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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B42D
管理番号 1280558
審判番号 不服2013-2465  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-08 
確定日 2013-10-16 
事件の表示 特願2009-549860「印刷によるIDドキュメントおよびそのようなドキュメントを印刷するためのプロセス」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月28日国際公開、WO2008/102222、平成22年 6月 3日国内公表、特表2010-519070〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2008年1月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年2月19日、EP。)を国際出願日とする出願であって、平成24年1月26日付けで手続補正書が提出され、同年10月4日付けで拒絶の査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、平成25年2月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、上記の平成24年1月26日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲、明細書、及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下「本願発明」という。)。
「主表面の少なくとも一方が、印刷されたアートワークの層(14A、14B)および/または印刷された個人化情報の層(24A、24B)が上にある印刷面を形成し、前記印刷面が強化型保護フィルム(31A、31B)で覆われる本体を備えるIDドキュメントであって、
印刷された個人化情報の層(24A、24B)はインクリボンを用いて印刷され、
前記インクリボンによって印刷面へと転写される保護用重ね層(25A、25B)をさらに備えており、前記保護用重ね層(25A、25B)が、前記印刷面へと転写されたインクへの前記強化型保護フィルム(31A、31B)の付着を可能にできることを特徴とする、IDドキュメント。」

3.引用例
(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前である平成13年5月15日に頒布された「特開2001-130146号公報 」(以下「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(なお、下線は審決で付した。以下、同じ。)
・「インク画像が形成された印画紙上に画像保護層が形成されてなり、上記画像保護層を剥離したときに印画紙上のインク画像が不連続に剥離されることを特徴とする画像転写体。」(【請求項1】)
・「上記画像保護層上に、さらにラミネートフィルムが貼り合わされていることを特徴とする請求項1記載の画像転写体。」(【請求項4】)
・「印画紙2は、例えば図2に示すように、基材4とインク画像1が形成される受容層5とから構成される。この印画紙2は、受容層5がインクリボンと対向して重ね合わされ、例えばサーマルプリンタへ供給される。サーマルプリンタでは、印刷情報に基づいて、サーマルヘッドによりインクリボンが選択的に熱量印加される。これにより、インクリボンの染料が受容層5に移行し、受容層5上にインク画像1が形成される。」(段落【0014】)
・「・・・このインクリボンは、例えば図4及び図5に示すように、シート状基材8と、このシート状基材8の一主面の所定の領域に形成されたイエロー層9Y、マゼンタ層9M及びシアン層9Cとからなるインク層領域9と、転写型画像保護フィルム7として形成された画像保護層領域10と、イエロー層9Y、マゼンタ層9M、シアン層9C及び画像保護層領域10の間に配設されたセンサーマーク11とを有している。」(段落【0023】)
・「この手法においてインク画像1は、印刷情報に基づいてサーマルプリンタ内でインクリボンのインク層領域9のイエロー層9Y、マゼンタ層9M及びシアン層9Cがサーマルヘッドにて面順次に加熱されることにより、各色染料が受容層5に移行し、印画紙2の受容層5上に形成される。」(段落【0037】)
・「次に、インクリボンの画像保護層領域10を選択的に加熱して熱転写し、インク画像1を覆って画像保護層3を形成する。」(段落【0038】)
・「【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発明にかかる画像転写体は、画像保護層が剥離されたとき、インク画像が不連続に破壊されることにより、改ざん防止能を付与されることになる。したがって、改ざん防止対策が不可欠な身分証明書等に適用可能な画像転写体を提供することができる。」(段落【0051】)

これらの記載事項を総合すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「インク画像が形成された印画紙上に画像保護層が形成されてなり、上記画像保護層上に、さらにラミネートフィルムが貼り合わされている身分証明書等に適用可能な画像転写体であって、
印画紙は、基材とインク画像が形成される受容層とから構成され、
インクリボンは、インク層領域と、画像保護層領域とを有しており、
インク画像は、インクリボンのインク層領域がサーマルヘッドにて面順次に加熱されることにより、印画紙の受容層上に形成され、
次に、インクリボンの画像保護層領域を加熱して熱転写し、インク画像を覆って画像保護層を形成する、
身分証明書等に適用可能な画像転写体。」

4.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
後者における「ラミネートフィルム」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「強化型保護フィルム」に相当し、以下同様に、「本体」は「基材とインク画像が形成される受容層とから構成された印画紙」に、「身分証明書等に適用可能な画像転写体」は「IDドキュメント」に、「画像保護層」は「保護用重ね層」に、それぞれ相当する。
また、後者における「インク画像」は、インクリボンのインク層領域がサーマルヘッドにて面順次に加熱されることにより、印画紙の受容層上に形成されるものであるから、「印刷された層」といえ、また、後者は、身分証明書等に適用可能な画像転写体であり、そして、引用例には、「IDカードやパスポート等の身分証明書には、顔写真等の所持者を明らかにする情報が記載されている。」(段落【0003】)、「昇華性あるいは熱拡散性染料を使用した昇華型熱転写方式により形成された画像を、例えば身分証明書等の顔写真に適用する際には・・・基材と受容層からなる印画紙の受容層に、インク画像が形成され・・・」(段落【0004】)、及び「本発明にかかる画像転写体は、画像保護層が剥離されたとき、インク画像が不連続に破壊されることにより、改ざん防止能を付与されることになる。したがって、改ざん防止対策が不可欠な身分証明書等に適用可能な画像転写体を提供することができる。」(段落【0051】)と記載されているように、後者における「インク画像」は、改ざん防止能を付与をしなければならない身分証明書等の顔写真等の所持者を明らかにする情報の画像、つまり「個人化情報の画像」であることは明らかである。してみると、後者における「インク画像」は、「印刷された個人化情報の層」といえる。
さらに、後者における「インク画像」は、インクリボンのインク層領域がサーマルヘッドにて面順次に加熱されることにより、印画紙の受容層上に形成されているから、「印刷されたインク画像はインクリボンを用いて印刷され」るといえる。
また、後者における「印画紙」には、主表面が形成されていることは明らかであり、「印画紙」は、インク画像が形成された印画紙上に画像保護層が形成されてなり、上記画像保護層上に、さらにラミネートフィルムが貼り合わされている。してみると、印画紙の一方の主表面の上にインク画像が印刷されるから、印画紙の一方の主表面は印刷面を形成しているといえ、また、その印刷された印画紙上に画像保護層が形成され、さらに画像保護層がラミネートフィルムで覆われているといえる。したがって、後者における「印画紙」は、「主表面の一方が、印刷されたインク画像が上にある印刷面を形成し、前記印刷面がラミネートフィルムで覆われるもの」といえる。
また、後者における「画像保護層」は、インクリボンの画像保護層領域を加熱して熱転写し、インク画像を覆って形成されるから、「インクリボンによって印刷面へと転写されるもの」といえる。
さらに、後者における「画像保護層」は、インク画像が形成された印画紙上に形成されて、その上に、ラミネートフィルムが貼り合わされているから、「印刷面へと転写されたインクへのラミネートフィルムの付着を可能にできる」といえる。
してみると、両者に実質的な差異はなく、本願発明の発明特定事項は、すべて引用発明が備えているから、本願発明は、引用発明と同一である。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-15 
結審通知日 2013-05-21 
審決日 2013-06-03 
出願番号 特願2009-549860(P2009-549860)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 砂川 充  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 藤本 義仁
吉野 公夫
発明の名称 印刷によるIDドキュメントおよびそのようなドキュメントを印刷するためのプロセス  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  

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