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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1280395
審判番号 不服2011-11653  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-01 
確定日 2013-10-09 
事件の表示 特願2000-565517「無線周波数識別システムに対する用途」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月24日国際公開,WO00/10144,平成14年 7月23日国内公表,特表2002-522857〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,1999年(平成11年)8月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理,1998年8月14日米国,1999年6月25日米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成13年 2月14日付け:翻訳文提出
平成18年 7月28日付け:手続補正書の提出
平成21年 5月19日付け:拒絶理由の通知
平成21年11月26日付け:意見書,手続補正書の提出
平成22年 1月21日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)の通知
平成22年 7月21日付け:意見書,手続補正書の提出
平成23年 1月25日付け:平成22年7月21日付け手続補正の補正却下の決定,拒絶査定
平成23年 6月 1日付け:審判請求書,手続補正書の提出
平成23年11月 8日付け:審尋
平成24年 5月11日付け:回答書の提出
平成24年 6月27日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)の通知
平成25年 1月 4日付け:意見書,手続補正書の提出

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年1月4日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項のうち,請求項1の記載は次のとおりである。なお,下線部は補正箇所であり,当審で付した。
「テーブルの上,大箱,積み重ねた山,又は図書館カートの中のそれぞれにRFID素子が付けられた品目のグループと共に,持ち運び可能なRFID装置を利用する方法であって,
(a)特定の品目または品目のクラスおよび品目のクラスの場所を記述する情報を前記RFID装置に入力するステップであって,前記クラスの品目は特定の場所に関連付けられているステップと,
(b)テーブルの上,大箱,積み重ねた山,又は図書館カートの中の前記品目の各品目に付けられた前記RFID素子を走査するステップと,
(c)前記走査されたRFID素子のそれぞれから信号を受信するステップと,
(d)受信した前記信号と前記RFID装置に入力された前記情報とを比較して,テーブルの上,大箱,積み重ねた山,又は図書館カートの中の前記品目の中に前記特定の品目または品目のクラスが存在するか否かを判定するステップとを含む方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前(平成23年6月1日付け手続補正)の,特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「それぞれにRFID素子が付けられた品目のグループと共に,持ち運び可能なRFID装置を利用する方法であって,
(a)特定の品目または品目のクラスおよびそのクラスの品目の場所を記述する情報を前記RFID装置に入力するステップであって,前記クラスの品目は特定の場所に関連付けられているステップと,
(b)前記品目のグループ内の各品目に付けられた前記RFID素子を走査するステップと,
(c)前記走査されたRFID素子のそれぞれから信号を受信するステップと,
(d)受信した前記信号と前記RFID装置に入力された前記情報とを比較して前記品目の中に前記特定の品目または品目群が存在するか否かを判定するステップとを含む方法。」

(3)上記補正は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項(発明特定事項)である「品目」について,「テーブルの上,大箱,積み重ねた山,又は図書館カートの中の」との限定を付加するとともに,「品目群」との記載を「品目のグループ」に,また「そのクラスの品目の場所」との記載を「品目のクラスの場所」に,それぞれ変更するものであって,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年改正前特許法」という。)17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮及び同3号の誤記の訂正を目的とするものに該当する。

2 補正の適否
そこで,補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は,上記1に記載したとおりである。

(2)引用例
ア 引用例1
(ア)当審の拒絶理由で引用された,本願の優先権主張日前の平成8年12月17日に頒布された刊行物である特開平8-335238号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
・「【0001】・・・本発明は,外部からの入力に応答して所定の信号を発生する応答形商品識別タグを用いた,店舗の商品管理システムに関する。」
・「【0002】代表的な応答形商品識別タグはスーパタグと呼ばれ,・・・。
【0003】このスーパタグは,図13に示すように,ID情報識別部,メモリ部及び遅延時間設定部により構成される。
【0004】メモリ内には各種情報(棚卸しの場合ならば,商品名,配置場所,或いは値段等の情報)が記憶される。ID情報識別部は受信されたID情報を識別し,自身のID情報である場合に応答し,自身のID情報が含まれていない場合には何も応答をしない。
【0005】また,このスーパタグには,それぞれ固有に遅延時間が遅延時間設定部に設定されている。タグからデータを送信する場合に,複数のタグからの応答が重なってしまうと不都合が生じるため,タグ固有の遅延時間に従って送信のタイミングを個々のタグ毎に遅らせ,時分割でタグからの情報を受信できるようにしている。」
・「【0006】該スーパタグは,内蔵する小形送受信回路により電波によるデータの受送信ができる。このスーパタグは,受信したデータが自己宛のデータであれば,対応するデータを送信する機能を具備している。・・・」
・「【0008】また,複数の商品が存在しても,電波の周波数/時間差及びデータの違い等によりそれぞれの商品を一括して判断することもできる。
【0009】そして,登録したデータを管理用コンピュータ等の上位装置に対して有線または無線により転送し,データの集計処理を行い,商品管理を行うものである。」
・「【0016】・・・図1は本発明の原理説明図であり,本発明は商品管理装置10と電波に応答する形式の商品識別タグ(以下,「応答形商品識別タグ」という。)の付された商品群20とから成る。
【0017】商品管理装置10は,制御部(CPU)1,メモリ(ROM,RAM)2,操作部3,送信部4,受信部5,通信部6等を備えている。」
・「【0019】制御部1の指示により,送信部4は送受信アンテナ7から特定の商品に対応するデータを送信する。このデータを受信した,各商品A,B等に付けられた該当の応答形商品識別タグ9は,超小形のトランスポンダとして機能するため,応答データを送信する。
【0020】また,受信部5は応答形商品識別タグ9からのデータをアンテナ7を介して受信し,メモリ2にそのデータを保存する。また,制御部1は通信部6を介して上位装置にそのデータを送信するための制御を行う。」
・「【0027】なお,応答形商品識別タグのメモリには,商品種別毎に固有なID情報が記録されており,それに合わせて商品名などの商品自体の情報が記録されている。」
・「【0028】・・・図2は,商品管理装置10としてハンディターミナルを使用した場合を示すものであり,商品棚R全体の商品A,B,Cにそれぞれの応答形商品識別タグ9を取り付けた状態を示すものである。」
・「【0031】商品の棚卸し等に際しては,オペレータが商品棚Rの付近を移動しつつ,ハンディターミナル10を操作して商品の管理が行われる。図2に示す実施例で商品の数量を確認しようとする場合,オペレータは確認しようとする商品Aのある棚の前で操作部3により商品Aを選択し,実行キーを押す。
【0032】その結果,送信部4よりアンテナ7を介して商品Aに対応するID情報が送出され,ID情報を受信すると,応答形商品識別タグは自身のID情報と同一か否かを判定する。
【0033】受信したID情報が自身のものと異なる場合には,応答形商品識別タグは応答せず,受信したID情報と自身のID情報とが一致する場合に応答形商品識別タグは応答する。応答形商品識別タグからは商品を識別する情報を含むデータが送信される。
【0034】送出データの届く範囲にある商品Aの応答形商品識別タグ9からの応答データを受信部5により受信し,応答されたデータの数をカウント/記録する。そして順次次の商品を選択して,それぞれの商品のID情報を送信し,応答形商品識別タグからのデータを受信して数をカウントして行くことにより,その商品棚Rにある商品の数量を確認することができる。」

(イ)上記記載から,引用例1には,次の発明(以下,「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。
「外部からの入力に応答して所定の信号を発生する応答形商品識別タグ(スーパタグ)を用いた商品管理システムを利用する方法であって,
商品管理システムは,商品管理装置としてのハンディターミナルと,応答形商品識別タグが付された商品群とから構成され,
応答形商品識別タグのメモリには,商品種別毎に固有なID情報と,商品名,配置場所,値段等の商品自体の情報が記憶され,
応答形商品識別タグ固有の遅延時間に従って送信のタイミングを個々の応答形商品識別タグごとに遅らせ,商品管理装置が応答形商品識別タグからの情報を時分割で受信することにより,複数の商品が存在してもそれぞれの商品を一括して判断することができるようにされており,
オペレータが,商品棚の付近を移動しつつ商品管理装置を操作し,商品管理装置から特定の商品に対応するID情報を送信すると,応答形商品識別タグは,受信したID情報と自身のID情報とが一致する場合に,商品を識別する情報を含む応答データを送信し,商品管理装置は,応答形商品識別タグからのデータを受信し,応答があったデータの数をカウントすることにより,商品の数量を確認する,
商品管理システムを利用する方法。」

イ 引用例2
(ア)同じく当審の拒絶理由で引用された,本願の優先権主張日前の平成10年3月3日に頒布された刊行物である特開平10-59507号公報(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
・「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,図書館の書籍を一括管理するための図書管理システムに関する。」
・「【0005】・・・〈構成1〉図書館の各書籍に貼付され,各書籍を他の書籍と区別する識別コードを記憶した応答器と,図書館の任意の場所で,上記応答器に対して質問信号を送信し,応答器の送信する識別信号を受信する質問器と,図書館内部の全ての書籍に貼付した応答器から上記質問器が受信した応答信号により,各書籍の識別コードを得て,書籍データベースと照合し,図書館内部の全ての書籍の所在を認識するコンピュータとを備えたことを特徴とする図書管理システム。
【0006】〈説明〉書籍は,図書館の管理対象となっている任意の書籍を含む。識別コードは,各書籍を他の書籍と区別するためのものであれば何でもよい。応答信号には識別コード以外の情報が含まれていてもよい。識別コードの分離は質問器で行っても,コンピュータ側で行ってもよい。書籍データベースには,図書館内部の全ての書籍の識別コードが,各書籍についての諸情報とともに格納されている。所在を認識するというのは,図書館内部のいずれかの場所に存在するのを認識するということで,認識結果は任意の形式で表示出力される。これにより,自動的に図書館内部の書籍の有無管理が可能になる。」
・「【0019】コンピュータ10は,命令実行コマンド等を与える手段となる入力装置12と,命令実行結果を出力するための表示装置13と,当該図書館の保有する全書籍の「タイトル」,「作者・出版元」,「図書番号」,「バーコード番号」,「購入日」,「貸出し状況」など,管理に必要な様々な情報が構築された書籍データベース14と,これら全ての動作を統括するCPU11とを有している。・・・」
・「【0021】応答器30は,本の裏表紙などに貼付されており,アンテナ34と,そのアンテナ34にて受信した質問信号を整流・充電して電源を供給したり質問信号が有する情報を取り出す質問信号検波部31と,その本に割り当てられている識別コードを記憶するメモリ35と,そのメモリ35に記憶されされた内容に基づき質問信号に変調をかけてアンテナ34より応答信号を送信するID送信部33と,これらの全ての動作を統括する応答器制御部32とを有している。メモリ35には通常,書籍に対してユニークに設定された識別コードの他に,応答信号をどのような周期,タイミングで出力するか等の応答器30の制御に関わるパラメータも予め設定されている。応答信号の周期やタイミングは,例えば識別コードによって選定される。各応答器が一斉に応答信号を出力する際に混信を防止するためである。・・・」
・「【0051】例えば,所望書籍の識別コードが「901-A-31」であるとする。従来では,利用者は書籍分類「901-A」を探し,その書棚の中から所望の書籍をさらに探索するという動作をしていた。・・・」

(イ)上記記載から,引用例2には,コンピュータ10が実行する方法として,次の発明(以下,「引用例2発明」という。)が記載されていると認められる。
「図書館の各書籍に貼付されるとともに各書籍を他の書籍と区別する識別コードを記憶した応答器に対して質問信号を送信し,応答器から受信した信号から各書籍の識別コードを得て,書籍データベースに格納された,図書館内部の書籍の識別コードと照合し,図書館内部の書籍の所在を認識する,図書管理システムを利用する方法。」

(3)引用発明との対比
ア 本願補正発明と引用例1発明とを対比する。
(ア)引用例1発明における「応答形商品識別タグ(スーパタグ)」(以下,「タグ」という。),「商品管理装置としてのハンディターミナル」は,その構成及び機能から,それぞれ本願補正発明の「RFID素子」,「持ち運び可能なRFID装置」に相当する。
(イ)引用例1発明における,タグが付された「商品」は,本願補正発明の「品目」又は「品目のクラス」に,また,「商品群」は,本願補正発明の「品目のグループ」に相当する。
(ウ)引用例1発明におけるタグ及び商品管理装置が有する「商品種別毎に固有なID情報」は,本願補正発明の「特定の品目又は品目のクラスを記述する情報」に相当する。
(エ)本願補正発明は,要するに,「特定の品目または品目のクラス及び品目のクラスの場所を記述する情報」が「入力」されたRFID装置が,「各品目に付けられたRFID素子を走査」し,「走査されたRFID素子のそれぞれから信号を受信」し,「受信した信号(RFID素子の情報)とRFID装置に入力された情報とを比較して,品目の中に特定の品目又は品目のクラスが存在するか否かを判定する」ものである。
他方,引用例1発明は,「オペレータが,商品棚の付近を移動しつつ商品管理装置(ハンディターミナル)を操作し,商品管理装置から特定の商品に対応するID情報を送信すると,タグは,受信したID情報と自身のID情報とが一致する場合に,商品を識別する情報を含む応答データを送信し,商品管理装置は,タグからのデータを受信し,応答があったデータの数をカウントすることにより,商品の数量を確認する」ものである。
引用例1発明において,商品管理装置に,何らかのステップにより商品の「ID情報」が入力されていることは自明である。また,商品管理装置の処理は,「走査」ということができ,また,「商品の数量」の確認は,商品の「存在」確認の一態様である。
そうすると,本願補正発明と引用例1発明は,いずれもRFID素子の情報とRFID装置の情報とを比較して,品目の中に特定の品目又は品目のクラスが存在するか否かを判定するものであるから,後記の点で相違するものの,「特定の品目又は品目のクラスを記述する情報をRFID装置に入力するステップと,各品目に付けられた前記RFID素子を走査するステップと,RFID素子の情報とRFID装置の情報とを比較して,品目の中に特定の品目又は品目のクラスが存在するか否かを判定するステップと」を有する点で共通する。
(エ)本願補正発明と引用発明は,総合すれば,いずれも「それぞれにRFID素子が付けられた品目のグループと共に,持ち運び可能なRFID装置を利用する方法」ということができる。

オ 以上のことから,本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
【一致点】
「それぞれにRFID素子が付けられた品目のグループとともに,持ち運び可能なRFID装置を利用する方法であって,
特定の品目又は品目のクラスを記述する情報をRFID装置に入力するステップと,
各品目に付けられた前記RFID素子を走査するステップと,
RFID素子の情報とRFID装置の情報とを比較して,品目の中に特定の品目又は品目のクラスが存在するか否かを判定するステップと
を含む方法。」

【相違点1】
本願補正発明は,「テーブルの上,大箱,積み重ねた山,又は図書館カートの中」の「品目のグループ」を対象としているのに対し,引用例1発明は,例えば「商品棚」の「品目のグループ」(商品群)を対象としている点。
【相違点2】
本願補正発明は,「RFID装置」に入力される情報が,「特定の品目又は品目のクラス及び品目のクラスの場所を記述する情報」であって,「クラスの品目は特定の場所に関連付けられている」のに対し,引用例1発明は,「RFID装置」に入力される情報は,「特定の品目又は品目のクラスを記述する情報」であり,品目のクラスの場所の情報を含むことは特定されていない点。
【相違点3】
「RFID素子の情報とRFID装置の情報とを比較して,品目の中に特定の品目又は品目のクラスが存在するか否かを判定するステップ」が,本願補正発明は,「走査されたRFID素子のそれぞれから信号を受信するステップと,受信した信号とRFID装置に入力された情報とを比較して,品目の中に特定の品目または品目のクラスが存在するか否かを判定するステップと」からなるのに対し,引用例1発明は,ステップの内容が本願補正発明とは異なる点。

(4)判断
以下,相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用例1発明は,「タグ固有の遅延時間に従って送信のタイミングを個々のタグごとに遅らせ,商品管理装置がタグからの情報を時分割で受信することにより,複数の商品が存在してもそれぞれの商品を一括して判断することができる」ものであり,この構成により,オペレータは,「商品棚の付近を移動しつつ商品管理装置を操作し,商品管理装置によりタグからのデータを受信して,商品の管理を行う」こと,すなわち,商品棚のように複数の商品が載置された状態においても,それら(商品群)を一括して走査することが可能となる。
「商品棚」と同様に,複数の商品が存在する状態として,テーブルの上に商品が載置された状態,箱の中に商品が入れられた状態,商品が山積みされた状態,カートに商品が入れられた状態等があることは,当業者であれば容易に想到し得ることであり,これらの状態においても,引用例1発明を適用できることは,自明である。
したがって,引用例1発明が対象とする「商品群」(品目のグループ)として,「テーブルの上,大箱,積み重ねた山,又は図書館カートの中」とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
「特定の品目又は品目のクラスを記述する情報」に,「品目のクラスの場所を記述する情報」であって,「特定の場所に関連付けられている」情報を含めることは,図書館における書籍管理にみられるように,周知の技術手段である。
例えば,引用例2には,「例えば,所望書籍の識別コードが「901-A-31」であるとする。従来では,利用者は書籍分類「901-A」を探し,その書棚の中から所望の書籍をさらに探索するという動作をしていた。」(段落【0051】)と記載されており,書籍(品目)の「識別コード」は,書籍分類(品目のクラス)の情報を含み,さらに当該書籍分類は,特定の書棚(品目のクラスの場所)に関連付けられていることが示唆されている。
引用例1発明において,商品管理装置(RFID装置)に入力されるID情報として,上記周知の技術手段を採用し,相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について
引用例2発明は,前記(2)イ(イ)で認定したとおり,「図書館内部の書籍の所在を認識する」ために,「書籍に貼付された応答器に対して質問信号を送信し,応答器から受信した信号から各書籍の識別コードを得て,書籍データベースに格納された,図書館内部の書籍の識別コードと照合する」構成,換言すれば,「書籍に貼付された応答器を走査し,応答器から識別コードを受信し,受信した識別コードと書籍データベースに格納された識別コードとを比較して,図書館内部に特定の書籍が存在するか否かを判定する」構成としたものである。
ここで,書籍の「識別コード」は,引用例1発明における商品の「ID情報」に相当し,「応答器」は,引用例2の段落【0021】の記載などから,引用例1発明における「タグ」と同様,「RFID素子」であることは明らかである。また,上記方法は,引用例2の段落【0005】に記載されているように,質問器と書籍データベースを有するコンピュータにより実行されるものであり,したがって,コンピュータは,引用例1発明における「商品管理装置」,すなわち「RFID装置」ということができる。
そうすると,引用例1発明と引用例2発明は,いずれも,品目の存在を確認するために,RFID素子の情報とRFID装置の情報とを比較して,品目の中に特定の品目又は品目のクラスが存在するか否かを判定するものであり,技術分野,課題及び主要な課題解決のための構成が共通する。
したがって,引用例1発明において,商品棚に特定の商品が存在するか否かを判定するための構成に対応する,「商品管理装置から特定の商品に対応するID情報を送信すると,応答形商品識別タグは,受信したID情報と自身のID情報とが一致する場合に,商品を識別する情報を含む応答データを送信し,商品管理装置は,応答形商品識別タグからのデータを受信し,応答があったデータの数をカウントすることにより,商品の数量を確認する」構成に換えて,引用例2発明の上記構成を採用し,商品に付されたタグを走査し,タグからID情報を受信し,受信したID情報と商品管理装置に記憶されたID情報とを比較して商品棚に特定の商品が存在するか否かを判定する構成,すなわち,相違点3に係る,「走査されたRFID素子のそれぞれから信号を受信するステップと,受信した信号とRFID装置に入力された情報とを比較して,品目の中に特定の品目または品目のクラスが存在するか否かを判定するステップと」からなる構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

エ そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願補正発明の奏する作用効果は,引用例1発明,引用例2発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本願補正発明は,引用例1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反してなされたものであるから,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成25年1月4日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成23年6月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,補正された明細書及び図面の記載からみて,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2の[理由]1(2)のとおりのものである。

2 当審の拒絶理由の概要
当審において平成24年6月27日付けで通知した拒絶理由(最後の拒絶理由)の[理由1](1)は,要すれば,本願発明は,引用例1(特開平8-335238号公報)及び引用例2(特開平10-59507号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3 引用例
引用例1及び引用例2の記載事項は,前記第2の[理由]2(2)のとおりである。

4 対比・判断
本願発明は,実質的には,前記第2の[理由]2で検討した本願補正発明から,「テーブルの上,大箱,積み重ねた山,又は図書館カートの中の」との限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が,前記第2の[理由]2(4)に記載したとおり,引用例1及び引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用例1及び引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

5 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-08 
結審通知日 2013-05-14 
審決日 2013-05-27 
出願番号 特願2000-565517(P2000-565517)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (G06Q)
P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神田 太郎  
特許庁審判長 西山 昇
特許庁審判官 手島 聖治
清田 健一
発明の名称 無線周波数識別システムに対する用途  
代理人 河合 章  
代理人 青木 篤  
代理人 南山 知広  
代理人 森 啓  
代理人 鶴田 準一  

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