• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1280556
審判番号 不服2012-20675  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-19 
確定日 2013-10-15 
事件の表示 特願2009-503036号「電磁放射によって加熱された単結晶炭化ケイ素を含む複合材料および機器」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月1日国際公開、WO2007/123711、平成21年9月10日国内公表、特表2009-532827号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2007年3月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年3月30日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年8月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成24年10月19日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成24年10月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年10月19日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
2-1.本件補正
本件補正は、平成24年6月8日付けで補正された特許請求の範囲に
「 【請求項1】
マトリクス材料において単結晶炭化ケイ素のホイスカ、繊維、またはこれらの混合物を含む、無線周波数またはマイクロ波放射へ曝露されると温度上昇する複合材料。
・・・
【請求項11】
請求項1に記載の複合材料を含む、マイクロ波吸収性かつ加熱可能の食品加工用品。
・・・」
とあるのを
「 【請求項1】
電磁放射へ曝露されると温度上昇する複合材料を含む、マイクロ波吸収性かつ加熱可能の食品加工用品であって、前記複合材料が、電磁放射に透過的なマトリクス材料において単結晶炭化ケイ素のホイスカ、繊維、またはこれらの混合物を含む、前記食品加工用品。
・・・」
とする補正を含むものである。

上記補正の中で、請求項1に係る補正は、補正前の請求項1の構成に請求項11の構成を付加するとともに、「無線周波数またはマイクロ波放射」を「電磁放射」と変更し、マトリクス材料を「電磁放射に透過的な」ものに限定をするものである。

2-2.補正の目的
上記請求項1に係る補正のうち、「無線周波数またはマイクロ波放射」を「電磁放射」と変更する補正は、「無線周波数またはマイクロ波放射」から、無線周波数またはマイクロ波を含み、さらに他の電磁波(例えば赤外線)の放射を含む「電磁放射」に拡張されていることから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、また、請求項の削除、誤記の訂正、又は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものでないことも明らかである。

2-3.独立特許要件
上記したように本件補正は、補正の目的違反であるが、仮に本件補正が限定的減縮を目的にしたものであったとしても、以下のように特許出願の際に独立して特許を受けることのできないものである。

2-3-1.本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「2-1.本件補正」の補正後の請求項1参照)により特定されたとおりのものと認める。

2-3-2.引用例
これに対して、本願優先日前に頒布された刊行物である特開平2-217719号公報(以下「引用例」という。)には、以下の事項及び引用発明が記載されている。

(1)「(1)電磁波エネルギー変換発熱体を具備した電子レンジ。」(特許請求の範囲】参照)

(2)「作用
本発明では、電子レンジ内に電波で自己発熱する発熱体(ヒータ)を適切な位置・形態で設けるため、被加熱物(食物)は電子レンジの電波加熱と、ヒータ加熱を同時に受けることとなる。そのため、調理時間の短縮と、被加熱物の内外部均一加熱や、「こげめ」等の外部加熱の特長を付加できる利点がある。
さらに、発熱体を所定の形状、所定の位置に設定することにより被加熱物の局部加熱や、液体の高速加熱も可能となり、その用途は無限である。
次に電磁波エネルギー変換発熱体は電波(電磁波と同じ)を効率良く熱に変換する材料で構成する。この材料としては、セラミック系発熱体が安全性と耐久性の面で適している。すなわち、導電性あるいは半導電性セラミックの粉、繊維、ウイスカー、焼結体等が用いられ、材料としては、炭化けい素ウイスカー、導電処理したチタン酸カリウムウイスカー、酸化錫ウイスカー、導電処理した亜鉛華等も用いられ得るが、中でも特に発熱効率の点で酸化亜鉛ウイスカーが最適である。」(第2頁左上欄14行?同右上欄13行参照)

(3)「実施例
以下に実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限られるものではない。
本発明で用いる電磁波エネルギー変換発熱体(以下単に発熱体と称す)は電子レンジの電波(2.45GHz)を効率良く熱に変換する材料で構成される。この材料としてカーボン系は発熱体とはなり得るが、酸化や燃焼が進むため、安全性と耐久性の点で好ましくない。その意味で、セラミック系発熱体が適していることとなる。すなわち、導電性あるいは、半導電性セラミックの粉、繊維、ウイスカー、焼結体等が用いられ、材料としては、炭化けい素ウイスカー、導電処理したチタン酸カリウムウイスカー、酸化錫ウイスカー、導電処理した亜鉛華等が発熱体となり、用途を限定すれば使用に耐える場合もあるが、電子レンジ内の調理に使用するには発熱効率が不十分と云わざるを得ない。
その点で酸化亜鉛(以下ZnOと略記する)ウイスカーが最も好ましい材料である。とりわけ、テトラポット構造の酸化亜鉛ウイスカーが好ましい。」(第2頁左下欄2行?同右下欄2行参照)

(4)「次に、電子レンジ用発熱体としては、ZnOウイスカーを各種形態において用いることができる。
すなわち、粉体状態、圧粉状態、濾過堆積状態、あるいは焼結状態、セラミックやガラス・ほうろう等のマトリックス中への分散状態において用いることができ、各種バインダーや、焼結助剤、各種添加剤等を用いることができるのは勿論である。」(第3頁左上欄15行?同右上欄1行参照)

(5)「実施例2
実施例1と同じZnOウィスカーを、粘土と混ぜ、軽く混練して充分分散させた。このとき、ZnOウィスカーは40wt%であった。この粘土組成物で直径2cmのボールを作り、焼いて陶器のボール状発熱体を得た。」(第3頁左下欄1?6行参照)

上記記載事項(4)の「セラミックやガラス・ほうろう等のマトリックス中への分散状態において用いる」形態は、電子レンジ用発熱体としてZnOウイスカーを用いた場合の記載とはなっているが、上記記載事項(2)及び(3)に例示された炭化けい素ウイスカー等の他の材料を用いた場合においても適用されるものと当業者なら認識し得ることから、引用例には、
「被加熱物(食物)を電子レンジ内で加熱する電磁波エネルギー変換発熱体であって、
上記電磁波エネルギー変換発熱体は、電磁波を効率良く熱に変換する材料で構成され、この材料としては、酸化亜鉛ウイスカー、炭化けい素ウイスカー、導電処理したチタン酸カリウムウイスカー、酸化錫ウイスカー、導電処理した亜鉛華等が用いられ、
上記材料をセラミックやガラス・ほうろう等のマトリックス中への分散状態の形態において用いる電磁波エネルギー変換発熱体。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

2-3-3.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「電磁波エネルギー変換発熱体」は、被加熱物(食物)を電子レンジ内で加熱するものであるので、本願補正発明の「マイクロ波吸収性かつ加熱可能の食品加工用品」に相当し、
引用発明の「セラミックやガラス・ほうろう」は、一般的に「電磁放射に透過的」であるので(必要なら、特開2006-35056号公報の段落【0006】参照)、引用発明の「セラミックやガラス・ほうろう等のマトリックス」は、本願補正発明の「電磁放射に透過的なマトリクス材料」に相当し、
引用発明において、電磁波を効率良く熱に変換する材料がセラミックやガラス・ほうろう等のマトリックス中への分散状態の形態となっていることは、本願補正発明の「電磁放射へ曝露されると温度上昇する複合材料」を構成しているものといえ、
引用発明の電磁波を効率良く熱に変換する材料である「酸化亜鉛ウイスカー、炭化けい素ウイスカー、導電処理したチタン酸カリウムウイスカー、酸化錫ウイスカー、導電処理した亜鉛華等」と、本願補正発明の「単結晶炭化ケイ素のホイスカ、繊維、またはこれらの混合物」とは、「マイクロ波エネルギーを吸収する材料」である限りにおいては一致し、
引用発明の「ウイスカー」と本願補正発明の「ホイスカ」は、いずれも英語の「whisker」を日本語表記したもので、両者は同一の内容の用語であり、また、「ウイスカー」とは、繊維状単結晶である(「JIS 工業大辞典 第4版」)ことから、引用発明の「炭化けい素ウイスカー」は、本願補正発明の「単結晶炭化ケイ素のホイスカ」に相当する。
よって、両者は、
「電磁放射へ曝露されると温度上昇する複合材料を含む、マイクロ波吸収性かつ加熱可能の食品加工用品であって、前記複合材料が、電磁放射に透過的なマトリクス材料においてマイクロ波エネルギーを吸収する材料を含む、前記食品加工用品。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:本願補正発明では、マイクロ波エネルギーを吸収する材料が、単結晶炭化ケイ素のホイスカ、繊維、またはこれらの混合物を含むものであるのに対し、引用発明では、炭化けい素ウイスカー(単結晶炭化ケイ素のホイスカ)は例示されているものの、それに特定されていない点。

2-3-4.判断
上記相違点について検討すると、
引用例には、発熱体に用いる材料として、酸化亜鉛ウイスカーが最適であり、炭化けい素ウイスカー、導電処理したチタン酸カリウムウイスカー、酸化錫ウイスカー、導電処理した亜鉛華等は、電子レンジ内の調理に使用するには発熱効率が不十分である旨の記載はあるが、特許請求の範囲の請求項(1)には酸化亜鉛ウイスカーの限定はなく、また、記載事項(3)に「用途を限定すれば使用に耐える場合もある」と記載されていることからみても、引用例は、電磁波を効率良く熱に変換する材料として酸化亜鉛ウイスカー以外の炭化けい素ウイスカー等を用いることを排除していないことは明らかである。
そして、炭化けい素を、電子レンジ用のマイクロ波吸収発熱体として用いることは、本願優先日前周知の技術(例えば、特開平6-124767号公報、特開平1-95228号公報参照)であり、また、炭化けい素ウイスカーについても、電磁波を吸収して発熱することは当業者にとって周知の事項(必要なら、特開平6-248935公報参照)であることから、引用発明において例示された材料の中から炭化けい素ウイスカーを選択することは、当業者が普通に行いうることである。
よって、引用発明において、例示された電磁波を効率良く熱に変換する材料の中から炭化けい素ウイスカーを選択し、上記相違点の本願補正発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。また、上記選択により格別な作用効果を奏するものとも認められない。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項各号のいずれを目的とするものにも該当しないから、同法第17条の2第4項の規定に違反するもの、または、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
3-1.本願発明
平成24年10月19日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年6月8日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「2-1.本件補正」の補正前の請求項1参照)により特定されるとおりのものと認める。

3-2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、その記載事項及び引用発明は、前記「2-3-2.引用例」に記載したとおりである。

3-3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、
両者は、
「マトリクス材料においてマイクロ波エネルギーを吸収する材料を含む、無線周波数またはマイクロ波放射へ曝露されると温度上昇する複合材料。」である点で一致し、上記「2-3-3.対比」において相違するとした点で相違する。

そこで、上記相違点について検討すると、上記「2-3-4.判断」において相違点について検討したのと同様に、引用発明において、上記相違点の本願発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-20 
結審通知日 2013-05-22 
審決日 2013-06-05 
出願番号 特願2009-503036(P2009-503036)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05B)
P 1 8・ 57- Z (H05B)
P 1 8・ 575- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 結城 健太郎土屋 正志  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 山崎 勝司
竹之内 秀明
発明の名称 電磁放射によって加熱された単結晶炭化ケイ素を含む複合材料および機器  
代理人 大関 雅人  
代理人 小林 智彦  
代理人 刑部 俊  
代理人 井上 隆一  
代理人 新見 浩一  
代理人 渡邉 伸一  
代理人 清水 初志  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ