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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05B
管理番号 1280376
審判番号 不服2012-14052  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-23 
確定日 2013-10-09 
事件の表示 特願2008-203144「プロセスプラントにおけるデータ共有」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月29日出願公開、特開2009- 20896〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本件出願は、2002年3月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年3月1日及び2001年9月17日、ともにアメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2002-570030号の一部を平成20年8月6日に新たな特許出願としたものであって、平成23年5月13日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年3月9日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し、同24年7月23日に本件審判の請求がされ、同時に特許請求の範囲を補正対象とする手続補正書が提出されたものである。
その後、当審において、平成24年12月28日付けで拒絶の理由が通知され、これに対し、平成25年3月28日に意見書及び手続補正書が提出された。
本件出願の請求項1ないし53に係る発明は、平成25年3月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書、願書に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至53に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)
「 【請求項1】
プロセスプラント内のデータを集めて使用する方法であって、該方法は、
プロセスプラントサービスを提供するように構成された遠隔のビジネス企業によってプロセスプラントに遠隔に実装され、デバイス状態データに遠隔アクセスするように構成された遠隔に実装されたサービスアプリケーション、及び前記プロセスプラント内に実装された一つ以上のプロセス制御アプリケーション又は保守アプリケーションを含むプロセスプラント内の複数のデータソースからデバイス状態データを含むデータを集めること、
前記集められたデバイス状態データをデータベースに格納すること、
前記サービスアプリケーションから集められたデータ及び前記一つ以上のプロセス制御アプリケーション又は保守アプリケーションから集められたデータの組み合わせに基づいて前記プロセスプラントを操作するために、前記格納されたデバイス状態データをプロセスプラント内で一つ以上のプロセス制御アプリケーション又は保守アプリケーションに対しアクセス可能にすること、及び、
前記格納されたデバイス状態データを前記サービスアプリケーションに対しアクセス可能にすること、
を含む方法。」

2 引用刊行物記載の発明
当審における拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前である平成12年4月21日に頒布された特開2000-112518号公報(以下、「刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 段落【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、公共上下水道などのプラントを監視制御するプラント監視制御システムに係わり、特に一般の公衆回線などを使用して、プラントを構成する各機器をリモート形式でメンテナンスするプラント監視制御システムに関する。」
イ 段落【0026】?【0028】
「【0026】この図に示すプラント監視制御システム1aは、工場、サービスセンタなどの管理所2に設けられ、プラント全体の監視、制御を行うCRT監視制御装置3と、管理所2に設けられ、ネットワーク4によって接続されたCRT監視制御装置3と一般公衆回線6とを接続する回線接続装置5と、遠隔機場7に設けられ、プラント8を制御する複数のプロセス操作器9と、遠隔機場7に設けられ、プラント8の運転状況を示す各プロセス量を取り込む複数のプロセス検知器10と、遠隔機場7に配置され、予め登録されている制御プログラムなどに基づき、各プロセス操作器9を制御する処理、各プロセス検知器10によって収集されたプロセス量を取り込んで、記録する処理などを行うプログラマブルコントローラ11と、ネットワーク12によって接続されたプログラマブルコントローラ11の状態を監視制御するCRT監視制御装置13と、遠隔機場7に配置され、プログラマブルコントローラ11およびCRT監視制御装置13と一般公衆回線6とを接続する回線接続装置14とを備えている。
【0027】そして、CRT監視制御装置3からの制御指示を一般公衆回線6を介し、プログラマブルコントローラ11に伝達させて、この制御指示と、プログラマブルコントローラ11に予め登録してある制御プログラムとに基づき、各プロセス操作器9を制御させて、プラント8を構成する各プロセスの運転状況を制御しながら、各プロセス検出器10によって、各プロセスの運転状況を示すプロセス量を収集し、これを記録させ、さらにCRT監視制御装置13に各プロセスの運転状況などを表示させるとともに、一般公衆回線6を介し、プロセス量をCRT監視制御装置3に伝達させ、このCRT監視制御装置3に各プロセスの運転状況などを表示させる。
【0028】このプラント監視制御システム1aでは、プラント8の各プロセスを最適化するために、プロセスを構成する各設備機器の改造などを行い、これに対応して管理所2に設けられたCRT監視制御装置3で、一般公衆回線6を介し、遠隔機場7に設けられたプログラマブルコントローラ11の制御プログラムを修正したり、新たな制御プログラムを追加したりしたとき、CRT監視制御装置3によって、プログラマブルコントローラ11を制御して、修正された制御プログラム、追加された制御プログラムに関係する処理を実行させながら、各プロセス操作器9から出力される状態アンサーバック信号、各プロセス検知器10から出力されるプロセスフィードバック信号を取り込ませ、これを記憶させながら、一般公衆回線6を介し、これら状態アンサーバック信号、プロセスフィードバック信号を取り込んで、予め設定されているモデルと比較し、この比較結果に基づき、修正された制御プログラム、追加された制御プログラムの良否を判定する。」
ウ 段落【0030】?【0032】
「【0030】プログラマブルコントローラ11は、制御プログラム修正、追加確認機能として、CRT監視制御装置3から送信された修正内容、追加内容に基づき、既に登録されている制御プログラムを修正して、修正後の制御プログラムを記憶する処理、追加された制御プログラムを記憶する処理などを行う制御プログラム格納部15と、CRT監視制御装置3から運転指令が出力されたとき、これを取り込んで、制御プログラム格納部15に格納されている制御プログラムに基づき、各プロセス操作器9のうち、指定されたプロセス操作器9、例えばポンプ用モータを起動させた後、整定時間だけ遅れて、ポンプ用モータのリアクトル起動回路を短絡させる電磁接触器16のコイル17をオン状態にし、メイン接点18、補助接点19を閉状態にする運転指令送受信部20と、この運転指令送受信部20によってオン状態にされたプロセス操作器9、例えば電磁接触器16の補助接点19から出力される状態アンサーバック信号を取り込んで、CRT監視装置3に供給する状態アンサーバック信号送受信部21とを備えている。
【0031】さらに、プログラマブルコントローラ11は、制御プログラム修正、追加確認機能として、各プロセス検出器10によって検出されるプロセス量、えばポンプ用モータの温度、このポンプ用モータによって駆動されるポンプの流量、このポンプによって排水される吸込水槽の水位などのプロセス量を取り込み、これをプロセスフィードバック信号として、CRT監視制御装置3に供給するプロセスフィードバック信号送受信部22と、運転指令送受信部20で受信される各運転指令、状態アンサーバック信号送受信部21で収集された各状態アンサーバック信号、プロセスフィードバック信号送受信部22で収集された各プロセスフィードバック信号を取り込んで、その取得時刻とともに記憶し、CRT監視制御装置3から読み出し指令が出力されたとき、記憶している各運転指令の内容とその取得時刻、各状態アンサーバック信号の内容とその取得時刻、各プロセスフィードバック信号とその取得時刻などをCRT監視制御装置3に供給する情報記憶部23とを備えている。
【0032】そして、CRT監視制御装置3から制御プログラムの修正内容が送信されたとき、制御プログラム格納部15によって、これを取り込むとともに、制御プログラム修正内容に基づき、既に登録されている制御プログラムを修正し、またCRT監視制御装置3から制御プログラムの追加内容が送信されたとき、制御プログラム格納部15によって、これを取り込むとともに、制御プログラム追加内容に基づき、既に登録されている制御プログラムに対し、新たな制御プログラムを追加する。」
エ 段落【0036】?【0038】
「【0036】CRT監視制御装置3は、制御プログラム修正、追加確認機能として、プログラマブルコントローラ11の制御プログラムを修正しりた、新たな制御プログラムを追加したりする制御プログラム修正部24と、プログラマブルコントローラ11に保持されている制御プログラムの修正内容、追加内容を確認するとき、運転指令を出す運転指令部25と、プログラマブルコントローラ11から出力される状態アンサーバック信号を取り込む状態アンサーバック信号受信部26と、プログラマブルコントローラ11から出力されるプロセスフィードバック信号を取り込むプロセスフィードバック信号受信部27と、プログラマブルコントローラ11の情報記憶部23に記憶されている各運転指令の内容とその取得時刻、各状態アンサーバック信号の内容とその取得時刻、各プロセスフィードバック信号とその取得時刻などを読み出して、記憶する情報受信記憶部28と、これら運転指令部25の動作内容、状態アンサーバック信号受信部26で受信された状態アンサーバック信号、プロセスフィードバック信号受信部27で受信されたプロセスフィードバック信号、あるいは情報受信記憶部28に記憶されている情報などに基づき、プログラマブルコントローラ11の制御プログラムを修正したとき、またはプログラマブルコントローラ11に新たな制御プログラムを追加したとき、これらの制御プログラムによって各プロセス操作器9、プラントの各プロセスが正しく動作しているかどうかを確認する品質確認部29とを備えている。
【0037】そして、制御プログラム修正部24によって、プログラマブルコントローラ11の制御プログラム格納部15に格納されている制御プログラムを修正したとき、あいるは新たな制御プログラムを追加したとき、運転指令部25を動作させて、運転指令を生成し、一般公衆回線6を介し、運転指令をプログラマブルコントローラ11に供給しながら、一般公衆回線6の時間遅れが問題とならないときには、状態アンサーバック信号受信部26、プロセスフィードバック信号受信部27によって、プログラマブルコントローラ11によって収集された状態アンサーバック信号、プロセスフィードバック信号などを直接、収集するとともに、品質確認部29によって、予め作成されているモデルを使用して、運転指令と、状態アンサーバック信号と、プロセスフィードバック信号との関係を分析し、これらが許容範囲内であれば、プログラマブルコントローラ11の修正済み制御プログラム、追加された制御プログラムが正常に動作していると判定し、また許容範囲外であれば、プログラマブルコントローラ11の修正済み制御プログラム、追加された制御プログラムが正常に動作していないと判定する。
【0038】また、一般公衆回線6の時間遅れが問題となるときには、品質確認を行うことができる時間帯に、情報受信記憶部28によって、プログラマブルコントローラ11の情報記憶部23に格納されている情報、すなわちプログラマブルコントローラ11によって受信された運転指令とその取得時刻、プログラマブルコントローラ11によって取り込まれた状態アンサーバック信号とその取得時刻、プロセスフィードバック信号とその取得時刻などの情報を取り込んで、これらを記憶した後、品質確認部29によって、予め作成されているモデルを使用して、運転指令と、状態アンサーバック信号と、プロセスフィードバック信号との関係を分析し、これらが許容範囲内であれば、プログラマブルコントローラ11の修正済み制御プログラム、追加された制御プログラムが正常に動作していると判定し、また許容範囲外であれば、プログラマブルコントローラ11の修正済み制御プログラム、追加された制御プログラムが正常に動作していないと判定する。」
オ 段落【0044】
「【0044】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、請求項1のプラント監視制御システムでは、管理所に設けられたCRT監視制御装置によって、遠隔機場に設けられたプログラマブルコントローラの制御プログラムを修正したり、新たな制御プログラムを追加したりしたとき、遠隔機場に技術者を出張させることなく、修正した制御プログラム、追加した制御プログラムによって、プラントの各プロセスが正常に動作するかどうかを確認させることができ、これによって制御プログラムの変更部分が正しくないとき、制御プログラムの再修正、再追加などを迅速に行わせることができる。」
以上、アないしオの記載事項から、刊行物には、
「プラントを構成する各機器をリモート形式でメンテナンスする方法であって、該方法は、
工場、サービスセンタなどの管理所2に設けられ、一般公衆回線6を介して遠隔機場7のプラント8に接続され、プラント全体の監視、制御を行うCRT監視制御装置3を有し、当該CRT監視制御装置3は、制御プログラム修正、追加確認機能として、遠隔機場7内のプログラマブルコントローラ11の制御プログラムを修正したり、新たな制御プログラムを追加したりする制御プログラム修正部24と、プログラマブルコントローラ11に保持されている制御プログラムの修正内容、追加内容を確認するとき、運転指令を出す運転指令部25と、プログラマブルコントローラ11から出力される状態アンサーバック信号を取り込む状態アンサーバック信号受信部26と、プログラマブルコントローラ11から出力されるプロセスフィードバック信号を取り込むプロセスフィードバック信号受信部27と、プログラマブルコントローラ11の情報記憶部23に記憶されている各運転指令の内容とその取得時刻、各状態アンサーバック信号の内容とその取得時刻、各プロセスフィードバック信号とその取得時刻などを読み出して、記憶する情報受信記憶部28と、これら運転指令部25の動作内容、状態アンサーバック信号受信部26で受信された状態アンサーバック信号、プロセスフィードバック信号受信部27で受信されたプロセスフィードバック信号、あるいは情報受信記憶部28に記憶されている情報などに基づき、プログラマブルコントローラ11の制御プログラムを修正したとき、またはプログラマブルコントローラ11に新たな制御プログラムを追加したとき、これらの制御プログラムによってプラント8を制御する複数のプロセス操作器9やプラント8の各プロセスが正しく動作しているかどうかを確認する品質確認部29とを備え、
CRT監視制御装置3からの制御指示を一般公衆回線6を介し、プログラマブルコントローラ11に伝達させて、この制御指示と、プログラマブルコントローラ11に予め登録してある制御プログラムとに基づき、各プロセス操作器9を制御させて、プラント8を構成する各プロセスの運転状況を制御しながら、プラント8の運転状況を示す複数のプロセス検出器10によって、各プロセスの運転状況を示すプロセス量を収集し、これを記録させ、さらに、一般公衆回線6を介し、プロセス量をCRT監視制御装置3に伝達させ、このCRT監視制御装置3に各プロセスの運転状況などを表示させ、
前記品質確認部29は、品質確認を行うことができる時間帯に、情報受信記憶部28によって、プログラマブルコントローラ11によって受信された運転指令とその取得時刻、プログラマブルコントローラ11によって取り込まれた状態アンサーバック信号とその取得時刻、プロセスフィードバック信号とその取得時刻などの情報を取り込んで、これらを記憶した後、当該品質確認部29によって、予め作成されているモデルを使用して、運転指令と、状態アンサーバック信号と、プロセスフィードバック信号との関係を分析し、これらが許容範囲内であれば、プログラマブルコントローラ11の修正済み制御プログラム、追加された制御プログラムが正常に動作していると判定し、また許容範囲外であれば、プログラマブルコントローラ11の修正済み制御プログラム、追加された制御プログラムが正常に動作していないと判定すること、
を含む方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が、記載されていると認められる。

3 対比及び当審の判断

(1) 対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「プラント8」はプロセス操作器9を有することから、本願発明の「プロセスプラント」に相当し、したがって、引用発明の「プラントを構成する各機器をリモート形式でメンテナンスする方法」は、本願発明の「プロセスプラント内のデータを集めて使用する方法」に相当する。
引用発明の「工場、サービスセンタなどの管理所2」は、その内部にあるCRT監視制御装置3が遠隔機場7のプラント8に一般公衆回線6を介して接続されているから、「プロセスプラントに遠隔に実装され」ているものであることは明らかである。そして、当該「管理所2」は、「プラント管理場」という限りで、本願発明の「ビジネス企業」と共通する。
引用発明の「品質確認部29」は、品質確認を行うことができる時間帯に、情報受信記憶部28によって、プログラマブルコントローラ11によって受信された運転指令とその取得時刻、プログラマブルコントローラ11によって取り込まれた状態アンサーバック信号とその取得時刻、プロセスフィードバック信号とその取得時刻などの情報を取り込んで、これらを記憶した後、当該品質確認部29によって、予め作成されているモデルを使用して、運転指令と、状態アンサーバック信号と、プロセスフィードバック信号との関係を分析し、これらが許容範囲内であれば、プログラマブルコントローラ11の修正済み制御プログラム、追加された制御プログラムが正常に動作していると判定し、また許容範囲外であれば、プログラマブルコントローラ11の修正済み制御プログラム、追加された制御プログラムが正常に動作していないと判定しており、この判定結果により「プロセスプラントを操作」しているものであると言えるから、当該「品質確認部29」は、本願発明の「サービスアプリケーション」に相当する。したがって、サービスアプリケーションである引用発明の「品質確認部29」は、「プロセスプラントサービスを提供するように構成された」ものであること、及びプラント8が有する「デバイス状態データにアクセスするように構成された」ものであることは明らかである。
請求人は、平成25年3月28日付け意見書において、「引用文献1(当審注:刊行物である特開2000-112518号公報)は、プロセスプラントから遠隔に実装されているサービスアプリケーションから集められたデータと、プロセスプラント内に実装されている一つ以上のプロセス制御アプリケーション又は保守アプリケーションから集められたデータとの組み合わせに基づいて、プロセスプラントを操作することを開示も示唆もしていないことです。」(上記意見書の第4ページ第26行?第30行。)と主張している。
しかしながら、引用発明の「品質確認部29」が本願発明の「サービスアプリケーション」に相当することは上記のとおりであるので、請求人の上記主張は採用することができない。
引用発明の「プログラマブルコントローラ11によって受信された運転指令とその取得時刻、プログラマブルコントローラ11によって取り込まれた状態アンサーバック信号とその取得時刻、プロセスフィードバック信号とその取得時刻などの情報を取り込んで、これらを記憶」することは、本願発明の「プロセスプラント内に実装された一つ以上のプロセス制御アプリケーションを含むプロセスプラント内の複数のデータソースからデバイス状態データを含むデータを集める」ことに相当する。
引用発明の「情報受信記憶部28」は、本願発明の「データベース」に相当する。したがって、引用発明の「情報受信記憶部28によって、プログラマブルコントローラ11によって受信された運転指令とその取得時刻、プログラマブルコントローラ11によって取り込まれた状態アンサーバック信号とその取得時刻、プロセスフィードバック信号とその取得時刻などの情報を取り込んで、これらを記憶」することは、本願発明の「集められたデバイス状態データをデータベースに格納する」ことに相当する。また、プログラマブルコントローラ11によって受信された運転指令とその取得時刻、プログラマブルコントローラ11によって取り込まれた状態アンサーバック信号とその取得時刻、プロセスフィードバック信号とその取得時刻などの情報を取り込んで、これらを記憶し、品質管理部29の判定に当該データを用いることは、「格納されたデバイス状態データをサービスアプリケーションに対しアクセス可能にすること」にほかならない。
引用発明の「予め作成されているモデル」は、サービスアプリケーションに相当する品質確認部29で用いられるものであるから、本願発明の「サービスアプリケーションから集められたデータ」に相当する。したがって、引用発明の「品質確認を行うことができる時間帯に、情報受信記憶部28によって、プログラマブルコントローラ11によって受信された運転指令とその取得時刻、プログラマブルコントローラ11によって取り込まれた状態アンサーバック信号とその取得時刻、プロセスフィードバック信号とその取得時刻などの情報を取り込んで、これらを記憶した後、当該品質確認部29によって、予め作成されているモデルを使用して、運転指令と、状態アンサーバック信号と、プロセスフィードバック信号との関係を分析し、これらが許容範囲内であれば、プログラマブルコントローラ11の修正済み制御プログラム、追加された制御プログラムが正常に動作していると判定し、また許容範囲外であれば、プログラマブルコントローラ11の修正済み制御プログラム、追加された制御プログラムが正常に動作していないと判定すること」は、本願発明の「サービスアプリケーションから集められたデータ及び前記一つ以上のプロセス制御アプリケーションから集められたデータの組み合わせに基づいて前記プロセスプラントを操作するために、格納されたデバイス状態データをプロセスプラント内で一つ以上のプロセス制御アプリケーションに対しアクセス可能にすること」に相当する。
したがって、両者は、
「プロセスプラント内のデータを集めて使用する方法であって、該方法は、
プロセスプラントサービスを提供するように構成された遠隔のプラント管理場によってプロセスプラントに遠隔に実装され、デバイス状態データに遠隔アクセスするように構成された遠隔に実装されたサービスアプリケーション、及び前記プロセスプラント内に実装された一つ以上のプロセス制御アプリケーションを含むプロセスプラント内の複数のデータソースからデバイス状態データを含むデータを集めること、
前記集められたデバイス状態データをデータベースに格納すること、
前記サービスアプリケーションから集められたデータ及び前記一つ以上のプロセス制御アプリケーションから集められたデータの組み合わせに基づいて前記プロセスプラントを操作するために、前記格納されたデバイス状態データをプロセスプラント内で一つ以上のプロセス制御アプリケーションに対しアクセス可能にすること、及び、
前記格納されたデバイス状態データを前記サービスアプリケーションに対しアクセス可能にすること、
を含む方法。」で一致し、次の点で相違する。
<相違点>
プラント管理場に関して、本願発明では、「ビジネス企業」と特定しているのに対して、引用発明では、工場、サービスセンタなどの管理所2である点。

(2) 当審の判断
上記相違点について検討すると、プラントの管理をビジネス企業に依頼することは、例えば、特表平8-511889号公報(第8ページ第8行?第24行参照。)に示されるように従来周知の事項であることからすれば、引用発明において、工場、サービスセンタなどの管理所2をビジネス企業に依頼するように構成することは、当業者が容易に想到し得た程度の事項であると考えるのが相当である。
本願発明の奏する作用ないし効果についても、引用発明及び上記周知の事項から予測し得る範囲のものでしかない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2ないし53に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-09 
結審通知日 2013-05-14 
審決日 2013-05-27 
出願番号 特願2008-203144(P2008-203144)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青山 純  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 長屋 陽二郎
刈間 宏信
発明の名称 プロセスプラントにおけるデータ共有  
代理人 特許業務法人 有古特許事務所  

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