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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1280241
審判番号 不服2012-4769  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-13 
確定日 2013-10-10 
事件の表示 特願2005-378254「駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月12日出願公開、特開2007-178784〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年12月28日の出願であって、平成23年10月27日付けで明細書及び特許請求の範囲についての補正がなされ(以下、「補正1」という。)、平成23年12月6日付け(送達:同年同月13日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年3月13日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
その後、当審より、平成24年9月11日付け審尋書により審尋をしたところ、同年11月19日付けで回答書が提出され、平成25年5月7日付け審尋書により審尋したところ、同年7月12日付けで回答書が提出された。


第2 補正却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を次のとおり補正するものである。

(本件補正前)
「【請求項1】
表示パネルを駆動する駆動装置において、該装置は、前記表示パネルを走査線方向に駆動する走査線駆動手段を備え、該走査線駆動手段は、
複数の遅延手段の出力部を順次接続し、入力データを第1のクロック信号に応動して順次シフトするシフトレジスタ手段と、
前記複数の遅延手段の出力部にそれぞれに対応して接続され、該出力部からの出力信号と前記第1のクロック信号とを演算する複数の演算手段と、
該複数の演算手段の演算出力信号に対応してそれぞれ接続され、前記演算出力信号の電圧レベルをそれぞれ変換して出力する複数のレベルシフト手段とを備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置において、該装置は、前記第1のクロック信号と第2のクロック信号とを第3のクロック信号に基づいて生成する生成手段を備え、
前記シフトレジスタ手段は、前記第1および第2のクロック信号に応動して前記入力データをシフトすることを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の駆動装置において、前記生成手段は、前記第3のクロック信号のデューティー比を変更して前記第1のクロック信号を生成することを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の駆動装置において、前記生成手段は、前記第1のクロック信号を逆相にして前記第2のクロック信号を生成することを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項2に記載の駆動装置において、前記生成手段は、前記第3のクロック信号に基づき、異なるタイミングにて反転しそれぞれ逆相の前記第1および第2のクロック信号を生成することを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
請求項2に記載の駆動装置において、前記遅延手段は、前記第1のクロック信号に応動して前記入力データを保持し、前記第2のクロック信号に応動して前記入力データを出力することを特徴とする駆動装置。
【請求項7】
請求項2に記載の駆動装置において、前記複数の遅延手段を含むシフトレジスタ手段は、外部から供給されるリセット信号により前記生成手段から出力される信号に応動してリセット動作を行うことを特徴とする駆動装置。
【請求項8】
請求項1に記載の駆動装置において、該装置は、画素信号を前記表示パネルに供給して駆動する信号線駆動手段を備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項9】
請求項1に記載の駆動装置において、前記表示パネルは液晶表示パネルであることを特徴とする駆動装置。」

(本件補正後)
「【請求項1】
表示パネルを駆動する駆動装置において、該装置は、前記表示パネルを走査線方向に駆動する走査線駆動手段を備え、該走査線駆動手段は、
複数の遅延手段の出力部を順次接続し、入力画素信号を第1のクロック信号に応動して順次シフトするシフトレジスタ手段と、
前記複数の遅延手段の出力部にそれぞれに対応して接続され、該出力部からの出力信号と前記第1のクロック信号とを演算する複数の演算手段と、
該複数の演算手段の演算出力信号に対応してそれぞれ接続され、前記演算出力信号の電圧レベルをそれぞれ変換して出力する複数のレベルシフト手段とを備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置において、該装置は、前記第1のクロック信号と第2のクロック信号とを第3のクロック信号に基づいて生成する生成手段を備え、
前記シフトレジスタ手段は、前記第1および第2のクロック信号に応動して前記入力画素信号をシフトすることを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の駆動装置において、前記生成手段は、前記第3のクロック信号のデューティー比を変更して前記第1のクロック信号を生成することを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の駆動装置において、前記生成手段は、前記第1のクロック信号を逆相にして前記第2のクロック信号を生成することを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項2に記載の駆動装置において、前記生成手段は、前記第3のクロック信号に基づき、異なるタイミングにて反転しそれぞれ逆相の前記第1および第2のクロック信号を生成することを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
請求項2に記載の駆動装置において、前記遅延手段は、前記第1のクロック信号に応動して前記入力画素信号を保持し、前記第2のクロック信号に応動して前記入力画素信号を出力することを特徴とする駆動装置。
【請求項7】
請求項2に記載の駆動装置において、前記複数の遅延手段を含むシフトレジスタ手段は、外部から供給されるリセット信号により前記生成手段から出力される信号に応動してリセット動作を行うことを特徴とする駆動装置。
【請求項8】
請求項1に記載の駆動装置において、該装置は、前記画素信号を前記表示パネルに供給して駆動する信号線駆動手段を備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項9】
請求項1に記載の駆動装置において、前記表示パネルは液晶表示パネルであることを特徴とする駆動装置。」
(下線は補正箇所。)

本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「入力データを第1のクロック信号に応動して順次シフトするシフトレジスタ手段」を「入力画素信号を第1のクロック信号に応動して順次シフトするシフトレジスタ手段」と限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2 引用例記載の事項・引用発明
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-268842号公報(以下「引用例」という。)には、マトリクス型表示装置の駆動回路(発明の名称)に関し、次の事項(a)ないし(c)が図面とともに記載されている。

(a)
「【0052】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係るマトリクス型表示装置の駆動回路として、液晶表示装置の駆動回路を例に挙げ、その構成について図面を用いて説明する。
【0053】実施の形態1.図1は、本実施の形態1に係る液晶表示装置の駆動回路を示している。」

(b)
「【0072】液晶表示パネルの垂直駆動の開始タイミングを示す垂直スタートパルスYSTPを発生するためのYSTP発生回路140は、図24に示すように、DFF140A、140B、アンド回路140Cを備える。そして、表示画像の垂直周期を示す垂直駆動パルスVDがDFF140A及び140BのCLR端子に供給され、水平駆動パルスHDが各CK端子に供給されている。YSTP発生回路140は、これら垂直駆動パルスVD及び水平駆動パルスHDに基づいて、垂直スタートパルスYSTPを発生する。
【0073】また、垂直シフトレジスタ150は、m個のDFF(mは整数)で構成されており、各DFFのCK端子に供給される水平駆動パルスHDに従って上記YSTP発生回路140から出力される垂直スタートパルスYSTPを順次シフトして、各Q出力端子から順次出力する。
【0074】DFFの各Q出力端子には、対応するアンド回路1511?151mの一方の入力に供給されており、各アンド回路1511?151mは、その他方の入力に供給される水平駆動パルスHDと垂直シフトレジスタ150からの出力との論理積をとる。同一水平方向に配置された各ゲートラインには、画素TFT(例えば、11A、11B、11C、11D?1nA、1nB、1nC、1nD)のゲートがそれぞれ接続されており、この走査ライン(以下、ゲートラインと言う)にアンド回路1511?151mからの出力が各画素TFTに表示画像信号を書き込むための走査信号としてそれぞれ供給される。」

(c)
「【0088】ところで、図24に示すような構成のYSTP発生回路140は、入力される垂直駆動パルスVDに基づき、XSTP発生回路20と同様の動作で、垂直スタートパルスYSTPを発生する。この垂直スタートパルスYSTPは垂直シフトレジスタ150に入力される。垂直シフトレジスタ150は、本実施の形態1においては、水平駆動パルスHDをその転送クロックとしており、1水平駆動期間ごとに垂直スタートパルスYSTPがシフトして各段DFF1501?150mがこれを出力する。アンド回路1511?151mは、この各段DFF1501?150mから順次出力される垂直スタートパルスYSTPと水平駆動パルスHDとの論理積をとり、その論理積結果を対応するゲートラインに順次走査信号として出力する。
【0089】水平方向に並ぶ画素TFTは、水平方向に延びたゲートラインにそのゲートが接続され、各画素TFTは、対応するゲートラインが選択され、ゲートに「H」が供給される期間オンする。そして、オンした画素TFTは、データラインを介して、サンプル用コンデンサ01E?0nHに保持されている表示画像信号を取り込む。なお、この表示画像信号は、その電圧レベルが、水平補正信号のレベルによって制御されており、サンプル用コンデンサ01E?0nHに一水平駆動期間中保持される。」

・前記記載(a)、(b)及び【図1】より、
ア 「液晶表示パネルを駆動する駆動回路において、該回路は、液晶表示パネルを走査線方向に駆動する手段を備える」との技術的事項が読み取れる。

・前記記載(b)、(c)、【図1】より、
イ 「液晶表示パネルを走査線方向に駆動する手段は、複数のDFFの出力端子Qを順次接続し、垂直スタートパルスを転送クロックに応動して順次シフトする垂直シフトレジスタ150と、複数のDFFの出力端子にそれぞれ対応して接続され、該出力端子からの出力信号と転送クロックとを論理積演算する複数のアンド回路1511?151mを備える」との技術的事項が読みとれる。

(2)引用発明
以上の技術的事項ア、イを総合勘案すると、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。

「液晶表示パネルを駆動する駆動回路において、該回路は、液晶表示パネルを走査線方向に駆動する手段を備え、液晶表示パネルを走査線方向に駆動する手段は、
複数のDFFの出力端子Qを順次接続し、垂直スタートパルスを転送クロックに応動して順次シフトする垂直シフトレジスタ150と、
複数のDFFの出力端子にそれぞれ対応して接続され、該出力端子からの出力信号と転送クロックとを論理積演算する複数のアンド回路1511?151mを備える駆動回路。」(以下、「引用発明」という。)

3 対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明における「液晶表示パネルを駆動する駆動回路」、「液晶表示パネルを走査線方向に駆動する手段」、「DFFの出力端子」、「転送クロック」、「垂直シフトレジスタ」、「アンド回路」は、本願補正発明における「表示パネルを駆動する駆動装置」、「走査線駆動手段」、「遅延手段の出力部」、「第1のクロック信号」、「シフトレジスタ手段」、「演算手段」に、それぞれ相当する。

(2)平成25年7月12日付け回答書によると、本願補正発明における「入力画素信号」は、走査線を駆動するタイミングを規定する信号であって、シフトレジスタ手段で順次シフトされる単発のパルス信号であると認められる。そして、引用発明における「垂直スタートパルス」も走査線を駆動するタイミングを規定する信号であって、垂直シフトレジスタで順次シフトされる単発のパルス信号であるから、引用発明における「垂直スタートパルス」は、本願補正発明における「入力画素信号」に相当する。

(3)以上の関係を整理すると、両者の一致点及び相違点は、以下の通りである。

(一致点)
「表示パネルを駆動する駆動装置において、該装置は、前記表示パネルを走査線方向に駆動する走査線駆動手段を備え、該走査線駆動手段は、
複数の遅延手段の出力部を順次接続し、入力画素信号を第1のクロック信号に応動して順次シフトするシフトレジスタ手段と、
前記複数の遅延手段の出力部にそれぞれに対応して接続され、該出力部からの出力信号と前記第1のクロック信号とを演算する複数の演算手段とを備える駆動装置。」

(相違点)
本願補正発明では、複数の演算手段の演算出力信号に対応してそれぞれ接続され、演算出力信号の電圧レベルをそれぞれ変換して出力する複数のレベルシフト手段が備えられているのに対し、引用発明では、複数のレベルシフト手段が備えられていない点。

4 判断
前記相違点について検討する。
演算手段(ANDゲート)の演算出力信号の電圧レベルをそれぞれ変換して出力するために、演算手段の出力にレベルシフト手段(レベルシフタ)を設けることは、この出願時に周知の技術である。この点については、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-140619号公報(段落【0006】、【図6】)を参照のこと。そうしてみると、引用発明に対して前記周知技術を適用し、複数の演算手段であるアンド回路の出力にレベルシフト手段を備えることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び前記周知技術から当業者が予測可能なものであって格別のものではない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし9に係る発明は、補正1によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。

「表示パネルを駆動する駆動装置において、該装置は、前記表示パネルを走査線方向に駆動する走査線駆動手段を備え、該走査線駆動手段は、
複数の遅延手段の出力部を順次接続し、入力データを第1のクロック信号に応動して順次シフトするシフトレジスタ手段と、
前記複数の遅延手段の出力部にそれぞれに対応して接続され、該出力部からの出力信号と前記第1のクロック信号とを演算する複数の演算手段と、
該複数の演算手段の演算出力信号に対応してそれぞれ接続され、前記演算出力信号の電圧レベルをそれぞれ変換して出力する複数のレベルシフト手段とを備えることを特徴とする駆動装置。」(以下、「本願発明」という。)

1 引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された発明・事項は、前記「第2」の「2 引用例記載の事項・引用発明」に記載したとおりである。

2 対比・判断
本願発明と本願補正発明とは、シフトレジスタ手段でシフトされる対象が、前者では「入力データ」、後者では「入力画素信号」とする点で異なるが、本願発明に係る「入力データ」は「入力画素信号」を包含するものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含む本願補正発明が、前記「第2」の「3 対比」、「4 判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-09 
結審通知日 2013-08-13 
審決日 2013-08-26 
出願番号 特願2005-378254(P2005-378254)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野 健二西島 篤宏  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 小林 紀史
関根 洋之
発明の名称 駆動装置  
代理人 香取 孝雄  
代理人 中島 淳  
代理人 加藤 和詳  
代理人 福田 浩志  

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