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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1279915
審判番号 不服2011-25017  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-21 
確定日 2013-10-02 
事件の表示 特願2005- 4605「メッキされた導電リード上の成長形成を減少させるための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月28日出願公開、特開2005-203781〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、2005年1月12日(パリ条約による優先権主張 2004年 1月12日 (US)アメリカ合衆国 2004年 5月27日 (US)アメリカ合衆国)の出願であって、平成23年7月15日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月21日に審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成23年11月21日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年11月21日付手続補正を却下する。

[理由]

(1)補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。

「【請求項1】
1つまたは複数のメッキされた導電リード上の成長形成を減少させるための方法であって、前記1つまたは複数のメッキされた導電リードを所定温度でアニールする工程を含み、前記1つまたは複数のメッキされた導電リードは1つまたは複数の層でメッキされ、各層は材料を含み、前記所定温度は前記材料の中の1つの材料の融点より高いまたはほぼ同じであり、前記アニールする工程は、前記所定温度よりも低い半田リフロー温度を用いる半田リフロー処理と比べて成長形成を減少させるものである、方法。」

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「アニールする工程は半田リフロー処理と比べて成長形成を減少させるものである」ことについて、「アニールする工程は、所定温度よりも低い半田リフロー温度を用いる半田リフロー処理と比べて成長形成を減少させるものである」と限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例

(2-1)当審の拒絶の理由に引用した特開2003-193289号公報(平成15年7月9日公開、以下、「引用例1」という。)には、「電解メッキ皮膜の熱処理方法」に関する発明が開示されており、そこには、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【請求項1】 錫を主成分とし10%(wt)以下の銅並びに不可避成分からなる錫-銅系合金を、電解メッキ処理により銅或いは銅合金上に形成した錫-銅系合金の電解メッキ皮膜を、270℃以下227℃以上の温度範囲で15分以内の熱処理を施すことを特徴とする錫-銅系合金の電解メッキ皮膜の熱処理方法。」

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子機器等の部品や特にフレキシブルプリント配線基板における銅配線の半田付けのために用いられる、錫-銅系合金の電解メッキ皮膜の熱処理方法に関するものである。」

・「【0005】
【課題を解決するための手段】以上のような課題を解決するためには、錫を主成分とし10%(wt)以下の銅並びに不可避成分からなる錫-銅系合金を、電解メッキ処理により、銅或いは銅合金上に形成した錫-銅系合金の電解メッキ皮膜を、270℃以下であってかつ227℃以上の温度で15分以内の熱処理を施すこと、また前記銅或いは銅合金としてフレキシブルプリント配線基板の銅配線に適用することによって、解決される。
【0006】以上のように錫-銅系合金の電解メッキ皮膜の熱処理条件を、270℃以下で227℃以上の温度に15分以内のように、前記錫-銅系合金が液相を呈する227℃以上の温度に曝すことによって、ウイスカの発生が抑制され、良好な半田付け性を有するものとすることができる。そして特にフレキシブルプリント配線基板の銅配線のように銅配線のピッチが非常に小さい場合においても、ウイスカによる配線回路の短絡の問題が生じることもない。また前記温範囲と時間の組合せにより、前記フレキシブルプリント配線基板の絶縁部分に対しても、熱劣化等による変色の問題を生じることがない。また前記合金中の銅の添加量を10%(wt)以下としているため、銅或いは銅合金上に形成したこの錫-銅系合金の電解メッキ皮膜は、ウイスカそのものの発生も抑制されている。さらに、鉛は不可避成分程度の量であるため、廃棄処分されたこの種部品が、酸性雨等に曝されても鉛の溶出による環境問題もない。」

・「【0014】これに対し、比較例として記載した比較例1?4に記載のものは、ウイスカの発生やFPCの絶縁部において変色が見られる。これは、熱処理においてこの種半田合金の液相が生じる温度227℃に曝されることがないような条件であるため、ウイスカが発生する。また、熱処理温度の時間が15分よりも長くなったり、ピーク温度が270℃を越えるような場合には、FPCの絶縁部に劣化による変色を生じ、特にFPCの場合には信頼性を損なうものとなる。なお錫-銅系合金の銅量が10%(wt)を越えるものは、本発明の熱処理を施してもウイスカの発生を、問題が生じない量までに抑えることが出来なかった。また比較例4は錫-銅系合金の組成は好ましい範囲にあるが、熱履歴が280℃となると、FPCの絶縁部分に変色を生じてFPCの信頼性を損なうものとなる。なお従来例1および2は、ウイスカの発生は見られないが、Pbが多量に検出され環境問題をクリアできないものである。」

この記載によると、引用例1には、

「電解メッキされた銅配線のウイスカの発生を抑制する方法であって、銅或いは銅合金上に形成した錫-銅系合金の電解メッキ皮膜を、錫-銅系合金が液相を呈する227℃以上270℃以下の温度範囲で15分以内の熱処理を施す熱処理方法。」の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

(2-2)また、同じく当審の拒絶の理由に引用した特開平6-21636号公報(平成6年1月28日公開、以下、「引用例2」という。)には、「基板上への電子回路部品の半田付け方法」に関する発明が開示されており、そこには、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、基板上へ表面実装型電子回路部品(以下SMDと称する)を半田付けするための新規な方法に関する。」

・「【0011】図1は、本発明の方法の手順を示す。図1aに示すように、リフロー経路上のプリント回路基板1の所定箇所に設置されたフットプリント2の上にディスペンサから半田ペレット3が供給され、その上に更に液状フラックス4が供給される。次に図1bに示すように、チップコンデンサ等のSMD5がフットプリント2の上に載置され、図1cに示すように再びディスペンサから液状フラックス4が供給される。
【0012】その後、プリント回路基板1はリフロー炉(図示しない)内に導入されて熱処理を受ける。図2はその熱処理条件の一例を示すタイムチャートである。即ち室温(20℃)から100℃まで約7分かけて緩やかに昇温して第1段階の予備加熱を行い、次に更に7分かけて150℃まで昇温させて第2段階の予備加熱を行う。ここで一気にリフロー温度である220℃まで温度を上げ、200℃以上の温度を約40秒維持してから放冷に転じる。」

(2-3)また、同じく当審の拒絶の理由に引用した特開2002-45993号公報(平成14年2月12日公開、以下、「引用例3」という。)には、「低温活性ハンダペースト」に関する発明が開示されており、そこには、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0045】〈電子部品接合物の製造〉実装方法としてSMTを用いた。実施例1?2、比較例1?2の組成のハンダペーストをそれぞれ1枚の回路板に印刷し、LSI、チップ抵抗、チップコンデンサーをハンダペースト上に載置した後、リフロー熱源により加熱してハンダ付けした。リフロー熱源には熱風炉を用いた。リフロー条件はプレヒート温度が130℃、プレヒート時間が80秒、リフローはピーク温度が220℃、200℃以上のリフロー時間を50秒とした。」

(3)対比
本願補正発明と引用例1記載の発明を対比すると、後者における「電解メッキ」、「銅配線」は、前者における「1つまたは複数のメッキ」、「導電リード」に相当し、後者において「ウイスカの発生を抑制する」ことは、前者において「成長形成を減少させる」ことに相当する。
また、後者において「227℃以上270℃以下の温度範囲で15分以内の熱処理を施す」ことは、前者における「所定温度でアニールする工程を含」むことに相当する。
また、後者において「銅或いは銅合金上に形成した錫-銅系合金の電解メッキ皮膜」を有することは、前者において「1つまたは複数のメッキされた導電リードは1つまたは複数の層でメッキされ、各層は材料を含」むことに相当する。
また、後者において「錫-銅系合金が液相を呈する227℃以上」としていることは、前者において「所定温度は材料の中の1つの材料の融点より高いまたはほぼ同じであ」ることに相当する。

したがって、両者は、「1つまたは複数のメッキされた導電リード上の成長形成を減少させるための方法であって、前記1つまたは複数のメッキされた導電リードを所定温度でアニールする工程を含み、前記1つまたは複数のメッキされた導電リードは1つまたは複数の層でメッキされ、各層は材料を含み、前記所定温度は前記材料の中の1つの材料の融点より高いまたはほぼ同じである、方法。」である点で一致し、次の点において相違する。

[相違点]
本願補正発明においては、「アニールする工程は、所定温度よりも低い半田リフロー温度を用いる半田リフロー処理と比べて成長形成を減少させるものである」のに対して、引用例1記載の発明においては、そのような事項について記載がない点。

(4)判断
相違点について検討すると、引用例1には、「比較例として記載した比較例1?4に記載のものは、ウイスカの発生やFPCの絶縁部において変色が見られる。これは、熱処理においてこの種半田合金の液相が生じる温度227℃に曝されることがないような条件であるため、ウイスカが発生する。」との記載があり、液相が生じる温度227℃以下の熱処理では、ウイスカの発生を抑制できないことは、当業者にとって、容易に想到し得ることである。そして、引用例2、3には、半田リフロー温度を220℃とする半田リフロー処理が記載されているが、このような半田リフロー温度を用いる半田リフロー処理と比べて、引用例1記載の発明における「熱処理」が、ウイスカの発生を抑制できるものであることも、当業者にとって、容易に想到し得る事項にすぎない。

そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1記載の発明、および、引用例2、3の記載事項から当業者が予測し得る程度のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例1記載の発明、および引用例2、3の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について

(1)本願発明
平成23年11月21日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
1つまたは複数のメッキされた導電リード上の成長形成を減少させるための方法であって、前記1つまたは複数のメッキされた導電リードを所定の温度でアニールする工程を含み、前記1つまたは複数のメッキされた導電リードは1つまたは複数の層でメッキされ、各層は材料を含み、前記所定の温度は前記材料の中の1つの材料の融点より高いまたはほぼ同じであり、前記アニールする工程は半田リフロー処理と比べて成長形成を減少させるものである、方法。」

(2)引用例
当審の拒絶の理由に引用した引用例1、引用例2、引用例3とその記載事項は、前記の「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明において、「アニールする工程は、所定温度よりも低い半田リフロー温度を用いる半田リフロー処理と比べて成長形成を減少させるものである」ことについて、「所定温度よりも低い半田リフロー温度を用いる」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1記載の発明、および引用例2、3の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1記載の発明、および引用例2、3の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明、および引用例2、3の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-07 
結審通知日 2013-05-09 
審決日 2013-05-21 
出願番号 特願2005-4605(P2005-4605)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (H01L)
P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 園子  
特許庁審判長 丸山 英行
特許庁審判官 平田 信勝
小関 峰夫
発明の名称 メッキされた導電リード上の成長形成を減少させるための方法および装置  
代理人 岡部 讓  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 正夫  

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