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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04C
管理番号 1280268
審判番号 不服2013-12367  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-28 
確定日 2013-10-10 
事件の表示 特願2010-279279「スクリュ圧縮機」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月 5日出願公開、特開2012-127253〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成22年12月15日の出願であって、平成24年12月25日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成25年3月11日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、平成25年3月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年6月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年3月11日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「雌雄一対のスクリュロータを収容する圧縮室と、該圧縮室と連通する吸込口および吐出口とが形成されたケーシングを有し、前記雌雄一対のスクリュロータのうち、一方のスクリュロータを回転する入力軸が前記ケーシングから外部に突出するように設けられた圧縮機本体と、該圧縮機本体の吐出口に接続された吐出流路とを備えるスクリュ圧縮機において、
前記圧縮機本体の入力軸と連結する出力軸を有する駆動機と、
磁化可能な金属からなり前記入力軸の端部に連結された本体側ディスクロータ、該本体側ディスクロータと対向するように弾性部材を介して接合されたアーマチュアが設けられ前記駆動機の出力軸の端部に連結された駆動機側ディスクロータ、および、通電がなされて発生する磁束によって前記本体側ディスクロータを磁化する作動部で構成され、磁化された前記本体側ディスクロータが前記弾性部材の復元力に抗して前記アーマチュアを吸い寄せて前記駆動機側ディスクロータと接続することで前記出力軸と前記入力軸とを接続するオン状態、前記本体側ディスクロータが消磁されて前記弾性部材の復元力により前記アーマチュアを初期位置に戻すことで前記出力軸と前記入力軸とを切断するオフ状態のうちいずれか一方の状態に切り替えるクラッチ機構と、
前記吐出流路に設けられた圧力センサと、
アンロード設定値を予め定められた範囲内で任意に設定可能であるとともに、前記圧力センサにより検出した吐出圧力値に基づいて前記クラッチ機構の前記オン状態と前記オフ状態の切り替えを制御するべく、前記作動部への通電を開始または停止するコントローラと
を備え、
前記吐出圧力値が前記コントローラに予め設定した所定のアンロード設定値より高くなった場合に、前記コントローラが、前記クラッチ機構が前記オフ状態となるように制御するべく、前記作動部への通電を停止することを特徴とするスクリュ圧縮機。」


3.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭60-6708号(実開昭61-123897号)のマイクロフィルム(以下「引用刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「スクリュー圧縮機の容量調整において、吐出側圧力の変化を圧力スイッチにより検出し、電磁弁を作動させ、吐出側空気を操作圧力として、圧縮機とモータ間に設けたエアクラッチ機構に導き、圧縮機側への動力伝達を遮断し動力軽減を計り、また、圧縮機出口直後に設けたピストン弁へも操作空気を導き、圧縮機とレシーバ間の逆止弁手前側の圧力空気を放出し、再スタート時の動力軽減を計る構成を特徴とするスクリュー圧縮機。」(実用新案登録請求の範囲)

・「〔考案の目的〕本考案の目的は、スクリュー圧縮機の容量調整方法として、吐出側圧力の変化を圧力スイッチで検出し、規定圧力(容量)時に電磁弁を作動させ、操作空気を圧縮機とモータを接続するエアクラッチに導き伝達を遮断および圧縮機出口直後のピストン弁に導き吐出空気の大気解放により、モータの無負荷回転による動力低減、再スタート(切換時)時における軸動力の低減を計ることにある。
〔考案の慨要〕
スクリュー圧縮機の容量調整時における軸動力軽減方法としては一般的に、吐出圧力を解放し背圧による内部圧縮の軽減および、モータの停止等が効果がある。
しかしながら、前者はモータが駆動しているため、圧縮機本体のメカロスまた、油冷式スクリュー圧縮磯の場合は油のかきまわし動力等により、100%容量時と比較すると15?20%程度の動力が消費される。
一方、後者の場合は、吐出圧力の変動(使用空気量の変動)により、起動-停止がひんぱんに行なわれるため、モータの焼損、圧縮機本体の機器に対しても悪影響が考えられる。この解消としては、タイマーを使用して起動(停止)制限をすることもあるが、この場合、動力低減の効果が少なくなる。
従来方式の場合上記のように一長一短があり、本考案はその解決策としてなされたものである。
すなわち本考案は、吐出側圧力の変化を圧力スイッチにより検出して電磁弁を作動させ、吐出側空気を操作圧力として圧縮機とモータ間に設けたエアクラッチ機構に導き、圧縮磯側への動力伝達を遮断し、圧縮機とレシーバ間の逆止弁手前側の圧力空気を放出し再スタート時の動力軽減を計る構成を特徴とするものである。」(明細書3頁2行?4頁16行)

・「〔考案の実施例〕
以下、本考案の実施例を図により説明する。
サクションフィルタ1を経た吸入空気は、圧縮機本体2に入り、モータ3との間のエアクラッチ4により動力伝達され、圧縮機が駆動され、圧縮された空気は、逆止弁5を経て、レシーバタンク6に入り(油冷式の場合は、圧縮機本体-レシーバタンク間に通常は、 油分離器が存在する。)サービスエアとして供給される。
本考案によれば、末端の使用空気量が減少するとレシーバタンク6内空気圧力が上昇するため、本圧力を圧力スイッチ7で検出し、規定圧力(空気量)時に作動させ、三方口電磁弁8を励磁し、開かせ、レシーバタンク6内圧縮空気を操作圧力としてエアクラッチ4およびピストン弁9に導く。
エアクラッチ4に導かれた操作空気は、モータ3と圧縮機本体2との伝達を遮断し、モータ3は無負荷の状態となり、軸動力は大巾に低下する。
一方、ピストン弁9に導かれた操作空気は弁を開き、圧縮機本体2と逆止弁5間の圧縮空気を大気開放し、再スタート時(切換時)の動力軽減を計る。
便用空気量が増加した場合はレシーバタンク6内圧力が低下するため本圧力を圧力スイッチ7で検出し作動させ、三方口電磁弁8を消磁する事により、エアクラッチ4およびピストン弁9への操作空気を大気へ解放し、エアクラッチ4から圧縮機本体2への伝達が行なわれ、また、ピストン弁9が閉じ、正規の圧縮を始める。
本考案によれば、モータを停止することなく大巾な動力軽減が計られ、かつ、起動-停止に伴なうモータ焼損等のトラブルが無くなる。また、圧縮機直後の圧縮空気を大気に解放するため、再スタート時(切換時)の動力軽減を計ることが出来る。」(明細書4頁17行?6頁11行)

・「〔考案の効果〕
本考案により次のような効果がある。
(1) 低負荷時における軸動力を大巾に低減することが出来る。
従来の吐出圧力解放+吸気弁閉塞方式だと完全無負荷時においては、100%容量時の軸動力比で約15-20%であるが、本考案によれば、モータが無負荷となるため、同様比で約3%となり、約12?17%の低減となる。
(2) モータを停止させないため、ひんぱんな起動-停止に伴なうモータの焼損等が無くなる。
また、追従性が良く、吐出圧力の変動に対して素早い応答性が得られる。
(3) 圧縮機直後の圧縮空気を解放するため、再スタート時(切換時)の動力を軽減するとともに、圧縮機本体各部品およびエアクラッチの動作に与える悪影響が無い。」(明細書6頁12行?7頁8行)

そして、図面には、圧縮機本体2の入力軸と連結する出力軸を有するモータ3が示されている。ここで、エアクラッチ4について、モータ3から圧縮機本体2への動力伝達を行う状態及び該動力伝達を遮断する状態は、それぞれモータ3の出力軸と圧縮機本体2の入力軸とを接続するオン状態及び前記出力軸と前記入力軸とを切断するオフ状態であることが理解できる。
また、図面には、吐出流路にレシーバタンク6が設けられた態様が示されている。

よって、これらの事項及び図示内容を本願発明の表現にならって整理すると、引用刊行物には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「圧縮機本体2と、該圧縮機本体2の吐出口に接続された吐出流路とを備えるスクリュー圧縮機において、
前記圧縮機本体2の入力軸と連結する出力軸を有するモータ3と、
前記出力軸と前記入力軸とを接続するオン状態、前記出力軸と前記入力軸とを切断するオフ状態のうちいずれかの一方の状態に切り替えるエアクラッチ4と、
前記吐出流路に設けられたレシーバタンク6内の空気圧力を検出し、規定圧力時に作動する圧力スイッチ7と、
を備え、
前記空気圧力が前記規定圧力になった場合に、前記エアクラッチ4が前記オフ状態となるように制御するスクリュー圧縮機。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを、その機能・作用を考慮して対比する。

・後者の「圧縮機本体2」は前者の「圧縮機本体」に相当し、以下同様に、「モータ3」は「駆動機」に、「エアクラッチ4」は「クラッチ機構」にそれぞれ相当する。

・スクリュー圧縮機が、「雌雄一対のスクリュロータを収容する圧縮室と、該圧縮室と連通する吸込口および吐出口とが形成されたケーシングを有し、前記雌雄一対のスクリュロータのうち、一方のスクリュロータを回転する入力軸が前記ケーシングから外部に突出するように設けられた圧縮機本体」を備えることは普通であるから、後者の「スクリュー圧縮機」は、前者の「雌雄一対のスクリュロータを収容する圧縮室と、該圧縮室と連通する吸込口および吐出口とが形成されたケーシングを有し、前記雌雄一対のスクリュロータのうち、一方のスクリュロータを回転する入力軸が前記ケーシングから外部に突出するように設けられた圧縮機本体と、該圧縮機本体の吐出口に接続された吐出流路とを備えるスクリュ圧縮機」に相当する。

・後者の「吐出流路に設けられたレシーバタンク6内の空気圧力を検出し、規定圧力時に作動する圧力スイッチ7」は、引用刊行物の明細書3頁4?5行に「吐出側圧力の変化を圧力スイッチで検出し」と記載されているように、吐出側の圧力を検出するためのものであるから、前者の「吐出流路に設けられた圧力センサ」にも相当し、後者の「空気圧力」は前者の「吐出圧力値」に相当する。
そして、引用刊行物の明細書5頁6?14行に「本考案によれば、末端の使用空気量が減少するとレシーバタンク6内空気圧力が上昇するため、本圧力を圧力スイッチ7で検出し、規定圧力(空気量)時に作動させ、三方口電磁弁8を励磁し、開かせ、レシーバタンク6内圧縮空気を操作圧力としてエアクラッチ4およびピストン弁9に導く。 エアクラッチ4に導かれた操作空気は、モータ3と圧縮機本体2との伝達を遮断し、モータ3は無負荷の状態となり、軸動力は大巾に低下する。」と記載されているように、圧力スイッチ7により検出した空気圧力に基づいてエアクラッチ4のオン状態とオフ状態の切替えを制御していることから、後者において、「圧力センサにより検出した吐出圧力値に基づいて前記クラッチ機構の前記オン状態と前記オフ状態の切り替えを制御するコントローラ」に相当する構成を備え、「コントローラが、クラッチ機構がオフ状態となるように制御する」ことは明らかである。

・後者の「規定圧力」は、モータ3と圧縮機本体2との伝達を遮断し、モータ3を無負荷の状態とするための設定値と言えるから、前者の「コントローラに予め設定した所定のアンロード設定値」に相当し、後者の「空気圧力が規定圧力になった場合」と、前者の「吐出圧力値がコントローラに予め設定した所定のアンロード設定値より高くなった場合」とは、「吐出圧力値がコントローラに予め設定した所定のアンロード設定値に対して所定の状態になった場合」との概念で共通する。
よって、後者の「空気圧力が規定圧力になった場合に、エアクラッチ4がオフ状態となるように制御する」態様と、前者の「吐出圧力値がコントローラに予め設定した所定のアンロード設定値より高くなった場合に、前記コントローラが、クラッチ機構がオフ状態となるように制御するべく、作動部への通電を停止する」態様とは、「吐出圧力値がコントローラに予め設定した所定のアンロード設定値に対して所定の状態になった場合に、前記コントローラが、クラッチ機構がオフ状態となるように制御する」との概念で共通する。

したがって、両者は、
「雌雄一対のスクリュロータを収容する圧縮室と、該圧縮室と連通する吸込口および吐出口とが形成されたケーシングを有し、前記雌雄一対のスクリュロータのうち、一方のスクリュロータを回転する入力軸が前記ケーシングから外部に突出するように設けられた圧縮機本体と、該圧縮機本体の吐出口に接続された吐出流路とを備えるスクリュ圧縮機において、
前記圧縮機本体の入力軸と連結する出力軸を有する駆動機と、
前記出力軸と前記入力軸とを接続するオン状態、前記出力軸と前記入力軸とを切断するオフ状態のうちいずれか一方の状態に切り替えるクラッチ機構と、
前記吐出流路に設けられた圧力センサと、
前記圧力センサにより検出した吐出圧力値に基づいて前記クラッチ機構の前記オン状態と前記オフ状態の切り替えを制御するコントローラと
を備え、
前記吐出圧力値が前記コントローラに予め設定した所定のアンロード設定値に対して所定の状態になった場合に、前記コントローラが、前記クラッチ機構が前記オフ状態となるように制御するスクリュ圧縮機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
クラッチ機構に関し、本願発明では、「磁化可能な金属からなり入力軸の端部に連結された本体側ディスクロータ、該本体側ディスクロータと対向するように弾性部材を介して接合されたアーマチュアが設けられ駆動機の出力軸の端部に連結された駆動機側ディスクロータ、および、通電がなされて発生する磁束によって前記本体側ディスクロータを磁化する作動部で構成され、磁化された前記本体側ディスクロータが前記弾性部材の復元力に抗して前記アーマチュアを吸い寄せて前記駆動機側ディスクロータと接続することで前記出力軸と前記入力軸とを接続するオン状態、前記本体側ディスクロータが消磁されて前記弾性部材の復元力により前記アーマチュアを初期位置に戻すことで前記出力軸と前記入力軸とを切断するオフ状態のうちいずれか一方の状態に切り替える」ものであるのに対して、引用発明では、出力軸と入力軸とを接続するオン状態、前記出力軸と前記入力軸とを切断するオフ状態のうちいずれかの一方の状態に切り替えるものの、そのような構成を有するものではない点。

[相違点2]
コントローラが、クラッチ機構のオン状態とオフ状態の切り替えを制御するのに、本願発明では、「クラッチ機構の作動部への通電を開始または停止する」のに対して、引用発明では、そのような構成を有していない点。

[相違点3]
コントローラが、クラッチ機構がオフ状態となるように制御するのに、本願発明では、「作動部への通電を停止する」のに対して、引用発明では、そのような構成を有していない点。

[相違点4]
コントローラが、本願発明では、「アンロード設定値を予め定められた範囲内で任意に設定可能である」のに対して、引用発明では、そのような特定はされていない点。

[相違点5]
吐出圧力値がコントローラに予め設定した所定のアンロード設定値に対して所定の状態になった場合に関し、本願発明では、「吐出圧力値がコントローラに予め設定した所定のアンロード設定値より高くなった場合」であるのに対して、引用発明では、「空気圧力が規定圧力になった場合」である点。


5.判断
上記相違点について検討する。
[相違点1ないし3について]
クラッチ機構として、磁化可能な金属からなる一方の回転体(ディスクロータ)、該一方の回転体(ディスクロータ)と対向するように弾性部材を介して接合されたアーマチュアが設けられた他方の回転体(ディスクロータ)、および、通電がなされて発生する磁束によって前記一方の回転体(ディスクロータ)を磁化するコイル(作動部)で構成され、磁化された前記一方の回転体(ディスクロータ)が前記弾性部材の復元力に抗して前記アーマチュアを吸い寄せて前記他方の回転体(ディスクロータ)と接続することで回転駆動力の伝達を行う状態(オン状態)、前記一方の回転体(ディスクロータ)が消磁されて前記弾性部材の復元力により前記アーマチュアを初期位置に戻すことで前記回転駆動力の伝達を遮断する状態(オフ状態)のうちいずれか一方の状態に切り替えるようにした電磁クラッチは、本願出願前に周知の構成(必要であれば、特開2009-36229号公報(特に、【0028】?【0031】、【0054】?【0058】及び図1)、特開2002-48155号公報(特に、【0026】?【0036】、【0045】?【0048】及び図1)、特開平11-201192号公報(特に、【0005】及び図2)、特開平5-190320号公報(特に、【0012】?【0014】、【0019】、【0023】、【0027】及び図1)及び実願平5-44726号(実開平7-10568号)のCD-ROM(特に、【0011】?【0013】及び図2)を参照。)である。
また、上記相違点1に係る本願発明の構成について、本願明細書の記載を参酌しても、上記周知の構成の電磁クラッチを用いること以上の格別な技術的意義を認めることはできない。
そして、モータの出力軸と圧縮機本体の入力軸との間に電磁クラッチを設けることは本願出願前に周知の技術(必要であれば、特開2010-24868号公報(特に、【0019】?【0028】及び図1)、特開2007-162629号公報(特に、【0023】、【0035】及び図1)、特開2007-146656号公報(特に、請求項1、請求項4、【0008】、【0038】及び図1)及び特開昭61-112788号公報(特に、1頁左下欄5?14行及び図)を参照。)であるから、引用発明において、エアクラッチ4の替わりに上記周知の構成の電磁クラッチを採用して上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものである。
また、このようなクラッチ機構の変更に伴い、引用発明において、コントローラを、電磁クラッチ(クラッチ機構)のオン状態とオフ状態の切り替えを制御するべく、電磁クラッチ(クラッチ機構)のコイル(作動部)への通電を開始または停止すること、及び、電磁クラッチ(クラッチ機構)がオフ状態となるように制御するべく、コイル(作動部)への通電を停止すること、すなわち、上記相違点2及び3に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が適宜なし得たことである。

[相違点4について]
圧縮機から吐出される圧縮空気を消費するに際し、消費側で利用する圧縮空気の圧力は、圧縮機の能力により定まる範囲内であれば、任意に選び得るものである。
したがって、引用発明において、規定圧力(コントローラに予め設定した所定のアンロード設定値)を予め定められた範囲内で任意に設定可能とすること、すなわち、上記相違点4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
ところで、請求人は、「なお、同文献の発明は、特徴(B)を備えているとしても、アンロード設定値の設定範囲がエアクラッチ4内部のバネ力以上の限定された範囲であり、制約を受ける。以上より、引用文献1の発明は、少なくとも(A)及び(C)の特徴を備えておらず、本願発明を構成できない。 これに対し、本発明のクラッチ機構(35)は、通電がなされた際に接続して通電がなくなった際に切断する電磁クラッチであるため、バネ力の大きさの制約を受けることなく、アンロード設定値を所望の値に容易に変更できる。したがって、本発明によれば、特定のクラッチ機構(35)を採用しているため、引用文献1の発明で使用範囲外の範囲での使用も可能となる。」(審判請求書5頁23行?6頁2行)と主張するが、引用発明において、エアクラッチ4の替わりに上記周知の構成の電磁クラッチを採用したものは、本願発明と同様に、規定圧力(コントローラに予め設定した所定のアンロード設定値)の設定範囲に制約を受けるものではないことから、かかる主張を採用することはできない。

[相違点5について]
一般的に、制御を行うために検出値が設定値に対して所定の状態になったことを判定する条件を、検出値が設定値になった場合とすることも、検出値が設定値よりも高くなった場合とすることも、本願出願前に技術常識に属する事項であり、それらのどちらを採用するかは当業者が適宜選択する事項といえる。
そうすると、引用発明において、検出した空気圧力(吐出圧力値)が規定圧力(コントローラに予め設定した所定のアンロード設定値)になった場合であったものを、検出した空気圧力(吐出圧力値)が規定圧力(コントローラに予め設定した所定のアンロード設定値)よりも高くなった場合とすること、すなわち、上記相違点5に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

そして、本願発明の全体構成により奏される作用効果は、引用発明、上記周知の構成及び上記周知の技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、上記周知の構成及び上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、その余の請求項に係る発明について判断するまでもなく、本願は、同法第49条第2号の規定に該当し、拒絶をされるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-09 
結審通知日 2013-08-13 
審決日 2013-08-26 
出願番号 特願2010-279279(P2010-279279)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F04C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 所村 陽一  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 平城 俊雅
槙原 進
発明の名称 スクリュ圧縮機  
代理人 山田 卓二  
代理人 前田 厚司  
代理人 田中 光雄  
代理人 前堀 義之  

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