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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K |
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管理番号 | 1279827 |
審判番号 | 不服2011-27347 |
総通号数 | 167 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-12-19 |
確定日 | 2013-10-15 |
事件の表示 | 特願2005-113855「ベクトル量の性質が応用される電力消費装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月21日出願公開、特開2006-254680〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成17年3月13日の出願であって、平成23年9月9日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成23年9月20日)、これに対し、平成23年12月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、当審により、平成24年9月27日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成24年10月2日)、これに対し、平成24年11月27日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年11月27日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「静的な閉路状の磁性芯材と、 前記磁性芯材に密着させられる磁石と、 前記磁石からの磁束によって、介される前記磁性芯材に分岐し、前記磁性芯材を経由して形成される動的磁気回路と、 相互インダクタンスが負にされる様に作用する前記磁束が分岐させられる前記磁性芯材のそれぞれの枝路部分に巻かれる各電源コイルと、 前記動的磁気回路が動的にされる手段とを具備する電力装置。」 3.引用例 これに対して、当審の拒絶の理由で引用された、実公昭53-3362号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 a「第1図において、1はマグネツト式界磁で、複数のヨーク2、3、マグネツト4、ポールピース5セツトビス6とより成る。ヨークは磁性材よりなり」(第1欄24-27行) b「内側ヨーク3の内側にはマグネツト4、ポールピース5が取付けられ、セツトビス6により外側ヨーク2、内側ヨーク3、マグネツト4、ポールピース5が一体に固着され、前述マグネツト式界磁1を形成している。」(第1欄34行-第2欄1行) c「8は発電子で磁性材より成るコア9及び発電コイル10より成り、該発電コイル10はコア9の上に直接巻回するか、あらかじめ巻回してある発電コイル10をコア9に挿入する。前記発電子8はマグネツト式界磁1と交互になるよう組合わされた上ビス11により相互に固着されて固定子をなし、ヨーク2、3、とコア9は一体の閉磁路を形成する。ポールピース5の相対する空間には磁性材より成る誘導子形ロータ12が設けられている。該(注:「調」は誤記)ロータ12はその中央部が内燃機関の回転軸13に挿入され、ワツシヤ14、ナツト15により固着され、ポールピース5とは空隙を介して相対している。」(第2欄4-16行) d「上記構成になる本考案マグネツトの動作は次の通りである。第1図に示す状態において、一方のマグネット4より出た磁束はポールピース5→空隙→ロータ12→空隙→反対側のポールピース5→マグネツト4を経てヨーク2、3に到る。ここで磁束は2分し、半分は右側のコア9を通つて該コア9上のコイル10と鎖交し、残り半分は左側のコア9を通つて該コア9上のコイル10と鎖交する。前記各コイル10と鎖交した磁束は他方のヨーク2、3に到つて一に合しマグネツト4へ戻る磁路を通る。」(第2欄17-27行) e「かくしてロータ12の回転に伴いコイル10に鎖交する磁束が変化し、この磁束変化によつてコイル10中に電圧を発生する。」(第2欄33-35行) 上記記載事項からみて、引用例1には、 「ヨーク2、3、とコア9の一体の閉磁路と、 前記ヨーク2、3、とコア9の一体の閉磁路に固着されるマグネツト4と、 前記マグネツト4の一方より出た磁束が、ポールピース5、空隙、ロータ12、空隙、反対側のポールピース5、マグネツト4を経てヨーク2、3に到つて磁束は2分し、半分は右側のコア9を通つて該コア9上のコイル10と鎖交し、残り半分は左側のコア9を通つて該コア9上のコイル10と鎖交し、前記各コイル10と鎖交した磁束は他方のヨーク2、3に到って一に合しマグネツト4へ戻ることにより形成される磁路と、 前記磁束が2分させられる前記右側のコア9と前記左側のコア9のそれぞれに巻回される各コイル10と、 中央部が内燃機関の回転軸13に挿入されて固着されるロータ12とを具備するマグネツト。」 との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 4.対比 そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「固着される」、「マグネツト4」、「各コイル10」、「マグネツト」は、それぞれ本願発明の「密着させられる」、「磁石」、「各電源コイル」、「電力装置」に相当する。 引用発明の「一体の閉磁路」中には、磁界を積極的に変化させる要因がないので、引用発明の「ヨーク2、3、とコア9の一体の閉磁路」は、本願発明の「静的な閉路状の磁性芯材」に相当する。 引用発明の「磁路」のマグネツト4の一方より出た磁束は、ロータ12を経由した後2分して半分は右側のコア9を残り半分は左側のコア9を通った後他方のヨーク2、3に到って一に合しマグネツト4の一方へ戻るから、一体の閉磁路のヨーク2、3でマグネツト4の磁束は分岐し、コア9、ヨーク2、3を経由すると共に、磁束を変化させるロータ12も経由していることとなるので、引用発明の「マグネツト4の一方より出た磁束が、ポールピース5、空隙、ロータ12、空隙、反対側のポールピース5、マグネツト4を経てヨーク2、3に到つて磁束は2分し、半分は右側のコア9を通つて該コア9上のコイル10と鎖交し、残り半分は左側のコア9を通つて該コア9上のコイル10と鎖交し、前記各コイル10と鎖交した磁束は他方のヨーク2、3に到つて一に合しマグネツト4へ戻ることにより形成される磁路」は、本願発明の「磁石からの磁束によって、介される磁性芯材に分岐し、前記磁性芯材を経由して形成される動的磁気回路」に相当する。 引用発明の「各コイル10」はマグネツト4の磁束が2分された各コア9に巻回されているから、引用発明の「磁束が2分させられる右側のコア9と左側のコア9のそれぞれに巻回される各コイル10」は、本願発明の「磁束が分岐させられる磁性芯材のそれぞれの枝路部分に巻かれる各電源コイル」に相当する。 引用発明の「ロータ12」は内燃機関の回転軸に連結されて回転に伴い磁束変化をもたらすから、引用発明の「中央部が内燃機関の回転軸13に挿入されて固着されるロータ12」は、本願発明の「動的磁気回路が動的にされる手段」に相当する。 したがって、両者は、 「静的な閉路状の磁性芯材と、 前記磁性芯材に密着させられる磁石と、 前記磁石からの磁束によって、介される前記磁性芯材に分岐し、前記磁性芯材を経由して形成される動的磁気回路と、 前記磁束が分岐させられる前記磁性芯材のそれぞれの枝路部分に巻かれる各電源コイルと、 前記動的磁気回路が動的にされる手段とを具備する電力装置。」 の点で一致し、以下の点で一応の相違がみられる。 〔相違点〕 本願発明は、各電源コイルは相互インダクタンスが負にされる様に作用するのに対し、引用発明は、このような限定が無い点。 5.判断 本願図1において、電源コイルには第1の磁束30を打ち消すような磁束が発生する方向に電流が流れている。この電流は、第1の磁性芯材10に電源コイルを図1の方向に巻回しても逆向きに巻回しても、第1の磁束30を打ち消すような磁束が発生する方向に電流が流れる(即ち、電源コイルの巻回方向によって、電源コイルに誘導起電力によって発生する電流の向きは逆にはなるが、電源コイルに誘導起電力によって発生する電流により発生する磁束は、電流の向きにかかわらず図1の向きになる。)。 誘導起電力によって発生する電流により発生する磁束の向きは、引用発明の発電コイルも同様であり、誘導起電力によって発生する電流により発生する磁束は互いに打ち消す方向に発生する。 そうであれば、本願発明も引用発明も、各電源コイルは相互インダクタンスが負にされる様に作用することとなり、両者に差異は認められない。 なお、請求人は、平成24年11月27日付意見書において、 『相互インダクタンスが負の場合として、相互インダクタンスにマイナスがついている場合が説明されています。その表現を本願に記載しております。』 と主張しており、 この記載に基づけば、相互インダクタンスが負とは、正の相互インダクタンスにマイナスがつくことを意味するものと解せる。 しかし、磁気的に結合された2つの巻線の一方の電流Iを変化させると、もう一方の巻線に誘導起電力Eが生じ、その大きさは、 E=-M(dI/dt) で表され、この現象は相互誘導と呼ばれ、Mが相互インダクタンスである。相互インダクタンスにマイナスがつくことを負の相互インダクタンスと定義するならば、本願発明の「各電源コイルは相互インダクタンスが負にされる様に作用する」とは、2つのコイル間の相互誘導を記載しただけである。引用発明の各コイル10も磁気的に結合された2つの巻線であり、一方の巻線の電流を変化させると、相互誘導によりもう一方の巻線に誘導起電力が生ずるから、当然に「各電源コイル(「コイル10」)は相互インダクタンスが負にされる様に作用する」こととなるので、この点からも両者に差異は認められない。 したがって、本願発明は、引用発明と同一と認められる。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明と同一と認められるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-12-13 |
結審通知日 | 2012-12-18 |
審決日 | 2012-12-25 |
出願番号 | 特願2005-113855(P2005-113855) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(H02K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平岩 正一 |
特許庁審判長 |
堀川 一郎 |
特許庁審判官 |
槙原 進 大河原 裕 |
発明の名称 | ベクトル量の性質が応用される電力消費装置 |