理あるいは冷凍処理等の加工工程において、包装用袋を構成する包装材の内面から、内容物中の成分等が吸着、浸透、透過し、包装材を構成する印刷インキ層、熱融着樹脂層等を汚染ないし着色し、その美粧性、外観性等を損なうという問題点があり、更に、内容物中の成分が吸着、浸透、透過することにより、包装材のラミネ-ト強度、あるいは、その熱融着樹脂層のヒ-トシ-ル性強度等に欠け、層間剥離あるいは破袋等を生じ、所望の包装製品を製造することが困難であるという問題点がある。
【0005】
そこで本発明は、遮光性に優れ、かつ、アルミニウムレスであり、また、酸素ガスおよび水蒸気等の透過を阻止するバリア性、あるいは、内容物中の成分の浸透、透過を阻止するバリア性等に優れ、更に、ラミネ-ト強度、ヒ-トシ-ル性強度等にも優れ、また、その他、耐侯性、耐熱性、耐水性、その他等の諸堅牢性に優れ、特に、遮光性に優れ、飲食品、化成品等は勿論のこと、完全遮光を要する産業部材としての感光性材料の包装用材料として極めて優れた有用性を有し、内容物の充填包装適性、保存適性等に優れていると共に包装外観を損ねることなく美粧性に優れ、更に、金属探知機による異物検査が容易であると共に使用後に焼却廃棄処理する際に有害物質等を発生することなく、廃棄処理適性、環境適性等に極めて優れた遮光性多層積層フィルムを提供することである。」

ウ.段落【0019】
「【0019】
次に、本発明において、上記のような本発明に係る多層積層フィルム、積層材、包装用袋、包装製品等を構成する材料、その製造法等について説明すると、まず、本発明において、本発明に係る多層積層フィルムについて説明すると、まず、本発明に係る多層積層フィルムを構成する白色樹脂層は、例えば、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含み、更に、白色顔料を含み、かつ、白色顔料の含有量が、上記のポリオレフィン系樹脂に対し、0.5重量%?30.0重量%からなる樹脂組成物を使用して、本発明に係る白色樹脂層を構成することができる。
次に、本発明において、本発明に係る多層積層フィルムを構成する第1、および、第2の遮光性接着樹脂層は、例えば、接着性ポリオレフィン系樹脂を主成分として含み、更に、黒色顔料を含み、かつ、黒色顔料の含有量が、上記の接着性ポリオレフィン系樹脂に対し、0.1重量%?20.0重量%からなる樹脂組成物、あるいは、接着性ポリオレフィン系樹脂を主成分として含み、更に、黒色顔料と白色顔料とを含み、かつ、黒色顔料の含有量が、ポリオレフィン系樹脂に対し、0.1重量%?20.0重量%からなり、また、白色顔料の含有量が、黒色顔料の含有量に対し1倍?30倍からなる樹脂組成物等を使用して、本発明に係る第1、および、第2の遮光性接着樹脂層を構成することができる。
また、本発明において、本発明に係る多層積層フィルムを構成するバリア性樹脂層は、例えば、酸素ガスおよび水蒸気の透過を阻止するバリア性樹脂を主成分として含む樹脂組成物、あるいは、内容物中の成分の浸透、透過を阻止するバリア性樹脂を主成分として含む樹脂組成物等を使用して、本発明に係るバリア性樹脂層を構成することができる。
更に、本発明において、本発明に係る多層積層フィルムを構成するヒ-トシ-ル性樹脂層は、例えば、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂組成物を使用して、本発明に係るヒ-トシ-ル性樹脂層を構成することができる。」

エ.段落【0054】
「【0054】
而して、本発明において、上記のように本発明に係る積層材を使用して、本発明に係る包装用袋を製袋する方法について説明すると、上記のような本発明に係る積層材を使用し、その内層のヒ-トシ-ル性材料としての本発明に係る多層積層フィルムの面を対向させて、それを折り重ねるか、或いは、その二枚を重ね合わせ、更にその周辺端部をヒ-トシ-ルしてシ-ル部を設けて、種々の形態からなる包装用袋を製袋することができる。 ・・・(中略)・・・更に、本発明においては、上記の積層材を使用してチュ-ブ容器等も製造することができる。・・・・・(後略)」

オ.段落【0065】
「【実施例6】
【0065】
(1).まず、下記の(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、および、(ホ)の樹脂組成物を調製した。
(イ).第一層を構成する樹脂組成物
機能性ポリプロピレンブロックコポリマ-(サンアロマ-株式会社製、商品名、PC380A、密度=0.9g/cm^(3) 、メルトフロ-レイト、MFR=1.0g/10分)80.0重量部と、白色顔料として酸化チタン10.0重量部とを十分に混練して、樹脂組成物を調製した。
(ロ).第二層を構成する樹脂組成物
無水マレイン酸変性の接着性ポリプロピレン(三井化学株式会社製、商品名、アドマ-QE800)73.5重量部と、黒色顔料としてカ-ボンブラック1.5重量部、および、白色顔料として酸化チタン25.0重量部を十分に混練して、樹脂組成物を調製した。
(ハ).第三層を構成する樹脂組成物
MXD-6メタキシリレンジアミン(MXナイロン)(三菱ガス化学株式会社製、商品名、MXナイロンS6007、密度=1.22g/cm^(3) 、メルトフロ-レイト、MFR=2.0g/10分)100.0重量部を十分に混練して、樹脂組成物を調製した。
(ニ).第四層を構成する樹脂組成物
無水マレイン酸変性の接着性ポリプロピレン(三井化学株式会社製、商品名、アドマ-QE800)73.5重量部と、黒色顔料としてカ-ボンブラック1.5重量部、および、白色顔料として酸化チタン10.0重量部を十分に混練して、樹脂組成物を調製した。
(ホ).第五層を構成する樹脂組成物
機能性ポリプロピレンブロックコポリマ-(サンアロマ-株式会社製、商品名、PC380A、密度=0.9g/cm^(3) 、メルトフロ-レイト、MFR=1.0g/10分)100重量部と、合成シリカ0.5重量部と、エルカ酸アミド0.05重量部と、エチレンビスオレイン酸アミド0.05重量部とを十分に混練して、樹脂組成物を調製した。
(2).次に、上記で調製した各樹脂組成物を使用し、これらを、5種5層の上吹き空冷インフレ-ション共押出製膜機を用いて、(イ)の樹脂組成物による層を20μm、(ロ)の樹脂組成物による層を5μm、(ハ)の樹脂組成物による層を10μm、(ニ)の樹脂組成物による層を5μm、(ホ)の樹脂組成物による層を30μmにそれぞれ共押出して製膜化して、5種5層の総厚70μmの共押出インフレ-ションフィルムからなる本発明に係る多層積層フィルムを製造した。
上記で製造した多層積層フィルムについて、第一層側から視認すると、乳白色で美観性に優れていた。
更に、上記で製造した多層積層フィルムにおいては、遮光性は、十分で、油脂の酸化に起因する各波長を殆ど透過させず、極めて良好であった。
また、酸素バリア性も良好で内容物の保護に適するものであった。
更に、色素バリアによる外観意匠性向上も大きかった。」

カ.刊行物1記載の発明
上記ウ.及びオ.を参照すると、上記オ.でいう「(イ)の樹脂組成物による層」が、上記ウ.でいう「白色樹脂層」にあたることは明らかであり、以下同様に、「(ロ)の樹脂組成物による層」及び「(ニ)の樹脂組成物による層」が「第1、および、第2の遮光性接着樹脂層」にあたり、「(ハ)の樹脂組成物による層」が「バリア性樹脂層」にあたり、「(ホ)の樹脂組成物による層」が「ヒートシール性樹脂層」にあたることは明らかである。
また、上記ウ.でいう「白色樹脂層」は、「ポリオレフィン系樹脂を主成分として含み、更に、白色顔料を含」んでいるから、「白色のポリオレフィン系樹脂層」ということができる。同様に、「第1、および、第2の遮光性接着樹脂層」は、「接着性ポリオレフィン系樹脂を主成分として含」んでいるから、「接着性ポリオレフィン系樹脂層」ということができるし、「ヒートシール性樹脂層」は、「ポリオレフィン系樹脂を主成分として含」んでいるうえに、多層積層フィルムにおいて裏面側に存在するから、「ヒートシール性樹脂層からなる裏面ポリオレフィン系樹脂層」ということができる。

以上の記載事項を技術常識をふまえて本願発明の記載に沿って整理すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認める。

「白色のポリオレフィン系樹脂層とバリア性樹脂層との層間、および、バリア性樹脂層と裏面ポリオレフィン系樹脂層との層間に、それぞれ、接着性ポリオレフィン系樹脂を主成分として含み、更に、黒色顔料と白色顔料とを含み、かつ、黒色顔料の含有量が、上記の接着性ポリオレフィン系樹脂に対し、0.1重量%?20.0重量%からなり、また、白色顔料の含有量が、黒色顔料の含有量に対し1倍?30倍からなる樹脂組成物による5μmの接着性ポリオレフィン系樹脂層を介在させる、
ポリオレフィン系樹脂を主成分として含み、更に、白色顔料を含み、かつ、白色顔料の含有量が、上記のポリオレフィン系樹脂に対し、0.5重量%?30.0重量%からなる樹脂組成物による20μmの白色のポリオレフィン系樹脂層、
バリア性樹脂を主成分として含む10μmのバリア性樹脂層、
および、
ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂組成物によるヒ-トシ-ル性樹脂層からなる30μmの裏面ポリオレフィン系樹脂層を順次に積層した積層構成からなる
多層積層フィルム。」


(2)刊行物2の記載事項、及び刊行物2記載の発明
ア.段落【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、容器の色調、外観の映えを損なうことなにしに効果的な遮光を施し容器内に充填した内容物の品質を長期にわたって安定的に保持しようとするものである。」

イ.段落【0004】ないし【0008】
「【0004】このため、従来は、容器本体部分を多層構造として、そのうちの比較的肉厚が他の層よりも厚い層につき、カーボンブラック等、遮光機能を有する材料を添加してこれを遮光層として光の侵入を抑制するとともに容器の色調の変化を小さくするようにしており、この点に関する先行文献としては例えば多層プラスチック容器にかかわる特開平3-197126号公報が参照される。
【0005】かかる容器によれば、遮光層が容器内へ侵入する光を有効に遮るため内容物の品質を長期にわたって保持することができるようになっている。しかしながら、遮光層を形成するために添加されるカーボンブラック等の材料はそれ独特の色(カーボンブラックの場合には黒色)を有しており、材料の添加割合によっては容器の色調に影響を与えることもあって、それを極力小さくすることが望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、容器の本体部分の色調や外観の映えに極力影響を与えるとなしに有効に光を遮ることができる新規な合成樹脂製容器を提案するところにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、容器の本体部分を、内層・外層・中間層の少なくとも3層を層構成として積層させた積層タイプの合成樹脂製容器であって、最内層と最外層を除く層のうち、肉厚が相対的に薄い少なくとも1つの薄肉層が遮光機能を備えることを特徴とする遮光性に優れた合成樹脂製容器である。
【0008】本発明において薄肉層は、遮光機能を発揮させる成分としてカーボンブラック、酸化鉄の何れかを添加することができるものであり、薄肉層が、ガスバリア層若しくは接着層とするのが好ましい。」

ウ.段落【0010】ないし【0014】
「【0010】このカップ状の薄肉容器は、シート成形法を適用して作製した容器であって、層構成については図2にその要部断面を拡大して示した如く7層の積層構造を例として示してある。
【0011】本発明に従う容器は、内層1と外層7をそれぞれPE(ポリエチレン樹脂)層として、内層1から外層7に向けて順に、PE層2/接着性変性ポリオレフィン樹脂(三井化学のアドマー等)層3/EVOH(ガスバリア機能を有するエチレンビニルアルコール共重合樹脂等(クラレのエバール等))層4/接着性変性ポリオレフィン樹脂層5/PE層6を配列し、その肉厚比率(%)については内層1から、9:38:2:2:2:38:9としている。
【0012】このような層構成において肉厚が相対的に薄い層である接着層3、5には予め酸化鉄を添加しておくことができ、これにより、該接着層が遮光機能を備えることとなり、容器内への光の侵入を効果的に遮り、しかも、接着層の外側に位置する肉厚の着色PE層の存在により容器の外観の映えを損なうことを防止することができる。
【0013】接着層3、5に添加することができる酸化鉄としては酸化第二鉄(Fe_(2)O_(3))、四酸化三鉄(Fe_(3)O_(4))等がある。また酸化鉄に換えてカーボンブラックを添加して遮光機能をもたせることも可能である。
【0014】酸化鉄やカーボンブラックを添加することができる層は、接着層に限られるわけではなく、最内層、最外層を除く、肉厚が相対的に薄い層であれば何れの層にも添加することが可能であり、例えば上掲図2に示したEVOH層4であってもかまわない。」

エ.段落【0016】
「【0016】本発明は、上記のカップ状容器は勿論、ボトルタイプの容器、さらには、図示はしないがチューブタイプの容器の何れにおいても適用可能であり、遮光機能を発揮するカーボンブラックや酸化鉄等は最内層、最外層を除く層のうち、肉厚が相対的に薄い少なくとも1つの層に添加すればよく、その設置箇所についてはとくに限定されず、対象とする容器に応じて適宜に変更される。」

オ.刊行物2記載の発明
上記ウ.に摘示する段落【0011】には、「内層1と外層7をそれぞれPE(ポリエチレン樹脂)層として」との記載があり、当該記載は、「PE層」が「ポリエチレン樹脂」で構成された層を意味するといえるから、「PE層2」や「PE層6」についても、「ポリエチレン樹脂」で構成された層であるということができる。

以上の記載事項を技術常識をふまえて本願発明の記載に沿って整理すると、刊行物2には、以下の発明(以下、「刊行物2記載の発明」という。)が記載されていると認める。

「PE層6とEVOH層4との層間、および、EVOH層4とPE層2との層間に、それぞれ、接着性変性ポリオレフィン樹脂層3、5を介在させ、
ポリエチレン樹脂からなるPE層6、
ガスバリア機能を有するエチレンビニルアルコール共重合樹脂EVOH層4、
および、
ポリエチレン樹脂からなるPE層2を順次に積層した積層構成からなり、
肉厚が相対的に薄い薄肉層である、接着性変性ポリオレフィン樹脂層3、5もしくはEVOH層4の少なくともいずれか1つの層に遮光機能を発揮させる成分を添加させる多層積層容器。」


4.対比
本願発明と、刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「20μmの白色のポリオレフィン系樹脂層」が本願発明の「白色のポリオレフィン系樹脂層」に相当することは、明らかである。
また、刊行物1記載の発明の「バリア性樹脂を主成分として含む10μmのバリア性樹脂層」は、「バリア性樹脂を主成分として含むバリア性樹脂層」という限りにおいて、本願発明の「バリア性樹脂を主成分として含み、更に、黒色顔料と白色顔料とを含み、かつ、該黒色顔料の含有量が、上記のバリア性樹脂に対し、0.1重量%?20.0重量%からなり、また、白色顔料の含有量が、黒色顔料の含有量に対し、1倍?30倍からなる樹脂組成物による灰色の遮光性兼バリア性樹脂層」と共通する。
また、刊行物1記載の発明の「接着性ポリオレフィン系樹脂を主成分として含み、更に、黒色顔料と白色顔料とを含み、かつ、黒色顔料の含有量が、上記の接着性ポリオレフィン系樹脂に対し、0.1重量%?20.0重量%からなり、また、白色顔料の含有量が、黒色顔料の含有量に対し1倍?30倍からなる樹脂組成物による5μmの接着性ポリオレフィン系樹脂層」は、本願発明の「接着性ポリオレフィン系樹脂層」に相当する。
また、刊行物1記載の発明の「ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂組成物によるヒ-トシ-ル性樹脂層からなる30μmの裏面ポリオレフィン系樹脂層」は、「ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂組成物によるヒ-トシ-ル性樹脂層からなる裏面ポリオレフィン系樹脂層」という限りにおいて、本願発明の「ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂組成物によるヒ-トシ-ル性樹脂層からなる透明ないし半透明の裏面ポリオレフィン系樹脂層」と共通する。

以上から、本願発明と刊行物1記載の発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「白色のポリオレフィン系樹脂層とバリア性樹脂層との層間、および、バリア性樹脂層と裏面ポリオレフィン系樹脂層との層間に、それぞれ、接着性ポリオレフィン系樹脂層を介在させる、
ポリオレフィン系樹脂を主成分として含み、更に、白色顔料を含み、かつ、白色顔料の含有量が、上記のポリオレフィン系樹脂に対し、0.5重量%?30.0重量%からなる樹脂組成物による白色のポリオレフィン系樹脂層、
バリア性樹脂を主成分として含むバリア性樹脂層、
および、
ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂組成物によるヒ-トシ-ル性樹脂層からなる裏面ポリオレフィン系樹脂層を順次に積層した積層構成からなる
多層積層フィルム。」

<相違点1>
本願発明において遮光性を有しているのは、「灰色の遮光性兼バリア性樹脂層」であり、当該灰色の遮光性兼バリア性樹脂層は「黒色顔料と白色顔料とを含み、かつ、該黒色顔料の含有量が、バリア性樹脂に対し、0.1重量%?20.0重量%からなり、また、白色顔料の含有量が、黒色顔料の含有量に対し、1倍?30倍からなる」ものであるのに対して、刊行物1記載の発明において遮光性を有しているのは、「接着性ポリオレフィン系樹脂層」であり、当該接着性ポリオレフィン系樹脂層は「黒色顔料と白色顔料とを含み、かつ、黒色顔料の含有量が、接着性ポリオレフィン系樹脂に対し、0.1重量%?20.0重量%からなり、また、白色顔料の含有量が、黒色顔料の含有量に対し1倍?30倍からなる」ものである点。

<相違点2>
本願発明の「裏面ポリオレフィン系樹脂層」は「透明ないし半透明」であるのに対して、刊行物1記載の発明の「裏面ポリオレフィン系樹脂層」は「透明ないし半透明」であるかどうか、不明な点。


5.相違点についての検討及び判断
(1)相違点1について
ア.刊行物2記載の発明の説示
相違点1について検討するため、上記3.(2)オ.に摘示する刊行物2記載の発明を参照して、本願発明と対比すると、刊行物2記載の発明の「ポリエチレン樹脂からなるPE層6」は、「ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む表面側ポリオレフィン系樹脂層」という点で、本願発明の「ポリオレフィン系樹脂を主成分として含み、更に、白色顔料を含み、かつ、白色顔料の含有量が、上記のポリオレフィン系樹脂に対し、0.5重量%?30.0重量%からなる樹脂組成物による白色のポリオレフィン系樹脂層」と共通する。
また、刊行物2記載の発明の「ガスバリア機能を有するエチレンビニルアルコール共重合樹脂EVOH層4」は、「バリア性樹脂を主成分として含むバリア性樹脂層」という点で本願発明の「バリア性樹脂を主成分として含み、更に、黒色顔料と白色顔料とを含み、かつ、該黒色顔料の含有量が、上記のバリア性樹脂に対し、0.1重量%?20.0重量%からなり、また、白色顔料の含有量が、黒色顔料の含有量に対し、1倍?30倍からなる樹脂組成物による灰色の遮光性兼バリア性樹脂層」と共通する。
また、刊行物2記載の発明の「接着性変性ポリオレフィン樹脂層3、5」が、本願発明の「接着性ポリオレフィン系樹脂層」に相当することは、明らかである。
そして、刊行物2記載の発明の「ポリエチレン樹脂からなるPE層2」は、「ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む裏面側ポリオレフィン系樹脂層」という点で、本願発明の「ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂組成物によるヒ-トシ-ル性樹脂層からなる透明ないし半透明の裏面ポリオレフィン系樹脂層」と共通する。
さらに、刊行物2記載の発明の「多層積層容器」は、「多層積層構造」という点で、本願発明の「多層積層フィルム」と共通する。
そうすると、刊行物2記載の発明を本願発明の用語を用いて表現すると、
「表面側ポリオレフィン系樹脂層とバリア性樹脂層との層間、および、バリア性樹脂層と裏面側ポリオレフィン系樹脂層との層間に、それぞれ、接着性ポリオレフィン系樹脂層を介在させる、
ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む表面側ポリオレフィン系樹脂層、
バリア性樹脂を主成分として含むバリア性樹脂層、
および、
ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む裏面側ポリオレフィン系樹脂層を順次に積層した積層構成からなり、
肉厚が相対的に薄い薄肉層である、接着性ポリオレフィン系樹脂層もしくはバリア性樹脂層の少なくともいずれか1つの層に遮光機能を発揮させる成分を添加させる多層積層構造。」
ということができ、刊行物2記載の発明は、遮光機能を発揮させる成分を、肉厚が相対的に薄い薄肉層である、接着性ポリオレフィン系樹脂層もしくはバリア性樹脂層のいずれに添加してもよいことを説示している。

イ.刊行物1及び2記載の発明の技術分野の関連性
刊行物1記載の発明は、上記3.(1)カ.に記載したとおり「多層積層フィルム」であるところ、そのフィルムの具体的な使用形態について、上記3.(1)エ.に摘示するように「積層材を使用してチュ-ブ容器等も製造することができる」と刊行物1に記載されている。そして、刊行物2記載の発明は、上記3.(2)オ.に記載するように「多層積層容器」であるところ、その容器の具体的な形態として、上記3.(2)エ.に摘示するように「チューブタイプの容器」が刊行物2に例示されている。
そうすると、刊行物1記載の発明と刊行物2記載の発明とは、「チュ-ブ容器」に用いることのできる多層積層された構造に関する技術分野である点で共通する。

ウ.刊行物1及び2記載の発明における解決課題の関連性
刊行物1記載の発明における解決課題は、上記3.(1)イ.に摘示する段落【0005】に示された「遮光性」、「アルミニウムレス」、「バリア性」等を実現することである。そして、刊行物2記載の発明における解決課題は、上記3.(2)イ.に摘示する段落【0006】に示された「有効に光を遮ることができる」ことであり、当該解決課題は、刊行物1記載の発明における解決課題の「遮光性」と一致する。また、刊行物2記載の発明が「アルミニウムレス」や「バリア性」を実現していることは、明らかである。
そうすると、刊行物1記載の発明における解決課題は、刊行物2記載の発明における解決課題と「遮光性」について共通し、また、刊行物2記載の発明が解決しているものといえる。

エ.総合的判断
上記ア.に示すように、刊行物2には、遮光機能を発揮させる成分を、肉厚が相対的に薄い薄肉層である、接着性ポリオレフィン系樹脂層もしくはバリア性樹脂層のいずれに添加してもよいことの説示があり、上記イ.に示すように、刊行物1記載の発明と刊行物2記載の発明とは、技術分野が重複しており、上記ウ.に示すように、刊行物1記載の発明における解決課題は、刊行物2記載の発明における解決課題と重複しているから、刊行物1記載の発明における解決課題である「遮光性」を実現するために、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明の適用を試みることは、当業者が当然に行うことといえる。
そして、上記3.(1)カ.に記載するように、刊行物1記載の発明の「白色のポリオレフィン系樹脂層」の厚みは「20μm」であり、「裏面ポリオレフィン系樹脂層」の厚みは「30μm」であるのに対して、「接着性ポリオレフィン系樹脂層」の厚みは「5μm」であり、「バリア性樹脂層」の厚みは「10μm」である。そうすると、刊行物1記載の発明における「接着性ポリオレフィン系樹脂層」や「バリア性樹脂層」は、「白色のポリオレフィン系樹脂層」や「裏面ポリオレフィン系樹脂層」に対して、相対的に「薄肉層」ということができるから、上記ア.に記載した刊行物2記載の発明の説示にしたがうと、相対的な「薄肉層」である「接着性ポリオレフィン系樹脂層」や「バリア性樹脂層」のいずれにも遮光機能を発揮させる成分を添加することができ、そのいずれの層に添加するかは、当業者が適宜に決定すればよい程度の事項である。さらに、刊行物1記載の発明において、遮光機能を発揮させる成分を「接着性ポリオレフィン系樹脂層」に代えて、「バリア性樹脂層」に添加すれば、「黒色顔料の含有量が、接着性ポリオレフィン系樹脂に対し、0.1重量%?20.0重量%からなり、また、白色顔料の含有量が、黒色顔料の含有量に対し1倍?30倍からなる」ことに代えて、「黒色顔料の含有量が、バリア性樹脂に対し、0.1重量%?20.0重量%からなり、また、白色顔料の含有量が、黒色顔料の含有量に対し、1倍?30倍からなる」ことになり、また、「バリア性樹脂層」が「灰色の遮光性兼バリア性樹脂層」になることは、当然である。
以上のとおりであるから、刊行物1記載の発明において、遮光性とする黒色顔料及び白色顔料を含んでいるのが「接着性ポリオレフィン系樹脂層」であり、加えて、「黒色顔料の含有量が、接着性ポリオレフィン系樹脂に対し、0.1重量%?20.0重量%からなり、また、白色顔料の含有量が、黒色顔料の含有量に対し1倍?30倍からなる」ものであることに代えて、遮光性とする黒色顔料及び白色顔料を含んでいるのが「灰色の遮光性兼バリア性樹脂層」であるように構成し、加えて、「黒色顔料の含有量が、バリア性樹脂に対し、0.1重量%?20.0重量%からなり、また、白色顔料の含有量が、黒色顔料の含有量に対し、1倍?30倍からなる」ものとすることは、刊行物2記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到できたものである。


(2)相違点2について
本願発明の「透明ないし半透明の裏面ポリオレフィン系樹脂層」の具体的な実施形態として、本願明細書の段落【0064】には、
「 (ホ).第五層を構成する樹脂組成物
機能性ポリプロピレンブロックコポリマ-(サンアロマ-株式会社製、商品名、PC380A、密度=0.9g/cm^(3 )、メルトフロ-レイト、MFR=1.0g/10分)100重量部と、合成シリカ0.5重量部と、エルカ酸アミド0.05重量部と、エチレンビスオレイン酸アミド0.05重量部とを十分に混練して、樹脂組成物を調製した。」
と記載されている。
これに対して、刊行物1記載の発明の「裏面ポリオレフィン系樹脂層」の具体的な実施形態として、上記3.(1)オ.に摘示するとおり、
「(ホ).第五層を構成する樹脂組成物
機能性ポリプロピレンブロックコポリマ-(サンアロマ-株式会社製、商品名、PC380A、密度=0.9g/cm^(3)、メルトフロ-レイト、MFR=1.0g/10分)100重量部と、合成シリカ0.5重量部と、エルカ酸アミド0.05重量部と、エチレンビスオレイン酸アミド0.05重量部とを十分に混練して、樹脂組成物を調製した。」
と記載されており、当該記載に係る樹脂組成物は、上記本願明細書の記載に係るものと全く同じである。
そうすると、本願発明の「透明ないし半透明の裏面ポリオレフィン系樹脂層」は、刊行物1記載の発明の「裏面ポリオレフィン系樹脂層」と具体的な実施形態で一致するから、刊行物1記載の発明の「裏面ポリオレフィン系樹脂層」も「透明ないし半透明」であるということができる。
以上から、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。

(3)本願発明の作用効果について
本願発明の採用する構成によってもたらされる効果は、刊行物1及び2記載の発明から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。


6.むすび
したがって、本願請求項2に係る発明は、上記刊行物1及び2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項1、及び請求項3ないし17に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-07 
結審通知日 2013-08-08 
審決日 2013-08-21 
出願番号 特願2007-208739(P2007-208739)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横島 隆裕  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 久保 克彦
刈間 宏信
発明の名称 多層積層フィルム  
代理人 金山 聡  

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